JP3758086B2 - ポリエステル組成物及びそれからなる成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シ−トなどの成形体の素材として好適に用いられるポリエステル組成物およびそれからなる成形体に関するものである。また、中空成形体を成形する際の熱処理金型からの離型性が良好で、金型汚れが少ないポリエステル組成物を与える。特に本発明のポリエステル組成物から得られた成形体は、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れており、また耐熱寸法安定性に優れた中空成形体や成形後の寸法安定性に優れたシ−ト状物および延伸フイルムを与える。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称することがある)などのポリエステルは、機械的性質及び化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フイルム、シ−ト、ボトルなどとして広く使用されている。
【0003】
調味料、油、飲料、化粧品、洗剤などの容器の素材としては、充填内容物の種類およびその使用目的に応じて種々の樹脂が採用されている。
【0004】
これらのうちでポリエステルは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤ−性に優れているので、特にジュ−ス、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器等の成形体の素材として最適である。
【0005】
このようなポリエステルは、例えば、射出成形機械などの成形機に供給して中空成形体用プリフォ−ムを成形し、このプリフォ−ムを所定形状の金型に挿入し延伸ブロ−成形した後ボトルの胴部を熱処理(ヒ−トセット)して中空成形容器に成形され、さらには必要に応じてボトルの口栓部を熱処理(口栓部結晶化)させるのが一般的である。
【0006】
しかしながら、PETは、溶融重縮合時の副生物としてアセトアルデヒド(以下、AAと略称することがある)を含有する。また、PETは、中空成形体等の成形体を熱成形する際に熱分解によりアセトアルデヒドを生成し、得られた成形体の材質中のアセトアルデヒド含有量が多くなり、中空成形体等に充填された飲料等の風味や臭いに影響を及ぼす。
【0007】
したがって、従来よりポリエステル成形体中のアセトアルデヒド含有量を低減させるために種々の方策が採られてきた。一般的には、溶融重縮合したポリエステルを固相重合することによってAA含有量を低下させる方法、融点がより低い共重合ポリエステルを使用して成形時のAA生成を低下させる方法、熱成形時における成形温度を可及的に低くする方法および熱成形時におけるせん断応力を可及的に小さくする方法等がとられている。
【0008】
近年、ポリエチレンテレフタレ−トを中心とするポリエステル製容器は、ミネラルウオ−タやウ−ロン茶等の低フレ−バ−飲料用の容器として使用されるようになってきた。このような飲料の場合は、一般にこれらの飲料を熱充填したりまたは充填後加熱して殺菌されるが、前記の方法によるポリエステル成形体材質中のAA含有量低減だけでは、これらの容器内容物の風味や臭いが改善されないことがわかってきた。
【0009】
また、例えば、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂0.05重量部以上、1重量部未満を添加したポリエステル組成物を用いる方法(特公平6−6662号公報)や、熱可塑性ポリエステルに、末端アミノ基濃度をある範囲に規制した特定のポリアミドを含有させたポリエステル組成物からなるポリエステル製容器(特公平4−71425号公報)が提案されているが、ミネラルウオ−タ等の低フレ−バ−飲料用の容器の材料としては不十分な場合があることが判ってきた。
【0010】
一方、PETを主体とするポリエステル成形体は前記のとうりガスバリヤ−性に優れているが、ビタミンC等のように酸素に非常に敏感な化合物を含有する内容物用の中空成形体等としては不満足である。
【0011】
このような問題点を解決するために、例えば、我々は、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂1〜100重量部を含有させたポリエステル中空成形体(特公平4−54702号公報)を提案した。しかしながら、このようなポリエステル組成物を用いて耐熱性中空成形体を製造する際に前記の中空成形体の胴部を熱処理するが、金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着する金型汚れが、ポリエステル樹脂のみを用いて成形する場合に比べて非常に発生しやすいと言う問題があり、未解決である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解決することにあり、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れ、さらには成形時での金型汚れを発生させにくいポリエステル組成物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステル組成物は、少なくとも主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)と、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)を混合して得られるポリエステル組成物であって、前記メタキシリレン基含有ポリアミド(B)中のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.9重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0014】
この場合において、前記メタキシリレン基含有ポリアミド(B)中のメタキシリレン基含有環状アミド2量体の含有量が1.3重量%以下であることができる。
【0015】
この場合において、前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)が含有する環状エステル3量体の含有量が、0.5重量%以下であることができる。
この場合において、前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)を290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が、0.50重量%以下であることができる。
この場合において、前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜1000ppmを配合したポリエステルであることができる。
【0016】
この場合において、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル組成物を成形してなることができる。
この場合において、請求項6に記載の成形体が、中空成形体であることができる。
この場合において、請求項6に記載の成形体が、シ−ト状物であることができる。
この場合において、請求項6に記載の成形体が、請求項7に記載のシ−ト状物を少なくとも1方向に延伸してなる延伸フイルムであることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステル組成物およびそれからなる成形体の実施の形態を具体的に説明する。
本発明に用いられるポリエステル(A)は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルであって、好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95%以上含む線状ポリエステルである。
【0018】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0019】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコ−ルとしては、ジエチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ルなどが挙げられる。
【0020】
さらに、前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコ−ル成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0021】
前記のポリエステルは、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物またはAl化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物または Al化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0022】
さらにポリエステルの極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含有量を低下させるために固相重合を行ってもよい。
【0023】
前記のエステル化反応、エステル交換反応、溶融重縮合反応および固相重合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0024】
本発明に用いられるポリエステル(A)の製造に使用されるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0025】
本発明に用いられるポリエステル(A)の製造に使用されるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0026】
本発明に用いられるポリエステル(A)の製造に使用されるTi化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマ−中のTi残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0027】
また、本発明に用いられるポリエステル(A)の製造に使用されるAl化合物としては、蟻酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム等のカルボン酸塩、酸化物、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム等の無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド等のアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネ−ト、アルミニウムアセチルアセテ−ト等とのアルミニウムキレ−ト化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物等があげられる。これらのうち酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、およびアルミニウムアセチルアセトネ−トが特に好ましい。Al化合物は、生成ポリマ−中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0028】
また、本発明に用いられるポリエステル(A)の製造において、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、これら元素の酢酸塩等のカルボン酸塩、アルコキサイド等があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
前記の触媒化合物は、前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加することができる。
【0029】
また、安定剤として種々のリン化合物を使用することができる。本発明で使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。リン化合物は、生成ポリマ−中のリン残存量として5〜100ppmの範囲になるように前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加する。
【0030】
本発明に用いられるポリエステル(A)の極限粘度は、好ましくは0.55〜1.30デシリットル/グラム、より好ましくは0.58〜1.10デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また1.30デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0031】
本発明に用いられるポリエステル(A)のチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.3〜5mm、好ましくは1.5〜4.5mm、さらに好ましくは1.6〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.3〜4mm、径は1.3〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜30mg/個の範囲が実用的である。本発明に用いられるポリエステル(A)の密度は、1.33〜1.43g/cm3、好ましくは1.37〜1.42g/cm3の範囲である。
【0032】
一般的にポリエステルは、製造工程中で発生する、共重合成分及び該共重合成分含量がポリエステルのチップと同一のファインをかなりの量含んでいる。このようなファインはポリエステルの結晶化を促進させる性質を持っており、多量に存在する場合には、このようなファインを含むポリエステル組成物から成形した成形体の透明性が非常に悪くなったり、またボトルの場合には、ボトル口栓部結晶化時の収縮量が規定値の範囲内に収まらずキャップで密栓できなくなるという問題が生じる。
【0033】
したがって、本発明に用いられるポリエステル(A)中のファインの含有量は500ppm以下、好ましくは300ppm以下が望ましい。含有量が500ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、例えば、中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値の範囲内に収まらず、口栓部のキャッピング不良となり、内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる場合がある。
【0034】
また、本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)は、メタキシリレンジアミン、もしくはメタキシリレンジアミンと全量の30%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンとジカルボン酸とから生成された構成単位を分子鎖中に少なくとも70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上、特に好ましくは80モル%以上含有したポリアミド樹脂である。
【0035】
共重合成分としてのジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類が使用できる。
【0036】
また、共重合成分としてのジアミン成分としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4‘−アミノヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン類、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンのような芳香族ジアミン類が使用できる。
これらのジカルボン酸やジアミンは、1種もしくは2種以上を任意の割合で組み合わせても使用できる。
【0037】
前記、ジアミン及び、ジカルボン酸以外にも、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等も共重合成分として使用できる。とりわけ、ε−カプロラクタムの使用が望ましい。
これら重合体の例としてはポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミド等のような単独重合体、及びメタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体等が挙げられる。
【0038】
前記のメタキシリレン基含有ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸から生成するアミノカルボン酸塩の水溶液を加圧下および常圧下に加熱し、水および重縮合反応で生ずる水を除去しながら溶融状態で重縮合させる方法、あるいはジアミンとジカルボン酸を加熱し、溶融状態で常圧下に直接反応させて重縮合させる方法等により製造することができる。また、これらの溶融重縮合反応により得られた前記ポリアミドのチップを固相重合することによって、さらに高粘度のメタキシリレン基含有ポリアミドを得ることができる。
前記のメタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。
【0039】
なお、必要に応じて、水酸化ナトリウムや酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属化合物、ホスフィン酸化合物、亜ホスホン酸化合物、ホスホン酸化合物、亜リン酸化合物などのリン化合物を熱分解抑制を目的として、あるいは重縮合触媒として加えることも可能である。これらの添加剤の残存量は、ポリアミド1グラム当り約0.5×10-6〜約50×10-6モルの範囲が好ましい。
【0040】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)中の前記アルカリ化合物の含有量は、リン原子含有量(X)の1.5〜6.0倍が好ましい。より好ましくは1.8〜5.5倍、更に好ましくは2.0〜5.0倍である。アルカリ化合物の含有量がリン原子含有量(X)の1.5倍より少ないと、ゲル化が促進されやすくなる。一方、アルカリ化合物の含有量がリン原子含有量(X)の6.0倍より多いと、重合速度が遅くなり、粘度も充分に上がらず、かつ特に減圧系ではゲル化が促進され不経済である。
【0041】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の相対粘度は、1.3〜4.0、好ましくは1.5〜3.7、より好ましくは1.7〜3.5、さらに好ましくは1.8〜3.0の範囲である。相対粘度が1.3以下では分子量が小さすぎて、本発明のポリエステル組成物からなる成形体の機械的性質に劣ることがある。逆に相対粘度が4.0以上では、前記ポリアミドの重合に長時間を要し、ポリマーの劣化や好ましくない着色の原因となる場合があるだけでなく、生産性が低下しコストアップ要因となることがある。
【0042】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)のチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.0〜5mm、好ましくは1.2〜4.5mm、さらに好ましくは1.5〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0043】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の密度は、1.20〜1.24g/cm3が好ましく、より好ましくは1.20〜1.23g/cm3の範囲である。
【0044】
前記のようにして製造したメタキシリレン基含有ポリアミドには、メタキシリレンジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸からなる環状アミド1量体、環状アミド2量体、環状アミド3量体及び環状アミド4量体等の環状オリゴマ−、アジピン酸等のジカルボン酸およびメタキシリレンジアミン等の未反応モノマ−、およびメタキシリレンジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸とからなる線状2量体、線状3量体等の線状オリゴマ−が含まれている。重縮合方法や重縮合条件、あるいは生成ポリアミドの分子量等によってもそれらの含有量は異なるが、一例として環状アミド1量体は0.2〜1.3重量%、環状アミド2量体は0.1〜1.5重量%、環状アミド3量体は0.1〜1.0重量%、環状アミド4量体は0.005〜0.5重量%、また未反応モノマ−類は0.1〜2000ppmのオ−ダ−である。
【0045】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルとメタキシリレン基含有ポリアミドとからなるポリエステル組成物を用いて、ガスバリヤ−性および/または香味(フレ−バ−)保持性に優れた成形体、特に耐熱性成形体の製造について検討した結果、前記の環状アミド1量体や環状アミド2量体が成形金型の汚れおよび香味保持性に影響を及ぼすことが判明した。
【0046】
すなわち、本発明のポリエステル組成物は、少なくとも主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)と、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)を混合して得られるポリエステル組成物であって、前記メタキシリレン基含有ポリアミド(B)中のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.9重量%以下、好ましくは0.8重量%以下、さらに好ましくは0.6重量%以下含むことを特徴とする。
【0047】
また、本発明のポリエステル組成物は、前記メタキシリレン基含有ポリアミド(B)中のメタキシリレン基含有環状アミド2量体の含有量が1.3重量%以下、好ましくは1.0重量%以下、さらに好ましくは0.8重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル組成物である。
【0048】
前記環状アミド1量体の含有量が0.9重量%を超えるメタキシリレン基含有ポリアミドを用いると、成形体成形時の金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着するために生じる金型汚れが非常に激しくなり、また得られた成形体に充填された内容物の香味保持性が悪くなることが判った。また、前記上限量を超えない量の環状1量体を含むメタキシリレン基含有ポリアミドの環状アミド2量体の含有量が、1.3重量%を超える場合には、成形体成形時の金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着するために生じる金型汚れがさらに一層激しくなることも判った。
【0049】
なお、ここで言うメタキシリレン基含有環状アミド1量体等の含有量は、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)が含むこれらの環状アミド1量体等の含有量を意味する。これら環状アミド1量体、環状アミド2量体、環状アミド3量体、環状アミド4量体の含有量の下限は、経済的な理由などからそれぞれ独立して、0.001ppmであることが好ましい。これらの環状オリゴマーは下記に記載する高速液体クロマトグラフ法によって測定する。
【0050】
ここで、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)がメタキシリレンジアミンとアジピン酸とから構成されるポリアミドである場合は、前記の環状オリゴマーの化学式は下記の式で表される。
【0051】
【化1】
(上記式1中、nは1〜4の整数を表す。)
【0052】
また、本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の末端アミノ基濃度(μmol/g)をAEG、またメタキシリレン基含有ポリアミドの末端カルボキシル基濃度(μmol/g)をCEGとした場合、CEGに対するAEGの比(AEG/CEG)が、1.05以上であることが好ましい。メタキシリレン基含有ポリアミド中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が1.05より小さい場合は、本発明のポリエステル組成物から得られる中空成形体の風味保持性が乏しくなり、このようなポリエステル組成物は低フレーバー飲料用の容器の原材料としては実用性に乏しい場合がある。また、メタキシリレン基含有ポリアミド中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が20を超える場合は、得られた成形体の着色が激しくなり商品価値がなくなるので好ましくない。
【0053】
本発明のポリエステル組成物を構成するポリエステル(A)とメタキシリレン基含有ポリアミド(B)との混合割合は、前記ポリエステル(A)100重量部に対して前記メタキシリレン基含有ポリアミド(B)0.01重量部〜100重量部であることが好ましい。前記のポリエステル組成物からAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れた成形体を得たい場合のメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の添加量は、前記ポリエステル(A)100重量部に対して0.01重量部以上、さらに好ましくは0.1重量部以上、特に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは5重量部未満、より好ましくは4重量部未満、さらに好ましくは3重量部未満である。
【0054】
またガスバリヤ−性が非常に優れ、かつ実用性を損なわない透明性を持ち、かつAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れた成形体を得たい場合は、前記ポリエステル(A)100重量部に対して好ましくは1以上、さらに好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下である。
【0055】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の混合量が、ポリエステル(A)100重量部に対して0.01重量部未満の場合は、得られた成形体のAA含有量が低減されず、成形体内容物の香味保持性が非常に悪くなることがあり好ましくない。また、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の混合量が、ポリエステル(A)100重量部に対して100重量部を超える場合は、得られた成形体の透明性が非常に悪くなったり、また成形体の機械的特性も低下する場合があり好ましくない。
【0056】
環状アミド1量体の含有量が0.9重量%以下のメタキシリレン基含有ポリアミド(B)、あるいは環状アミド1量体の含有量が0.9重量%以下で、かつ環状アミド2量体の含有量が1.3重量%以下のメタキシリレン基含有ポリアミド(B)は、例えば下記のようにして製造することができる。すなわち、前記の製造方法で得られたポリアミドチップをメタノ−ルあるいはエタノ−ル等のアルコ−ル類またはメタノ−ル水溶液あるいはエタノ−ル水溶液により加熱処理あるいは抽出処理することによって得ることができる。
【0057】
例えば、加熱処理槽に前記のポリアミドチップを入れ、50%エタノ−ル水溶液を加えて、約50〜60℃で処理して得られたチップを成形に供する。このような加熱処理等は、回分式処理装置で行っても良いしまた連続式処理装置で行っても良い。
【0058】
また、本発明に用いられるメテキシリレン基含有ポリアミドは、重縮合時のメタキシリレンジアミン等のジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸の添加比率を変更したり、また重縮合条件を変更することによっても得ることができる。
【0059】
また本発明に用いられる、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)の環状エステル3量体の含有量は好ましくは0.50重量%以下、より好ましくは0.45重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下である。本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合、環状エステル3量体の含有量が0.50重量%を超える含有量のポリエステルを使用する場合には、請求項1記載のような、環状アミド1量体および環状アミド2量体の合計含有量が2.0重量%以下のメタキシリレン基含有ポリアミド(B)を用いたとしても、加熱処理条件によっては加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。なお、環状エステル3量体とは、テレフタル酸とエチレングリコールとから構成される環状3量体のことである。
【0060】
また、本発明に用いられる、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)を290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が0.50重量%以下であることが望ましい。
環状エステル3量体の増加量は好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下であることが望ましい。290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が0.50重量%を越えるポリエステルを用いると、ポリエステル組成物を成形する際の樹脂溶融時に環状エステル3量体量が増加し、加熱処理条件によっては加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0061】
290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が0.50重量%以下である、本発明に用いられるポリエステル(A)は、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルに残存する重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。ポリエステル中の重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
【0062】
前記の目的を達成するためにポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法を次に述べる。
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0063】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0064】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0065】
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
【0066】
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は、粒状ポリエチレンテレフタレ−トを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
【0067】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は、通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
【0068】
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0069】
また、本発明に用いられる、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)は、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜1000ppmを配合してなることを特徴とするポリエステルである。本発明に用いられるポリエステル(A)中での前記のポリオレフィン樹脂等の配合割合は、0.1ppb〜1000ppm、好ましくは0.3ppb〜100ppm、より好ましくは0.5ppb〜1ppm、さらに好ましくは0.5ppb〜45pbbである。配合量が0.1ppb未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となるため、サイクルタイムを短くすると口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となったり、また、耐熱性中空成形体を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また1000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。また、シ−ト状物の場合、1000ppmを越えると透明性が非常に悪くなり、また延伸性もわるくなって正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フイルムしか得られない。
【0070】
本発明に用いられるポリエステル(A)に配合されるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはα−オレフィン系樹脂が挙げられる。
本発明に用いられるポリエステル(A)に配合されるポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂が挙げられる。
【0071】
また本発明に用いられるポリエステル(A)に配合されるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0072】
また本発明に用いられるポリエステル(A)に配合されるα−オレフィン系樹脂としては、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、ブテン−1−プロピレン共重合体等のブテン−1系樹脂や4−メチルペンテン−1とC2〜C18のα−オレフィンとの共重合体、等が挙げられる。
【0073】
また、本発明に用いられるポリエステル(A)に配合されるポリアミド樹脂としては、例えば、ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等が挙げられる。
【0074】
また、本発明に用いられるポリエステル(A)に配合されるポリアセタ−ル樹脂としては、例えばポリアセタ−ル単独重合体や共重合体が挙げられる。ポリアセタ−ル単独重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.40〜1.42g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.5〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ルが好ましい。
また、ポリアセタ−ル共重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.38〜1.43g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.4〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ル共重合体が好ましい。これらの共重合成分としては、エチレンオキサイドや環状エ−テルが挙げられる。
【0075】
また、本発明に用いられるポリエステル(A)に配合されるでポリブチレンテレフタレ−ト樹脂としては、例えばテレフタル酸と1,4−ブタンジオ−ルからなるポリブチレンテレフタレ−ト単独重合体やこれにナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル等を共重合した共重合体が挙げられる。
【0076】
また、本発明において用いられる前記のポリオレフィン樹脂等を配合したポリエステルは、前記ポリエステルに前記のポリオレフィン等の樹脂を、その含有量が前記範囲となるように、直接に添加し溶融混練する方法、または、マスタ−バッチとして添加し溶融混練する方法等の慣用の方法によるほか、前記のポリオレフィン等の樹脂を、前記ポリエステルの製造段階、例えば、溶融重縮合時、溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合時、固相重合直後等のいずれかの段階、または、製造段階を終えてから成形段階に到るまでの間に粉粒体として直接に添加するか、或いは、ポリエステルチップの流動条件下に前記のポリオレフィン等の樹脂製の部材に接触させる等の方法で混入させた後、溶融混練する方法等によることもできる。
【0077】
ここで、ポリエステルチップ状体を流動条件下に前記のポリオレフィン等の樹脂製の部材に接触させる方法としては、前記のポリオレフィン等の樹脂製の部材が存在する空問内で、ポリエステルチップを該部材に衝突接触させることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエステルの溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合直後等の製造工程時、また、ポリエステルチップの製品としての輸送段階等での輸送容器充填・排出時、また、ポリエステルチップの成形段階での成形機投入時、等における気力輸送配管、重力輸送配管、サイロ、マグネットキャッチャ−のマグネット部等の一部を前記のポリオレフィン等の樹脂製とするか、または、前記のポリオレフィン等の樹脂をライニングするとか、或いは前記移送経路内に棒状又は網状体等の前記のポリオレフィン等の樹脂製部材を設置する等して、ポリエステルチップを移送する方法が挙げられる。ポリエステルチップの前記部材との接触時間は、通常、0.01秒〜数分程度の極短時間であるが、ポリエステルに前記のポリオレフィン等の樹脂を微量混入させることができる。
【0078】
また、本発明に用いられる、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)のアセトアルデヒド含有量は50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下、であることが望ましい。特に、本発明のポリエステル組成物が、ミネラルウオータ等の低フレーバー飲料用の容器の材料として用いられる場合には、ポリエステル(A)のアセトアルデヒド含有量は8ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは4ppm以下であることが望ましい。アセトアルデヒド含有量が50ppmを超える場合は、このポリエステルから成形された成形体等の内容物の香味保持性の効果が悪くなる。
【0079】
また本発明に用いられる、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)中に共重合されたジエチレングリコ−ル量は前記ポリエステル(A)を構成するグリコ−ル成分の好ましくは1.0〜5.0モル%、より好ましくは1.3〜4.5モル%、さらに好ましくは1.5〜4.0モル%である。ジエチレングリコ−ル量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量やホルムアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコ−ル含有量が1.0モル%未満の場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。
【0080】
本発明のポリエステル組成物は、従来公知の方法により前記のポリエステル(A)と前記のポリアミド(B)を混合して得ることができる。例えば、前記のポリアミドチップと前記のポリエステルチップとをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合したもの、さらには必要に応じて溶融混合物を高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合したものなどが挙げられる。
【0081】
本発明のポリエステル組成物に飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を同時に併用することも可能である。
飽和脂肪酸モノアミドの例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミドの例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドリシノ−ル酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。好ましいアミド系化合物は、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等である。このようなアミド化合物の配合量は、10ppb〜1×105ppmの範囲である。
【0082】
また炭素数8〜33の脂肪族モノカルボン酸の金属塩化合物、例えばナフテン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノ−ル酸等の飽和及び不飽和脂肪酸のリチュウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、及びコバルト塩等を同時に併用することも可能である。これらの化合物の配合量は、10ppb〜300ppmの範囲である。
【0083】
本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて他の添加剤、例えば、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。また、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合することも可能である。
【0084】
また、本発明のポリエステル組成物をフイルム用途に使用する場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル組成物中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。
【0085】
ポリエステル(A)と、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の混合の方法としては、それぞれのチップをドライブレンド後溶融押し出しする方法や、それぞれを押し出し機の別々の投入口から投入して混合する方法、それぞれをロールミルにより練り込む方法等、様々な手段を用いることができる。
【0086】
本発明のポリエステル組成物は、一般的に用いられる溶融成形法を用いてフィルム、シート、容器、その他の包装材料を成形することができる。本発明のポリエステル組成物からなるシート状物は、それ自体公知の手段にて製造することができる。例えば、押出機とダイを備えた一般的なシート成形機を用いて製造することができる。
またこのシート状物は、圧空成形、真空成形によリカップ状やトレイ状に成形することもできる。
【0087】
本発明のポリエステル組成物からなる延伸フィルムは射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。
【0088】
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
【0089】
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のPETから成形したブリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜290℃の範囲である。延伸温度ば通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0090】
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォ−ムの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒ−タ設置オ−ブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒ−タで結晶化させる。
【0091】
また、本発明のポリエステル組成物は、積層成形体や積層フイルム等の一構成層としても用いることが出来る。特に、PETとの積層体の形で容器等の製造に使用される。積層成形体の例としては、本発明のポリエステル組成物からなる外層とPET内層との二層から構成される二層構造あるいは本発明のポリエステル組成物からなる内層とPET外層との二層から構成される二層構造の成形体、本発明のポリエステル組成物を含む中間層とPETの外層および最内層から構成される三層構造あるいは本発明のポリエステル組成物を含む外層および最内層とPETの中間層から構成される三層構造の成形体、本発明のポリエステル組成物を含む中間層とPETの最内層、中心層および最内層から構成される五層構造の成形体等が挙げられる。PET層には、他のガスバリア−性樹脂、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合使用することができる。
【0092】
また、その他の積層成形体の例としては、ポリオレフィン等のポリエステル以外の樹脂との積層成形体、紙や金属板等の異種の基材との積層成形体が挙げられる。
前記の積層成形体の厚み及び各層の厚みには特に制限は無い。また前記の積層成形体は、シ−ト状物、フイルム状物、板状物、中空体、容器等、種々の形状で使用可能である。
前記の積層体の製造は、樹脂層の種類に対応した数の押出機と多層多種ダイスを使用して共押出しにより行うこともできるし、また樹脂層の種類に対応した数の射出機と共射出ランナ−および射出型を使用して共射出により行うこともできる。
【0093】
本発明のポリエステル組成物は、中空成形体、トレ−、二軸延伸フイルム等の包装材、金属缶被覆用フイルム等として好ましく用いることが出来る。
また、本発明の組成物は、電子レンジおよび/またはオ−ブンレンジ等で食品を調理したり、あるいは冷凍食品を加熱するためのトレイ状容器の用途にも用いることができる。この場合は、ポリエステル組成物からのシ−ト状物をトレイ形状に成形後、熱結晶化させて耐熱性を向上させる。
なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0094】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
(評価方法)
【0095】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0096】
(2)ポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0097】
(3)ポリエステルの環状エステル3量体の含有量(以下「CT含有量」という)
試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル15mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状エステル3量体を定量した。
【0098】
(4)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。
【0099】
(5)ポリエステルの溶融時の環状エステル3量体増加量(以下「△CT量」という)
乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状エステル3量体増加量は、次式により求める。
溶融時の環状エステル3量体増加量(重量%)=
溶融後の環状エステル3量体含有量(重量%)−溶融前の環状エステル3量体含有量(重量%)
【0100】
(6)メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度(以下「Rv」という)
試料0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、この溶液10mlをオストワルド粘度管にて20℃で測定、下式より求めた。
Rv= t/t0
t0:溶媒の落下秒数
t :試料溶液の落下秒数
【0101】
(7)メタキシリレン基含有ポリアミドの環状アミド1量体含有量(以下「CM含有量」という)と環状アミド2量体含有量(以下「CD含有量」という)
試料100mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム20mlを加えて希釈し、メタノ−ル10mlを加える。濾紙で濾過後、濾液をエバポレ−タにより濃縮し、ジメチルフォルムアミド20mlに再溶解する。遠心濾過後、高速液体クロマトグラフ法により定量した。
なお、環状アミド2量体の含有量は環状アミド1量体換算値として求めた。
【0102】
(8)メタキシリレン基含有ポリアミドの末端アミノ基濃度(以下「AEG」という。μmol/g)
試料0.5gをフェノール/エタノール混合溶媒(容積比4/1)50mlに室温で溶解させた後、水/エタノール混合溶媒(容積比3/2)20mlを加え、撹拌する。その後、塩酸を用いて中和滴定を行い、末端アミノ基濃度を求めた。
【0103】
(9)メタキシリレン基含有ポリアミドの末端カルボキシル基濃度(以下「CEG」という,μmol/g)
試料0.5gにベンジルアルコール20mlを加え、170〜180℃のオイルバス中で加熱溶解後、水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行い、末端カルボキシル基濃度を求めた。
【0104】
(10)ポリエステルチップおよびメタキシリレン基含有ポリアミドチップの平均密度
硝酸カルシュウム/水混合溶液の密度勾配管で30℃で測定した。
【0105】
(11)ファインの含有量の測定
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径30cm)の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。
篩の下にふるい落とされたファインは、イオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量を求めた。ファイン含有量は、ファイン重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。
【0106】
(12)金型汚れの評価
窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したポリエステルチップの所定量および窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したメタキシリレン基含有ポリアミドチップの所定量をドライブレンドし、これを用いて各機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度285℃でプリフォ−ムを成形した。このプリフォ−ムの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コ−ポプラスト社製LB−01E延伸ブロ−成型機を用いて二軸延伸ブロ−成形し、引き続き約145℃に設定した金型内で熱固定し、1000ccの中空成形体を得た。同様の条件で2000本の中空成形体を連続的に延伸ブロ−成形し、その前後における金型表面の状態を目視で観察し、下記のように評価した。
○ : 連続成形試験の前後において変化なし
△ : 連続成形試験後にかなり付着物あり
× : 連続成形試験後に付着物が非常に多い
【0107】
(13)中空成形体の透明性
(12)の2000本成形後に得られた中空成形体の外観を目視で観察し、下記のように評価した。
◎ : 透明である
○ : 実用的な範囲で透明である
× : 透明性に劣る
【0108】
(14)官能試験
上記の中空成形体に沸騰した蒸留水を入れ密栓後30分保持し、室温へ冷却し室温で1ヶ月間放置し、開栓後風味、臭いなどの試験を行った。比較用のブランクとして、蒸留水を使用。官能試験は10人のパネラーにより次の基準により実施し、平均値で比較した。
(評価基準)
0:異味、臭いを感じない
1:ブランクとの差をわずかに感じる
2:ブランクとの差を感じる
3:ブランクとのかなりの差を感じる
4:ブランクとの非常に大きな差を感じる
【0109】
(15)シート状物の成形および冷却ロールの汚れ評価
窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したポリエステルチップの所定量および窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したメタキシリレン基含有ポリアミドチップの所定量をドライブレンドし、これを用いて自家製シーティング機にて約0.5mm厚みのシートを成形した。
1日間連続製造後の冷却ロールの汚れを目視で観察し、下記のように評価した。
○ : ロール表面の汚れが少ない
△ : ロール表面がかなり汚れている
× : ロール表面が非常に激しく汚れている
【0110】
(16)中空成形体の酸素透過量(cc/容器1本・24hr・atm)
Modern Controls社製酸素透過量測定器OX−TRAN100により、1000ccのボトル1本当りの透過量として20℃、0%RHで測定した。
【0111】
(実施例および比較例に使用したポリエチレンテレフタレ−ト(PET))
中空成形体の評価試験に用いたPET(A)〜(C)(Ge残存量=約40〜50ppm、P残存量=約30〜35ppm)及びシート状物の評価試験に用いたPET(G)の特性を表1に示す。PET(A)〜(C)は、すべて連続溶融重縮合−固相重合装置で重合したもの、またPET(G)は溶融重縮合装置で重合したものである。
またPET(A)は、固相重合後イオン交換水中で約90℃で3時間、熱水処理したものである。
なお、PET(A)〜PET(C)のDEG含有量はすべて約2.7モル%、ファイン含有量はすべて約30ppm以下、またPET(G)のDEG含有量は1.7モル%、ファイン含有量はすべて約80ppm以下であった。
【0112】
【表1】
【0113】
(実施例および比較例に使用したメタキシリレン基含有ポリアミド(Ny−MXD6))
試験に使用したNy−MXD6(D)〜Ny−MXD6(J)(すべて、P残存量=約210〜150ppm、Na残存量は約400〜300ppm)の特性を表2および表3に示す。
Ny−MXD6(D)は、重縮合釜中でメタキシリレンジアミン−アジピン酸塩の水溶液を、NaOHや NaH2PO2・H2Oの存在下において加圧下および常圧下に加熱して重縮合する回分式方法により得たものである。また、Ny−MXD6(E)およびNy−MXD6(F)は、Ny−MXD6(D)チップを加熱槽中で50%エタノ−ル溶液で加熱処理後、イオン交換水で洗浄して得たものである。
また、Ny−MXD6(H)、Ny−MXD6(I)およびNy−MXD6(J)は、前記と同じ重縮合釜を用いて、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の使用比率および重合条件を変更する以外は前記と同一条件下において重縮合する回分式方法により得たものである。
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
(実施例1)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(E)2重量部を用いて、評価方法(12)の方法により
中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表4に示す。
中空成形体のAA含有量は8ppm、官能試験評価は0.6、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0117】
(実施例2)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(F)2重量部を用いて、評価方法(12)の方法により
中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表4に示す。
中空成形体のAA含有量は9ppm、官能試験評価は0.6、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0118】
(実施例3)
PET(B)100重量部に対してNy−MXD6(E)2重量部を用いて、評価方法(12)の方法により
中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表4に示す。
中空成形体のAA含有量は9ppm、官能試験評価は0.7、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0119】
(実施例4)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(E)20重量部を用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表4に示す。
中空成形体のAA含有量は7ppm、官能試験評価は0.9、酸素透過量は0.20cc/容器1本・24hr・atm、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0120】
(実施例5)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(F)20重量部を用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表4に示す。
中空成形体のAA含有量は7ppm、官能試験評価は0.7、酸素透過量は0.20cc/容器1本・24hr・atm、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0121】
(比較例1)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(D)2重量部を用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表4に示す。
中空成形体のAA含有量は8ppmと低く、透明性も実用的な範囲で問題ないが、官能試験評価は2.0とブランクの蒸留水と差があり、また金型汚れもかなり付着物が認められた。
【0122】
(比較例2)
PET(B)100重量部に対してNy−MXD6(D)20重量部を用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表4に示す。
中空成形体のAA含有量は9ppmと低かったが、透明性は悪く、官能試験評価は2.5とブランクの蒸留水と差があり、また金型汚れも非常にひどかった。
【0123】
(比較例3)
PET(C)のみを用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表4に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
(実施例6)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(H)2重量部を用いて、評価方法(12)の方法により
中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表5に示す。
中空成形体のAA含有量は7ppm、官能試験評価は0.6、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0126】
(実施例7)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(I)2重量部を用いて、評価方法(12)の方法により
中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表5に示す。
中空成形体のAA含有量は9ppm、官能試験評価は0.9、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0127】
(実施例8)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(H)10重量部を用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表5に示す。
中空成形体のAA含有量は7ppm、官能試験評価は0.7、酸素透過量は0.30cc/容器1本・24hr・atm、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0128】
(比較例4)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(J)2重量部を用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表5に示す。
中空成形体のAA含有量は11ppmで、透明性も実用的な範囲で問題ないが、官能試験評価は2.8とブランクの蒸留水とかなりの差があり、また金型汚れもあり、かなり付着物が認められた。
【0129】
(比較例5)
PET(B)100重量部に対してNy−MXD6(J)10重量部を用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表5に示す。
中空成形体のAA含有量は8ppmと低かったが、透明性は悪く、官能試験評価は3.0とブランクの蒸留水と差がかなりあり、また金型汚れも非常にひどかった。
【0130】
【表5】
【0131】
(実施例9)
PET(G)100重量部に対してNy−MXD6(F)5重量部を用いて、(15)の方法でシート状物を成形すると同時に評価方法(15)の方法によりシート状物生産時の冷却ロール汚れを評価した。
得られたシートの特性の評価結果を表6に示す。
シートのAA含有量は13ppm、また冷却ロールの汚れは○であった。
(比較例6)
PET(G)100重量部に対してNy−MXD6(D)5重量部を用いて、実施例9と同様の方法でシート状物の評価を実施した。
得られたシートの特性の評価結果を表6に示す。
シートのAA含有量は15ppm、また冷却ロールの汚れは×であった。
(比較例7)
PET(G)のみを用いて、実施例9と同様の方法でシート状物の評価を実施した。
得られたシートの特性の評価結果を表6に示す。
【0132】
【表6】
【0133】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物によれば、透明性、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れており、また耐熱寸法安定性に優れた中空成形体や成形後の寸法安定性に優れたシ−ト状物および延伸フイルムが得られる。
Claims (9)
- 少なくとも主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)と、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)を混合して得られるポリエステル組成物であって、前記メタキシリレン基含有ポリアミド(B)中のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.9重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
- 前記メタキシリレン基含有ポリアミド(B)中のメタキシリレン基含有環状アミド2量体の含有量が1.3重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル組成物。
- 前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)が含有する環状エステル3量体の含有量が、0.5重量%以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)を290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が、0.50重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- 前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜1000ppmを配合したポリエステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
- 請求項6に記載の成形体が、中空成形体であることを特徴とする成形体。
- 請求項6に記載の成形体が、シ−ト状物であることを特徴とする成形体。
- 請求項6に記載の成形体が、請求項8に記載のシ−ト状物を少なくとも1方向に延伸してなる延伸フイルムであることを特徴とする成形体。
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