JP3755756B2 - 高速固液分離方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工場排水、下水、上水処理原水などの除去対象物質(懸濁粒子、色度成分、COD成分、リン酸イオン、重金属イオンなど)を含有する水(以下「原水」という)の超高速固液分離方法、そのための装置に関し、従来の凝集沈殿法又は浮上分離法の50〜100倍以上の超高速度で固液分離できる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、合流式下水道における雨天時越流水(CSO)の、公共用水域への汚濁負荷が大きな問題になっている。合流式下水道の雨天時越流水(CSO)は、短時間に膨大な水量が発生するので、超高速度で固液分離し、SSが除去された処理水を公共用水域に放流する必要があるが、従来超高速度で固液分離する優秀な技術がなかった。
また下水処理施設に流入する下水は、最初沈殿池で沈殿分離されたのち、活性汚泥処理されるが、最初沈殿池のSSの除去率が悪いため、凝集剤を添加して凝集沈殿処理する例が北欧で普及している。しかし、凝集沈殿速度が小さく、大きな沈殿池を必要とする欠点がある。そのためCSOおよび下水を超高速度で固液分離できる新技術が待望されている。
なお、従来より、原水に加圧溶解空気含有水又は微細気泡を吹き込んで、気泡に懸濁粒子を付着させて浮上分離する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の方法では、浮上分離速度がせいぜい100〜200mm/min程度と小さく、また空気圧縮機、空気溶解設備などの付帯設備が必要という欠点がある
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、極めて簡単な操作によって、各種原水中の凝集除去対象物質を、極めて高速度で固液分離できる画期的な固液分離方法、及びその装置を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行い、原水に発泡スチロールなどの水より比重が小さい浮上性固体粒子(本発明ではこれを「固体粒子」と呼ぶこともある)を添加して、撹拌し水中に分散させながら、少なくとも高分子凝集剤(ポリマ)を添加すると、速やかに原水中の除去対象物質が、浮上性固体粒子表面に強く付着した状態になることを見出した。
これを旋回流槽(たとえば液体サイクロン)に導くと、水より比重が小さい浮上性固体粒子が、旋回流の渦が引き起こす遠心力によって、渦の中心部に集まり、ほぼ瞬間的に固液分離されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、次の構成からなるものである。
(1)原水に、高分子凝集剤又は無機凝集剤と高分子凝集剤、及び水より比重が小さい浮上性固体粒子を添加して撹拌し、原水中の凝集対象物質を該固体粒子表面に付着させたのち、その凝集対象物質付着固体粒子を含む水を旋回流槽に供給し、旋回流により該固体粒子を旋回流の渦中心部に集合させて水と固液分離し、該固体粒子が分離された処理水を流出させ、前記固液分離された水より比重が小さい浮上性固体粒子、又は該固体粒子と分離固体粒子から付着フロックを剥離除去した浮上性固体粒子を、原水に循環添加することを特徴とする高速固液分離方法。
【0006】
(2)原水に高分子凝集剤又は無機凝集剤と高分子凝集剤、及び水より比重が小さい浮上性固体粒子を添加して原水中の凝集対象物質を前記固体粒子の表面に付着させる凝集付着槽と、この凝集付着槽の流出水が導入され中心部に分離されたフロック付着固体粒子の浮上分離した浮上分離スラッジの分離固体粒子チャンバーと前記分離固体粒子の排出管を上部に、下部に処理水の流出管を備えた旋回流槽と、前記浮上分離固体粒子のフロック剥離攪拌槽と、剥離フロックを沈殿フロックと水より比重が小さい浮上性固体粒子の含有水に分離する分級槽と、前記固体粒子の含有水の凝集付着槽への返送配管と、浮上分離固体粒子の一部の凝集付着槽への返送配管とを有することを特徴とする高速固液分離装置。
【0007】
本発明に言う「旋回流槽」とは、たとえばサイクロンのように、液体中に懸濁する浮上性固体粒子に与えられる遠心力及び槽半径方向の水の圧力分布を利用して、固液分離を促進する装置であると定義され、この原理を利用するものであればその構造は任意のものが適用できる。
【0008】
本発明の除去対象物質は、SS、コロイド成分、フミン酸、色素などの色素成分、リン酸イオン、フッ素イオン、COD成分などである。これらの物質は無機凝集剤を添加すると不溶化する。
また、キレート剤、アルカリ又は硫化物を添加して金属キレート不溶化物、金属水酸化物、金属硫化物などとして不溶化できる金属イオンの除去にも、当然本発明を適用できる。
また、原水に粉末活性炭などの粉末吸着剤を添加し、被吸着物質を吸着したのち、粉末吸着剤を本発明によって超高速に固液分離することも出来る。
【0009】
なお、本発明は、特に有機性の懸濁粒子を含有する合流式下水道の雨天時越流水(CSOと略称される)又は下水処理施設に流入する下水の超高速固液分離技術としても極めて好適な新技術である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実施の形態を説明する全図において、同一機能を有するものは同一符号を付けて説明する。
まず、全体のフローを説明する。
図1は、本発明の超高速固液分離技術の一実施態様を示す系統図である。
【0011】
原水1に凝集剤(高分子凝集剤3単独又は無機凝集剤4と高分子凝集剤3の併用)と、粒径30〜3000μm程度で比重が0.1以下の浮上性固体粒子2を添加し、凝集付着槽1で撹拌し、浮上性固体粒子2を槽1内に分散流動させると、除去対象物質のフロックが浮上性固体粒子2の表面に、速やかに(10〜30秒程度)付着コーティングされて一体化した状態になる。
【0012】
この付着固体粒子を含む水6を液体サイクロンなどの旋回流槽7に流入させると、遠心力及び槽半径方向の水の圧力分布の相違によって、浮上性固体粒子2が瞬間的に渦の中心部に集まり、また水が外筒8の内面側に集まることによって固液分離され、清澄な処理水12が槽の外筒壁に取り付けられた処理水流出部から流出する。
【0013】
旋回流槽7への原水1の流入方法は、接線方向に流入させ、槽7内に強い旋回流を生起させる。その際、流入水流の持つ運動エネルギーで槽7内に旋回流の渦を起こさせても良いが、槽7内に渦生起のための撹拌翼を設置し、これをモ一ターで回転させ強い渦流を起こすようにしても良い。
なお、図1の旋回流槽7は、渦の生起を容易にするために、接線方向に流入した原水1が槽7の外筒8の内面及び内筒9の外面に沿って旋回流として流れ、内筒9の外面にフロックを表面にコーディングされた粒子2が集合、集中するように構成されている。
【0014】
本発明の分離メカニズムは、次のように考える。
砂などの水より比重の大きい粒子を液体サイクロンで分離する場合は、砂が遠心力によってサイクロンの壁19側に分離されるのであるが、本発明の場合は、水の比重が浮上性固体粒子2の比重よりも大きいので、図2のように旋回流によって水に与えられる圧力分布が、サイクロンの壁19の側ほど大きくなる。サイクロン壁19側に近い方の浮上性固体粒子2の表面の圧力が、サイクロン中心部18側の浮上性固体粒子2の表面の圧力よりも大きくなる。この圧力差を△Pとする。
一方、浮上性固体粒子2の比重が水より小さいので、浮上性固体粒子2に及ぼされる遠心力Gは非常に小さく、△P>Gとなる。この結果、液より比重の小さい浮上性固体粒子2はサイクロンの渦中心部に集まるのである。
この逆に、砂などの水より比重の大きい浮上性固体粒子は、△P<Gとなり、
砂がサイクロンの壁に集まるのである。
【0015】
本発明の「凝集フロック付着浮上性固体粒子」の渦流による固液分離速度は極めて大きく、驚くべきことに、旋回流槽7の要所滞留時間は0.3分以下という驚くほど短時間で良い。したがって、従来の凝集沈殿装置、浮上分離装置の所要滞留時間(1〜2時間程度)に比べ、驚異的にコンパクトな装置で固液分離できる。
【0016】
本発明者の実験によれば、原水1に添加する浮上性固体粒子2の粒径は、過度に大きいと凝集フロックが浮上性固体粒子2表面に付着しにくくなり、過度に小さいと渦中心部に集まる力が小さくなるので、30〜3000μm程度とするのが好適である。より好ましくは、100〜2000μm、さらに好ましくは300〜1000μmの範囲である。
本発明に適用するために最適な浮上性固体粒子2を種々検討した結果、発泡スチロールなどの発泡プラスチツク微粒子が好適である。特に発泡スチロールは、発泡倍率を変えることによって、比重が0.01〜0.1程度と極めて小さい値を任意に選択できること、極めて浮上力が大きいこと、また低価格であること、強度が比較的大きく、強撹拌によっても破壊しないなどの特性があるので最適である。
【0017】
浮上性固体粒子2の比重は特に重要で、0.2以下、好ましくは0.02〜0.2程度の非常に軽量な粒子を使用すると、旋回流槽7内で渦中心部に極めて効果的に集まりやすいので、大きな固液分離速度を得る上で非常に重要である。
浮上性固体粒子2の原水1への添加量として好適な範囲は、少なすぎると浮上性固体粒子2に付着しないフロックが残留し、多すぎるといたずらにハンドリング量が増え煩雑になるので、浮上性固体粒子2嵩容積で、原水1リットル当たり、5〜200ml、より好ましくは10〜50ml程度(単位:ml浮上性固体粒子/リットル−水)が好適範囲である。
【0018】
無機凝集剤4を使用する場合の添加率は原水水質によって変化するが、下水を本発明によって処理する場合は、PACでは100〜150mg/リットル、塩化第2鉄では50〜100mg/リットル程度である。リン除去などのイオンを除去する場合以外は、無機凝集剤4の添加は不可欠ではなく、カチオン系ポリマで代替できる場合が多い。
【0019】
高分子凝集剤3としては、有機高分子凝集剤(「ポリマ」ともいう)はアニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性ポリマのいずれか、またはこれらを併用する。その注入率は、下水の場合1〜5mg/リットル程度で十分である。
また、無機高分子凝集剤である重合シリカ(活性シリカとも呼ばれる)を使用することも出来る。さらに、無機凝集剤4液中に重合シリカを共存させた凝集剤(たとえば鉄シリカ凝集剤)を使用することも出来る。
【0020】
本発明にとって、最も効果的な凝集付着方法を検討した結果、原水1に無機凝集剤4又は有機性カチオンポリマを添加して撹拌したのち、有機性ノニオン(又はアニオン)ポリマと有機性両性ポリマを添加する方法が、非常に粘着性が大きく、フロック強度が強いフロックが形成され、極めて効果的に浮上性固体粒子2の表面に、付着コーティングする凝集フロックを形成できることを見出した。
【0021】
しかして、次に渦中心部に分離された付着固体粒子10を、槽7の内筒9の下端開口部から内筒9を上昇させて槽7上部の分離固体粒子チャンバー11に流入させる。
分離固体粒子チャンバー11から付着固体粒子10を、ポンプ13、エアリフト、又はコンベヤ機構などの任意の移送機構で槽7外に取り出し、フロック剥離攪拌槽14に送り、付着フロックを浮上性固体粒子2から剥離する。そのあと、分級槽15に送り、剥離フロックを沈殿させ、浮上性固体粒子2を浮上させ、洗浄された浮上性固体粒子2を原水1に循環する。
剥離したフロックは、沈殿汚泥16として汚泥処理工程に供給し、処理処分する。なお分級槽15の上から、原水1の一部を流しこみ、剥離したフロツクを洗い流すようにしても良い。
【0022】
なお、剥離槽14を経由させずに、経路Aから付着固体粒子10の一部を原水1に循環させても良い。この方法では、フロック剥離攪拌槽14に送られる浮上性固体粒子量が、全量の付着固体粒子10のフロック剥離攪拌槽14に送る場合より少なくなり、剥離部容積、剥離エネルギが減少できる利点がある。経路Aから循環された付着固体粒子10の表面には、既にフロックが付着しているので、新たなフロックがその上に雪だるま式に付着してゆく。
【0023】
図1では、内筒9を持つ旋回流槽7を示したが、図3のように内筒を設けない槽を使用すること当然出来る。
図3の場合は、フロック付着固体粒子は、渦中心に集まって固液分離され、その状態で、上部の分離粒子チャンバー11に浮上してゆく。また、図3ではフロック付着固体粒子から固体粒子を回収し循環使用する経路を省略したものである。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものでない。旋回流槽としては液体サイクロンを適用した。
【0025】
実施例1 合流式下水道の雨天時越流水(CSO)の処理試験
雨天時下水越流水:CSO(SS 230mg/リットル)に塩化第2鉄を40mg/リットル添加し、30秒間急速撹拌を行った後、平均粒径1000μm、比重0.1の発泡スチロール微粒子を20(ml/リットル原水)添加して凝集付着槽に分散流動させながら、ポリマ(ノニオン性ポリアクリルアミドポリマ:分子量1500万、商品名エバグロースN800及び両性ポリマ:エバグロースB034)をそれぞれ1.5mg/リットル添加し、15秒撹拌したところ、凝集マイクロフロックが発泡スチロール表面にしっかりと付着コーティングされた。こののち、滞留時間0.3分の液体サイクロン(旋回流の流速3m/秒)で流入させた。
【0026】
この結果、フロック付着発泡スチロール微粒子は、瞬間的にサイクロン内の渦中心部に集まり固液分離された。処理水をサイクロンの下部の壁面から取り出した。処理水SSは4mg/リットルとなり、下水中のSSが超高速度で効率よく分離された。
【0027】
比較例1
実施例1において発泡スチロール微粒子を添加しない以外は、すべて同一条件で試験した。この結果、フロックは全く固液分離されず、すべてが処理水に流出した。処理水SSは350mg/リットルと著しく悪く、処理不可能であった。
【0028】
実施例2
富栄養化の進んだ湖沼水(濁度2.89度、色度65度、pH8.2、Mアルカリ度65mg/リットル、過マンガン酸カリウム消費量10.0mg/リットル)を上水原水とし、上水処理の試験を行った。
この原水に、塩化第2鉄を32mg/リットル添加し、1分急速撹拌を行ったのち、発泡スチロール微粒子(粒径600ミクロン、比重0.12)を嵩容積比で10%添加し、アニオン系ポリアクリルアミド(エバグロースA151)を1mg/リットル添加し、20秒急速撹拌を行った。
このあと滞留時間0.5分のサイクロンに供給した結果、フロック付着発泡スチロール微粒子が渦の中心部に集まり、清澄な処理水(濁度0.8度、色度12度、過マンガン酸カリウム消費量4.0mg/リットル)を取り出すことが出来た。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の優れた効果が得られる。
(1)従来の技術では不可能であった超高速度で、原水中の凝集除去対象物質を分離できる。本発明において原水が清澄な処理水に変換される全所要時間は、1〜1.5分間と驚くほど短時間であり、その分離速度は従来の凝集沈殿、気泡による浮上分離技術の50〜100倍以上である。
(2)したがって、たとえば合流式下水道の雨天時越流水(CSO)などのように、短時間に膨大な水量が発生する原水の超高速固液分離に極めて好適であり、非常にコンパクトな装置でCSOの懸濁粒子を除去できる。
(3)分離された浮上性固体粒子は、容易に回収して再利用できるので、固体粒子を使い捨てる必要がなく、運転コストが非常に安い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高速固液分離プロセスの一実施態様を示す系統図である。
【図2】本発明の固体粒子の分離機構の原理を説明する模式図である。
【図3】本発明の高速固液分離プロセスの固体粒子の循環系を省略した別の実施態様を示す系統図である。
【符号の説明】
1 原水
2 浮上性固体粒子
3 高分子凝集剤
4 無機凝集剤
5 凝集付着槽
6 付着固体粒子を含む水
7 旋回流槽
8 外筒
9 内筒
10 分離された付着固体粒子
11 分離固体粒子チャンバー
12 処理水
13 ポンプ
14 フロック剥離撹拌槽
15 分級槽
16 沈殿汚泥
17 回収固体粒子
18 サイクロン中心
19 サイクロン壁
A 経路
Claims (2)
- 原水に、高分子凝集剤又は無機凝集剤と高分子凝集剤、及び水より比重が小さい浮上性固体粒子を添加して撹拌し、原水中の凝集対象物質を該固体粒子表面に付着させたのち、その凝集対象物質付着固体粒子を含む水を旋回流槽に供給し、旋回流により該固体粒子を旋回流の渦中心部に集合させて水と固液分離し、該固体粒子が分離された処理水を流出させ、前記固液分離された水より比重が小さい浮上性固体粒子、又は該固体粒子と分離固体粒子から付着フロックを剥離除去した浮上性固体粒子を、原水に循環添加することを特徴とする高速固液分離方法。
- 原水に高分子凝集剤又は無機凝集剤と高分子凝集剤、及び水より比重が小さい浮上性固体粒子を添加して原水中の凝集対象物質を前記固体粒子の表面に付着させる凝集付着槽と、この凝集付着槽の流出水が導入され中心部に分離されたフロック付着固体粒子の浮上分離した浮上分離スラッジの分離固体粒子チャンバーと前記分離固体粒子の排出管を上部に、下部に処理水の流出管を備えた旋回流槽と、前記浮上分離固体粒子のフロック剥離攪拌槽と、剥離フロックを沈殿フロックと水より比重が小さい浮上性固体粒子の含有水に分離する分級槽と、前記固体粒子の含有水の凝集付着槽への返送配管と、浮上分離固体粒子の一部の凝集付着槽への返送配管とを有することを特徴とする高速固液分離装置。
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