JP2005298533A - ポリエステル組成物及びそれからなるポリエステル包装材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明性、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れたポリエステル組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするグリコール成分とからなるポリエステル100重量部と、メタキシリレン基含有ポリアミド0.01〜30重量部とからなるポリエステル組成物であって、該ポリエステル組成物を290℃の成形温度で射出成形して得られた成形体のColor−L値が80.0以上であり、かつヘイズが20%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするグリコール成分とからなるポリエステル100重量部と、メタキシリレン基含有ポリアミド0.01〜30重量部とからなるポリエステル組成物であって、該ポリエステル組成物を290℃の成形温度で射出成形して得られた成形体のColor−L値が80.0以上であり、かつヘイズが20%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シ−トなどの成形体の素材として好適に用いられるポリエステル組成物およびそれからなるポリエステル包装材料に関するものである。特に本発明のポリエステル組成物から得られたポリエステル包装材料は、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れており、また透明性に優れた中空成形体や成形後の透明性に優れたシ−ト状物および延伸フィルムなどの包装材料を与える。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称することがある)などのポリエステルは、機械的性質及び化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フィルム、シ−ト、ボトルなどとして広く使用されている。
【0003】
調味料、油、飲料、化粧品、洗剤などの容器の素材としては、充填内容物の種類およびその使用目的に応じて種々の樹脂が採用されている。
【0004】
これらのうちでポリエステルは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤ−性に優れているので、特にジュ−ス、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器等の成形体の素材として最適である。
【0005】
このようなポリエステルは、例えば、射出成形機械などの成形機に供給して中空成形体用プリフォ−ムを成形し、このプリフォ−ムを所定形状の金型に挿入し延伸ブロ−成形した後ボトルの胴部を熱処理(ヒ−トセット)して中空成形容器に成形され、さらには必要に応じてボトルの口栓部を熱処理(口栓部結晶化)させるのが一般的である。また、押出成形機によって溶融後、押出して冷却ロール上でシートやフィルム等に成形する。
【0006】
また、PETは、溶融重縮合時の副生物としてアセトアルデヒド(以下、AAと略称することがある)を含有する。また、PETは、中空成形体等の成形体を熱成形する際に熱分解によりアセトアルデヒドを生成し、得られた成形体の材質中のアセトアルデヒド含有量が多くなり、中空成形体等に充填された飲料等の風味や臭いに影響を及ぼす。
【0007】
したがって、従来よりポリエステル成形体中のアセトアルデヒド含有量を低減させるために種々の方策が採られてきた。一般的には、溶融重縮合したポリエステルを固相重合することによってAA含有量を低下させる方法、融点がより低い共重合ポリエステルを使用して成形時のAA生成を低下させる方法、熱成形時における成形温度を可及的に低くする方法および熱成形時におけるせん断応力を可及的に小さくする方法等が公知である。
【0008】
近年、ポリエチレンテレフタレ−トを中心とするポリエステル製容器は、ミネラルウオ−タやウ−ロン茶等の低フレ−バ−飲料用の容器として使用されるようになってきた。このような飲料の場合は、一般にこれらの飲料を熱充填したり、または充填後加熱して殺菌されるが、前記の方法によるポリエステル成形体材質中のAA含有量低減だけでは、これらの容器内容物の風味や臭いが改善されないことがわかってきた。
【0009】
このような問題の解決策として、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂0.05重量部以上、1重量部未満を添加したポリエステル組成物を用いる方法(例えば、特許文献1
参照)や、熱可塑性ポリエステルに、末端アミノ基濃度をある範囲に規制した特定のポリアミドを含有させたポリエステル組成物からなるポリエステル製容器(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、ミネラルウオ−タ等の低フレ−バ−飲料用の容器の材料としては不十分な場合があることが判ってきた。
【0010】
一方、PETを主体とするポリエステル成形体は前記のとおりガスバリヤ−性に優れているが、ビタミンC等のように酸素に非常に敏感な化合物を含有する内容物用の中空成形体等としては不満足である。
【0011】
このような問題点を解決するために、例えば、我々は、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂1〜100重量部を含有させたポリエステル中空成形体(例えば、特許文献3参照)を提案した。しかしながら、このようなポリエステル組成物を用いて得られる中空成形体の透明性が乏しく、実用性に乏しい場合がある。特に、ポリエステルの重縮合触媒にアンチモン系触媒が使用されている場合、透明性および色調が悪いものであった。
【0012】
【特許文献1】
特公平6−6662号公報
【0013】
【特許文献2】
特公平4−71425号公報
【0014】
【特許文献1】
特公平4−54702号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解決することにあり、透明性に優れるポリエステル組成物を提供する事を目的とし、さらに、前記ポリエステル組成物を成形して得たガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れたポリエステル包装材料を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするグリコール成分とからなるポリエステル100重量部と、メタキシリレン基含有ポリアミド0.01〜30重量部とからなるポリエステル組成物において、前記ポリエステル中に残存するアンチモン原子の含有量をある範囲内に規定することで、透明性と香味保持性、あるいは透明性、香味保持性およびガスバリヤ−性に優れたポリエステル包装材料が得られることを見出した。
【0017】
すなわち本発明のポリエステル組成物は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするグリコール成分とからなるポリエステル100重量部と、メタキシリレン基含有ポリアミド0.01〜30重量部とからなるポリエステル組成物であって、該ポリエステル組成物を290℃の成形温度で射出成形して得られた成形品のColor−L値が80.0以上であり、かつヘイズが20%以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0018】
この場合において、前記ポリエステル中に残存するアンチモン(Sb)原子の含有量が200ppm以下であることができる。
この場合において、前記ポリエステル組成物を射出成形して得られる成形体のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)と、射出成形前のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)との差(At−A0)が、20ppm以下であることができる。
この場合において、前記ポリエステルが含有するファインの含有量が、1000ppm以下であることができる。
この場合において、前記ポリエステルが、エチレンテレフタレ−トを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることができる。
この場合において、前記メタキシリレン基含有ポリアミドが、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなる繰り返し単位を少なくとも70モル%以上含むポリアミドであることができる。
この場合において、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル組成物を成形してなることを特徴とするポリエステル包装材料である。
この場合において、前記ポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量が20ppm以下であることができる。
この場合において、前記のポリエステル包装材料が、中空成形体、シ−ト状物あるいはこのシート状物を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フィルムのいずれかであることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステル組成物およびそれからなるポリエステル包装材料の実施の形態を具体的に説明する。
本発明に用いられるポリエステルは、主として芳香族ジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするグリコール成分とから得られる結晶性熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位とエチレングリコール単位とからなる繰返し単位を85モル%以上含む熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは95モル%以上含む熱可塑性ポリエステルである。
【0020】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルを構成するグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ルが挙げられる
【0021】
前記熱可塑性ポリエステル中に共重合成分として使用される酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びそのエステル形成性誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性
誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0022】
前記熱可塑性ポリエステル中に共重合成分として使用されるグリコ−ル成分としては、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0023】
さらに、熱可塑性ポリエステルが実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリト−ル、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0024】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを含む線状共重合熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいくはエチレンテレフタレ−ト単位を95モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
【0025】
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−ジオキシエチレンテレフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0026】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を95モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
【0027】
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−ジオキシエチレン−2,6−ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0028】
前記の熱可塑性ポリエステルは、従来公知の製造方法によって製造することが出来る。即ち、PETの場合には、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物またはAl化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物または Al化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0029】
さらに熱可塑性ポリエステルの極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含有量や環状エステル3量体含有量を低下させるために固相重合を行ってもよい。
前記のエステル化反応、エステル交換反応、溶融重縮合反応および固相重合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0030】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として200ppm以下になるように添加することが好ましい。好ましい上限は190ppm、更に好ましい上限は180ppmである。本発明に用いられるポリエステル中に残存するアンチモン原子の含有量が200ppmより多いと、本発明のポリエステル組成物から得られる成形体にアンチモン由来の黒ずみが発生しやすくなり、透明性が乏しくなる場合がある。好ましい下限は50ppmであり、50ppmより少ないとポリエステルの重縮合反応が遅くなり、生産性に乏しくなるため実用的ではない場合がある。
【0031】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量は熱可塑性ポリエステル中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0032】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるTi化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマ−中のTi残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0033】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるAl化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。Al化合物は、生成ポリマ−中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0034】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造において、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、これら元素の酢酸塩等のカルボン酸塩、アルコキサイド等があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0035】
前記の触媒化合物は、前記熱可塑性ポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加することができる。
また、安定剤として種々のリン化合物を使用することができる。本発明で使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。リン化合物は、生成ポリマ−中のリン残存量として5〜100ppmの範囲になるように前記の熱可塑性ポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加する。
【0036】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルの極限粘度は、好ましくは0.55〜1.50デシリットル/グラム、より好ましくは0.58〜1.30デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られた包装材料等の機械的特性が悪い。また1.50デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、包装材料が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0037】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルの極限粘度は0.40〜1.00デシリットル/グラム、好ましくは0.42〜0.95デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.45〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.40デシリットル/グラム未満では、得られた包装材料等の機械的特性が悪い。また、1.00デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、包装材料が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0038】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.3〜5mm、好ましくは1.5〜4.5mm、さらに好ましくは1.6〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.3〜4mm、径は1.3〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0039】
また本発明に用いられる前記熱可塑性ポリエステルの環状エステル3量体の含有量は、好ましくは0.70重量%以下、より好ましくは0.60重量%以下、さらに好ましくは0.50重量%以下、特に好ましくは0.45以下である。本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合、環状エステル3量体の含有量が0.70重量%を超える含有量のポリエステルを使用する場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。また、シート状物を製膜する場合には、冷却ロールやタッチロールの汚れが激しく、表面状態の悪い、透明性に劣るシート状物しか得られない。なお、環状エステル3量体とは、テレフタル酸とエチレングリコールとから構成される環状3量体のことである。
【0040】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルは、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルに残存する重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。
ポリエステル中の重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
前記の目的を達成するためにポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法を次に述べる。
【0041】
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0042】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0043】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0044】
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
【0045】
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は、粒状ポリエチレンテレフタレ−トを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
【0046】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は、通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
【0047】
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0048】
また重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0049】
溶融重縮合ポリエステルの場合には、溶融重縮合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステル樹脂とを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合して重縮合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0050】
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、重縮合触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
【0051】
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0052】
一般的に熱可塑性ポリエステルは、製造工程中で発生する、共重合成分及び該共重合成分含量が熱可塑性ポリエステルのチップと同一である微粉、すなわち、ファインをかなりの量含んでいる。このようなファインは熱可塑性ポリエステルの結晶化を促進させる性質を持っており、多量に存在する場合には、このようなファインを含む前記ポリエステル組成物から成形したポリエステル包装材料の透明性が非常に悪くなったり、またボトルの場合には、ボトル口栓部結晶化時の収縮量が規定値の範囲内に収まらずキャップで密栓できなくなるという問題が生じる。したがって、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル中のファインの含有量は1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下が望ましい。
【0053】
また、本発明に用いられる前記熱可塑性ポリエステルのアセトアルデヒド含有量は50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下、であることが望ましい。特に、本発明のポリエステル組成物が、ミネラルウオータ等の低フレーバー飲料用の容器の材料として用いられる場合には、前記熱可塑性ポリエステルのアセトアルデヒド含有量は8ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは4ppm以下であることが望ましい。アセトアルデヒド含有量が50ppmを超える場合は、このポリエステルから成形されたポリエステル包装材料の内容物の香味保持性の効果が悪くなる。
【0054】
また本発明に用いられる前記熱可塑性ポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル量は、前記熱可塑性ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは1.0〜5.0モル%、より好ましくは1.3〜4.5モル%、さらに好ましくは1.5〜4.0モル%である。ジエチレングリコ−ル量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量やホルムアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコ−ル含有量が1.0モル%未満の場合は、得られたポリエステル包装材料の透明性が悪くなる。
【0055】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドは、メタキシリレンジアミン、もしくはメタキシリレンジアミンと全量の30%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンとジカルボン酸とから生成される構成単位を分子鎖中に少なくとも70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上、特に好ましくは80モル%以上含有したポリアミドである。
【0056】
また、本発明において特に好ましく用いられるポリアミドは、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなる繰り返し単位を少なくとも70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上、特に好ましくは80モル%以上含むポリアミドである。
【0057】
共重合成分としてのジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類が使用できる。
【0058】
また、共重合成分としてのジアミン成分としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4‘−アミノヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン類、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンのような芳香族ジアミン類が使用できる。
これらのジカルボン酸やジアミンは、1種もしくは2種以上を任意の割合で組み合わせても使用できる。
【0059】
前記、ジアミン及び、ジカルボン酸以外にも、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等も共重合成分として使用できる。とりわけ、ε−カプロラクタムの使用が望ましい。
【0060】
これら重合体の例としてはポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド等のような単独重合体、及びメタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸/ω−アミノカプロン酸共重合体、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体等が挙げられる。
【0061】
前記のメタキシリレン基含有ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸から生成するアミノカルボン酸塩の水溶液を加圧下および常圧下に加熱し、水および重縮合反応で生ずる水を除去しながら溶融状態で重縮合させる方法、あるいはジアミンとジカルボン酸を加熱し、溶融状態で常圧下、あるいは引き続き真空下に直接反応させて重縮合させる方法等により製造することができる。また、これらの溶融重縮合反応により得られた前記ポリアミドのチップを固相重合することによって、さらに高粘度のメタキシリレン基含有ポリアミドを得ることができる。
【0062】
前記のメタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。
【0063】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドの製造の際には、熱安定性を向上させてゲル化を防止するために下記化学式(A)で表されるアルカリ金属含有化合物を添加する。前記メタキシリレン基含有ポリアミド中のアルカリ金属原子含有量は、1〜1000ppmの範囲内にあることが好ましい。
Z−OR8 (A)
(ただし、Zはアルカリ金属、R8は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−C(O)CH3 または−C(O)OZ'、(Z'は水素、アルカリ金属))
【0064】
化学式(A)で表されるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびアルカリ土類金属を含むアルカリ土類化合物などが挙げられるが、いずれもこれらの化合物に限定されるものではない。
【0065】
また前記メタキシリレン基含有ポリアミドの製造の際には、熱劣化によるゲル化を防止するための安定剤として、リン化合物を添加して重合することが好ましい。
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド中の前記リン化合物由来のリン原子含有量をXとすると、0<X≦500ppmの範囲であることが好ましい。下限は好ましくは0.1ppmであり、より好ましくは1ppmであり、さらに好ましくは5pmである。上限は好ましくは400ppmであり、より好ましくは300ppmであり、さらに好ましくは250ppmである。Xが0、すなわちリン原子が全く含まれていないと、重縮合時のゲル化防止効果が劣る。一方、Xが上記範囲より多いとゲル化防止効果に限界が認められ、かつ不経済である。さらには、リンの還元作用により触媒のSbが還元され金属Sbとなり、color−L値を低下させる場合がある。color−L値を高くするには、Sb量が多い場合であれば、リンの含有量を低くすることが好ましい。
前記メタキシリレン基含有ポリアミド中に添加するリン化合物としては、下記化学式(B−1)〜(B−4)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0066】
【化1】
【0067】
【化2】
【0068】
【化3】
【0069】
【化4】
(ただし、R1〜R7は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基またはアリールアルキル基、X1〜X5は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアルカリ金属、あるいは各式中のX1〜X5とR1〜R7のうちそれぞれ1個は互いに連結して環構造を形成してもよい)
【0070】
化学式(B−1)で表されるホスフィン酸化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、
【0071】
【化5】
又は、
【0072】
【化6】
の化合物およびこれらの加水分解物、ならびに上記ホスフィン酸化合物の縮合物などがある。
化学式(B−2)で表される亜ホスホン酸化合物としては、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチルなどがある。
【0073】
化学式(B−3)で表されるホスホン酸化合物としてはフェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウムなどがある。
【0074】
化学式(B−4)で表される亜リン酸化合物としては、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸などがある。
【0075】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド中の全アルカリ金属の含有量(前記リン系安定剤に含まれるアルカリ金属原子の量と前記アルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属原子の量との合計量)が、同ポリアミド中のリン原子の含有量の1.0〜6.0倍モルであることが好ましい。下限はより好ましくは1.5倍モル、さらに好ましくは2.0倍モル、特に好ましくは2.3倍モル、最も好ましくは2.5倍モルであり、上限はより好ましくは、5.5倍モル、更に好ましくは5.0倍モルである。全アルカリ金属の含有量がリン原子含有量の1.0倍モルより少ないと、ゲル化が促進されやすくなる。一方、全アルカリ金属の含有量がリン原子含有量の6.0倍モルより多いと、重合速度が遅くなり、粘度も充分に上がらず、かつ特に減圧系ではかえってゲル化が促進され不経済である。
【0076】
本発明で使用する前記化学式(A)および化学式(B−1)〜(B−4)で表される化合物はそれぞれ単独で用いてもよいが、特に併用して用いる方が、ポリエステル組成物の熱安定性が向上するので好ましい。
【0077】
本発明で用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドに前記リン化合物や前記アルカリ金属含有化合物を配合するには、ポリアミドの重合前の原料、重合中にこれらを添加するかあるいは前記重合体に溶融混合してもよい。
またこれらの化合物は同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。
【0078】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度は、1.0〜4.0、好ましくは1.3〜3.0、より好ましくは1.5〜2.5、さらに好ましくは1.8〜2.0の範囲である。相対粘度が1.0以下では分子量が小さすぎて、本発明のポリエステル組成物からなる包装材料の機械的性質に劣ることがある。逆に相対粘度が4.0以上では、前記ポリアミドの重合に長時間を要し、ポリマーの劣化や好ましくない着色の原因となる場合があるだけでなく、生産性が低下しコストアップ要因となることがある。
【0079】
また、本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドの末端アミノ基濃度(μmol/g)をAEG、またメタキシリレン基含有ポリアミドの末端カルボキシル基濃度(μmol/g)をCEGとした場合、CEGに対するAEGの比(AEG/CEG)が、1.05以上であることが好ましい。メタキシリレン基含有ポリアミド中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が1.05より小さい場合は、本発明のポリエステル包装材料の風味保持性が乏しくなり、このようなポリエステル包装材料は低フレーバー飲料用の容器としては実用性に乏しい場合がある。また、メタキシリレン基含有ポリアミド中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が20を超える場合は、得られたポリエステル包装材料の着色が激しくなり商品価値がなくなるので好ましくない。
【0080】
また、本発明のポリエステル組成物を構成する前記メタキシリレン基含有ポリアミド中のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.9重量%以下、好ましくは0.8重量%以下、さらに好ましくは0.6重量%以下であることが好ましい。
【0081】
前記環状アミド1量体の含有量が0.9重量%を超えるメタキシリレン基含有ポリアミドを用いると、得られた成形体に充填された内容物の香味保持性が悪くなり、また成形体成形時の金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着するために生じる金型汚れが非常に激しくなる。なお、ここで言うメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量は、メタキシリレン基含有ポリアミドが含む、環状アミド1量体の含有量を意味する。この環状アミド1量体含有量の下限値は、経済的な理由などから、0.001ppmであることが好ましい。環状アミド1量体は下記に記載する高速液体クロマトグラフ法によって測定する。
【0082】
なお、前記のようにして製造したメタキシリレン基含有ポリアミドには、メタキシリレンジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸からなる環状アミド1量体以外に、環状アミド2量体、環状アミド3量体及び環状アミド4量体等の環状オリゴマ−、アジピン酸等のジカルボン酸およびメタキシリレンジアミン等の未反応モノマ−、およびメタキシリレンジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸とからなる線状2量体、線状3量体等の線状オリゴマ−が含まれている。
【0083】
ここで、メタキシリレン基含有ポリアミドがメタキシリレンジアミンとアジピン酸とから構成されるポリアミドである場合は、前記の環状オリゴマーの化学式は下記の式で表される。
【0084】
【化7】
(上記式1中、nは1〜4の整数を表す。)
【0085】
環状アミド1量体の含有量が0.9重量%以下のメタキシリレン基含有ポリアミドは、例えば下記のようにして製造することができる。すなわち、前記の製造方法で得られたポリアミドチップをメタノ−ルあるいはエタノ−ル等のアルコ−ル類またはメタノ−ル水溶液あるいはエタノ−ル水溶液により加熱処理あるいは抽出処理することによって得ることができる。
【0086】
例えば、加熱処理槽に前記のポリアミドチップを入れ、50%エタノ−ル水溶液を加えて、約50〜60℃で処理して得られたチップを成形に供する。このような加熱処理等は、回分式処理装置で行っても良いしまた連続式処理装置で行っても良い。
【0087】
また、本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドは、重縮合時のメタキシリレンジアミン等のジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸の添加比率を変更したり、また重縮合条件を変更することによっても得ることができる。
【0088】
本発明のポリエステル組成物を構成するメタキシリレン基含有ポリアミドの三級窒素の含有量は、2.0モル%以下、好ましくは1.5モル%以下、さらに好ましくは1.0モル%以下である。三級窒素の含有量が2.0モル%を超えるメタキシリレン基含有ポリアミドを含むポリエステル組成物を用いて得た成形体は、ゲル化物による着色した異物状物を含み、また色も悪くなることがある。特に延伸成形して得た延伸フィルムや二軸延伸中空成形体では、ゲル状物の存在する個所は正常に延伸されずに肉厚となって、厚み斑の原因となり、商品価値のない成形体が多く発生し、歩留まりを悪くする場合があり、最悪の場合は商品価値のない成形体しか得られないことがある。
【0089】
また、3級窒素の含有量の下限は、製造上の理由から0.001モル%であることが好ましく、より好ましくは0.01モル%、さらに好ましくは0.05モル%、特に好ましくは0.1モル%である。3級窒素の含有量が0.001モル%未満のメタキシリレン基含有ポリアミドを製造しようとする際には、高度に精製した原料を用いる、劣化防止剤を大量に必要とする、重合温度を低く保つ必要がある等の生産性に問題が起こることがある。
【0090】
なお,ここで言う三級窒素とは、イミノ化合物に基づく窒素と三級アミドに基づく窒素の両者であり、三級窒素の含有量は、二級アミド(−NHCO−:通常の主鎖を構成するアミド)に基づく窒素に対するモル比(モル%)で表わした含有量である。
【0091】
ポリアミド中にイミノ基が多い場合は、成形中にイミノ基部分とジカルボン酸末端が反応してゲル化物が発生する場合があり、ポリアミド中に三級アミドが多いとゲル化物が多くなることがある。
【0092】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.0〜5mm、好ましくは1.2〜4.5mm、さらに好ましくは1.5〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は5〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0093】
本発明のポリエステル組成物を下記の測定法(8)に記載した方法で射出成形して得られた成形体のColor−L値が80.0以上であり、かつヘイズが20%以下であることが好ましい。より好ましいColor−L値は82.0以上、さらに好ましくは84.0以上である。また、より好ましいヘイズは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。得られた成形体のColor−L値が80.0より小さい、もしくはヘイズが20%より高いとポリエステル包装材料の透明性が悪いだけでなく、外観が黒ずんで見えるので包装材料としての価値に乏しい場合がある。
【0094】
本発明のポリエステル組成物を下記の測定法(4)に記載した方法で射出成形して得られた成形体のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)と、射出成形前のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)との差(At−A0)が、20ppm以下、好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、最も好ましくは5ppm以下であることが好ましい。射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差 (At−A0)が20ppmを超える場合には、得られたポリエステル包装材料の香味保持性が悪くなる。また、射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(At−A0)の下限は1ppmであり、これ以下に低減するにはポリエステル包装材料の生産条件を非生産的な条件にしなければならず、不経済である。
【0095】
本発明のポリエステル組成物を構成する前記熱可塑性ポリエステルとメタキシリレン基含有ポリアミドとの混合割合は、前記ポリエステル100重量部に対して前記メタキシリレン基含有ポリアミド0.01重量部〜30重量部である。前記のポリエステル組成物からAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れたポリエステル包装材料を得たい場合のメタキシリレン基含有ポリアミドの添加量は、前記ポリエステル100重量部に対して0.01重量部以上、さらに好ましくは0.1重量部以上、特に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは5重量部未満、より好ましくは2重量部未満、さらに好ましくは1重量部未満である。
【0096】
またガスバリヤ−性が非常に優れ、かつ実用性を損なわない透明性を持ち、かつAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れたポリエステル包装材料を得たい場合は、前記熱可塑性ポリエステル100重量部に対して好ましくは2以上、さらに好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。
【0097】
メタキシリレン基含有ポリアミドの混合量が、前記熱可塑性ポリエステル100重量部に対して0.01重量部未満の場合は、得られたポリエステル包装材料のAA含有量が低減されず、ポリエステル包装材料内容物の香味保持性が非常に悪くなることがあり好ましくない。また、メタキシリレン基含有ポリアミドの混合量が、前記熱可塑性ポリエステル100重量部に対して30重量部を超える場合は、得られたポリエステル包装材料の透明性が非常に悪くなったり、またポリエステル包装材料の機械的特性も低下する場合があり好ましくない。
【0098】
本発明のポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量は20ppm以下、好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。本発明のポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量が20ppmを超える場合には、ポリエステル包装材料の香味保持性が悪くなる。また、ポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量の下限値は3ppmであり、これ以下に低減するには採算を度外視した成形となり問題である。
【0099】
本発明のポリエステル包装材料の極限粘度は、好ましくは0.55〜1.00デシリットル/グラム、より好ましくは0.58〜0.95デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて他の添加剤、例えば、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、染料や顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。また、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合することも可能である。
【0100】
また、本発明のポリエステル包装材料がフィルムの場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル組成物中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を配合させることが出来る。
【0101】
本発明のポリエステル包装材料は、公知の製造方法によって得ることができる。以下には、代表例として、熱可塑性ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、種々のポリエステル包装材料の簡単な製法を説明する。
【0102】
本発明のポリエステル包装材料用の樹脂組成物は、従来公知の方法により前記の熱可塑性ポリエステルと前記のポリアミドを混合して得ることができる。例えば、前記のポリアミドチップと前記の熱可塑性ポリエステルチップとをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合したもの、溶融混合物と前記のポリエステルをドライブレンドしたもの、さらには必要に応じて溶融混合物を高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合したものなどが挙げられる。
【0103】
さらに、前記ポリアミドを粉砕して用いてもよい。特に前記ポリアミドを少量用いる組成物の場合は好都合である。粉砕した場合の粒径は約10メッシュ以下が好ましい。また前記ポリアミドをヘキサフロロイソプロパノールなどの溶剤に溶解させた溶液を熱可塑性ポリエステルのチップの表面に付着させる方法、前記ポリアミド製の部材が存在する空間内で、前記熱可塑性ポリエステルを前記部材に衝突接触させて前記熱可塑性ポリエステルチップ表面に前記ポリアミドを付着させる方法などが挙げられる。
【0104】
本発明のポリエステル包装材料がシート状物である場合は、例えば、押出機とダイを備えた一般的なシート成形機を用いて製造することができる。
【0105】
またこのシート状物は、圧空成形、真空成形によリカップ状やトレイ状に成形することもできる。また、本発明のポリエステル包装材料は、電子レンジおよび/またはオ−ブンレンジ等で食品を調理したり、あるいは冷凍食品を加熱するためのトレイ状容器の用途にも用いることができる。この場合は、シ−ト状物をトレイ形状に成形後、熱結晶化させて耐熱性を向上させる。
【0106】
本発明のポリエステル包装材料が延伸フィルムである場合は、射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。
【0107】
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
【0108】
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のPET組成物から成形したプリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜310℃の範囲である。延伸温度ば通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0109】
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォ−ムの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒ−タ設置オ−ブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒ−タで結晶化させる。
【0110】
また、本発明のポリエステル包装材料は、積層成形体や積層フィルム等の一構成層であることができる。特に、PETとの積層体の形で容器等に使用される。積層成形体の例としては、本発明のポリエステル包装材料からなる外層とPET内層との二層から構成される二層構造あるいは本発明のポリエステル包装材料からなる内層とPET外層との二層から構成される二層構造の成形体、本発明のポリエステル包装材料を含む中間層とPETの外層および最内層から構成される三層構造あるいは本発明のポリエステル包装材料を含む外層および最内層とPETの中間層から構成される三層構造の成形体、本発明のポリエステル包装材料を含む中間層とPETの最内層、中心層および最内層から構成される五層構造の成形体等が挙げられる。PET層には、他のガスバリア−性樹脂、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合使用することができる。
【0111】
また、その他の積層成形体の例としては、ポリオレフィン等の熱可塑性ポリエステル以外の樹脂との積層成形体、紙や金属板等の異種の基材との積層成形体が挙げられる。
【0112】
前記の積層成形体の厚み及び各層の厚みには特に制限は無い。また前記の積層成形体は、シ−ト状物、フィルム状物、板状物、中空体、容器等、種々の形状で使用可能である。
【0113】
前記の積層体の製造は、樹脂層の種類に対応した数の押出機と多層多種ダイスを使用して共押出しにより行うこともできるし、また樹脂層の種類に対応した数の射出機と共射出ランナ−および射出型を使用して共射出により行うこともできる。
【0114】
本発明のポリエステル包装材料は、ラミネート金属板の片面あるいは両面にラミネートするフィルムであることができる。用いられる金属板としては、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等が挙げられる。
【0115】
ラミネート法としては、従来公知の方法が適用でき、特に限定されないが、有機溶剤フリーが達成でき、残留溶剤による食料品の味や臭いに対する悪影響が回避できるサーマルラミネート法で行うことが好ましい。なかでも、金属板の通電加工によるサーマルラミネート法が特に推奨される。また、両面ラミネートの場合は、同時にラミネートしてもよいし、逐次でラミネートしてもよい。
なお、接着剤を用いてフィルムを金属板にラミネートできることはいうまでもない。
【0116】
また、金属容器は、前記ラミネート金属板を用いて成形することによって得られる。前記金属容器の成形方法は特に限定されるものではない。また、金属容器の形状も特に限定されるものではないが、絞り成型、絞りしごき成型、ストレッチドロー成型等の成型加工により製缶されるいわゆる2ピース缶への適用が好ましいが、例えばレトルト食品やコーヒー飲料等の食料品を充填するのに好適な天地蓋を巻締めて内容物を充填する、いわゆる3ピース缶へも適用可能である。
【0117】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0118】
(評価方法)
(1)ポリエステル、ポリエステル組成物およびポリエステル包装材料の極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。(単位はデシリットル/グラム)
【0119】
(2)ポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0120】
(3)ポリエステル、ポリエステル組成物およびポリエステル包装材料のアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)(ppm)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れたあと、窒素シール下にアンプル上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。
【0121】
(4)ポリエステル組成物の射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(以下「At−A0」という)(ppm)
窒素気流下で50〜100℃で十分乾燥した、それぞれの実施例または比較例の組成のポリエステル組成物を名機製作所製M−150C(DM)射出成形機により、シリンダー温度290℃において、10℃の水で冷却した段付平板金型(表面温度約22℃)を用いて段付成形板を射出成形する。得られた段付成形板は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11mmの厚みの約3cm×約5cm角のプレートを階段状に備えたもので、1個の重量は約146gである。2mm厚みのプレートより試料を採取し、(3)の測定方法によってアセトアルデヒド含有量(At)を求め、下記の式より射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差を求める。
射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(At−A0)(ppm)
= 射出成形後の段付成形板のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)
− 射出成形前の乾燥したポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)
【0122】
(5)色調(Color−L値)
下記(8)の成形体(肉厚2mm)より試料を切り取り、東京電色(株)製色差計TC−1500MC−88型を用いて測定した。Color−L値は測定値が100に近いほど白色、0に近づくほど灰色から黒を示す。また、測定の際は、予め装置を電源投入後1時間以上放置して十分安定させて行った。
【0123】
(6)ヘイズ(霞度%)
下記(8)の成形体(肉厚5mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメーター、modelNDH2000で測定。
【0124】
(7)ポリエステル中の残存アンチモン原子の定量(ppm)
ポリエステルチップを300℃で溶融処理した後、蛍光X線法で定量した。
【0125】
(8)段付成形板の成形
窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥した熱可塑性ポリエステルチップの所定量および窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したメタキシリレン基含有ポリアミドチップの所定量をドライブレンドし、これを用いて名機製作所製M−150C(DM)射出成形機により、シリンダー温度290℃において、前記(4)で用いるのと同じ段付平板金型(10℃の水で冷却し、表面温度約22℃)を用い成形する(スクリュー回転数120rpm、スクリュー背圧0.5MPa、冷却時間50秒、1サイクル72〜73秒)。2mm厚みのプレートは色調(Color−L値)測定、およびヘイズ(霞度%)測定に使用する。
【0126】
(9)メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度(以下「Rv」という)
試料0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、この溶液10mlをオストワルド粘度管にて20℃で測定、下式より求めた。
Rv= t/t0
t0:溶媒の落下秒数
t :試料溶液の落下秒数
【0127】
(10)ファインの含有量の測定
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径30cm)の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。
篩の下にふるい落とされたファインは、イオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量を求めた。ファイン含有量は、ファイン重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。
【0128】
(11)中空成形体の透明性
窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥した熱可塑性ポリエステルチップの所定量および窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したメタキシリレン基含有ポリアミドチップの所定量をドライブレンドし、これを用いて名機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度290℃でプリフォ−ムを成形した。このプリフォ−ムの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コ−ポプラスト社製LB−01E延伸ブロ−成型機を用いて二軸延伸ブロ−成形し、引き続き約150℃に設定した金型内で熱固定し、1000ccの中空成形体を得た。同様の条件で2000本の中空成形体を連続的に延伸ブロ−成形した。2000本成形後に得られた中空成形体の外観を目視で観察し、下記の評価基準によって評価した。
(評価基準)
◎ : 透明である
○ : 実用的な範囲で透明であり、未溶融物等の異物は見られない
△ : 実用的な範囲で透明であるが、未溶融物等の異物が認められる。
× : 透明性に劣る、着色が認められる、又は未溶融物が見られる
【0129】
(12)官能試験
上記の中空成形体に沸騰した蒸留水を入れ密栓後、約90度で30分間保持し、室温へ冷却し室温で1ヶ月間放置し、開栓後風味、臭いなどの試験を行った。比較用のブランクとして、蒸留水を使用。官能試験は10人のパネラーにより次の基準により実施し、平均値で比較した。
(評価基準)
0:異味、臭いを感じない
1:ブランクとの差をわずかに感じる
2:ブランクとの差を感じる
3:ブランクとのかなりの差を感じる
4:ブランクとの非常に大きな差を感じる
【0130】
(13)酸素透過量(cc/容器1本・24hr・atm)
Modern Controls社製酸素透過量測定器OX−TRAN100により、1000ccのボトル1本当りの透過量として20℃、0%RHで測定した。
【0131】
(実施例および比較例に使用したポリエチレンテレフタレ−ト(PET))
評価試験に用いたPET(A)、(B)、(C)の特性を表1に示す。(DEG含有量はすべて約2.7モル%)PET(A)、(B)は、すべて連続溶融重縮合−固相重合装置で重合したもの、またPET(C)は連続溶融重縮合装置による溶融重縮合PETを回分式固相重合装置でIVを上げたもの。
【0132】
【表1】
【0133】
(実施例および比較例に使用したメタキシリレン基含有ポリアミド(Ny−MXD6))
試験に使用したNy−MXD6(D)、Ny−MXD6(E)(すべて、P残存量=約210〜150ppm、Na残存量は約400〜300ppm)のRVは、それぞれ1.3,1.8であった。
Ny−MXD6(D)、(E)は、重縮合釜中でメタキシリレンジアミン−アジピン酸塩の水溶液を、NaOHやNaH2PO2・H2Oの存在下において加圧下および常圧下に加熱して重縮合する回分式方法により得たものである。
【0134】
(実施例1)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(E)0.5重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板は色調、ヘイズともに良好であった。また、中空成形体のAA含有量は7ppm、官能試験評価は0.7、外観は実用的な範囲で透明であった。
【0135】
(実施例2)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(E)3.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板は色調、ヘイズともに良好であった。また、中空成形体のAA含有量は6ppm、官能試験評価は0.6、外観は実用的な範囲で透明であった。
【0136】
(実施例3)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(D)3.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板は色調、ヘイズともに良好であった。また、中空成形体のAA含有量は7ppm、官能試験評価は0.6、外観は実用的な範囲で透明であった。
【0137】
(実施例4)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(E)20.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板は色調、ヘイズともに良好であった。また、中空成形体のAA含有量は6ppm、官能試験評価は0.7、外観は実用的な範囲で透明であった。
【0138】
(比較例1)
PET(B)100重量部に対してNy−MXD6(E)3.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板はColor−L値が低く、黒ずんでいた。また、中空成形体のAA含有量は9ppm、官能試験評価は0.8と良好であったが、透明性は悪かった。
【0139】
(比較例2)
PET(C)100重量部に対してNy−MXD6(E)20.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板の色調はよかったが、ヘイズ値が高かった。また、中空成形体のAA含有量は10ppm、官能試験評価は0.8と良好であったが、透明性は悪かった。
【0140】
【表2】
【0141】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物によれば、透明性、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れた中空成形体やシ−ト状物および延伸フィルムが得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シ−トなどの成形体の素材として好適に用いられるポリエステル組成物およびそれからなるポリエステル包装材料に関するものである。特に本発明のポリエステル組成物から得られたポリエステル包装材料は、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れており、また透明性に優れた中空成形体や成形後の透明性に優れたシ−ト状物および延伸フィルムなどの包装材料を与える。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称することがある)などのポリエステルは、機械的性質及び化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フィルム、シ−ト、ボトルなどとして広く使用されている。
【0003】
調味料、油、飲料、化粧品、洗剤などの容器の素材としては、充填内容物の種類およびその使用目的に応じて種々の樹脂が採用されている。
【0004】
これらのうちでポリエステルは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤ−性に優れているので、特にジュ−ス、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器等の成形体の素材として最適である。
【0005】
このようなポリエステルは、例えば、射出成形機械などの成形機に供給して中空成形体用プリフォ−ムを成形し、このプリフォ−ムを所定形状の金型に挿入し延伸ブロ−成形した後ボトルの胴部を熱処理(ヒ−トセット)して中空成形容器に成形され、さらには必要に応じてボトルの口栓部を熱処理(口栓部結晶化)させるのが一般的である。また、押出成形機によって溶融後、押出して冷却ロール上でシートやフィルム等に成形する。
【0006】
また、PETは、溶融重縮合時の副生物としてアセトアルデヒド(以下、AAと略称することがある)を含有する。また、PETは、中空成形体等の成形体を熱成形する際に熱分解によりアセトアルデヒドを生成し、得られた成形体の材質中のアセトアルデヒド含有量が多くなり、中空成形体等に充填された飲料等の風味や臭いに影響を及ぼす。
【0007】
したがって、従来よりポリエステル成形体中のアセトアルデヒド含有量を低減させるために種々の方策が採られてきた。一般的には、溶融重縮合したポリエステルを固相重合することによってAA含有量を低下させる方法、融点がより低い共重合ポリエステルを使用して成形時のAA生成を低下させる方法、熱成形時における成形温度を可及的に低くする方法および熱成形時におけるせん断応力を可及的に小さくする方法等が公知である。
【0008】
近年、ポリエチレンテレフタレ−トを中心とするポリエステル製容器は、ミネラルウオ−タやウ−ロン茶等の低フレ−バ−飲料用の容器として使用されるようになってきた。このような飲料の場合は、一般にこれらの飲料を熱充填したり、または充填後加熱して殺菌されるが、前記の方法によるポリエステル成形体材質中のAA含有量低減だけでは、これらの容器内容物の風味や臭いが改善されないことがわかってきた。
【0009】
このような問題の解決策として、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂0.05重量部以上、1重量部未満を添加したポリエステル組成物を用いる方法(例えば、特許文献1
参照)や、熱可塑性ポリエステルに、末端アミノ基濃度をある範囲に規制した特定のポリアミドを含有させたポリエステル組成物からなるポリエステル製容器(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、ミネラルウオ−タ等の低フレ−バ−飲料用の容器の材料としては不十分な場合があることが判ってきた。
【0010】
一方、PETを主体とするポリエステル成形体は前記のとおりガスバリヤ−性に優れているが、ビタミンC等のように酸素に非常に敏感な化合物を含有する内容物用の中空成形体等としては不満足である。
【0011】
このような問題点を解決するために、例えば、我々は、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂1〜100重量部を含有させたポリエステル中空成形体(例えば、特許文献3参照)を提案した。しかしながら、このようなポリエステル組成物を用いて得られる中空成形体の透明性が乏しく、実用性に乏しい場合がある。特に、ポリエステルの重縮合触媒にアンチモン系触媒が使用されている場合、透明性および色調が悪いものであった。
【0012】
【特許文献1】
特公平6−6662号公報
【0013】
【特許文献2】
特公平4−71425号公報
【0014】
【特許文献1】
特公平4−54702号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解決することにあり、透明性に優れるポリエステル組成物を提供する事を目的とし、さらに、前記ポリエステル組成物を成形して得たガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れたポリエステル包装材料を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするグリコール成分とからなるポリエステル100重量部と、メタキシリレン基含有ポリアミド0.01〜30重量部とからなるポリエステル組成物において、前記ポリエステル中に残存するアンチモン原子の含有量をある範囲内に規定することで、透明性と香味保持性、あるいは透明性、香味保持性およびガスバリヤ−性に優れたポリエステル包装材料が得られることを見出した。
【0017】
すなわち本発明のポリエステル組成物は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするグリコール成分とからなるポリエステル100重量部と、メタキシリレン基含有ポリアミド0.01〜30重量部とからなるポリエステル組成物であって、該ポリエステル組成物を290℃の成形温度で射出成形して得られた成形品のColor−L値が80.0以上であり、かつヘイズが20%以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0018】
この場合において、前記ポリエステル中に残存するアンチモン(Sb)原子の含有量が200ppm以下であることができる。
この場合において、前記ポリエステル組成物を射出成形して得られる成形体のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)と、射出成形前のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)との差(At−A0)が、20ppm以下であることができる。
この場合において、前記ポリエステルが含有するファインの含有量が、1000ppm以下であることができる。
この場合において、前記ポリエステルが、エチレンテレフタレ−トを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることができる。
この場合において、前記メタキシリレン基含有ポリアミドが、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなる繰り返し単位を少なくとも70モル%以上含むポリアミドであることができる。
この場合において、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル組成物を成形してなることを特徴とするポリエステル包装材料である。
この場合において、前記ポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量が20ppm以下であることができる。
この場合において、前記のポリエステル包装材料が、中空成形体、シ−ト状物あるいはこのシート状物を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フィルムのいずれかであることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステル組成物およびそれからなるポリエステル包装材料の実施の形態を具体的に説明する。
本発明に用いられるポリエステルは、主として芳香族ジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするグリコール成分とから得られる結晶性熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位とエチレングリコール単位とからなる繰返し単位を85モル%以上含む熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは95モル%以上含む熱可塑性ポリエステルである。
【0020】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルを構成するグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ルが挙げられる
【0021】
前記熱可塑性ポリエステル中に共重合成分として使用される酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びそのエステル形成性誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性
誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0022】
前記熱可塑性ポリエステル中に共重合成分として使用されるグリコ−ル成分としては、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0023】
さらに、熱可塑性ポリエステルが実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリト−ル、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0024】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを含む線状共重合熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいくはエチレンテレフタレ−ト単位を95モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
【0025】
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−ジオキシエチレンテレフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0026】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を95モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
【0027】
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−ジオキシエチレン−2,6−ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0028】
前記の熱可塑性ポリエステルは、従来公知の製造方法によって製造することが出来る。即ち、PETの場合には、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物またはAl化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物または Al化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0029】
さらに熱可塑性ポリエステルの極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含有量や環状エステル3量体含有量を低下させるために固相重合を行ってもよい。
前記のエステル化反応、エステル交換反応、溶融重縮合反応および固相重合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0030】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として200ppm以下になるように添加することが好ましい。好ましい上限は190ppm、更に好ましい上限は180ppmである。本発明に用いられるポリエステル中に残存するアンチモン原子の含有量が200ppmより多いと、本発明のポリエステル組成物から得られる成形体にアンチモン由来の黒ずみが発生しやすくなり、透明性が乏しくなる場合がある。好ましい下限は50ppmであり、50ppmより少ないとポリエステルの重縮合反応が遅くなり、生産性に乏しくなるため実用的ではない場合がある。
【0031】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量は熱可塑性ポリエステル中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0032】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるTi化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマ−中のTi残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0033】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるAl化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。Al化合物は、生成ポリマ−中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0034】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造において、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、これら元素の酢酸塩等のカルボン酸塩、アルコキサイド等があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0035】
前記の触媒化合物は、前記熱可塑性ポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加することができる。
また、安定剤として種々のリン化合物を使用することができる。本発明で使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。リン化合物は、生成ポリマ−中のリン残存量として5〜100ppmの範囲になるように前記の熱可塑性ポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加する。
【0036】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルの極限粘度は、好ましくは0.55〜1.50デシリットル/グラム、より好ましくは0.58〜1.30デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られた包装材料等の機械的特性が悪い。また1.50デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、包装材料が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0037】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルの極限粘度は0.40〜1.00デシリットル/グラム、好ましくは0.42〜0.95デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.45〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.40デシリットル/グラム未満では、得られた包装材料等の機械的特性が悪い。また、1.00デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、包装材料が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0038】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.3〜5mm、好ましくは1.5〜4.5mm、さらに好ましくは1.6〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.3〜4mm、径は1.3〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0039】
また本発明に用いられる前記熱可塑性ポリエステルの環状エステル3量体の含有量は、好ましくは0.70重量%以下、より好ましくは0.60重量%以下、さらに好ましくは0.50重量%以下、特に好ましくは0.45以下である。本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合、環状エステル3量体の含有量が0.70重量%を超える含有量のポリエステルを使用する場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。また、シート状物を製膜する場合には、冷却ロールやタッチロールの汚れが激しく、表面状態の悪い、透明性に劣るシート状物しか得られない。なお、環状エステル3量体とは、テレフタル酸とエチレングリコールとから構成される環状3量体のことである。
【0040】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルは、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルに残存する重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。
ポリエステル中の重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
前記の目的を達成するためにポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法を次に述べる。
【0041】
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0042】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0043】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0044】
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
【0045】
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は、粒状ポリエチレンテレフタレ−トを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
【0046】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は、通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
【0047】
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0048】
また重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0049】
溶融重縮合ポリエステルの場合には、溶融重縮合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステル樹脂とを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合して重縮合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0050】
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、重縮合触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
【0051】
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0052】
一般的に熱可塑性ポリエステルは、製造工程中で発生する、共重合成分及び該共重合成分含量が熱可塑性ポリエステルのチップと同一である微粉、すなわち、ファインをかなりの量含んでいる。このようなファインは熱可塑性ポリエステルの結晶化を促進させる性質を持っており、多量に存在する場合には、このようなファインを含む前記ポリエステル組成物から成形したポリエステル包装材料の透明性が非常に悪くなったり、またボトルの場合には、ボトル口栓部結晶化時の収縮量が規定値の範囲内に収まらずキャップで密栓できなくなるという問題が生じる。したがって、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル中のファインの含有量は1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下が望ましい。
【0053】
また、本発明に用いられる前記熱可塑性ポリエステルのアセトアルデヒド含有量は50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下、であることが望ましい。特に、本発明のポリエステル組成物が、ミネラルウオータ等の低フレーバー飲料用の容器の材料として用いられる場合には、前記熱可塑性ポリエステルのアセトアルデヒド含有量は8ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは4ppm以下であることが望ましい。アセトアルデヒド含有量が50ppmを超える場合は、このポリエステルから成形されたポリエステル包装材料の内容物の香味保持性の効果が悪くなる。
【0054】
また本発明に用いられる前記熱可塑性ポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル量は、前記熱可塑性ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは1.0〜5.0モル%、より好ましくは1.3〜4.5モル%、さらに好ましくは1.5〜4.0モル%である。ジエチレングリコ−ル量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量やホルムアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコ−ル含有量が1.0モル%未満の場合は、得られたポリエステル包装材料の透明性が悪くなる。
【0055】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドは、メタキシリレンジアミン、もしくはメタキシリレンジアミンと全量の30%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンとジカルボン酸とから生成される構成単位を分子鎖中に少なくとも70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上、特に好ましくは80モル%以上含有したポリアミドである。
【0056】
また、本発明において特に好ましく用いられるポリアミドは、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなる繰り返し単位を少なくとも70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上、特に好ましくは80モル%以上含むポリアミドである。
【0057】
共重合成分としてのジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類が使用できる。
【0058】
また、共重合成分としてのジアミン成分としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4‘−アミノヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン類、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンのような芳香族ジアミン類が使用できる。
これらのジカルボン酸やジアミンは、1種もしくは2種以上を任意の割合で組み合わせても使用できる。
【0059】
前記、ジアミン及び、ジカルボン酸以外にも、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等も共重合成分として使用できる。とりわけ、ε−カプロラクタムの使用が望ましい。
【0060】
これら重合体の例としてはポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド等のような単独重合体、及びメタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸/ω−アミノカプロン酸共重合体、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体等が挙げられる。
【0061】
前記のメタキシリレン基含有ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸から生成するアミノカルボン酸塩の水溶液を加圧下および常圧下に加熱し、水および重縮合反応で生ずる水を除去しながら溶融状態で重縮合させる方法、あるいはジアミンとジカルボン酸を加熱し、溶融状態で常圧下、あるいは引き続き真空下に直接反応させて重縮合させる方法等により製造することができる。また、これらの溶融重縮合反応により得られた前記ポリアミドのチップを固相重合することによって、さらに高粘度のメタキシリレン基含有ポリアミドを得ることができる。
【0062】
前記のメタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。
【0063】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドの製造の際には、熱安定性を向上させてゲル化を防止するために下記化学式(A)で表されるアルカリ金属含有化合物を添加する。前記メタキシリレン基含有ポリアミド中のアルカリ金属原子含有量は、1〜1000ppmの範囲内にあることが好ましい。
Z−OR8 (A)
(ただし、Zはアルカリ金属、R8は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−C(O)CH3 または−C(O)OZ'、(Z'は水素、アルカリ金属))
【0064】
化学式(A)で表されるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびアルカリ土類金属を含むアルカリ土類化合物などが挙げられるが、いずれもこれらの化合物に限定されるものではない。
【0065】
また前記メタキシリレン基含有ポリアミドの製造の際には、熱劣化によるゲル化を防止するための安定剤として、リン化合物を添加して重合することが好ましい。
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド中の前記リン化合物由来のリン原子含有量をXとすると、0<X≦500ppmの範囲であることが好ましい。下限は好ましくは0.1ppmであり、より好ましくは1ppmであり、さらに好ましくは5pmである。上限は好ましくは400ppmであり、より好ましくは300ppmであり、さらに好ましくは250ppmである。Xが0、すなわちリン原子が全く含まれていないと、重縮合時のゲル化防止効果が劣る。一方、Xが上記範囲より多いとゲル化防止効果に限界が認められ、かつ不経済である。さらには、リンの還元作用により触媒のSbが還元され金属Sbとなり、color−L値を低下させる場合がある。color−L値を高くするには、Sb量が多い場合であれば、リンの含有量を低くすることが好ましい。
前記メタキシリレン基含有ポリアミド中に添加するリン化合物としては、下記化学式(B−1)〜(B−4)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0066】
【化1】
【0067】
【化2】
【0068】
【化3】
【0069】
【化4】
(ただし、R1〜R7は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基またはアリールアルキル基、X1〜X5は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアルカリ金属、あるいは各式中のX1〜X5とR1〜R7のうちそれぞれ1個は互いに連結して環構造を形成してもよい)
【0070】
化学式(B−1)で表されるホスフィン酸化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、
【0071】
【化5】
又は、
【0072】
【化6】
の化合物およびこれらの加水分解物、ならびに上記ホスフィン酸化合物の縮合物などがある。
化学式(B−2)で表される亜ホスホン酸化合物としては、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチルなどがある。
【0073】
化学式(B−3)で表されるホスホン酸化合物としてはフェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウムなどがある。
【0074】
化学式(B−4)で表される亜リン酸化合物としては、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸などがある。
【0075】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミド中の全アルカリ金属の含有量(前記リン系安定剤に含まれるアルカリ金属原子の量と前記アルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属原子の量との合計量)が、同ポリアミド中のリン原子の含有量の1.0〜6.0倍モルであることが好ましい。下限はより好ましくは1.5倍モル、さらに好ましくは2.0倍モル、特に好ましくは2.3倍モル、最も好ましくは2.5倍モルであり、上限はより好ましくは、5.5倍モル、更に好ましくは5.0倍モルである。全アルカリ金属の含有量がリン原子含有量の1.0倍モルより少ないと、ゲル化が促進されやすくなる。一方、全アルカリ金属の含有量がリン原子含有量の6.0倍モルより多いと、重合速度が遅くなり、粘度も充分に上がらず、かつ特に減圧系ではかえってゲル化が促進され不経済である。
【0076】
本発明で使用する前記化学式(A)および化学式(B−1)〜(B−4)で表される化合物はそれぞれ単独で用いてもよいが、特に併用して用いる方が、ポリエステル組成物の熱安定性が向上するので好ましい。
【0077】
本発明で用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドに前記リン化合物や前記アルカリ金属含有化合物を配合するには、ポリアミドの重合前の原料、重合中にこれらを添加するかあるいは前記重合体に溶融混合してもよい。
またこれらの化合物は同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。
【0078】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度は、1.0〜4.0、好ましくは1.3〜3.0、より好ましくは1.5〜2.5、さらに好ましくは1.8〜2.0の範囲である。相対粘度が1.0以下では分子量が小さすぎて、本発明のポリエステル組成物からなる包装材料の機械的性質に劣ることがある。逆に相対粘度が4.0以上では、前記ポリアミドの重合に長時間を要し、ポリマーの劣化や好ましくない着色の原因となる場合があるだけでなく、生産性が低下しコストアップ要因となることがある。
【0079】
また、本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドの末端アミノ基濃度(μmol/g)をAEG、またメタキシリレン基含有ポリアミドの末端カルボキシル基濃度(μmol/g)をCEGとした場合、CEGに対するAEGの比(AEG/CEG)が、1.05以上であることが好ましい。メタキシリレン基含有ポリアミド中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が1.05より小さい場合は、本発明のポリエステル包装材料の風味保持性が乏しくなり、このようなポリエステル包装材料は低フレーバー飲料用の容器としては実用性に乏しい場合がある。また、メタキシリレン基含有ポリアミド中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が20を超える場合は、得られたポリエステル包装材料の着色が激しくなり商品価値がなくなるので好ましくない。
【0080】
また、本発明のポリエステル組成物を構成する前記メタキシリレン基含有ポリアミド中のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.9重量%以下、好ましくは0.8重量%以下、さらに好ましくは0.6重量%以下であることが好ましい。
【0081】
前記環状アミド1量体の含有量が0.9重量%を超えるメタキシリレン基含有ポリアミドを用いると、得られた成形体に充填された内容物の香味保持性が悪くなり、また成形体成形時の金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着するために生じる金型汚れが非常に激しくなる。なお、ここで言うメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量は、メタキシリレン基含有ポリアミドが含む、環状アミド1量体の含有量を意味する。この環状アミド1量体含有量の下限値は、経済的な理由などから、0.001ppmであることが好ましい。環状アミド1量体は下記に記載する高速液体クロマトグラフ法によって測定する。
【0082】
なお、前記のようにして製造したメタキシリレン基含有ポリアミドには、メタキシリレンジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸からなる環状アミド1量体以外に、環状アミド2量体、環状アミド3量体及び環状アミド4量体等の環状オリゴマ−、アジピン酸等のジカルボン酸およびメタキシリレンジアミン等の未反応モノマ−、およびメタキシリレンジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸とからなる線状2量体、線状3量体等の線状オリゴマ−が含まれている。
【0083】
ここで、メタキシリレン基含有ポリアミドがメタキシリレンジアミンとアジピン酸とから構成されるポリアミドである場合は、前記の環状オリゴマーの化学式は下記の式で表される。
【0084】
【化7】
(上記式1中、nは1〜4の整数を表す。)
【0085】
環状アミド1量体の含有量が0.9重量%以下のメタキシリレン基含有ポリアミドは、例えば下記のようにして製造することができる。すなわち、前記の製造方法で得られたポリアミドチップをメタノ−ルあるいはエタノ−ル等のアルコ−ル類またはメタノ−ル水溶液あるいはエタノ−ル水溶液により加熱処理あるいは抽出処理することによって得ることができる。
【0086】
例えば、加熱処理槽に前記のポリアミドチップを入れ、50%エタノ−ル水溶液を加えて、約50〜60℃で処理して得られたチップを成形に供する。このような加熱処理等は、回分式処理装置で行っても良いしまた連続式処理装置で行っても良い。
【0087】
また、本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドは、重縮合時のメタキシリレンジアミン等のジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸の添加比率を変更したり、また重縮合条件を変更することによっても得ることができる。
【0088】
本発明のポリエステル組成物を構成するメタキシリレン基含有ポリアミドの三級窒素の含有量は、2.0モル%以下、好ましくは1.5モル%以下、さらに好ましくは1.0モル%以下である。三級窒素の含有量が2.0モル%を超えるメタキシリレン基含有ポリアミドを含むポリエステル組成物を用いて得た成形体は、ゲル化物による着色した異物状物を含み、また色も悪くなることがある。特に延伸成形して得た延伸フィルムや二軸延伸中空成形体では、ゲル状物の存在する個所は正常に延伸されずに肉厚となって、厚み斑の原因となり、商品価値のない成形体が多く発生し、歩留まりを悪くする場合があり、最悪の場合は商品価値のない成形体しか得られないことがある。
【0089】
また、3級窒素の含有量の下限は、製造上の理由から0.001モル%であることが好ましく、より好ましくは0.01モル%、さらに好ましくは0.05モル%、特に好ましくは0.1モル%である。3級窒素の含有量が0.001モル%未満のメタキシリレン基含有ポリアミドを製造しようとする際には、高度に精製した原料を用いる、劣化防止剤を大量に必要とする、重合温度を低く保つ必要がある等の生産性に問題が起こることがある。
【0090】
なお,ここで言う三級窒素とは、イミノ化合物に基づく窒素と三級アミドに基づく窒素の両者であり、三級窒素の含有量は、二級アミド(−NHCO−:通常の主鎖を構成するアミド)に基づく窒素に対するモル比(モル%)で表わした含有量である。
【0091】
ポリアミド中にイミノ基が多い場合は、成形中にイミノ基部分とジカルボン酸末端が反応してゲル化物が発生する場合があり、ポリアミド中に三級アミドが多いとゲル化物が多くなることがある。
【0092】
本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.0〜5mm、好ましくは1.2〜4.5mm、さらに好ましくは1.5〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は5〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0093】
本発明のポリエステル組成物を下記の測定法(8)に記載した方法で射出成形して得られた成形体のColor−L値が80.0以上であり、かつヘイズが20%以下であることが好ましい。より好ましいColor−L値は82.0以上、さらに好ましくは84.0以上である。また、より好ましいヘイズは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。得られた成形体のColor−L値が80.0より小さい、もしくはヘイズが20%より高いとポリエステル包装材料の透明性が悪いだけでなく、外観が黒ずんで見えるので包装材料としての価値に乏しい場合がある。
【0094】
本発明のポリエステル組成物を下記の測定法(4)に記載した方法で射出成形して得られた成形体のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)と、射出成形前のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)との差(At−A0)が、20ppm以下、好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、最も好ましくは5ppm以下であることが好ましい。射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差 (At−A0)が20ppmを超える場合には、得られたポリエステル包装材料の香味保持性が悪くなる。また、射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(At−A0)の下限は1ppmであり、これ以下に低減するにはポリエステル包装材料の生産条件を非生産的な条件にしなければならず、不経済である。
【0095】
本発明のポリエステル組成物を構成する前記熱可塑性ポリエステルとメタキシリレン基含有ポリアミドとの混合割合は、前記ポリエステル100重量部に対して前記メタキシリレン基含有ポリアミド0.01重量部〜30重量部である。前記のポリエステル組成物からAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れたポリエステル包装材料を得たい場合のメタキシリレン基含有ポリアミドの添加量は、前記ポリエステル100重量部に対して0.01重量部以上、さらに好ましくは0.1重量部以上、特に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは5重量部未満、より好ましくは2重量部未満、さらに好ましくは1重量部未満である。
【0096】
またガスバリヤ−性が非常に優れ、かつ実用性を損なわない透明性を持ち、かつAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れたポリエステル包装材料を得たい場合は、前記熱可塑性ポリエステル100重量部に対して好ましくは2以上、さらに好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。
【0097】
メタキシリレン基含有ポリアミドの混合量が、前記熱可塑性ポリエステル100重量部に対して0.01重量部未満の場合は、得られたポリエステル包装材料のAA含有量が低減されず、ポリエステル包装材料内容物の香味保持性が非常に悪くなることがあり好ましくない。また、メタキシリレン基含有ポリアミドの混合量が、前記熱可塑性ポリエステル100重量部に対して30重量部を超える場合は、得られたポリエステル包装材料の透明性が非常に悪くなったり、またポリエステル包装材料の機械的特性も低下する場合があり好ましくない。
【0098】
本発明のポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量は20ppm以下、好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。本発明のポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量が20ppmを超える場合には、ポリエステル包装材料の香味保持性が悪くなる。また、ポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量の下限値は3ppmであり、これ以下に低減するには採算を度外視した成形となり問題である。
【0099】
本発明のポリエステル包装材料の極限粘度は、好ましくは0.55〜1.00デシリットル/グラム、より好ましくは0.58〜0.95デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて他の添加剤、例えば、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、染料や顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。また、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合することも可能である。
【0100】
また、本発明のポリエステル包装材料がフィルムの場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル組成物中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を配合させることが出来る。
【0101】
本発明のポリエステル包装材料は、公知の製造方法によって得ることができる。以下には、代表例として、熱可塑性ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、種々のポリエステル包装材料の簡単な製法を説明する。
【0102】
本発明のポリエステル包装材料用の樹脂組成物は、従来公知の方法により前記の熱可塑性ポリエステルと前記のポリアミドを混合して得ることができる。例えば、前記のポリアミドチップと前記の熱可塑性ポリエステルチップとをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合したもの、溶融混合物と前記のポリエステルをドライブレンドしたもの、さらには必要に応じて溶融混合物を高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合したものなどが挙げられる。
【0103】
さらに、前記ポリアミドを粉砕して用いてもよい。特に前記ポリアミドを少量用いる組成物の場合は好都合である。粉砕した場合の粒径は約10メッシュ以下が好ましい。また前記ポリアミドをヘキサフロロイソプロパノールなどの溶剤に溶解させた溶液を熱可塑性ポリエステルのチップの表面に付着させる方法、前記ポリアミド製の部材が存在する空間内で、前記熱可塑性ポリエステルを前記部材に衝突接触させて前記熱可塑性ポリエステルチップ表面に前記ポリアミドを付着させる方法などが挙げられる。
【0104】
本発明のポリエステル包装材料がシート状物である場合は、例えば、押出機とダイを備えた一般的なシート成形機を用いて製造することができる。
【0105】
またこのシート状物は、圧空成形、真空成形によリカップ状やトレイ状に成形することもできる。また、本発明のポリエステル包装材料は、電子レンジおよび/またはオ−ブンレンジ等で食品を調理したり、あるいは冷凍食品を加熱するためのトレイ状容器の用途にも用いることができる。この場合は、シ−ト状物をトレイ形状に成形後、熱結晶化させて耐熱性を向上させる。
【0106】
本発明のポリエステル包装材料が延伸フィルムである場合は、射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。
【0107】
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
【0108】
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のPET組成物から成形したプリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜310℃の範囲である。延伸温度ば通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0109】
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォ−ムの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒ−タ設置オ−ブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒ−タで結晶化させる。
【0110】
また、本発明のポリエステル包装材料は、積層成形体や積層フィルム等の一構成層であることができる。特に、PETとの積層体の形で容器等に使用される。積層成形体の例としては、本発明のポリエステル包装材料からなる外層とPET内層との二層から構成される二層構造あるいは本発明のポリエステル包装材料からなる内層とPET外層との二層から構成される二層構造の成形体、本発明のポリエステル包装材料を含む中間層とPETの外層および最内層から構成される三層構造あるいは本発明のポリエステル包装材料を含む外層および最内層とPETの中間層から構成される三層構造の成形体、本発明のポリエステル包装材料を含む中間層とPETの最内層、中心層および最内層から構成される五層構造の成形体等が挙げられる。PET層には、他のガスバリア−性樹脂、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合使用することができる。
【0111】
また、その他の積層成形体の例としては、ポリオレフィン等の熱可塑性ポリエステル以外の樹脂との積層成形体、紙や金属板等の異種の基材との積層成形体が挙げられる。
【0112】
前記の積層成形体の厚み及び各層の厚みには特に制限は無い。また前記の積層成形体は、シ−ト状物、フィルム状物、板状物、中空体、容器等、種々の形状で使用可能である。
【0113】
前記の積層体の製造は、樹脂層の種類に対応した数の押出機と多層多種ダイスを使用して共押出しにより行うこともできるし、また樹脂層の種類に対応した数の射出機と共射出ランナ−および射出型を使用して共射出により行うこともできる。
【0114】
本発明のポリエステル包装材料は、ラミネート金属板の片面あるいは両面にラミネートするフィルムであることができる。用いられる金属板としては、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等が挙げられる。
【0115】
ラミネート法としては、従来公知の方法が適用でき、特に限定されないが、有機溶剤フリーが達成でき、残留溶剤による食料品の味や臭いに対する悪影響が回避できるサーマルラミネート法で行うことが好ましい。なかでも、金属板の通電加工によるサーマルラミネート法が特に推奨される。また、両面ラミネートの場合は、同時にラミネートしてもよいし、逐次でラミネートしてもよい。
なお、接着剤を用いてフィルムを金属板にラミネートできることはいうまでもない。
【0116】
また、金属容器は、前記ラミネート金属板を用いて成形することによって得られる。前記金属容器の成形方法は特に限定されるものではない。また、金属容器の形状も特に限定されるものではないが、絞り成型、絞りしごき成型、ストレッチドロー成型等の成型加工により製缶されるいわゆる2ピース缶への適用が好ましいが、例えばレトルト食品やコーヒー飲料等の食料品を充填するのに好適な天地蓋を巻締めて内容物を充填する、いわゆる3ピース缶へも適用可能である。
【0117】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0118】
(評価方法)
(1)ポリエステル、ポリエステル組成物およびポリエステル包装材料の極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。(単位はデシリットル/グラム)
【0119】
(2)ポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0120】
(3)ポリエステル、ポリエステル組成物およびポリエステル包装材料のアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)(ppm)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れたあと、窒素シール下にアンプル上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。
【0121】
(4)ポリエステル組成物の射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(以下「At−A0」という)(ppm)
窒素気流下で50〜100℃で十分乾燥した、それぞれの実施例または比較例の組成のポリエステル組成物を名機製作所製M−150C(DM)射出成形機により、シリンダー温度290℃において、10℃の水で冷却した段付平板金型(表面温度約22℃)を用いて段付成形板を射出成形する。得られた段付成形板は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11mmの厚みの約3cm×約5cm角のプレートを階段状に備えたもので、1個の重量は約146gである。2mm厚みのプレートより試料を採取し、(3)の測定方法によってアセトアルデヒド含有量(At)を求め、下記の式より射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差を求める。
射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(At−A0)(ppm)
= 射出成形後の段付成形板のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)
− 射出成形前の乾燥したポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)
【0122】
(5)色調(Color−L値)
下記(8)の成形体(肉厚2mm)より試料を切り取り、東京電色(株)製色差計TC−1500MC−88型を用いて測定した。Color−L値は測定値が100に近いほど白色、0に近づくほど灰色から黒を示す。また、測定の際は、予め装置を電源投入後1時間以上放置して十分安定させて行った。
【0123】
(6)ヘイズ(霞度%)
下記(8)の成形体(肉厚5mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメーター、modelNDH2000で測定。
【0124】
(7)ポリエステル中の残存アンチモン原子の定量(ppm)
ポリエステルチップを300℃で溶融処理した後、蛍光X線法で定量した。
【0125】
(8)段付成形板の成形
窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥した熱可塑性ポリエステルチップの所定量および窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したメタキシリレン基含有ポリアミドチップの所定量をドライブレンドし、これを用いて名機製作所製M−150C(DM)射出成形機により、シリンダー温度290℃において、前記(4)で用いるのと同じ段付平板金型(10℃の水で冷却し、表面温度約22℃)を用い成形する(スクリュー回転数120rpm、スクリュー背圧0.5MPa、冷却時間50秒、1サイクル72〜73秒)。2mm厚みのプレートは色調(Color−L値)測定、およびヘイズ(霞度%)測定に使用する。
【0126】
(9)メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度(以下「Rv」という)
試料0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、この溶液10mlをオストワルド粘度管にて20℃で測定、下式より求めた。
Rv= t/t0
t0:溶媒の落下秒数
t :試料溶液の落下秒数
【0127】
(10)ファインの含有量の測定
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径30cm)の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。
篩の下にふるい落とされたファインは、イオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量を求めた。ファイン含有量は、ファイン重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。
【0128】
(11)中空成形体の透明性
窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥した熱可塑性ポリエステルチップの所定量および窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したメタキシリレン基含有ポリアミドチップの所定量をドライブレンドし、これを用いて名機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度290℃でプリフォ−ムを成形した。このプリフォ−ムの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コ−ポプラスト社製LB−01E延伸ブロ−成型機を用いて二軸延伸ブロ−成形し、引き続き約150℃に設定した金型内で熱固定し、1000ccの中空成形体を得た。同様の条件で2000本の中空成形体を連続的に延伸ブロ−成形した。2000本成形後に得られた中空成形体の外観を目視で観察し、下記の評価基準によって評価した。
(評価基準)
◎ : 透明である
○ : 実用的な範囲で透明であり、未溶融物等の異物は見られない
△ : 実用的な範囲で透明であるが、未溶融物等の異物が認められる。
× : 透明性に劣る、着色が認められる、又は未溶融物が見られる
【0129】
(12)官能試験
上記の中空成形体に沸騰した蒸留水を入れ密栓後、約90度で30分間保持し、室温へ冷却し室温で1ヶ月間放置し、開栓後風味、臭いなどの試験を行った。比較用のブランクとして、蒸留水を使用。官能試験は10人のパネラーにより次の基準により実施し、平均値で比較した。
(評価基準)
0:異味、臭いを感じない
1:ブランクとの差をわずかに感じる
2:ブランクとの差を感じる
3:ブランクとのかなりの差を感じる
4:ブランクとの非常に大きな差を感じる
【0130】
(13)酸素透過量(cc/容器1本・24hr・atm)
Modern Controls社製酸素透過量測定器OX−TRAN100により、1000ccのボトル1本当りの透過量として20℃、0%RHで測定した。
【0131】
(実施例および比較例に使用したポリエチレンテレフタレ−ト(PET))
評価試験に用いたPET(A)、(B)、(C)の特性を表1に示す。(DEG含有量はすべて約2.7モル%)PET(A)、(B)は、すべて連続溶融重縮合−固相重合装置で重合したもの、またPET(C)は連続溶融重縮合装置による溶融重縮合PETを回分式固相重合装置でIVを上げたもの。
【0132】
【表1】
【0133】
(実施例および比較例に使用したメタキシリレン基含有ポリアミド(Ny−MXD6))
試験に使用したNy−MXD6(D)、Ny−MXD6(E)(すべて、P残存量=約210〜150ppm、Na残存量は約400〜300ppm)のRVは、それぞれ1.3,1.8であった。
Ny−MXD6(D)、(E)は、重縮合釜中でメタキシリレンジアミン−アジピン酸塩の水溶液を、NaOHやNaH2PO2・H2Oの存在下において加圧下および常圧下に加熱して重縮合する回分式方法により得たものである。
【0134】
(実施例1)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(E)0.5重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板は色調、ヘイズともに良好であった。また、中空成形体のAA含有量は7ppm、官能試験評価は0.7、外観は実用的な範囲で透明であった。
【0135】
(実施例2)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(E)3.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板は色調、ヘイズともに良好であった。また、中空成形体のAA含有量は6ppm、官能試験評価は0.6、外観は実用的な範囲で透明であった。
【0136】
(実施例3)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(D)3.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板は色調、ヘイズともに良好であった。また、中空成形体のAA含有量は7ppm、官能試験評価は0.6、外観は実用的な範囲で透明であった。
【0137】
(実施例4)
PET(A)100重量部に対してNy−MXD6(E)20.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板は色調、ヘイズともに良好であった。また、中空成形体のAA含有量は6ppm、官能試験評価は0.7、外観は実用的な範囲で透明であった。
【0138】
(比較例1)
PET(B)100重量部に対してNy−MXD6(E)3.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板はColor−L値が低く、黒ずんでいた。また、中空成形体のAA含有量は9ppm、官能試験評価は0.8と良好であったが、透明性は悪かった。
【0139】
(比較例2)
PET(C)100重量部に対してNy−MXD6(E)20.0重量部を用いて、評価方法(8)および(11)の方法により成形板、中空成形体を成形し評価を行った。
得られた成形板、および中空成形体の特性及び評価結果を表2に示す。
射出成形により得られた成形板の色調はよかったが、ヘイズ値が高かった。また、中空成形体のAA含有量は10ppm、官能試験評価は0.8と良好であったが、透明性は悪かった。
【0140】
【表2】
【0141】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物によれば、透明性、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れた中空成形体やシ−ト状物および延伸フィルムが得られる。
Claims (9)
- 芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするグリコール成分とからなるポリエステル100重量部と、メタキシリレン基含有ポリアミド0.01〜30重量部とからなるポリエステル組成物であって、該ポリエステル組成物を290℃の成形温度で射出成形して得られた成形体のColor−L値が80.0以上であり、かつヘイズが20%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
- 前記ポリエステル中に残存するアンチモン(Sb)原子の含有量が200ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル組成物。
- 前記ポリエステル組成物を射出成形して得られる成形体のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)と、射出成形前のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)との差(At−A0)が、20ppm以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 前記ポリエステルが含有するファインの含有量が、1000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 前記ポリエステルが、エチレンテレフタレ−トを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 前記メタキシリレン基含有ポリアミドが、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなる繰り返し単位を少なくとも70モル%以上含むポリアミドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル組成物を成形してなることを特徴とするポリエステル包装材料。
- 前記ポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量が20ppm以下であることを特徴とする請求項7に記載のポリエステル包装材料。
- 前記のポリエステル包装材料が、中空成形体、シ−ト状物あるいはこのシート状物を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フィルムのいずれかであることを特徴とするポリエステル包装材料。
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