JP3757618B2 - 色鉛筆芯の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結合材と、体質材と、着色材と、滑材とを少なくとも使用した色鉛筆芯、特に、芯径が例えば2mm以下のように細いシャープペンシル用として好適な非焼成タイプの色鉛筆芯の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
これまで、芯径が例えば2mm以下のように細いシャープペンシル用の非焼成タイプの色芯は、ポリ塩化ビニル、硝化綿、カルボキシメチルセルロース、アクリルスチレン等の結合材と、無機系、有機系の染料や顔料などの着色材と、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、Nε−ラウロイルリジン等の体質材と硫酸マグネシウム水和物の繊維状物、チタン酸カリウム繊維状物、酸化チタン繊維状物などの繊維状体質材や、ステアリン酸、各種金属ステアリン酸、アミノ酸系アスパラギン酸エステル等の高級脂肪酸と、カルナバワックス、蜜ロウ、木ろう等の天然系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の合成系ワックス等の滑材を少なくとも主材として使用し、必要に応じて可塑剤や、各種有機溶剤などと混練成形し製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの色鉛筆芯の発色性を向上させようとする場合には、単純に着色材の使用量を多くすれば良いが、芯の強度が脆くなる傾向がある。そこで、着色材の使用量を変えずに発色性を向上させる為には、芯が筆記によって摩耗する際の摩耗量を多くすれば良く、結合材との相性にもよるが、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス類とステアリン酸や金属ステアリン酸などの高級脂肪酸エステル類との併用は、強度低下を抑えて発色性が向上することは従来から知られている。しかし芯径が2mm以下でシャープペンシル用の色芯になると、これらワックスやエステル化合物との併用で発色性を得ようとしても芯径が細いので強度低下が大きくなる。
【0004】
この課題を克服するため、発色性を落とさず更に強度を得るために、結合材とは別にチタン酸カリウム等の繊維状物を併用して、その繊維状物が芯に成形する際、押出方向に繊維が並ぶ配向効果を利用して強度を向上させることが知られている。確かに繊維状物の使用は筆記に耐え得る強度を得ることが出来るが、筆記の際に繊維状物が紙面に引掛かる為か、その書き味は低下してしまうという問題点がある。
【0005】
これは、繊維状物が筆記により紙面に対して摩耗する際、タルクやマイカ等の板状結晶で自己摩耗性を有する体質材とは違い、針状結晶であるため自己摩耗性が低い事に起因していることが上げられる。よって繊維状物が芯体から容易に離脱できるような物質を、繊維状物近傍に配置させればよい訳だが、これまで繊維状物の表面に潤滑効果のある各種ワックスやステアリン酸などの物質を被覆し、一種のカプセル化による手段が種々講じられてきたが、材料を分散混練する際のロ−ルやヘンシル等によりカプセルが破られるためか、潤滑効果のある物質を近傍に配置することができず、書き味を改良した色芯は得られていない。
【0006】
そこで、本発明は、結合材を複数種使用し、予め一方の結合材で繊維状物表面を被覆した材料を使用することで、従来のワックス等の滑材を被覆した場合と異なり、気孔を形成する結合材の樹脂が繊維状物表面に強固に接着することにより、分散、混練時に材料にかかる剪断応力による剥がれが起きずに成形することが可能となる。そして芯に成形後、繊維状物表面の結合材を取り除くことで、芯が筆記時の摩擦で自己崩壊するようなミクロ的な気孔を形成させ、更に、その気孔中に油状物を含浸させることで、筆記の際、繊維状物が芯体から摩耗されることで書き味と更に発色性の向上を発現するものである。
【0007】
従来、色芯中に気孔を形成させる技術としては、特許第2641810号及び特許第2726198号などが知られている。前者は、非焼成タイプの色芯中に窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化炭素、フッ素樹脂などの撥水撥油性物質を組成物の一部として用い芯に成形後、前述した素材が持つ濡れ性が悪い性質を利用して芯体中に気孔を形成させ、その気孔中に油脂類を含浸させたものである。後者は、顔料と体質材の少なくともいずれかの全部又は一部に、フッ化ピッチ及び7環以下で構成されるフッ素化芳香族化合物で被覆した材料を使用し、フッ素化芳香族化合物が濡れ性の悪い性質を利用して気孔を形成させ、その気孔中に油脂類を含浸させ、書き味及び発色性の優れた色芯を提供するというものである。
【0008】
これら従来技術により、確かに撥水撥油性物質による開気孔が形成され、そこに潤滑効果のある油脂類を含浸することで発色性並びに書き味の向上を図ることができるが、使用する窒化ホウ素やフッ化黒鉛、フッ化炭素は高価であり、またフッ素化芳香族化合物などで被覆した顔料や体質材を用意する工程が非常に煩雑になる。そして、これら撥水撥油性物質の濡れ性が悪い特徴を利用して気孔を形成するので、芯の機械的強度が弱く芯径が3mm以上にならないと使用には耐えない傾向があり、芯径を2mm以下に成形加工すると使用する結合材や体質材の組み合わせにもよるが、撥水撥油性物質が芯体内で偏析を起こし気孔分布にバラツキが発生してその結果、筆跡がまだらになってしまう。
【0009】
本発明は、撥水撥油性物質による気孔形成ではなく、芯を賦形する結合とは相溶しない樹脂を用い、且つ、その樹脂が繊維状物の表面を被覆した状態で芯に成形した後、繊維状物表面の樹脂を除去して気孔を形成するもので前記従来技術とは異なる、また本発明により形成された気孔は、従来撥水撥油性物質使用による気孔が芯体中に偏析を起こしやすいものと異なり、バラツキのない気孔を形成できるものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、芯径が例えば2mm以下のシャープペンシル用の色芯として特に好適で、これまで繊維状物を使用する芯で強度は得られる代わりに書き味と発色性を低下させてきた従来の色芯に代わり、強度、発色性、書き味の各特性が共に優れた色鉛筆芯の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
これまでの非焼成タイプの色芯で芯径が2mm以下のシャープペンシル用の色芯の筆記メカニズムは、色芯に垂直にかかる荷重と上下左右筆記方向に動かす横荷重が先端に同時に掛かることにより、芯の端面が紙面上の繊維の凸部で擦過され摩耗する訳だが、その際、タルクやマイカ等の板状結晶に近い体質材は垂直にかかる荷重に対して結晶の側面で接触するが、繊維状物は針状結晶であるため、垂直荷重に対して結晶の先端、即ち、点で接触する。この違いが従来色芯の書き味及び発色性を低下させていた原因で、これに横荷重が加わると、タルクやマイカの体質材は、面で荷重が伝播され芯から剥離するように摩耗するのに対して、繊維状物は芯体からはぎ取られるような摩耗をする。これが書き味と発色性を低下させている。
【0012】
そこで、本発明者は、色芯の発色性や書き味は、着色材と針状結晶性のチタン酸カリウム等の体質材をいかに効率よく、芯体から離脱を行わせ、紙面上に定着させるかにあることに主眼を置き、色芯の摩耗のメカニズムを鋭意研究した結果、繊維状物の近傍に強度低下を起こさせない程度の気孔を形成し、更に、その気孔に潤滑効果を有する物質を介在させればよいことを見い出し本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明は、芯を賦形する結合材と、体質材と、着色材と、滑材とを少なくとも使用し、前記体質材の一部に繊維状物を使用し、これらを混練、成形し、適宜乾燥してなる非焼成タイプの色鉛筆芯において、前記繊維状物として、その表面を予め前記芯を賦形する結合材と成形時において相溶しない結合材で被覆したものを使用し、乾燥後、繊維状物に被覆している結合材を除去して気孔を形成してなる色鉛筆芯の製造方法を第1の要旨とし、第1の要旨において、芯を賦形する結合材と、該結合材と成形時において相溶しない結合材が、水溶性樹脂と非水溶性樹脂との組み合わせである色鉛筆芯の製造方法を第2の要旨とし、第2の要旨において、水溶性樹脂が熱可塑性を有する樹脂である色鉛筆芯の製造方法を第3の要旨とし、第1の要旨において、芯を賦形する結合材と、該結合材と成形時において相溶しない結合材が、非水溶性樹脂同士の組み合わせである色鉛筆芯の製造方法を第4の要旨とし、第1の要旨において、芯を賦形する結合材と、該結合材と成形時において相溶しない結合材が、水溶性樹脂同士の組み合わせである色鉛筆芯の製造方法を第5の要旨とし、第1の要旨乃至第5の要旨のいずれかにおいて、気孔中に油状物を含浸した色鉛筆芯の製造方法を第6の要旨とし、第6の要旨において、油状物がインキである色鉛筆芯の製造方法を第7の要旨とする。
【0014】
以下、詳述する。
本発明で使用する結合材である樹脂は、芯を賦形する樹脂と、繊維状物の表面を被覆する樹脂に分けられる。芯を賦形する樹脂は、芯に成形後気孔を形成する際、溶剤などで繊維状物の表面を被覆した樹脂を取り除く際に使用する溶媒により、溶出することのない樹脂が使用され、繊維状物の表面を被覆する樹脂は、芯を賦形する樹脂と成形時において相溶しない樹脂が使用され、芯を賦形する樹脂と、繊維状物の表面を被覆する樹脂は、水溶性樹脂と非水溶性樹脂との組み合わせ、非水溶性樹脂同士の組み合わせ、水溶性樹脂同士の組み合わせ等が挙げられる。
【0015】
非水溶性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、硝化綿、酢酸セルロ−ス、酪酢酸セルロース、アクリルースチレン共重合体、アクリル−ブタジエンスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂など、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など汎用的に使用されている樹脂が挙げられる。
【0016】
一方、水溶性樹脂としては、例えば、コーンスターチやアラビアゴム等の天然高分子、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース等の半合成高分子、ポリエチレンオキサイド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエステルポリオール樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂などの合成高分子やポリリン酸ソーダ、水ガラス等の無機高分子などが挙げられるが、芯に加工、乾燥する際の温度で分解したり揮散してしまわない樹脂が好ましいので、熱可塑性を有する樹脂の使用はより好ましい。
【0017】
非水溶性樹脂同士の組み合わせとしては、有機溶剤をはじめとした各種溶剤との溶解性の違いを利用して、一方の非水溶性樹脂が溶出してしまう樹脂の組み合わせを考慮すれば良く、溶解性の高い樹脂としては、一般的に重合度が低く一次元的な構造を有する熱可塑性樹脂などが挙げられ、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。又、溶解性の低い樹脂としては、分子構造が結晶質で重合度が高いもの、また三次元的な立体構造を有する樹脂などが挙げられ、例えばポリエチレン、ナイロン、フェノール樹脂、ポリアクリルニトリル等が挙げられる。
【0018】
水溶性樹脂同士の組み合わせとしては、前述した非水溶性樹脂同士の組み合わせと同様にして水溶性樹脂の中でも溶解性の違う樹脂の組み合わせを考慮すればよく、具体的には、水溶性樹脂でありながら、無極性結合を有する官能基をその分子構造中に含む為、アルコールやアセトンやトリクレンなどの一部有機溶剤と溶解してしまう樹脂で、例えば、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
【0019】
次に、繊維状物の表面に結合材を被覆する方法としては、使用する繊維状物の種類にもよるが、繊維として芯に成形したときの配向効果を失わないことを考慮に入れると、被覆する結合材を溶剤中で溶かしその中に繊維状物を浸漬させ、乾燥させ被覆する溶液浸漬などの湿式法が好ましい。
【0020】
乾式下でも、窒化ケイ素繊維、炭化ケイ素繊維、硼酸アルミニウム繊維のようにモース硬度が7以上ある繊維状物においては、樹脂をヘンシルミキサー等で自己発熱、もしくは熱媒により溶解した中に入れて被覆することも可能であるが、上記以外のモース硬度が7以下の繊維では分散時に繊維の折れが発生し易くアスペクト比の低下を招く傾向にあるので、回転数、温度、時間などの処理条件に注意が必要である。
【0021】
以上述べた水溶性樹脂、非水溶性樹脂のどちらか一方は、色鉛筆芯の結合材として、他方は繊維状物を被覆し、気孔を形成するための樹脂となる。気孔形成材として繊維状物を被覆する樹脂の使用量は、基材となる繊維状物の種類や比表面積などにもよるが、特に、芯を賦形する結合材の強度を損ねない使用量が好ましく、繊維状物の重量に対して2乃至6重量%の範囲がよい。
【0022】
気孔形成材としての樹脂の使用量が2重量%未満であると、繊維状物表面を均一に被覆できなくなり、十分な気孔を形成できなくなることがある。又、6重量%を超える使用量では、繊維状物の表面を十分に覆うが、余剰の樹脂分が芯体中に偏析してしまうので、芯に成形後、気孔を形成する時、繊維状物近傍以外にも気孔を形成してしまい、その結果、気孔率が大きくなり過ぎて強度が低下するとともに、筆記線がまだらやかすれ気味になり、強度が低い割には発色性が低く、書き味も著しく悪くなってしまうことがある。
【0023】
又、気孔形成材としての結合材で被覆した繊維状物の使用量は、本発明が狙いとする、実用強度と発色性及び書き味の各特性を満足させることを考慮に入れると、揮発溶剤分を除く全量に対して概ね10から40重量%の使用が好ましい。
【0024】
その他の材料としては、タルク、マイカ、窒化硼素、炭酸カルシウム、フッ化黒鉛、Nε−ラウロイルリジン等の板状結晶性の体質材、及びチタン酸カリウム繊維、酸化チタン繊維、硫酸マグネシウム水和物繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、硼酸アルミニウム繊維などの針状結晶性の繊維状物、着色材としては、天然、合成染料や無機、有機系顔料を任意に使用することができ、更に、滑材としては、各種金属ステアリン酸、アミノ酸系ステアリン酸などの高級脂肪酸が挙げられる。その他必要に応じてリン酸トリクレジル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジアリル、ジブチルフタレ−ト、ジオクチルフタレート等の可塑剤、メチルエチルケトン、酢酸エチル、水などの各種溶剤といったものを適宜配合材料として前記材料に加え、ヘンシルミキサー、3本ロールやニーダで分散混練をし、溶剤使用時には溶剤分を調整しながら押出機などで成形し、乾燥処理などを施し芯体を得る。
【0025】
次いで、芯を賦形する結合材を残し、繊維状物を被覆する結合材を除去して気孔を形成する訳だが、繊維状物を被覆する結合材の除去方法としては、被覆する結合材として水溶性樹脂を用いた場合には、芯体を水などに浸漬し気孔形成材としての水溶性樹脂を溶出させればよく、非水溶性樹脂を繊維状物に被覆した結合材とした場合には、気孔形成材としての非水溶性樹脂を有機溶剤などに浸漬させ溶出させればよい。この時、加温、加圧減圧などを施してもよいが、焼成芯とは異なり生芯(非焼成芯)であるので、乾燥上がりの芯が外観的に曲がりなどを起こさない程度の温度や圧力下で処理することが望ましい。又、短時間で気孔形成材としての樹脂を溶出させるには、超音波などが特に効果的である。
【0026】
前述するように、本発明は、芯に成形後水もしくは有機溶剤などの溶媒で繊維状物の表面を被覆した樹脂を溶出させるので、結合材としての樹脂の選定においては、どちらの溶媒にも相溶してしまう樹脂の組み合わせは勿論のこと、加温、加圧、減圧下で溶解性が変化する樹脂の使用は、著しい強度低下を起こすので注意が必要である。
【0027】
以上得られた色鉛筆芯の気孔中には、油状物を含浸してもよく、油状物としては、気孔中に容易に含浸されるものなら従来より公知のシリコンオイル、鉱物油、マシン油、流動パラフィン、フタル酸エステルなどの各種エステル化合物、α−オレフィンオリゴマー、パーム油、オレイン酸、オリーブ油、スクワラン等の天然、合成系の油脂で、常温で固体や液体の数種類の油脂類を単独もしくは併用して使用することができる。又、水性、油性、アルコール系の従来公知の各種インキ類を使用でき、インキのみの使用でも発色性の効果は得られるが、前述した各種油脂類と併用することで、更に発色性と書き味を向上させた色芯を提供することができる。但し、油状物及びインキを芯に含浸する際に、芯を賦形する結合材を溶かしてしまうような油脂類とインキとの組み合わせには注意が必要である。
【0028】
【作用】
本発明により、芯径が2mm以下のシャープペンシル用色芯で、体質材の少なくとも一部に繊維状物を使用していながら、強度は勿論のこと、発色性と書き味感が向上した色芯が得られる理由は、これまで繊維状物が筆記の際、紙面との接触で、単に芯体からはぎ取られたような状態であった点を、繊維状物の近傍に形成された気孔が、筆記時の応力を吸収し、その応力が伝播的に気孔を通じて芯体中に走ることにより、芯体の自己崩壊性が高まりブロック的な摩耗をするようになったと考えられる。そして、更に、その気孔に油状物が含浸されることで、タルクやマイカ等の体質材がワックスやステアリン酸などの滑材が摩耗する際の潤滑効果をさらに促進し、紙面に対して顔料により着色化された体質材の粒子を均一に摩耗させる為ではないかと推察される。
【0029】
【実施例】
<実施例1>
A:結合材で被覆した繊維状物の準備
ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)2重量部をビーカーに入れた100重量部の水に溶かし、その中に硫酸マグネシウム水和物の繊維状物(宇部マテリアルズ(株)製、モスハイジ)を50重量部入れ浸漬させ、乾燥機で攪拌しながら水分を蒸発させ、ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)で被覆した硫酸マグネシウム水和物の繊維状物(I)を得る。
【0030】
B.色芯の製造
Figure 0003757618
【0031】
上記材料を3本ロールで溶剤量を調整しながら混練後、細線状に押出成形し乾燥機にて80℃で約8時間乾燥して溶剤を除去し、得られた芯体を水中に浸し、37KHZの周波数で40分間程超音波洗浄後、呼び径0.9のシャープペンシル用の赤色の芯体を得た。
【0032】
<実施例2>
実施例1において、得られた芯体を40℃のスピンドル油中に20分間程度含浸させ、遠心分離器でよく油きりをして赤色の芯を得た。
【0033】
<実施例3〜7>
実施例1で、ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)の使用量を0.5、1.0、3.0、3.5、5.0重量部に変えた硫酸マグネシウム水和物の繊維状物を使用し、芯に成形後、実施例2と同様の含浸処理をして赤色の芯を得た。
【0034】
<実施例8>
実施例2において、スピンドル油の代わりに赤色の水性インキ中に20分間程度含浸させ、遠心分離器で余分なインキきりをして赤色の芯を得た。
【0035】
<比較例1>
実施例1において、ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)を使用せず、ポリビニルアルコールで被覆しなかった硫酸マグネシウム水和物の繊維状物を使用した以外は全て実施例1と同様にして赤色の芯を得た。
【0036】
<実施例9>
C:結合材で被覆した繊維状物の準備
ポリエステルポリオール樹脂(水溶性樹脂で熱可塑性)2重量部をビーカーに入れた100重量部のメタノール中に入れ60℃で加温しながら溶かし、その中にチタン酸カリウム繊維状物(大塚化学(株)製、ティスモD)を50重量部入れ浸漬させ、乾燥機に入れ攪拌しながらメタノールを蒸発させ、水溶性樹脂で被覆したチタン酸カリウム繊維状物(II)を得る。
【0037】
D:色芯の製法
Figure 0003757618
【0038】
上記材料を熱ロ−ルで混練後、ペレット化してスクリュー押出機で細線状に押出成形し、150℃で約8時間乾燥して、可塑剤を除去し得られた芯体を水中に浸し、37KHZの周波数で40分間程超音波洗浄後、呼び直径0.9のシャープペンシル用の青色の芯体を得た。
【0039】
<実施例10>
実施例9において得られた芯体を60℃のスピンドル油中に20分間程度含浸させ、遠心分離器でよく油きりをして青色の芯体を得た。
【0040】
<実施例11〜15>
実施例9で、ポリエステルポリオール樹脂の使用量を各々0.5、1.0、3.0、3.5、5.0重量部に変えたチタン酸カリウムの繊維状物を使用し、芯に成形後、実施例10と同様の含浸処理をして青色の芯を得た。
【0041】
<実施例16>
実施例10において、スピンドル油の代わりに青色の油性インキ中に20分間程度含浸させ、遠心分離器でインキきりをして青色の芯を得た。
【0042】
<比較例2>
実施例9においてポリエステルポリオール樹脂を使用せず、ポリエステルポリオ−ル樹脂で被覆しなかったチタン酸カリウム繊維状物を使用した以外は実施例9と同様にして青色の芯体を得た。
【0043】
<実施例17>
E:結合材で被覆される繊維状物の準備
硝化綿(非水溶性樹脂)2重量部をビーカーに入れた100重量部の酢酸エチル中に入れ溶かし、その中に酸化チタン繊維状物(石原産業(株)製、FTL200)を50重量部入れ浸漬させ、乾燥機に入れ攪拌しながら酢酸エチルを蒸発させ、非水溶性樹脂で被覆した酸化チタン繊維状物(III)を得る。
【0044】
F:色芯の製法
Figure 0003757618
【0045】
上記材料をニーダーで分散し、3本ロールで混練、押出機で成形後、50℃で約70時間乾燥し、得られた芯体をメチルエチルケトン中に浸し、37KHZの周波数で10分程超音波洗浄後、呼び径が2mmの赤色の芯体を得た。
【0046】
<実施例18>
実施例17において、得られた芯体を、40℃のスピンドル油中に20分間程度浸漬させ、遠心分離器でよ油切りをして赤色の芯体を得た。
【0047】
<実施例19〜23>
実施例17で、硝化綿の使用量を各々0.5、1.0、3.0、3.5、5.0重量部に変えた酸化チタン繊維状物を使用し、芯に成形後、実施例18と同様の含浸処理をして赤色の芯体を得た。
【0048】
<実施例24>
実施例18において、スピンドル油の代わりに赤色の水性インキ中に20分間程度含浸させ、遠心分離器でインキきりをして赤色の芯を得た。
【0049】
<比較例3>
実施例17において、硝化綿を使用せず、硝化綿で被覆しなかった酸化チタン繊維状物を使用した以外は実施例17と同様にして青色の芯体を得た。
【0050】
<実施例25>
G:結合材で被覆した繊維状物の準備
酢酸セルロース(非水溶性樹脂)2重量部をビーカーに入れた100重量部のメチルエチルケトン中に入れ溶かし、その中に酸化チタン繊維状物(石原産業(株)製、FTL200)を50重量部入れ浸漬させ、乾燥機に入れ攪拌しながらメチルエチルケトンを蒸発させ、非水溶性樹脂で被覆した酸化チタン繊維状物(IV)を得る。
【0051】
H:色芯の製法
Figure 0003757618
【0052】
上記材料をヘンシルミキサーを用いて分散造粒してペレット化し、連続押出成形機機にて細線状に成形し、得られた芯体をメチルエチルケトン中に浸し、37KHZの周波数で30分間程度洗浄後、呼び径2mmの赤色の芯体を得た。
【0053】
<実施例26>
実施例25において得られた芯体を、60℃のスピンドル油中に20分間程度浸漬させ、遠心分離器でよく油切りをして赤色の芯体を得た。
【0054】
<実施例27〜31>
実施例25で酢酸セルロースの使用量を各々0.5、1.0、3.0、3.5、5.0重量部に変えた酸化チタン繊維状物を使用し、芯に成形後、実施例26と同様に含浸処理をして赤色の芯体を得た。
【0055】
<実施例32>
実施例26において、スピンドル油の代わりに赤色の水性インキ中に20分間程度含浸させ、遠心分離器でインキきりをして赤色の芯を得た。
【0056】
<比較例4>
実施例25において酢酸セルロースを使用せず、酢酸セルローズで被覆しなかった酸化チタン繊維状物を使用した以外は実施例25と同様にして赤色の芯体を得た。
【0057】
<実施例33>
I;結合材で被覆した繊維状物の準備
ポリビニルピロリドン(水溶性樹脂)2重量部をビーカーに入れた100重量部の水に入れ溶かし、その中にチタン酸カリウム繊維状物(大塚化学(株)製、ティスモD)を50重量部入れ浸漬させ、乾燥機に入れ攪拌しながら水を蒸発させ、水溶性樹脂で被覆したチタン酸カリウム繊維状物(V)を得る。
【0058】
J:色芯の製法
Figure 0003757618
【0059】
上記材料をニーダーで分散し、3本ロールで混練、押出成形機で成形後50℃で約70時間乾燥し、得られた芯体をメチルエチルケトン中に浸し、37KHZの周波数で10分間程超音波洗浄後、呼び径2mmの赤色の芯体を得た。
【0060】
<実施例34>
実施例33において得られた芯体を、40℃のスピンドル油中に20分間程度浸漬させ、遠心分離器でよく油切りをして赤色の芯体を得た。
【0061】
<実施例35〜39>
実施例33で、ポリビニルピロリドンの使用量を各々0.5、1.0、3.0、3.5、5.0重量部に変えたチタン酸カリウム繊維状物を使用し、芯に成形後、実施例34と同様に含浸処理をして赤色の芯体を得た。
【0062】
<実施例40>
実施例34において、スピンドル油の代わりに赤色の油性インキ中に20分間程度含浸させ、遠心分離器でインキきりをして赤色の芯を得た。
【0063】
<比較例5>
実施例33で、ポリビニルピロリドンを使用せず、ポリビニルピロリドンで被覆しなかったチタン酸カリウム繊維状物を使用した以外は実施例33と同様にして赤色の芯体を得た。
【0064】
以上各例で得られた色芯の曲げ強さと発色性の代用特性としての濃度を、JIS S6005の測定方法に準じて測定し、書き味については動摩擦係数を代用特性としてとらえ、値が小さいほど書き味が良いことを意味する。以上測定した結果を表1乃至表4に示す。
【0065】
【表1】
Figure 0003757618
【0066】
【表2】
Figure 0003757618
【0067】
【表3】
Figure 0003757618
【0068】
【表4】
Figure 0003757618
【0069】
【発明の効果】
上表のように、本発明によれば体質材の一部に繊維状物を使用した色芯において、強度を得るためにこれ迄のように書き味や発色性を犠牲にすることなく、各特性を満足した色鉛筆芯の提供を可能にした。

Claims (7)

  1. 芯を賦形する結合材と、体質材と、着色材と、滑材とを少なくとも使用し、前記体質材の一部に繊維状物を使用し、これらを混練、成形し、適宜乾燥してなる非焼成タイプの色鉛筆芯において、前記繊維状物として、その表面を予め前記芯を賦形する結合材と成形時において相溶しない結合材で被覆したものを使用し、乾燥後、繊維状物を被覆している結合材を除去して気孔を形成してなる色鉛筆芯の製造方法。
  2. 芯を賦形する結合材と、該結合材と成形時において相溶しない結合材が、水溶性樹脂と非水溶性樹脂との組み合わせである請求項1記載の色鉛筆芯の製造方法。
  3. 水溶性樹脂が熱可塑性を有する樹脂である請求項2記載の色鉛筆芯の製造方法。
  4. 芯を賦形する結合材と、該結合材と成形時において相溶しない結合材が、非水溶性樹脂同士の組み合わせである請求項1記載の色鉛筆芯の製造方法。
  5. 芯を賦形する結合材と、該結合材と成形時において相溶しない結合材が、水溶性樹脂同士の組み合わせである請求項1記載の色鉛筆芯の製造方法。
  6. 気孔中に油状物を含浸した請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の色鉛筆芯の製造方法。
  7. 油状物がインキである請求項6記載の色鉛筆芯の製造方法。
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