JP3751891B2 - ブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材及びシャドウマスク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材およびこの素材を用いたブリッジ付きテンションマスクに関するものである。
【0002】
陰極線管(ブラウン管)に用いられるマスク(色選別電極)は、その形態により、プレスマスクとテンションマスクに分類される。プレスマスクは、プレスでの絞り加工により箱型に成形され金枠に固定される。また、テンションマスクは、張力が負荷され平面の状態で金枠に固定される。さらに、テンションマスクにはアパーチャグリル方式のものとブリッジ方式のものがある。
本発明は、テンションマスクマスクの中のブリッジ方式のものに用いられる素材に関するものである。
【0003】
アパーチャグリル方式のマスクは冷延鋼板にエッチングにより多数のスリットを形成し、その後スリット方向に張力を負荷した状態で金枠に張り渡されている。ところが、アパーチャグリル方式のマスクは冷延鋼板の平坦度が悪かったり、残留応力が高かったりすると、スリットの形状が著しく損なわれたいわゆる「線乱れ」が生じる欠点がある。また、陰極線管では、地磁気が電子ビーム軌道をずらすことにより色むらが発生する欠点があるが、アパーチャグリル方式のマスクはすだれ状にエッチングされるため、金属材料面の開口率が高く、磁気シールド性が劣り、そのために、磁気補正回路を必要とする。さらには、スピーカなどの音源によるマスク振動を抑えるためダンパー用ワイヤースリットを張る必要があり、このダンパー線が画面上に投影され見える問題や構造上も煩雑になる。
【0004】
ブリッジ付きテンションマスクはプレスマスクとアパーチャグリル両方式の長所を取り入れた架長方式である。
ブリッジ付きテンションマスク方式は、従来の架長しないプレスマスクに類似したパターンでエッチングしたマスクを、プレスすることなく陰極線管の上下方向(垂直方向)に架長する方法である。この方式では細長いスリット(すだれ)を開けずにシャドウマスク同様のスロット孔開孔を開け、縦方向の金属線と金属線の間にブリッジと呼ばれる細い金属線を多数エッチングにて残すことにより、縦方向の金属線のネジレ現象、つまり「線乱れ」を防ぐことができ、さらには、ブリッジ導入により金属材料面積が増し磁気シールドの向上が可能となる。また、スピーカー等の音源によるマスク振動を抑えるダンパー線も不必要となる。
【0005】
ブリッジ付きテンションマスクのスロット孔開孔は、片側面に大孔と称する開口部を、その反対面の大孔の相対する位置に小孔と称する開口部を有する。おもて面とうら面とで相対する位置にある大孔と小孔は貫通してつながり透過孔を形成している。
マスクの小孔および大孔は、素条両面にフォトレジストを塗付し、小孔および大孔のパターンを焼き付け現像した後、塩化第二鉄溶液を用いた両面からのスプレーエッチングにより穿孔し作製される。
【0006】
エッチングにより作製されたマスクは、張力を負荷された状態で金枠に固定される。ここで、金枠に固定する前、固定した後、あるいは固定する前と後の両方において、400℃〜600℃の加熱処理が行われる。加熱処理の目的は、表面の黒色化、磁気特性の向上、金枠固定時に生じた歪みの低減等があげられる。
【0007】
マスクに要求される重要な品質として、孔の形状の均一性および材料強度がある。
孔の形状の均一性については、孔形状が不均一であるマスクをブラウン管に組み込むと、画像は不均一なものになる。マスクは微細な孔が高密度で平面内に集合したもので、一つ一つの孔が個々に目視で認識されることはない。しかし、マスクを暗室内で1箇所の光源から光を当て観察すると、孔形状のばらつきが、マスク平面内の明るさの不均一や明るさのムラとして確認される。このムラは、マスクをブラウン管に組み込み画像を確認した際に画像のムラとして不良になるものである。
【0008】
近年、マスクの設計において、孔のファインピッチ化および素材の薄肉化が進んでおり、素材板厚は従来は0.25mmであったが、最近は0.05mmのものも見られる。
ファインピッチ化および薄肉化により、孔の径は小さいものに、また、孔と孔の間隔は狭いものに設計されるようになっている。これに伴い、ファインピッチ化および薄肉化の結果として、従来に比べ、孔形状の不良によるマスクのムラ不良が起こりやすくなった。
【0009】
板厚が薄いものをエッチングで穿孔しようとすると、厚いものにくらべ孔形状のばらつきは大きくなり、孔形状の不良が起こり易い。これは、エッチングの経時変化と板厚の関係による。即ち、板厚については、これが薄いものは厚いものにくらべ穿孔に要するエッチング時間が短くて済む。一方、エッチングについては、塩化第二鉄溶液を吹き付けた直後は、一般にエッチングの度合いが不均一でばらつき、その後、定常的にエッチングが進行し、穿孔終了時には初期に生じたばらつきは比率として低いものになり、孔形状のばらつきとして顕在化しない。以上より、板厚が薄い場合は、定常的にエッチングが進行する時間が短いため、エッチング初期のばらつきの比率が大きくなり、孔形状のばらつきが生じ易いことになる。
【0010】
次に、マスクに要求される品質として、材料強度があげられる。
素材の材料強度が低いものであると、種々の加工中に変形が生じやすくなり、変形するとその後の加工が困難になる。また、材料強度については、室温での強度だけでなく、マスクをエッチングにより作製した後で行う加熱処理で軟化しにくいことも重要である。さらに、素材の薄肉化によりマスクの強度は低下することになるので、その低下分を素材の高強度化で補うことが必要である。
【0011】
【従来の技術】
ブリッジ付きテンションマスクに要求される特性に高クリープ強度および磁気シールド特性がある。本出願人は他の二出願人とともに、これらの特性を良好にすべく、特願2000−120659(以下「先願」という)において、
質量%で、C:0.001〜0.015%、Si:0.020%以下、Mn:0.2〜1.8%、P:0.02%以下、S:0.010%以下、N:0.010超〜0.025%、Al:0.020%以下、O:0.010%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、(N質量%−0.52Al質量%)が0.005%以上であることを特徴とするブリッジ付きテンション方式陰極線管の色選別電極用低炭素圧延鋼板、および質量%で、C:0.001〜0.015%、Si:0.020%以下、Mn:0.2〜1.8%、P:0.02%以下、S:0.010%以下、N:0.010超〜0.025%、Al:0.02%以下、O:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、(N質量%−0.52Al質量%)が0.005%以上であり、最終冷間圧延加工度が15〜80%であることを特徴とするブリッジ付きテンション方式陰極線管の色選別電極用低炭素圧延鋼板を提供した。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは先願の鋼板につき、孔形状のばらつきおよび強度の面から検討したところ、これらの特性は充分ではなく、かつテンションマスクのファインピッチ化と薄肉化に対応し得るものではないとの認識に至った。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、孔形状のばらつき不良や素材の強度に影響を及ぼす材料因子について研究した。そして、孔形状のばらつき不良が起こりにくいとともに強度の高いブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材の発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、(1)C :0.015質量%(以下、成分の百分率はすべて質量%である)超0.060%以下、 Si : 0.03% 以下、 sol.Al : 0.01 〜 0.1% 以下、 Mn : 0.05 〜 0.5% 、 S : 0.03% 以下、 P : 0.05% 以下含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなり、板厚が 0.02 〜 0.10mmであるブリッジ付きテンションマスク用素材、(2)表面粗さRaが0.01〜0.15μm、Ryが0.10〜1.50μmであるブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材、(3)耐力が780N/mm2以上であるブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材、(4) 400℃〜600℃で60分の大気中加熱後の耐力が580N/mm2以上であるブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材、(5)上記軟鋼素材を用いて製造したシャドウマスクに関するものである。
【0015】
従来、マスク用軟鋼はエッチング性の問題から、Cを0.015%以下と低くすることにより、エッチング面に偏析したCをはじめとする微量元素がエッチングムラを発生することを防止していた。
【0016】
C量が従来と同程度の場合や0.015%以上の場合について、エッチング不良の状況を研究した結果次の事項が明らかになった。Cをはじめとする微量元素の偏析形態はおもに板の中心で生じる中心偏析である。中心偏析の強い素材をエッチングにて穿孔すると、大孔のエッチング面で板の中心に相当する部位に鋭利な溝が生じ、著しいものはマスクとして不適合になるものである。
一方、素材の平面内においては、場所により中心偏析の程度がばらついている。すなわち、中心偏析の強い部分と弱い部分が混在する。マスクで用いられる薄板の場合、中心偏析の強い部分と弱い部分は、圧延方向と平行方向でスジ状に延ばされた形態で分布する。中心偏析の強い部分と弱い部分が素材平面内において目視で認識できる面積で混在するものは、エッチング面の溝の深さも目視で認識できる面積でばらつく。このような素材より加工したマスクを組み込んだブラウン管の画像にはスジ状のムラが確認される。
【0017】
本発明においては板厚を薄くし、且つC濃度を高くするというエッチング性の面からは好ましくない手段を採用したが、C以外の微量成分濃度を適切なものに設定することにより中心偏析によるエッチングムラは軽減することを見出した。
すなわち、C以外の成分量は可及的微量とするが、脱硫元素のMnは所定量以上添加することにより、遊離Sの量を極く微量とする。このような組成調整により、従来に比べ高いC濃度を有する素材であっても、マスクとして必要なエッチング性を充分確保できるに至った。
【0018】
従来のマスク材よりも増量されたCは素材の高強度化に有効である。さらに、C>0.015%の素材は、真空溶解法ではなく、通常の溶解法で製造された軟鋼を熱間圧延したホットコイルに脱炭焼鈍を施すことにより製造できる。したがって、新規に合金成分や製造工程を設計する方法に比べ、本発明材は比較的容易に量産化することが可能である。また、品質管理上も従来の軟鋼の延長線上で考えればよく、品質の安定化においても有利である。
【0019】
従来から用いられている0.14mm以上の厚板では板厚に対する表面凹凸の比率が小さいために、表面凹凸がエッチングに及ぼす影響が小さい。
従来のような厚板の場合、表面の凹凸が影響しエッチング初期に孔形状のばらつきが生じても、その後の定常的なエッチングで初期のばらつきは十分解消される。したがって、従来のような厚板で孔のピッチが粗な設計である場合、表面の凹凸が大きくてエッチング初期に孔形状のばらつきが生じても、その寄与率は低く、穿孔終了後の孔形状のばらつきに影響を及ぼさない。
一方、箔の場合、スプレーエッチングの初期で生じた表面の凹凸に起因する孔形状のばらつきは、穿孔終了まで残存するので、表面の凹凸が大きいものは孔形状のばらつきも不良が生じやすい。上述のように孔形状のばらつき不良については、表面の凹凸は小さい方が良いことがわかった。
【0020】
以下、本発明のブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材の組成限定理由を説明する。
Cが0.060%を超えると、中心偏析が顕著なものとなりエッチングにより成形した大孔のエッチング面にスジ状の溝が生じる。この溝はマスクをブラウン管に組み込んだ後画像のムラにつながる。このような軟鋼素材はマスク用として適さない。従って、C含有量の上限を0.060%と定める。また、0.015%以下では、素材の材料強度が不足する。よって、C含有量の下限を0.015%超と定める。
【0021】
マスク用軟鋼素材中の多量の遊離酸素はエッチング性を阻害するために、脱酸が必要である。それ故、Siは脱酸のために必要に応じ添加する。尤も、通常の溶解法の場合は、軟鋼を出発素材とすると溶綱中の酸素量が極低炭素鋼より少なくなり、脱酸元素添加量を削減することができ、結果としてマスク用軟鋼素材中の介在物量を少なくすることができる。Siを多量に添加すると鋼中の酸化物が多くなり、鋼中の酸化物で鋳造時に浮上しきれなかったものは介在物となる。介在物は圧延により分断され微細化し、微細化粒子が高密度に集合したものは、材料の内部において板厚方向に圧縮され、また、圧延方向に帯状に延ばされる。そして、マスク孔をエッチングにより穿孔した際、これらの介在物はマスク孔エッチング面に露頭する。介在物は、帯状に延びた部分的な領域のマスク孔で露頭する。このようなマスクをブラウン管に組み込むと画像にむらが生じる。Siは少ない方がよい。よって、Si含有量の上限は0.03%と定める。
【0022】
AlもまたSiと同じく鋼を脱酸するために、又窒素を固定するために、sol.Al量で0.01%以上添加する。脱酸により溶鋼中の酸素濃度は低減し、酸化物系介在物が生成するのを抑制する。酸化物系介在物は、マスクのエッチングにおいて悪影響をおよぼす。すなわち、エッチング面に酸化物系介在物が露頭し、ブラウン管に組み込んだ際画像に点状欠陥が生じる。0.01%未満のsol.Alでは脱酸による酸化物系介在物の低減効果は不十分である。
また、0.1%を超えると、連続鋳造機へ出湯した際に溶鋼が酸化しやすくマスク材として有害な粗大アルミナ系酸化物が生成しやすくなる。この酸化物はマスクのエッチングにおいてエッチング面に酸化物系介在物として露頭し点状欠陥となる。よって、sol.Alの上限を0.1%とする。
【0023】
Sは鋼中に不可避的に存在する元素であり、熱間加工時に粒界に偏析し鋼の脆化をもたらす。また、MnはSと結合して微細な硫化物粒を形成し、Sが粒界に偏析するのを抑制する。Sと結合しないMnはFe中に置換型に固溶し、α-Fe中のC固溶量を高めるので偏析箇所でもセメンタイトは粗大化していない。Mnの含有量が0.05%未満であると十分な効果は得られない。しかし、0.5%を超えると効果は飽和するとともにMnの偏析が多くなる。従って、Mn含有量の下限を0.05%に、上限を0.5%に定める。また、Mnの硫化物粒には、局部的に高密度で集合しその部分が圧延で帯状に延ばされるものがある。このようなものはマスク孔のエッチング面に溝状のスジを形成する。従って、S含有量の上限を0.03%と定める。
【0024】
Pは、0.05%を超えると偏析しやすくなり、エッチングにより成形した大孔のエッチング面にスジ状の溝が生じる。従って、P含有量の上限を0.05%と定める。
【0025】
上記以外の不純物は含有されることがあるが、できるだけ量が少ないことが好ましい。例えば、Cr, Ti, Nb, B, Ta, W, Mo, Nなどの炭化物および窒化物形成元素は、焼鈍軟化特性に影響を及ぼす。すなわち、軟化温度を上昇させる作用がある。よって、テンションマスク加工後の材料強度の点から、上記元素を総量で0.1%以下の水準で含有していても本発明の効果は損なわれることはない。ところが、テンションマスクの加工における加熱処理においては、焼鈍軟化特性が十分安定していることが重要である。特に、この加熱処理は再結晶温度よりやや低温の焼鈍軟化曲線上で臨界点にあたる領域のものであるため、処理技術的にその管理は極めて厳しい。したがって、これらの元素の濃度は厳密に管理されねばならない。もしくは、これらの元素を極力排除することが好ましい。
【0026】
一方、V,Sn,As,Oについては総量で0.01%以下、Cu,Ni,Coについては総量で0.08%以下の範囲で含有しても本発明の効果が損なわれることはなく、この範囲で含有することが許される。
【0027】
板厚が0.15mmを超えると中心偏析によりエッチング後のマスクにムラが生じやすくなりかつスジが目立ちやすくなる。マスクスジの観点からは、板厚は薄ければ薄いほど良い。板厚が0.15mmのものより0.10mmのものの方が良く、また、板厚が0.10mmのものよりも0.05mmのものの方が良い。一方、マスクスジの点からは薄い方が良いといえるが、0.02mmを下回るとマスクの強度が不足する。本発明では板厚を 0.02mm 〜 0.10mm に規定する。
【0028】
本発明の実施態様では軟鋼素材の表面粗さを規定する。表面粗さは「JIS B0601:1994 表面粗さ−定義および表示」としてJIS規格に規定されている。表面粗さは、Raを0.01〜0.15μ m、Ryを0.10〜1.50μmに規定する。各指標について上限を設定するのは、それを超えるとエッチングで加工する孔形状のばらつきが大きくなりマスクとして適さなくなるからである。下限を設けるのは、エッチング性によるものである。すなわちレジストを軟鋼素材に焼き付ける際、素材とガラス板の間にレジストパターンシートをセットし、ガラス板と素材の間を真空引きする。ここで、素材の表面が極端に平滑なものは、真空引きが不均一となりこれが露光の不均一につながる。露光が不均一であると、素材上に形成されたレジスト膜の孔形状も不均一となる。そのようなレジスト膜付きの材料をマスクにエッチングするとムラが発生する。従って、粗さの指標は下限を定める。
【0029】
本発明の別の実施態様において、耐力を780N/mm2以上とするのは、780N/mm2未満では強度が不十分で、エッチング加工をはじめとする各種処理工程で変形などが生じ、テンションマスクの加工が困難になるからである。本発明の組成の軟鋼にこの耐力を付与するためには、ホットコイルに対する冷間圧延材の加工度を90%以上とすることが好ましい。
【0030】
本発明の他の実施態様において、400℃〜600℃で60分の大気中加熱後の耐力を580N/mm2以上とするのは、580 N/mm2未満では強度が不十分で、加熱処理後におけるテンションマスクの加工が困難になるからである。また、加工が困難になるだけでなく、張力を付加することを特徴するテンションマスクそのものの機能にも支障をきたすからである。本発明の組成の軟鋼にこの耐力を付与するためには、ホットコイルに対する冷間圧延材の加工度を90%以上とすることが好ましい。
【0031】
【実施例】
本発明について、実施例を比較例と対比しながら説明する。
C量が0.04%〜0.08%であり、Si,Mn,P,S,sol.Alが表1の組成である鋼のスラブを熱間圧延により3mmの厚さのホットコイルとした。ホットコイルを酸洗しスケールを除去した後、冷間圧延を行い0.65mmの厚さの素条とした。素条に脱炭焼鈍を行いC量を調整した。脱炭焼鈍の条件は、雰囲気が25%H2-残N2で露点+25℃、均熱温度が600〜700℃、均熱時間が1h〜10hである。均熱温度と時間の組合わせによりC量を調整した。C量を調整した素条を冷間圧延により、表1に示す板厚の板とし製品とした。冷間圧延ではブライトロールを用いる他に、従来からマスク材の圧延に用いられているダルロールも一部に使用し比較例とした。
【0032】
得られた製品について表面粗さを測定した。
表面粗さは、JIS規格「JIS B0601:1994表面粗さ−定義および表示」の規定に準拠し、算術平均粗さ(Ra)と最大高さ(Ry)を測定した。また、引張試験を行い、引張強さと0.2%耐力を測定した。引張強さは製品と製品に加熱処理を施したものについて測定した。加熱処理は大気中で500℃×60分とした。
【0033】
次にこれらの製品条に周知のフォトリソグラフィ技術を適用し、片側表面に大孔もう一方の表面の相対する位置に小孔を有するレジストマスクを形成した。その後、塩化第二鉄水溶液をスプレー状に吹き付け、透過孔を形成した。1個の透過孔の幅は板厚に等しい寸法であり、長さは幅の3倍の寸法である。透過孔は長手方向で一直線上に分布し、透過孔の中心とその透過孔と長手方向で隣接する透過孔の中心との距離、すなわち透過孔と透過孔の長手方向の間隔(ピッチ)は、透過孔の長さの1.3倍とした。また、長手方向で一直線上に分布する透過孔の長手方向の中心線と、それと隣接して一直線上に分布する孔の中心線の間隔、すなわち透過孔の幅方向の感覚は、透過孔の幅の4倍とした。
【0034】
得られたマスクについて中心偏析等に起因するマスクスジの発生状況と、透過孔の形状についてばらつきを測定した。
マスクスジの発生状況については、暗室内において均一光の発生源上にマスクを置き、マスクの有孔部を目視で観察し、マスクを透過し目に入ってくる光りにムラがないか確認した。スジ上の明暗すなわちムラが認められた場合、これを不良と判定した。逆に、明るさがマスクの平面内において均一でムラが認められなかった場合、これを良好と判定した。
【0035】
透過孔の形状のばらつきについては、100個の透過孔の面積を測定し標準偏差を求め、面積の平均値と標準偏差を算出し、次に標準偏差と平均値との比(標準偏差/平均値)を求めた。(標準偏差/平均値)が大きいものほど透過孔形状のばらつきが大きいといえる。
【0036】
エッチング性については、全体ムラ、スジムラ、点状欠陥の3種類の項目について評価した。表2には3種類の項目について実施例を示す。
得られたマスクについてマスクムラの発生状況を調べた。ムラの発生状況については、暗室内において均一光の発生源上にマスクを置き、マスクの有孔部すなわち画面を目視で観察した。つぎに、マスクを透過し目に入ってくる光りつまり画面の明るさに不均一なものがないか確認した。そして、マスクの画面全面にミクロな明暗の不均一が認められた場合、これをマスク全面ムラ不良と判定した。また、マスクの画面に部分的な線状の明暗の不均一が認められた場合、これをマスクスジムラ不良と判定した。さらに、マスクの画面に局部的な点状の不均一が認められた場合、これをマスク点状欠陥不良と判定した。
【0037】
表2において本発明例は、引張強さ、耐力が高く高強度である。また、加熱後の引張強さと耐力も高く耐熱性に優れる。さらに、マスクスジが発生せず孔形状のばらつきが小さくエッチング穿孔性に優れる。
これに対し、比較例6と比較例7はCが規定より低く、引張強さと耐力が低い。比較例8はSiが規定を超えておりマスクスジが発生した。比較例8のマスク孔のエッチング面をSEMにて観察したところ介在物が露頭していた。比較例9はMnが規定より低くマスクスジが発生した。比較例9の素材断面の金属組織を調べたところSの偏析スジが観察され、粒状MnS介在物が極端に少ないことが分かった。比較例10はPが規定を超えておりマスクスジが発生した。比較例10の素材断面からPの中心偏析が測定された。比較例11はSが規定を超えておりマスクスジが発生した。比較例11の素材断面には比較例9と同様にSの偏析スジが測定された。比較例12と比較例13はCが規定を超えておりマスクスジが発生した。比較例12と13の断面には中心偏析が存在しその水準は実施例のなかで最も高いものであった。比較例14はsol.Alが規定を超えておりマスクスジが発生した。比較例14のマスク孔のエッチング面をSEMにて観察したところ、比較例8のものと類似した介在物が露頭していた。比較例15と比較例16は表面粗さRaとRyが規定を超えており、マスクの孔形状のばらつきが多い。比較例15と比較例16のマスク表面をSEMにて観察したところ、ダルロール圧延材特有の凹凸が観察され凹凸に沿ってエッチング孔はゆがんでいた。比較例17と比較例18は板厚が規定を超えており、Cの中心偏析によると考えられるマスクスジが発生し、かなり強いものが目視で観察された。
【0038】
【発明の効果】
本発明素材を採用することによりマスクスジ不良や孔形状のばらつき不良が生じにくくなり、また、強度が高く軟化しにくいことから、テンションマスクのファインピッチ化と薄肉化に対応できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明例および比較例の組成、板厚および表面粗さを示す図表(表1)である。
【図2】 本発明および比較例の機械的強度およびマスク透孔形状のばらつき、ならびにマスクの全体ムラ、スジムラおよび点状欠陥の判定を示す図表(表2)である。
Claims (5)
- C:0.015質量%を超え0.060質量%以下、Si : 0.03 質量 % 以下、 sol.Al : 0.01 〜 0.1 質量 % 、 Mn : 0.05 〜 0.5 質量 % 、 S : 0.03 質量 % 以下、 P : 0.05 質量 % 以下含有し、残部 Fe ならびに不可避的不純物からなり、板厚が 0.02 〜 0.10mmであることを特徴とするブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材。
- 表面粗さRaが0.01〜0.15μm、Ryが0.10〜1.50μmであることを特徴とする請求項1に記載のブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材。
- 耐力が780N/mm2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材。
- 400℃〜600℃で60分の大気中加熱後の耐力が580N/mm2以上であることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載のブリッジ付きテンションマスク用軟鋼素材。
- 請求項1から4までの何れか1項に記載の軟鋼素材を用いて製造したシャドウマスク。
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