JP3754372B2 - 微粉製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は微粉製造装置に関し、さらに詳しくは、超臨界状態の二酸化炭素に対する溶解度の小さい物質であっても効率よくその微粉を製造することができ、その微粉を効率良く捕集することのできる微粉製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
人体への医薬品の吸収効率を高めるためには、医薬品を微粉化することが好ましい。このような理由から、医薬業界等においては、医薬品等の微粉化技術に注目が集まっている。
【0003】
従来、微粉を製造する方法として急速膨張法(RESS法、Rapid Expansion of Supercritical Solutions)があった。その方法によると、超臨界状態にした二酸化炭素に粉末状の試料を溶解し、得られた溶液を一気に大気中に噴射、減圧することにより、ミクロンオーダーの微粉を得ることができるとされている。
【0004】
この方法において、超臨界状態にした二酸化炭素に対する溶解度の小さい試料に対しては、その試料の溶解度を高めるために、二酸化炭素に試料易溶化溶媒、いわゆる助溶媒を添加して混合溶媒を調製し、超臨界状態にした前記混合溶媒に試料を溶解させる方法が採用されることが多い。
【0005】
前記試料易溶化溶媒を使用する方法としては、予め反応容器に試料と試料易溶化溶媒とを入れておき、その反応容器に二酸化炭素を供給して、前記二酸化炭素、試料易溶化溶媒及び試料から成る超臨界溶液を製造する方法がある。
【0006】
しかしこの方法では、前記超臨界溶液を噴霧することに伴って減少した前記超臨界溶液を補うために反応容器内に二酸化炭素を補充する必要があるので、二酸化炭素の補充に伴い次第に反応槽内の前記超臨界溶液の試料易溶化溶媒濃度が低下し、微粉化条件が変化するという欠点があり、安定的に微粉を製造することは困難である。
【0007】
前記試料易溶化溶媒を使用する他の方法としては、予め反応容器に試料と試料易溶化溶媒とを入れておき、その反応容器内に二酸化炭素を供給して、前記二酸化炭素、試料易溶化溶媒及び試料から成る超臨界溶液を製造し、さらに前記のような試料易溶化溶媒濃度の低下に従って反応槽内に試料易溶化溶媒を補充する方法も考えられる。
【0008】
しかしこの方法においても、超臨界溶液における試料易溶化溶媒の低下分と試料易溶化溶媒の補充分とのバランスをとることが困難であるという欠点があり、安定的に微粉を得ることは困難である。
【0009】
また試料易溶化溶媒を含有した超臨界溶液を噴霧すると、微粉とともに霧状の試料易溶化溶媒が発生する。試料易溶化溶媒が微粉製品に混入するのを防止するために、前記霧状の試料易溶化溶媒を除去することが好ましい。前記霧状の試料易溶化溶媒を除去する方法としては、ヒータを用いて加熱して蒸発させる方法が考えられる。
【0010】
しかしこの方法においては、従来、前記のようにして生じた気体状の試料易溶化溶媒を製造雰囲気中から排除する好適な方法はなく、高純度の微粉製品を得ることが困難であった。
【0011】
超臨界溶液を噴霧することにより生成される微粉の捕集に関しても、従来、高い捕集効率を確保することのできる方法は確立されていない。例えばバグフィルタを使用して微粉を捕集する方法もあるが、この方法は、捕集効率及び回収率が非常に低いという欠点がある。
【0012】
また従来、捕集容器に発生する静電気に起因して、捕集容器内に超臨界溶液を噴霧することにより生成された微粉が捕集容器内壁に付着し、捕集効率が低下するという問題もあった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、従来の微粉製造装置が有する前記欠点を解消することを目的とする。すわなわちこの発明は、超臨界状態の二酸化炭素に対する溶解度の小さい試料であってもその微粉を効率よく製造することができ、その微粉を高純度で製造することができ、さらにその微粉を効率良く捕集することのできる微粉製造装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するためのこの発明は、液化二酸化炭素と試料易溶化溶媒とを所定の比率で混合して混合溶媒を調製する混合溶媒調製手段と、前記混合溶媒調製手段で調製された前記混合溶媒を超臨界状態にし、超臨界状態になった前記混合溶媒に試料を溶解して超臨界溶液を調製する溶液調製手段と、前記溶液調製手段と連通し、前記溶液調製手段で調製された前記超臨界溶液を噴射する噴射手段とを備えて成ることを特徴とする微粉製造装置であり、
前記微粉製造装置の好適な態様として、前記混合溶媒調製手段は、前記液化二酸化炭素を所定の流量で送液する第1ポンプ、前記試料易溶化溶媒を所定の流量で送液する第2ポンプ、及び第1ポンプで送液された前記液化二酸化炭素と第2ポンプで送液された試料易溶化溶媒とを混合する溶媒混合手段を有して成り、
前記混合溶媒調製手段で調製された前記混合溶媒の、前記溶液調製手段への供給を制御する溶媒供給制御手段を備えて成り、
前記溶液調製手段で調製された前記超臨界溶液の、前記噴射手段に備えられた噴射ノズルへの供給を制御する超臨界溶液供給制御手段を備えてなり、
噴射された前記超臨界溶液から前記微粉を生成して、これを捕集部材上に捕集する捕集容器と、前記捕集容器で生成された前記微粉を前記捕集部材上に集積させるように前記捕集容器内を減圧する減圧手段とを備えて成り、前記捕集部材は、デプスフィルタであり、
前記捕集容器は、その内面が導電性材料で形成され、
前記捕集容器は、前記噴射手段が噴射した超臨界溶液から前記試料の微粉を生成させる微粉生成部と、該微粉生成部の下面に設けられ、前記捕集部材を備えた微粉捕集部とを有して成り、前記減圧手段は、前記微粉捕集部の下方に設けられ、
噴射された前記超臨界溶液中の前記試料易溶化溶媒を気化させる試料易溶化溶媒気化手段とを備えて成り、
前記試料易溶化溶媒気化手段は、前記捕集容器内に熱風を供給する熱風供給装置である。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明に係る微粉製造装置の一具体例である微粉製造装置1を図1に示す。
【0016】
図1に示すように、微粉製造装置1は、混合溶媒調製手段2と、溶液調製手段3と、噴射手段4と、捕集容器5と、熱風供給装置6と、減圧手段7と、バルブ8と、バルブ9と、操作制御手段10とを有して成る。
【0017】
混合溶媒調製手段2は、二酸化炭素と試料易溶化溶媒とを所定の比率で混合して混合溶液を調製し、これを溶液調製手段3に供給する手段である。混合溶媒調製手段2は、二酸化炭素供給容器11と、試料易溶化溶媒供給容器12と、溶媒供給路13と、第1ポンプ14と、第2ポンプ15とを有する。
【0018】
二酸化炭素供給容器11は、溶液調製手段3に供給する二酸化炭素を収容する容器であり、例えば7MPaの圧力下で液化二酸化炭素が収容されている高圧二酸化炭素ボンベである。
【0019】
試料易溶化溶媒供給容器12は、溶液調製手段3に供給する試料易溶化溶媒を収容する容器である。前記試料易溶化溶媒は、超臨界状態にした二酸化炭素に対する溶解度の小さい試料に対して、その試料の溶解度を高めるために二酸化炭素に添加する溶媒である。試料の溶解度を高めるために試料易溶化溶媒を用いることは公知の方法である。超臨界状態にした二酸化炭素単独に対する試料の溶解度よりも、超臨界状態にした二酸化炭素と添加溶媒との混合溶媒に対する試料の溶解度の方が大きい場合に、その添加溶媒が前記試料易溶化溶媒になり得る。前記試料易溶化溶媒は、超臨界状態にした二酸化炭素に対する試料の溶解を助けるという意味で、「助溶媒」と呼ぶこともできる。前記試料易溶化溶媒としては、例えばアセトン、メタノール、塩化メチレンを挙げることができ、溶解しようとする試料に対して好適な溶媒が適宜選択されて使用される。
【0020】
溶媒供給路13は、二酸化炭素供給容器11内の二酸化炭素及び試料易溶化溶媒供給容器12内の試料易溶化溶媒を溶液調製手段3に流通させる流路であり、溶媒混合手段でもある。溶媒供給路13は、図1に示すように三又構造であり、二酸化炭素供給容器11から分岐点16までの流路部17、試料易溶化溶媒供給容器12から分岐点16までの流路部18、及び分岐点16から溶液調製手段3までの流路部19により形成される。
【0021】
第1ポンプ14は、溶媒供給路13の流路部17に設けられ、二酸化炭素供給容器11内の二酸化炭素を所定の流量で流路部17に流通させる。第2ポンプ15は、溶媒供給路13の流路部18に設けられ、試料易溶化溶媒供給容器12内の試料易溶化溶媒を所定の流量で流路部17に流通させる。第1ポンプにより供給される二酸化炭素の流量と、第2ポンプにより供給される試料易溶化溶媒の流量とは、前記二酸化炭素と試料易溶化溶媒との混合比により決定される。例えば前記二酸化炭素と試料易溶化溶媒との混合比が100:1である場合には、第1ポンプにより供給される二酸化炭素の流量と第2ポンプにより供給される試料易溶化溶媒の流量との比率が100:1になるように、これらの流量が決定される。
【0022】
したがって混合溶媒調製手段2においては、第1ポンプにより二酸化炭素供給容器11から流路部17に供給される二酸化炭素と第2ポンプにより試料易溶化溶媒供給容器12から流路部18に供給される試料易溶化溶媒とは所定の比率で分岐点16において混合されて、混合溶媒が調製され、この混合溶媒が流路部19を通って、溶液調製手段3に供給される。
【0023】
溶媒供給制御手段であるバルブ8は、溶媒供給路13の流路部19に設けられており、流路部19における前記混合溶媒の流通を制御する。すなわちバルブ8を閉状態にすれば、前記混合溶媒の溶液調製手段3への供給が停止され、バルブ8を開状態にすれば、前記混合溶媒の溶液調製手段3への供給が行われる。
【0024】
溶液調製手段3は、混合溶媒調製手段2で製造された混合溶媒を超臨界状態にし、超臨界状態になった前記混合溶媒に試料を溶解して超臨界溶液を調製する。溶液調製手段3は、溶液槽20と、加熱器21と、攪拌機22とを備える。
【0025】
溶液槽20は、溶媒供給路13の流路部19が結合され、混合溶媒調製手段2で製造された混合溶媒が溶媒供給路13を通じて導入され、この混合溶媒を超臨界状態に維持することができるように形成され、試料例えば医薬物質等を超臨界状態の前記混合溶媒に溶解して超臨界溶液を作成する槽である。
【0026】
したがって溶液槽20は、耐圧製部材で形成された圧力容器でもある。また溶解槽20は、医薬物質等の試料を投入することができる構造を有し、有底円筒状の槽本体23と、槽本体23から分離可能に形成された、槽本体の開口部を覆蓋可能な蓋部材24とで形成されており、槽本体23の開口部から医薬物質等を槽本体23内に投入することができるようになっている。
【0027】
また、この溶液槽の別の構成として、例えば前記蓋部材と、前記蓋部材により覆蓋された槽本体と、この槽本体に装着されたところの、槽本体内に医薬物質等の試料を投入することのできる投入口部とを備えて形成されてなる溶解槽を挙げることもできる。
【0028】
加熱器21は、溶液槽20に設けられ、溶液槽20の内部に存在する混合溶媒を超臨界状態に維持するに十分な温度にこの混合溶媒を加熱する。この加熱器21としては、溶液槽20内を前記のように加熱することのできる手段であればよく、公知の加熱手段を採用することができ、例えば電熱ヒータが採用される。
【0029】
攪拌機22は、溶解槽20内に供給された試料を超臨界状態の混合溶媒に容易に溶解させるための手段である。攪拌機22は、撹拌羽根25を有する攪拌機であるが、この発明に係る微粉製造装置における攪拌機としては、例えばスターラであってもよく、また攪拌羽根とスターラとの両方を備えた攪拌機であってもよい。
【0030】
噴射手段4は、溶液調製手段3で調製された超臨界溶液を噴射する。噴射手段4は、溶液供給路26と、フィルタ27と、噴射ノズル28と、加熱器29とを備える。
【0031】
溶液供給路26は、溶液調製手段3で調製された超臨界溶液を噴射ノズル28に導く流路であり、その一端において溶液槽20と結合し、その他端において噴射ノズル28と結合する。フィルタ27は、溶液供給路26に設けられ、前記超臨界溶液中に混入する未溶解の試料等を前記超臨界溶液から分離する手段である。
【0032】
噴射ノズル28は、捕集容器5内に設置され、溶液供給路26を介して溶液槽20と連通する。噴射ノズル28は、溶液調製手段3で調製されて溶液供給路26を流通してきた超臨界溶液を捕集容器5内において下方に噴射する。
【0033】
加熱器29は、溶液供給路26を流通する超臨界溶液がその超臨界状態を維持することができるように前記超臨界溶液を加温する装置であり、溶液供給路26の全体を加熱する。
【0034】
超臨界溶液供給制御手段であるバルブ9は、噴射手段4の溶液供給路26に設けられおり、溶液供給路26における前記超臨界溶液の流通を制御する。すなわちバルブ9を閉状態にすれば、前記超臨界溶液の噴射ノズル28への供給が停止され、バルブ9を開状態にすれば、前記超臨界溶液の噴射ノズル28への供給が行われる。
【0035】
捕集容器5は、噴射ノズル28が噴射した超臨界溶液から試料の微粉を生成させ、その微粉を捕集する容器である。捕集容器5は、噴射ノズル28が噴射した超臨界溶液から試料の微粉を生成させる微粉生成部30と、その微粉を捕集する微粉捕集部31とから成る。
【0036】
微粉生成部30は、円筒状である。図1に示すように微粉生成部30の内部の上部には、噴射ノズル28が設置されている。微粉生成部30は、その上面に、熱風供給装置6で発生された熱風が導入される導入口35を有する。微粉生成部30は、その下面に、微粉捕集部31が結合し、微粉生成部30の内部空間と微粉捕集部31の内部空間とを連通させる連通口42を有する。微粉生成部30において、噴射ノズル28から前記超臨界溶液が噴射されると、前記超臨界溶液中の二酸化炭素は気体になり、試料は微粉になり、試料易溶化溶媒は霧状の液体又は気体になる。
【0037】
微粉捕集部31は、微粉生成部30の下面に設けられている。微粉捕集部31は、外殻部36と、微粉生成部30で生成されて落下してきた試料の微粉を捕集する捕集部材であるフィルタ32を有する。
外殻部36は、円筒部37と、その下端に設けられ、下方に向かって漸次径が小さくなるテーパ部38とを有する。テーパ部38の下端には、減圧手段7が接続し、微粉生成部30で発生した気体を捕集容器5から排出する排出口39が設けられている。
【0038】
フィルタ32は、外殻部36の円筒部37の内部空間を横断するように設けられている。したがって微粉生成部30から落下してきた微粉は、すべてフィルタ32上に捕集される。フィルタ32の種類としては、前記微粉を捕集することができれば特に制限はないが、特にデプスフィルタが、粒子保持容量が大きく、微粉を効率的に捕集することができるので好適である。このデプスフィルタは、例えば、ファイバーを圧縮又は湾曲させ、あるいは多数のビーズを圧縮させ、相互に接着させたランダムな構造のフィルタである。前記デプスフィルタとしては、例えば日本ミリポア社(株)製のデプスフィルタを使用することができる。
【0039】
捕集容器5の内壁部、つまり微粉生成部30及び微粉捕集部31の外殻部36の内壁部は、導電性材料、例えば金属で形成されている。したがって捕集容器5の内壁部に発生した静電気は捕集容器5外に効果的に逃すことができるので、微粉生成部30で生成された微粉が静電気により捕集容器5の内壁に吸着されて微粉捕集部31に落下せず、フィルタ32で捕集することができないという不都合が生ずることはない。
【0040】
熱風供給装置6は、微粉生成部30において噴射ノズル28から前記超臨界溶液が噴射されることにより発生した霧状の試料易溶化溶媒を気化する試料易溶化溶媒気化手段である。熱風供給装置6は、熱風を発生する熱風発生部33と、熱風発生部33で発生された熱風を捕集容器5内に導入する熱風導入部34とを有する。
【0041】
熱風供給装置6が発生する熱風の温度は、前記試料易溶化溶媒を気化させるのに充分な温度に決定され、例えば試料易溶化溶媒がアセトンであるときには60〜80℃、メタノールであるときには70〜80℃であることが好適である。熱風供給装置6が微粉生成部30に供給する熱風の流量は、前記試料易溶化溶媒を気化させるのに充分な熱風量が確保される流量に決定され、捕集容器5の大きさ等に応じて適宜決定される。
【0042】
熱風供給装置6は、効率的に試料易溶化溶媒を気化させるために、微粉生成部28の上面から捕集容器5内に熱風を供給する。なお試料易溶化溶媒を効率的に気化させることができる限り、微粉生成部28の上面以外の部位から捕集容器5内に熱風を供給してもよい。
熱風供給装置6としては、前記の機能が確保されれば時に制限はなく、公知の熱風供給装置を使用することができる。
【0043】
減圧手段7は、真空ポンプ40及び減圧管41から成る。減圧管41は、捕集容器5の排出口39に接続される。真空ポンプ40は、減圧管41に設けられている。減圧手段7は、捕集容器5のフィルタ32の下方から吸引して、捕集容器5内を排気し、捕集容器5内を減圧する。減圧手段7のこの機能により、微粉生成部30において生成して微粉生成部30内を浮遊する前記微粉は、下方に吸引されて、微粉捕集部31のフィルタ32上に効果的に捕集される。また減圧手段7の前記機能により、微粉生成部30で生成した霧状の試料易溶化溶媒が熱風供給装置6によって気化されて発生した試料易溶化溶媒の気体は、捕集容器5外に排出される。
【0044】
操作制御手段10は、前述のバルブ8、バルブ9、第1ポンプ14、第2ポンプ15及び攪拌機22の各作動を自動制御する手段である。
【0045】
微粉製造装置1は、次のように作用する。
溶解槽20内に所定量の微粉化する試料を収容する。収容される試料の量は、例えば超臨界状態の前記混合溶媒に飽和濃度で溶解する試料の量よりも多い量である。
【0046】
バルブ8を開き、バルブ9を閉じる。
第1ポンプ14及び第2ポンプ15を作動させる。第1ポンプ14により、二酸化炭素供給容器11から液化二酸化炭素が所定の流量で流路部17に送られる。第2ポンプ15により、試料易溶化溶媒供給容器12から試料易溶化溶媒が所定の流量で流路部18に送られる。流路部17を流通する前記液化二酸化炭素と流路部18を流通する前記試料易溶化溶媒とは、分岐部16で合流する。このようにして溶媒供給路13内で二酸化炭素と試料易溶化溶媒との混合溶媒が生成される。流路部17を流通する前記液化二酸化炭素の流量及び流路部18を流通する前記試料易溶化溶媒の流量は、前述のように、二酸化炭素と試料易溶化溶媒との所定の混合比率を有する混合溶媒が得られるように決定されている。所定の混合比率を有する前記混合溶媒は、流路部19を流通し、溶液調製手段3の溶液槽20に供給される。
このようにして溶解槽20には、常に一定の混合比率を有する混合溶媒が供給される。
【0047】
所定量の前記混合溶液が溶液槽20に供給された時に、バルブ8が閉じられ、前記混合溶媒の溶液槽20への供給は停止される。
【0048】
溶液槽20に供給された前記混合溶媒は、加熱器21で加熱され、さらに圧力が調整されることにより、超臨界状態になる。攪拌機22を作動させ、超臨界状態になった前記混合溶媒と溶液槽20に収容された試料とを十分に攪拌し、超臨界状態になった前記混合溶媒に前記試料を溶解させて成る超臨界溶液を調製する。混合溶媒には、試料の溶解を促進する試料易溶化溶媒が含有されているので、超臨界状態の二酸化炭素では溶解が困難な試料であっても、超臨界状態の混合溶媒を用いれば、効果的に試料を溶解することができ、超臨界溶液の調製が容易である。
【0049】
前記超臨界溶液における前記試料の濃度が飽和濃度に達したら、攪拌機22の作動を停止する。溶解槽20内の超臨界溶液及び未溶解の試料をそのまま一定時間放置し、未溶解の試料を沈降させる。
【0050】
真空ポンプ40を作動させる。熱風供給装置6を作動させて、熱風を捕集容器5内に供給する。
バルブ9を開くと、溶解槽20内の超臨界溶液は、溶解槽20内の圧力により溶液供給路26に押し出される。溶液供給路26に押し出された超臨界溶液は、フィルタ27を通過する。このことにより超臨界溶液中に混入していた未溶解の試料が除去される。フィルタ27を通過した超臨界溶液は、捕集容器5内に設置された噴射ノズル28に至る。溶液供給路26は加熱器29により加熱されているので、溶液供給路26を通過する間、超臨界溶液は、その臨界状態が維持される。
【0051】
噴射ノズル28に到達した超臨界溶液は、捕集容器5の微粉精製部30に噴射される。超臨界溶液が噴射されると、超臨界溶液に含有されていた二酸化炭素は直ちに気体となり、超臨界溶液中に溶解していた試料は微粉となり、超臨界溶液に含有されていた試料易溶化溶媒は気体又は霧状の液体となる。
【0052】
捕集容器5内は、その下方から真空ポンプ40によって吸引されているので、微粉生成部30内で生成された前記微粉は、微粉生成部30内を長時間浮遊することなく、速やかに下方に移行し、微粉捕集部31のフィルタ32上に効果的に集積される。
【0053】
また捕集容器5の内壁部は導電性材料で形成されているので、捕集容器5に発生する静電気を効果的に消失させることができ、微粉生成部30内で生成された前記微粉が捕集容器5の内壁に付着することによる収率及び作業性の低下を防止することができる。
【0054】
微粉生成部30内で生成された気体状の二酸化炭素及び試料易溶化溶媒は、真空ポンプ40の作用により、フィルタ32を通過して、捕集容器5から排出される。
微粉生成部30内で生成された霧状の試料易溶化溶媒は、熱風供給装置6から供給された熱風により気化する。そのようにして発生した試料易溶化溶媒の気体は、前記と同様に、真空ポンプ40の作用により、フィルタ32を通過して、捕集容器5から排出される。したがって微粉製造装置1においては、捕集容器5内に発生した霧状の試料易溶化溶媒が、フィルタ32に集積された微粉中に混入することによる微粉製品の純度の低下を効果的に防止することができる。
【0055】
超臨界溶液が噴射ノズル28から噴射されることにより溶液槽20内の超臨界溶液が所定量以下になると、バルブ9を閉じ、バルブ8を開ける。そうすると溶液槽20から溶液供給路26への超臨界溶液の移動は停止され、前記と同様にして、前回溶解槽20に供給された混合溶媒の混合比率と同じ混合比率を有する混合溶媒が溶解槽20に供給される。
【0056】
微粉製造装置1においては、常に、一定の混合比率を有する混合溶媒を溶解槽20に供給することができるので、製造作業中に混合溶媒の混合比率の変動による製造条件の変化が生じることがなく、製造条件を常に一定に維持することができる。
【0057】
以下、溶解槽20内に挿入した試料が全て溶解されるまで前記動作が繰り返される。
【0058】
この発明に係る微粉製造装置における混合溶媒調製手段としては、微粉製造装置1で使用した混合溶媒調製手段2に制限されることはなく、例えば溶媒混合手段である混合槽を設け、二酸化炭素と試料易溶化溶媒とをその混合槽で混合するようにした混合溶媒調製手段であってもよい。
【0059】
この発明に係る微粉製造装置における試料易溶化溶媒気化手段としては、微粉製造装置1で使用したような熱風供給装置に制限されることはなく、捕集容器内で発生した霧状の試料易溶化溶媒を効率的に気化させることができれば他の装置であってもよい。
【0060】
【発明の効果】
この発明に係る微粉製造装置においては、常に、二酸化炭素と試料易溶化溶媒とを一定の混合比率で含有する混合溶媒を溶解槽に供給することができるので、微粉の製造条件を常に一定に維持することができ、効率的な微粉の製造が可能である。
【0061】
この発明に係る微粉製造装置においては、微粉を捕集部材上に集積させるよう捕集容器内が減圧手段によって吸引されるので、捕集容器内で生成された微粉は、速やかに捕集部材上に集積され、微粉を効果的に捕集することができる。
【0062】
この発明に係る微粉製造装置においては、捕集容器で生成された霧状の試料易溶化溶媒は、試料易溶化溶媒気化手段により気化され、さらにそのようにして発生した試料易溶化溶媒の気体は、減圧手段によって吸引され、速やかに捕集容器から排出されるので、試料易溶化溶媒が微粉中に混入することによる微粉製品の純度の低下を効果的に防止することができる。
【0063】
この発明に係る微粉製造装置においては、捕集容器の内壁部が導電性材料で形成されているので、捕集容器に発生する静電気を効果的に消失させることができ、捕集容器内で生成された微粉が捕集容器の内壁に付着することによる収率及び作業性の低下を防止することができる。
【0064】
この発明に係る微粉製造装置においては、捕集部材として特定構造のフィルタを使用することにより、効率的に微粉を捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、微粉製造装置1の概略図である。
【符号の説明】
1・・微粉製造装置、2・・混合溶媒調製手段、3・・溶液調製手段、4・・噴射手段、5・・捕集容器、6・・熱風供給装置、7・・真空ポンプ、8・・バルブ、9・・バルブ、10・・操作制御手段、11・・二酸化炭素供給容器、12・・試料易溶化溶媒供給容器、13・・溶媒供給路、14・・第1ポンプ、15・・第2ポンプ、16・・分岐点、17・・流路部、18・・流路部、19・・流路部、20・・溶液槽、21・・加熱器、22・・攪拌機、23・・槽本体、24・・蓋部材、25・・撹拌羽根、26・・溶液供給路、27・・フィルタ、28・・噴射ノズル、29・・加熱機、30・・微粉生成部、31・・微粉捕集部、32・・フィルタ、33・・熱風発生部、34・・熱風導入部、35・・導入口、36・・外殻部、37・・円筒部、38・・テーパ部、39・・排出口、40・・真空ポンプ、41・・排出管、42・・連通口

Claims (10)

  1. 液化二酸化炭素と試料易溶化溶媒とを所定の比率で混合して混合溶媒を調製する混合溶媒調製手段と、
    前記混合溶媒調製手段で調製された前記混合溶媒を超臨界状態にし、超臨界状態になった前記混合溶媒に試料を溶解して超臨界溶液を調製する溶液調製手段と、
    前記溶液調製手段と連通し、前記溶液調製手段で調製された前記超臨界溶液を噴射する噴射手段とを備えて成ることを特徴とする微粉製造装置。
  2. 前記混合溶媒調製手段は、前記液化二酸化炭素を所定の流量で送液する第1ポンプ、前記試料易溶化溶媒を所定の流量で送液する第2ポンプ、及び第1ポンプで送液された前記液化二酸化炭素と第2ポンプで送液された試料易溶化溶媒とを混合する溶媒混合手段を有して成る請求項1に記載の微粉製造装置。
  3. 前記混合溶媒調製手段で調製された前記混合溶媒の、前記溶液調製手段への供給を制御する溶媒供給制御手段を備えて成る請求項1又は2に記載の微粉製造装置。
  4. 前記溶液調製手段で調製された前記超臨界溶液の、前記噴射手段に備えられた噴射ノズルへの供給を制御する超臨界溶液供給制御手段を備えて成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粉製造装置。
  5. 噴射された前記超臨界溶液から前記微粉を生成して、これを捕集部材上に捕集する捕集容器と、前記捕集容器で生成された前記微粉を前記捕集部材上に集積させるように前記捕集容器内を減圧する減圧手段とを備えて成る請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粉製造装置。
  6. 前記捕集部材は、デプスフィルタである請求項5に記載の微粉製造装置。
  7. 前記捕集容器は、その内面が導電性材料で形成されている請求項5又は6に記載の微粉製造装置。
  8. 前記捕集容器は、前記噴射手段が噴射した超臨界溶液から前記試料の微粉を生成させる微粉生成部と、該微粉生成部の下面に設けられ、前記捕集部材を備えた微粉捕集部とを有して成り、前記減圧手段は、前記微粉捕集部の下方に設けられている請求項5〜7のいずれか1項に記載の微粉製造装置。
  9. 噴射された前記超臨界溶液中の前記試料易溶化溶媒を気化させる試料易溶化溶媒気化手段とを備えて成る請求項1〜8のいずれか1項に記載の微粉製造装置。
  10. 前記試料易溶化溶媒気化手段は、前記捕集容器内に熱風を供給する熱風供給装置である請求項9に記載の微粉製造装置。
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