JP3754005B2 - ブラシノライド応答性遺伝子およびその利用 - Google Patents
ブラシノライド応答性遺伝子およびその利用 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物ホルモンに応答性を示すOsBLE1遺伝子およびOsBLE2遺伝子、ならびに、それらの利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物を矮化する方法としては、化学物質や放射線を用いた人為的突然変異によって得ることも可能であるが、矮性を支配している遺伝子のみならず、他の遺伝子にも変異を与える可能性が高い。また、この矮性の性質はヘテロ劣性である場合が多く、他の遺伝形質をさらに付加しようとする場合には選抜が困難となってくる。
【0003】
最近の遺伝子工学的手法を用いた矮化技術は上記の欠点を克服するものであり、単一の遺伝子あるいはアンチセンスDNAを導入して植物の草型を制御するものである。矮化した性質はメンデルの法則にしたがい、優性となって後代に引き継がれる。
【0004】
遺伝子工学的手法によって植物の草型を制御する方法としてジベレリンの生合成を調節する方法が知られている。例えば、ジベレリン2β水酸化酵素の遺伝子を導入して矮化させる方法(Sakamoto T, et al., Plant Physiol., 25: 1508-1516, 2001)やジベレリン3β水酸化酵素遺伝子のアンチセンスDNAを導入して半矮性化させる方法(Ito H, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98: 8909-8916, 2001)が報告されている。
【0005】
ブラシノステロイドは植物細胞の分裂、伸長、分化等の促進作用があり、新たなタイプの植物ホルモンとして研究されているが、その作用の分子機構は不明な点が多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブラシノステロイドなどの植物ホルモンに応答する遺伝子を単離・同定し、該遺伝子およびその利用方法を提供することにある。より具体的には、植物ホルモンに応答性を示すOsBLE1遺伝子およびOsBLE2遺伝子、該遺伝子の発現の抑制による植物の矮性化方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ブラシノステロイドの作用の分子機構解明を目的に、イネ幼苗期葉身基部をブラシノライド(ブラシノステロイドの一種)で処理し、DNAマイクロアレイ技術を利用して、発現が制御される遺伝子群を探索した。検討の結果、ブラシノライド濃度依存的に発現する12種類の遺伝子群を同定した。さらに、この12種類の遺伝子群について、ノーザンブロッテイングで発現様式を解析した。その結果、ブラシノライドとオーキシンで発現が顕著に促進される2種類の遺伝子(OsBLE1遺伝子およびOsBLE2遺伝子と命名)が見いだされた。この2種類の遺伝子について、EST情報を元に、5'レース法で完全長cDNAを単離した結果、OsBLE1遺伝子およびOsBLE2遺伝子は新規遺伝子であった。また、バイナリーベクターpIG121-HmのCaMV35Sのプロモーターの制御下にアンチセンスOsBLE1 とOsBLE2を配置し、アグロバクテリウムEHA101を用いて形質転換イネを作出した。その結果、ベクターのみの対照と比較して、茎葉伸長において抑制が認められた。
【0008】
即ち、本発明は、
〔1〕下記(a)〜(d)のいずれかに記載のDNA、
(a)配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1または3に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、
(d)配列番号:1または3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
〔2〕植物の成長を促進するために用いる、〔1〕に記載のDNA、
〔3〕植物を矮性化するために用いる、下記(a)〜(e)のいずれかに記載のDNA、
(a)〔1〕に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA、
(b)〔1〕に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA、
(c)植物細胞における発現時に、RNAi効果により、〔1〕に記載のDNAの発現を抑制するRNAをコードするDNA、
(d)植物細胞における発現時に、共抑制効果により、〔1〕に記載のDNAの発現を抑制させるRNAをコードするDNA、
(e)〔1〕に記載のDNAがコードするタンパク質に対してドミナントネガティブな形質を有するタンパク質をコードするDNA、
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAを含むベクター、
〔5〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAを発現可能に保持する形質転換植物細胞、
〔6〕〔5〕に記載の形質転換植物細胞を含む形質転換植物体、
〔7〕〔6〕に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体、
〔8〕〔6〕または〔7〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料、
〔9〕〔6〕に記載の形質転換植物体の製造方法であって、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法、
〔10〕植物体の細胞内における、内因性の〔1〕に記載のDNAの発現を抑制することを特徴とする、植物を矮性化させる方法、
〔11〕〔3〕に記載のDNAを植物に導入することを特徴とする、〔10〕に記載の方法、
を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、OsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAを提供する。該DNAは、好ましくは植物において植物ホルモンに応答して発現する性質を有する。
【0010】
本発明のDNAが由来する植物としては、特に制限はなく、イネ、小麦、大麦、果樹などが例示できる。
【0011】
本発明における植物ホルモンとしては、好ましくはブラシノステロイド(例えばブラシノライド)またはオーキシンが例示できるが、これらに限定されるものではない。また本発明においてブラシノステロイドとは、ステロイド骨格を有する植物成長調節物質を意味する。ブラシノステロイドは植物の生長や成熟の促進・耐寒性付与をはじめとする多様な活性を示すことが知られている。また、ブラシノライドとは、ブラシノステロイドの一種である。また、オーキシンとは、インドル骨格を有する植物成長調節物質を意味する。オーキシンは、植物の生長や形の成り立ち、花芽や果実の形成、光や重力の認知等重要な役割を果たすことが知られている。
【0012】
本発明のOsBLE1をコードするDNAとしては、例えば配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNAや配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAが挙げられる。また、本発明のOsBLE2をコードするDNAとしては、例えば配列番号:3に記載の塩基配列のコード領域を含むDNAや配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
【0013】
また、本発明は、配列番号:2に記載のOsBLE1または配列番号:4に記載のOsBLE2と構造的に類似しており、植物の成長を促進させる機能を有するタンパク質をコードするDNAを包含する。このようなDNAは、好ましくは植物において植物ホルモンに応答して発現する性質を有する。
【0014】
あるDNAが植物の成長を促進させる機能を有するタンパク質をコードするか否かは、例えば、該DNAが導入された植物の成長が促進するか否か、または、該DNAの発現を抑制するDNAが導入された植物が矮性化するか否かを観察することで検証することができる。
【0015】
また、あるDNAが植物ホルモンに応答して発現するタンパク質をコードするか否かは、例えば、被検DNAが導入された植物において、植物ホルモンの処理依存に該タンパク質または該タンパク質をコードするmRNAが誘導されるか否かで検証することができる。
【0016】
このようなDNAには、例えば、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする変異体、誘導体、アリル、バリアントおよびホモログが含まれる。
【0017】
アミノ酸配列が改変されたタンパク質をコードするDNAを調製するための当業者によく知られた方法としては、例えば、site-directed mutagenesis法(Kramer W, Fritz H-J, Methods Enzymol 154: 350, 1987)が挙げられる。また、自然界においても、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは起こり得る。このように、OsBLE1またはOsBLE2のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAであっても、天然型のOsBLE1(配列番号:2)またはOsBLE2(配列番号:4)と同等の機能を有するタンパク質をコードする限りは、本発明のOsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAに含まれる。また、たとえ塩基配列が変異していても、その変異がタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わないこと(縮重変異)があるが、このような縮重変異体も本発明のOsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAに含まれる。
【0018】
配列番号:2に記載のOsBLE1または配列番号:4に記載のOsBLE2と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを調製するために、当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Southern EM, J. Mol. Biol., 98: 503, 1975)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki RK, et al., Science, 230: 1350, 1985、Saiki RK, et al., Science, 239: 487, 1988)を利用する方法が挙げられる。すなわち、OsBLE1遺伝子の塩基配列(配列番号:1)もしくはOsBLE2遺伝子の塩基配列(配列番号:3)、または、その一部をプローブとして、また、OsBLE1遺伝子の塩基配列(配列番号:1)もしくはOsBLE2遺伝子の塩基配列(配列番号:3)に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、イネや他の植物からOsBLE1遺伝子またはOsBLE2遺伝子と高い相同性を有するDNAを単離することは、当業者にとって通常行い得ることである。このように、ハイブリダイゼーション技術やPCR技術によって単離し得るOsBLE1またはOsBLE2と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAもまた、本発明のOsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAに含まれる。
【0019】
このようなDNAを単離するためには、好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。本発明においてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6M 尿素、0.4% SDS、0.5×SSCの条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を指す。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M 尿素、0.4% SDS、0.1×SSCの条件下では、より相同性の高いDNAを単離できることが期待される。高い相同性とは、アミノ酸配列全体で少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。
【0020】
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Karlin S, Altschul SF, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 2264-2268, 1990 ; Karlin S, Altschul SF, Proc. Natl. Acad Sci. USA, 90: 5873-5877, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al., J. Mol. Biol., 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0021】
本発明のDNAには、ゲノムDNA、cDNAおよび化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAおよびcDNAの調製は、当業者にとって常套手段により行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、OsBLE1遺伝子またはOsBLE2遺伝子を有するイネ品種からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作製し、これを展開して、本発明のOsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNA(例えば、配列番号:1または3)を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことで調製できる。また、本発明のOsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNA(例えば、配列番号:1または3)に特異的なプライマーを作製し、これを利用したPCRを行って調製することも可能である。cDNAは、例えば、OsBLE1遺伝子またはOsBLE2遺伝子を有するイネ品種から抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAPなどのベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことで、またPCRを行うことにより調製できる。
【0022】
本発明のOsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAは、例えば、伸長が促進された形質転換植物体を作出することに利用できる。このような形質転換植物体を作製するには、上記DNAを適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させる。本発明者らにより単離されたOsBLE1遺伝子またはOsBLE2遺伝子を任意の品種に導入して発現させることにより、それらの系統の伸長を促進することができる。
【0023】
本発明においては、OsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAの発現を抑制することで植物が矮性化することが判明した。本発明はこのような植物を矮性化させる方法も提供する。矮性化された形質転換植物体は、例えばOsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAの発現を抑制するDNAを適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させることによって作製できる。「OsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAの発現の抑制」には、これらDNAの転写の抑制およびタンパク質への翻訳の抑制が含まれる。また、DNAの発現の完全な停止のみならず発現の減少も含まれる。また、翻訳されたタンパク質が植物細胞内で本来の機能を発揮することの抑制も含まれる。
【0024】
植物における特定の内在性遺伝子の発現を抑制する方法としては、アンチセンス技術を利用する方法が当業者に最もよく利用されている。植物細胞におけるアンチセンス効果は、電気穿孔法で導入したアンチセンスRNAが植物においてアンチセンス効果を発揮することをエッカーらが示したことで初めて実証された(Ecker JR, Davis RW, Proc Natl Acad Sci USA 83: 5372, 1986)。その後、タバコやペチュニアにおいてもアンチセンスRNAの発現により標的遺伝子の発現が低下した例が報告されており(van der Krol AR, et al., Nature 333: 866, 1988)、現在では、アンチセンス技術は植物における遺伝子発現を抑制させる手段として確立している。
【0025】
アンチセンス核酸が標的遺伝子の発現を抑制する作用としては、以下のような複数の要因が存在する。すなわち、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造が作られた部位とのハイブリッド形成による転写阻害、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエキソンとの接合点におけるハイブリッド形成によるスプライシング阻害、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング阻害、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行阻害、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング阻害、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始阻害、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳阻害、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻害、および核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現阻害などである。このようにアンチセンス核酸は、転写、スプライシングまたは翻訳など様々な過程を阻害することで、標的遺伝子の発現を抑制する(平島および井上: 新生化学実験講座2 核酸IV 遺伝子の複製と発現 (日本生化学会編, 東京化学同人) pp.319-347, 1993)。
【0026】
本発明で用いられるアンチセンス配列は、上記のいずれの作用により標的遺伝子の発現を抑制してもよい。一つの態様としては、遺伝子のmRNAの5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的と考えられる。また、コード領域もしくは3'側の非翻訳領域に相補的な配列も使用することができる。このように、遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含むDNAも、本発明で利用されるアンチセンスDNAに含まれる。使用されるアンチセンスDNAは、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3'側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。このようにして調製されたDNAは、公知の方法を用いることで、所望の植物へ形質転換できる。アンチセンスDNAの配列は、形質転換される植物が持つ内在性遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に抑制できる限りにおいて、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは、標的遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンス配列を用いて標的遺伝子の発現を効果的に抑制するには、アンチセンスDNAの長さは少なくとも15塩基以上であり、好ましくは100塩基以上であり、さらに好ましくは500塩基以上である。通常用いられるアンチセンスDNAの長さは5kbよりも短く、好ましくは2.5kbよりも短い。
【0027】
内在性遺伝子の発現の抑制は、また、リボザイムをコードするDNAを利用して行うことも可能である。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子のことを指す。リボザイムには種々の活性を有するものが存在するが、中でもRNAを切断する酵素としてのリボザイムに焦点を当てた研究により、RNAを部位特異的に切断するリボザイムの設計が可能となった。リボザイムには、グループIイントロン型やRNase Pに含まれるM1 RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠および大塚栄子: 蛋白質核酸酵素, 35: 2191, 1990)。
【0028】
例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15という配列のC15の3'側を切断するが、その活性にはU14とA9との塩基対形成が重要とされ、C15の代わりにA15またはU15でも切断され得ることが示されている(Koizumi M, et al., FEBS Lett 228: 228, 1988)。基質結合部位が標的部位近傍のRNA配列と相補的なリボザイムを設計すれば、標的RNA中のUC、UUまたはUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを作出することができる(Koizumi M, et al., FEBS Lett 239: 285, 1988、小泉誠および大塚栄子: 蛋白質核酸酵素 35: 2191, 1990、 Koizumi M, et al., Nucl Acids Res 17: 7059, 1989)。例えば、OsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNA(配列番号:1または3)中には、標的となり得る部位が複数存在する。
【0029】
また、ヘアピン型リボザイムも本発明の目的に有用である。このリボザイムは、例えばタバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(Buzayan JM., Nature 323: 349, 1986)。ヘアピン型リボザイムからも、標的特異的なRNA切断リボザイムを作出できることが示されている(Kikuchi Y, Sasaki N, Nucl Acids Res 19: 6751, 1991、菊池洋: 化学と生物 30: 112, 1992)。
【0030】
標的を切断できるように設計されたリボザイムは、植物細胞中で転写されるように、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターなどのプロモーターおよび転写終結配列に連結される。このとき、転写されたRNAの5'端や3'端に余分な配列が付加されていると、リボザイムの活性が失われることがあるが、こういった場合は、転写されたリボザイムを含むRNAからリボザイム部分だけを正確に切り出すために、リボザイム部分の5'側や3'側にシスに働く別のトリミングリボザイムを配置させることも可能である(Taira K, et al., Protein Eng 3: 733, 1990、Dzianott AM, Bujarski JJ, Proc Natl Acad Sci USA 86: 4823, 1989、Grosshans CA, Cech TR, Nucl Acids Res 19: 3875, 1991、Taira K, et al., Nucl Acids Res 19: 5125, 1991)。また、このような構成単位をタンデムに並べ、標的遺伝子内の複数の部位を切断できるようにすることで、より効果を高めることもできる(Yuyama N, et al., Biochem Biophys Res Commun 186: 1271, 1992)。このように、リボザイムを用いて本発明における標的遺伝子の転写産物を特異的に切断することで、該遺伝子の発現を抑制することができる。
【0031】
内在性遺伝子の発現の抑制は、さらに、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二本鎖RNAを用いたRNA interferance(RNAi)によっても行うことができる。RNAiとは、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二重鎖RNAを細胞内に導入すると、導入した外来遺伝子および標的内在性遺伝子の発現がいずれも抑制される現象のことを指す。RNAiの機構の詳細は明らかではないが、最初に導入した二本鎖RNAが小片に分解され、何らかの形で標的遺伝子の指標となることにより、標的遺伝子が分解されると考えられている。RNAiは植物においても効果を奏することが知られている(Chuang CF, Meyerowitz EM, Proc Natl Acad Sci USA 97: 4985, 2000)。例えば、植物体におけるOsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAの発現をRNAiにより抑制するためには、OsBLE1をコードするDNAもしくはOsBLE2をコードするDNAまたはこれと類似した配列を有する二本鎖RNAを目的の植物へ導入し、得られた植物体から野生型植物体と比較して矮性化された植物を選択すればよい。RNAiに用いる遺伝子は、標的遺伝子と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を有する。また、配列の同一性は上述した手法により決定できる。
【0032】
内在性遺伝子の発現の抑制は、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有するDNAの形質転換によって起こる共抑制によっても達成できる。「共抑制」とは、植物に標的内在性遺伝子と同一もしくは類似した配列を有する遺伝子を形質転換により導入すると、導入した外来遺伝子および標的内在性遺伝子の発現がいずれも抑制される現象のことを指す。共抑制の機構の詳細は明らかではないが、少なくともその機構の一部はRNAiの機構と重複していると考えられている。共抑制も植物において観察される(Smyth DR, Curr Biol 7: R793, 1997、Martienssen R, Curr Biol 6: 810, 1996)。例えば、OsBLE1をコードするDNAまたはOsBLE2をコードするDNAが共抑制された植物体を得るためには、OsBLE1をコードするDNAもしくはOsBLE2をコードするDNAまたはこれと類似した配列を有するDNAを発現できるように作製したベクターDNAを目的の植物へ形質転換し、得られた植物体から野生型植物体と比較して矮性化された植物を選択すればよい。共抑制に用いる遺伝子は、標的遺伝子と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を有する。また、配列の同一性は上述した手法により決定できる。
【0033】
さらに、本発明における内在性遺伝子の発現の抑制は、標的遺伝子がコードするタンパク質に対してドミナントネガティブの形質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物へ形質転換することによっても達成することができる。「ドミナントネガティブの形質を有するタンパク質をコードする遺伝子」とは、該遺伝子を発現させることによって、植物体が本来持つ内在性の野生型タンパク質の活性を消失もしくは低下させる機能を有する遺伝子のことを指す。
【0034】
本発明は、本発明のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む形質転換植物体の製造方法を提供する。
【0035】
本発明において、植物細胞が由来する植物としては、特に制限はない。また、植物細胞の形質転換に用いられるベクターは、該細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。例えば、植物細胞内で恒常的に遺伝子を発現させるためのプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター)を有するベクターや、外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることもできる。ここで言う「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。
【0036】
植物細胞へのベクターの導入には、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法など、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。パーティクルガン法においては、例えば、バイオラッド社のものを用いることが可能である。形質転換植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である(Toki S, et al., Plant Physiol., 100: 1503, 1992)。
【0037】
例えば、イネにおいて形質転換植物体を作出する手法については、ポリエチレングリコールを用いてプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体(インド型イネ品種が適している)を再生させる方法(Datta SK: In Gene Transfer To Plants (Potrykus I and Spangenberg, Eds) pp.66-74, 1995)、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体(日本型イネ品種が適している)を再生させる方法(Toki S, et al., Plant Physiol., 100: 1503, 1992)、パーティクルガン法により細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生させる方法(Christou P, et al., Biotechnology 9: 957, 1991)、およびアグロバクテリウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法(例えば、単子葉植物の超迅速形質転換法(特許第3141084号))など、いくつかの技術が既に確立し、本願発明の技術分野において広く用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
【0038】
ゲノム内に本発明のDNAが導入された形質転換植物体がいったん得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることができる。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなど)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
(1)植物材料および処理
イネ(品種:日本晴)は気温25℃、75%の湿度で昼/夜12時間ずつの約600μmol・m(−2)s(−1)の白色蛍光灯の条件で生育させた。ブラシノライド(BL)ジベレリン(GA)とインドール-3-酢酸(IAA)は商業的に得られる高純度のものを用いた。RNAブロッティング解析用のRNAの抽出はチョムゼンスキーとサッチの方法(Chomczynski P., Sacchi N., Ana. Biochem., 162: 156-159, 1987)を用いた。マイクロアレイ分析のためのmRNAの調製は、oligotex-dT-30のmRNA精製キット(Takara社製)を用いた。
【0040】
(2)マイクロアレイ分析
cDNAマイクロアレイは1265個のESTクローンを有するものを用いた。1μMのブラシノライドで48時間処理した葉身基部から調製した。1μgのmRNAを用いて、50μMのCy5 dCTP(アマシャム ファルマシア社製)の存在下、逆転写反応を行った。42℃で2時間反応した後、反応を止め、94℃ 3分の熱処理後、NaOHの37℃ 15分間処理により、RNAを分解しcDNAを回収した。蛍光標識されたcDNAプローブをQIA quick PCR purification Kit(キアゲン社製)を用いて精製した。プローブのハイブリダイゼーションとマイクロアレイスライドのスキャニングは矢崎らの方法(Yazaki J., DNA Research 7: 367-370 : 2000)を用いた。データは、Array Vision(イメージングリサーチ社)によって解析した。
【0041】
(3)RNA抽出とノザンブロッティング分析
組織試料は液体窒素で高速凍結した後、約0.5gを乳鉢を用いて粉末にすりつぶし、全RNAはチョムゼンスキーとサッチの方法(Chomczynski P, Sacchi N., Ana. Biochem., 162: 156-159, 1987)によって調整した。マイクロアレイ分析のmRNAは、oligotexdTキット(タカラ)を用いて全RNAより精製した。ノザンブロット分析のために、全RNAの20μgを6%のホルムアルデヒドを含む1.2%のアガロースゲルにおいて電気泳動を行い、HybondTM-N+のナイロン膜に転写した。ノザンブロット分析において、泳動したRNAが等量であることを保証するために、臭化エチジウムによって染色したrRNAの量を比較した。ハイブリダイゼーションはAmbion社のULTRAhyb(TM)を用いて42℃で一晩行い、その後、2×SSC、0.1%SDSで42℃ 5分間、0.1×SSC、0.1%SDSで68℃ 15分間2回の洗浄を行った。ナイロン膜はコダック社のX線フィルムを用いて感光した。
【0042】
(4)全長cDNAのクローニング
ESTは部分cDNAのため、全長cDNAをクローニングするためにイネの葉由来のcDNAライブラリー(Zhang Z., Komatsu S., J. Biochem., 128: 383-389, 2000)をスクリーニングした。さらにcDNAの5’末端を単離するためにClontech社のSMARTTM PCR cDNA synthesis Kitを用いてcDNAの塩基配列はアプライドバイオシステム社のシーケンサーを用いて決定した。
【0043】
(5)イネへの形質転換
2種類のcDNAをアンチセンス方向に発現ベクターに連結し、アグロバクテリウム(EHA101)に導入した。このアグロバクテリウムを用いて、単子葉植物の超迅速形質転換法(特許第3141084号)によりイネ品種 日本晴に形質転換を行った。
【0044】
[実施例1]
イネ(品種:日本晴)の幼苗期葉身基部を1μMのブラシノライドで処理した試料からRNAを抽出し、1265個のイネ遺伝子を含んでいるcDNAマイクロアレイ分析したところ、12種類の遺伝子がブラシノライドの濃度に依存して発現が顕著に上昇していた(図1)。なお、用いたEST(発現タグ)については、農林水産省のイネゲノム・プロジェクトにおいて得られており、ホームページにおいて公開されているが(http://microarray.vice.dua.affrc.go.jp)、それぞれのESTのうち、機能の不明なcDNAも多く、これら12種類の遺伝子がブラシノライドに依存して発現が上昇することは、部分cDNAの配列だけからは予測できなかった。
【0045】
[実施例2]
12種類の遺伝子群について、ノザンブロッティングで発現様式を解析したところ、ブラシノライド処理後1時間から6時間で発現し、葉鞘と葉身基部でオーキシンとブラシノライドで発現が顕著に促進される2種類の遺伝子が見出された(図2)。この2つの遺伝子をOsBLE1とOsBLE2と命名した。
【0046】
[実施例3]
2種類の遺伝子について、EST情報を元に、5'レース法で完全長cDNAを単離した結果、OsBLE1遺伝子およびOsBLE2遺伝子は、それぞれ、598塩基(配列番号:1)で81アミノ酸(配列番号:2)をコードする遺伝子、および、3243塩基(配列番号:3)で761アミノ酸(配列番号:4)をコードする遺伝子であった。これら遺伝子の配列から推定されるアミノ酸配列は、データベースに報告がされているアミノ酸配列と有意な相同性は見出されなかった。よって、両者とも新規な遺伝子であった。
【0047】
[実施例4]
OsBLE1とOsBLE2のcDNAを用い、イネ品種 日本晴DNAを制限酵素、Bam HI、SalI、XhoI、およびXba lで消化したDNAに対してサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、図3に示したように複数のバンドが観察された。このことから、OsBLE1およびOsBLE2ともに、染色体DNAに少なくとも2コピーの遺伝子が存在することが推定された。
【0048】
[実施例5]
OsBLE1とOsBLE2の組織内における物理的発現を観察するために、in situハイブリダイゼイション法により発現部位を解析した結果、イネの伸長制御に関与している根原基部や節網維管束等で発現していることが明らかになった(図4)。
【0049】
[実施例6]
OsBLE1とOsBLE2のcDNAをそれぞれ5'側が制限酵素部位SalI、3'側Xba lに加工し、バイナリティーベクターpIG121-Hm(Ohta S., Mita S., Hattori T., Nakamura K., Plant Cell Physiol., 31: 805-813, 1990)のカリフラワーモザイクウイルス35Sのプローモーターの制限下に、5'側をXba l、3'側をSalI部位に(アンチセンス方向)、挿入した。該組換えバイナリティーベクターをアグロバクテリウムEHA101に導入し、さらに超迅速単子葉形質転換法によってイネ品種の日本晴に導入した。その結果、ベクターコントロールと比較して、茎葉伸長において抑制が認められた(図5)。以上の結果は、植物ホルモンであるブラシノライドを添加することによって誘導される遺伝子の発現を制御した形質転換体において、矮化を引き起こすことに成功したことを示す。
【0050】
【発明の効果】
植物ホルモンが植物の各器官の成長を制御していることは広く知られているが、ブラシノライドについては不明の点が多かった。本発明においては、ジベレリン生合成に関与する遺伝子を利用する従来の方法とは全く異なり、外因性のブラシノライドによって誘導される遺伝子を用いて植物を矮化する技術を開示している。本発明を利用することで、例えば減収および品質の低下を引き起こす窒素高投入下でのイネの倒伏を抑制することが可能である。
【0051】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 DNAマイクロアレイ技術を用いてイネ幼苗期葉身基部をブラシノライド(BL)処理し発現が亢進した遺伝子群を示す写真である。図中の番号はブラシノライド処理により発現が顕著に亢進した12種類の遺伝子群を示す。
【図2】 ブラシノライド処理により発現亢進が見いだされた2種類の遺伝子(OsBLE1遺伝子とOsBLE2遺伝子)を示す写真である。Aは、ブラシノライド処理後2時間から6時間でこれら遺伝子が発現したことを示す。Bはイネ葉鞘と葉身基部でこれら遺伝子の発現が促進していることを示す。Cはオーキシン(IAA)とジベレリン(GA3)とブラシノライド(BL)処理により、これら遺伝子の発現が亢進したことを示す。
【図3】 サザンブロッテイングの解析結果を示す写真である。OsBLE1遺伝子(左)とOsBLE2遺伝子(右)共に、少なくとも2コピー存在していた。
【図4】 in situハイブリダイゼイション法によるOsBLE1遺伝子とOsBLE2遺伝子の発現部位を示す写真である。OsBLE1遺伝子(B)およびOsBLE2遺伝子(C)共に、根原基部(r)や節網維管束(np)等で発現している。なお、Aは対照である。
【図5】 Aは、組換えバイナリ―ベクターを示す図である。BとCは、対照(ベクターコントロールを導入)と比較して矮化したOsBLE1遺伝子とOsBLE2遺伝子のアンチセンス形質転換イネを示す写真である。
Claims (5)
- 下記(c)に記載の DNAを発現可能に保持する形質転換イネ細胞を含む、矮性化した形質転換イネ。
(a)配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1または3に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)(a)または(b)に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA。 - 請求項1に記載の形質転換イネの子孫またはクローンである、形質転換イネ。
- 下記(1)および(2)の工程を含む、請求項1に記載の形質転換イネの製造方法。
(1)下記(c)に記載の DNAをイネ細胞に導入する工程
(a)配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1または3に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(c)(a)または(b)に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(2)工程(1)に記載のイネ細胞からイネを再生させる工程 - イネの細胞内における、内因性の下記(a)または(b)に記載のDNAの発現を抑制することを特徴とする、イネを矮性化させる方法。
(a)配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1または3に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。 - 下記(c)に記載の DNAをイネに導入することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
(a)配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1または3に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)(a)または(b)に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA。
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