JP4404341B2 - 植物の感光性遺伝子Hd5およびその利用 - Google Patents

植物の感光性遺伝子Hd5およびその利用 Download PDF

Info

Publication number
JP4404341B2
JP4404341B2 JP2003349338A JP2003349338A JP4404341B2 JP 4404341 B2 JP4404341 B2 JP 4404341B2 JP 2003349338 A JP2003349338 A JP 2003349338A JP 2003349338 A JP2003349338 A JP 2003349338A JP 4404341 B2 JP4404341 B2 JP 4404341B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dna
plant
gene
protein
photosensitivity
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003349338A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005110579A (ja
Inventor
昌裕 矢野
歌子 山内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Agrobiological Sciences
Original Assignee
National Institute of Agrobiological Sciences
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Agrobiological Sciences filed Critical National Institute of Agrobiological Sciences
Priority to JP2003349338A priority Critical patent/JP4404341B2/ja
Publication of JP2005110579A publication Critical patent/JP2005110579A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4404341B2 publication Critical patent/JP4404341B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、植物の感光性に関与する遺伝子および該遺伝子を利用した植物の感光性の改変に関する。植物の感光性の改変は、植物の品種改良などの分野において有用である。
イネの出穂期は主に日長に依存する感光性とそれ以外の要因(基本栄養成長性あるいは感温性)によって決定されている。この出穂期に関する遺伝解析は古くから行われ、これまでSe1座(第6染色体;非特許文献1)、E1座(第7染色体;非特許文献2、3)、E2座(不明)、E3座(第3染色体;非特許文献4)あるいはEf1座(第10染色体:非特許文献5)等の出穂期関連遺伝子が突然変異や品種に内在する変異によって見い出されている(非特許文献6)。
イネは一般に短日で出穂が促進され、逆に長日では出穂が遅延する。日本の栽培品種では、一般に九州や本州南部の品種は強い感光性をもち、東北や北海道の品種は感光性がないか極めて弱い。イネは感光性を失うと日長の変化によって出穂期が変化せず、一定の生育期間を経ると、出穂する特徴を示す。このようにイネは感光性の有無により、栽培地域や栽培時期などに関する適応性が大きく変化するため、イネの感光性の改変は、イネの品種改良において重要な課題となっている。
従来、イネの品種改良における出穂期の改変は、(1)交雑による早生・晩生系統の選抜や(2)放射線や化学物質による突然変異誘起などによって行われてきた。しかしながら、これらの作業には長期間を要し、また変異の程度や方向性を予測できないなど多くの問題が存在していた。
ところで、イネの遺伝学の分野においては、イネの感光性を強くする遺伝子を総称して「感光性遺伝子」と呼んでいる。近年、DNAマーカーがイネの遺伝解析に利用されるようになって、出穂期のような複雑な遺伝に従う形質の遺伝解析(量的形質遺伝子座(QTL)のマッピング)が進展した。この背景のもと、イネの感光性に関与する遺伝子の遺伝学的な同定が進められてきた(非特許文献7〜14)。これらのうち、4種類のQTL、Hd1, Hd3a, Hd6およびEhd1については分子レベルで単離・同定されている(非特許文献15〜17)。しかしながら日本のイネ品種の早晩性に重要な役割を果たしているHd5遺伝子については、その分子レベルでの実体が解明されていなかった。
イネ感光性遺伝子が単離されれば、これを形質転換法により任意の品種に導入することによって、それらの系統の感光性を改変させ、これによりイネの出穂期を調節することが可能であると考えられる。このため、該遺伝子を利用した品種改良は、簡便性や確実性の面で、従来の方法と比して極めて有利であると言える。
尚、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
WO01/032880 WO01/032881 出願公開公報2002-153283 Yokoo and Fujimaki (1971) Japan. J. Breed. 21:35-39 Tsai, K.H. (1976) Jpn. J. Genet. 51: 115-128 Okumoto, Y. et al. (1992) Jpn. J. Breed. 42: 415-429 奥本ら、日本育種学会第91回講演会 育雑 47(別1):31 Sato et al. (1988) Jpn. J. Breed. 38: 385-396 Yamagata et al. (1986) In Rice Genetics, International Rice Research Institute, Manilla, pp351-359 Yano et al. Theoretical and Applied Genetics(TAG) 95:1025-1032, 1997 Yamamoto et al. TAG 97:37-44, 1998 Yamamoto et al. Genetics 154:885-891, 2000 Lin et al. TAG 101:1021-1028,2000 Monna et al. TAG 104:772-778, 2002 Doi et al. Breeding Science 48:395-399, 1998 Lin et al. Breeding Science 52:35-41, 2002 Lin et al. Breeding Science 53: 51-59, 2003 Yano et al., Plant Cell 12:2473-2484, 2000 Takahashi et al., PNAS 98:7922-7927, 2001 Kojima et al., Plant Cell Physiol. 43:1096-1105, 2002 Nishida et al. Annl. Bot. 88: 527-536, 2001 Ichitani et al. Plant Breed. 117: 543-547, 1998 Ichitani et al. Breed. Sci. 48: 51-57, 1998 山本ら 育種学研究 第5巻(別1)p.50 (2003) 第103回日本育種学会講演会講演要旨集 野々上ら 育種学研究 第2巻(別1)p.13(2000) 第97回日本育種学会講演会講演要旨集 野々上ら 育種学研究 第5巻(別1)p.71(2003) 第103回日本育種学会講演会講演要旨集
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な植物の感光性遺伝子を提供することにある。また、本発明は、該遺伝子を利用して植物の感光性を改変し、これにより植物の開花時期を改変することを目的とする。さらに、本発明は、該遺伝子を標的とした植物の感光性の強さの判定方法を提供することをも目的とする。
本発明者等は、植物の中でも、特に出穂時期を改変する簡便な方法の開発が望まれているイネに着目し、その感光性に関与する遺伝子を単離すべく鋭意研究を行った。
イネにおいては、日本型品種「日本晴」とインド型品種「Kasalath」の交雑後代を利用して検出された出穂期関連量的形質遺伝子座(QTL)の一つであるHd5が、第8染色体上に座乗することが知られている(図1)(Yano et al., Theoretical Applied Genetics 95:1025-1032, 1997)。また「日本晴」の遺伝的背景をもち、Hd5領域を「Kasalath」の対立遺伝子領域に置き換えた準同質遺伝子系統[NIL(Hd5)]を用いた解析から、Hd5遺伝子座は日長反応性に関与し、長日条件で出穂を遅延させる作用をもつことが明らかとなっていた(Lin et al., Breeding Science 53:51-59, 2003)。さらにその遅延作用には別の感光性遺伝子Hd1が必要であることも判明していた(Lin et al., Breeding Science 53:51-59, 2003)。
本発明者らは、感光性遺伝子Hd5の機能を確認するために、まず準同質遺伝子系統[NIL(Hd5)]と日本晴を異なる日長条件下で栽培し、それらの到穂日数を調査した。これらの結果から、Hd5遺伝子は出穂を遅延する機能を有し、その出穂遅延作用は長日条件下および自然条件下でのみ認められることがわかった(図2)。
次に、このようにその存在自体は確認されたが、いまだ同定されていない感光性遺伝子Hd5を単離するために、連鎖解析および人工的染色体(PACおよびBAC)クローンによるHd5遺伝子領域の整列化を行った。
具体的には、マップベースクローニングに不可欠な大規模分離集団によるHd5領域の詳細な連鎖解析を行った。連鎖解析用の集団は「日本晴」と「Kasalath」の戻し交雑後代世代を用いた。戻し交雑後代からHd5領域がヘテロ型となり、他のゲノム領域の大部分が「日本晴」に置換された個体を選抜した。Hd5遺伝子座の遺伝子型の決定は、F3世代の後代検定によって行った。連鎖解析の結果、Hd5はRFLPマーカーEH560とR2976の間に位置づけられ、それぞれのマーカーと14個体および4個体の組み換え個体が同定できた(図3B)。
さらにHd5遺伝子の候補領域を絞り込むために、本発明者等は、人工的染色体(PACおよびBAC)クローンによるHd5遺伝子領域の整列化を行った。具体的には、上記解析により見出されたHd5遺伝子を含むPACクローンP690F8(図3C)のゲノム塩基配列を解析し、得られた塩基配列情報を利用して、新規なCAPSマーカーおよびSNPマーカーを作出し、候補ゲノム領域をさらに限定した。その結果、Hd5の候補領域はSNPマーカー14161と18485に挟み込まれる約4.3kbであることが明らかとなった。この候補領域の塩基配列に対してGENSCAN(http://genes.mit.edu/GENSCAN.html)による遺伝子予測ならびに類似性検索を行ったところ、1個の遺伝子が予測され、既知のCCAAT-box結合転写因子NF-Y蛋白のサブユニットB遺伝子(NF-YB遺伝子)と高い類似性を示した(図3E)。
本発明者等は、PACクローンP690F8の塩基配列解析を行った結果、Hd5候補遺伝子が存在すると考えられる領域を約4.3kbにまで絞り込むことに成功した。さらに、イネ品種 「Kasalath」、「日本晴」および「はやまさり」における、Hd5領域約4.3kbのゲノム塩基配列について遺伝子予測ならびに類似性検索を行い、この領域には、「Kasalath」と比較して「日本晴」では46箇所、「はやまさり」では47箇所の塩基置換および挿入・欠失が存在することを見出した(図4)。また、「Kasalath」のcDNAの全長を決定し、ゲノム塩基配列と比較したところ、Hd5 は1個のエクソンからなり、転写領域の全長は1060bp、298アミノ酸からなるタンパク質をコードしていることが予測された(図4)。予測転写領域内の塩基配列の違いを「Kasalath」と比較すると、「日本晴」では10個の1塩基置換、「はやまさり」では「日本晴」の10個の1塩基置換に加えて19bpの欠失が確認された。また、アミノ酸配列の違いを「Kasalath」と比較すると、「日本晴」では8個のアミノ酸が置換され、また、「はやまさり」に見いだされた19bpの欠失はフレームシフトを引き起こし、その結果62番目のアミノ酸部位に停止コドンを生じさせることが明らかとなった(図5)。
このHd5候補遺伝子がイネに感光性を付与する機能を有することを確認するために、「日本晴」植物体に、「日本晴」型よりも強力な感光性の機能を持つと推定される「Kasalath」型のHd5候補遺伝子を導入する形質転換を行った。具体的には、Hd5候補遺伝子を含むことが判明した「Kasalath」のBACクローンB179C8より候補遺伝子領域を含む HindIII-EagI 4.2kb断片(図3E)を切り出し、Ti-プラスミドベクターpPZP2H-lac(Fuse et al. Plant Biotechnology 18: 219-222, 2001)に組み込み、アグロバクテリウムを介して「日本晴」に導入した。その結果、作出された形質転換植物は、長日条件下で出穂が著しく遅延することが確認された(図6A,B)。HindIII-EagI 4.2kb断片を導入した個体については、「Kasalath」由来のNF-YB様候補遺伝子の転写が認められた(図7)。「はやまさり」についても、該DNA断片を導入したところ、出穂が著しく遅延することが確認された(図8)。以上の結果からNF-YB様遺伝子が長日条件で出穂を遅延させる機能を有し、Hd5であることが確認された。
また、Hd5遺伝子の1日の発現量の変化を調べたところ、Hd5遺伝子のmRNAの蓄積量は明期の間は上昇し、暗期になると下降してきて朝には最低レベルになることがわかった(図9)。また、Hd5遺伝子の出穂遅延作用が明瞭な長日条件において短日条件よりもmRNAが多く蓄積されていることが明らかとなった(図9)。感光性に関与する遺伝子の一部は、それらの発現が日周変動を示すことが明らかにされている(Kojima et al., Plant Cell Physiol. 43:1096-1105, 2002)。これらの結果から、日周変動でもたらされる発現量比の変化が感光性の発現において重要な役割を果たしていることが推定され、Hd5遺伝子発現の日周変動も、感光性遺伝子群の相互作用の一端を担うものと示唆された。
さらに、Hd5遺伝子の機能診断が可能であるかどうかを明らかにするために、「はやまさり」に見いだされたHd5遺伝子内の欠失19bpを含むゲノム断片を増幅できるプライマー対を用いて、日本で栽培される品種あるいはこれまで栽培されてきた品種7品種の各品種ゲノムDNAをテンプレートとしてPCRによる増幅を行った(図10)。これらの結果より、北海道地域で栽培される極早生品種には、機能があるHd5遺伝子を持つ品種と機能欠損型の遺伝子をもつ品種が存在することがわかり、今回用いたプライマー対はHd5遺伝子の機能の有無の診断に利用できることが示された。
即ち、本発明者らは、植物の感光性に関与する新たな遺伝子を単離することに成功すると共に、該遺伝子を利用して植物の感光性を改変させ、開花時期を改変させることが可能であること、さらには該遺伝子を利用して植物の感光性の強さの判定することが可能であることを見出し、これにより本発明を完成するに至った。
本発明は、より具体的には、
〔1〕植物の感光性を増加させる機能を有する植物由来のタンパク質をコードする、下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1,2,4または5のいずれかに記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(d)配列番号:1,2,4または5のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
〔2〕イネ由来である、〔1〕に記載のDNA。
〔3〕〔1〕または〔2〕に記載のDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNA。
〔4〕〔1〕または〔2〕に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA。
〔5〕植物細胞における発現時に、共抑制効果により、〔1〕または〔2〕に記載のDNAの発現を抑制させるRNAをコードするDNA。
〔6〕〔1〕から〔5〕のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
〔7〕〔6〕に記載のベクターが導入された宿主細胞。
〔8〕〔6〕に記載のベクターが導入された植物細胞。
〔9〕〔8〕に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。
〔10〕〔9〕に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
〔11〕〔9〕または〔10〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
〔12〕〔1〕から〔5〕のいずれかに記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法。
〔13〕〔1〕または〔2〕に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
〔14〕〔7〕に記載の宿主細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から組換えタンパク質を回収する工程を含む、〔13〕に記載のタンパク質の製造方法。
〔15〕〔13〕に記載のタンパク質に結合する抗体。
〔16〕配列番号:1,2,4または5のいずれかに記載の塩基配列またはその相補配列に相補的な少なくとも15の連続する塩基を含むポリヌクレオチド。
〔17〕〔1〕または〔2〕に記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の感光性を増加させる方法。
〔18〕〔3〕から〔5〕のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の感光性を低下させる方法。
〔19〕〔1〕から〔5〕のいずれかに記載のDNA、もしくは〔6〕に記載のベクターを有効成分とする、植物の感光性を改変する薬剤。
〔20〕以下の(a)〜(c)の工程を含む、植物の感光性を判定する検査方法。
(a)被検植物体および繁殖媒体からDNA試料を調製する工程。
(b)該DNA試料から〔1〕に記載のDNA領域を増幅する工程。
(c)植物の品種・系統から〔1〕に記載のDNA領域を増幅したDNA断片と、該DNA試料から増幅したDNA断片の分子量または塩基配列を比較する工程。
本発明により新規な感光性遺伝子が提供された。本発明の遺伝子は植物に感光性を付与し、これにより植物を晩生化させる機能を有する。イネのような穂を有する植物においては、この遺伝子の発現や機能を調節することにより、出穂期を調節することができる。このため、本発明の遺伝子は、特に栽培地域や栽培時期に適応したイネ品種育成に有用である。また、本発明の遺伝子を用いるイネの品種育成は、短期間で高い確実性をもって目的の植物体を得ることができる点で、従来の方法より有利である。
また、本発明により植物の感光性を判定する遺伝子診断方法が提供された。本発明の方法では、これまでに栽培されている品種および、交配または遺伝子組換えによる新しい品種のゲノムDNAを抽出し、これらを解析することにより感光性を判定できる。感光性を判定できれば、品種間交雑の後代に出現する個体の感光性の強さを予測することが可能となり、交配母本の選定や選抜のための有用な情報となる。
本発明は、イネ由来のHd5タンパク質をコードするDNAを提供する。「Kasalath」のゲノムDNAの塩基配列を配列番号:1に、「Kasalath」のcDNAの塩基配列を配列番号:2に、該DNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:3に示す。また、「日本晴」のHd5ゲノムDNAの塩基配列を配列番号:4に、「日本晴」のcDNAの塩基配列を配列番号:5に、該DNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:6に示す。
Hd5遺伝子は「日本晴」と「Kasalath」の交雑後代を利用して検出された量的形質遺伝子座(QTL)の一つであり、第8染色体上に座乗することが明らかとなっていた。また「日本晴」の遺伝的背景に「Kasalath」のHd5領域を置換した準同質遺伝子系統を用いた解析から、Hd5遺伝子座は日長反応性に関与し、長日条件で出穂を遅延させる作用をもつことが明らかとなっていた(Lin et al., Breeding Science 53:51-59, 2003)。さらにその遅延作用には別の感光性遺伝子Hd1が必要であることも判明していた(Lin et al., Breeding Science 53:51-59, 2003)。すなわち「Kasalath」のHd5遺伝子は感光性を強めて、圃場における栽培(長日条件に近い)では晩生化させる作用をもつ。このようにHd5遺伝子は、植物の感光性に関与する遺伝子として、これまでイネ第8染色体という広大な領域のいずれかの場所に存在するものとして知られていたが、その同定および単離には至っていなかった。本発明者らは、複雑なステップを経て遂にその存在領域を解明し、単一の遺伝子として該遺伝子を単離することに初めて成功した。
現在、日本のイネの品種改良においては、出穂期の調節は重要な育種目標である。特に寒冷地では秋の低温が早く到来することから、出穂期の調節は冷害の回避のために重要であり、一方、西南暖地においては、大規模稲作地帯における収穫作業の集中を回避するためにも早生化あるいは晩生化が期待されている。
Hd5タンパク質は、植物の感光性を強める作用を有していることから、該タンパク質をコードするDNAで植物を形質転換することにより、植物の晩生化(開花時期の遅延化)を引き起こすことが可能である。一方、アンチセンス法やリボザイム法などを利用して該DNAの発現制御を行うことにより、感光性を低下させ、植物の開花時期を早めることが可能である。例えば、Hd5遺伝子の機能が消失した品種、例えば「はやまさり」にこの遺伝子をセンス鎖で形質転換することにより、長日あるいは夏期の自然日長での出穂遅延を図ることができる。一方、Hd5遺伝子の機能が保持されている品種、例えば「日本晴」あるいは「Kasalath」、にアンチセンス方向にHd5遺伝子を導入することにより、出穂を促進させることができる。長日条件は日本の夏期におけるイネの栽培期間の自然日長条件と類似するため、実際の栽培条件における出穂期の調節に有効である。形質転換に要する期間は交配による遺伝子移入に比較して極めて短期間であり、他の形質の変化を伴わないで出穂期の改変が可能となる。単離した出穂遅延遺伝子Hd5を利用することにより、イネの出穂期を容易に変化させることができ、異なる地域に適応したイネ品種育成に貢献できると考えられる。
本発明のHd5タンパク質をコードするDNAには、ゲノムDNA、cDNA、および化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAおよびcDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、感光性遺伝子を有するイネ品種 (例えば、「Kasalath」、「日本晴」)からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作成し、これを展開して、本発明タンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号:2,5)を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製することが可能である。また、本発明タンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号:2,5)に特異的なプライマーを作成し、これを利用したPCRをおこなうことによって調製することも可能である。また、cDNAは、例えば、感光性遺伝子を有するイネ品種 (例えば、「Kasalath」、「日本晴」)から抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAP等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作成し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、また、PCRを行うことにより調製することが可能である。
本発明は、配列番号:3または6に記載のHd5タンパク質(「Kasalath」、「日本晴」)と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを包含する。ここで「Hd5タンパク質と同等の機能を有する」とは、対象となるタンパク質が植物の感光性を増加させる機能を有することを指す。このようなDNAは、好ましくは単子葉植物由来であり、より好ましくはイネ科植物由来であり、最も好ましくはイネ由来である。
このようなDNAには、例えば、配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする変異体、誘導体、アレル、バリアントおよびホモログが含まれる。
アミノ酸配列が改変されたタンパク質をコードするDNAを調製するための当業者によく知られた方法としては、例えば、site-directed mutagenesis法(Kramer, W.& Fritz,H.-J. (1987) Oligonucleotide-directed construction of mutagenesis via gapped duplex DNA.Methods in Enzymology, 154: 350-367)が挙げられる。また、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは、自然界においても生じ得る。このように天然型のHd5タンパク質をコードするアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAであっても、天然型のHd5タンパク質(配列番号:3または6)と同等の機能を有するタンパク質をコードする限り、本発明のDNAに含まれる。また、たとえ、塩基配列が変異した場合でも、それがタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わない場合(縮重変異)もあり、このような縮重変異体も本発明のDNAに含まれる。
あるDNAが植物の感光性を増加させるタンパク質をコードするか否かは以下のようにして評価することができる。最も一般的な方法としては、該DNAが導入された植物を、日長が変更できるグロースチャンバーで栽培して調べる手法である。すなわち短日(一般的には9〜10時間)条件と長日(14〜16時間)条件で栽培し、播種から開花するまで(イネであれば播種から穂が出るまで)に必要な日数を比較する方法である。該日数が長日と短日で変わらないかほとんど同じ場合は感光性がないと判断する。感光性がある場合は、長日での開花までの日数は短日より大きくなり、その差の大きさを感光性の程度とみなすことができる。グロースチャンバーが利用できない場合には、自然日長の圃場あるいは温室における栽培試験で検定可能である。すなわち温室に20日おきに播種し、温度を保って自然日長下で栽培し、それぞれの開花日を測定する。イネにおいては、一般に8月〜2月に播種した場合は、感光性の大きな品種の出穂は促進され、逆に4月から7月では遅延する。一方、感光性の小さな品種では到穂日数は播種期の移動に影響されずに変化が小さい。
配列番号:3または6に記載のHd5タンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを調製するために、当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Southern, E.M. (1975) Journal of Molecular Biology, 98, 503)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki, R. K. et al. (1985) Science, 230, 1350-1354、Saiki, R. K. et al. (1988) Science, 239, 487-491)を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者にとっては、Hd5遺伝子の塩基配列(配列番号:2または5)もしくはその一部をプローブとして、またHd5遺伝子(配列番号:2または5)に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、イネや他の植物からHd5遺伝子と高い相同性を有するDNAを単離することは通常行いうることである。このようにハイブリダイズ技術やPCR技術により単離しうるHd5タンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAもまた本発明のDNAに含まれる。
このようなDNAを単離するためには、好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。本発明においてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6M尿素、 0.4%SDS、0.5xSSCの条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を指す。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M尿素、0.4%SDS、0.1xSSCの条件を用いることにより、より相同性の高いDNAの単離を期待することができる。これにより単離されたDNAは、アミノ酸レベルにおいて、Hd5タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:3または6)と高い相同性を有すると考えられる。高い相同性とは、アミノ酸配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%,96%,97%,98%,99%以上)の配列の同一性を指す。アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。
本発明のDNAは、例えば、組み換えタンパク質の調製や感光性が改変された形質転換植物体の作出などに利用することが可能である。
組み換えタンパク質を調製する場合には、通常、本発明のタンパク質をコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な細胞に導入し、形質転換細胞を培養して発現させたタンパク質を精製する。組み換えタンパク質は、精製を容易にするなどの目的で、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることも可能である。例えば、大腸菌を宿主としてマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として調製する方法(米国New England BioLabs社発売のベクターpMALシリーズ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として調製する方法(Amersham Pharmacia Biotech社発売のベクターpGEXシリーズ)、ヒスチジンタグを付加して調製する方法(Novagen社のpETシリーズ)などを利用することが可能である。宿主細胞としては、組み換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなく、上記の大腸菌の他、例えば、酵母、種々の動植物細胞、昆虫細胞などを用いることが可能である。宿主細胞へのベクターの導入には、当業者に公知の種々の方法を用いることが可能である。例えば、大腸菌への導入には、カルシウムイオンを利用した導入方法(Mandel, M. & Higa, A. (1970) Journal of Molecular Biology, 53, 158-162、Hanahan, D. (1983) Journal of Molecular Biology, 166, 557-580)を用いることができる。宿主細胞内で発現させた組み換えタンパク質は、該宿主細胞またはその培養上清から、当業者に公知の方法により精製し、回収することが可能である。組み換えタンパク質を上記のマルトース結合タンパク質などとの融合タンパク質として発現させた場合には、容易にアフィニティー精製を行うことが可能である。また、後述する手法で、本発明のDNAが導入された形質転換植物体を作成し、該植物体から本発明のタンパク質を調製することも可能である。従って、本発明の形質転換植物体には、後述する、感光性を改変するために本発明のDNAが導入された植物体のみならず、本発明のタンパク質の調製のために本発明のDNAが導入された植物体も含まれる。
得られた組換えタンパク質を用いれば、これに結合する抗体を調製することができる。例えば、ポリクローナル抗体は、精製した本発明のタンパク質若しくはその一部のペプチドをウサギなどの免疫動物に免疫し、一定期間の後に血液を採取し、血ぺいを除去することにより調製することが可能である。また、モノクローナル抗体は、上記タンパク質若しくはペプチドで免疫した動物の抗体産生細胞と骨腫瘍細胞とを融合させ、目的とする抗体を産生する単一クローンの細胞(ハイブリドーマ)を単離し、該細胞から抗体を得ることにより調製することができる。これにより得られた抗体は、本発明のタンパク質の精製や検出などに利用することが可能である。本発明には、本発明のタンパク質に結合する抗体が含まれる。これらの抗体を用いることにより、植物体における感光性タンパク質の発現部位の判別、もしくは植物種が感光性タンパク質を発現するか否かの判別を行うことが出来る。例えば、「Kasalath」若しくは「日本晴」のカルボキシル末端側のアミノ酸配列を特異的に認識する抗体は、感光性を持たない「はやまさり」等の品種において発現するタンパク質には結合しないため、植物種が感光性タンパク質を発現するかいなかを判別する際に用いることができる。
本発明のDNAを利用して感光性が増加した形質転換植物体を作製する場合には、本発明のタンパク質をコードするDNAを適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させる。本発明者等により単離された感光性遺伝子は、イネの感光性を強める作用を有し、その結果、出穂期を遅らせる効果を有するが、このHd5遺伝子を任意の品種に導入し発現させることによりそれらの系統の出穂期を調節することが可能である。この形質転換に要する期間は、従来のような交配による遺伝子移入に比較して極めて短期間であり、また、他の形質の変化を伴わない点で有利である。
一方、感光性が低下した形質転換植物体を作製する場合には、本発明のタンパク質をコードするDNAの発現を抑制するためのDNAを適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させる。「本発明のタンパク質をコードするDNAの発現を抑制」には、遺伝子の転写の抑制およびタンパク質への翻訳の抑制が含まれる。また、DNAの発現の完全な停止のみならず発現の減少も含まれる。
植物における特定の内在性遺伝子の発現の抑制は、例えば、本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNAを利用して行なうことができる。
「本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNA」の一つの態様は、本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNAである。植物細胞におけるアンチセンス効果は、エッカーらが一時的遺伝子発現法を用いて、電気穿孔法で導入したアンチセンスRNAが植物においてアンチセンス効果を発揮することで初めて実証した(J.R.Eckerand R.W.Davis, (1986) Proc.Natl.Acad.USA.83:5372)。その後、タバコやペチュニアにおいても、アンチセンスRNAの発現によって標的遺伝子の発現を低下させる例が報告されており(A.R.van der Krol et al. (1988) Nature 333:866)、現在では植物における遺伝子発現を抑制させる手段として確立している。
アンチセンス核酸が標的遺伝子の発現を抑制する作用としては、以下のような複数の要因が存在する。すなわち、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造がつくられた部位とのハイブリッド形成による転写抑制、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエキソンとの接合点でのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行抑制、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻止、および核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制などである。これらは、転写、スプライシング、または翻訳の過程を阻害して、標的遺伝子の発現を抑制する(平島および井上「新生化学実験講座2 核酸IV 遺伝子の複製と発現」,日本生化学会編,東京化学同人,pp.319-347,1993)。
本発明で用いられるアンチセンス配列は、上記のいずれの作用で標的遺伝子の発現を抑制してもよい。一つの態様としては、遺伝子のmRNAの5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的であろう。しかし、コード領域もしくは3'側の非翻訳領域に相補的な配列も使用し得る。このように、遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含むDNAも、本発明で利用されるアンチセンスDNAに含まれる。使用されるアンチセンスDNAは、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3'側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。このようにして調製されたDNAは、公知の方法で、所望の植物へ形質転換できる。アンチセンスDNAの配列は、形質転換する植物が持つ内在性遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に阻害できる限り、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは、標的とする遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンス配列を用いて、効果的に標的遺伝子の発現を阻害するには、アンチセンスDNA の長さは、少なくとも15塩基以上であり、好ましくは100塩基以上であり、さらに好ましくは500塩基以上である。通常、用いられるアンチセンスDNAの長さは5kbよりも短く、好ましくは2.5kbよりも短い。
内在性遺伝子の発現の抑制は、また、リボザイムをコードするDNAを利用して行うことも可能である。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子のことをいう。リボザイムには種々の活性を有するものがあるが、中でもRNAを切断する酵素としてのリボザイムの研究により、RNAの部位特異的な切断を目的とするリボザイムの設計が可能となった。リボザイムには、グループIイントロン型や、RNasePに含まれるM1RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠および大塚栄子, (1990) 蛋白質核酸酵素,35:2191)。
例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15のC15の3'側を切断するが、活性にはU14が9位のAと塩基対を形成することが重要とされ、15位の塩基はCの他にAまたはUでも切断されることが示されている(M.Koizumi et al. (1988) FEBS Lett.228:225)。リボザイムの基質結合部を標的部位近傍のRNA 配列と相補的になるように設計すれば、標的RNA中のUC、UUまたはUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを作出することが可能である(M.Koizumi et al. (1988) FEBS Lett. 239:285、小泉誠および大塚栄子,(1990) 蛋白質核酸酵素,35:2191、 M.Koizumi et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17:7059)。例えば、Hd5遺伝子のコード領域(配列番号:2または4)中には標的となりうる部位が複数存在する。
また、ヘアピン型リボザイムも、本発明の目的のために有用である。ヘアピン型リボザイムは、例えばタバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(J.M.Buzayan Nature 323:349,1986)。このリボザイムも、標的特異的なRNA切断を起こすように設計できることが示されている(Y.Kikuchi and N.Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19:6751、 菊池洋, (1992) 化学と生物 30:112)。
標的を切断できるよう設計されたリボザイムは、植物細胞中で転写されるようにカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターなどのプロモーターおよび転写終結配列に連結される。しかし、その際、転写されたRNAの5'末端や3'末端に余分な配列が付加されていると、リボザイムの活性が失われてしまうことがある。このようなとき、転写されたリボザイムを含むRNAからリボザイム部分だけを正確に切り出すために、リボザイム部分の5'側や3'側に、トリミングを行うためのシスに働く別のトリミングリボザイムを配置させることも可能である(K.Taira et al. (1990) Protein Eng. 3:733、A.M.Dzianottand J.J.Bujarski (1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 86:4823、 C.A.Grosshansand R.T.Cech (1991) Nucleic Acids Res. 19:3875、 K.Taira et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19:5125)。また、このような構成単位をタンデムに並べ、標的遺伝子内の複数の部位を切断できるようにして、より効果を高めることもできる(N.Yuyama et al. Biochem.Biophys.Res.Commun.186:1271,1992)。このようなリボザイムを用いて本発明で標的となる遺伝子の転写産物を特異的に切断し、該遺伝子の発現を抑制することができる。
「本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNA」の他の一つの態様は、本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なdsRNAをコードするDNAである。RNAiは、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二重鎖RNA(以下dsRNA)を細胞内に導入すると、導入した外来遺伝子および標的内在性遺伝子の発現がいずれも抑制される現象である。細胞に約40〜数百塩基対のdsRNAが導入されると、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼがATP存在下で、dsRNAを3'末端から約21〜23塩基対ずつ切り出し、siRNA(short interference RNA)を生じる。このsiRNAに特異的なタンパク質が結合して、ヌクレアーゼ複合体(RISC:RNA-induced silencing complex)が形成される。この複合体はsiRNAと同じ配列を認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部で標的遺伝子のmRNAを切断する。また、この経路とは別にsiRNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RsRP)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成される。このdsRNAが再びダイサーの基質となって、新たなsiRNAを生じて作用を増幅する経路も考えられている。
上記RNAiは、当初、線虫において発見されたが(Fire, A. et al. Potent and specific genetic interference by double-stranded RNA in Caenorhabditis elegans. Nature 391, 806-811, (1998))、現在では、線虫のみならず、植物、線形動物、ショウジョウバエ、原生動物などの種々の生物において観察されている(Fire, A. RNA-triggered gene silencing. Trends Genet. 15, 358-363 (1999)、Sharp, P. A. RNA interference 2001. Genes Dev. 15, 485-490 (2001)、Hammond, S. M., Caudy, A. A. & Hannon, G. J. Post-transcriptional gene silencing by double-stranded RNA. Nature Rev. Genet. 2, 110-1119 (2001)、Zamore, P. D. RNA interference: listening to the sound of silence. Nat Struct Biol. 8, 746-750 (2001))。これら生物では、実際に外来よりdsRNAを導入することにより標的遺伝子の発現が抑制されることが確認され、さらにはノックアウト個体を創生する方法としも利用されつつある。
RNAiの登場当初はdsRNAはある程度の長さ(40塩基)以上でなければ効果がないと考えられていたが、米ロックフェラー大のTuschlらは21塩基対前後の単鎖dsRNA(siRNA)を細胞に導入すれば、哺乳動物細胞においてもPKRによる抗ウイルス反応を起こさず、RNAiの効果があることを報告し(Tuschl, Nature, 411, 494-498(2001))、RNAiは分化したヒトなどの哺乳動物細胞に応用可能な技術として俄然注目を集めることになった。
本発明のDNAは、標的遺伝子mRNAのいずれかの領域に対するアンチセンスRNAをコードしたアンチセンスコードDNAと、前記標的遺伝子mRNAのいずれかの領域のセンスRNAをコードしたセンスコードDNAを含み、前記アンチセンスコードDNAおよび前記センスコードDNAより前記アンチセンスRNAおよび前記センスRNAを発現させることができる。また、これらのアンチセンスRNAおよびセンスRNAよりdsRNAを作成することもできる。
本発明のdsRNAの発現システムを、ベクター等に保持させる場合の構成としては、同一のベクターからアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる場合と、異なるベクターからそれぞれアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる場合がある。例えば、同一のベクターからアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる構成としては、アンチセンスコードDNAおよびセンスコードDNAの上流にそれぞれpolIII系のような短いRNAを発現し得るプロモータを連結させたアンチセンスRNA発現カセット、センスRNA発現カセットをそれぞれ構築し、これらカセットを同方向にあるいは逆方向にベクターに挿入することにより構成することができる。また、異なる鎖上に対向するようにアンチセンスコードDNAとセンスコードDNAと逆向きに配置した発現システムを構成することもできる。この構成では、アンチセンスRNAコード鎖とセンスRNAコード鎖とが対となった一つの二本鎖DNA(siRNAコードDNA)が備えられ、その両側にそれぞれの鎖からアンチセンスRNA、センスRNAとを発現し得るようにプロモータを対向して備えられる。この場合には、センスRNA、アンチセンスRNAの下流に余分な配列が付加されることを避けるために、それぞれの鎖(アンチセンスRNAコード鎖、センスRNAコード鎖)の3'末端にターミネーターをそれぞれ備えることが好ましい。このターミネーターは、A(アデニン)塩基を4つ以上連続させた配列などを用いることができる。また、このパリンドロームスタイルの発現システムでは、二つのプロモータの種類を異ならせることが好ましい。
また、異なるベクターからアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる構成としては、例えば、アンチセンスコードDNAおよびセンスコードDNAの上流にそれぞれ polIII系のような短いRNAを発現し得るプロモータを連結させたアンチセンスRNA発現カセット、センスRNA発現カセットをそれぞれ構築し、これらカセットを異なるベクターに保持させることにより構成することができる。
本発明のRNAiにおいては、dsRNAとしてsiRNAが使用されたものであってもよい。「siRNA」は、細胞内で毒性を示さない範囲の短鎖からなる二重鎖RNAを意味し、Tuschlら(前掲)により報告された全長21〜23塩基対に限定されるものではなく、毒性を示さない範囲の長さであれば特に限定はなく、例えば、15〜49塩基対と、好適には15〜35塩基対と、さらに好適には21〜30塩基対とすることができる。あるいは、発現されるsiRNAが転写され最終的な二重鎖RNA部分の長さが、例えば、15〜49塩基対、好適には15〜35塩基対、さらに好適には21〜30塩基対とすることができる。
本発明のDNAとしては、標的配列のインバーテッドリピートの間に適当な配列(イントロン配列が望ましい)を挿入し、ヘアピン構造を持つダブルストランドRNA(self-complementary ‘hairpin’ RNA(hpRNA))を作るようなコンストラクト(Smith, N.A. et al. Nature, 407:319, 2000、Wesley, S.V. et al. Plant J. 27:581, 2001、Piccin, A. et al. Nucleic Acids Res. 29:E55, 2001)を用いることもできる。
RNAiに用いるDNAは、標的遺伝子と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を有する。また、配列の同一性は上述した手法により決定できる。
dsRNAにおけるRNA同士が対合した二重鎖RNAの部分は、完全に対合しているものに限らず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)などにより不対合部分が含まれていてもよい。本発明においては、dsRNAにおけるRNA同士が対合する二重鎖RNA領域中に、バルジおよびミスマッチの両方が含まれていてもよい。
内在性遺伝子の発現の抑制は、さらに、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有するDNAの形質転換によってもたらされる共抑制によっても達成されうる。「共抑制」とは、植物に標的内在性遺伝子と同一若しくは類似した配列を有する遺伝子を形質転換により導入すると、導入する外来遺伝子および標的内在性遺伝子の両方の発現が抑制される現象のことをいう。共抑制の機構の詳細は明らかではないが、植物においてはしばしば観察される(Curr.Biol.7:R793,1997, Curr.Biol.6:810,1996)。例えば、Hd5遺伝子が共抑制された植物体を得るためには、Hd5遺伝子若しくはこれと類似した配列を有するDNAを発現できるように作製したベクターDNAを目的の植物へ形質転換し、得られた植物体からHd5変異体の形質を有する植物、即ち感光性が低下した植物を選択すればよい。共抑制に用いる遺伝子は、標的遺伝子と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%,96%,97%,98%,99%以上)の配列の同一性を有する。
さらに、本発明における内在性遺伝子の発現の抑制は、標的遺伝子のドミナントネガティブの形質を有する遺伝子を植物へ形質転換することによっても達成することができる。ドミナントネガティブの形質を有する遺伝子とは、該遺伝子を発現させることによって、植物体が本来持つ内在性の野生型遺伝子の活性を消失もしくは低下させる機能を有する遺伝子のことをいう。
また、本発明は、上記本発明のDNAや本発明のDNAの発現を抑制するDNAが挿入されたベクターを提供する。本発明のベクターとしては、組み換えタンパク質の生産に用いる上記したベクターの他、形質転換植物体作製のために植物細胞内で本発明のDNAあるいは本発明のDNAの発現を抑制するDNAを発現させるためのベクターも含まれる。このようなベクターとしては、植物細胞で転写可能なプロモーター配列と転写産物の安定化に必要なポリアデニレーション部位を含むターミネーター配列を含んでいれば特に制限されず、例えば、プラスミド「pBI121」、「pBI221」、「pBI101」(いずれもClontech社製)などが挙げられる。植物細胞の形質転換に用いられるベクターとしては、該細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。例えば、植物細胞内での恒常的な遺伝子発現を行うためのプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター)を有するベクターや外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることも可能である。ここでいう「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。
本発明のベクターは、本発明のタンパク質を恒常的または誘導的に発現させるためのプロモーターを含有しうる。恒常的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター(Odell et al. 1985 Nature 313:810)、イネのアクチンプロモーター(Zhang et al.1991 Plant Cell 3:1155)、トウモロコシのユビキチンプロモーター(Cornejo et al. 1993 Plant Mol.Biol. 23:567)などが挙げられる。
また、誘導的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入、低温、高温、乾燥、紫外線の照射、特定の化合物の散布などの外因によって発現することが知られているプロモーターなどが挙げられる。このようなプロモーターとしては、例えば、糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入によって発現するイネキチナーゼ遺伝子のプロモーター(Xu et al. 1996 Plant Mol.Biol.30:387)やタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーター(Ohshima et al. 1990 Plant Cell 2:95)、低温によって誘導されるイネの「lip19」遺伝子のプロモーター(Aguan et al. 1993 Mol.GenGenet. 240:1)、高温によって誘導されるイネの「hsp80」遺伝子と「hsp72」遺伝子のプロモーター(Van Breusegem et al. 1994 Planta 193:57)、乾燥によって誘導されるシロイヌナズナの「rab16」遺伝子のプロモーター(Nundy et al. 1990 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1406)、紫外線の照射によって誘導されるパセリのカルコン合成酵素遺伝子のプロモーター(Schulze-Lefert et al. 1989 EMBO J. 8:651)、嫌気的条件で誘導されるトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(Walker et al. 1987 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:6624)などが挙げられる。また、イネキチナーゼ遺伝子のプロモーターとタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーターはサリチル酸などの特定の化合物によって、「rab16」は植物ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導される。
また、本発明は、本発明のベクターが導入された形質転換細胞を提供する。本発明のベクターが導入される細胞には、組み換えタンパク質の生産に用いる上記した細胞の他に、形質転換植物体作製のための植物細胞が含まれる。植物細胞としては特に制限はなく、例えば、シロイヌナズナ、イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、タバコなどの細胞が挙げられる。本発明の植物細胞には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。また、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根も含まれる。植物細胞へのベクターの導入は、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポーレーション)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法など当業者に公知の種々の方法を用いることができる。形質転換植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である(Toki et al. (1995) Plant Physiol. 100:1503-1507参照)。例えば、イネにおいては、形質転換植物体を作出する手法については、ポリエチレングリコールによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体(インド型イネ品種が適している)を再生させる方法(Datta,S.K. (1995) In Gene Transfer To Plants(Potrykus I and Spangenberg Eds.) pp66-74)、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体(日本型イネ品種が適している)を再生させる方法(Toki et al. (1992) Plant Physiol. 100, 1503-1507)、パーティクルガン法により細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生させる方法(Christou et al. (1991) Bio/technology, 9: 957-962.)およびアグロバクテリウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法(Hiei et al. (1994) Plant J. 6: 271-282.)など、いくつかの技術が既に確立し、本願発明の技術分野において広く用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
形質転換された植物細胞は、再分化させることにより植物体を再生させることが可能である。再分化の方法は植物細胞の種類により異なるが、例えば、イネであればFujimuraら(Plant Tissue Culture Lett. 2:74 (1995))の方法が挙げられ、トウモロコシであればShillitoら(Bio/Technology 7:581 (1989))の方法やGorden-Kammら(Plant Cell 2:603(1990))が挙げられ、ジャガイモであればVisserら(Theor.Appl.Genet 78:594 (1989))の方法が挙げられ、タバコであればNagataとTakebe(Planta 99:12(1971))の方法が挙げられ、シロイヌナズナであればAkamaら(Plant Cell Reports12:7-11 (1992))の方法が挙げられ、ユーカリであれば土肥ら(特開平8-89113号公報)の方法が挙げられる。
一旦、ゲノム内に本発明のDNAあるいは本発明のDNAの発現を抑制するDNAが導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。本発明には、本発明のDNAが導入された植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の子孫およびクローン、並びに該植物体、その子孫、およびクローンの繁殖材料が含まれる。
このようにして作出された感光性が改変された植物体は、野生型植物体と比較して、その開花時期が変化している。例えば、Hd5タンパク質をコードするDNAが導入された植物体は、その感光性の増加により、圃場条件下において開花時期が遅延し、一方、アンチセンスDNAなどの導入によりHd5タンパク質をコードするDNAの発現が抑制された植物体は、その感光性の低下により、開花時期が早まる。このようにHd5遺伝子の発現を制御することにより、植物の開花時期を調節することができる。本発明の手法を用いれば、有用農作物であるイネにおいては、その出穂時期を調節することができ、生育環境に適応したイネ品種の育成の上で非常に有益である。
また、本発明は、配列番号:1,2,4または5のいずれかに記載の塩基配列またはその相補配列に相補的な少なくとも15の連続する塩基を含むポリヌクレオチドを提供する。ここで「相補配列」とは、A:T、G:Cの塩基対からなる2本鎖DNAの一方の鎖の配列に対する他方の鎖の配列を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70% 、好ましくは少なくとも80% 、より好ましくは90% 、さらに好ましくは95% 以上の塩基配列の同一性を有すればよい。このようなDNAは、本発明のDNAの検出や単離を行なうためのプローブとして、また、増幅を行なうためのプライマーとして有用である。
さらに、本発明は、植物の感光性を判定する遺伝子診断方法を提供する。植物の感光性は植物の出穂期に密接に係わり、植物の感光性を判定することは栽培地域や栽培時期に適応したイネ品種育成において非常に重要なことである。
本発明において「植物の感光性を判定」とは、これまでに栽培されていた品種における感光性の判定のみならず、交配や遺伝子組換え技術による新しい品種における感光性の判定も含まれる。
本発明の植物の感光性を評価する方法は、植物が機能的なHd5タンパク質をコードするDNAを保持しているか否かを検出することを特徴とする。植物が機能的なHd5タンパク質をコードするDNAを保持しているか否かは、ゲノムDNAのHd5に相当する領域の分子量の違い、または塩基配列の違いを検出することにより評価することが可能である。
一つの態様としては、被検植物体および繁殖媒体におけるHd5遺伝子に相当するDNA領域と、感光性品種におけるHd5遺伝子のDNA領域の分子量を比較する方法である。「感光性品種」とは、日本の本州地域で栽培される品種「日本晴」や「コシヒカリ」等を含み、感光性を保持する品種のことを示す。
まず、被検植物体および繁殖媒体からDNA試料を調製する。次いで、該DNA試料からHd5遺伝子に相当するDNA領域を増幅する。さらに、感光性品種におけるHd5遺伝子のDNA領域を増幅したDNA断片と、該DNA試料から増幅したDNA断片の分子量を比較し、分子量が感光性品種よりも有意に低い場合に被検植物の感光性は低下していると診断する。
具体的には、まず、本発明のHd5遺伝子のDNA領域をPCR法等によって増幅する。本発明における「Hd5遺伝子のDNA領域」とは、Hd5遺伝子のゲノムDNA領域に相当する部分であり、増幅される範囲としてはゲノムDNA全長であってもよいし、ゲノムDNAの一部分であってもよい。好ましくは「はやまさり」に見出された欠失19bpを含む領域である。PCRは、当業者においては反応条件等を適宜選択して行うことができる。PCRの際に、32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識したプライマーを用いることにより、増幅DNA産物を標識することができる。あるいはPCR反応液に32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を加えてPCRを行うことにより、増幅DNA産物を標識することも可能である。さらに、PCR反応後にクレノウ酵素等を用いて、32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を、増幅DNA断片に付加することによっても標識を行うことができる。
こうして得られた標識されたDNA断片を、熱を加えること等により変性させ、尿素やSDSなどの変性剤を含むポリアクリルアミドゲルによって電気泳動を行う。変性剤としてSDSを利用したSDS-PAGEは、本発明において有利な分離手法であり、SDS-PAGEはLaemmliの方法(Laemmli (1970) Nature 227, 680-685)に準じて行うことができる。電気泳動後、DNA断片の移動度を、X線フィルムを用いたオートラジオグラフィーや、蛍光を検出するスキャナー等で検出し、解析を行う。標識したDNAを使わない場合においても、電気泳動後のゲルをエチジウムブロマイドや銀染色法などによって染色することによって、バンドを検出することができる。例えば、実施例7でも記載されているように本発明の配列番号:29および30に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして、感光性品種(日本晴、コシヒカリ)および被検植物からDNA断片を増幅し、分子量を比較することで感光性を判定することが出来る。この場合、感光性品種は300bpのDNA断片が増幅されるの対して、感光性が低下している品種は280bpのDNA断片が増幅される等、感光性品種より分子量の低下したDNA断片が増幅される。
また、本発明のDNAに相当する被検植物体のDNA領域の塩基配列を直接決定し、感光性品種の塩基配列と比較することにより、植物の感光性を判定することもできる。
例えば、上述した19bpの欠失のようにHd5の機能を喪失させる変異が被検植物のDNAに見出されれば、この被検植物は感光性が低下していると診断される。
本発明の方法による植物の感光性の評価は、例えば、植物の交配による品種改良を行なう場合において利点を有する。例えば、感光性の形質の導入を望まない場合に、感光性を有する品種との交配を避けることができ、逆に、感光性の形質の導入を望む場合に、感光性を有する品種との交配を行うことができる。また交雑後代個体から望ましい個体を選抜する際にも有効である。植物の感光性の有無を、その表現型により判断することに比して、遺伝子レベルで判断することは簡便で確実であるため、本発明の感光性の評価方法は、植物の品種改良において大きく貢献し得ると言える。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
量的形質遺伝子座(QTL)のHd5は第8染色体上に見い出され(図1)(Yano et al. TAG 95:1025-1032, 1997)、RFLPマーカーC166とR902の間に位置づけられ、R2976とは共分離することが判明していた(図3A)(Lin et al., Breeding Science 53:51-59, 2003)。しかしながらこの連鎖解析の精度では、マップベースクローニングによる遺伝子の単離・同定は困難であった。また出穂遅延作用をもつ「Kasalath」のHd5遺伝子は「日本晴」の対立遺伝子に対して優性に作用することが明らかとなっていた。「日本晴」の遺伝的背景に「Kasalath」のHd5遺伝子を置換した準同質遺伝子系統[NIL(Hd5)]と日本晴を異なる日長条件下で栽培し、それらの到穂日数を調査した。[NIL(Hd5)]は日本晴と比較して自然条件では14.2日、長日条件下で14.8日出穂が遅延したが、短日条件下では日本晴とほぼ同じであった(図2)。これらの結果から、Hd5遺伝子は出穂を遅延する機能を有し、その出穂遅延作用は長日条件下および自然条件下でのみ認められた(図2)。さらに、北海道に適応する栽培品種「はやまさり」と「Kasalath」の遺伝解析結果から、「はやまさり」の極早生性はHd5遺伝子の機能欠損あるいは著しい機能低下によって引き起こされている可能性が示唆されていた(野々上ら 育種学研究 第2巻(別1)p.13(2000) 第97回日本育種学会講演会講演要旨集、野々上ら 育種学研究 第5巻(別1)p.71(2003) 第103回日本育種学会講演会講演要旨集)。
[実施例2] 高精度連鎖解析
マップベースクローニングに不可欠な大規模分離集団によるHd5領域の詳細な連鎖解析を行った。連鎖解析用の集団は「日本晴」と「Kasalath」の戻し交雑後代世代を用いた。戻し交雑後代からHd5領域がヘテロ型となり、他のゲノム領域の大部分が「日本晴」に置換された個体を選抜した。選抜個体の自殖後代2308個体(F2集団相当)から、Hd5を挟み込むCAPS (Cleaved Amplified Polymorphic Sequence)マーカーS21656 ( プライマー5'- CTGGTGAAGGAGAGGTCGTC -3'/配列番号:10および5'- GGTGAAGCAGCAGCATCCAT -3'/配列番号:11、制限酵素KpnI)およびR902 ( プライマー5'- TCACGAAAGAACACATTAAACTTTATCC -3'/配列番号:12および5'- TTCCTTCAATTATGTAGATGCCATTC -3'/配列番号:13、制限酵素Eco81I)を利用して、Hd5近傍に生じた組み換え染色体をもつ個体を選抜した。Hd5遺伝子座の遺伝子型の決定は、F3世代の後代検定によって行った。すなわち選抜個体(F2)の各自殖後代24個体をつくば市の実験圃場において栽培し、各系統内の到穂日数の分離状況からHd5の遺伝子型を判定した。連鎖解析の結果、Hd5はRFLPマーカーEH560とR2976の間に位置づけられ、それぞれのマーカーと14個体および4個体の組み換え個体が同定できた(図3B)。
[実施例3] 人工的染色体(PACおよびBAC)クローンによるHd5遺伝子領域の整列化
Hd5遺伝子座を含むPACクローンP690F8(図3C)のゲノム塩基配列を解析した。得られた塩基配列情報を利用して、新規なCAPSマーカーおよびSNPマーカーを作出し、候補ゲノム領域をさらに限定した。その結果、Hd5遺伝子座はSNPマーカー14161(プライマー5'- TCATCCAGCGTGTCCTCATT -3'/ 配列番号:14および5'- TTTATGGGCTCTATGATTTG -3'/ 配列番号:15)および18485(プライマー5'- ATCAAGACAGGGGAAACCAG -3' /配列番号16:および5'- CGAGCACAACAGAGGAAATG -3'/ 配列番号:17)とそれぞれ1個の組み換えが検出され、CAPSマーカー106Ga(プライマー5'- CACTTGGAGACCTTGGATGG -3'/ 配列番号:18および5'- CCACCTTTCCCTCATTGTCG -3'/ 配列番号:19、制限酵素NlaIII)、SNPマーカー18169(プライマーはSNPマーカー18485と同じ)とは共分離した(図3D)。したがってHd5の候補領域はSNPマーカー14161と18485に挟み込まれる約4.3kbであることが明らかとなった。この候補領域の塩基配列に対してGENSCAN(http://genes.mit.edu/GENSCAN.html)による遺伝子予測ならびに類似性検索を行ったところ、1個の遺伝子が予測され、既知のCCAAT-box結合転写因子NF-Y蛋白のサブユニットB遺伝子(NF-YB遺伝子)と高い類似性を示した(図3E)。この予測遺伝子をHd5の候補として以降の解析を行った。
[実施例4] Hd5遺伝子の塩基配列解析による候補遺伝子領域の特定
イネ品種「Kasalath」、「日本晴」および「はやまさり」について、Hd5 領域約4.3kbのゲノム塩基配列を解析した。この領域には、「Kasalath」と比較して「日本晴」では46箇所、「はやまさり」では47箇所の塩基置換および挿入・欠失が見い出された(図4)。また、「Kasalath」のcDNAの全長を決定し、ゲノム塩基配列と比較したところ、Hd5 は1個のエクソンからなり、転写領域の全長は1060bp、298アミノ酸からなるタンパク質をコードしていることが予測された(図4)。予測転写領域内の塩基配列の違いを「Kasalath」と比較すると、「日本晴」では10個の1塩基置換、「はやまさり」では「日本晴」の10個の1塩基置換に加えて19bpの欠失が見い出された。また、アミノ酸配列の違いを「Kasalath」と比較すると、「日本晴」では8個のアミノ酸が置換されていた。また、「はやまさり」に見いだされた19bpの欠失は、フレームシフトを引き起こし、その結果62番目のアミノ酸部位に停止コドンを生じさせることが明らかとなった(図5)。このことから、この19bpの欠失によって、「はやまさり」のHd5遺伝子は機能が消失していると推定された。
[実施例5] Hd5候補遺伝子の機能証明
形質転換には、機能のあるHd5対立遺伝子を持っていると推定されるインド型品種「Kasalath」由来のゲノムDNA断片を用いた。すなわち、「Kasalath」のゲノムDNAから作成されたBACライブラリー(Baba et al., Bulletin of the NIAR 14: 41-49, 2000)に対して、Hd5近傍の塩基配列を増幅するプライマー対P690F8T(5'- ACTTCTCAGCGTCTTGTTCC -3'/ 配列番号:20および5'- GATTTACCTCGTCATTGCCA -3'/ 配列番号:21)およびP700F2S(5'- AGGTCAGAGGAACATCATTG -3'/ 配列番号:22および5'- GGTTTGGAAGGTGGTATTGT -3'/ 配列番号:23)によるスクリーニングを行い、Hd5候補遺伝子をカバーするBACクローンB179C8およびB196F2を選抜した(図3C)。その後の詳細な連鎖解析によりHd5候補遺伝子を含むことが判明したBACクローンB179C8より候補遺伝子領域を含む HindIII-EagI 4.2kb断片(図3E)を切り出し、Ti-プラスミドベクターpPZP2H-lac(Fuse et al. Plant Biotechnology 18: 219-222, 2001)に組み込み、アグロバクテリウムを介して「日本晴」に導入した。再分化植物体は速やかに長日条件(14.5時間明)のグロースチャンバーに移して育成し、出穂までの所要日数を調査した。形質転換当代(T0)では、HindIII-EagI 4.2kb断片を導入した個体(1〜7コピー導入、19個体)のほとんどがベクターのみ(1〜3コピー導入、7個体)よりも遅く出穂した(図6A)。これより、HindIII-EagI 4.2kb断片が長日条件下で出穂を著しく遅延させるHd5遺伝子の作用を持つことが示唆された。さらに、導入遺伝子の出穂遅延作用を確認するために、出穂が遅延した形質転換当代のなかから1コピー導入された個体を選抜し、その自殖後代を長日(14.5時間)条件で栽培して、到穂日数を調査した。ベクターのみを持つ個体が93〜108日で出穂し、「日本晴」とほぼ同じであったのに対し、HindIII-EagI 4.2kb断片を持つ個体は125〜175日と晩生で、それらの到穂日数は準同質遺伝子系統[NIL(Hd5)]とほぼ同じであった(図6B)。
HindIII-EagI 4.2kb断片を導入した個体については、「Kasalath」由来のNF-YB様候補遺伝子の発現を遺伝子特異的マーカー(プライマー5'- TCACATGAAGAGTAGGAAGAGCT -3'/ 配列番号:24および5'- TGATGAACTCCGACACGCAC -3'/ 配列番号:25、制限酵素TaqI)を用いてRT-PCRによって確認した。その結果、すべての個体において「Kasalath」由来のNF-YB様候補遺伝子の転写が認められた(図7)。
NF-YB様遺伝子の「はやまさり」への形質転換実験を行った。形質転換当代(T0)では、HindIII-EagI 4.2kb断片を導入した個体(25個体)の再分化後の到穂日数は49〜74日で、通常「はやまさり」が播種後50日前後で出穂するのと比較して出穂が遅くなっていると考えられた。2種類の晩生個体の自殖後代(T1)を、同じく長日条件で栽培したところ、後代集団において、それぞれ早生個体(50〜55日)と晩生個体(60〜74日)とが分離した(図8)。晩生個体はすべて導入した「Kasalath」由来のNF-YB様遺伝子を保持していた。一方、「はやまさり」の到穂日数は早生個体と同様に52日程度であった(図8)。
以上の結果からNF-YB様遺伝子が長日条件で出穂を遅延させる機能を有し、Hd5であることが立証された。
[実施例6] Hd5遺伝子の発現解析
Hd5遺伝子の1日の発現量の変化を調べた。長日条件(14時間明)および短日条件(9時間明)の人工気象室内で播種から1ヵ月間育成した日本晴の葉を3時間毎に採取した。これらの材料より全RNAを抽出し、Hd5遺伝子について定量RT-PCR解析を行なった(プライマー5'-GATGCCCTCGAACTCCATCA-3'/配列番号:26および5'-ACGGCGTTCTACGCGC-3'/配列番号:27、プローブ 5'-CCGCAGTACGCCTTGTTCCCTGA-3'/配列番号:28)。その結果、Hd5遺伝子のmRNAの蓄積量は明期の間は上昇し、暗期になると下降してきて朝には最低レベルになることが判明した(図9)。また、Hd5遺伝子の出穂遅延作用が明瞭な長日条件において短日条件よりもmRNAが多く蓄積されていることが明らかとなった(図9)。感光性に関与する遺伝子の一部は、それらの発現が日周変動を示すことが明らかにされている(Kojima et al., Plant Cell Physiol. 43:1096-1105, 2002)。これらの結果から、日周変動でもたらされる発現量比の変化が感光性の発現において重要な役割を果たしていることが推定され、Hd5遺伝子発現の日周変動も、感光性遺伝子群の相互作用の一端を担うものと考えられる。
[実施例7] Hd5遺伝子の機能診断
Hd5遺伝子の機能診断が可能であるかどうかと明らかにするために、「はやまさり」に見いだされたHd5遺伝子内の欠失19bpを含むゲノム断片を増幅できるプライマー対(5'-TCACATGAAGAGTAGGAAGAGCT-3'/配列番号:29 および 5'-TGATGAACTCCGACACGCAC-3'/配列番号:30)を用いて、日本で栽培される品種あるいはこれまで栽培されてきた品種7品種の各品種ゲノムDNAをテンプレートとしてPCRによる増幅を行った(図10)。本州地域で栽培される品種「日本晴」、「ササニシキ」および「コシヒカリ」では300bpのゲノム断片が増幅されるの対して、北海道に適応した品種「はやまさり」、「早生富国」および「農林20号」では280bpのゲノム断片が、「ほしのゆめ」では300bpのゲノム断片が増幅された(図10)。「ほしのゆめ」と「はやまさり」の遺伝解析の結果から、「ほしのゆめ」は機能を有するHd5遺伝子をもち、これが「ほしのゆめ」が「はやまさり」より10日程度晩生の原因となることが明らかにされている(野々上ら 育種学研究 第5巻(別1)p.71(2003) 第103回日本育種学会講演会講演要旨集)。これらの結果は、北海道地域で栽培される極早生品種には、Hd5遺伝子の機能を持つ品種と機能が欠損する品種が存在し、今回用いたプライマー対はHd5遺伝子の機能の有無の診断に利用できることを示している。
Hd5遺伝子のイネ染色体上の位置を示す図である。 「Kasalath」のHd5遺伝子の準同質遺伝子系統[NIL(Hd5)]とその繰り返し親(日本晴)の短日、長日および自然条件下での到穂日数を示す図である。自然条件は農業生物資源研究所(茨城県つくば市)の圃場で栽培し、短日および長日条件は農業生物資源研究所のグロースチャンバー(光量子500マイクロモル、昼夜温度はそれぞれ28℃(7:00〜19:00)および24℃(19:00〜7:00)内で移植を行わずに栽培した。 Hd5領域の高精度連鎖地図および候補ゲノム領域を示す図である。Linら(Breeding Science 53:51-59, 2003)の連鎖地図2308個体の分離集団とRFLPマーカーを用いて作成した連鎖地図。地図上の記号はRFLPマーカー、地図下の数値は各マーカー間で検出された組み換え数を示す。ゲノムクローンの整列および連鎖地図。PナンバーはPACクローン(日本晴)、BナンバーはBACクローン(Kasalath)を示す。塩基配列情報に基づき作成したCAPSマーカーによる詳細な連鎖地図。↓は組み換えが起こった位置を示す。 Hd5遺伝子の構造および遺伝子候補領域の塩基配列多型を示す図である。 Hd5タンパク質のアミノ酸配列の比較を示す図である。はやまさりのフレームシフトの位置を矢印で示した。 「Kasalath」のHindIII-EagI 4.2kb断片を「日本晴」に導入した形質転換植物の長日条件(14.5時間日長)での到穂日数の頻度分布を示す図である。Aは形質転換当代(長日条件、「日本晴」に導入:T0)、Bは形質転換後代(長日条件、「日本晴」に導入、1コピー:T1)の結果を示す。 「日本晴」に「Kasalath」のHindIII-EagI 4.2kb断片を導入した形質転換後代個体(T1)における「Kasalath」 NF-YB様遺伝子の発現解析を示す写真である。形質転換後代個体(導入遺伝子を持つHindIII-EagI 4.2kbおよびベクターのみを導入したvector)の全RNAよりcDNAを合成しRT-PCRの鋳型として用いた。得られた増幅産物をTaqIで消化後、電気泳動を行った。300bpは「Kasalath」由来の増幅産物、260bpは「日本晴」由来の増幅産物を示す。180bpはコントロール反応のユビキチンの増幅産物。 「Kasalath」のHindIII-EagI 4.2kb断片を「はやまさり」に導入した形質転換後代(T1)の長日条件(14.5時間日長)での到穂日数の頻度分布を示す図である。Aは形質転換後代(長日条件、「はやまさり」に導入1、2コピー:T1)、Bは形質転換後代(長日条件、「はやまさり」に導入1、2コピー:T1)の結果を示す。 Hd5mRNAの蓄積量の日変化を示す図である。長日条件(7時から22時、14時間明)および短日条件(7時〜16時、9時間明)で1ヵ月育成した「日本晴」の葉を3時間毎に採取し、定量RT-PCRを行った結果を示す図である。各2検体について3回づつPCRを行い、計6回の平均値をグラフ化した。標準偏差をエラーバーで示した。 Hd5特異的マーカーによるHd5機能欠損型品種の識別を示す図である。Hd5特異的プライマー対を用いて各品種ゲノムDNAをテンプレートとしてPCR増幅し、3%アガロースゲルで電気泳動を行った。

Claims (18)

  1. 植物の感光性を増加させる機能を有する植物由来のタンパク質をコードする、下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。
    (a)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
    (b)配列番号:1,2,4または5のいずれかに記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
    (c)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
    (d)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
  2. イネ由来である、請求項1に記載のDNA。
  3. その転写産物が、請求項1または2に記載のDNAの転写産物と相補的である、DNA。
  4. 請求項1からのいずれかに記載のDNAを含むベクター。
  5. 請求項に記載のベクターが導入された宿主細胞。
  6. 請求項に記載のベクターが導入された植物細胞。
  7. 請求項に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。
  8. 請求項に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
  9. 請求項またはに記載の形質転換植物体の種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルスまたはプロトプラスト
  10. 請求項1からのいずれかに記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法。
  11. 請求項1または2に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
  12. 請求項に記載の宿主細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から組換えタンパク質を回収する工程を含む、請求項11に記載のタンパク質の製造方法。
  13. 請求項11に記載のタンパク質に結合する抗体。
  14. 配列番号:1,2,4または5のいずれかに記載の塩基配列またはその相補配列に相補的な少なくとも15の連続する塩基を含む、請求項1または2記載のDNAを検出または増幅するためのプローブまたはプライマー
  15. 請求項1または2に記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、イネの感光性を増加させる方法。
  16. 請求項に記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、イネの感光性を低下させる方法。
  17. 請求項1からのいずれかに記載のDNA、もしくは請求項に記載のベクターを有効成分とする、イネの感光性を改変する薬剤。
  18. 以下の(a)〜(c)の工程を含む、イネの感光性を判定する検査方法。
    (a)被検植物体および繁殖媒体からDNA試料を調製する工程。
    (b)該DNA試料から請求項1に記載のDNA領域を増幅する工程。
    (c)植物の品種・系統から請求項1に記載のDNA領域を増幅したDNA断片と、該DNA試料から増幅したDNA断片の分子量または塩基配列を比較する工程。
JP2003349338A 2003-10-08 2003-10-08 植物の感光性遺伝子Hd5およびその利用 Expired - Fee Related JP4404341B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003349338A JP4404341B2 (ja) 2003-10-08 2003-10-08 植物の感光性遺伝子Hd5およびその利用

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003349338A JP4404341B2 (ja) 2003-10-08 2003-10-08 植物の感光性遺伝子Hd5およびその利用

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005110579A JP2005110579A (ja) 2005-04-28
JP4404341B2 true JP4404341B2 (ja) 2010-01-27

Family

ID=34541232

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003349338A Expired - Fee Related JP4404341B2 (ja) 2003-10-08 2003-10-08 植物の感光性遺伝子Hd5およびその利用

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4404341B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5278658B2 (ja) * 2008-03-12 2013-09-04 独立行政法人農業生物資源研究所 イネの感光性遺伝子Ehd3とその利用
JP2010233509A (ja) * 2009-03-31 2010-10-21 National Institute Of Agrobiological Sciences 青色ledを利用した、イネを短期間で低コストに育成収穫する方法、及びこの方法に適した系統の選抜
AU2010336253B2 (en) 2009-12-24 2014-09-18 National Institute Of Agrobiological Sciences Gene Dro1 controlling deep-rooted characteristics of plant and utilization of same

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005110579A (ja) 2005-04-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4462566B2 (ja) 穀物の収量を増加させる遺伝子、並びにその利用
WO2002042475A1 (fr) Gene hd3a induisant la floraison d'une plante et utilisation associee
JP3660967B2 (ja) 植物の感光性遺伝子Hd1およびその利用
WO2007000880A1 (ja) イネいもち病罹病性遺伝子Pi21および抵抗性遺伝子pi21ならびにそれらの利用
JP3979431B2 (ja) 植物の再分化能を付与する遺伝子、並びにその利用
JP4877726B2 (ja) オオムギ条性遺伝子とその利用
JP4404341B2 (ja) 植物の感光性遺伝子Hd5およびその利用
JP3660966B2 (ja) 植物の感光性遺伝子およびその利用
JP3911202B2 (ja) 植物の開花時期を促進するEhd1遺伝子およびその利用
JP5534137B2 (ja) 植物の生長を制御する遺伝子Hd16およびその利用
JP5177807B2 (ja) 植物の種子休眠を制御するSdr4遺伝子およびその利用
JP3823137B2 (ja) 植物の開花促進遺伝子rft1および植物の開花時期を予測する方法
JP2005278636A (ja) 植物の半矮性化に関与するブラシノステロイド生合成遺伝子d11、並びにその利用
JP5278658B2 (ja) イネの感光性遺伝子Ehd3とその利用
JP2012139242A (ja) 植物の種子休眠を制御するSdr4遺伝子およびその利用
JP4997508B2 (ja) イネの粒長を制御するLk3遺伝子およびその利用
WO2004081210A1 (ja) 植物の開花を制御する遺伝子Lhd4とその利用

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060531

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20071011

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090806

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091002

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091029

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091030

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121113

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees