JP3759787B2 - 揮散性物質内包マイクロカプセルおよびその分散液 - Google Patents

揮散性物質内包マイクロカプセルおよびその分散液 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、揮散性物質の徐放性に極めて優れ、長期にわたる薬効を奏する揮散性物質を内包したマイクロカプセルおよびその分散液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、揮散性物質を内包したマイクロカプセルは、常温においてもその内包されている揮散性物質の放出が著しく、その結果、マイクロカプセル内の揮散性物質の含有量が急激に低下し、短時間でその放出量が低下してしまうという問題がある。また、未使用時において、内包された揮散性物質の保持性が不充分であるために、マイクロカプセルの保存期間が極めて短期間であるという問題を有している。
【0003】
このため、揮散性物質の保持性を向上させるために様々なマイクロカプセルが試みられている。例えば、特開平2−145383号公報において、香料、殺虫剤等の揮散性物質をガラス転移温度が50〜200℃の壁膜を用いて内包したマイクロカプセルが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような特徴を有するマイクロカプセルを用いても、内包した揮散性物質の保持性は充分ではなく、その徐放性は不充分であり、例えば、長期間にわたり揮散性物質の有する薬効を発揮することはできないという問題がある。
【0005】
本発明は、内包する揮散性物質の徐放性に優れ、長期間にわたって揮散性物質を放出させることのできる揮散性物質を内包したマイクロカプセルおよびその分散液の提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、芯部が殻部で被覆され、上記芯部が揮散性物質を含有するゲル状ポリウレタン樹脂で形成され、上記殻部がポリウレア樹脂で形成されている揮散性物質内包マイクロカプセルを第1の要旨とする。そして、上記揮散性物質内包マイクロカプセルが、水性媒体中に分散されている揮散性物質内包マイクロカプセル分散液を第2の要旨とする。さらに、上記揮散性物質内包マイクロカプセル分散液に、水溶性ポリウレタン樹脂、および、合成樹脂の水性エマルジョンの少なくとも一方を含有する揮散性物質内包マイクロカプセル分散液を第3の要旨とする。
【0007】
すなわち、本発明者らは、マイクロカプセルに内包される揮散性物質の放出量を抑制して長期間にわたって放出することのできるマイクロカプセルを得るために一連の研究を重ねた。その研究の過程で、芯−殻構造であるマイクロカプセルにおいて、揮散性物質を被包する殻部自身の機能を向上させるだけでは揮散性物質の長期にわたる放出能を得るのは困難であるという知見を得た。この知見にもとづき、殻部ではなく揮散性物質を内包する芯部の構成を中心にさらに研究を重ねた結果、芯部として揮散性物質をそのまま内包するのではなく、ゲル状のポリウレタン樹脂に揮散性物質を含有させると、その揮散性物質はゲル状ポリウレタン樹脂から徐々にしか放出されず、その結果、徐放性に優れたマイクロカプセルが得られることを見出し本発明に到達した。
【0008】
そして、上記揮散性物質としては、例えば、農薬、香料、植物精油があげられ、特に徐放性という点からイソチオシアン酸アリルを用いることが効果的である。
【0009】
さらに、上記揮散性物質内包マイクロカプセルを水性媒体中に分散させた分散液において、水溶性ポリウレタン樹脂、および、合成樹脂の水性エマルジョンの少なくとも一方を含有した分散液は、揮散性物質の優れた徐放性という点に関してより一層の向上が実現する。
【0010】
したがって、このような揮散性物質内包マイクロカプセルを水性媒体中に分散させた分散液、あるいは、この分散液にさらに水溶性ポリウレタン樹脂、および、合成樹脂の水性エマルジョンの少なくとも一方を含有した分散液は、紙製基材や布製基材等に、塗布、噴霧あるいは含浸させることにより広範囲の分野に利用することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0012】
本発明の揮散性物質内包マイクロカプセルは、芯部が殻部で被覆された芯−殻構造であり、上記芯部が揮散性物質を含有するゲル状ポリウレタン樹脂で形成され、上記殻部がポリウレア樹脂で形成されている。
【0013】
上記芯部のゲル状ポリウレタン樹脂に含有される揮散性物質は、その物質の有する融点、沸点の値にかかわらず、常温で揮散性を有するものであれば特に限定するものではない。具体的には、農薬、香料、植物精油等があげられる。
【0014】
上記農薬としては、ジメチル−2,2−ジクロロビニルホスフェート(DDVP)、o,o−ジメチル−o−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェート、ジメチルジカルベトキシエチルジチオホスフェート等の有機リン系殺虫剤、メチルイソチオシアネート、臭化メチル、クロルピクリン等のクン蒸剤、テレピン油、ピネン油等の誘引剤等があげられる。
【0015】
上記香料としては、各種天然香料、合成香料があげられ、その原料となるものとして、例えば、ブーケ、ローズオイル、グリーンフローラル、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ジャスミン、レモンオイル、各種ハーブ等があげられる。
【0016】
上記植物精油としては、薬効を奏するものとして、例えば、ヒノキオイル、ヒバオイル、イソチオシアン酸アリル、シダーオイル、月桃油、柑橘オイル、生姜オイル等があげられる。これらのなかでも、本発明に用いられる揮散性物質としては、徐放性という点からイソチオシアン酸アリルを用いることが効果的である。
【0017】
そして、本発明の揮散性物質内包マイクロカプセルは、芯部に含有される上記揮散性物質、あるいは上記揮散性物質を含む疎水性媒体中に、多官能性イソシアネート、水不溶性のポリオールおよび触媒を溶解して油相とし、これを乳化剤を添加した水(水相)中に乳化分散した後、油滴界面およびその内部で反応させることにより得られる。
【0018】
上記反応では、20〜40℃で0.5〜2時間程度で反応が完了し、従来に比べて極めて短時間および低温下で本発明の揮散性物質内包マイクロカプセルを製造することができる。
【0019】
まず、油相を構成する各成分について述べる。
【0020】
上記油相は、前記揮散性物質、あるいは前記揮散性物質を含む疎水性媒体と、多官能性イソシアネートと、水不溶性のポリオールと、触媒を用いて構成される。
【0021】
上記揮散性物質はそのまま用いてもよいが、上記のように疎水性媒体中に含有させてもよい。好ましくは、徐放性という点から、揮散性物質をそのまま用いることである。
【0022】
上記疎水性媒体としては、揮散性物質の揮発性防止剤として用いられ、例えば、安息香酸ベンジル、フタル酸ジオクチル等のエステル類、鉱物油類、綿実油類等の植物油類があげられる。さらには、これらに加えて、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、有色染料等の各種助剤を適宜に添加することができる。
【0023】
上記殻部およびゲル状の芯部を形成するために用いられる多官能性イソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等、さらには、上記多官能性イソシアネートのイソシアヌレート変性体、ビュレット変性体や、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールのようなポリオールとの付加物であるイソシアネートプレポリマー等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0024】
上記トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール以外のポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ポリオール、キシリレングリコール等の芳香族ポリオール、ハイドロキノン、カテコール等の多価フェノール、あるいはこれら多価フェノールとアルキレンオキシドとの縮合物、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールプレポリマー等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これらポリオールのなかでも、徐放性に優れた揮散性物質内包マイクロカプセルが得られるという点から、トリメチロールプロパンを用いることが好ましい。
【0025】
そして、上記多官能性イソシアネートのなかでも、無黄変型の揮散性物質内包マイクロカプセルを得るという点および経済的であるという点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0026】
上記多官能性イソシアネートとともに用いられる水不溶性のポリオールとしては、具体的には、ヒマシ油、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等のポリエステルポリオール等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これら水不溶性のポリオールのなかでも、反応性および徐放性という点からヒマシ油を用いることが好ましい。上記水不溶性のポリオールの配合量は、上記多官能性イソシアネート100重量部(以下「部」と略す)に対して10〜300部に設定することが好ましく、特に好ましくは50〜200部である。この水不溶性のポリオールの配合量が10部未満、あるいは300部を超えると、すなわち、上記配合量の範囲外では、目的とする芯部がゲル状の揮散性物質内包マイクロカプセルを得ることが困難となる傾向がみられる。そして、これら水不溶性のポリオールにおいては、水酸基を少なくとも2個有するものを使用する必要がある。すなわち、水酸基が1個では架橋せずに芯部がゲル化状態にはならないからである。また、水に溶解するポリオールを用いるとマイクロカプセルの生成が困難となり使用には適さない。このような点から、上述の水不溶性のポリオールが使用される。
【0027】
さらに、上記多官能性イソシアネートおよび水不溶性のポリオールとともに用いられる触媒としては、有機スズ化合物が用いられ、例えば、トリ−n−ブチルチンアセテート、n−ブチルチントリクロライド、ジメチルチンジクロライド、ジブチルチンジラウレート、トリメチルチンハイドロオキサイド等があげられる。これら触媒はそのまま用いてもよいし、酢酸エチル等の溶剤に、濃度が0.1〜20重量%(以下「%」と略す)となるように溶解して、油相中、イソシアネート成分である多官能性イソシアネート100部に対して、固形分として0.01〜1部となるよう添加してもよい。このように、上記触媒の配合量は、そのまま、あるいは溶剤に溶解した状態のいずれの場合においても、固形分として、多官能性イソシアネート100部に対して0.01〜1部となるように設定することが好ましく、特に好ましくは0.05〜0.5部である。すなわち、触媒の配合量が、0.01部未満のように少な過ぎると、芯部のゲル状ポリウレタン樹脂が形成されるまでに、多官能性イソシアネートが殻部の形成反応に使用されて先に殻部が形成されてしまい、逆に1部を超えると、芯部の形成が極端に速くなり、目的とする揮散性物質内包マイクロカプセルが得られ難いという傾向がみられるからである。
【0028】
上記触媒を添加することにより、油相中の多官能性イソシアネートと水不溶性のポリオールとの反応が、多官能性イソシアネートと、水相中の水との反応よりも速やかに反応する。したがって、芯−殻構造のマイクロカプセルの形成において、芯部が、揮散性物質を含有するゲル状のポリウレタン樹脂に形成され、その芯部の外周(殻部)がポリウレア樹脂に形成されることから、本発明の特殊な構造を有する揮散性物質内包マイクロカプセルが得られる。
【0029】
なお、上記各成分から構成される油相中には、溶剤を含有しない方が好ましい。すなわち、溶剤を含有するとつぎのような問題が生じるからである。▲1▼溶剤自身の有する臭気により、製品として好ましいものが得られない。▲2▼水溶性溶剤では、マイクロカプセル形成時に水溶性溶剤が水相に移行し、この移行に伴い、揮散性物質も油相から水相に移行してしまい目的とする揮散性物質内包マイクロカプセルを得るのが困難となるからである。
【0030】
ついで、上記油相を乳化分散させる水相について述べる。
【0031】
上記水相に添加される乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の各水溶性高分子物質、各種界面活性剤を用いることができる。
【0032】
上記アニオン性高分子物質としては、アラビアゴム、アルギン酸等の天然高分子、カルボキシメチルセルロース、硫酸化セルロース、フタル化ゼラチン等の半合成高分子、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スチレンスルホン酸系重合体および共重合体、無水マレイン酸系共重合体等の合成高分子があげられる。
【0033】
また、上記カチオン性高分子物質としては、カチオン化デンプン等があげられる。
【0034】
上記ノニオン性高分子物質としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム等があげられ、上記両性高分子物質としては、ゼラチンがあげられる。
【0035】
さらに、上記各種界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型等の両性界面活性剤があげられる。
【0036】
そして、これら乳化剤は、一般に、水に対して、水溶液濃度が1〜20%となるよう添加して調製し、水相とする。
【0037】
本発明の揮散性物質内包マイクロカプセル分散液は、例えば、つぎのようにして製造される。すなわち、上述の各成分を用いて、油相液および水相をそれぞれ調製する。そして、上記調製した油相液を、上記水相に加え、所定の条件で攪拌し反応させることにより、芯部が殻部で被覆された芯−殻構造で、しかも、上記芯部が揮散性物質を含有するゲル状ポリウレタン樹脂で形成され、上記殻部がポリウレア樹脂で形成された特殊な揮散性物質内包マイクロカプセルが分散された揮散性物質内包マイクロカプセル分散液が製造される。つづいて、この分散液から所定の方法によって水分を分離することにより揮散性物質内包マイクロカプセルが得られる。
【0038】
上記のようにして得られた本発明の揮散性物質内包マイクロカプセル分散液において、分散液中の揮散性物質内包マイクロカプセルの含有量は、後述の各種基材に塗布、噴霧および含浸させて用いる際の期待する薬効、徐放性を考慮して、分散液中2〜70%の範囲に設定することが好ましい。
【0039】
上記油相液と水相との混合割合は、重量比で、油相1に対して水相0.5〜50となるように設定することが好ましい。特に好ましくは油相1に対して水相0.8〜1.5である。すなわち、油相1に対して水相が0.5未満では、水を連続相とすることが困難である。また、水相が50を超えると、マイクロカプセル濃度の低過ぎる製品しか得られないという傾向がみられるからである。
【0040】
上記攪拌条件としては、一般に、500〜5000rpmに設定され、特に好ましくは1000〜3000rpmである。さらに、上記反応条件としては、前述のように、20〜40℃で0.5〜2時間程度の短時間に設定される。
【0041】
また、揮散性物質内包マイクロカプセル分散液中から水分を分離して揮散性物質内包マイクロカプセルを得る方法としては、特に限定するものではなく、従来公知の方法、例えば、遠心分離法、加圧濾過法、減圧吸引濾過法等があげられる。さらに、上記分離により得られた揮散性物質内包マイクロカプセルを、従来公知の方法、例えば、加熱乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等によって適宜に乾燥してもよい。
【0042】
このように、特殊な揮散性物質内包マイクロカプセルが得られる生成機構について、本発明者らは、一連のマイクロカプセルの研究により得た知見から、つぎのように推察している。すなわち、上記油相を構成する成分の一つである触媒の存在により、この触媒を含有する油相液を水相に添加し攪拌すると、油相中の多官能性イソシアネートと水不溶性のポリオールとの反応が、多官能性イソシアネートと水との反応よりも速やかに反応する。このため、芯−殻構造のマイクロカプセルの形成において、まず、芯部となる揮散性物質を含有するゲル状のポリウレタン樹脂が反応生成し、その後、その表面で、多官能性イソシアネートと水とが反応してポリウレア樹脂が反応生成して殻部が形成されるものと考えられる。
【0043】
このようにして得られる本発明の揮散性物質内包マイクロカプセルの模式図を図1に示す。図示のように、芯部である揮散性物質を含有するゲル状ポリウレタン樹脂1の外周を、ポリウレア樹脂製の殻部2によって被包された、芯−殻構造となっている。また、本発明の揮散性物質内包マイクロカプセルの粒子径については特に限定するものではないが、一般に、0.5〜500μmの範囲に設定される。
【0044】
本発明の揮散性物質内包マイクロカプセルにおいて、芯部がゲル化状態であることは、得られた揮散性物質内包マイクロカプセルの断面を電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。また、得られた揮散性物質内包マイクロカプセルを用いて溶媒により残存水不溶性ポリオールの抽出操作を行った結果、抽出物が得られないことから、水不溶性のポリオールが多官能性イソシアネートと完全に反応し、内部がゲル化状態となっていると判断される。さらに、揮散性物質と、多官能性イソシアネートと、水不溶性のポリオールと、触媒を、20〜40℃で混合し、0.5〜2時間放置すると流動性がなくなりゲル化状態となることからも推察される。
【0045】
つぎに、本発明の揮散性物質内包マイクロカプセル分散液に、バインダー成分として、水溶性ポリウレタン樹脂、および、合成樹脂の水性エマルジョンの少なくとも一方を配合することにより、本発明の課題である揮散性物質の徐放性に関して、より一層の向上効果が得られ、さらに長期間にわたって揮散性物質を放出させることができるマイクロカプセル含有分散液が得られる。
【0046】
上記水溶性ポリウレタン樹脂としては、下記の(B1)および(B2)の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0047】
(B1)下記の(a1)と(b1)とを反応させてなる反応生成物の、末端イソシアネート基をブロック化剤でブロックした熱反応水溶性ポリウレタン樹脂。
(a1)ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくとも一方。
(b1)ジイソシアネート成分。
(B2)下記の(a2)と(b2)とを反応させてなる反応生成物の、末端イソシアネート基を、水およびアミンの少なくとも一方で架橋してなる水溶性ポリウレタン樹脂。
(a2)ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくとも一方。
(b2)ジイソシアネート成分。
【0048】
まず、熱反応水溶性ポリウレタン樹脂(B1)について述べる。
【0049】
上記(a1)のポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック重合物、またはこれらのランダム付加重合物、グリセリンのプロピレンオキシド、エチレンオキシドあるいはそのランダム付加重合物、プロピレンオキシドの付加重合物等があげられる。
【0050】
上記(a1)のポリエステルポリオールとしては、無水マレイン酸と1,4−ブタンジオールとのポリエステルポリオール、無水マレイン酸と1,6−ヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等があげられる。
【0051】
上記(b1)であるイソシアネート成分としては、脂肪族ジイソシアネートが黄変防止の点から好ましく用いられ、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等があげられる。
【0052】
さらに、上記(B1)における、上記(a1)と(b1)とを反応させてなる反応生成物の、末端イソシアネート基をブロックするブロック化剤としては、無水重亜硫酸ソーダ、メチルエチルケトオキシム等があげられる。
【0053】
上記熱反応水溶性ポリウレタン樹脂(B1)は、例えば、つぎのようにして得られる。すなわち、上記(a1)と(b1)とを90〜100℃で反応させ(末端イソシアネート基が約3〜4%となるまで)、この未反応の末端イソシアネート基を上記ブロック化剤で封鎖し、冷却した後、必要に応じて活性剤を添加する。つぎに、これに水を添加して乳化体とする。
【0054】
このようにして得られる熱反応水溶性ポリウレタン樹脂(B1)としては、熱反応性の点から、重量平均分子量が5000〜2万のものが好ましい。
【0055】
つぎに、水溶性ポリウレタン樹脂(B2)について述べる。
【0056】
上記(a2)のポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドプロピレンオキシドのランダム付加重合物、あるいはこれらのランダム付加重合物、プロピレンオキシドの付加重合物、ビスフェノールAのエチレンオキシドの付加重合物、ビスフェノールAのプロピレンオキシドの付加重合物、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン等があげられる。
【0057】
上記(a2)のポリエステルポリオールとしては、ブチレンアジペート、ヘキシレンカーボネート、エチレンテレフタレート等があげられる。
【0058】
上記(b2)であるイソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート−80(TDI−80)、HMDI、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、IPDI等があげられる。
【0059】
さらに、上記(B2)における、上記(a2)と(b2)とを反応させてなる反応生成物の、末端イソシアネート基を架橋させるアミンとしては、エチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン等があげられる。
【0060】
上記水溶性ポリウレタン樹脂(B2)は、例えば、つぎのようにして得られる。すなわち、上記(a2)に対して、(b2)を溶媒中で反応させ(70〜75℃)、所望の末端イソシアネート基量まで反応させる。つぎに、冷却し、必要に応じて活性剤を添加し、さらに大量の水を添加して、上記末端イソシアネート基を水架橋させる。このときジアミンを添加して効率的に架橋させることもできる。
【0061】
このようにして得られる水溶性ポリウレタン樹脂(B2)としては、徐放性の点から、重量平均分子量が3万以上のものが好ましい。さらに好ましくは重量平均分子量が10万以上のものである。
【0062】
そして、本発明における、揮散性物質内包マイクロカプセル分散液に配合する水溶性ポリウレタン樹脂として、上記(B1)および(B2)のうち、徐放性という点から、特に(B1)を用いることが好ましい。上記(B1)成分については、ほかにバインダー力を高めるために、前記の有機スズ化合物をマイクロカプセル分散液に対し0.5〜1.0%添加することが好ましい。
【0063】
本発明において、上記水溶性ポリウレタン樹脂を含有する分散液は、先に述べた揮散性物質内包マイクロカプセルの分散液に、上記(B1)および(B2)の少なくとも一方を添加することにより得られる。
【0064】
上記(B1)および(B2)の少なくとも一方の添加量は、揮散性物質内包マイクロカプセルの分散液の固形分に対して、固形分で30〜100%、より好ましくは50〜80%の割合に設定される。
【0065】
上記合成樹脂の水性エマルジョンとしては、例えば、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル−エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−マレート共重合樹脂、アクリル−エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等の水性エマルジョンがあげられる。これら合成樹脂は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、除放性という点から、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂の水性エマルジョンを用いることが好ましい。
【0066】
上記合成樹脂の水性エマルジョンは、濃度30〜60%のものとして使用され、その添加量は、揮散性物質内包マイクロカプセルの分散液の固形分に対して、固形分比で、30〜100%に設定することが好ましく、より好ましくは50〜80%の割合に設定される。
【0067】
本発明において、揮散性物質内包マイクロカプセル自身をそのまま様々な分野に利用してもよいし、揮散性物質内包マイクロカプセル分散液(水溶性ポリウレタン樹脂、および、合成樹脂の水性エマルジョンの少なくとも一方を含有する分散液の場合を含む)として、この分散液を、例えば、紙製基材や布製基材に、塗布、噴霧あるいは含浸させてもよい。そして、本発明の揮散性物質内包マイクロカプセルは、揮散性物質の徐放性に優れているため、芳香(香料、植物精油)、消臭、抗菌(植物精油)、防虫、忌避(農薬)といった薬効を、従来にもまして、長期間にわたって持続させることができる。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、揮散性物質を含有するゲル状ポリウレタン樹脂からなる芯部が、ポリウレア樹脂からなる殻部で被覆された特殊な芯部構造を有する揮散性物質内包マイクロカプセルである。このような特殊な芯部構造をとることにより、ゲル状ポリウレタン樹脂に含有された揮散性物質はポリウレタン樹脂から徐々にしか放出されず、したがって、揮散性物質の殻部の通過量が抑制され、その結果、優れた徐放性を備えるようになる。このため、従来では、揮散性物質の含有量の急激な低下により、短時間の徐放効果しか得られなかったが、本発明の揮散性物質内包マイクロカプセルでは、長期間にわたって、内包された揮散性物質の徐放効果が発揮される。しかも、この揮散性物質内包マイクロカプセルは、揮散性物質の短時間での放出量が少ないため、その保存性にも優れている。したがって、本発明の揮散性物質内包マイクロカプセルは、長期にわたっての薬効が要求される農薬、香料、植物精油等の揮散性物質を内包したマイクロカプセルとして様々な分野に、種々の形態で使用に供される。
【0069】
さらに、上記揮散性物質内包マイクロカプセルが水性媒体中に分散された分散液は、種々の基材に、塗布、噴霧あるいは含浸等させて用いることができ、広範囲の分野で優れた徐放性を有効に生かすことができる。
【0070】
特に、上記揮散性物質内包マイクロカプセルを水性媒体中に分散させた分散液において、さらに水溶性ポリウレタン樹脂、および、合成樹脂の水性エマルジョンの少なくとも一方が配合された分散液は、揮散性物質の長期にわたる優れた徐放性に関してより一層の向上効果が実現する。
【0071】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0072】
【実施例1】
イソチオシアン酸アリル100部(揮散性物質)、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)120部(イソシアネート成分)、ジブチルチンジラウレート(触媒)の10%酢酸エチル溶液1部、ヒマシ油120部(水不溶性のポリオール)を混合溶解して油相液を調製した。ついで、この油相液を、25℃の部分ケン化ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製、ゴーセノールKM−11、ケン化度80%)の10%水溶液350部に加え、オートホモミキサー(特殊機化工業社製)により1000rpmで5分間攪拌することにより乳化液を得た。引き続き、この乳化液を、25℃で1.5時間、100〜500rpmで攪拌し反応を完結させることによりイソチオシアン酸アリル内包のマイクロカプセルを得た。このマイクロカプセルの粒子を遠心分離により取り出し、電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−T300)で観察したところ、粒子径5μmの粒子が観察された。さらに、このマイクロカプセルを割ったものを電子顕微鏡で観察したところ、芯部がゲル化状態であることが確認された。このことから、イソチオシアン酸アリルを含有するゲル状のポリウレタン樹脂(芯部)が、ポリウレア樹脂製の殻部によって被包された芯−殻構造をとる特殊マイクロカプセルであることがわかる(図1参照)。このイソチオシアン酸アリル内包のマイクロカプセルの電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0073】
また、得られたイソチオシアン酸アリル内包マイクロカプセルを用い、テトラヒドロフランにて残存ヒマシ油(水不溶性のポリオール)の抽出操作を行ったところ、ヒマシ油は検出されなかった。この結果からも、ヒマシ油が芯部に存在せず、イソシアネート成分と完全に反応しており、芯部がゲル状のポリウレタン樹脂であることがわかる。
【0074】
さらに、上記調製した油相液を、25℃で1.5時間そのまま放置したところ、流動性がなくなりゲル化状態となった。
【0075】
これらのことから、実施例1で得られたイソチオシアン酸アリル内包マイクロカプセルの、芯部はゲル化していることは明らかである。
【0076】
【実施例2〜6】
揮散性物質、イソシアネート成分、触媒および水不溶性のポリオールとして、下記の表1に示す材料を同表に示す割合で用い、実施例1と同様にして目的とする揮散性物質内包マイクロカプセルを作製した。そして、得られた揮散性物質内包マイクロカプセルを遠心分離により取り出して、実施例1と同様、電子顕微鏡の観察により粒子径を測定し下記の表1に併せて示した。
【0077】
また、実施例1と同様にしてマイクロカプセルを割り電子顕微鏡写真を撮ったところ、いずれも芯部がゲル化していることが確認された。さらに、上記と同様にして、水不溶性のポリオールの抽出操作、および油相液のみを反応させたところ、実施例1と同様の結果が得られた。これらのことから、実施例2〜6の揮散性物質内包マイクロカプセルの、芯部はゲル化していることは明らかである。
【0078】
【表1】
Figure 0003759787
【0079】
【比較例1】
実施例1で油相液を調製する際に、触媒であるジブチルチンジラウレートを用いなかった。それ以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた乳化液を遠心分離したところ、粒子が分離せずマイクロカプセルは得られなかった。
【0080】
【比較例2】
実施例1で油相液を調製する際に、水不溶性のポリオールであるヒマシ油、および触媒であるジブチルチンジラウレートを用いなかった。それ以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた乳化液を遠心分離したところ、マイクロカプセルは得られなかった。さらに、この乳化液を、25℃で8時間攪拌して反応を完結させることにより、イソチオシアン酸アリルを内包したマイクロカプセルを得た。このマイクロカプセルの粒子を遠心分離により取り出し、実施例1と同様にして電子顕微鏡で観察したところ、粒子径4μmの粒子が観察された。そして、このマイクロカプセルを割ったものを電子顕微鏡で観察したところ、芯部にイソチオシアン酸アリルのみが存在しており、単に、イソチオシアン酸アリルが内包された芯−殻構造をとるマイクロカプセルであることがわかる。このマイクロカプセルの電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0081】
また、上記油相液を、25℃で10時間そのまま放置したが、ゲル化状態とはならず液状のままであった。
【0082】
これらのことから、比較例2で得られたマイクロカプセルは、芯部がイソチオシアン酸アリルのみである従来のマイクロカプセルであることが明らかである。
【0083】
【比較例3】
実施例2で油相液を調製する際に、水不溶性のポリオールであるヒマシ油、および触媒であるトリメチルチンハイドロオキサイドを用いなかった。それ以外は実施例2と同様の操作を行った。得られた乳化液を遠心分離したところ、マイクロカプセルは得られなかった。さらに、この乳化液を、25℃で8時間攪拌して反応を完結させることにより、レモンオイルを内包したマイクロカプセルを得た。このマイクロカプセルの粒子を遠心分離により取り出し、実施例2と同様にして電子顕微鏡で観察したところ、粒子径5μmの粒子が観察された。そして、このマイクロカプセルを割ったものを電子顕微鏡で観察したところ、芯部にレモンオイルのみが存在しており、単に、レモンオイルが内包された芯−殻構造をとるマイクロカプセルであることがわかる。
【0084】
また、上記油相液を、25℃で10時間そのまま放置したが、ゲル化状態とはならず液状のままであった。
【0085】
これらのことから、比較例3で得られたマイクロカプセルは、芯部がレモンオイルのみである従来のマイクロカプセルであることが明らかである。
【0086】
このようにして得られた各マイクロカプセルが分散した乳化液を、それぞれ5個のシャーレに、各1gずつ採取した。そして、これらを25℃で所定日数放置した後、シャーレ内の乳化液を有機溶媒(テトラヒドロフラン)で全量抽出してHPLC法(高速液体クロマトグラフィー)で、内包された揮散性物質の含有量を測定した。また、調製直後の各乳化液を用い、上記と同様にしてHPLC法により内包された揮散性物質の含有量を測定したところ、理論上の含有量と上記実測値とが一致した。その各含有量を下記の表2に示す。さらに、各経過日数毎に揮散性物質の含有量を測定し、その室温放置での残存率を算出した。その経日変化を図4に示した。図4の経過日数−残存率を表す曲線図において、曲線Aは実施例1、曲線Bは実施例2、曲線Cは実施例3、曲線Dは実施例4、曲線Eは実施例5、曲線Fは実施例6、曲線Gは比較例2、曲線Hは比較例3である。
【0087】
【表2】
Figure 0003759787
【0088】
上記図4に示す曲線図から、従来の揮散性物質内包マイクロカプセルでは、1週間経過後には、残存率は30%を下回り、20日経過後には揮散性物質は殆ど放出されてしまった。これに比べて実施例の揮散性物質内包マイクロカプセルでは、30日を経過しても、実施例1〜6は残存率が50%を超えており、徐放性に優れていることが明らかである。
【0089】
つぎに、揮散性物質内包マイクロカプセル分散液に水溶性ポリウレタン樹脂が配合された例について述べる。
【0090】
【実施例7】
〔水溶性ポリウレタン樹脂の製造〕
グリセリンに、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを付加重合させたもの、および、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのランダム付加重合体の混合物(重量比20:80)を、HMDIと反応させて(90〜100℃)ポリウレタン化し、末端イソシアネート基を、メチルエチルケトオキシム(MEKO)でブロックし、さらに冷却して水を添加して熱反応水溶性ポリウレタン樹脂(重量平均分子量1万5千)が分散した分散体(B1)を作製した。
【0091】
〔揮散性物質内包マイクロカプセル分散液の製造〕
つぎに、前記実施例1の揮散性物質内包マイクロカプセルを含有した分散液(マイクロカプセル固形分20%)100部に対して、上記熱反応水溶性ポリウレタン樹脂が分散した分散体(B1)を40部添加し、さらにジブチルチンジラウレートを0.8%添加し、攪拌することによって目的とする分散液を得た。この分散液の固形分濃度は25%であった。
【0092】
【実施例8〜12】
まず、下記に示す製法に従って、水溶性ポリウレタン樹脂α〜εを作製した。
【0093】
〔水溶性ポリウレタン樹脂α〕
グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させたもの、および、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのランダム付加重合体の混合物(重量比20:80)を、HMDIと反応させて(90〜100℃)ポリウレタン化し、末端イソシアネート基を、無水重亜硫酸ソーダでブロックし、さらに冷却して水を添加して水溶性ポリウレタン樹脂αが分散した分散体α(B1)を作製した。
【0094】
〔水溶性ポリウレタン樹脂β〕
無水マレイン酸と1,6−ヘキサンジオールとのポリエステルポリオールと、ポリエチレングリコールの混合物(重量比5:1)を、HMDIと反応させて(90〜100℃)ポリウレタン化し、末端イソシアネート基を、無水重亜硫酸ソーダでブロックし、さらに冷却して水を添加して水溶性ポリウレタン樹脂βが分散した分散体β(B1)を作製した。
【0095】
〔水溶性ポリウレタン樹脂γ〕
グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させたもの、および、グリセリンにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドをランダム付加重合させたもの(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの重量比13:87)の混合物(重量比50:50)を、HMDIと反応させて(90〜100℃)ポリウレタン化し、末端イソシアネート基を、無水重亜硫酸ソーダでブロックし、さらに冷却して水を添加して水溶性ポリウレタン樹脂γが分散した分散体γ(B1)を作製した。
【0096】
〔水溶性ポリウレタン樹脂δ〕
ブチレンアジペートと、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのランダム付加重合体と、ポリカプロラクトンの混合物(重量比12:4:1)を、HMDIと反応させて(90〜100℃)ポリウレタン化し、水を添加して、末端イソシアネート基の一部をアミノエチルスルホン酸ソーダと反応させ、さらに冷却して水溶性ポリウレタン樹脂δが分散した分散体δ(B2)を作製した。
【0097】
〔水溶性ポリウレタン樹脂ε〕
ポリテトラメチレングリコールと、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのランダム付加重合体と、ポリエチレングリコールと、1,4−ブタンジオールと、トリメチロールプロパンの混合物(重量比50:4:4:4:1.5)を、水添MDIと反応させて(90〜100℃)ポリウレタン化し、さらに活性剤(ジスチレン化フェノールのエチレンオキシド付加物)を固形分100部に対して5部添加して、ついで、大量の水を添加し乳化させ、末端イソシアネート基をエチレンジアミンで架橋させて水溶性ポリウレタン樹脂εが分散した分散体ε(B2)を作製した。
【0098】
前記実施例2〜6で作製した各揮散性物質内包マイクロカプセル分散液(マイクロカプセル固形分20%)100部に対して、上記各水溶性ポリウレタン樹脂α〜εが分散した分散体α〜εを固形分が10部となるよう40部添加した。各実施例8〜12に対して用いた水溶性ポリウレタン樹脂α〜ε(分散体α〜ε)の組み合わせを、各水溶性ポリウレタン樹脂α〜εの重量平均分子量とともに下記の表3に示す。なお、実施例8〜10に関しては、上記分散体を添加した後、さらにジブチルチンジラウレートを0.8%添加し、攪拌することによって目的とする揮散性物質内包マイクロカプセル分散液を得た。上記分散液の固形分濃度は25%であった。
【0099】
【表3】
Figure 0003759787
【0100】
つぎに、このようにして得られた各マイクロカプセル分散液を、前記実施例1〜6および比較例2〜3の評価方法と同様にして所定日数放置し、各経過日数毎に揮散性物質の含有量を測定し、その室温放置での残存率を算出した。その経日変化を図5に示した。図5の経過日数−残存率を表す曲線図において、曲線A′は実施例7、曲線B′は実施例8、曲線C′は実施例9、曲線D′は実施例10、曲線E′は実施例11、曲線F′は実施例12である。
【0101】
上記図5に示す曲線図から、各分散液にさらに水溶性ポリウレタン樹脂を配合することにより、徐放性がより一層向上していることは明らかである。実際に、30日経過後、実施例7〜12では、揮散性物質の残存率は全て60%を超えていた。
【0102】
【実施例13】
実施例8において、分散体αの配合量を分散体αの固形分が20部となるように変えた。それ以外は実施例8と同様にして揮散性物質内包マイクロカプセル分散液を得た。
【0103】
このようにして得られたマイクロカプセル分散液を、前記実施例7〜12の評価方法と同様にして所定日数放置し、各経過日数毎に揮散性物質の含有量を測定し、その室温放置での残存率を算出した。その経日変化を確認すると、実施例13は、上記実施例7〜12の水溶性ポリウレタン樹脂が配合された各分散液と同様、徐放性がより一層向上していた。実際に、30日経過後、実施例13では、揮散性物質の残存率は80%を超えていた。
【0104】
つぎに、揮散性物質内包マイクロカプセル分散液に、合成樹脂の水性エマルジョンが配合された例について述べる。
【0105】
【実施例14】
前記実施例1の揮散性物質内包マイクロカプセルを含有した分散液(マイクロカプセル固形分20%)100部に対して、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂の水性エマルジョン(濃度52%、ヘキスト合成社製「モビニール173E」)を固形分が10部となるように19.2部添加した。この分散液の固形分濃度は25%であった。
【0106】
このようにして得られたマイクロカプセル分散液を、前記実施例7〜12の評価方法と同様にして所定日数放置し、各経過日数毎に揮散性物質の含有量を測定し、その室温放置での残存率を算出した。その経日変化を、前記実施例7〜12とともに図5に示した。図5の経過日数−残存率を表す曲線図において、曲線Jが実施例14である。図5に示された曲線Jは、上記実施例7〜12の水溶性ポリウレタン樹脂が配合された各分散液と同様、徐放性がより一層向上していることは明らかである。実際に、30日経過後、実施例14では、揮散性物質の残存率は80%を超えていた。
【0107】
【実施例15】
実施例14において、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂の水性エマルジョンの添加量を、その固形分が20部となるように変えた。それ以外は実施例14と同様にして揮散性物質内包マイクロカプセル分散液を作製した。
【0108】
このようにして得られたマイクロカプセル分散液を、前記実施例14の評価方法と同様にして所定日数放置し、各経過日数毎に揮散性物質の含有量を測定し、その室温放置での残存率を算出した。その経日変化を確認すると、実施例15は、上記実施例7〜13の水溶性ポリウレタン樹脂が配合された各分散液および実施例14と同様、徐放性がより一層向上していた。実際に、30日経過後、実施例15では、揮散性物質の残存率は80%を超えていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の揮散物質内包マイクロカプセルの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】実施例1で作製した揮散物質内包マイクロカプセルの粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例2で作製した従来の揮散物質内包マイクロカプセルの粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】揮散性物質の残存率と経過日数の関係を表す曲線図である。
【図5】水溶性ポリウレタン樹脂および合成樹脂水性エマルジョンを配合した分散液における、揮散性物質の残存率と経過日数との関係を表す曲線図である。
【符号の説明】
1 ゲル状ポリウレタン樹脂
2 ポリウレア樹脂製の殻部

Claims (6)

  1. 芯部が殻部で被覆され、上記芯部が揮散性物質を含有するゲル状ポリウレタン樹脂で形成され、上記殻部がポリウレア樹脂で形成されていることを特徴とする揮散性物質内包マイクロカプセル。
  2. 揮散性物質が、農薬、香料または植物精油である請求項1記載の揮散性物質内包マイクロカプセル。
  3. 揮散性物質がイソチオシアン酸アリルである請求項1記載の揮散性物質内包マイクロカプセル。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の揮散性物質内包マイクロカプセルが、水性媒体中に分散されていることを特徴とする揮散性物質内包マイクロカプセル分散液。
  5. 分散液中に、水溶性ポリウレタン樹脂、および、合成樹脂の水性エマルジョンの少なくとも一方を含有する請求項4記載の揮散性物質内包マイクロカプセル分散液。
  6. 水溶性ポリウレタン樹脂が、下記の(B1)および(B2)の少なくとも一方である請求項5記載の揮散性物質内包マイクロカプセル分散液。
    (B1)下記の(a1)と(b1)とを反応させてなる反応生成物の、末端イソシアネート基をブロック化剤でブロックした熱反応水溶性ポリウレタン樹脂。
    (a1)ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくとも一方。
    (b1)ジイソシアネート成分。
    (B2)下記の(a2)と(b2)とを反応させてなる反応生成物の、末端イソシアネート基を、水およびアミンの少なくとも一方で架橋してなる水溶性ポリウレタン樹脂。
    (a2)ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくとも一方。
    (b2)ジイソシアネート成分。
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