JP2021053594A - マイクロカプセル、マイクロカプセル組成物及びその製造方法、並びに、柔軟剤及び洗剤 - Google Patents

マイクロカプセル、マイクロカプセル組成物及びその製造方法、並びに、柔軟剤及び洗剤 Download PDF

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優樹 中川
田中 智史
Tomohito Tanaka
智史 田中
俊英 芳谷
Shunei Yoshitani
俊英 芳谷
三ツ井 哲朗
Tetsuro Mitsui
哲朗 三ツ井
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Abstract

【課題】生分解性を有し、水分存在下における経時での内包成分の内包安定性に優れたマイクロカプセル、マイクロカプセル組成物及びその製造方法、並びに柔軟剤及び洗剤を提供する。【解決手段】コア部とコア部を内包するシェル部とを含み、シェル部は、生分解性ポリマーを含み、かつ、架橋構造を有し、生分解性ポリマーは、3官能以上のポリオール及び炭素数6〜20のジカルボン酸の脱水縮合物である脂肪族ポリエステルを含む、マイクロカプセル、マイクロカプセル組成物及びその製造方法、並びに、柔軟剤及び洗剤である。【選択図】なし

Description

本開示は、マイクロカプセル、マイクロカプセル組成物及びその製造方法、並びに、柔軟剤及び洗剤に関する。
近年、マイクロカプセルは、香料、染料、蓄熱材、医薬品成分などの機能性材料を内包して保護すること、機能性材料を刺激に応答して放出させること等の点で、新たな価値を顧客に提供できる可能性があることから注目されている。
香料をマイクロカプセルに内包する形態では、例えば、香料が内包されたマイクロカプセル(以下、香料カプセル又は香料マイクロカプセルともいう。)を柔軟剤と混合することで、洗濯後の衣類に香りを付与することができる。即ち、柔軟剤を使用して衣服を洗濯することで、柔軟剤に含まれる香料カプセルが衣服に付着し、圧力等の外部刺激により付着した香料カプセルが破壊した際、内包された香料が放出され、香料による香りを生じさせることができる。また、衣服に付着した香料カプセルから香料が徐々に放出(徐放)されることで、香料による香りを持続的に生じさせることも可能である。
近年では、香料カプセルに用いられるシェル材として、アルデヒドとアミンとの反応生成物(例えばメラミンホルムアルデヒド樹脂)が主な成分とされている。
一方、最近では環境面及び人体への安全性の面から、石油系原料に代えて生物由来の材料を用いることが検討されている。マイクロカプセルの作製に用いる材料においても例外ではなく、マイクロカプセルの形態をなすシェル(いわゆるカプセル壁)の形成に石油系原料を用いず、生物由来の物質を用いることに対する要望が高まっている。
生物由来の物質を用いる例として、例えばゼラチンは、一般的に生分解性ポリマーとして知られている。例えば、コア材料として香料を含み、外側シェル材であるゼラチンにグルタルアルデヒドを添加して形成した外側シェルと、内側シェル材をポリウレアとした多層マイクロカプセルによるコア/多層カプセルシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、カプセルシェルがポリエステルを含み、カプセルコアが水溶性殺有害生物剤及び水を含むマイクロカプセルが開示され、ポリエステルとして、ジオール及びポリオールから選択されるアルコール及び二価及び多価カルボン酸から選択される酸成分を重合形態で含むことが記載されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第6250055号公報 特開2019−504080号公報
上記のように生分解性を有するポリマーを用いたマイクロカプセルは提案されている。
しかしながら、薬剤、香料等の内包成分(以下、内包物ともいう)を内包したマイクロカプセルは、水分が存在する環境下での形状保持性、即ち、水分の存在下で内包成分を内包状態で安定的に保持することができる性質に欠ける傾向がある。この傾向は、水と水以外の界面活性剤を含む液体の存在下においてより顕著に現れる。内包成分がマイクロカプセル中に内包状態のまま安定的に保持されないと、水を用いた用途への適用は困難となる。
例えば、香料等の成分を内包したマイクロカプセルを柔軟剤等の水性液体に混合して用いる使用態様では、内包成分の内包状態を安定的に維持し難い。結果、経時で内包成分がカプセル外に漏れ出てしまい、所望とする特性を発現し得ないという現象が想定される。
このように、水分の存在下に置かれたマイクロカプセルは、コア部をなす内包成分を内包するシェル部のバリア機能が低下しやすく、内包成分を安定的にシェル部内に維持できない課題がある。
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、生分解性を有し、水分存在下における経時での内包成分の内包安定性に優れたマイクロカプセル、並びに、マイクロカプセル組成物及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、衣料への香りの安定的な付与が行える柔軟剤及び洗剤を提供することにある。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> コア部とコア部を内包するシェル部とを含み、シェル部は、生分解性ポリマーを含み、かつ、架橋構造を有し、生分解性ポリマーは、3官能以上のポリオール及び炭素数6〜20のジカルボン酸の脱水縮合物である脂肪族ポリエステルを含む、マイクロカプセルである。
<2> 架橋構造は、生分解性ポリマーと架橋剤との反応に由来する構造であり、架橋剤は、3官能以上のイソシアネート化合物である<1>に記載のマイクロカプセルである。
<3> 生分解性ポリマーは、重量平均分子量が500〜10000である<1>又は<2>に記載のマイクロカプセルである。
<4> 3官能以上のポリオールが、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、及びマンニトールからなる群より選択される少なくとも1つである<1>〜<3>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルである。
<5> コア部は、香料を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルである。
<6> <1>〜<5>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルと、溶媒と、を含有するマイクロカプセル組成物である。
<7> 生分解性ポリマーと溶媒と架橋剤とを含有する油相を調製する工程と、油相と水相とを混合して分散し、水中油型の分散液を調製する工程と、分散液を加熱し、油相をカプセル化する工程と、を含むマイクロカプセル組成物の製造方法である。
<8> <1>〜<5>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルを含む柔軟剤である。
<9> <1>〜<5>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルを含む洗剤である。
本発明の一実施形態によれば、生分解性を有し、水分存在下における経時での内包成分の内包安定性に優れたマイクロカプセル、並びに、マイクロカプセル組成物及びその製造方法が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、衣料への香りの安定的な付与が行える柔軟剤及び洗剤が提供される。
以下、本開示のマイクロカプセル、マイクロカプセル組成物及びその製造方法、並びに、柔軟剤及び洗剤について、詳細に説明する。
なお、本開示の実施形態に関わる構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
また、本開示において、組成物又は層中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「質量%」は「重量%」と同義であり、「質量部」は「重量部」と同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「シェル部」は、マイクロカプセルの粒子を形づくる外殻を指し、いわゆるカプセル壁のことをいう。また、「コア部」は、「芯部」ともいい、シェル部により内包されている部分を指す。
本明細書において、シェル部を形成するための材料を「シェル材」又は「壁材」といい、コア部に含まれる成分を「コア材」、「内包成分」又は「内包物」という。
また、本開示において、「内包」とは、目的とする物(内包物)がマイクロカプセルのシェル部に覆われて閉じ込められている状態を指す。
<マイクロカプセル>
本開示のマイクロカプセルは、コア部とコア部を内包するシェル部とを含み、シェル部は、生分解性ポリマーを含み、かつ、架橋構造を有する。そして、生分解性ポリマーには、3官能以上のポリオール及び炭素数6〜20のジカルボン酸の脱水縮合物である脂肪族ポリエステルが含まれる。
本開示のマイクロカプセルがコア部を内包するシェル部に特定のポリエステルである生分解性ポリマーを用い、シェル部に架橋がなされるので、地球環境保護に適合するものであって、かつ、水分存在下において内包物の内包状態を安定的に維持する内包安定性に優れている。
従来より、特許文献1等のように生分解性ポリマーを用いたマイクロカプセルは知られており、例えば、植物又は動物由来の材料等を用いてマイクロカプセルを製造する技術が検討されている。
また、マイクロカプセルは、コア部に薬剤、香料等の機能性成分を内包成分として内包させて所望の状況に合わせてカプセル外に放出する用途に用いられるに至っている。例えば特許文献2では、水溶性殺有害生物剤が内包されたマイクロカプセルが開示され、水溶性殺有害生物剤を徐放する目的に用いられている。
しかしながら、特許文献1〜2等の従来の技術では、マイクロカプセルが水分の存在下に置かれた場合に、シェル部による内包物のバリア機能が低下し、シェル部内にコア部をなすコア材を安定的に保持し得ないのが実状である。かかる状況は、シェル部の厚み(即ち、カプセル壁の厚み)が薄いほど顕著に現れやすいが、カプセル壁の厚みに関わらず同様の保持能力が求められる。
例えば、洗濯用の柔軟剤の用途では、水を溶媒としてカチオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤が柔軟剤の主成分として含有されている場合が多い。例えば香料を内包したマイクロカプセルと水とカチオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤とを混在させた場合、水と界面活性剤がマイクロカプセルのシェル部のイオン結合に影響を与えてシェル部の安定性が損なわれやすくなることが推定される。結果、水分存在下において内包物が水中に移動しやすくなり、内包物が形態不良を伴ってカプセル外部に漏れ、内包物を内包状態で安定的に保持し得ない
本開示では、シェル部が、生分解性ポリマーを含み、かつ、架橋構造を有し、生分解性ポリマーとして、3官能以上のポリオール及び炭素数6〜20のジカルボン酸の脱水縮合物である脂肪族ポリエステルを含むので、生分解性を維持しつつ、水分存在下において経時で生じやすい内包成分の内包安定性の低下を抑制することができる。
即ち、シェル部内のポリマーに架橋構造を導入する。好ましくは、ポリマーに架橋剤を導入してポリマーと架橋剤との間で共有結合を形成し、共有結合性の架橋構造を導入する。これにより、水分が存在する環境に曝される使用態様においてマイクロカプセルの安定性を確保しやすく、水分存在下における経時での内包成分の内包安定性に優れたものとなる。
以下において、まずマイクロカプセルを形作るシェル部について説明し、続いてコア部について説明する。
(シェル部)
本開示のマイクロカプセルは、コア部をなすコア材を内包し、かつ、カプセル粒子を形作るための外殻であるシェル部を有する。シェル部は、架橋構造を有する。シェル部は、シェルを形成するシェル材として、少なくとも生分解性ポリマーを含み、更に、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、ポリエステル、ポリエーテル等を含むことができる。
本開示のマイクロカプセルにおける生分解性ポリマーとしては、3官能以上のポリオール及び炭素数6〜20のジカルボン酸の脱水縮合物である脂肪族ポリエステルを含む。
−生分解性ポリマー−
本開示における生分解性ポリマーは、生分解度(好気的究極分解度:JIS K 6950(2000年)又は6953(2011年)、6955(2017年))が、30%以上であるものが好ましく、実用的な期間で分解する観点から、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
生分解性ポリマーについては、「生分解性プラスチックハンドブック」(生分解性プラスチック研究会編、株式会社エヌ・ティー・エス発行(1995))に記載されている。本開示におけるシェル部は、少なくとも脂肪族ポリエステルを含み、必要に応じて、更に、例えば、でん粉等の多糖類、ゼラチン等のたん白質、ポリビニルアルコール、又は他のポリエステル等が含まれてもよい。
本開示における脂肪族ポリエステルは、3官能以上のポリオール及び炭素数6〜20のジカルボン酸の脱水縮合物である。
(炭素数6〜20のジカルボン酸)
ジカルボン酸を用いることで、分岐構造を有する脂肪族ポリエステルが得られ、内包物が漏れにくいカプセル壁を形成しやすい。結果、水分存在下における内包物の内包状態を安定的に保持しやすくなる。
また、ジカルボン酸は、脂肪族ポリエステルの合成容易さの観点から、炭素数6以上である。また、ジカルボン酸は、内包成分の内包安定性を維持する観点から、炭素数20以下である。
炭素数6〜20のジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ドデカン二酸、テトラドデカン二酸、ウンデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
中でも、生分解性の点で、炭素数6〜12のジカルボン酸が好ましい。
(3官能以上のポリオール)
3官能以上のポリオールを用いることで、ジカルボン酸と反応して分岐構造を有する脂肪族ポリエステルが得られ、内包物が漏れにくいカプセル壁を形成しやすい。結果、水分存在下における内包物の内包状態を安定的に保持しやすいものとなる。
3官能以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、オクタントリオール、ノナントリオール、デカントリオール等の3官能ポリオール;エリスリトール、ペンタエリスリトール等の4官能ポリオール;キシリトール、グルコース、ガラクトース等の5官能ポリオール;ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ジペンタエリスリトール等の6官能ポリオール;スクロース、トレハロース、ラクトースなどのポリオールが挙げられる。
3官能以上のポリオールの中でも、内包物が漏れにくいカプセル壁を形成しやすく、生分解性に優れたものになる観点から、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、及びマンニトールからなる群より選択される少なくとも1つのポリオールであることがより好ましい。
本開示における脂肪族ポリエステルは、ポリエチレンオキサイド鎖を有していてもよい。脂肪族ポリエステルがポリエチレンオキサイド鎖を有することで、親水性を付与し生分解性の向上が期待できるという利点がある。
ポリエチレンオキサイド鎖は、ポリエチレングリコールに由来する構造であり、−(CHCHO)−で表される。nは、エチレンオキサイド部位の繰り返し数を表す。nは、1〜100の範囲としてもよく、好ましくは2〜40の範囲であり、より好ましくは3〜10の範囲である。
脂肪族ポリエステル中にポリエチレンオキサイド鎖を導入する方法としては、分子中にCHCHO構造を有する化合物を、3官能以上のポリオール及び炭素数6〜20のジカルボン酸と混合し、ジカルボン酸と反応させることで導入することができる。
分子中にCHCHO構造を有する化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及び、ポリエチレンオキサイド等を挙げることができる。
分子中にCHCHO構造を有する化合物は、上市されている市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、例えば、富士フイルム和光純薬株式会社のポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400等、三洋化成工業株式会社のマクロゴールシリーズ(例:マクロゴール200、マクロゴール400、PEG−200、PEG−300、PEG−400等)、青木油脂工業株式会社のブラウノンシリーズ(例:ブラウノンPEG−200、ブラウノンPEG−300、ブラウノンPEG−400等)などを挙げることができる。
脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリグリセロールセバケート、ポリグリセロールアジペート、ポリキシリトールセバケート、ポリキシリトールアジペート、ポリエリスリトールセバケート、ポリエリスリトールアジペート等が挙げられる。
本開示における脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、500〜10000であることが好ましく、2000〜7000であることがより好ましい。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される値である。
GPCによる測定は、測定装置として、HLC(登録商標)−8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ−H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、及び「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
生分解性ポリマーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
本開示における生分解性ポリマーのシェル部における含有量は、シェル材の全質量に対して、50質量%〜100質量%が好ましく、60質量%〜99質量%がより好ましく、70質量%〜95質量%が更に好ましい。
−架橋構造−
シェル部が有する架橋構造は、生分解性ポリマーと架橋剤との反応に由来する架橋構造であることが好ましく、生分解性ポリマーにおける反応性基(例えば水酸基)と架橋剤の架橋性基(例えばイソシアネート基)とが反応して形成される架橋構造であることが好ましい。即ち、本開示における架橋構造は、生分解性ポリマーと結合する架橋剤に由来する構造を含むものであることが好ましい。
シェル部に架橋構造を導入することで、カプセル化しやすく、かつ、内包物を内包した状態を維持することができる。架橋構造は、生分解性ポリマー又はその原料が有する反応性基と反応する架橋性基を有する架橋剤を用いて形成することができる。
シェル部が架橋構造を有することの確認は、以下の方法により行うことができる。
初めに、調製したマイクロカプセル組成物に対して遠心分離を施し、マイクロカプセルを液中から分離する。分離したマイクロカプセルをジメチルスルホキシド(DMSO)に混合(DMSOに対して1質量%〜5質量%)してDMSO混合液を調製する。そして、マイクロカプセルを混合したDMSO混合液が不透明化するか、又はマイクロカプセルの膨潤が確認できた場合は、マイクロカプセルのシェルが架橋構造を有するものと判断する。また、マイクロカプセルが溶解してDMSO混合液が透明化した場合は、マイクロカプセルのシェルが架橋構造を有していないものとする。DMSO混合液が不透明化していることの確認は目視により行い、マイクロカプセルが膨潤していることの確認は光学顕微鏡での観察により行う。
(架橋剤)
架橋剤としては、イソシアネート化合物、カルボン酸ハロゲン化物、エポキシ化合物、酸無水物等が挙げられる。架橋剤が脂肪族ポリエステル又はその原料が有する反応性基と反応することで、シェル材として架橋構造を有するポリマーが得られる。
架橋剤が有する架橋性基には、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基等が含まれる。
架橋剤の架橋性基が例えばイソシアネート基である場合、脂肪族ポリエステル又はその原料が有する反応性基である水酸基との反応によりウレタン結合が形成される。これにより、架橋構造として、ウレタン結合を有する構造を有するポリマーが得られる。
[イソシアネート化合物]
イソシアネート化合物としては、架橋構造を形成する観点から、多官能イソシアネート化合物(ポリイソシアネート)が好ましい。
ポリイソシアネートには、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネート等が含まれ、ポリイソシアネートは、2官能のポリイソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートのいずれを用いてもよく、3官能以上のポリイソシアネートがカプセル形成能の観点で好ましい。
−2官能のイソシアネート化合物−
2官能の脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
2官能の芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート等が挙げられる。
イソシアネート化合物については「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
2官能のイソシアネート化合物は、2官能の脂肪族イソシアネート化合物及び2官能の芳香族イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一方を用いてもよい。
−3官能以上のイソシアネート化合物−
3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物としては、2官能の脂肪族イソシアネート化合物(分子中に2つのイソシアネート基を有する化合物)と分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物(3官能以上の例えばポリオール、ポリアミン又はポリチオール等)とのアダクト体(付加物)として3官能以上としたイソシアネート化合物(アダクト型)、2官能の脂肪族イソシアネート化合物の3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)を挙げることができる。
アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよい。市販品の例としては、タケネート(登録商標)D−120N(イソシアネート価=3.5 mmol/g)、D−140N、D−160N(以上、三井化学株式会社製)、スミジュール(登録商標)HT(バイエル株式会社製)、コロネート(登録商標)HL、HX(東ソー株式会社製)、デュラネートP301−75E(旭化成株式会社製)、バーノック(登録商標)DN−950(DIC株式会社製)などが挙げられる。
中でも、アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物として、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)シリーズ(例えば、タケネートD−110N、D−120N、D−140N、D−160N等)がより好ましい。
イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよい。市販品の例としては、タケネート(登録商標)D−127N、D−170N、D−170HN、D−172N、D−177N(三井化学株式会社製)、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(以上、バイエル株式会社製)、コロネート(登録商標)HK(東ソー株式会社製)、デュラネート(登録商標)TPA−100、TKA−100(旭化成株式会社製)、バーノック(登録商標)DN−980(DIC株式会社製)などが挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D−165N、NP1200(三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)N3200A(バイエル株式会社製)、デュラネート(登録商標)24A−100、22A−75P(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
3官能以上の芳香族イソシアネート化合物の具体例としては、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物(アダクト体)、ビウレット体もしくはイソシアヌレート体等が挙げられる。
3官能以上の芳香族イソシアネート化合物として上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、バーノック(登録商標)D−750、D−800(DIC株式会社製)、タケネート(登録商標)D−102、D−103、D−103H、D−103M2、D−110N、オレスター(登録商標)P49−75S(以上、三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)L75、IL−135−BA、HL−BA、スミジュール(登録商標)E−21−1(バイエル株式会社製)、コロネート(登録商標)L、L−55、L−55E(東ソー株式会社製)等が挙げられる。
本開示における3官能以上のイソシアネート化合物は、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物及び3官能以上の芳香族イソシアネート化合物の少なくとも一方を含むことが好ましく、3官能以上の芳香族イソシアネート化合物を含むことがより好ましい。
3官能以上のイソシアネート化合物に由来する構造部分の、シェル材の全質量に占める割合としては、1質量%〜80質量%が好ましく、1質量%〜60質量%がより好ましく、1質量%〜40質量%が更に好ましい。3官能以上のイソシアネート化合物に由来する構造部分の割合が1質量%以上であると、良好にシェルを形成することができる。また、3官能以上のイソシアネート化合物に由来する構造部分の割合が80質量%以下であると、生分解性に有利である。
〜壁厚〜
本開示におけるシェル部(壁)の厚み(壁厚)は、特に制限はなく、目的等に応じて選択することができ、例えば10μm以下が好ましく、更には2μm未満が好ましい。
本開示のマイクロカプセルは、コア材が徐々に放出される徐放性を有するものでもよい。また、本開示のマイクロカプセルは、カプセルの形態を安定的に維持でき、保存安定性に優れるため、擦過等の外力が与えられた場合に所期より予定していた量のコア材を安定的に放出することが可能である。かかる点で、壁厚は、壁厚が2μm未満の薄膜であってもよく、1.5μm以下としてもよく、1.0μm以下としてもよい。また、本開示におけるマイクロカプセルは、架橋構造を有して形状を保持しやすいため、壁厚の下限は、製造可能な範囲で適宜選択すればよく、例えば0.1μmとしてもよい。
壁厚は、5個のマイクロカプセルの個々の壁厚(μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めて平均した平均値をいう。具体的には、マイクロカプセル液を任意の支持体上に塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する。得られた塗布膜の断面切片を作製し、その断面をSEMにより観察し、任意の5個のマイクロカプセルを選択して、それら個々のマイクロカプセルの断面を観察して壁厚を測定して平均値を算出する。
(コア部)
本開示のマイクロカプセルは、既述のシェル部内に所望とする成分をコア材として内包している。コア材は、シェル部に内包されたコア部をなす材料である。
コア材としては、特に制限はなく、所望とする成分を選択すればよく、例えば、香料、溶媒(オイル成分)、相転移素材(パラフィン、液晶材料等)、紫外線吸収剤などが挙げられる。コア部は、コア材として香料を含む場合が好ましい。
コア材として香料を含む場合、衣服の擦れ、毛髪の擦れ等によりマイクロカプセルから香料が放出されて香りを感じ取ることができる。本開示のマイクロカプセルは、水分存在下における経時での内包成分の内包安定性に優れるので、予定された所期の量の香料の放出が期待できる。
−香料−
香料としては、「特許庁、周知慣用技術集(香料)第III部香粧品香料、頁49−103頁、平成13年6月15日発行」に記載されている合成香料、天然精油、天然香料、動植物エキスなどから、適するものを適宜選択し、用いることができる。
具体的な香料としては、ピネン、ミルセン、カンフェン、モノテルペン(例:R−リモネン、D−リモネン等)、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5−ウンデカトリエン、α−アミルシンナミルアルデヒド、ジヒドロジャスモン、メチルイオノン、α−ダマスコン、アセチルセドレン、ジヒドロジャスモン酸メチル、シクロペンタデカノリドなど合成香料、オレンジ精油、レモン精油、ベルガモット精油、マンダリン精油などの天然精油が挙げられる。
コア材の全質量に対する香料の含有量としては、20質量%〜100質量%が好ましく、30質量%〜95質量%がより好ましく、30質量%〜85質量%が更に好ましい。
−溶媒−
コア材は、オイル成分として溶媒を含有してもよい。
溶媒の例としては、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(例:オクタカプリン酸ポリグリセロール等のグリセリン脂肪酸エステル(例えば、日清オイリオグループ株式会社製のサラコス(登録商標)HG−8)、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル系化合物、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルナフタレン系化合物、1−フェニル−1−キシリルエタン等のジアリールアルカン系化合物、イソプロピルビフェニル等のアルキルビフェニル系化合物、トリアリールメタン系化合物、アルキルベンゼン系化合物、ベンジルナフタレン系化合物、ジアリールアルキレン系化合物、アリールインダン系化合物等の芳香族炭化水素;フタル酸ジブチル、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素;ツバキ油、大豆油、コーン油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、ひまし油、魚油等の天然動植物油;鉱物油等の天然物高沸点留分などが挙げられる。
内包成分中の溶媒の含有量は、内包成分の全質量に対して、50質量%未満が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
−補助溶媒−
内包成分は、必要に応じて、マイクロカプセルを製造する際の壁材の油相中への溶解性を高めるための油相成分として補助溶媒を含有してもよい。補助溶媒には、上記の溶媒は含まれない。また、補助溶剤を含有することにより油相の粘度を変化させ、乳化におけるせん断の程度が変わるため、変動係数を調整することができる。
補助溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、酢酸エチル等のエステル系化合物、イソプロピルアルコール等のアルコール系化合物、テトラヒドロフラン等のエーテル系化合物等が挙げられる。好ましくは、補助溶媒は、沸点が130℃以下である。
内包成分における補助溶媒の含有量は、内包成分の全質量に対して、60質量%未満が好ましく、40質量%未満がより好ましい。
−添加剤−
例えば、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、臭気抑制剤などの添加剤は、必要に応じて、マイクロカプセルに内包することができる。
添加剤は、コア材の全質量に対し、例えば、0質量%〜20質量%、好ましくは1質量%〜15質量%、より好ましくは5質量%〜10質量%含有することができる。
〜メジアン径(D50)〜
マイクロカプセルの体積標準のメジアン径(D50)は、0.1μm〜100μmであることが好ましい。
メジアン径(D50)が0.1μm以上であることで、マイクロカプセルが、微細な空隙に入り込むことで、割れにくくなることを防ぐことができる。メジアン径(D50)が100μm以下であることで、付着性の低下を防ぐことができる。
マイクロカプセルの体積標準のメジアン径(D50)は、上記の観点から、1μm〜70μmであることがより好ましく、5μm〜50μmであることが更により好ましい。マイクロカプセルの体積標準のメジアン径は、分散の条件を変更すること等により制御することができる。
マイクロカプセルの体積標準のメジアン径(D50)とは、マイクロカプセル全体を体積累計が50%となる粒子径を閾値に2つに分けた場合に、大径側と小径側での粒子の体積の合計が等量となる径をいう。
マイクロカプセルの体積標準のメジアン径は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて測定される値である。
<マイクロカプセル組成物>
本開示のマイクロカプセル組成物は、既述の本開示のマイクロカプセルと、溶媒と、を含有する。
本開示のマイクロカプセルの詳細については、既述の通りであるため、ここでの説明を省略する。
本開示のマイクロカプセル組成物中におけるマイクロカプセルの含有量は、目的又は用途に応じて適宜選択すればよい。マイクロカプセル組成物中におけるマイクロカプセルの含有量は、マイクロカプセル組成物の全質量に対して、1質量%〜99質量%とすることができ、好ましくは1質量%〜95質量%である。
−溶媒−
溶媒としては、水系溶媒が好適である。
マイクロカプセル組成物が溶媒を含むことで、マイクロカプセル組成物は、種々の用途に用いる場合に容易に配合することができる。水系溶媒としては、水、水及びアルコール等が挙げられる。
マイクロカプセル組成物における溶媒の含有量は、目的又は用途に応じて適宜選択することができる。
−分散媒−
マイクロカプセル含有組成物は、マイクロカプセルを分散する上記溶媒以外の分散媒を含むことができる。マイクロカプセル組成物が分散媒を含むことで、マイクロカプセル組成物は種々の用途に用いる際に容易に配合することができる。
ここでの分散媒は、組成物の使用目的に応じて適宜選択することができ、マイクロカプセルのシェル材に影響を与えない液状成分であることが好ましい。好ましい分散媒は、粘度調整剤、安定化剤などが挙げられる。
マイクロカプセル組成物における分散媒の含有量は、目的又は用途に応じて適宜選択すればよい。
−その他の成分−
マイクロカプセル組成物は、マイクロカプセル、溶媒及び分散媒に加え、更にその他の成分を含有することができる。
その他の成分には、特に制限はなく、目的又は必要に応じて適宜選択すればよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、架橋剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤等が挙げられる。
<マイクロカプセル組成物の製造方法>
本開示のマイクロカプセル組成物の製造方法は、生分解性ポリマーと溶媒と架橋剤とを含有する油相を調製する工程(以下、油相調製工程)と、油相と水相とを混合して分散し、水中油型の分散液を調製する工程(以下、乳化工程)と、分散液を加熱し、油相をカプセル化する工程(以下、カプセル化工程)と、を含むことが好ましい。
マイクロカプセル組成物の製造は、例えば、以下の製造方法で製造してもよい。但し、本開示は、下記方法に制限されるものではない。
本開示のマイクロカプセルは、生分解性ポリマー、溶媒、シェル材の一部となる架橋剤(例えばイソシアネート化合物)、及び必要に応じてコア材(例えば香料等の内包物)を含む油相を調製し(油相調製工程)、油相とシェル材の他の一部を含む水相とを混合して分散し、乳化液を調製する工程(乳化工程)と、架橋剤と生分解性ポリマーとを反応させて架橋構造を有するシェル部を形成してコア部をなすコア材を内包したマイクロカプセルを形成する工程(カプセル化工程)と、を有する方法により作製することができる。
[油相調製工程]
油相調製工程では、生分解性ポリマー、溶媒、シェル材の一部となる架橋剤(例えばイソシアネート化合物)、及び必要に応じてコア材(例えば香料等の内包物)を含む油相を調製する。
油相の調製に使用することができる生分解性ポリマー、溶媒及び架橋剤の詳細については、既述のマイクロカプセルの項に記載した通りである。
油相が溶媒を含むことにより、マイクロカプセルの単分散性が高められる。
油相は、生分解性ポリマー、溶媒、シェル材の一部となる架橋剤以外に、必要に応じて、香料、補助溶媒、添加剤などの他の成分が含まれてもよい。香料、補助溶媒、及び添加剤の詳細については、既述のマイクロカプセルの項に記載した通りである。
[乳化工程]
乳化工程では、油相調製工程で調製した油相と水相とを混合して分散し、水中油型の分散液を調製する。分散液は、いわゆる乳化液である。
分散は、油相を油滴として水相に分散させること(いわゆる乳化)をいう。
分散は、油相と水相との分散に通常用いられる手段を用いて行うことができる。分散に用いられる手段としては、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル、又はその他の公知の分散装置が挙げられる。
水相は、少なくとも水系溶媒及びシェル材の他の一部を含むことが好ましい。
−水系媒体−
水系媒体は、水、水及びアルコール等が挙げられ、イオン交換水等が挙げられる。
水系媒体の水相中における含有量としては、水相に油相を乳化分散して得られる乳化液の全質量に対して、1質量%〜99質量%が好ましく、5質量%〜90質量%がより好ましく、10質量%〜80質量%が更に好ましい。
−シェル材の他の一部−
シェル材の他の一部として、乳化剤を用いてもよい。乳化剤としては、分散剤もしくは界面活性剤又はこれらの組み合わせを用いてもよい。乳化剤としては、例えば、既述の脂肪族ポリエステル以外の生分解性ポリマーを用いてもよい。
既述の脂肪族ポリエステル以外の生分解性ポリマーとしては、例えば、でん粉等の多糖類、ゼラチン等のたん白質、ポリビニルアルコール及びその変性物(例えばアニオン変性ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体が挙げられる。
多糖類としては、寒天、カラギーナン、アラビアガム、ジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、デキストリンなどが挙げられる。
たん白質としては、ゼラチン、ゼラチンをアルカリ処理したもの、ゼラチンを酸処理したもの、寒天などが挙げられる。
ポリビニルアルコールとしては、完全ケン化もしくは部分ケン化であり、かつ、アニオン変性もしくはカチオン変性のポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
分散剤は、シェル材と反応しないこと又は極めて反応し難いことが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳化剤(例えば、既述の脂肪族ポリエステル以外の生分解性ポリマー)の含有量としては、水相の全質量に対して、0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。
水相は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤などの他の成分を含有してもよい。他の成分を含有する場合の含有量は、水相の全質量に対して、0質量%〜20質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましい。
水相に対する油相の混合比率(油相/水相;質量基準)としては、0.01〜100が好ましく、0.05〜10がより好ましい。混合比率が上記範囲内であると、適度の粘度に保持でき、製造適性に優れ、乳化液の安定性に優れる。
[カプセル化工程]
カプセル化工程は、乳化工程で調製した分散液を加熱し、油相をカプセル化する。
本開示におけるカプセル工程では、生分解性ポリマー、及び好ましくはポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、ポリエステル、ポリエーテル等を含むシェルを形成することができる。
具体的には、油相と水相との界面において、油相に含まれる架橋剤(例えばイソシアネート化合物)の架橋性基(例えばイソシアネート基)と水相中の成分の反応性基(例えば水酸基)とが反応してポリウレタン、ポリウレア又はポリウレタンウレアを形成し、かつ、生分解性ポリマーの反応性基(例えば水酸基)と架橋剤の架橋性基(例えばイソシアネート基)とが反応して架橋構造を形成することで、シェルを形成する。
なお、上記の架橋性基及び反応性基については、既述の通りである。
これにより、コア部として油相がシェル部によって内包されたマイクロカプセルが形成される。
カプセル化する際の反応は、加熱下で行われる。
加熱温度は、通常は40℃〜100℃が好ましく、50℃〜80℃がより好ましい。
加熱時間は、通常は0.5時間〜10時間程度が好ましく、1時間〜5時間程度がより好ましい。
加熱温度が高い程、反応時間は短くなるが、加熱により分解等するおそれのある内包成分又はシェル材を使用する際は、低温で反応が進行しやすい架橋剤を選択して、比較的低温でカプセル化することが望ましい。
カプセル化工程においてマイクロカプセル同士の凝集を防止するためには、水性溶液(例えば、水、酢酸水溶液など)を更に加えてマイクロカプセル同士の衝突確率を下げることが好ましく、充分な攪拌を行うことも好ましい。カプセル化工程中にあらためて凝集防止用の分散剤を添加してもよい。更に、必要に応じて、ニグロシン等の荷電調節剤、又はその他任意の補助剤を添加することができる。これらの補助剤は、シェルの形成時、又は任意の時点で添加することができる。
<柔軟剤>
本開示の柔軟剤は、既述の本開示のマイクロカプセルを含む。
本開示の柔軟剤は、既述の本開示のマイクロカプセルを含有し、更に溶媒を含んでもよい。本開示の柔軟剤が更に溶媒を含む場合は、本開示の柔軟剤はマイクロカプセル組成物の一例である。
本開示の柔軟剤は、例えば、コア材として例えば香料等を含むマイクロカプセルを含むことで衣料用柔軟剤として用いることができる。これにより、本開示のマイクロカプセル組成物は、洗濯用組成物として適用することができる。
本開示の柔軟剤は、衣料を浸漬し、脱水及び乾燥することで、マイクロカプセルが衣料の繊維に吸着したり、繊維間の微細な空隙に入り込む等により衣料に保持される。このため、衣料に対し、柔軟剤本来の効果が付与され、かつ、コア材(香料等)を所望の時期に選択的に又は徐放的に放出することが可能になる。
本開示の衣料用柔軟剤により処理した衣料を着用した場合、柔らかな着心地に加え、マイクロカプセル内にコア材が安定に含まれるため、経時後であっても、衣服を擦るなどして応力を与え、マイクロカプセルを崩壊させることでコア材(香料等)を放出させることができる。また、特に応力を付与しなくても、衣服を着用し、行動することにより、マイクロカプセルが崩壊され、コア材(香料等)を放出させることができる。
柔軟剤中のマイクロカプセルの含有量としては、マイクロカプセル組成物の全質量に対して、0.3質量%〜10質量%が好ましい。
柔軟剤に用いられる分散媒は、イオン交換水等の水が好ましい。
本開示のマイクロカプセルは、経時での内包成分の内包安定性に優れるので、水を含む柔軟剤中においてもカプセルが安定的に維持され、長期間にわたって内包物を内包した状態で維持できる。
柔軟剤には、公知の成分(例えば、消泡剤、色材)を更に含むことができる。
<洗剤>
本開示の洗剤は、既述の本開示のマイクロカプセルを含む。
本開示の洗剤は、既述の本開示のマイクロカプセルを含有し、更に溶媒を含んでもよい。本開示の洗剤が更に溶媒を含む場合は、本開示の洗剤はマイクロカプセル組成物の一例である。
本開示のマイクロカプセル組成物は、上記と同様に、例えば、コア材として例えば香料等を含めることで衣料用洗剤とすることができる。これにより、本開示のマイクロカプセル組成物は、洗濯洗剤として適用することができる。
(用途)
本開示のマイクロカプセル組成物は、既述のように、任意の時期にコア材を放出し得るものであるため、種々の用途に適用することができる。既述の用途は一例であり、本開示のマイクロカプセル組成物の用途は、既述の用途には制限されない。
本開示のマイクロカプセル及びマイクロカプセル組成物は、水分存在下に曝される用途に好適であり、例えば、柔軟剤、洗濯洗剤、ヘアケア、デイケア等に好適である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
−生分解性ポリマー1の合成−
セバシン酸(炭素数10のジカルボン酸、富士フイルム和光純薬株式会社製)101.13gと、グリセリン(3官能ポリオール、富士フイルム和光純薬株式会社製)46.05gと、を反応器に入れ、セバシン酸及びグリセリンを回転数100rpm(revolutions per minute)で攪拌しながら反応器を140℃で加熱し、セバシン酸及びグリセリンを溶融させた。反応器の温度が140℃に到達してから、窒素気流下で18時間エステル化反応を進行させ、重量平均分子量5600の生分解性ポリマー1を得た。
−マイクロカプセル水分散液の調製−
サラコス(登録商標)HG−8(日清オイリオグループ株式会社製;溶媒)11.7質量部と、D−リモネン(ヤスハラケミカル株式会社製;香料)35.0質量部と、上記生分解性ポリマー1を10.1質量部と、3官能の芳香族イソシアネート化合物であるバーノック(登録商標)D−750(DIC株式会社製;トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体;架橋剤)4.3質量部とテトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製;補助溶媒)38.9質量部、を撹拌混合し、油相を調製した(油相調製工程)。
次いで、ポリビニルアルコールであるクラレポバール(登録商標)27−95(株式会社クラレ製;PVA)の1.9質量%水溶液を用意し、水相とした。
水相である上記水溶液30.7質量部に上記油相2.6質量部を加えて分散し、水中油型の乳化液を生成した(乳化工程)。生成した乳化液を70℃まで加温した。その後、ポリビニルアルコールであるクラレポバール(登録商標)23−88E(株式会社クラレ製;PVA)の0.29質量%水溶液66.7質量部を乳化液に加え、1時間撹拌した(カプセル化工程)。続いて、冷却し、コア部に香料が内包された香料マイクロカプセルを含むマイクロカプセル水分散液(マイクロカプセル組成物)を調製した。調製したマイクロカプセル水分散液中における香料マイクロカプセルの含有量は、マイクロカプセル水分散液の全質量に対して、2質量%であった。
マイクロカプセル水分散液中の香料マイクロカプセルは、体積標準のメジアン径(D50)が20μmであり、壁厚が0.5μmであった。なお、D50及び壁厚の測定は、既述した方法により行った。
香料マイクロカプセルが架橋構造を有することを以下の方法で確認した。
マイクロカプセル水分散液に対して遠心分離を施し、香料マイクロカプセルを液中から分離した。分離された香料マイクロカプセルをジメチルスルホキシド(DMSO)に混合(5質量%)してDMSO混合液を調製した。DMSO混合液が不透明化するか、又は香料マイクロカプセルの膨潤が確認できた場合は、香料マイクロカプセルが架橋構造を有するものと判断した。これに対し、香料マイクロカプセルが溶解してDMSO混合液が透明化した場合は、香料マイクロカプセルのシェルが架橋構造を有しないものと判断した。DMSO混合液における不透明化及び膨潤の有無の確認は、目視観察及び光学顕微鏡観察により行った。
結果、マイクロカプセル水分散液の香料マイクロカプセルは、DMSO混合液が不透明化したことから、シェル部が架橋構造を有していることが確認された。
−評価−
得られたマイクロカプセル水分散液及びこれに含まれる香料マイクロカプセルについて、以下の評価を行った。評価結果は、下記の表1に示す。
(1)水中安定性
以下の手順で香料マイクロカプセルの水中安定性を確認した。
得られたマイクロカプセル水分散液1.0質量部を、水49.0質量部で希釈し、マイクロカプセル評価液(マイクロカプセル組成物)を作製した。作製したマイクロカプセル評価液をプレパラートに数滴滴下して乾燥した後、金属顕微鏡(エクリプスLV100D、ニコン社製)で香料マイクロカプセル(100個)の観察を行った。これとは別に、得られたマイクロカプセル評価液を45℃で1ヶ月間保管した後、上記と同様の方法で観察を行った。そして、保管前後における香料マイクロカプセルを下記の評価基準にしたがって評価し、経時での内包物の内包安定性を評価した。実用上、C評価以上が好ましい。
カプセル形状が維持された香料マイクロカプセルの比率は、水分存在下において内包物である香料が内包された状態で良好に維持される経時での内包安定性を示す指標となる。
<評価基準>
A:保存後において、カプセル形状が維持されている香料マイクロカプセルの個数比が、保存前に対して80%以上である。
B:保存後において、カプセル形状が維持されている香料マイクロカプセルの個数比が、保存前に対して70%以上80%未満である。
C:保存後において、カプセル形状が維持されている香料マイクロカプセルの個数比が、保存前に対して30%以上70%未満である。

D:保存後において、カプセル形状が維持されている香料マイクロカプセルの個数比が、保存前に対して30%未満であるか、又は香料マイクロカプセルの存在が確認されない。
(2)生分解性
得られた香料マイクロカプセルに対して、JIS K 6953−1(2011年)に準拠した方法により180日後の生分解度(%)を測定した。試験サンプルには、マイクロカプセル分散液から取り出して乾燥させた香料マイクロカプセルのシェル材を用いた。
なお、比較例1は、生分解性評価の比較検討のために、生分解性ポリマーを用いない香料マイクロカプセルのシェル材の例である。実用上、A評価が好ましい。
<評価基準>
A:生分解度30%以上である。
B:生分解度30%未満である。
(実施例2〜3)
実施例1において、生分解性ポリマー1を、以下の生分解性ポリマー2又は生分解性ポリマー3に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、コア部に香料が内包された香料マイクロカプセルを含む水中油型のマイクロカプセル水分散液(マイクロカプセル組成物)を調製し、評価した。評価結果を下記の表1に示す。
生分解性ポリマー2、3は、分子中にポリエチレンオキサイド鎖を有する脂肪族ポリエステルである。
なお、マイクロカプセル水分散液中の香料マイクロカプセルは、いずれも、体積標準のメジアン径(D50)が19μmであり、壁厚が0.5μmであった。
実施例1と同様の方法により、香料マイクロカプセルが架橋構造を有することの確認を行った。その結果、いずれもマイクロカプセル水分散液の香料マイクロカプセルも、DMSO混合液が不透明化したことから、シェル部が架橋構造を有していることが確認された。
−生分解性ポリマー2の合成−
セバシン酸(炭素数10のジカルボン酸、富士フイルム和光純薬株式会社製)101.13gと、グリセリン(3官能ポリオール、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.45gと、ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール300、富士フイルム和光純薬株式会社;下記表1中で「PEO300」と表記する。)0.12gと、を反応器に入れ、セバシン酸、グリセリン及びポリエチレングリコールを回転数100rpm(revolutions per minute)で攪拌しながら反応器を160℃で加熱し、セバシン酸、グリセリン及びポリエチレングリコールを溶融させた。反応器の温度が160℃に到達してから、窒素気流下で16時間エステル化反応を進行させ、重量平均分子量6400の生分解性ポリマー2を得た。
−生分解性ポリマー3の合成−
生分解性ポリマー2の合成において、ポリエチレングリコールをジエチレングリコール(下記表1中で「DEG」と表記する。)に代えたこと以外、生分解性ポリマー2の合成と同様にして、重量平均分子量5100の生分解性ポリマー3を得た。
(実施例4〜6)
実施例1において、グリセリンを表1に記載のポリオール(4〜6官能のポリオール)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、コア部に香料が内包された香料マイクロカプセルを含む水中油型のマイクロカプセル水分散液(マイクロカプセル組成物)を調製し、評価した。評価結果を下記の表1に示す。
なお、マイクロカプセル水分散液中の香料マイクロカプセルのD50及び壁厚は、実施例1と同様とした。
実施例1と同様の方法により、香料マイクロカプセルが架橋構造を有することの確認を行った。その結果、いずれのマイクロカプセル水分散液の香料マイクロカプセルも、DMSO混合液が不透明化したことから、シェル部が架橋構造を有していることが確認された。
(実施例7〜13)
実施例1において、セバシン酸を表1に記載のジカルボン酸(炭素数6〜20のジカルボン酸)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、コア部に香料が内包された香料マイクロカプセルを含む水中油型のマイクロカプセル水分散液(マイクロカプセル組成物)を調製し、評価した。評価結果を下記の表1に示す。
なお、マイクロカプセル水分散液中の香料マイクロカプセルのD50及び壁厚は、実施例1と同様とした。
実施例1と同様の方法により、香料マイクロカプセルが架橋構造を有することの確認を行った。その結果、いずれのマイクロカプセル水分散液の香料マイクロカプセルも、DMSO混合液が不透明化したことから、シェル部が架橋構造を有していることが確認された。
(実施例14〜16)
実施例1において、3官能の脂肪族イソシアネート化合物(バーノック(登録商標)D−750)を、表1に記載の架橋剤に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、コア部に香料が内包された香料マイクロカプセルを含む水中油型のマイクロカプセル水分散液(マイクロカプセル組成物)を調製し、評価した。評価結果を下記の表1に示す。
なお、マイクロカプセル水分散液中の香料マイクロカプセルのD50及び壁厚は、実施例1と同様とした。
実施例14:タケネート(登録商標)D−160N〔三井化学株式会社製;ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体(3官能の脂肪族イソシアネート化合物)〕
実施例15:4,4'−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)〔東京化成工業株式会社、エポキシ系架橋剤〕
実施例16:アジポイルクロリド〔東京化成工業株式会社、酸クロライド系架橋剤〕
実施例1と同様の方法により、香料マイクロカプセルが架橋構造を有することの確認を行った。その結果、いずれのマイクロカプセル水分散液の香料マイクロカプセルも、DMSO混合液が不透明化したことから、シェル部が架橋構造を有していることが確認された。
(比較例1)
イソバン(登録商標)10(株式会社クラレ製、10質量%イソブチレン−無水マレイン酸共重合体水溶液)19.1質量部と水20.3質量部とを混合し、得られた混合液のpH(25℃)を10質量%水酸化ナトリウム水溶液で4.5に調整し、水相とした。また、サラコス(登録商標)HG−8(日清オイリオ製;溶媒)4.7質量部、及びD−リモネン(ヤスハラケミカル株式会社製、香料)13.9質量部を混合し、油相とした。そして、水相溶液39.4質量部に油相溶液の全量を加えて分散し、乳化液を得た。
次いで、メラミン−ホルムアルデヒドプレポリマーであるニカレジンS−260(日本カーバイド工業株式会社製)2.6質量部を乳化液に加え、その後加熱を行って65℃に達した後、24時間カプセル形成反応を続けた。そして、残留ホルムアルデヒドを減少させるために30℃に冷却後、29質量%アンモニア水をpH7.5になるまで添加し、マイクロカプセル水分散液を得た。
得られたマイクロカプセルは、D50が20μmであり、壁厚が0.3μmであった。
実施例1と同様の方法により、マイクロカプセルが架橋構造を有することの確認を行った。その結果、マイクロカプセル水分散液のマイクロカプセルは、DMSO混合液が不透明化したことから、シェル部が架橋構造を有していることが確認された。
(比較例2)
実施例1において、3官能の芳香族イソシアネート化合物(バーノック(登録商標)D−750)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、コア部に香料が内包された香料マイクロカプセルを含む水中油型のマイクロカプセル水分散液(マイクロカプセル組成物)の調製を試みた。
しかしながら、マイクロカプセルの形成は行えなかった。
(比較例3)
特表2019−504080号公報に記載の、以下のプレミックス1〜3(使用量は公報に記載と同様とし、ここでは記載を省略する)を用いた実施例1と同様にして、油中水型エマルションを作製し、実施例1と同様の方法により評価を行った。評価結果を、実施例1等と併せて下記の表1に示す。
プレミックス1:ジカンバナトリウム塩の水溶液、及びグリセロール
プレミックス2:芳香族溶媒、及びポリマー溶液S1(ステアリルメタクリレート及びメタクリル酸とのポリマー)
プレミックス3:塩化テレフタロイル(TPC)及びアジピン酸ジブチル
実施例1と同様の方法により、マイクロカプセルが架橋構造を有することの確認を行った。その結果、マイクロカプセルがDMSO混合液に完全に溶解してDMSO混合液が透明化したため、マイクロカプセルのシェルが架橋構造を有しないものと判断した。
(比較例4)
実施例1において、セバシン酸をデカン酸(富士フイルム和光純薬株式会社;モノカルボン酸)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、コア部に香料が内包された香料マイクロカプセルを含む水中油型のマイクロカプセル水分散液(マイクロカプセル組成物)の調製を試みた。
しかしながら、マイクロカプセルの形成は行えなかった。
(比較例5)
実施例1において、グリセリンを1,4−ブタンジオール(富士フイルム和光純薬株式会社;2官能のポリオール)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、コア部に香料が内包された香料マイクロカプセルを含む水中油型のマイクロカプセル水分散液(マイクロカプセル組成物)の調製を試みた。
しかしながら、マイクロカプセルの形成は行えなかった。
(比較例6)
実施例1において、セバシン酸をドコサン二酸(炭素数22)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、コア部に香料が内包された香料マイクロカプセルを含む水中油型のマイクロカプセル水分散液(マイクロカプセル組成物)を調製し、評価した。評価結果を下記の表1に示す。なお、マイクロカプセル水分散液中の香料マイクロカプセルのD50及び壁厚は、実施例1と同様とした。
実施例1と同様の方法により、マイクロカプセルが架橋構造を有することの確認を行った結果、マイクロカプセル水分散液のマイクロカプセルは、DMSO混合液が不透明化したため、シェル部が架橋構造を有していることが確認された。
Figure 2021053594

表1に示すように、実施例では、香料マイクロカプセルは、生分解性を有しており、水分存在下における経時での内包成分の内包安定性にも優れていた。中でも、架橋剤としてイソシアネートを用いたマイクロカプセルは、イソシアネート以外の架橋剤を用いた場合に比べ、水分存在下での安定性により優れていた。また、芳香族イソシアネートを用いた場合は、脂肪族イソシアネートを用いた場合に比べ、水分存在下での安定性が顕著に優れていた。
これに対して、メラミン系のマイクロカプセルとした比較例1では、生分解性が得られなかった。
比較例3では、マイクロカプセルは、生分解性を有するものの、架橋構造を有さず、水分存在下における経時での内包成分の内包安定性に劣っていた。
炭素数が20を超えるジカルボン酸を用いた比較例6におけるマイクロカプセルは、水分存在下における経時での内包成分の内包安定性に著しく劣るものであった。
なお、比較例2、4及び5では、マイクロカプセルが得られなかった。

Claims (9)

  1. コア部と前記コア部を内包するシェル部とを含み、
    前記シェル部は、生分解性ポリマーを含み、かつ、架橋構造を有し、
    前記生分解性ポリマーは、3官能以上のポリオール及び炭素数6〜20のジカルボン酸の脱水縮合物である脂肪族ポリエステルを含む、マイクロカプセル。
  2. 前記架橋構造は、前記生分解性ポリマーと架橋剤との反応に由来する構造であり、
    前記架橋剤は、3官能以上のイソシアネート化合物である請求項1に記載のマイクロカプセル。
  3. 前記生分解性ポリマーは、重量平均分子量が500〜10000である請求項1又は請求項2に記載のマイクロカプセル。
  4. 前記3官能以上のポリオールが、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、及びマンニトールからなる群より選択される少なくとも1つである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
  5. 前記コア部は、香料を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のマイクロカプセルと、溶媒と、を含有するマイクロカプセル組成物。
  7. 生分解性ポリマーと溶媒と架橋剤とを含有する油相を調製する工程と、
    前記油相と水相とを混合して分散し、水中油型の分散液を調製する工程と、
    前記分散液を加熱し、前記油相をカプセル化する工程と、
    を含むマイクロカプセル組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のマイクロカプセルを含む柔軟剤。
  9. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のマイクロカプセルを含む洗剤。
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