JP3757296B2 - 縫製装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工布の厚さに応じて上糸の繰出し量を自動的に調節する構成の縫製装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
例えば家庭用刺繍ミシンには、ポテンショメータにより布押え棒の高さ位置を検出する構成のものがある。この構成の場合、加工布を布押え体により押えると加工布の厚さ分だけ布押え棒が上昇するので、1つの縫目を形成するのに必要な上糸量をポテンショメータからの出力信号等に基づいて演算し、加工布が厚くなる程、多くの上糸を上糸供給源から繰出すようにしている。
【0003】
ところで、布押え棒には第1の布押え体および第2の布押え体が選択的に装着されるようになっており、直線縫い等を行うにあたっては、第1の布押え体(布押え足)により加工布を押え、裁ち目かがり縫いを行うにあたっては、第2の布押え体(サイドカッター)により加工布を押えながらその端部を切断するようにしている。
【0004】
この裁ち目かがり縫いは、上糸により加工布の端部が巻き込まれ易い性質を有しているため、直線縫い時より多くの糸量を必要とする。これに対して従来は、ミシンベッド上にリミットスイッチを設け、第2の布押え体によりリミットスイッチが押圧されたときには、裁ち目かがり縫い専用の処理を行って糸量を演算していた。このため、ハードウェアおよびソフトウェアの両面で構成が複雑化される傾向にあった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハードウェアおよびソフトウェアの両面において構成を簡素化できる縫製装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の縫製装置は、上下動可能な布押え棒と、この布押え棒に選択的に取付けられ、加工布の厚さに応じて布押え棒の高さ位置を上下動させる第1の布押え体および第2の布押え体と、前記布押え棒の高さ位置を検出する位置検出手段とを備え、前記布押え棒の位置が高くなるに従って上糸を多く繰出すように構成されたものにおいて、前記第2の布押え体は前記第1の布押え体を用いた縫製より多くの糸量を必要とするものであって前記第1の布押え体の取付時より前記布押え棒の位置が高くなるように布押え棒に取付けられるところに特徴を有する。
【0007】
上記手段によれば、裁ち目かがり縫いを行うにあたって、布押え棒に第2の布押え体を取付けると、第1の布押え体の取付時より布押え棒の位置が高くなり、上糸の繰出し量が多くなる。従って、リミットスイッチにより第2の布押え体を検出して専用の演算処理を行う必要がなくなるので、ハードウェアおよびソフトウェアの両面で構成が簡素化される。
【0008】
請求項2記載の縫製装置は、加工布を押える布押え面と布押え棒に取付けられる取付部との間の高さ寸法が、第1の布押え体より第2の布押え体の方が大きいところに特徴を有する。
【0009】
上記手段によれば、第2の布押え体の取付部を布押え棒に取付けると、第1の布押え体の取付時より布押え棒の位置が高くなる。従って、スペーサー等を介して第2の布押え体を布押え棒に取付け、スペーサーの分だけ布押え棒の位置を高くする場合に比べ、第2の布押え体の安定性が向上する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。尚、本実施例は、本発明を電子制御式ジグザグミシンに適用したものである。まず、図2において、ミシン本体1は、ベッド部2とベッド部2の右端部から上方へ延びる脚柱部3と脚柱部3から左方へ延びるアーム部4とアーム部4の左端部に位置するヘッド部5とから構成されたものであり、脚柱部3には、複数の操作キーからなる操作キー群6が設けられている。
【0011】
この操作キー群6は、図3に示すように、縫い目模様(ジグザグ縫い,直線縫い,裁ち目かがり縫い等)や刺繍模様等を選択するための模様選択キー6aを備えている。また、制御装置7はマイクロコンピュータを主体とするものであり、入力インターフェース7a,出力インターフェース7b,CPU7c,ROM7d,RAM7eをバスラインにより相互接続して構成されている。
【0012】
そして、制御装置7は、模様選択キー6aの操作内容に応じて模様データを選択し、選択した模様データに基づいて縫製データ(1ステッチ毎の針落点からなるデータ)を設定する。尚、アーム部4には、図2に示すように、ディスプレイ8が設けられており、制御装置7は、操作キー群6の操作内容や各種のメッセージ等をディスプレイ8に表示する。
【0013】
ヘッド部5には布押え棒9が設けられている。この布押え棒9は、圧縮コイルばね(図示せず)により下方へ付勢されたものであり、布押え棒9の下端部には、図1の(b)に示すように、第1の布押え体に相当する布押え足10が取付けられる。この布押え足10は、取付部に相当する取付孔10aを有するものであり、取付孔10aを通して布押え棒9にネジ9aを締め込むことに伴い着脱可能にされている。
【0014】
布押え足10は布押え面10bを有している。そして、ジグザグ縫いや直線縫い等を行うにあたって、布押え棒9に布押え足10を取付けると、布押え足10の布押え面10bが針板2a(図2参照)上の加工布を布押え棒9の付勢力により押える。また、寸法H1 は、取付部10aと布押え面10bとの間の高さ寸法を示すものであり、具体的には27.3mmに設定されている。
【0015】
ベッド部2には、図3に示すように、送り歯11が設けられており、ミシンモータ12の回転力は、主軸12aから送り歯前後動機構11aおよび送り歯上下動機構11bを介して送り歯11に伝達される。これにより、主軸12aの回転に同期して送り歯11が前後方向および上下方向へ移動し、布押え足10により押えられた加工布が前方へ送られる。また、前後動機構11aには送り量調整機構11cが設けられており、制御装置7は、縫製データの中の縫目の長さに応じて送り歯用パルスモータ11dを駆動する。これにより、前後動機構11aによる送り歯11の前後方向への移動量が変化し、加工布の送り量が調整される。
【0016】
ヘッド部5には、図2に示すように、針棒13が設けられている。この針棒13は縫針14を装着するためのものであり、図3に示すように、主軸12aの回転力は、針棒上下動機構13aにより上下方向への運動力に変換されて針棒13に伝達される。これにより、縫針14が主軸12aの回転(送り歯11による布送り動作)に同期して上下動し、縫製データに応じた縫い目が加工布に形成される。
【0017】
針振り機構13bは、針振り用パルスモータ13cの回転力を左右方向への運動力に変換して針棒13に伝えるものであり、制御装置7は、縫製データの中の針振り量に応じてパルスモータ13cを駆動する。これにより、縫針14が左右方向へ振られ、折れ曲がった縫い目(ジグザグ状の縫い目)が形成される。
【0018】
位置検出手段に相当する布厚検出器15は直線型のポテンショメータからなるものであり、布押え棒9の高さ位置に基づいて加工布の厚さを検出する。そして、制御装置7は、第1の布押え体10が取付けられていることを前提として布厚検出器15からの出力信号に基づく加工布の厚さ,縫製データの中の加工布の送り量,縫製データの中の縫針14の振り量に基づいて上糸繰出し量を1ステッチ毎に演算し、この演算結果に基づいて上糸繰出し用パルスモータ16を駆動する。これにより、上糸繰出し機構17が制御され、1針毎に上糸の繰出し量が調整される。
【0019】
尚、制御装置7は、加工布の厚さ,加工布の送り量,縫針14の振り量が大きくなる程、上糸の繰出し量が多くなるように演算を行う。また、操作キー群6はマニュアル設定キー6bを備えており、マニュアル設定キー6bが有効化されると、制御装置7は、マニュアル設定キー6bの操作内容に応じて縫製速度や糸繰出し量等を設定する。また、起動停止キー18は縫製動作の起動および停止を制御装置7に指令するためのものである。
【0020】
布押え棒9の下端部には、図1の(a)に示すように、第2の布押え体に相当するサイドカッター19が取付けられる。このサイドカッター19は、取付部に相当する溝部19aを有するものであり、ネジ9aを緩めて押え棒9から押え足10を取外した後、溝部19aを通して押え棒9にネジ9aを締め込むことに伴い、押え足10に換えて取付けられる。また、サイドカッター19は押え部19bを有しており、裁ち目かがり縫いを行うにあたって、サイドカッター19を布押え棒9に取付けると、押え部19bの布押え面19cが針板2a上の加工布を布押え棒9の付勢力により押える。
【0021】
サイドカッター19はリンク機構19dを有している。このリンク機構19dは、ネジ19eによって針棒13の下端部に着脱可能に取付けられるものであり、針棒13の上下方向への運動力を回転方向への運動力に変換してサイドカッター19の可動刃(図示せず)に伝達する。これにより、サイドカッター19の可動刃が回動し、サイドカッター19の可動刃と固定刃(図示せず)との間で加工布の端部が切断されながら、かがり縫いが行われる。また、寸法H2 は、溝部19aと布押え面19cとの間の高さ寸法を示すものであり、布押え足10の高さ寸法H1 より4.5mmだけ高い31.8mmに設定されている。
【0022】
次に上記構成の作用について説明する。ジグザグ縫いや直線縫い等を行うにあたっては、布押え棒9に布押え足10を取付ける。すると、加工布の厚さTに応じた位置へ布押え棒9が上昇するので、制御装置7は、布厚検出器15からの出力信号に基づいて加工布の厚さTを検出し、布送り量,針振り量,布厚Tに応じた上糸の繰出し量を1ステッチ毎に演算する。そして、その演算結果に応じて糸繰出し用パルスモータ16を駆動し、上糸繰出し機構17により1針毎に上糸の繰出し量を調整する。
【0023】
また、裁ち目かがり縫いを行うにあたっては、布押え棒9にサイドカッター19を取付ける。すると、加工布の厚さTより4.5mmだけ高い位置へ布押え棒9が上昇するので、制御装置7は、布厚検出器15からの出力信号に基づいて加工布の厚さが実際より厚い「T+4.5mm」であると判断する。そして、布送り量,針振り量,布厚「T+4.5mm」に基づいて上糸の繰出し量を演算し、その演算結果に応じて糸繰出し用パルスモータ16を駆動し、上糸繰出し機構17により1針毎に上糸の繰出し量を調整する。従って、裁ち目かがり縫いを行う場合でも、上糸が加工布を巻込むことなく、綺麗な仕上がり状態が得られる。
【0024】
上記実施例によれば、布押え足10の取付時より布押え棒9の位置が高くなるように、サイドカッター19を布押え棒9に取付けた。このため、リミットスイッチによりサイドカッター19を検出して専用の演算処理を行わなくとも、布押え足10の取付時よりも多くの糸が繰出されるので、ハードウェアおよびソフトウェアの両面で構成が簡素化される。
【0025】
また、サイドカッター19の溝部19aおよび布押え面19c間の高さ寸法H2 を布押え足10の取付孔10aおよび布押え面10b間の高さ寸法H1 より大きく設定することに伴い、サイドカッター19の取付時に布押え棒9の位置を高くした。このため、サイドカッター19を専用の治具により布押え棒9に取付け、治具の高さ分だけ布押え棒9の位置を高くする場合に比べて、サイドカッター19の安定性が向上する。
【0026】
尚、上記実施例においては、サイドカッター19の高さ寸法H2 を布押え足10の高さ寸法H1 より大きく設定することに伴い、サイドカッター19の取付時に布押え棒9の位置を高くした。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えば、サイドカッター19を専用の治具を介して布押え棒9に取付けることに伴い、治具の高さ分だけ布押え棒9の位置を高くする構成としても良い。
【0027】
また、上記実施例においては、本発明を電子制御式ジグザグミシンに適用したが、これに限定されるものではなく、例えばミシン全般に適用したり、あるいは、縫針を水平方向へ移動させることに伴い加工布に縫い目を形成する縫製装置に適用しても良い。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の縫製装置は次の効果を奏する。
請求項1記載の手段によれば、布押え棒に第2の布押え体を取付けると、第1の布押え体の取付時より布押え棒の位置が高くなり、上糸の繰出し量が多くなる。このため、リミットスイッチにより第2の布押え体を検出して専用の演算処理を行う必要がなくなるので、ハードウェアおよびソフトウェアの両面で構成が簡素化される。
【0029】
請求項2記載の手段によれば、第2の布押え体の取付部を布押え棒に直接取付けると、第1の布押え体の取付時より布押え棒の位置が高くなるので、第2の布押え体の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示す図(aはサイドカッターの取付状態を示す図、bは布押え足の取付状態を示す図)
【図2】 ミシンの外観を示す図
【図3】 ミシンの構成を示すブロック図
【符号の説明】
9は布押え棒、10は布押え足(第1の布押え体)、10aは取付孔(取付部)、10bは布押え面、15は布厚検出器(位置検出手段)、19はサイドカッター(第2の布押え体)、19aは溝部(取付部)、19cは布押え面を示す。
Claims (2)
- 上下動可能な布押え棒と、
この布押え棒に選択的に取付けられ、加工布の厚さに応じて布押え棒の高さ位置を上下動させる第1の布押え体および第2の布押え体と、
前記布押え棒の高さ位置を検出する位置検出手段とを備え、
前記布押え棒の位置が高くなるに従って上糸を多く繰出すように構成されたものにおいて、
前記第2の布押え体は、前記第1の布押え体を用いた縫製より多くの糸量を必要とするものであって前記第1の布押え体の取付時より前記布押え棒の位置が高くなるように布押え棒に取付けられることを特徴とする縫製装置。 - 加工布を押える布押え面と布押え棒に取付けられる取付部との間の高さ寸法は、第1の布押え体より第2の布押え体の方が大きいことを特徴とする請求項1記載の縫製装置。
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