JP3756286B2 - 打抜き金型の摩耗が少ない冷延調質高強度オーステナイト系ステンレス鋼板 - Google Patents

打抜き金型の摩耗が少ない冷延調質高強度オーステナイト系ステンレス鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、各種機械部品や、ばね等の高強度ステンレス鋼素材として使用され、熱間加工性及び連続鋳造性を損なうことなく、打抜き工程での金型摩耗が低減できる冷延調質高強度オーステナイト系ステンレス鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタルガスケットや皿ばね等の高強度材やばね用素材として、強度,ばね性に加えて耐食性も優れていることからSUS301CSP,SUS304CSP等のオーステナイト系ステンレス鋼板が使用されている。この種のステンレス鋼板は、冷間圧延により所定強度に調質された後、ユーザーでの打抜き加工に供される。高強度ステンレス鋼板の加工では、深絞り等の厳しいプレス成形はなく、打抜き加工と比較的軽微な加工が主体である。
一般に、ステンレス鋼板は、普通鋼や低合金鋼に比べ、硬質で、加工性、特に打抜き性が劣る。そのため、普通鋼等と比較すると連続打抜き加工における金型摩耗が大きく、金型の交換頻度が高く、金型交換に伴った時間損失や、金型のメンテナンス費用が増加する等、打抜き加工のコストが増大する欠点がある。しかし、普通鋼等の素材に比べて優れた耐食性を示すことから、金型摩耗による打抜き加工費の増大はやむを得ないものとして、高い耐食性が要求される用途ではステンレス鋼が使用されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
オーステナイト系ステンレス鋼製のばね、高強度部材が広く普及し、生産量が増大するに従って、生産性向上、コストダウンが必要となり、高強度であっても金型摩耗を低減できる素材が求められてきた。しかし、金型の摩耗を低減できるオーステナイト系ステンレス冷延調質鋼板は、これまでのところ実用化されていない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、オーステナイト系ステンレス鋼に含まれる合金成分の含有量を適正化し且つS含有量を規制することにより、打抜き工程での金型摩耗が低減できる各種機械部品、ばね等に適した冷延調質高強度オーステナイト系ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の冷延調質高強度オーステナイト系ステンレス鋼板は、その目的を達成するため、C:0.005〜0.15質量%,Si:1.0質量%以下、S:0.008〜0.020質量%,Mn:2.0質量%以下、Ni:6.0〜10.5質量%,Cr:16〜20質量%,N:0.20質量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成をもち、鋳造材の1000℃での熱間引張試験における断面収縮率Raが60%以上,引張強さが780N/mm2以上,引張強さに対する打抜き剪断抵抗の割合が60%以下であることを特徴とする。
このオーステナイト系ステンレス鋼板は、更にB:0.002〜0.015質量%を含むことができる。この場合、S含有量の上限は、0.028質量%に広げられる。
【0005】
【作用】
本発明者等は、オーステナイト系ステンレス鋼の成分、製造方法から打抜き加工特性に至るまで、一貫して素材特性と加工性について調査検討した。その結果、前掲したように成分・組成を特定するとき、鋳造性,熱間加工性等の製造性を損なうことなく、連続打抜き金型の摩耗を著しく低減できることを見出した。
以下、本発明オーステナイト系ステンレス鋼に含まれる合金成分,含有量等を説明する。
C:0.005〜0.15質量%
冷延調質後の加工誘起マルテンサイト相の強度を得るために必要不可欠な合金成分であり、0.005質量%以上の含有量で顕著な効果を発揮する。しかし、0.15質量%を超える多量のCが含まれると、オーステナイト相が過度に安定化し、冷延調質により強化に寄与する加工誘起マルテンサイト相が生成しにくくなる。
【0006】
Si:1.0質量%以下
溶製時に脱酸剤として添加される合金成分であるが、1.0質量%を超える多量のSiが含まれると、硬質なSi酸化物が鋼中に多量に存在する。その結果、打抜き加工時に金型が摩耗し易くなる。
S:0.008〜0.020質量%
打抜き時の剪断抵抗の低減による金型摩耗低減のため、0.008%以上は必要である。しかし、0.020質量%を超える多量のSが含まれると、熱間加工性が劣化する。S含有量の上限は、Bを添加する場合に0.028%まで高くできる。
Mn:2.0質量%以下
オーステナイト安定度を調整する上で有効な合金成分である。しかし、2.0質量%を超える多量のMnが含まれると、焼鈍後の酸洗時の脱スケール性が劣化する。
【0007】
Ni:6.0〜10.5質量%
オーステナイト相の形成に必須の合金成分であり、6質量%以上のNi含有が必要である。しかし、高価な元素であり、経済性の観点からNi含有量の上限を10.5質量%に設定した。
Cr:16〜20質量%
耐食性の向上に有効な合金成分であり、16質量%以上の含有量で顕著な効果を発揮する。しかし、20質量%を超える多量のCrを添加しても、耐食性向上に及ぼす効果が飽和し、また原料費増加により鋼材コストが上昇する。
【0008】
N:0.20質量%以下
オーステナイト相の固溶強化元素であり、機械的性質を向上する作用を呈する。しかし、0.20質量%を超える多量のNを含ませると、オーステナイト相が過度に安定化し、冷延調質により強度向上に有効な加工誘起マルテンサイト相が生成しにくくなる。
B:0.002〜0.015質量%
必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性を向上する作用を呈する。Bの添加効果は、0.002質量%以上で顕著になる。しかし、0.015質量%を超える過剰なBを添加すると、高温強度が劣化し、鋳造性も損なわれる。
【0009】
本発明で使用するオーステナイト系ステンレス鋼は、以上の合金成分に加えて、更に耐食性改善に有効な3質量%以下のMo、析出強化及び組織微細化に有効な0.5質量%以下のTi,Nb、熱間加工性の改善に有効な0.05質量%以下のREM(La、Ce、Y)等を含むことができる。また、本発明の目的、特徴を損なわない範囲で各種特性を向上させるために、その他の元素を添加しても差支えない。
【0010】
断面収縮率Ra:60%以上,
ステンレス鋼の重要な製造性の一つである熱間加工性の指標であり、断面収縮率Raが60%以上であれば、耳切れ等の欠陥のない熱延鋼板が得られる。断面収縮率Raは、鋼塊から切り出した中実丸棒形状の試験片について熱間引張試験前の断面積をA0 ,熱間引張試験後の断面積をA1 とするとき、Ra=(A0 −A1 )/A0 ×100(%)で定義され、高温域における鋼の熱間変形能を表す。本発明では歪み速度10/秒で1000℃の熱間引張試験した前後の断面収縮の比率で求めた。
【0011】
引張強さに対する打抜き剪断抵抗の割合:60%以下
剪断抵抗は、鋼板の打抜き加工の際に、ポンチ及びダイスに加わる最大荷重を剪断面の面積で除した値で表される。鋼板の引張強さに対する剪断抵抗の割合が60%以下の場合、ポンチ,ダイス等の金型工具に加わる負荷が低減され、金型摩耗の進行が抑制される。鋼板の引張強さに対する剪断抵抗の割合が金型の摩耗に及ぼす影響は、本発明者等による多数の実験結果から見出された指標であり、高い引張強さをもつ高強度鋼板であっても、剪断抵抗が低いと金型摩耗が抑制されるとの考察に基づいている。剪断抵抗の低減には、その主たる要因である打抜剪断変形過程における最大荷重を低減することが有効である。このためには、S含有量の増加によりMnS等の介在物を鋼中に分散させ、応力集中源とすることが有効である。更に、本発明者等は、鋼板の引張強さに対する剪断抵抗の割合が60%以下になると、金型摩耗が顕著に低減されることを見い出した。
たとえば、JISG4313に規定されるSUS301−CSPにおいて、金型摩耗を低減する剪断抵抗は、1/2H調質材では678N/mm2 未満、3/4H調質材では942N/mm2 未満、H調質材では942N/mm2 未満である。同様にSUS304−CSPの剪断抵抗は、1/2H調質材では588N/mm2 未満、3/4H調質材では、678N/mm2 未満である。
【0012】
だれ生成量:
連続打抜きで所定形状の製品を得る場合、打抜き初期の製品と打抜き後期の製品との形状が一定である必要がある。しかし、打抜き製品の形状は、打抜き回数の増加に伴った金型摩耗により変化する。金型の摩耗は、摩耗に従って増加するだれ生成量により評価できる。本発明では、打抜き初期のだれ生成量に対して、打抜き数の増加によりだれ生成量が10%を越えて増加すると、金型が摩耗したと判定する。
【0013】
【実施例】
実施例1:
表1に示す各種オーステナイト系ステンレス鋼A〜Jを真空溶解炉で溶製し、300kgの鋼塊を得た。鋼塊を均熱炉に装入し、抽出温度1230℃で熱間圧延を施し、板厚3mmの熱延鋼帯を得た。次いで、熱延鋼帯に1050℃×均熱1分の連続焼鈍を施し、引き続き連続酸洗した。焼鈍後の熱延鋼帯を冷間圧延して板厚1mmの冷延鋼帯とし、1050℃×均熱1分の連続焼鈍後、連続酸洗した。更に、60℃の温間圧延により板厚0.7mmの冷延調質材とした。
【0014】
Figure 0003756286
【0015】
各冷延調質材から圧延方向,圧延方向に直交する方向,圧延方向に45度傾斜した方向に沿って、JISZ2201に規定される13B号試験片を採取した。試験片を引張速度20mm/秒の引張試験に供し、引張強さを測定した。
圧延方向,圧延方向に直交する方向及び45度傾斜する方向の試験片による引張強さを、それぞれT.S.(L)、T.S.(T)及びT.S.(D)とし、次式(1)に従って引張強さ:T.S.を求めた。
Figure 0003756286
各冷延調質材を幅20mmのスリットコイルとし、外径10.0mmのポンチ及び内径11.0mmのダイスにより、クリアランス:C=0.5mm,打抜き速度100spmの連続打抜き加工に供した。使用したポンチ及びダイスは、硬さが何れも59〜60HRBであり、JISG4404に規定される冷間金型用鋼材であるSKD11の焼入れ・焼戻し材により作製した。
【0016】
打抜きは最大15000個まで実施し、1種類の鋼板を連続打抜きした後で新たなポンチ、ダイスに交換した。打抜きポンチに取り付けたロードセルにより、打抜き加工の際に加わる最高荷重:PMAX を測定した。PMAX を剪断する鋼板の外周面積で除した値を、次式(2)に従って計算し、剪断抵抗:ksを求めた。また、各試験片について、打抜き個数が100個以下である打抜き初期の剪断抵抗:ks及び引張強さ:T.S.に対する剪断抵抗:ksの割合:ks/T.S.(%)を求めた。
Figure 0003756286
【0017】
各冷延調質材を連続打抜きして得た外径10mmの抜き材の形状を、レーザー式非接触変位計により測定した。鋼板の圧延方向、圧延方向に直角な方向及び45度傾斜方向の各方向で2点、合計8点の断面形状を測定した。測定した各点の断面形状から、図1に示す方法で各方向ごとのだれ量を算出し、算出値を平均化してだれ量を求めた。打抜き個数が100個以下の打抜き初期のだれ量:D100 に対するi個目に打抜いたときのだれ量:Di の割合を、次式(3)に従って計算した。
i /D100 ×100(%)・・・(3)
連続打抜きでは、金型摩耗の進行に応じて打抜き品のだれ量が大きくなる。だれ量の増加は、Di /D100 の値が大きくなることにより表される。Di /D100 が110%を越えると、金型摩耗が大きく進行し、これ以降の打抜き品は寸法精度の点から、製品として使用できないので、金型の交換が要求される。そこで、Di /D100 が110%を越えたときの打抜き回数をカウントした。
【0018】
更に、各オーステナイト系ステンレス鋼A〜Jの鋼塊の柱状晶部から、20mm角幅、長さ150mmの角材を切り出し、1230℃で溶体化処理した後、JISZ2201に規定される10号試験片を作製した。
各試験片を真空雰囲気下,高周波加熱方式の熱間引張試験に供した。熱間引張試験では、試験雰囲気を真空とした後、試験片を1230℃で10分間加熱した後、直ちに試験温度に5分間加熱し、ひずみ速度10/秒で引張試験を実施した。試験後の破面における外径を4点測定し、測定値を平均化して試験後の絞り径:dを求めた。得られた絞り径:d及び引張試験前の外径:d0 から、次式(4)に従って断面収縮率Raを計算した。
Ra=(d−d0 )/d0 ×100(%)・・・(4)
以上の調査結果を表2に示す。
【0019】
Figure 0003756286
【0020】
冷延調質材A及びEについて、打抜き個数とDi /D100 との関係を図2に示す。鋼板Aでは、打抜き2100個でDi /D100 が110%を越えるのに対し、本発明に従った鋼板Eは、打抜き12000個で110%を越えている。この対比から、本発明に従った鋼板を使用して打抜き加工すると、金型寿命が飛躍的に向上することが判る。
また、冷延調質材のS含有量とDi /D100 が110%を越える打抜き個数の関係を示す図3にみられるように、0.008質量%以上のSを含む本発明に従った鋼板では、10000個以上の打抜きが可能であった。他方、S含有量が0.008質量%以下になると、Di /D100 が110%を越える打抜き個数が大幅に少なくなった。このとこから、S:0.008質量%以上が金型寿命の向上に有効なことが判る。
【0021】
更に、金型寿命向上の効果について検討を進めた。冷延調質材のS含有量と剪断抵抗:ksの引張強さ:T.S.に対する割合:ks/T.S.(%)との関係を調査したところ、両者の間に図4に示す関係が成立していた。すなわち、S含有量が0.008%以上の鋼板では、ks/T.S.が60%以下となっていた。これは、S含有量の増加により剪断抵抗が減少し、打抜きポンチ及びダイスへの負荷が軽減され、結果として金型の摩耗が低減されたものと推察される。これに対し、S含有量が0.008質量%未満になると、ks/T.S.比が60%を超え、金型の摩耗が大きくなった。
また、熱間引張試験による断面収縮率Raが60%未満の鋼では、表2に示されているように、熱間圧延の際の生産性を阻害する耳切れが発生した。そこで、各鋼A〜Jの1000℃での熱間引張試験による断面収縮率RaとS含有量の関係を求めたところ、図5に示すようにS含有量が0.020%を越えると、熱間加工性が劣化し、熱間圧延で耳切れが発生する傾向がみられた。
【0022】
実施例2:
表3に示す各種オーステナイト系ステンレス鋼K〜Rを真空炉で約70トン溶製した後、連続鋳造で厚さ200mm,幅1030mmの鋼塊を製造した。鋼塊を熱延工程に搬送し、抽出温度1230℃で熱間圧延を施し、板厚3mmの熱延コイルを得た。熱延コイルに1150℃×均熱1分の連続焼鈍を施し、酸洗した。得られた熱延鋼帯を冷間圧延で板厚1mmの冷延コイルとし、1050℃×均熱1分の連続焼鈍・酸洗ラインを通板した後、温度60℃での温間圧延により板厚0.7mmの調質冷延鋼板を製造した。
【0023】
Figure 0003756286
【0024】
実施例1と同様に、各調湿冷延鋼板の引張強さ:T.S.、剪断抵抗:ks、Di /D100 が110%を越える打抜き個数、1000℃での熱間引張試験の断面収縮率Raを求めた。調査結果を、連続鋳造材の曲げ部のコーナーにおける割れ発生の状況と共に表4に示す。
【0025】
Figure 0003756286
【0026】
本実施例で使用したオーステナイトステンレス鋼は、表3に示すように何れもS含有量が0.0080%以上であるため、ks/T.S.が60%以上を示しており、金型摩耗の指標であるDi /D100 が110%を越える打抜き数が10000個以上であった。このことから、何れの鋼板K〜Rも、良好な打抜き性を示しているものといえる。
また、S含有量と1000℃での熱間引張試験における断面収縮率の関係を調査したところ、図6に示すように、S含有量が0.0280%以下の鋼L,N〜Qでは、Bを添加したことにより、断面収縮率Raが60%以上となっていた。Bを添加していても、S含有量が0.0280%を越える鋼Rや、S含有量が0.0280%以下であってもBを添加していない鋼Kは、60%未満の断面収縮率Raが示された。ただし、鋼Mは、S含有量が0.0280%以下で且つBを添加しているが、断面収縮率Raが60%未満であった。
【0027】
そこで、B含有量と断面収縮率Raとの関係を調査したところ、図7に示すように、B含有量が0.0020%以上の鋼は、60%以上の断面収縮率Raを示すことが判った。このことから、良好な熱間加工性を得るためには、B含有量を0.0020%以上とする必要があることが判る。この点、鋼Mは、B含有量が0.0020%未満であるために、60%未満の低い断面収縮率Raに止まっている。また、鋼Rは、Bを0.0020%以上含有するものの、S含有量が0.0280%を越えているため、断面収縮率がRaが60%未満の低い値になっている。
【0028】
更に、熱間引張試験において断面収縮率Raが0%、すなわち塑性変形せずに破断する温度とB含有量との関係を調査したところ、図8に示すようにB含有量が0.0150%を越えると、断面収縮率Raが0%となる温度が1300℃を下回ることが判った。また、表4において連続鋳造材の曲げ部コーナーの割れの有無とB含有量との関係をみると、0.0150%を越える量のBが含まれると連続鋳造時に割れが発生することが判る。このことから、連続鋳造材の曲げコーナー部の割れを防止するためには、断面収縮率Raが0%となる温度を1300℃以上にすることが必要があるといえる。このように、断面収縮率Raが0%となる温度を1300℃以上にするため、B含有量を0.0150%以下に規制すると、連続鋳造時に割れの発生が抑制されることが確認された。
【0029】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の冷延調質高強度オーステナイト系ステンレス鋼板では、S含有量を調整することにより、製造性の重要な指標である熱間加工性を維持しつつ、連続打抜きに使用する金型の摩耗を低減させている。また、Bを添加するとき、熱間加工性,連続鋳造性が向上すると共に、金型の摩耗低減に有効なS含有量の範囲を更に広げられる。このように、本発明によるとき、良好な製造性を維持した上で、且つ金型摩耗を低減し得る冷延調質板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 打抜きにより生成するだれ量を定量化する方法を説明する図
【図2】 打抜き回数:iと初期のだれ生成量:D100 に対するi回目の打抜きによるだれ生成量:Di の割合の関係を示したグラフ
【図3】 S含有量と初期のだれ生成量:D100 に対するi回目の打抜きによるだれ生成量:Di の割合を示したグラフ
【図4】 S含有量と冷延調質材の引張強さ:T.S.に対する打抜きにおける剪断抵抗:ksの割合を示したグラフ
【図5】 S含有量と1000℃での熱間引張における断面収縮率Raの関係を示したグラフ
【図6】 S含有量と1000℃での熱間引張における断面収縮率Raの関係を示したグラフ
【図7】 B含有量と1000℃での熱間引張における断面収縮率Raに関係を示したグラフ
【図8】 B含有量と熱間引張における断面収縮率Raが0%となる温度との関係を示したグラフ

Claims (2)

  1. C:0.005〜0.15質量%,Si:1.0質量%以下、S:0.008〜0.020質量%,Mn:2.0質量%以下、Ni:6.0〜10.5質量%,Cr:16〜20質量%,N:0.20質量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成をもち、鋳造材の1000℃での熱間引張試験における断面収縮率Raが60%以上,引張強さが780N/mm2 以上,引張強さに対する打抜き剪断抵抗の割合が60%以下であることを特徴とする熱間加工性に優れ、且つ金型の摩耗を低減した冷延調質高強度オーステナイト系ステンレス鋼板。
  2. C:0.005〜0.15質量%,Si:1.0質量%以下、S:0.008〜0.028質量%,Mn:2.0質量%以下、Ni:6.0〜10.5質量%,Cr:16〜20質量%,N:0.20質量%以下,B:0.002〜0.015質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成をもち、鋳造材の1000℃での熱間引張試験における断面収縮率Raが60%以上,引張強さが780N/mm2 以上,引張強さに対する打抜き剪断抵抗の割合が60%以下であることを特徴とする熱間加工性に優れ、且つ金型の摩耗を低減した冷延調質高強度オーステナイト系ステンレス鋼板。
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