JP3759994B2 - 酸触媒ポジ型レジスト - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディープUV露光に特に適した、サブミクロン寸法の高解像形状を形成する能力を有するフォトレジストの調製物用の新規な溶解抑制剤の使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトレジストとは、画像を基板に転写するのに使用される感光フィルムである。フォトレジストはネガまたはポジの画像を形成する。フォトレジストを基板に塗布したのち、その塗膜を、パターン化されたフォトマスクを介し、紫外線のような活性化エネルギー源に曝すと、フォトレジスト塗膜中に潜像が形成される。フォトマスクは、活性化電磁波又は粒子線に対して不透明な領域と、活性化電磁波又は粒子線に対して透明な他の領域とを有している。フォトマスク中の、不透明領域および透明領域からなるパターンが、画像を基板に転写するのに使用することができる所望の像を画定する。フォトレジスト塗膜中に模造された潜像の現像により、レリーフ像が得られる。フォトレジストの使用は、例えば、DeforestによるPhotoresist Materials and Processes, McGraw Hill Book Company, New York (1975)およびMoreauによるSemiconductor Lithography, Principles, Practices and Materials, Plenum Press, New York(1988)に概説されている。
【0003】
公知のフォトレジストは、多くの既存の工業的用途に十分な解像力および大きさの形状を形成することができる。しかし、他の多くの用途の場合には、高い解像度のサブミクロン寸法の像を提供することができる新規なフォトレジストの必要性が存在する。
【0004】
細い線の解像が可能である有用性が高いフォトレジスト組成物は、本明細書に引用例として含める、Thackeray らへの米国特許第5,128,232号に開示されている。この特許は、とりわけ、非芳香族環式アルコール単位とフェノール単位とのコポリマーを含むフォトレジスト樹脂バインダーの使用を開示している。開示されたフォトレジストは、ディープUV(DUV)線での露光に特に適している。当業者によって認識されているように、DUV照射とは、約350nm以下の範囲、より典型的には約300nm以下の範囲の波長を有する光線にフォトレジストを曝すことに関していう。
【0005】
非芳香族環式アルコール単位とフェノール単位とのコポリマーが特に適しているフォトレジストの一類は、酸または塩基開裂性の保護基を有する樹脂バインダーと、活性化電磁波又は粒子線に曝されると塩基または酸をそれぞれ発生させる光塩基発生剤または光酸発生剤とを含むポジ型組成物である。いくつかのカチオン性光開始剤を使用して、フォトレジストバインダーから側方に出る特定の保護基の選択的な光発生酸開裂、すなわちフォトレジストバインダーを構成する特定の保護基の開裂を誘発してきたことは公知である。例えば、米国特許第4,968,581号、第4,883,740号、第4,810,613号および第4,491,628号ならびにカナダ国特許出願第2,001,384号を参照すること。これらすべてを、記載されたバインダーおよび酸不安定性保護基ならびにその製造方法および使用方法の教示に関し、引用例として本明細書に含める。このような開裂は、ポリマーの露光領域と非露光領域とで異なる溶解性を生じさせると報告されている。フォトレジストの露光によって保護基の選択的な開裂が起こったならば、極性の官能基、例えばカルボキシル、フェニルまたはイミドが得られるといわれている。
【0006】
引用例として本明細書に含める米国特許第5,258,257号には、フォトレジスト組成物の塗膜層の露光領域と非露光領域との間の溶解性の大きな差が、樹脂バインダーの酸不安定性保護基のわずかな程度の置換、例えば、不安定性基による、樹脂バインダーのヒドロキシル基の約1%の置換によって実現され、好ましくはバインダーのヒドロキシル基の5〜35%が酸不安定性基で保護されると報告されている。この特許に使用されるバインダーは、好ましくは、上述した環式アルコール単位とフェノールとのコポリマーである。この特許において、バインダーの環式アルコール単位がフェノール性基に比べて極性が低く、アルカリ現像液中では非露光領域の溶解性を実質的に制限するが、好適な有機現像液中ではそれらの領域の高い可溶性を可能にするため、比較的低い程度の保護基置換により、露光領域と非露光領域との間の溶解性の大きな差(を生じさせること)が可能であることが報告されている。したがって、該特許に記載の発明によると、光誘発開裂によって比較的小さな質量の保護基が遊離させられ、従来の系の問題、例えば、酸の開裂による樹脂バインダーの質量の減少の結果として起こるフォトレジスト層の収縮を回避する電磁波又は粒子線感応性組成物が得られる。
【0007】
引用例として本明細書に含める米国特許第5,362,600号には、好適な保護基を用いることにより、高濃度の環式アルコール単位を含むフェノール含有ポリマーバインダーを用いることができると報告されている。これは、バインダーのヒドロキシル基の少なくとも一部を保護したのち、保護基を酸触媒によって解保護するシーケンシャル・ステップにより、極性の高い基をバインダーにグラフトすることによって達成されると述べられている。例えば、tert−ブチルアセテート酸不安定性基の酸で触媒される解保護は酸エーテル成分(−OCH2 COOH)を提供する。このような極性基は、露光領域を極性の現像液に可溶にし、それにより、フォトレジストの溶解性を損なわずに、ポリマー中の環式アルコール単位の濃度を全ポリマーの60モル%以上に増すことができる。これが、優れた光学的明澄性を有するフォトレジストの調製を可能にする。
【0008】
酸不安定性保護基をポリマー上に用いてポジトーンフォトレジスト画像を形成する方法に代わる方法は、酸不安定性保護基を有する溶解抑制剤の使用を含む。溶解抑制剤は、フォトレジスト適合性成分、例えば、酸不安定性基によって保護されたフェノール性ヒドロキシル基をもつフェノールまたはビスフェノールである。この実施態様においては、酸不安定性基は、ポリマーにおいてではなく、溶解抑制剤において置換されている。十分な量の溶解抑制剤が本来はアルカリ可溶性であるフェノール成分を不溶化するのに用いられる。異なる溶解性は、酸不安定性保護基を樹脂バインダーにおいて置換する場合と本質的に同じ方法で、すなわち、フォトレジスト塗膜を活性化電磁波又は粒子線に曝して、溶解抑制剤の酸不安定性保護基を開裂させる酸を放出する光分解反応を生じさせ、フォトレジストをフォトレジスト塗膜の露光領域において可溶性にするアルカリ可溶性極性基を形成させることによって達成される。
【0009】
フォトレジスト塗膜の実質的な酸で触媒される解保護を用いると、フォトレジスト塗膜を処理する間にイソブチレンが発生する結果として、露光およびベーキングの間にフォトレジストの乾燥膜が収縮を起こすことが見いだされた。これは、転写された画像と所望の画像との間の不一致を生じさせる。加えて、酸不安定性基で保護されたフェノール性ヒドロキシル基を有する樹脂または溶解抑制剤を用いるポジ型フォトレジストの写真製版特性が、フォトレジストの長期貯蔵の間に小さな変化を受けることが見いだされた。これは、少なくとも部分的には、酸不安定性基の不安定性ならびに貯蔵中および使用前のそのような基の一部の開裂によるものと考えられる。貯蔵中の写真製版特性の変化は小さなものではあるが、そのようなレジストに求められる厳しい規格のため、そのような小さな変化でさえ、多くの電子デバイスの作製の場合には望ましくない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
本発明は、(a)フェノール性ヒドロキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂バインダー、および(b)光酸発生剤化合物、を含むポジ型フォトレジスト組成物であって、該樹脂バインダーが、そのフェノール性ヒドロキシル基の従部分が、アルキルエステルまたはスルホニルエステル基である不活性保護基、および光酸不安定性基で保護されたものである、ポジ型フォトレジスト組成物に関する。さらに、本発明は、(a)フェノール性ヒドロキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂バインダー、(b)光酸不安定性基を含む溶解抑制剤化合物、および(c)光酸発生剤化合物、を含むポジ型フォトレジスト組成物であって、該樹脂バインダーが、そのフェノール性ヒドロキシル基の従部分が、スルホニルエステル基である不活性保護基、および光酸不安定性基で保護されたものである、ポジ型フォトレジスト組成物に関する。本発明によると、不活性保護基がアルカリ可溶性樹脂において置換されているならば、十分な解像に要する酸不安定性基の総数を減らしうることが見いだされた。フォトレジストが、樹脂において置換された酸不安定性基を有するアルカリ可溶性樹脂を使用したものであるならば、本発明のその実施態様においては、酸不安定性基の一部に代えて不活性保護基が使用される。予想外にも、本明細書に記載する不活性保護基の使用の結果として起こるフォトレジスト組成物中の酸不安定性保護基の数の減少は、露光したフォトレジスト組成物の異なる溶解性に悪影響を及ぼさないことがわかった。
【0011】
上記に基づき、本明細書に記載の発明は、(a)フェノール性ヒドロキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂バインダー、および(b)光酸発生剤化合物、を含むポジ型フォトレジスト組成物であって、該樹脂バインダーが、そのフェノール性ヒドロキシル基の従部分が、アルキルエステルまたはスルホニルエステル基である不活性保護基、および光酸不安定性基で保護されたものである、ポジ型フォトレジスト組成物を含む。本発明の第二の実施態様は、(a)フェノール性ヒドロキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂バインダー、(b)光酸不安定性基を含む溶解抑制剤化合物、および(c)光酸発生剤化合物、を含むポジ型フォトレジスト組成物であって、該樹脂バインダーが、そのフェノール性ヒドロキシル基の従部分が、スルホニルエステル基である不活性保護基、および光酸不安定性基で保護されたものである、ポジ型フォトレジスト組成物である。フォトレジスト塗膜における異なる溶解性は、光によって発生した酸から生じる酸不安定性基の開裂によって達成される。
【0012】
保護基に関連して使用する「不活性」という用語は、フォトレジスト組成物の露光およびベーキングの間に発生した酸の存在において化学的に非反応性であることをいう。
【0013】
本発明のポリマーバインダーは、ポジ型フォトレジストに通常に使用される従来のアルカリ可溶性樹脂、例えばノボラック樹脂またはポリビニルフェノール樹脂であることができる。好ましくは、樹脂は、フェノール単位と環式アルコール単位とのコポリマーである。本発明の目的にもっとも好ましいポリマーは、フェノールホルムアルデヒド(ノボラック)またはポリ(ビニルフェノール)樹脂の水素化によって形成されるものである。
【0014】
フォトレジストバインダーとして使用される従来のノボラック樹脂およびポリ(ビニルフェノール)樹脂の製造方法は、当該技術分野において周知であり、先に論じたものを含む数多くの刊行物に開示されている。ノボラック樹脂は、フェノールとアルデヒドとの熱可塑性縮合物である。ノボラック樹脂の形成に用いるための、アルデヒド、特にホルムアルデヒドとの縮合に適したフェノールの例には、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールおよびチモールがある。酸で触媒される縮合反応の結果、分子量が約500〜100,000ダルトン(atomic mass unit。以下、同様)の範囲にある好適なノボラック樹脂が形成される。フォトレジストの形成に従来から使用される好ましいノボラック樹脂は、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合物である。
【0015】
ポリ(ビニルフェノール)樹脂は、カチオン性触媒またはフリーラジカル開始剤の存在における対応するモノマーのブロック重合、乳化重合または溶液重合によって形成することができる熱可塑性ポリマーである。ポリ(ビニルフェノール)樹脂の製造に有用であるビニルフェノールは、例えば、市販のクマリンまたは置換クマリンを加水分解したのち、得られるヒドロキシケイ皮酸を脱炭酸することによって製造することができる。有用なビニルフェノールはまた、対応するヒドロキシアルキルフェノールの脱水または置換もしくは非置換のヒドロキシベンズアルデヒドとマロン酸との反応から得られるヒドロキシケイ皮酸の脱炭酸によって製造することができる。そのようなビニルフェノールから製造される好ましいポリ(ビニルフェノール)樹脂は、約2,000〜約100,000ダルトンの範囲の分子量を有している。
【0016】
上記のように、本発明の目的に好ましい樹脂は、構造がノボラック樹脂またはポリ(ビニルフェノール)樹脂に類似している、フェノールと非芳香族環式アルコールとのコポリマーである。これらのコポリマーはいくつかの方法で形成することができる。例えば、ポリ(ビニルフェノール)樹脂の従来の製造において、重合反応の間に環式アルコールをコモノマーとして反応混合物に加え、その後、通常の方法で実施してもよい。環式アルコールは脂肪族であることが好ましいが、1個または2個の二重結合を含むものでもよい。環式アルコールは、構造がフェノールにもっとも近いものが好ましい。例えば、樹脂がポリ(ビニルフェノール)であるならば、コモノマーはビニルシクロヘキサノールである。
【0017】
コポリマーを形成する好ましい方法は、予め合成したノボラック樹脂または予め合成したポリ(ビニルフェノール)樹脂の部分的水素化を含む。水素化は、当該技術分野で認められた水素化手法を使用して、例えば、フェノール樹脂の溶液を高温および高圧で還元触媒、例えば白金もしくはパラジウム被覆のカーボン基体または好ましくはラネーニッケルに通すことによって実施することができる。具体的な条件は、水素化されるポリマーに依存する。詳細には、ポリマーを好適な溶剤、例えばエチルアルコールまたは酢酸に溶解したのち、その溶液を微粉砕したラネーニッケル触媒に接触させ、約100〜300℃および約50〜300気圧以上で反応させる。微粉砕したニッケル触媒は、水素化される樹脂に依存して、ニッケル担持シリカ触媒、ニッケル担持アルミナ触媒またはニッケル担持カーボン触媒であることができる。水素化は、フェノール単位のいくつかにおける二重結合を減らして、使用される反応条件に依存する割合でポリマー中に散在するフェノール単位と環式アルコール単位とのランダムポリマーを生じさせると考えられる。
【0018】
好ましいポリマーバインダーは、次式からなる群より選択される構造の単位を含む。
【0019】
【化4】
Figure 0003759994
【0020】
式中、単位(I)はフェノール単位を表し、単位(II)は環式アルコール単位を表し、Zは、炭素原子1〜3個を有するアルキレン架橋であり、Aは、芳香環における水素を置換する置換基、例えば炭素原子1〜3個を有する低級アルキル;ハロ、例えばクロロもしくはブロモ;炭素原子1〜3個を有するアルコキシ;ヒドロキシル;ニトロ;アミノなどであり、aは0〜4の数であり、Bは、置換基、例えば水素;炭素原子1〜3個を有する低級アルキル;ハロ、例えばクロロもしくはブロモ;炭素原子1〜3個を有するアルコキシ;ヒドロキシル;ニトロ;アミノなどである。ただし、置換基Bの少なくとも3個は水素であり、bは6〜10の整数であり、xはポリマー中の単位(I)のモル分率であり、yはポリマー中の単位(II)のモル分率であり、x+y=1である。
【0021】
上記のバインダーをフォトレジスト組成物に使用するためには、上記ポリマーバインダーにおいて利用できるヒドロキシル基の少なくとも一部の水素に置き換わって好適な酸不安定性保護基が結合される。好適な保護基は一般に、光開裂すると、ヒドロキシル基よりも極性の強い成分を提供するものである。さらに、酸不安定性保護基は一般に、いかなる露光前のソフトベーキングに対しても安定であるべきであり、組成物の光活性化に実質的に干渉しないものであるベきである。
【0022】
上記ポリマーにおいて、ポリマーの環式アルコール単位の割合は、極性現像溶液中での電磁波又は粒子線感応性組成物の露光された膜層の現像を妨げるほど高くないことが好ましい。ポリマーは、主部分としてのフェノール単位部分と、従部分としての、すなわち約50モル%未満の環式アルコール単位部分とを有することができる。しかし、ポリマーバインダー中の環式アルコール単位の濃度が増すにつれ、組成物の透明性が増すことが見いだされた。したがって、場合によっては、主部分としての環式アルコール単位部分と、従部分としてのフェノール単位部分とを有するポリマーを用いることが望ましいかもしれない。これは、酸で触媒される加水分解を受けると極性の官能基を提供して、露光領域を極性現像液により可溶性にする保護基を使用することによって達成することができる。したがって、高い透明性を有する電磁波又は粒子線感応性組成物を得るためには、本ポリマーバインダーの環式アルコール単位の割合を約50モル%にしてもよく、組成物の透明性をさらに高めるためには、環式アルコール単位の割合を約60モル%にしてもよく、組成物の透明性をよりいっそう高めるためには、環式アルコール単位の割合を全ポリマーバインダーの約70モル%以上にしてもよい。したがって、上記式に示されるポリマー中の単位(I)のモル分率xは、約0.30〜0.99、好ましくは約0.50〜0.90であることができ、上記ポリマー中の単位(II)のモル分率yは、0.01〜0.70、好ましくは約0.10〜0.50であることができる。
【0023】
酸不安定性保護基を有する樹脂を用いる本発明の実施態様においては、酸不安定性保護基は一般に、酸不安定性基を含む化合物との縮合反応によって導入されて、下記の一般式で示されるポリマーを形成する。
【0024】
【化5】
Figure 0003759994
【0025】
式中、A、a、B、b、Z、xおよびyは上記のとおりであり、x′およびy′は、以下に定義する酸不安定性基Rを有する単位のモル分率を表し、それぞれ0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.35である。上記の範囲を他の方法で定義するならば、好ましくはポリマーにおける全ヒドロキシル基の約1〜50%、より好ましくはポリマーにおける全ヒドロキシル基の約5〜35%が酸不安定性保護基と縮合させられるということができる。
【0026】
酸不安定性基は、典型的には、予め合成したポリマーと、酸不安定性基および好適な離脱基、例えばハロゲン、例えば臭化物もしくは塩化物を含む化合物とのアルカリ縮合反応により、ポリマーにおいて形成される。例えば、Rが好ましいtert−ブトキシカルボニルメチル基である場合、tert−ブチルハロアセテート(例えばtert−ブチルクロロアセテート)を、ポリマーと好適な塩基との溶液に加え、その混合物を典型的には加熱しながら攪拌する。この縮合反応には、水酸化物、例えば水酸化ナトリウムおよびアルコキシド、例えばカリウムtert−ブトキシドをはじめとする多様な塩基を用いることができる。縮合反応は典型的には、有機溶剤中で実施する。当業者には明白であるように、多様な有機溶剤が好適である。テトラヒドロフラン、アセトンおよびジメチルホルムアミドが好ましい溶剤である。縮合反応の好適な条件は、使用する成分に基づいて決定することができる。例えば、水酸化ナトリウムと、tert−ブチルクロロアセテートと、部分的に水素化されたポリ(ビニルフェノール)との添加混合物を約70℃で約15〜20時間攪拌する。
【0027】
酸不安定性基によるポリマーバインダーの置換率は、バインダーと縮合する酸不安定性化合物の量によって制御することができる。ポリマーバインダーにおけるヒドロキシルサイトの好ましい置換は、プロトンおよび炭素13NMRによって容易に確認することができる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様に準ずるものではあるが、ポリマーバインダーを2種以上の化合物の混合物と縮合して酸不安定性基を形成して、ポリマー主鎖に対して側方に結合した酸不安定性基の混合物を得ることもできる。ポリマーを2種以上の酸不安定性基と縮合するならば、上記式の基Rは、異なる基の混合物になる。例えば、まず、フェノール基と環式アルコール基からなる主題のポリマーを式R1 の化合物と縮合し、次いで、式R2 の化合物と縮合する。該式のR1 およびR2 は、2種の異なる酸不安定性成分である。ポリマーはR1 およびR2 の酸不安定性基の混合物を含む。
【0029】
酸不安定性基を有するポリマーと光酸発生剤とを含むフォトレジストを好適な波長の電磁波又は粒子線に曝すと、酸が発生し、この酸が酸不安定性基を開裂させて、好適な現像剤中でのフォトレジストの現像を可能にする極性基を形成する。好適な光酸発生化合物を以下に記載するが、これらは一般に当業者には周知である。
【0030】
塩基、例えば水酸化ナトリウムを縮合反応に使用すると、酸不安定性基は、上述のポリマーバインダーの環式アルコール基に付くのではなく、より反応性の高いフェノール基のほうに優先的に付くことがわかった。すなわち、バインダーのフェノール基だけに主に上述のR基が付加し、環式アルコール基は実質的に酸不安定性基に対しフリーである。より強い塩基、例えばブチルリチウムまたはアルキルリチウムを用いると、酸不安定性基はバインダーのフェノール基および環式アルコール基の両者に付くと考えられる。
【0031】
好適な酸不安定性基には、アセテート基、例えば式CR12 C−(=O)−O−R3 (式中、R1 およびR2 は、水素;電子求引基、例えばハロゲン;炭素原子1〜約10個を有する低級アルキルおよび炭素原子1〜約10個を有する置換された低級アルキルからなる群より互いに独立して選択され、R3 は、炭素原子1〜約10個を有する置換又は非置換の低級アルキル;炭素原子1〜約10個を有する置換又は非置換のアリール及び炭素原子7〜約13個を有する置換又は非置換のベンジルである)で示されるアセテート基を含む。置換基は、例えば、1個以上のハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アリールまたはベンジルであることができる。R1 およびR2 はいずれも水素であることが好適である。R1 および/またはR2 が水素または他の好適な電子求引基であるならば、アセテート基が酸開裂すると、極性の高い成分が得られ、それとともに、主題の組成物の塗膜層の露光領域と非露光領域との間の溶解性の差が増大する。ジフルオロ基(すなわち、R1 およびR2 がいずれもフッ素)がそのような目的に特に適し、ポリマーバインダーのヒドロキシル基のわずかな程度を置換するだけで、露光領域と非露光領域との間のきわめて高い溶解性の差を提供する。このジフルオロ基は、ポリマーとtert−ブチルクロロジフルオロアセテート(ClCF2 C(=O)OC(CH3)3 )とのアルカリ縮合によって得ることができる。上記のように、R3 は好ましくはtert−ブチルである(すなわち、Rはtert−ブチルアセテート基である)。この基の酸による分解がイソブチレンを遊離して、ポリマー主鎖から側方に出る極性を有する酢酸エーテル成分を提供する。
【0032】
引用例として本明細書に含める特許に記載された基の多くを含む広い範囲の酸不安定性基が好適であることが理解されよう。例えば、好適な酸不安定性基には、式−C(=O)−O−R3 (R3 は上記のとおりである)で示されるオキシカルボニル基がある。好ましくは、R3 はtert−ブチルまたはベンジルである(すなわち、Rはtert−ブトキシカルボニル基またはベンジルオキシカルボニル基である)。
【0033】
本発明によると、ヒドロキシル基の一部を、酸不安定性基で保護することに加え、不活性保護基にても保護すると、それにより、得られる本発明の好ましいポリマーは、以下の構造を有することになる。
【0034】
【化6】
Figure 0003759994
【0035】
式中、A、a、B、b、Z、R、x、y、x+y=1、x′およびy′は上記のとおりであり、x″およびy″は不活性保護基を有する単位のモル分率を表し、Iは不活性保護基を表す。好ましくは、酸不安定性基と不活性保護基との組み合わせによって保護されたヒドロキシル基の合計は、保護されたヒドロキシル基について上記に定めたものと同じ限界内である。すなわち、バインダーにおいて保護されたヒドロキシル基のモル分率は、約0.01〜0.5、より好ましくは約0.05〜0.35である。換言するならば、x′+y′+x″+y″の合計は0.5を超えない。不活性保護基を有する単位に対する酸不安定性基を有する単位の相対的割合を以下の表に見ることができる。
【0036】
【表1】
Figure 0003759994
【0037】
上記の表に関して、系が別個の溶解抑制剤、例えば保護されたアルコールまたは光酸発生剤そのものを使用するとき、x′+y′が0になることもありうる。
【0038】
本発明の好ましい実施態様に準ずるものとして、樹脂は、従来のアルカリ可溶性樹脂、例えばノボラック樹脂またはポリ(ビニルフェノール)樹脂であることができる。本発明のこの実施態様においては、得られるポリマーは、以下の構造の一つに相当する式で示されるであろう。
【0039】
【化7】
Figure 0003759994
【0040】
式中、A、a、x′、x″、Z、RおよびIは上記のとおりであり、不活性保護基を有する単位に対する酸不安定性基を有する単位の相対的な割合は、上記の表でy′およびy″が0である場合に定義されるとおりである。
【0041】
フォトレジストをベーキングするのに使用される温度において発生した酸に対して不活性であり、フォトレジスト内にあって写真製版反応に干渉しない保護基が本発明の目的に適している。好適な保護基の典型的な例は、アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、 sec−ブトキシ、tert−ブトキシなど;RCOO−(式中、Rは、好ましくは、炭素原子1〜4個を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、 sec−ブチル、tert−ブチルである)によって示されるアルキルエステル;スルホニル酸エステル、例えばメタンスルホニルエステル、エタンスルホニルエステル、プロパンスルホニルエステル、ベンゼンスルホニルエステルおよびトルエンスルホニルエステルなどを含む。
【0042】
本発明の好ましい実施態様に準ずるものとして、酸不安定性保護基を樹脂に置換するのに使用される縮合反応はまた、不活性保護基を樹脂に置換するのにも使用することができる。そのうえ、不活性保護基は、不活性保護基および酸不安定性保護基を含む反応物の混合物を含む溶液を提供することにより、酸不安定性保護基と同時に樹脂に置換することもできる。樹脂に置換されたそれぞれの濃度は、その反応溶液中のそれぞれの濃度によって制御することができる。しかし、酸不安定性基および不活性保護基は、同時ではなく、順次に樹脂に置換することが望ましい。その場合、まず、不活性保護基を樹脂に置換し、続いて酸不安定性保護基を置換する。
【0043】
本発明の代替態様においては、不活性保護基を有するポリマーを、置換された酸不安定性基を有する溶解抑制剤と組み合わせて使用する。本発明のこの実施態様においては、溶解抑制剤が樹脂を不溶化する。活性化電磁波又は粒子線に露光すると、酸不安定性保護基は、光によって発生した酸によって極性基に転換され、樹脂をアルカリ現像剤に溶解させる。
【0044】
使用する溶解抑制剤は、従来技術分野において公知である光活性化合物の形成に使用されるアルコール主鎖のいずれであってもよい。そのようなアルコールは、例として、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2′,4′−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2′,6′−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3′,4′,5′−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6,3′,4′,5′−ヘキサヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノンおよび2,3,4,3′,4′,5′−ヘキサヒドロキシ−5−ベンゾイルベンゾフェノン、ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−プロパン、ピロガロール、グルシノール、2,4−ジヒドロキシフェノールプロピルケトン、2,4−ジヒドロキシフェニル−N−ヘキシルケトン、2,3,4−トリヒドロキシフェニル−N−ヘキシルケトン、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシベンゾイル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシベンゾイル)メタン、ビス(2,4,6−トリヒドロキシベンゾイル)メタン、p−ビス(2,5−ジヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、p−ビス(2,3,4−トリヒドロキシベンゾイル)ベンゼンおよびp−ビス(2,4,6−トリヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、エチレングリコールジ(3,5−ジヒドロキシベンゾエート)、エチレングリコールジ(3,4,5−トリヒドロキシベンゾエート)、1,4−ブタンジオール(3,4,5−トリヒドロキシベンゾエート)1,8−オクタンジオール、ジ(3,4,5−トリヒドロキシベンゾエート)、ポリエチレングリコールジ(ポリヒドロキシベンゾエート)およびトリエチレングリコールジ(3,4,5−トリヒドロキシベンゾエート)を含む。
【0045】
アルコールは、酸不安定性基とアルコールのヒドロキシル基との反応によって溶解抑制剤に転換される。上述した酸不安定性基および反応機構を使用して、溶解抑制剤を形成する。本発明のこの実施態様においては、溶解抑制剤を、樹脂を不溶化するのに十分な量で、不活性保護基を有する樹脂と合わせる。一般に、樹脂と溶解抑制剤との重量比は、2:1〜10:1、より好ましくは3:1〜6:1であることができる。
【0046】
本発明のさらなる実施態様においては、不活性保護基および酸不安定性基の両者を有する樹脂を、酸不安定性基を有する溶解抑制剤とともに使用して、フォトレジストを調製することができる。
【0047】
溶解抑制剤をもつまたはもたない上述のポリマーバインダーは、さらなる成分として、光酸発生剤およびそのような調製物中に一般に見られる他の成分、例えば増感剤、アンチ・ストリエーション剤(anti-striation agent)などを含む酸触媒フォトレジスト系に使用される。光酸発生剤は、活性化電磁波又は粒子線に露光すると酸を形成することが知られている多様な化合物から選択することができる。本発明の電磁波又は粒子線感応性組成物の好ましい一類は、フェノールと酸不安定性基で置換された環式アルコールとのコポリマーをバインダーとして使用し、o−キノンジアジドスルホン酸エステルを電磁波又は粒子線感知性成分として使用する組成物である。そのような組成物に非常にしばしば使用される増感剤は、引用例として本明細書に含めるKosar のLight Sensitive Systems, John Wiley & Sons, 1965の343〜352頁に開示されているもののようなナフトキノンジアジドスルホン酸類である。これらの増感剤は、可視光線からX線までの範囲の異なる波長の電磁波又は粒子線に応答して、酸を形成する。したがって、増感剤の選択は、部分的に、露光に使用される波長に依存する。適当な増感剤を選択することにより、フォトレジストは、ディープUV、Eビーム、レーザまたはフォトレジストに像形成するのに従来的に使用されるその他の活性化電磁波又は粒子線によって像形成され得る。好ましい増感剤には、2,1,4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類および2,1,5−ジアゾナフトキンスルホン酸エステル類がある。
【0048】
他の有用な酸発生剤には、ニトロベンジルエステル類およびs−トリアジン誘導体がある。好適なs−トリアジン酸発生剤は、例えば、引用例として本明細書に含める米国特許第4,189,323号に開示されている。
【0049】
ハロゲン化された非イオン性光酸発生化合物をはじめとする非イオン性光酸発生剤、例えば1,1−ビス〔p−クロロフェニル〕−2,2,2−トリクロロエタン(DDT)、1,1−ビス〔p−メトキシフェニル〕−2,2,2−トリクロロエタン、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン、1,10−ジブロモデカン、1,1−ビス〔p−クロロフェニル〕−2,2−ジクロロエタン、4,4−ジクロロ−2−(トリクロロメチル)ベンズヒドロール(ケルセン)、ヘキサクロロジメチルスルホン、2−クロロ−6−(トリクロロメチル)ピリジン、O,O−ジエチル−O−(3,5,6−トリクロロ−2−ピリジル)ホスホロチオネート、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサン、N(1,1−ビス〔p−クロロフェニル〕−2,2,2−トリクロロエチル)アセトアミド、トリス〔2,3−ジブロモプロピル〕イソシアヌレート、2,2−ビス〔p−クロロフェニル〕−1,1−ジクロロエチレン、トリス〔トリクロロメチル〕s−トリアジンならびにそれらの異性体、類似体、同族体および残留化合物が好適である。好適な光酸発生剤はまた、いずれも上記で引用した、欧州特許出願第0164248号および第0232972号に開示されている。
【0050】
ディープUV露光に特に好ましい酸発生剤は、1,1−ビス(p−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン(DDT)、1,1−ビス(p−メトキシフェノール)−2,2,2−トリクロロエタン、1,1−ビス(クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタノール、トリス(1,2,3−メタンスルホニル)ベンゼンおよびトリス(トリクロロメチル)トリアジンを含む。
【0051】
また、オニウム塩が好適な酸発生剤である。弱い求核性のアニオンをもつオニウム塩が特に好適であることがわかった。そのようなアニオンの例は、二価から七価の金属または非金属、例えばSb、Sn、Fe、Bi、Al、Ga、In、Ti、Zr、Sc、D、Cr、HfおよびCuならびにB、PおよびAsのハロゲン錯アニオンである。好適なオニウム塩の例は、周期律表の族Va、VIaおよび VIIaのジアリール−ジアゾニウム塩およびオニウム塩、例えばハロニウム塩、第四級アンモニウム、ホスホニウム塩およびアルソニウム塩、芳香族スルホニウム塩およびスルホキソニウム塩またはセレニウム塩である。好適な好ましいオニウム塩の例は、引用例として本明細書に含める米国特許第4,442,197号、第4,603,101号および第4,624,912号に見ることができる。
【0052】
好適な酸発生剤のもう一つの群は、スルホニルオキシケトンを含むスルホン化エステル類である。ベンゾイントシレート、tert−ブチルフェニルα−(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセテートおよびtert−ブチルα−(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセテートをはじめとする好適なスルホン化エステルが、引用例として本明細書に含めるJ. of Photopolymer Science and Technology, vol. 4, No. 3,337-340(1991)に報告されている。
【0053】
本発明の組成物は、少なくとも部分的に、フォトレジストの調製に使用される従来の樹脂に代えて本明細書に記載の保護基をもつポリマーバインダーを用いたことを除き、一般に従来のフォトレジスト組成物の製造方法にしたがって製造される。本発明の組成物は、組成物の各成分を好適な溶剤、例えばグリコールエーテル、例えば2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル;セロソルブエステル、例えばメチルセロソルブアセテート;芳香族炭化水素、例えばトルエンもしくはキシレン;又はケトン、例えばメチルエチルケトンに溶解することにより、コーティング組成物として調製される。通常、組成物の固形分含量は、電磁波又は粒子線感応性組成物の総重量の約5〜35重量%である。
【0054】
本発明の組成物は、一般に公知である方法にしたがって使用される。しかし、露光および現像の条件は、感光速度の改良および現像剤への溶解性の変化の結果として異なることがある。本発明の液体コーティング組成物は、例えば、スピニング、浸漬、ローラコーティングまたは他の従来のコーティング技術によって基板に塗布される。スピンコーティングの場合、使用する特定のスピニング装置、溶液の粘度、スピナの速度およびスピニングに許される時間に基づいてコーティング溶液の固形分含量を調節して、望みの膜厚を得ることができる。
【0055】
組成物は、フォトレジストのコーティングを含む処理に従来から使用される基板に塗布される。例えば、マイクロプロセッサおよびその他の集積回路部品の製造の場合、組成物をケイ素または二酸化ケイ素ウェーハに塗布することができる。また、アルミニウム−酸化アルミニウムおよび窒化ケイ素のウェーハを、プラナライジング・レイヤーとして、または、当該技術に認められた手法にしたがってマルチ・レイヤーを形成するために、本発明のフォトキュアラブル(photocuarable)組成物でコーティングすることができる。
【0056】
フォトレジストを表面に塗布したのち、それを加熱によって乾燥させ、好ましくはフォトレジスト塗膜の指着乾燥レベルまで溶剤を除去する。その後、マスクを介して従来の方法で像形成する。露光は、フォトレジスト系の光活性成分を効果的に活性化して、レジスト塗膜層中にパターン化された画像を創り出すのに十分なものである。具体的には、露光エネルギーは通常、露光器具およびフォトレジスト組成物の成分に依存して、約10〜300mJ/cm2の範囲である。
【0057】
本発明の光酸発生組成物または光塩基発生組成物を露光するには、約240〜700nmの範囲の波長の電磁波又は粒子線を含む、広い範囲の活性化電磁波又は粒子線を好適に用いることができる。上述したように、本発明の組成物はディープUV露光に特に適している。本発明の組成物のスペクトル応答は、当業者には明白であるように、好適な電磁波又は粒子線感応性化合物を組成物に加えることによって拡大することができる。
【0058】
露光したのち、組成物の膜層を好ましくは約70℃〜140℃の範囲でベーキングする。その後、膜を現像する。露光したレジスト膜は、極性の現像剤、好ましくは塩基性の現像剤水溶液、例えば無機アルカリ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム;第四級アンモニウムの水酸化物溶液、例えば水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液;種々のアミン溶液、例えばエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミンもしくはメチルジエチルアミン;アルコールアミン、例えばジエタノールアミンもしくはトリエタノールアミン;環式アミン、例えばピロール、ピリジンなどを用いることにより、ポジ加工される。本発明による改良樹脂を使用すると、従来技術においてそのような組成物に使用される樹脂の場合に比べ、現像剤の強さを高めることができる。典型的には、現像剤の強さは0.2N TMAHを超えることができ、典型的には0.3N TMAHであることができ、好ましくは0.26N TMAHである。
【0059】
基板上のフォトレジスト塗膜を現像したのち、例えば、当該技術分野において公知である手法にしたがって、基板の、レジストがなくなった領域を化学的にエッチングまたはメッキすることにより、現像された基板を選択的に処理することができる。マイクロ電子基板、例えば二酸化ケイ素ウェーハを製造する場合、好適なエッチングを行うものとしては、プラズマガスエッチングおよびフッ化水素酸エッチング溶液を含む。本発明の組成物は、そのようなエッチングを行うものに対して耐性が高く、そのため、サブミクロン幅の線を含む高解像度の形状の製造が可能である。そのような処理ののち、公知のストリッピング法を用いて、処理された基板からレジストを除くことができる
【0060】
【発明の実施の形態】
以下の実施例によって本発明を説明する。
【0061】
本実施例に使用した水素化ポリ(ビニルフェノール)樹脂は、丸善石油から市販されているPHM−C等級であった。これらのポリ(p−ビニルフェノール)の水素化の程度は、芳香族二重結合が単結合に転換される割合で表すか、同等に、ヒドロキシフェニル基がヒドロキシルシクロヘキシル基に転換される割合で表す。本開示を通じてすべての温度数値は摂氏度である。
【0062】
実施例1
この実施例は、下記のフォトレジストから酸不安定性保護基をもたない処理によってポジトーンのレジスト画像を得ることを示している。この系においては、光酸発生剤は、機能的にも好適な溶解抑制剤である。ポリマーにおけるメシル基が不活性保護基である。この実施例でフォトレジストを調製するのに使用した材料を以下に重量部で示す。
エチルラクテート(溶剤) 83.97
10%が水素化され、9%がメシル基で保護された
ポリ(p−ビニルフェノール) 15.38
トリスアリールスルホニウムトリフレート 0.62
ポリメチルシロキサン(Union Carbide 社のSilwet L-7604) 0.03
【0063】
フォトレジストを、裸のシリコンウェーハ(HMDSで蒸気下塗りしたもの)に30秒間スピンコーティングしたのち、減圧ホットプレート上90℃で60秒間ソフトベーキングして、0.54ミクロン厚(Prometrix 膜厚モニタによる測定)の膜を得た。GCA0.35NAエキシマレーザステッパを用いて、格子模様をコーティングされたウェーハに異なる露光量で露光した。次に、界面活性剤(Shipley(登録商標)MF-702)を添加した0.21N 水酸化テトラメチルアンモニウムに35秒間浸漬することにより、ウェーハをただちに現像した。その結果、ポジトーン画像が形成し、その膜厚は露光量に反比例していた。レジスト膜の完全な浄去を可能にする線量は80mJ/cm2であることがわかった。非露光領域において10%の膜厚損失が見られた。ポジトーン画像を得るのに露光後ベーキングの必要がなかったことは有意である。
【0064】
実施例2
現像剤の強度を0.26N に増したことを除き、実施例1を繰り返した。得られた結果は、レジストの完全な浄去を可能にする線量が50mJ/cm2であったことを除き、実施例1の結果に類似していた。非露光領域において25%の膜厚損失が見られた。
【0065】
実施例3
溶解抑制剤としての酸不安定性エステルの配合への添加は、非露光膜の厚さの損失を最小限に抑えながらも、フォトレジストのコントラストおよび解像力を改良した。この実施例のフォトレジストを調製するのに使用した材料を以下に重量部で示す。
エチルラクテート(溶剤) 83.14
10%が水素化され、9%がメシル基で保護された
ポリ(p−ビニルフェノール) 14.68
tert−ブチルアセテートで保護されたトリヒドロキシ
フェニルエタン 0.74
トリスアリールスルホニウムトリフレート 0.59
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.82
ポリメチルシロキサン(Union Carbide 社のSilwet L-7604) 0.03
【0066】
フォトレジストを、裸のシリコンウェーハ(HMDSで蒸気下塗りしたもの)に30秒間スピンコーティングしたのち、減圧ホットプレート上110℃で60秒間ソフトベーキングして、0.54ミクロン厚(Prometrix 膜厚モニタによる測定)の膜を得た。GCA0.35NAエキシマレーザステッパを用いて、コーティングされたウェーハを、0.25μm までの異なる間隔で離れた線の対からなるマスキングアレイに対して種々の露光量で露光した。次に、ウェーハを減圧ホットプレート上90℃で60秒間ポストベーキングに付し、界面活性剤(Shipley(登録商標)MF-702)を添加した0.21N 水酸化テトラメチルアンモニウムに120秒間浸漬することによって現像した。その結果、ポジトーン画像が得られた。光学顕微鏡検査は、0.42μm 間隔の2本の線が25mJ/cm2の露光量で解像できたことを明らかにした。フォトレジストの非露光領域において13%の膜厚損失が見られた。
【0067】
実施例4
この実施例は、非露光膜の厚さの損失を最小限に抑えながらも、フォトレジストのコントラストおよび解像力を改良する、不活性保護基および酸不安定性保護基の両者を含有するポリマーの使用を例示する。
【0068】
下記の組成を重量部で有するフォトレジストを調製した。
エチルラクテート(溶剤) 83.96
10%が水素化され、5%がメシル基で保護され、
10%が tert−ブチルアセテートで保護された
ポリ(p−ビニルフェノール) 15.42
トリスアリールスルホニウムトリフレート 0.59
ポリメチルシロキサン(Union Carbide 社のSilwet L-7604) 0.03
【0069】
フォトレジストを、裸のシリコンウェーハ(HMDSで蒸気下塗りしたもの)に30秒間スピンコーティングしたのち、減圧ホットプレート上100℃で60秒間ソフトベーキングして、0.80ミクロン厚(Prometrix 膜厚モニタによる測定)の膜を得た。GCA0.35NAエキシマレーザステッパを用いて、コーティングされたウェーハを、0.25μm までの異なる間隔で離れた線の対からなるマスキングアレイに対して種々の露光量で露光した。次に、ウェーハを減圧ホットプレート上90℃で60秒間ポストベーキングに付し、界面活性剤(Shipley(登録商標)MF-702)を添加した0.26N 水酸化テトラメチルアンモニウムに120秒間浸漬することによって現像した。その結果、ポジトーン画像が得られた。光学顕微鏡検査は、0.36μm 間隔の2本の線が35mJ/cm2の露光量で解像できたことを明らかにした。フォトレジストの非露光領域において5%の膜厚損失が見られた。

Claims (6)

  1. (a)フェノール性ヒドロキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂バインダー、および
    (b)光酸発生剤化合物、
    を含むポジ型フォトレジスト組成物であって、
    該樹脂バインダーが、そのフェノール性ヒドロキシル基の従部分が、アルキルエステルまたはスルホニルエステル基である不活性保護基、および光酸不安定性基で保護されたものである、ポジ型フォトレジスト組成物。
  2. (a)フェノール性ヒドロキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂バインダー、
    (b)光酸不安定性基を含む溶解抑制剤化合物、および
    (c)光酸発生剤化合物、
    を含むポジ型フォトレジスト組成物であって、
    該樹脂バインダーが、そのフェノール性ヒドロキシル基の従部分が、スルホニルエステル基である不活性保護基、および光酸不安定性基で保護されたものである、ポジ型フォトレジスト組成物。
  3. 不活性保護基が、メタンスルホニルエステル、エタンスルホニルエステル、またはプロパンスルホニルエステル基を含む、請求項1または2に記載のフォトレジスト組成物。
  4. 不活性保護基がメシル基を含む、請求項1または2に記載のフォトレジスト組成物。
  5. 樹脂がポリ(ビニルフェノール)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
  6. 樹脂がノボラックである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
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