JP3756088B2 - カテーテル用バルーン及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、カテーテル用バルーン及びその製造方法に係り、特に、人体の管状器官の狭窄部等を拡張せしめるために、該管状器官等に挿入されるカテーテルに対して拡張/収縮可能に取り付けられるカテーテル用バルーン及びそのようなカテーテル用バルーンの有利な製造方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、治療や検査のために、血管、消化管、尿管、気管、胆管等の人体の管状器官、更にはその他の体腔或いは組織中に挿入される医療器具として、カテーテルが使用されており、また、近年では、このカテーテルの先端部に、バルーンが拡張/収縮可能に取り付けられてなるバルーンカテーテルが、例えば、心筋梗塞や狭心症を治療するために、利用されている。
【0003】
すなわち、よく知られているように、心筋梗塞や狭心症は、心臓の冠動脈に狭窄部分が形成されることにより、心筋への血流量が減少して発症するものであるが、このような心筋梗塞や狭心症をバイパス手術を行なわずに治療する安全で且つ有効な方法の一つとして、バルーンカテーテルを、収縮させた状態下で、心臓の冠動脈に挿入して、その狭窄部分に到達させ、そこでバルーンを拡張(膨張)せしめて、かかる狭窄部分を押し拡げることにより、心筋への血流を改善せしめる方法、所謂PTCA(冠動脈血管形成術)が、近年において、一般的に行なわれるようになってきているのである。
【0004】
ところで、そのようなPTCA等の施術に際して用いられるバルーンカテーテルのバルーンにおいては、比較的硬い血管の狭窄部分を十分に押し拡げ得るような拡張性能と、所々屈曲する狭窄部分にバルーン全体が位置せしめられ得るように、バルーンの先端側部分が、かかる狭窄部分に沿って屈曲しつつ、スムーズに通過(通行)し得る通過性能とが、要求されるのであるが、それら二つの要求性能のうち、拡張性能の向上を図るには、バルーンを、高い耐圧強度を発揮する硬質材料にて形成することが望ましく、その一方、通過性能を高めるには、屈曲が容易な、優れた柔軟性を有する材料にてバルーンを形成することが有利であるため、単なる材料の選択によって、それら拡張性能と通過性能とを両立させることは、極めて困難であったのである。
【0005】
かかる状況下、特開平9−164191号公報や特表平9−506008号公報には、高強度ポリマーや非柔軟性の構造体用重合体材料等からなる基材層の少なくとも一面に、該基材層よりも柔軟な柔軟性ポリマーや熱可塑性エラストマ等からなる被覆層を一体的に積層してなるカテーテル用バルーンが明らかにされている。このような複層構造のカテーテル用バルーンにあっては、高強度ポリマーや非柔軟性の構造体用重合体材料等からなる基材層において、高い耐圧強度に基づく拡張性能の向上が図られる一方、柔軟性ポリマーや熱可塑性エラストマ等からなる被覆層において、柔軟性に由来する通過性能の向上が図られているのであるが、実際には、被覆層の形成によって、単に、バルーン表面の硬度が低下せしめられるだけで、通過性能の向上に必要な曲げ剛性面での柔軟化を十分に実現することが出来ず、それ故に、期待される程の通過性能の向上効果を得ることが出来なかったのである。
【0006】
しかも、上記二つの公報に開示されたカテーテル用バルーンは、何れも、複層構造とされているところから、肉厚が厚くなってしまうことが避けられず、そのために、前記狭窄部分をスムーズに通過させる上から、柔軟性に加えて望まれている、カテーテル用バルーンに対する薄肉化は、到底、実現され得るものではなかったのである。また、公知のブロー成形にてバルーンを製造する際にも、目的とするバルーンを与えるパリソンを複層構造としなければならないところから、そのようなパリソンの形成工程が不可避的に複雑なものとなるのであり、それによって、バルーンの製造工程における作業性やコスト性に問題が生じ、更には、パリソンやバルーンにおける複層間での剥離の問題が発生する恐れさえもあったのである。
【0007】
また、特開平5−192408号公報には、柔軟性を備えた樹脂材料からなるパリソンに、内面部から外面部に向かって小さくなる温度勾配を与えつつ、かかるパリソンをブロー成形することにより、内面部よりも外面部が多く配向せしめられて、より高い引張強さが付与されたバルーンを製造する方法が開示されている。しかしながら、このような手法にてカテーテル用バルーンを製造する場合、実際には、パリソンに所望の温度勾配を与えることが極めて困難であったのであり、それ故に、製造されるバルーンにおいて、十分な拡張性能を安定して得ることが出来なかったのである。
【0008】
さらに、特開2000−271209号公報においては、結晶化度を所定の範囲内にコントロールすることによって、耐圧強度と柔軟性とを具備せしめるようにしたカテーテル用バルーンが、明らかにされているが、このようなバルーンにあっても、柔軟性に基づく通過性能が十分に発揮され得るものであるとは、到底、言い難いものであったのである。
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その第一の解決課題とするところは、肉厚を増大せしめることなく、耐圧強度と、屈曲が容易な柔軟性とが、共に十分に高められ得、以てカテーテルに取り付けられて人体の各種管状器官の狭窄部分等に挿入された際に、拡張性能と通過性能の両方の性能が、極めて効果的に且つ十分に発揮され得るようにしたカテーテル用バルーンの改良された構造を提供することにある。また、本発明にあっては、そのようなカテーテル用バルーンを有利に製造する方法を提供することを、その第二の解決課題とするものである。
【0010】
【解決手段】
そして、本発明者等が、かくの如き第一及び第二の技術的課題を解決するために、鋭意、研究を重ねた結果、単層構造を有するバルーンにおいて、単に、内面部の配向度よりも外面部の配向度を高めるだけでなく、それと同時に、外面部の結晶化度を内面部の結晶化度よりも特定の大きさ以上に高めることによって、内面部において屈曲が容易な柔軟性を確保しつつ、外面部において優れた耐圧強度を発揮し得るようになることを見い出したのであり、また、そのような優れた特徴を有するバルーンが、該バルーンを与えるパリソンに対するブロー成形に先立って、引抜き用ダイスを用いた引抜きによる、パリソンの軸方向への延伸加工を行なうことによって、容易に得られることをも、見い出したのである。
【0011】
すなわち、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、カテーテルに対して拡張/収縮可能に取り付けられるバルーンにおいて、結晶化可能領域を有する高分子材料からなると共に、外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりも10%以上大きく、且つ配向度が、内面から外面に向かって漸増するように構成されていることを特徴とするカテーテル用バルーンにある。
【0012】
このような本発明に従うカテーテル用バルーンにおいては、配向度が、バルーン壁の内面から外面に向かって漸増せしめられていることによって、外面部の配向度が内面部の配向度に比べて有利に増大せしめられ、しかも、バルーン壁の外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりも10%以上の割合で十分に大きくされているところから、前述せる如く、単層構造であっても、内面部において屈曲が容易な柔軟性が確保され得ると共に、外面部において優れた耐圧強度が発揮され得るのである。
【0013】
従って、かくの如き本発明に従うカテーテル用バルーンにあっては、単層構造による薄肉化を実現しつつ、耐圧強度と、屈曲が容易な柔軟性とが、共に十分に高められ得、以てカテーテルに取り付けられて各種管状器官の狭窄部分等に挿入された際に、拡張性能と通過性能の両方の性能が、極めて効果的に且つ十分に発揮され得るのである。
【0014】
また、かかる本発明に従うカテーテル用バルーンにおいては、上述の如く、カテーテルに取り付けられて人体の各種管状器官の狭窄部分等に挿入された際に、優れた拡張性能と通過性能が発揮され得るため、例えば、PTCA等、血管等の管状器官の狭窄部分を押し広げることにより実施される医療作業時でのバルーンの破壊による血管壁等の損傷を有利に回避せしめて、医療作業の安全性を効果的に高め得るばかりでなく、血管等の管状器官における狭窄部分の通過時に生ずる抵抗も有利に小さく為し得て、医療作業における作業性の向上を効果的に図り得るのであり、その上、狭窄部分の深部へのバルーンの挿入が、可能となるのである。
【0015】
さらに、本発明に従うカテーテル用バルーンにあっては、屈曲が容易な柔軟性が十分に高められ得ているところから、収縮状態での嵩が、より小さく為され得て、リラップ性(拡張状態からの収縮性能)が有利に高められ得るのであり、それによって、血管等の管状器官の狭窄部分に到達して、拡張せしめられた後、収縮せしめられて、引き抜かれる際に、かかる狭窄部分だけでなく、狭窄部分以外の部分においても、よりスムーズに通過せしめられ得、その結果として、上述の如き医療作業における作業性を、より効果的に高めることが出来るのである。
【0016】
なお、このような本発明に従うカテーテル用バルーンの好ましい態様の一つによれば、前記結晶化可能領域を有する高分子材料が、結晶化可能領域を有する熱可塑性エラストマに対して、結晶核剤となり得る、結晶化可能領域を有する結晶性ポリマーを、30重量%以下の割合で配合してなる組成物にて、構成される。
【0017】
かかる構成を有するカテーテル用バルーンにあっては、熱可塑性エラストマの有する高度な柔軟性を確保しつつ、結晶核剤としての結晶性ポリマーの添加に伴う熱可塑性エラストマの結晶化可能領域の増大と、そのような結晶性ポリマーが具備する結晶性並びに結晶核としての機能とによって、熱可塑性エラストマの結晶性が、より高度に引き出されて、優れた耐圧強度が実現され得るのであり、その結果として、耐圧強度と、屈曲が容易な柔軟性とが、何れも、更に有利に高められ得て、血管等の管状器官の狭窄部分等への挿入時に、拡張性能と通過性能とが、より高いレベルで発揮され得ることとなるのである。
【0018】
また、本発明に従うカテーテル用バルーンの別の有利な態様の一つによれば、前記結晶化可能領域を有する高分子材料が、少なくとも前記外面部に対して摺動性を付与する摺動性付与材を、5重量%以下の割合で含有して、構成される。このような構成を採用すれば、カテーテルに取り付けられて血管等の管状器官の狭窄部分等に挿入された際に、かかる狭窄部分の内面に対して優れた摺動性が発揮され得、それによって、より十分な通過性能が発揮され得るのである。
【0019】
そして、本発明にあっては、前記第二の課題の解決のために、カテーテルに対して拡張/収縮可能に取り付けられるバルーンを製造する方法であって、(a)結晶化可能領域を有する高分子材料からなるパリソンを準備する工程と、(b)該準備されたパリソンの外径よりも小さな内径のダイス孔を有する引抜き用ダイスを用い、かかる引抜き用ダイスのダイス孔を通じて、該パリソンを軸方向に引き抜きつつ、延伸せしめることからなる、パリソンの予備加工工程と、(c)該予備加工されたパリソンをブロー成形して、目的とするバルーンを形成する工程とを含むことを特徴とするカテーテル用バルーンの製造方法をも、また、その要旨とするものである。
【0020】
すなわち、このような本発明に従うカテーテル用バルーンの製造方法においては、目的とするバルーンを与える、結晶化可能領域を有する高分子材料にて形成されたパリソンをブロー成形するのに先だって、引抜き用ダイスを用いた引抜きによる、パリソンの軸方向への延伸加工を行なうことからなる予備加工を、パリソンに対して施すようにしたものであるところから、前述せる如く、結晶化可能領域を有する高分子材料からなると共に、バルーン壁における外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりも10%以上大きく、且つ配向度が、内面から外面に向かって漸増するように構成されたバルーンが、容易に且つ確実に形成され得ることとなったのである。
【0021】
従って、かかる本発明に従うカテーテル用バルーンの製造方法によれば、単層構造による薄肉化を実現しつつ、耐圧強度と、屈曲が容易な柔軟性とが、共に有利に高められ得ることにより、カテーテルに取り付けられて血管等の管状器官の狭窄部分等に挿入された際に、拡張性能と通過性能の両方の性能が、効果的に且つ十分に発揮され得るカテーテル用バルーンを、極めて有利に製造することが出来るのである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係るカテーテル用バルーン及びその製造方法の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0023】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有するカテーテル用バルーンの一例が、カテーテルに取り付けられて、拡張乃至は膨張せしめられた状態下での縦断面形態と横断面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それら図1及び図2から明らかなように、本実施形態のカテーテル用バルーン10は、軸方向の中間部が、拡張乃至は膨張可能な膨大部12とされている一方、その両端部が、互いに外径が異なる取付部14,16とされている。
【0024】
そして、かかるバルーン10にあっては、図1及び図2に実線で示される如く、膨大部12の拡張乃至は膨張状態下において、該膨大部12が二つの取付部14,16よりも大径となる略段付円筒状の全体形状を呈するように構成されており、また、図1及び図2に二点鎖線で示される如く、そのような膨大部12の拡張前には、膨大部12が、雨傘を閉じて折り畳んだ際と同様な形態をもって、折り畳まれて、該折り畳まれた膨大部12における外部への露呈面の全体にて形成される外形形状が、大径の取付部16の外径よりも小さな最大外径を有する、略円筒形状を呈するようになっているのである。更に、ここでは、上述のように折り畳まれて、外形形状が略円筒形状とされた膨大部12における最大外径(図2にmにて示される寸法)と、該最大外径を与える直径に直交するように位置する直径の寸法(図2にnにて示される寸法であって、以下、垂直外径と言う)との比の値(m/n)が、略1となるように、構成されている。
【0025】
また、このようなバルーン10にあっては、従来と同様に、大径の管体からなるアウターシャフト18内に、小径の管体にて構成されたインナーシャフト20が挿入されてなる二重管構造を有するカテーテル22の先端部に取り付けられるようになっている。即ち、バルーン10の両端部の取付部14,16のうち、径の大きな取付部14側からカテーテル22の先端部分が挿入された状態下で、該大径の取付部14が、該カテーテル22のアウターシャフト18の先端部に対して、気密に固着されると共に、該大径の取付部14とは反対側の端部に位置する小径の取付部16が、該カテーテル22のアウターシャフト18の先端部から突出せしめられたインナーシャフト20の先端部に対して、気密に固着されるように、構成されているのである。
【0026】
かくして、本実施形態のバルーン10においては、カテーテル22の先端部に取り付けられた状態下で、例えば、該カテーテル22のインナーシャフト20内に挿通されたガイドワイヤ(図示せず)にて案内されつつ、狭窄部分が形成された冠動脈等の血管内に挿入され、前進せしめられることにより、かかる狭窄部分に到達、位置せしめられるようになっている。そして、その位置において、カテーテル22のアウターシャフト18の先端開口部から、その内孔を通じて供給される生理的食塩水等の拡張液が、バルーン10内に送り込まれて、充満せしめられることにより、膨大部12が拡張乃至は膨張せしめられて、かかる膨大部12にて、狭窄部分を押し広げ得るようになっており、また、そのような状態下において、アウターシャフト18の先端開口部から、膨大部12内に充満された拡張液が排出されることにより、膨大部12が収縮せしめられ得るように構成されているのである。なお、カテーテル22は、かかる膨大部12の収縮状態下で、再び、ガイドワイヤにて案内されて、冠動脈等の血管内から抜き出されるが、狭窄部分は、カテーテル22の抜出し後も、押し広げられたままの状態が維持されることとなる。
【0027】
ところで、上述の如く、カテーテル22に対して拡張/収縮可能に取り付けられる、本実施形態のカテーテル用バルーン10は、図1からも明らかなように、単層構造とされており、それによって、薄肉化が有利に実現され得るようになっている。そして、ここでは、本発明に従って、その薄肉のバルーン10が、結晶化可能領域を有する高分子材料を用いて構成されていると共に、外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりも10%以上大きく、且つ配向度が、内面から外面に向かって漸増するように構成されているのである。
【0028】
すなわち、かかるバルーン10にあっては、バルーン壁における外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりも10%以上大きくされていることと、配向度が、バルーン壁の内面から外面に向かって漸増せしめられていることの相乗効果によって、薄肉であるにも拘わらず、内面部において、屈曲が容易な柔軟性を十分に確保しつつ、外面部において高度な耐圧強度が発揮され得るようになっているのである。
【0029】
しかも、そのようなバルーン10は、薄肉であり、且つ内面部における柔軟性が十分に確保されているため、膨大部12が、拡張された状態から収縮せしめられた際に、拡張前の折り畳まれた状態と比較的に近い状態になる。即ち、従来品においては、膨大部12が拡張された状態から収縮せしめられた際に、拡張前の折畳み状態とは無関係に、扁平な形態に折り畳まれた状態となってしまうのに対して、本実施形態のバルーン10は、拡張状態から収縮せしめられた際に、拡張前の折畳み状態、つまり、図1及び図2において二点鎖線で示される如き、雨傘を折り畳んだ形態と同様な折畳み状態に復元されるようになっている。これによって、ここでは、膨大部12の収縮時においても、該膨大部12の外形形状が、大径の取付部14よりも小さな最大外径(図2にmにて示される寸法)を有し、且つかかる最大外径と垂直外径(図2にnにて示される寸法)との比の値(m/n)が1に近い値となる、拡張前と同様な略円筒形状を呈するように、構成されているのである。
【0030】
なお、このバルーン10のバルーン壁における外面部の結晶化度と内面部の結晶化度との差を求めるための、それぞれの結晶化度の測定方法は、何等限定されるものではなく、結晶化度の公知の測定方法、例えば、密度、X線回析、赤外吸収(IR)、ラマンスペクトル、及び核磁気共鳴(NMR)スペクトルによる測定方法等が、適宜に採用され得るのである。
【0031】
また、このようなバルーン10を構成する、結晶化可能領域を有する高分子材料としても、特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィンエラストマ、ポリアミドエラストマ、ポリウレタンエラストマ、及びポリエステルエラストマ等、公知の各種の材料の中から、1種類のものが選択されて、それが単独で用いられたり、或いはそれらの中から、2種類以上のものが適当な配合比にて組み合わされてなる組成物が用いられて、構成されることとなる。
【0032】
そして、その中でも、結晶化可能領域を有する熱可塑性エラストマを用いる場合には、それに対して、それ自体、結晶化可能領域を有し、該熱可塑性エラストマに添加した際、結晶核剤となり得る比較的高結晶性の高分子ポリマーを、30重量%以下の割合で配合してなる組成物が、好適に用いられることとなる。何故なら、かくの如き組成物においては、熱可塑性エラストマの有する高度な柔軟性が有効に発揮され得ると同時に、結晶核剤たる高分子ポリマーの添加に伴う熱可塑性エラストマの結晶化可能領域の増大と、更には、かかる高分子ポリマーが具備する高い結晶性並びに結晶核剤としての機能とによって、該熱可塑性エラスマの結晶性が、より高度に引き出され得て、優れたな耐圧強度が実現され得るからである。なお、かかる結晶性の高分子ポリマーとしては、熱可塑性エラストマの種類に応じて適宜に決定され、例えば、熱可塑性エラストマがポリアミドエラストマである場合には、ナイロン12等が用いられる。また、結晶化可能領域を有する熱可塑性エラストマに対して、かかる結晶核剤としての高分子ポリマーを、30重量%を越える割合で配合した場合にあっては、熱可塑性エラストマの結晶性の更なる向上が期待し得ず、反って、熱可塑性エラスマの柔軟性を損なうこととなるところから、一般に、その配合量は、組成物の全体に対して、30重量%以下の含有量となるように決定される。
【0033】
さらに、結晶化可能領域を有する高分子材料には、上述の如く、バルーン10が、狭窄部分が形成された冠動脈等の血管内でスムーズに移動せしめられ得るように為すために、有利には、バルーン10の少なくとも外面部に対して摺動性を付与する摺動性付与材が、5重量%以下の割合で含有せしめられて、目的とするバルーン10が構成されることとなる。なお、かかる摺動性付与材としては、例えば、シリコンオイルやポリテトラフルオルエチレン(PTFE)等の低摩擦係数材料が、用いられる。また、そのような摺動性付与材が、バルーン10を構成する、結晶化可能領域を有する高分子材料に対して、5重量%を越える割合で含有せしめられていても、バルーン10の外面部における摺動性の更なる向上は認められず、それ故に、ここでは、材料の無駄な使用を抑制する点から、摺動性付与材の含有量は、5重量%以下とされているのである。
【0034】
ところで、かくの如き構造を有するカテーテル用バルーン10は、有利には、公知のブロー成形手法を利用して、製造されるのであるが、その際には、例えば、以下のようにして、その作業が進められることとなる。
【0035】
すなわち、先ず、図3に示される如く、公知の押出成形機等(図示せず)を用い、その先端部に取り付けられたノズル24から、バルーン10を構成する、所定の結晶化可能領域を有する高分子材料を溶融状態で押し出した後、直ちに冷水を用いて冷却することにより、かかる材料からなるパリソン26が成形される。
【0036】
次いで、図4に示されるように、先に押出成形されたパリソン26の外径よりも所定寸法小さな内径のダイス孔28を有する引抜き用ダイス30を用い、この引抜き用ダイス30のダイス孔28を通じて、パリソン26を、その軸方向に引き抜く。また、この引抜き工程では、例えば、引抜き用ダイス30が、80℃程度に加熱されて用いられると共に、パリソン26の内孔内に、該パリソン26の内径よりも一周り小さな外径を有する芯金32が挿入せしめられた状態下で、引抜きを実施する等の手法が、採用されることとなる。
【0037】
かくして、かかる引抜き工程において、パリソン26を薄肉化しつつ、軸方向に延伸せしめることからなる予備加工を、該パリソン26に施して、該パリソン26の壁部における外面部の結晶化度を、内面部の結晶化度に比して、より大きく増加せしめ、また、それと共に、配向度を内面から外面に向かって漸増するように、為すのである。
【0038】
なお、このパリソン26の引抜き工程で用いられる引抜き用ダイス30のダイス孔28の内径は、該パリソン26の外径の大きさによって、適宜に決定されることとなる。つまり、目的とするバルーン10のバルーン壁における外面部の結晶化度と内面部の結晶化度との差は、引抜き加工後におけるパリソン26の壁部における外面部の結晶化度と内面部の結晶化度との差の大きさに由来するため、目的とするバルーン10のバルーン壁の外面部の結晶化度を内面部の結晶化度よりも10%以上大きく為し得る程度において、且つ引抜き加工後におけるパリソン26の外面部の結晶化度が内面部の結晶化度よりも大きくなるように、パリソン26の外径に応じて、引抜き用ダイス30のダイス孔28の内径が決定されるのである。
【0039】
その後、図5に示される如く、上述せる引抜きによる予備加工が施されたパリソン26を、型閉じ状態のブロー成形用金型34内に形成された、目的とするバルーン10に対応した形状のキャビティ36内に配置する。このとき、パリソン26の軸方向両側の端部が、ブロー成形用金型34の型合わせ部位同士によって、気密に封止される。
【0040】
引き続き、図6に示されるように、パリソン26の軸方向一方側の封止部分に空気ノズル38を差し込んだ後、この空気ノズル38を通じて、パリソン26内に空気を吹き込んで、パリソン26を膨張させることにより、キャビティ36の内面形状に対応した形状を有する中間成形体40を得る。そして、その後、図示されてはいないものの、ブロー成形用金型34を型開きして、中間成形体40をブロー成形用金型34から離脱せしめた後、該中間成形体40の軸方向両端部の不要部分をカットし、以て、図1に示される如き、目的とするカテーテル用バルーン10を得るのである。
【0041】
このように、本実施形態では、結晶化可能領域を有する高分子材料を用いて形成されたパリソン26に対して、単に、引抜き用ダイス30の、所定の内径を有するダイス孔28を通じて引き抜くだけの予備加工を実施し、その後、かかる予備加工が施されたパリソン26に対して、通常のブロー成形を行なうことによって、得られるバルーン10が、結晶化可能領域を有する高分子材料からなる単層構造を有すると共に、外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりも10%以上大きく、且つ配向度が、内面から外面に向かって漸増するように、容易に構成され得るのである。
【0042】
従って、かくの如き本実施形態によれば、単層構造による薄肉化が有利に実現され得ると共に、耐圧強度と屈曲が容易な柔軟性とが十分に高められ得るカテーテル用バルーン10が、例えば、パリソン26の温度を部分的に異ならしめるような面倒で、且つ困難な操作等を何等行なうことなく、極めて容易に製造され得るのであり、また、かくして製造されたカテーテル用バルーン10が、カテーテル22に取り付けられて冠動脈等の血管の狭窄部分等に挿入された際に、拡張性能と通過性能の両方の性能を、高度な耐圧強度と、屈曲が容易な優れた柔軟性とに基づいて、極めて効果的に且つ十分に発揮し得ることとなるのである。
【0043】
そして、かかる本実施形態においては、上述の如く、バルーン10が、カテーテル22に取り付けられて冠動脈等の血管の狭窄部分等に挿入された際に、優れた拡張性能と通過性能が発揮され得るため、例えば、バルーン10が、狭窄部分で拡張せしめられた時に破壊されて、冠動脈等の血管の壁を傷付けてしまうようなことが有利に解消せしめられ得、それによって、冠動脈等の血管へのバルーン10の挿入操作を伴う医療作業の安全性が、効果的に高められ得るのである。また、バルーン10が冠動脈等の血管の狭窄部分を通過する際に生ずる抵抗が有利に小さく為され得て、前記医療作業における作業性も有利に高められ得るばかりでなく、狭窄部分の深部にも、バルーン10がスムーズに到達せしめられ得ることとなるのである。
【0044】
さらに、本実施形態にあっては、バルーン10が、薄肉で、且つ高度な柔軟性を有していることによって、収縮時に、膨大部12の外形形状が、大径の取付部14よりも小さな最大外径(図2にmにて示される寸法)を有し、且つかかる最大外径と垂直外径(図2にnにて示される寸法)との比の値(m/n)が略1となる、拡張前と同様な略円筒形状を呈するように、構成されているところから、リラップ性(拡張状態からの収縮性能)が有利に高められ得るのである。そして、それにより、カテーテル22に取り付けられて冠動脈等の血管内の狭窄部分において、一旦、拡張された後、収縮せしめられて、該狭窄部分から引き抜かれるに際に、狭窄部分だけでなく、狭窄部分以外の部分においても、よりスムーズに通過せしめられ得るのであり、それによって、冠動脈等の血管へのバルーン10の挿入操作を伴う医療作業における作業性が、より効果的に高められ得ることとなるのである。
【0045】
なお、前記実施形態では、カテーテル用バルーン10を与えるパリソン26が、押出成形により成形されていたが、かかるパリソン26を、例えば、射出成形等、押出成形以外の手法で成形することも可能である。
【0046】
また、カテーテル用バルーン10の全体形状も、前記実施形態に示されるものに、特に限定されるものでないことは、言うまでもないところである。
【0047】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0048】
また、以下に代表的な実施例を示すが、かかる実施例及び上述の本発明に実施形態における具体的記載によって、本発明は、何等、限定的に解釈されるものでないことは、言うまでもないところである。
【0049】
【実施例】
先ず、目的とするカテーテル用バルーンを構成する結晶化可能領域を有する高分子材料として、340MPaの曲げ弾性率を有するポリアミドエラストマ(ポリエーテルブロックアミド:ソフトセグメントであるポリエーテルとハードセグメントであるポリアミドの共重合体)と、1470MPaの曲げ弾性率を有するナイロン12とを重量比で9:1の割合で配合してなる組成物にて構成された高分子材料を準備した。そして、この準備された高分子材料を用いて、公知の押出成形機による押出成形を行なって、0.97mmの外径と、0.60mmの内径とを有する、所定長さのパリソンを成形した。なお、かくして成形されたパリソンの内面部の結晶化度と外面部の結晶化度とを、公知の表面反射赤外吸収法により、下記式(1)にて求めたところ、内面部の結晶化度が1.617であり、また、外面部の結晶化度が1.636であった。
【0050】
結晶化度=アミドI のピーク面積/アミドIIのピーク面積・・・・(1)
[但し、アミドI は1490〜1590cm-1の波長におけるピークを示し、
また、アミドIIは1590〜1690cm-1の波長におけるピークを示す。]
【0051】
次いで、0.90mmの内径のダイス孔を有する引抜き用ダイスと、外径が0.59mmで、所定の長さを有する断面円形の芯金とを用い、かかる芯金を、前記成形されたパリソンの内孔内に挿入せしめる一方、引抜き用ダイスを80℃に加熱した。その後、この芯金が挿入されたパリソンを、該準備された引抜き用ダイスのダイス孔を通じて軸方向に引き抜いて、パリソンを薄肉化すると共に、軸方向に延伸した。
【0052】
ここで、延伸加工後のパリソンの壁部における内面部の結晶化度と外面部の結晶化度とを、延伸加工前に、パリソンの各結晶化度を求めた際と同様にして求めたところ、内面部の結晶化度が1.673で、また、外面部の結晶化度が1.840となっており、延伸加工によって、外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度に比べて、より大きな量で増大せしめられていることが、認められた。
【0053】
次ぎに、延伸加工されたパリソンを、公知の構造を有するブロー成形用金型内に形成された、目的とするバルーンに対応した形状のキャビティ内に収容し、従来と同様にして、パリソン内に空気を吹き込むことによって、目的とするバルーン(実施例)を得た。なお、かくして得られたバルーンの外径は3.0mmであり、また、厚さは23μmであった。
【0054】
一方、上述の如くして得られた実施例のバルーンとは別に、該実施例のバルーンを構成する、結晶化可能領域を有する高分子材料と同一の材料を用いて、公知の押出成形機による押出成形を行なって、0.86mmの外径と、0.52mmの内径とを有する、所定長さのパリソンを成形した。なお、かくして成形されたパリソンの内面部の結晶化度と外面部の結晶化度とを、前記実施例のバルーンを与えるパリソンの各結晶化度を求めた際と同様にして求めたところ、内面部の結晶化度が1.602であり、また、外面部の結晶化度が1.615であった。
【0055】
そして、比較のために、かくして成形されたパリソンに対して、上述の如き延伸加工を何等行なうことなく、該パリソンをそのまま、公知の構造を有するブロー成形用金型内に形成された、目的とするバルーンに対応した形状のキャビティ内に収容し、実施例のバルーンを成形する際と同様にして、パリソン内に空気を吹き込むことによって、目的とするバルーン(比較例)を得た。なお、かくして得られたバルーンの外径は3.0mmであり、また、厚さは24μmであった。
【0056】
次いで、上述の如くして得られた実施例のバルーンと比較例のバルーンの2種類のバルーンの壁部における内面部の結晶化度と外面部の結晶化度とを、それぞれ、パリソンの結晶化度を求めた際と同様にして、求め、また、この求められた、それぞれの値から、内面部の結晶化度に対する、外面部の結晶化度と内面部の結晶化度との差の割合(百分率)、換言すれば、外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりもどれだけの割合(百分率)だけ大きいかを、2種類のバルーンについて、それぞれ求めた。それらの結果を、下記表1に併せて示した。なお、下記表1には、内面部の結晶化度に対する、外面部の結晶化度と内面部の結晶化度との差の割合(百分率)を、単に、比率として、示した。
【0057】
さらに、それら2種類のバルーン(実施例と比較例)を用いて、耐圧強度を、公知の方法により、それぞれ測定した。それらの結果も、下記表1に併せて示した。
【0058】
また、実施例のバルーンと比較例のバルーンのそれぞれの挿入抵抗、つまり、各種管状器官等に挿入された際に、それらの壁面との接触により生ずる抵抗を調べるために、先ず、内径が1.5mmで長さが100mmのポリテトラフルオルエチレン製のチューブが、半径10mmの湾曲部を有するU字形状に変形せしめられてなるテスト管を準備した。また、その一方で、前記2種類のバルーン(実施例と比較例)のそれぞれに、外径が0.60mmで、内径が0.43mmである高密度ポリエチレン製のインナーシャフトを接続して、公知のラッピング加工を施した。その後、それらインナーシャフトが接続されて、ラッピング加工された2種類のバルーン(実施例と比較例)を、それぞれ、準備されたテスト管内に挿入し、同一の速度で前進移動せしめた。そして、その際の各バルーンの挿入抵抗値を、従来と同様にして、それぞれ測定した。その結果も、下記表1に併せて示した。
【0059】
さらに、実施例のバルーンと比較例のバルーンのそれぞれのリラップ性を調べるために、各バルーンを、14.19×105 Paの圧力で60秒間だけ拡張した後、負圧をかけて収縮せしめ、そして、その収縮せしめられた状態下での各バルーンの最大外径と前記垂直外径(つまり、収縮状態下のバルーンの外形形状において、その最大外径を与える直径に直交するように位置する直径の寸法)とを、それぞれ測定した。また、測定された最大外径と垂直外径の比の値(最大外径/垂直外径)、真円度として、算出した。それらの測定値と算出値とを、それぞれ下記表1に併せて、示した。
【0060】
【表1】
Figure 0003756088
【0061】
かかる表1の結果から明らかなように、本発明手法に従って、パリソンを延伸加工した後、該パリソンに対してブロー成形を行なうことにより得られた実施例のバルーンは、壁部における外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりも17%大きくなっているのに対して、従来と同様な手法にて得られた比較例のバルーンは、壁部における外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度に比べて、5%程度しか大きくなっていない。そして、そのような実施例のバルーンと比較例のバルーンとにおいて、それぞれの耐圧強度と挿入抵抗を比較すると、実施例のバルーンの方が、比較例のバルーンよりも、耐圧強度が大きく、また、挿入抵抗が十分に小さいことが、認められる。更に、それら実施例のバルーンと比較例のバルーンのそれぞれの収縮状態における外径を比べた場合、実施例のバルーンの方が、比較例のバルーンよりも、最大外径が小さく且つ垂直外径が大きく、従って真円度が、1に近い値となっていることが判る。即ち、これらのことから、実施例のバルーンが、比較例のバルーンに比して、カテーテルに取り付けられて冠動脈等の血管の狭窄部分等に挿入された際に、拡張性能と通過性能の両方の性能において、より優れた特性が発揮され得ることが、明確に認識され得るのである。
【0062】
次いで、本発明に従うカテーテル用バルーンを構成する、結晶化可能領域を有する高分子材料として好適に用いられる組成物において、結晶化可能領域を有する熱可塑性エラストマと、結晶核剤となり得る、結晶化可能領域を有する結晶性ポリマーとの配合割合の望ましい範囲が、どのような範囲であるかを調べるために、以下の如き試験を行なった。
【0063】
すなわち、先ず、結晶化可能領域を有する熱可塑性エラストマとして、結晶化熱量が38.7J/gであるポリアミドエラストマ(前記実施例のバルーンを得る際に用いられたものと同一のもの)の所定量を準備する一方、結晶核剤となり得る、結晶化可能領域を有する結晶性ポリマーとして、結晶化熱量が54.4J/gであるナイロン12(前記実施例のバルーンを得る際に用いられたものと同一のもの)の所定量を準備した。なお、それら配合成分として準備された材料のそれぞれの結晶化熱量は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、サンプル10mgを溶融状態から−2℃/分で冷却、結晶化にかかる熱量を測定することによって、求めた。
【0064】
次いで、準備されたポリアミドエラストマとナイロン12とを重量比で9:1の割合となるように配合して、組成物1を得、また、それらを重量比で7:3の割合となるように配合して、組成物2を得、更に、それらを重量比で5:5の割合となるように配合して、組成物3を得た。そして、かくして得られた3種類の組成物(組成物1〜3)のそれぞれの結晶化熱量を、配合割合に基づいて算出して、計算上の値を求める一方、配合成分として準備された材料の結晶化熱量を測定した際と同様にして、DSCを用いた実測値を求めた。また、それら求められた実測値から計算値を差し引いた値の計算値に対する割合(百分率)を、それぞれ、求めた。それらの結果を、下記表2に併せて示した。
【0065】
【表2】
Figure 0003756088
【0066】
かかる表2の結果から明らかなように、結晶化可能領域を有する熱可塑性エラストマたるポリアミドエラストマに対して、結晶核剤となり得る、結晶化可能領域を有する結晶性ポリマーたるナイロン12を配合することにより得られた、3種類の組成物(組成物1〜3)にあっては、何れも、結晶化熱量の実測値が、計算値を上回っており、その増加量が、組成物1では8%程度で、組成物2では6%程度で、組成物3では、2%程度となっている。このことから、ポリアミドエラストマにナイロン12を配合することによって、ポリアミドエラストマの結晶化度が、十分に引き出され得るのであり、また、特に、ポリアミドエラストマに対して、ナイロン12を、組成物の全量に対して30重量%以下の程度の割合にて配合することによって、ポリアミドエラストマの結晶化度が、更に一層高度に引き出され得ることが確認され得るのである。
【0067】
なお、因みに、上述の如くして得られた3種類の組成物と、それらの組成物を得るのに準備されたポリアミドエラストマと、ナイロン12とを用いて、本発明手法に従って、構成材料が互いに異なる5種類のバルーンを製造し、それら5種類のバルーンの挿入抵抗値を、前記実施例の挿入抵抗値の測定方法と同様な方法により測定したところ、組成物1にて構成されたバルーンの挿入抵抗値は274mNで、組成物2にて構成されたバルーンの挿入抵抗値は294mNで、組成物3にて構成されたバルーンの挿入抵抗値は363mNで、ポリアミドエラストマのみにて構成されたバルーンの挿入抵抗値は245mNで、ナイロン12のみにて構成されたバルーンの挿入抵抗値は412mNであった。このことから、ポリアミドエラストマに対して、ナイロン12を、組成物の全量に対して30重量%以下の程度の割合にて配合することによって、低い挿入抵抗値を、有利に確保し得ることが、確認され得るのである。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明に従うカテーテル用バルーンにあっては、単層構造による薄肉化を実現しつつ、耐圧強度と、屈曲が容易な柔軟性とが共に十分に高められ得、以てカテーテルに取り付けられて各種管状器官の狭窄部分等に挿入された際に、拡張性能と通過性能の両方の性能が、極めて効果的に且つ十分に発揮され得るのである。
【0069】
また、本発明に従うカテーテル用バルーンの製造方法によれば、そのような優れた特徴を発揮するカテーテル用バルーンを、極めて有利に製造することが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従うカテーテル用バルーンの一例を、カテーテルに取り付けた状態下において示す、縦断面説明図である。
【図2】図1におけるII−II断面説明図である。
【図3】本発明手法に従ってカテーテル用バルーンを製造する際の一工程例を示す説明図であって、該カテーテル用バルーンを与えるパリソンを成形している状態を示している。
【図4】本発明手法に従ってカテーテル用バルーンを製造する際の別の工程例を示す説明図であって、該カテーテル用バルーンを与えるパリソンに対して延伸による予備加工を施している状態を示している。
【図5】本発明手法に従ってカテーテル用バルーンを製造する際の更に別の工程例を示す説明図であって、予備加工されたパリソンをブロー成形用金型内に収容した状態を示している。
【図6】本発明手法に従ってカテーテル用バルーンを製造する際の他の工程例を示す説明図であって、ブロー成形用金型内に収容されたパリソンの内部に空気を吹き込んで、目的とするバルーンを形成している状態を示している。
【符号の説明】
10 カテーテル用バルーン 12 膨大部
14,16 取付部 22 カテーテル
26 パリソン 28 ダイス孔
30 引抜き用ダイス 34 ブロー成形用金型
36 キャビティ 40 中間成形体

Claims (4)

  1. カテーテルに対して拡張/収縮可能に取り付けられるバルーンにして、該バルーンを与える、結晶化可能領域を有する高分子材料からなるパリソンに対し、その内部に芯材を挿入した状態において、ダイスを用いた引抜きによる延伸加工を施したものを、ブロー成形することによって、外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりも10%以上大きく、且つ配向度が、内面から外面に向かって漸増するように構成されていることを特徴とするカテーテル用バルーン。
  2. 前記結晶化可能領域を有する高分子材料が、結晶化可能領域を有する熱可塑性エラストマに対して、結晶核剤となり得る、結晶化可能領域を有する結晶性ポリマーを、30重量%以下の割合で配合してなる組成物にて、構成されている請求項1に記載のカテーテル用バルーン。
  3. 前記結晶化可能領域を有する高分子材料が、少なくとも前記外面部に対して摺動性を付与する摺動性付与材を、5重量%以下の割合で含有している請求項1又は請求項2に記載のカテーテル用バルーン。
  4. カテーテルに対して拡張/収縮可能に取り付けられるバルーンを製造する方法であって、
    結晶化可能領域を有する高分子材料からなるパリソンを準備する工程と、
    該準備されたパリソンの外径よりも小さな内径のダイス孔を有する引抜き用ダイスを用い、該パリソン内部に芯材を挿入した状態下において、かかる引抜き用ダイスのダイス孔を通じて、該パリソンを軸方向に引き抜きつつ、延伸せしめることにより、結晶化度及び配向度を内面部よりも外面部において高めることからなる、パリソンの予備加工工程と、
    該予備加工されたパリソンをブロー成形して、外面部の結晶化度が、内面部の結晶化度よりも10%以上大きく、且つ配向度が、内面から外面に向かって漸増するように構成されたバルーンを形成する工程とを、
    含むことを特徴とするカテーテル用バルーンの製造方法。
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