JP3753653B2 - クランクシャフトの支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関のクランクシャフトの支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のクランクシャフトの支持構造には、例えば、特開2000−345854号公報「クランクシャフトの支持構造」に示されたものがある。このクランクシャフトの支持構造は、同公報の図5によれば、クランクシャフト31(符号は同公報に記載されたものを使用する。)にベアリング84の内輪を相対移動不能に取付け、クランクケース29にベアリング84の外輪を相対移動不能に取付けたもので、クランクシャフト31の軸線に沿う方向でのベアリング84のがたつき量を管理し、ベアリング84の耐久性を向上させることができるとともに、クランクケース29への振動騒音伝達のばらつきを抑えて騒音防止を図ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報のクランクシャフトの支持構造では、エンジンの温度の上昇に伴いクランクケース29の温度が上昇すると、クランクケース29とベアリング84との間の締付力が減少する。クランクケース29の材質とベアリング84の材質とは異なり、環境や高速走行などクランクケース29の温度が高温になりやすい条件が作用した場合には、お互いの膨張差が顕著になり、ベアリング84を固定する締付力は減少し、エンジン音が大きくなり、静粛性が低下する。
【0004】
また、クランクケース29では、肉厚の違いや熱源からの距離の違いなどの条件によってベアリング84を支持する支持孔91の温度にばらつきが生じ、支持孔91は不均一に熱膨張し、いびつに広がる。つまり、支持孔91は熱膨張で楕円状になり、真円度が低下する。そのため、ベアリング84の外輪の真円度も低下し、ベアリング84の耐久性を低下させる場合があるとともに、静粛性を低下させる場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ベアリングの耐久性を向上させ、エンジンの静粛性を向上させるクランクシャフトの支持構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1では、クランクシャフトの軸部にボールベアリングを嵌め、このボールベアリングを鉄製のブッシュを介してアルミニウム合金製のクランクケースに取付けるクランクシャフトの支持構造において、ブッシュは、クランクケースに一体的に鋳包んだ外側ブッシュと、この外側ブッシュに圧入した内側ブッシュとの2部材からなることを特徴とする。
【0007】
ブッシュは、鋳包んだ外側ブッシュと、この外側ブッシュに圧入した内側ブッシュとの2部材からなるので、外側ブッシュがクランクケースの熱膨張に伴い一体的に熱膨張し拡径しても、内側ブッシュは外側ブッシュに引張られることはなく、所望の締付力を確保する。従って、エンジンの静粛性が向上する。
【0008】
また、ブッシュは、鋳包んだ外側ブッシュと、この外側ブッシュに圧入した内側ブッシュとの2部材からなるので、クランクケースの温度のばらつきによる不均一な熱膨張で外側ブッシュの真円度が低下しても、内側ブッシュは外側ブッシュに引張られることはなく、所望の真円度を確保する。その結果、ベアリングの真円度を確保することができ、ベアリングの耐久性は向上する。
【0009】
請求項2では、外側ブッシュは、クランクケースに一体的に鋳包んだ鋳鉄ブッシュであり、内側ブッシュは、鋼製ブッシュであることを特徴とする。
ブッシュは、外側ブッシュと、この外側ブッシュに圧入する内側ブッシュとの2部材からなる。外側ブッシュは、クランクケースに一体的に鋳包んだもので、クランクケースの熱膨張に伴い一体的に熱膨張し拡径する。一方、内側ブッシュは、外側ブッシュに圧入した雄部材であるから、外側ブッシュに引張られることはなく、ボールベアリングを所望の力で保持する。
【0010】
ただし、外側ブッシュと内側ブッシュとの間のしめ代が過度に減少することは避けなければならない。
そこで、線膨張係数の大きなアルミニウム合金製クランクケースに対して、外側ブッシュを小さな線膨張係数の鋳鉄とした。これにより、外側ブッシュの拡径を極力抑えることができる。さらに、内側ブッシュをアルミニウム合金と鋳鉄の中間の線膨張係数を有する鋼とした。鋼は鋳鉄より線膨張係数が大きいので外側ブッシュに向って拡径する。この結果、外側ブッシュがアルミニウム合金製クランクケースに引張られて拡径するものの、内側ブッシュが追従して拡径するため、外・内側ブッシュ間のしめ代の減少を抑えることができる。
【0011】
請求項3では、内側ブッシュとボールベアリングのしめ代をaとし、内側ブッシュと外側ブッシュのしめ代をbとしたときに、しめ代bは、しめ代aより大きく設定したことを特徴とする。
【0012】
熱膨張による外側ブッシュの内径の拡径の値をしめ代bで吸収することができ、熱膨張で寸法が変化しても外側ブッシュと内側ブッシュとの間では締結力を確保するとともに、内側ブッシュとボールベアリングとの間でも締結力を確保する。
【0013】
請求項4では、内側ブッシュとボールベアリングのしめ代をaとし、内側ブッシュと外側ブッシュのしめ代をbとしたときに、しめ代bは、2×a<b<4×aの範囲内に設定したことを特徴とする。
【0014】
しめ代bが2×a未満では、しめ代が小さく、熱で外側ブッシュが膨張すると、外側ブッシュと内側ブッシュとの間に隙間が生じる心配がある。
しめ代bが4×aを超えると、しめ代が大きく、低温〜中温時、内側ブッシュを介してボールベアリングの外輪を強く締付けるこになり、回転の際の摩擦抵抗が増加する。
つまり、高温時の隙間防止の点から下限を2×aとし、低温〜中温時の回転の摩擦抵抗の増加を防止する点から上限を4×aとした。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。「左」「右」は運転者から見た方向、「前」は前進側、「後」はその逆側をいう。
【0016】
図1は本発明に係るクランクシャフトの支持構造を採用した自動二輪車の側面図であり、自動二輪車10は、車体フレーム11と、車体フレーム11のヘッドパイプ12に取付けたフロントフォーク13と、フロントフォーク13の下方に取付けた前輪14と、上方に取付けたハンドル15と、車体フレーム11の上部前側に配設した燃料タンク16と、車体フレーム11の上部中央に取付けたシート17と、車体フレーム11の中央に配設したエンジン21と、エンジン21に接続した排気管22、車体フレーム11の下部に取付けたスイングアーム23と、スイングアーム23の後端部を車体フレーム11に懸架したリヤサスペンション24と、スイングアーム23に取付けた後輪25と、を備える。
【0017】
エンジン21は、空冷単気筒4サイクルエンジンであり、シリンダ26(シリンダヘッド27、シリンダブロック28)と、シリンダブロック28内に摺動可能に設けたピストン31(図2参照)と、ACジェネレータ32と、トランスミッション33と、シリンダブロック28を取付けたクランクケース34と、を備える。35はシリンダヘッド27に接続した混合ガスを生成するキャブレタを示す。
【0018】
図2は本発明に係るクランクシャフトの支持構造を採用したエンジンの断面図であり、シリンダヘッド27と、シリンダブロック28と、シリンダブロック28内に摺動可能に設けたピストン31と、ACジェネレータ32と、クランクケース34と、クランクケース34にブッシュ37,37およびボールベアリング38,38で取付けるとともに、ピストン31をコネクティングロッド39を介して連結したクランクシャフト41と、を備えるエンジン21を示す。
【0019】
シリンダヘッド27は、内側に形成した燃焼室42と、外側に形成した冷却フィン43と、中央に設けたプラグ孔44を有する。45はプラグ孔44に取付けた点火プラグを示す。燃焼室42では、ガソリンと空気の混合ガスを瞬時に燃焼させることで、爆発させ、膨張ガスを発生させる。
【0020】
シリンダブロック28は、内部にピストン31を案内する壁部46を形成し、外部に冷却フィン47を形成したもので、冷却フィン47で燃焼の際の熱を外へ逃す。
【0021】
クランクシャフト41は、爆発の際の膨張ガスで往復するピストン31の往復運動を回転運動に変換し、回転力をトランスミッションに伝える。
また、クランクシャフト41は、組立て式クランクシャフトで、一方に軸部であるところの第1ジャーナル51を形成し、第1ジャーナル51に第1ウェブ52(第1アーム部53、第1ウェイト54)を形成し、他方に軸部であるところの第2ジャーナル56を形成し、第2ジャーナル56に第2ウェブ57(第2アーム部61、第2ウェイト62)を形成し、第1ウェブ52と第2ウェブ57をクランクピン63で一体的に接続したものである。64は中心軸線を示す。
クランクシャフト41の材質は、炭素鋼または合金鋼である。
【0022】
クランクケース34は、左右分割式で、クランクシャフト41の中心軸線64に直交する分割面65を有する。
クランクケース34の材質は、アルミニウム合金であり、例えば、ダイカスト合金(JIS ADC12)である。
アルミニウム合金の線膨張係数は、23×10-6である。
【0023】
図3は本発明に係るクランクシャフトの支持構造の要部詳細図である。
クランクシャフトの支持構造は、クランクシャフト41の軸部であるところの第1ジャーナル51、第2ジャーナル56にボールベアリング38,38を嵌め、このボールベアリング38,38をブッシュ37,37を介してアルミニウム合金製のクランクケース34に取付けた構造でる。
【0024】
ボールベアリング38は、クランクシャフト41に嵌合する内輪66と、ブッシュ37に嵌合する外輪67とを有する。内輪66の材質は、鋼である。外輪67の材質は、鋼である。
【0025】
ブッシュ37は、外側ブッシュ71と、この外側ブッシュ71に圧入した内側ブッシュ72との2部材からなる。圧入の際のはめあいについては次図で説明する
【0026】
外側ブッシュ71は、クランクケース34に一体的に鋳包んだ鋳鉄ブッシュであり、外面に形成した掛止部73のアンカ効果によりクランクケース34と一体的になる。外側ブッシュ71の鋳鉄は、例えば、ねずみ鋳鉄(JIS FC材)であり、ねずみ鋳鉄の線膨張係数は、9.8×10-6である。
【0027】
内側ブッシュ72の鋼は、例えば、炭素鋼(JIS S45C)であり、炭素鋼の線膨張係数は、11.2×10-6である。
【0028】
図4は本発明に係るブッシュとボールベアリングの詳細図であり、外側ブッシュ71と、内側ブッシュ72と、ボールベアリング38のはめあいの関係を模式的に示す。
【0029】
ボールベアリング38の外径をDbに設定し、ボールベアリング38のしめ代をaに設定した。
内側ブッシュ72の内径は、ボールベアリング38のしめ代aに基づいてds(ds=Db−2×a/2)に設定した。
【0030】
内側ブッシュ72の外径をDsに設定し、内側ブッシュ72の外周側のしめ代をbに設定した。
外側ブッシュ71の内径は、内側ブッシュ72のしめ代bに基づいてdf(df=Ds−2×b/2)に設定した。
【0031】
また、内側ブッシュ72とボールベアリング38のしめ代をaとし、内側ブッシュ72と外側ブッシュ71のしめ代をbとしたときに、しめ代bは、しめ代aより大きく設定した。
さらに、しめ代bは、2×a<b<4×aの範囲内に設定した。
【0032】
次にクランクシャフトの支持構造の組立てについて簡単に説明する。
図5(a),(b)は本発明に係るクランクシャフトの支持構造の第1組立て説明図である。
(a):まず、予めクランクケース34に外側ブッシュ71を鋳包む。その次に、外側ブッシュ71,71に内側ブッシュ72,72をそれぞれ矢印▲1▼,▲2▼の如く圧入する。その際、クランクケース34側を加熱し、外側ブッシュ71,71を所定温度まで昇温するのが望ましい。
【0033】
(b):引き続き、内側ブッシュ72,72にボールベアリング38,38の外輪67,67をそれぞれ嵌める。その際には、クランクケース34ならびにブッシュ37,37を加熱し、ブッシュ37,37を所定温度まで昇温するのが望ましい。
【0034】
図6は本発明に係るクランクシャフトの支持構造の第2組立て説明図である。
最後に、クランクシャフト41の第1ジャーナル51に左側のクランクケース34とともにボールベアリング38の内輪66を矢印▲3▼の如く嵌め、クランクシャフト41の第2ジャーナル56に右側のクランクケース34とともにボールベアリング38の内輪66を矢印▲4▼の如く嵌める。
【0035】
以上に述べたクランクシャフトの支持構造の作用を次に説明する。
図3に示すように、ブッシュ37は、クランクケース34に一体的に鋳包んだ外側ブッシュ71と、この外側ブッシュ71に圧入した内側ブッシュ72との2部材からなり、燃焼の際の熱でクランクケース34の熱膨張に伴い一体的に外側ブッシュ71が広がっても、内側ブッシュ72は外側ブッシュ71に引張られることはなく、締付力の減少は極めて小さい。その結果、ボールベアリング38を確実に保持することができ、エンジンの静粛性は向上する。
【0036】
また、ブッシュ37は、クランクケース34に一体的に鋳包んだ外側ブッシュ71と、この外側ブッシュ71に圧入した内側ブッシュ72との2部材からなるので、クランクケース34の温度のばらつきによる不均一な熱膨張で外側ブッシュ71の真円度が低下しても、内側ブッシュ72は外側ブッシュ71に引張られることはなく、内側ブッシュ72の真円度の低下を極めて小さく抑えることができる。その結果、内側ブッシュ72の所望の真円度によって、ベアリング38の真円度を確保することができ、ベアリングの耐久性を向上させることができる。
【0037】
図3の外側ブッシュ71は、クランクケース34に鋳包んだ鋳鉄であり、内側ブッシュ72は鋼であり、ここでの外側ブッシュ71の線膨張係数は、クランクケース34の大きな線膨張係数(23×10-6)に引張られて本来の線膨張係数(9.8×10-6)より大きな値となる。一方、内側ブッシュ72の線膨張係数は、11.2×10-6であり、鋳包んだ状態の外側ブッシュ71の線膨張係数に近く、熱による膨張の差を小さくすることができる。その結果、熱膨張の差の減少と圧入の際のしめ代によりクランクケース34の寸法変化を吸収することができ、ボールベアリング38を締結する力を維持することができる。
【0038】
つまり、外側ブッシュ71は鋳包んだ鋳鉄ブッシュであり、内側ブッシュ72は鋼製ブッシュなので、燃焼の際の熱でクランクケース34の膨張とともに、クランクケース34に一体的に鋳包んだ外側ブッシュ71が膨張しても、その膨張による径の変化を内側ブッシュ72が吸収するので、しめ代a(図4参照)によって与えている力の減少は小さく、ボールベアリング38を所望の力で保持することができる。従って、エンジンの静粛性を向上させることができる。
【0039】
図4に示すように、内側ブッシュ72とボールベアリング38のしめ代をaとし、内側ブッシュ72と外側ブッシュ71のしめ代をbとしたときに、しめ代bは、しめ代aより大きく設定したので、熱膨張による外側ブッシュ71の内径dfの拡径の値をしめ代bで吸収することができ、熱膨張で寸法が変化しても外側ブッシュ71と内側ブッシュ72との間の締結力を確保することができるとともに、内側ブッシュ72とボールベアリング38との間の締結力を確保することができる。従って、エンジンの静粛性を向上させることができる。
【0040】
また、内側ブッシュ72とボールベアリング38のしめ代をaとし、内側ブッシュ72と外側ブッシュ71のしめ代をbとしたときに、しめ代bは、2×a<b<4×aの範囲内に設定した。
しめ代bが2×a未満では、しめ代が小さく、熱で外側ブッシュ71が膨張すると、外側ブッシュ71と内側ブッシュ72との間に隙間が生じる心配がある。
しめ代bが4×aを超えると、しめ代が大きく、低温〜中温時、内側ブッシュ72を介してボールベアリング38の外輪67を強く締付けるこになり、回転の際の摩擦抵抗が増加する。
つまり、高温時の隙間防止の点から下限を2×aとし、低温〜中温時の回転の摩擦抵抗の増加を防止する点から上限を4×aとした。
その結果、低温〜中温時においても回転の摩擦抵抗が増加することはなく、所望の回転の摩擦抵抗を維持することができる。
【0041】
尚、本発明の実施の形態に示した外側ブッシュ71の外周の形状は任意である。
内側ブッシュ72の長さや両端部の形状は任意であり、例えば、鍔を形成したり溝を形成することも可能である。
ボールベアリング38を止めるための止め輪の有無は任意である。
ボールベアリング38を止めるためのクランクケース34の孔の形状は任意である。
【0042】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、クランクシャフトのボールベアリングに嵌める鉄製のブッシュは、クランクケースに一体的に鋳包んだ外側ブッシュと、この外側ブッシュに圧入した内側ブッシュとの2部材からなるので、外側ブッシュがクランクケースの熱膨張に伴い一体的に熱膨張し拡径しても、内側ブッシュは外側ブッシュに引張られることはなく、締付力の減少を極めて小さく抑えることができる。その結果、ボールベアリングを確実に保持することができ、エンジンの静粛性を向上させることができる。
【0043】
また、ブッシュは、鋳包んだ外側ブッシュと、この外側ブッシュに圧入した内側ブッシュとの2部材からなるので、クランクケースの温度のばらつきによる不均一な熱膨張で外側ブッシュの真円度が低下しても、内側ブッシュは外側ブッシュに引張られることはなく、真円度の低下を極めて小さく抑えることができる。その結果、内側ブッシュの所望の真円度によって、ベアリングの真円度を確保することができ、ベアリングの耐久性を向上させることができる。
【0044】
請求項2では、外側ブッシュは、クランクケースに一体的に鋳包んだ鋳鉄ブッシュであり、内側ブッシュは、鋼製ブッシュなので、クランクケースに一体的に鋳包んだ外側ブッシュがクランクケースの熱膨張に伴い一体的に熱膨張しても、圧入した内側ブッシュは、外側ブッシュの熱膨張による径の広がりに引張られることはなく、ボールベアリングを所望の力で保持することができる。従って、エンジンの静粛性を向上させることができる。
【0045】
また、外側ブッシュは、クランクケースに一体的に鋳包んだ鋳鉄ブッシュであり、内側ブッシュは、鋼製ブッシュなので、熱膨張で外側ブッシュがアルミニウム合金製クランクケースに引張られて拡径しても、鋳鉄より線膨張係数の大きい内側ブッシュが追従して拡径するため、外・内側ブッシュ間のしめ代の減少を抑えることができる。従って、エンジンの静粛性を向上させることができる。
【0046】
請求項3では、内側ブッシュとボールベアリングのしめ代をaとし、内側ブッシュと外側ブッシュのしめ代をbとしたときに、しめ代bは、しめ代aより大きく設定したので、熱膨張による外側ブッシュの内径の拡径の値をしめ代bで吸収することができ、熱膨張で寸法が変化しても外側ブッシュと内側ブッシュとの間の締結力を確保することができるとともに、内側ブッシュとボールベアリングとの間の締結力を確保することができる。従って、エンジンの静粛性を向上させることができる。
【0047】
請求項4では、内側ブッシュとボールベアリングのしめ代をaとし、内側ブッシュと外側ブッシュのしめ代をbとしたときに、しめ代bは、2×a<b<4×aの範囲内に設定した。
しめ代bが2×a未満では、しめ代が小さく、熱で外側ブッシュが膨張すると、外側ブッシュと内側ブッシュとの間に隙間が生じる心配がある。
しめ代bが4×aを超えると、しめ代が大きく、低温〜中温時、内側ブッシュを介してボールベアリングの外輪を強く締付けるこになり、回転の際の摩擦抵抗が増加する。
【0048】
つまり、高温時の隙間防止の点から下限を2×aとし、低温〜中温時の回転の摩擦抵抗の増加を防止する点から上限を4×aとした。
その結果、低温〜中温時においても回転の摩擦抵抗が増加することはなく、所望の回転の摩擦抵抗を維持することができるとともに、高温時の外側ブッシュと内側ブッシュとの間の隙間防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクランクシャフトの支持構造を採用した自動二輪車の側面図
【図2】本発明に係るクランクシャフトの支持構造を採用したエンジンの断面図
【図3】本発明に係るクランクシャフトの支持構造の要部詳細図
【図4】本発明に係るブッシュとボールベアリングの詳細図
【図5】本発明に係るクランクシャフトの支持構造の第1組立て説明図
【図6】本発明に係るクランクシャフトの支持構造の第2組立て説明図
【符号の説明】
34…クランクケース、37…ブッシュ、38…ボールベアリング、41…クランクシャフト、51…軸部(第1ジャーナル)、56…軸部(第2ジャーナル)、71…外側ブッシュ、72…内側ブッシュ。
Claims (4)
- クランクシャフトの軸部にボールベアリングを嵌め、このボールベアリングを鉄製のブッシュを介してアルミニウム合金製のクランクケースに取付けるクランクシャフトの支持構造において、
前記ブッシュは、クランクケースに一体的に鋳包んだ外側ブッシュと、この外側ブッシュに圧入した内側ブッシュとの2部材からなることを特徴とするクランクシャフトの支持構造。 - 前記外側ブッシュは、クランクケースに一体的に鋳包んだ鋳鉄ブッシュであり、前記内側ブッシュは、鋼製ブッシュであることを特徴とする請求項1記載のクランクシャフトの支持構造。
- 前記内側ブッシュと前記ボールベアリングのしめ代をaとし、内側ブッシュと前記外側ブッシュのしめ代をbとしたときに、しめ代bは、しめ代aより大きく設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のクランクシャフトの支持構造。
- 前記内側ブッシュと前記ボールベアリングのしめ代をaとし、内側ブッシュと前記外側ブッシュのしめ代をbとしたときに、しめ代bは、2×a<b<4×aの範囲内に設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のクランクシャフトの支持構造。
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