JP3753814B2 - 医療用粘着テープまたはシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、主に救急絆創膏として用いられる医療用粘着テープまたはシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、粘着医療用材としては種々のタイプのものが実用に供されている。例えば、不織布、織布、ポリプロピレン系,ポリエチレン系,ポリウレタン系,EVA系,ポリ塩化ビニルなどのフィルムを基材として、その片面に粘着剤、他面にこの粘着剤と接着しない剥離層が設けられたテープ状のもの、あるいは粘着面上に離型紙などを貼り合わせたシート状のものが使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来救急絆創膏として多用されているポリ塩化ビニルを基材とする粘着テープ又はシートは、その廃棄物の焼却時に塩素ガス、塩化水素ガスやダイオキシンが発生する。この問題に対応するため、焼却炉で発生する塩化水素ガスの回収技術が開発されているが、完全回収は難しい。また近年、医療用品の滅菌手段としてはエチレンオキサイドガスによる滅菌に替わって放射線照射による滅菌が効果的とされているが、ポリ塩化ビニルを基材とする医療用粘着テープまたはシートの場合、特にガンマー線照射に対してフィルムに変色がおこるなど安定性に欠ける性質があるため、滅菌時において、エチレンオキサイドガスによる滅菌に頼らざるを得ないという欠点がある。
【0004】
そこで、ポリ塩化ビニルを用いない救急絆創膏の開発も試みられている。しかし、不織布、織布を用いて救急絆創膏にすると、廃棄物に関する問題はクリアされるが伸縮性、防水性、強度に問題が生じる。また、必ずしも放射線照射に対する安定性が改善されるとは限らず、滅菌が必要な場合にはポリ塩化ビニルを基材とする医療用粘着テープまたはシートと同様の問題が生じる。また、織布は高価であり、ディスポーサブルの救急絆創膏基材としてあまり適当であるとは言えない。一方、ポリウレタン,EVA,ポリプロピレンを基材とする粘着テープ又はシートは経済性や加工性の面、もしくは使用感に難があり汎用化するには至っていない。
【0005】
また、超低密度ポリエチレン樹脂を基材とする医療用粘着テープまたはシートがあるが、弾性と伸縮性に欠けるため、関節等への追従性が好ましくなく、貼付後にシワや浮きが生じ、そこから水や雑菌が浸入したり、剥がれやすくなるなどの不具合がある。また、ポリエチレン樹脂が結晶性のため、延伸配向があり、収縮が大きいという問題もある。
【0006】
この点を解決するためにブタジエンゴムを少量ブレンドしたポリエチレンフィルムを基材として用いた医療用フィルムがあるが、このフィルムは柔軟性(弾性及び伸縮性)は改善できるもののポリエチレンの分子配向によって生じる延伸配向性が解決できないため、収縮性が大きく、離型紙を剥離するときに、エッジ部が巻きあがる極端なカール現象がおきる性質がある。また、離型材としてクラフト紙,グラシン紙等の紙を使用する場合、剥離時の伸長が全くないため剥離時において基材フィルムが必要以上に伸ばされ、糊面と背面との間に伸びずれを生じカールの原因となるなど、これまでこのタイプの粘着テープまたはシートが実用化されなかったのは、このカール現象を克服することができなかったためである。
【0007】
この発明はかかる従来の問題点を解消するためになされたもので、離型フィルム剥離時の基材フィルムの伸長を緩和してカール現象を完全に防止し、合わせて放射線照射特にガンマー線照射による滅菌が可能な医療用粘着テープまたはシートを得ることを目的としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、この発明に係る医療用粘着テープまたはシートは、片面に粘着剤を塗工もしくは転写した厚さ70μm以下の、スチレン系熱可塑性ゴム、ジエン系熱可塑性ゴムの一種または二種以上のポリマー90〜50部とポリエチレン樹脂10〜50部とをブレンドしてなる基材フィルムの粘着面に、プラスチック離型フィルムを貼り合わせてなる粘着テープまたはシートであって、粘着面からの離型フィルムの剥離に際して離型フィルムの剥離荷重伸長率が略0.3〜2.5%でかつ基材フィルムの剥離荷重伸長率の0.3〜0.6倍となるように形成した粘着テープまたはシートであることを特徴とする医療用粘着テープまたはシートである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態を図面に基づいてさらに詳述する。即ち、図1はこの発明の医療用粘着テープまたはシートを絆創膏として用いた場合の一実施の形態を示す断面図であり、図において1は基材フィルム、2は粘着剤層、3はプラスチック離型フィルム、4はガーゼである。
【0010】
ここにおいて、この発明で使用する基材フィルム1は、スチレン系熱可塑性ゴム、ジエン系熱可塑性ゴムの1種又は2種以上とポリエチレン樹脂とを主ポリマーとするが、このうちスチレン系熱可塑性ゴムとしては、SBS,SIS,SEBS,SIBS等がまたジエン系熱可塑性ゴムとしては1、2ポリブタジエン,トランス1、4ポリイソプレン,天然ゴム/ポリオレフィン共重合体(又はブレンド)ゴム等が用いられる。なお、これらのゴム群からは、通常非熱可塑性ゴムして取り扱われるジエン系ゴム、即ち天然ゴム,イソプレンゴム,スチレン・ブタジエンゴム,ブタジエンゴム,クロロプレンゴム,アクリロニトリルブタジエンゴム等は除かれる。
【0011】
さらにポリエチレン樹脂としては、JISK6748に示される密度0.910〜0.929の低密度ポリエチレン樹脂が用いられるが、この低密度ポリエチレン樹脂は一般には高圧法によって合成されるもので、その分子形状は短鎖分岐のほかに長鎖分岐を多く含んだものあるいは直鎖状となっているもののいずれでもよい。
【0012】
一方、この発明の基材フィルム1の好適例としては、1、2ポリブタジエン熱可塑性ゴム90部〜50部に低密度ポリエチレン樹脂10部〜50部をポリマーブレンドして得たフィルムがあげられる。このような基材フィルム1は延伸配向性がなく、しかもある程度の剛性を有するため、しわやカールが少なく例えば絆創膏等の用途の基材として最適である。なお、ポリエチレン樹脂を50部以上使用する場合はフィルムに延伸配向性が出てくるので好ましくなく、10部以下の使用では、フィルムに剛性を与えることができないので好ましくない。
【0013】
次に、基材フィルム1の片面に粘着剤層2を形成するための粘着剤としては、通常の医療用グレードとして用いられるものであればいずれを用いてもよく、例えばアクリル系粘着剤,ポリウレタン系粘着剤,天然ゴム又は合成ゴム系粘着剤,医用高分子を主成分とする溶剤系,水系,ホットメルト系,ドライブレンド系の粘着剤があげられる。ただし放射線滅菌特に強度のガンマー線照射滅菌が必要な場合にはアクリル系粘着剤やポリウレタン系粘着剤の使用は避けた方が望ましい。これらは放射線照射による粘着力の低下を招くおそれがあるからである。
【0014】
さらに、この発明において用いられるプラスチック離型フィルム3としては、シリコーン等の離型層または表面シボを有するポリエステルフィルム,ポリスチレンフィルム,ポリエチレンフィルム,ポリプロピレンフィルムなどがあげられる。ただし、放射線滅菌特に強度のガンマー線照射滅菌が必要な場合にはシリコーン離型層をもつものやポリエステルフィルムは避けた方が望ましい。なぜなら、シリコーン離型層やポリエステルフィルムは強度の放射線照射によって脆化を招くおそれがあるからである。
【0015】
ここにおいて、プラスチック離型フィルム3は、剥離荷重率が略0.3〜2.5%でかつ基材フィルム1剥離荷重伸長率の略0.3〜0.6倍の伸長率を持つものを用いる。即ち、剥離荷重伸長率が0.3%以下で、基材フィルム1の剥離荷重伸長率に対しプラスチック離型フィルム3の剥離荷重伸長率0.3倍以下の場合、絆創膏形状においては、基材フィルム1に対するプラスチック離型フィルム3の剛性が高くなりすぎるため、剥離に際してプラスチック離型フィルム3はほとんど伸びず、基材フィルム1のみを必要以上にかつ不規則な力で伸ばしてしまう結果基材フィルム1の糊面と背面に伸びずれを起こし、基材フィルム1がカールしてしまい、皮膚粘着などその後の取扱いが甚だ困難となる。一方、剥離荷重伸長率が略0.3〜2.5%でかつ基材フィルム1に対して0.3〜0.6倍の剥離荷重伸長率をもつプラスチック離型フィルム3を使用した場合には、剥離に際してプラスチック離型フイルム3の方も伸ばされるため、剥離力が基材フィルム1とプラスチック離型フィルム3に分散されて基材フィルム1を必要以上に伸ばさない結果、基材フィルム1の引き延ばしによるカール現象が起こらず良好に使用することが可能である。
【0016】
さらに、剥離荷重伸長率が2.5%以上でかつ基材フィルム1の剥離荷重伸長率に対し、0.6倍以上の伸長率を持つプラスチック離型フィルム3は腰が弱く、基材フィルム1をまっすぐに保持できず、折れ曲がったりするので不適である。また剥離に際しても、プラスチック離型フィルム3が伸びすぎる結果、かえってうまく剥離できず、基材フィルム1をも伸ばしてしまうので好ましくない。
【0017】
【実施例】
以下、この発明の実施例について述べる。
実施例 1
日本合成ゴム株式会社製JSR RB830 80部と三井石油化学工業株式会社製ポリエチレン樹脂Ic−1−E−Zar 20部とをポリマーブレンドしてフィルム状に加工し基材フィルムとした。なお、得られたフィルム厚さは70μmであった。
次に、この基材フィルムの片面上にゴム系粘着剤を塗工し、この粘着面上にシリコーン離型層を有するポリプロピレンフィルム(100μm)を貼り付けた後、材型加工し長さ7.5cm、幅2.0cmの絆創膏状の粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0018】
実施例 2
上記実施例1と同様にして基材フィルムを作製し(フィルム厚70μm)、ゴム系粘着剤を転写した。
次に、この粘着面上に表面シボを有するポリエチレンフィルム(100μm)を貼り付けた後、材型加工し、長さ7.5cm、幅2.0cmの絆創膏状の粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0019】
実施例 3
上記実施例1と同様にして基材フィルムを作製し(フィルム厚70μm)、フィルムの片面にアクリル系粘着剤を塗工した。
次に、この粘着面上にシリコーン離型層を有するポリプロピレンフィルム(100μm)を貼り付けた後、材型加工し、長さ7.5cm、幅2.0cmの絆創膏状の粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0020】
実施例 4
上記実施例1と同様にして基材フィルムを作製し(フィルム厚70μm)、フィルムの片面にアクリル系粘着剤を塗工した。
次に、この粘着面上にシリコーン離型層を有するポリエチレンフィルム(100μm)を貼り付けた後、材型加工し、長さ7.5cm、幅2.0cmの絆創膏状の粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0021】
比較例 1
上記実施例1と同様にして基材フィルムを作製し(フィルム厚70μm)、フィルムの片面にアクリル系粘着剤を塗工した。
次に、この粘着面上にシリコーン離型層を有するポリプロピレンフィルム(500μm)を貼り付けた後、材型加工し、長さ7.5cm、幅2.0cmの絆創膏状の粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0022】
比較例 2
上記実施例1と同様にして基材フィルムを作製し(フィルム厚70μm)、フィルムの片面にゴム系粘着剤を塗工した。
次に、この粘着面上にシリコーン離型層を有するグラシン紙(目付量65g/m2)を貼り付けた後、材型加工し、長さ7.5cm、幅2.0cmの絆創膏状の粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0023】
比較例 3
上記実施例1と同様にして基材フィルムを作製し(フィルム厚70μm)、フィルムの片面にゴム系粘着剤を塗工した。
次に、この粘着面上にポリエチレンラミネート層上にシリコーン離型層を有するクラフト紙(目付量80g/m2)を貼り付けた後、材型加工し、長さ7.5cm、幅2.0cmの絆創膏状の粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0024】
比較例 4
上記実施例1と同様にして基材フィルムを作製し(フィルム厚70μm)、フィルムの片面にゴム系粘着剤を塗工した。
次に、この粘着面上にシリコーン離型層を有するポリエチレンフィルム(フィルム厚70μm)を貼り付けた後、材型加工し、長さ7.5cm、幅2.0cmの絆創膏状の粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1に示すとおり、この発明の粘着テープまたはシートは、基材フィルムに対して良好な保持性と離型フイルム剥離時のカールを引き起こすことがなかった。また、ガンマー線照射による滅菌後もフィルムの変色等の変化は全く認めなかった。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば離型紙の剥離時の張力による基材フィルムのカールがない他、形状保持性に優れると共に、滅菌効果が極めて高く、効果的とされている放射線照射特にガンマー線照射による滅菌時にも変色等を起こさずに安定性を保ち、好適に使用することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の医療用粘着テープまたはシートを絆創膏として用いた場合の一実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基材フィルム
2 粘着剤層
3 プラスチック離型フィルム
4 ガーゼ
Claims (3)
- 片面に粘着剤を塗工もしくは転写した厚さ70μm以下の、スチレン系熱可塑性ゴム、ジエン系熱可塑性ゴムの一種または二種以上のポリマー90〜50部とポリエチレン樹脂10〜50部とをブレンドしてなる基材フィルムの粘着面に、プラスチック離型フィルムを貼り合わせてなる粘着テープまたはシートであって、粘着面からの離型フィルムの剥離に際して離型フィルムの剥離荷重伸長率が略0.3〜2.5%でかつ基材フィルムの剥離荷重伸長率の0.3〜0.6倍となるように形成した粘着テープまたはシートであることを特徴とする医療用粘着テープまたはシート。
- 前記ポリマーが1、2ポリブタジエン熱可塑性ゴムであり、前記ポリエチレン樹脂が低密度ポリエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1記載の医療用粘着テープまたはシート。
- 放射線照射特にガンマー線照射による滅菌に耐える粘着テープまたはシートであることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用粘着テープまたはシート。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30096896A JP3753814B2 (ja) | 1996-10-25 | 1996-10-25 | 医療用粘着テープまたはシート |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP30096896A JP3753814B2 (ja) | 1996-10-25 | 1996-10-25 | 医療用粘着テープまたはシート |
Publications (2)
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JPH10127749A JPH10127749A (ja) | 1998-05-19 |
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Family
ID=17891251
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP30096896A Expired - Lifetime JP3753814B2 (ja) | 1996-10-25 | 1996-10-25 | 医療用粘着テープまたはシート |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3753814B2 (ja) |
-
1996
- 1996-10-25 JP JP30096896A patent/JP3753814B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH10127749A (ja) | 1998-05-19 |
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