JP3309680B2 - エッチング性に優れた電子部品用低熱膨張合金薄板 - Google Patents

エッチング性に優れた電子部品用低熱膨張合金薄板

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JP3309680B2 JP28335095A JP28335095A JP3309680B2 JP 3309680 B2 JP3309680 B2 JP 3309680B2 JP 28335095 A JP28335095 A JP 28335095A JP 28335095 A JP28335095 A JP 28335095A JP 3309680 B2 JP3309680 B2 JP 3309680B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シャドウマスクや
リ−ドフレーム等の微細なエッチング加工を施す電子部
品に使用される低熱膨張合金薄板に関し、特に、コンピ
ューターディスプレイに使用される高精細用シャドウマ
スクとして好適なエッチング性に優れた低熱膨張合金薄
板に関する。
【0002】
【従来の技術】シャドウマスクやリードフレーム等の電
子部品は一般にエッチング加工が施されて使用される。
この際に、エッチング速度が速く、かつエッチング後の
孔の端部形状と寸法精度に優れたエッチング性の高い材
料が要求されている。
【0003】以下、シャドウマスクを例にとって説明す
る。シャドウマスクはテレビジョンのブラウン管に使用
されており、電子銃から発射された電子ビームをガラス
体によって支持された蛍光面上の所定の位置に正確に照
射して特定の色調を与えるための多数の細孔を有してい
る。この場合に、発射された電子ビームのうち細孔を通
過して蛍光体に照射されるのは約2割であり、残りの8
割はシャドウマスクに衝突するため、シャドウマスクは
蛍光面を支持するガラス体に比較して高温になる。その
上、シャドウマスク用素材として従来より用いられてき
た低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼等の軟鋼板
は、蛍光面を支持するガラス体に比べて熱膨張率がはる
かに大きいため、これらの間に位置ずれが生じて電子ビ
ームを蛍光面上の所定の位置へ正確に照射することがで
きなくなり、画像が不鮮明になることが多かった。
【0004】画像が不鮮明になることを防止するため
に、シャドウマスクの懸架装置となる支持体の構造を工
夫して、上記位置ずれを補償することも試みられている
が、必ずしも十分とはいえない。さらに近年は、テレビ
ジョン画面の大型化、高品位化や高輝度化に伴なって、
これらの位置ずれの問題が健在化してきている。
【0005】そこで、シャドウマスク用素材として、3
6wt%のNiを含有するFe−Ni系合金の使用が拡
大している。この合金は従来の低炭素鋼に比べて熱膨張
係数が約1/10と小さく、高輝度画面における電子ビ
ームの加熱に対してもその低膨張性は維持されるため、
この材料を素材として作製されたシャドウマスクでは、
熱膨張による色ずれは生じにくい。
【0006】シャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板
は、通常、連続鋳造法または造塊法によって合金鋼塊を
調製し、次いで分塊圧延、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を
施して製造される。この合金薄板にフォトエッチング加
工により電子ビームの通過孔を形成した後、焼鈍、成形
加工および黒化処理等の各工程を施すことによりシャド
ウマスクが製造される。
【0007】しかし、Fe−Ni系合金薄板を素材とす
るシャドウマスクは、優れた低熱膨張特性を有する一方
で、エッチング性に劣るため、フォトエッチング加工で
良好な孔形状を得ることは困難であり、エッチング不良
により局部的に画像の鮮明度不良を生じることがある。
そこで、この合金薄板についてエッチング性を改善する
試みがなされている。
【0008】例えば、特公昭59−32859号公報で
は、フォトエッチング加工後の孔形状をシャドウマスク
の全面に亘って均一にするためには、エッチング面の結
晶方位の不揃いを防いでエッチング速度を一定にする必
要があるとして、{100}結晶面の配向度を35%以
上とすることによって改善を図っている。
【0009】また、特開平5−311357号公報で
は、結晶粒の微細化および圧延面に対する結晶面をラン
ダム化することがエッチングの均一化を図るうえで有効
であるとして、結晶粒度番号を9.0以上、かつ、圧延
面に対する{100}結晶面の配向度を35%以下とす
ることによって改善を図っている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、
テレビジョン画面の大型化およびコンピュータのディス
プレイへの適用拡大にともない画像のきめの細かさや高
輝度化への要求が一段と高まってきており、このために
電子ビームの通過孔をより高精度に穿孔するようなエッ
チング加工が必要となってきている。
【0011】特に、コンピュータディスプレイに使用さ
れる高精細のシャドウマスクでは主として板厚0.15
mm以下の素材が使用され、例えば直径120μmの孔
が270μmピッチで穿孔されており、さらなるファイ
ンピッチ化も試行されている。
【0012】このような微細な孔をエッチング面内にお
いて精度よく穿孔するために、エッチング技術の向上と
ともに、素材の材質の向上が図られてきたが、依然とし
て局部的なエッチング不良に起因する孔形状の不良が発
生しており、画像の局部的な鮮明度不良の一因となって
いる。
【0013】このエッチング不良は、マスク部において
合金薄板の圧延方向に沿った微細な線状のむらとして観
察され、「スジむら」と呼ばれている。図4は、Fe−
36%Ni合金薄板を素材としたシャドウマスク上のス
ジむらの発生状態を示す模式図である。このようにスジ
むらの多くは数十μm〜数mmの幅を有し、マスク部の
一辺から対辺に達する。
【0014】これまで、エッチング加工によって発生す
るスジむらを抑制するためにいくつかの技術が提案され
ており、例えば、特開平2−54744号公報では、ス
ジむらがC、Si、Mn、Cr等の不純物元素の偏析、
あるいは鋳造時の凝固組織により発生するものとし、
0.001〜0.03wt%のBを添加するとともに、
特定条件でスラブを加熱することにより偏析を阻止し、
柱状晶組織を低減してスジむらの抑制を図っている。し
かし、例えばシャドウマスク材料のように、微細なエッ
チング加工と低膨張とが要求される材料では、特性を劣
化させないために、C、Si、Mn、Cr等の元素は合
計しても1wt%に満たない量に極力低減しており、こ
のような偏析によるスジむらは生じ得ず、Fe−36%
Ni合金薄板で発生するスジむらを解消するものではな
い。一方で、シャドウマスクの黒化処理では0.02w
t%を超えてBが存在すると、黒化むらが発生して局部
的な色ずれが生じる。
【0015】特公昭63−64514号公報では、スジ
むらの原因がNiの濃化によるものとして、平均濃度に
対するNiの濃化部の部分の割合を10%以下、濃化部
の容積率を5%以下、かつその長さを30mm以下とす
ることにより、スジむらの抑制を図っている。しかし、
32〜38wt%のNiを含有するFe−Ni系合金薄
板においては、Niが平均濃度に対して10%を超えて
濃化するような領域は認められず、一方で、数%の濃化
であってもスジむらなどのエッチング不良が発生するこ
とが確認されている。
【0016】以上述べたように、上記いずれの技術を用
いてもFe−36%Ni合金薄板で発生するようなエッ
チング加工によるスジむらを克服することができず、む
しろ画像の高品位化に伴なってスジむら等のエッチング
不良は増加する傾向にあり、その対策が求められてい
る。
【0017】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、画像の局部的な鮮明度の低下をもたらすスジ
むら等のエッチング不良が発生せず、かつ高精度のエッ
チング加工が可能な電子部品用低熱膨張合金薄板を提供
することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Fe−N
i系低熱膨張合金薄板のエッチング性について種々検討
を行なった結果、上述のスジむらを始めとするエッチン
グ不良が、製品原板における圧延面に対する{100}
結晶面の配向度比率およびNiのミクロ偏析率の双方が
複合的に関わることによって発生することを見出した。
【0019】ここで、圧延面に対する{100}結晶面
の配向度比率はX線回折法によって求めることができ
る。X線回折法によって結晶方位を同定する方法は極一
般的に用いられているものであり、例えば、理学電機株
式会社発行「X線回折の手引き、改定第四版」の81〜
82頁に記載されている。
【0020】このように圧延面に対する{100}結晶
面の配向度比率が高くなると、エッチング速度が速くな
るため加工精度が高くなり、エッチング界面の表面清浄
も均一化する。一方で、エッチング速度が高くなるにし
たがって、素材にエッチング速度を変化させる別の因子
が存在する場合には、その影響によるエッチング速度の
変化が大きくなるため、スジむらなどのエッチング不良
が生じやすくなる。
【0021】また、Niのミクロ偏析率は、製品原板の
エッチング加工する面内における圧延直角方向の表面お
よび断面についてNi成分の濃度分析を行なって求め
る。具体的には、図1の(a)に示すように、製品原板
の圧延直角方向の断面および表面について電子線マイク
ロアナライザー等によりNi成分の濃度を分析し、図1
の(b)に示すような分析結果から次式によって求め
る。
【0022】Niのミクロ偏析率(%)=濃度変動幅
(wt%)/平均濃度(wt%)×100 図1の(b)は電子線マイクロアナライザーによりNi
成分の濃度を分析した結果の一例を示したものである
が、製品原板のエッチング面内において図示したような
Niの濃度変動が存在すると濃度に応じた相対的なエッ
チング速度の差により、スジむらなどのエッチング不良
を生じやすくなる。特に、濃度変動が大きくかつ濃度変
動の幅が数十μm〜数mmであるとスジむらが顕著にな
る。
【0023】本発明はこのような知見に基づいて完成さ
れたものであり、第1に、Ni:32〜38wt%を含
有するFe−Ni系合金からなり、圧延面に対する{1
00}結晶面の配向度比率(%)と、エッチング加工す
る面内における圧延方向に直交する方向についてのNi
のミクロ偏析率(%)との関係が、これらをそれぞれ横
軸および縦軸にとった図2に示す座標において、A
(0,3)、B(65,3)、C(100,2)を結ぶ
線以下の範囲内であることを特徴とする、エッチング加
工による孔ピッチが300μm以下の製品の原板として
使用されるエッチング性に優れた電子部品用低熱膨張合
金薄板を提供するものである。
【0024】また、第2に、Ni:23〜38wt%、
Co:7wt%以下を含有し、かつNi+Coが30〜
38wt%であるFe−Ni−Co系合金からなり、圧
延面に対する{100}結晶面の配向度比率(%)と、
エッチング加工する面内における圧延方向に直交する方
向についてのNiのミクロ偏析率(%)との関係が、こ
れらをそれぞれ横軸および縦軸にとった図2に示す座標
において、A(0,3)、B(65,3)、C(10
0,2)を結ぶ線以下の範囲内であることを特徴とす
る、エッチング加工による孔ピッチが300μm以下の
製品の原板として使用されるエッチング性に優れた電子
部品用低熱膨張合金薄板を提供するものである。ただ
し、Niのミクロ偏析率(%)=濃度変動幅(wt%)
/平均濃度(wt%)×100
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。図2は、エッチング加工の孔ピッチが300μm
以下の製品の原板となる合金薄板について圧延面に対す
る{100}結晶面の配向度比率、Niのミクロ偏析率
とエッチング不良発生の関係を示すグラフであり、横軸
に圧延面に対する{100}結晶面の配向度比率(%)
をとり、縦軸にNiのミクロ偏析率(%)とったもので
ある。なお、Niのミクロ偏析率は、上述の図1に基づ
いて説明したように、濃度変動幅(wt%)/平均濃度
(wt%)×100で表される。
【0026】図2において、点A:{100}結晶面の
配向度比率(%)が0%で、Niのミクロ偏析率が3
%、点B:{100}結晶面の配向度比率(%)が65
%で、Niのミクロ偏析率が3%、点C:{100}結
晶面の配向度比率(%)が100%で、Niのミクロ偏
析率が2%であり、A,B,C点を結ぶ線以下の図中の
斜線部で示す領域内がスジむら等のエッチング不良が発
生せず良好なエッチング性が得られた領域である。な
お、図2中のプロットは、後述する実施例に対応するも
のである。
【0027】この図に示すように、Niのミクロ偏析が
3%を超えると、Ni成分の濃度変動によるエッチング
速度の差が大きいためエッチングのむらを生じる。ただ
し、{100}結晶面の配向度比率(%)が65%以上
でエッチング速度が速い場合には、Ni成分の濃度変動
によりエッチング速度の差がより助長されるため、Ni
のミクロ偏析率が3%以下であっても点Bと点Cとを結
ぶ直線より上側の領域であればエッチング不良が発生す
る。
【0028】エッチング孔径は、エッチング液に対して
材料を保護するレジスト膜の開孔径により制御するが、
実際には、図3に示すように、材料は深さ方向だけでは
なく、幅方向にもエッチングされる。互いに近接する電
子ビームの通過孔を高精度に穿孔するにあたっては、幅
方向に対して深さ方向のエッチング速度が速いほうが有
利である。すなわち、圧延面に対する{100}結晶面
の配向比率を高くし、深さ方向のエッチング速度を速く
することが望ましい。また、エッチング後の表面性状は
結晶面によって異なるため、{100}結晶面の配向度
比率を高くすることによってエッチング界面性状を均一
化することができる。このようなエッチング性を評価す
る指標の一つとしてエッチングファクターがある。図3
はこのエッチングファクターを説明するための図であ
り、参照符号1は合金薄板、2はレジスト膜である。エ
ッチングファクターは図3に示すエッチング加工による
孔形状から以下の(1)式によって算出される。
【0029】 Ef=2H/(d2−d1) ……(1) ここで、H:孔の深さ、d1:レジスト膜の開孔径、d
2:エッチング後の開孔径である。
【0030】液温60℃、濃度47ボーメの塩化第二鉄
水溶液でスプレー圧2.0kgf/cm2 でスプレー処
理するエッチング条件でフォトエッチングを行なった場
合、上記のような微細な加工を施す製品で良好なエッチ
ング性を得るためのエッチングファクターは2.0以上
であり、このためには{100}結晶面の配向度比率が
65%以上であることが望ましい。よって、より高精度
のエッチング加工を必要とする電子部品用の素材とし
て、図2中の{100}結晶面の配向度比率が65%以
上でかつNiのミクロ偏析率が点Bと点Cを結ぶ直線以
下の領域であるものを用いることが望ましい。
【0031】なお、Niのミクロ偏析率を0.5%未満
に低減するためには、例えば鋼塊における拡散熱処理に
おいて温度が1100℃であれば100時間以上、12
00℃で50時間以上の処理が必要であり、生産効率
著しく低下するため、工業的には好ましくない。
【0032】本発明においては、電子部品の性能を低下
させる寸法変化や位置ずれが生じないような十分な低熱
膨張性を得るために、Niを32〜38wt%を含有す
るFe−Ni系合金を用いる。このような合金を用いる
ことにより、室温〜100℃の平均膨脹係数が2.0
×10-6/℃以下であるような低熱膨張合金薄板が実現
される。
【0033】また、本発明の他の形態においては、7w
t%以下のCoを添加したFe−Ni−Co系合金を用
いる。この場合には、Ni:23〜38wt%、Co:
7wt%以下を含有し、かつNi+Coが30〜38w
t%である。このような組成の合金を用いることによ
り、上記Fe−Ni系合金と同様の低熱膨張性を得るこ
とができる。但し、Coが7wt%を超えるとエッチン
グ性が著しく低下するため、Co量の上限を7wt%と
する。
【0034】本発明の合金は、上記元素の他に、さらに
Si≦0.07wt%、B≦0.02wt%を含有して
もよい。これらの成分が上記範囲で含まれていても本発
明の効果は損なわれない。
【0035】これらの元素のうち、Siは溶鋼の脱酸元
素として使用することができるが、過剰に存在すると黒
化処理において板表層に濃化し、均質で黒色の酸化膜形
成を阻害するため0.07wt%以下であることが好ま
しい。Mnは良好な熱間加工性を確保する上で有用であ
るが、過剰に存在するとエッチング性を低下させ、また
黒化処理において板の表層に濃化し均質で黒色の酸化膜
形成を阻害するため、0.5wt%以下とすることが望
ましい。Bは熱間加工の向上やスケール生成を抑制する
効果があるが、過剰に存在すると黒化処理において板の
表層に濃化し、均質黒色の酸化膜形成を阻害するため
0.02wt%以下とすることが望ましい。Nはプレス
加工性の劣化やエッチング性の劣化をもたらすため、
0.005wt%とすることが望ましい。Oはプレス前
の軟質化焼鈍時に結晶粒の成長を阻害し、プレス成形性
を劣化させるので、0.002wt%以下であることが
望ましい。
【0036】次に、本発明に係る低膨張合金の薄板の製
造方法について説明する。まず、前記成分組成に調整し
た鋼塊を溶製し、1150〜1250℃で20時間以上
の熱処理を施し、続いて分解圧延により厚さ160〜2
50mmとする。さらに、1050〜1250℃で30
分間以上の熱処理を施し、熱間圧延により厚さ2〜3m
mの熱延鋼板を得る。この熱延鋼板について、冷間圧延
と750℃以上での焼鈍を2回以上繰り返し、板厚0.
15〜0.3mmの製品原板を製造する。この際に、上
本発明の配向度比率およびミクロ偏析率は、前記成分
組成の鋼塊を溶製するに際して電磁攪拌によって成分偏
析や以上組織生成を防止し、さらに鋼塊の厚さに応じて
拡散熱処理の温度・時間を調整し、冷間圧延率と中間焼
鈍の時間・温度を調整することにより達成することがで
きる。
【0037】本発明は、エッチング加工される電子部品
用の合金薄板全般を対象とするが、特に高精度のエッチ
ング加工と低熱膨張性が要求されるシャドウマスク用素
材として好適である。本発明における低熱膨張特性を有
するFe−Ni系またはFe−Ni−Co系合金薄板を
素材とするシャドウマスクは熱膨張による位置ずれが少
ないので、これを用いたブラウン管の画像は一段と鮮明
になる。
【0038】
【実施例】以下、本発明の合金薄板をシャドウマスク用
素材として使用する場合の実施例について説明する。表
1に本実施例で用いた鋼の化学成分組成を示す。ここで
はシャドウマスク用素材として必要な低膨張特性、黒化
処理性およびプレス成形性が得られるA〜Cの3種類を
溶製した。
【0039】
【表1】
【0040】これらの鋼を溶製した鋼塊に対して115
0〜1250℃で1〜50時間の熱処理を施し、その後
分塊圧延を行った。引き続き1100℃で1〜5時間の
熱処理を行い、その後熱間圧延して厚さ2.5mmの熱
延鋼板を得た。さらに冷間圧延と700℃以上の温度で
の焼鈍を繰り返し行い、板厚0.2mmの表2に示す薄
板No.1〜29を製造した。なお、No.1〜17が
本発明例であり、No.18〜29が比較例である。
【0041】これらNo.1〜29の薄板の圧延面に対
する{100}結晶面の配向度比率およびNiのミクロ
偏析率を表2に示す。これら配向度比率およびミクロ偏
析率は、上述したように、鋼塊を溶製する際の電磁撹拌
の調整、鋼塊の厚さに応じ拡散熱処理の温度・時間の
調整、および冷間圧延率と中間焼鈍の温度・時間の調整
により変化させた。これらの薄板についてエッチング不
良の有無と加工精度を評価した。その結果も表2に示
す。
【0042】エッチング性の評価は、電子ビーム通過孔
の孔径が120μmφ、孔ピッチ270μmであるフォ
トマスクを使用してフォトエッチング穿孔試験を行な
い、加工後のシャドウマスクの外観についてスジむら等
のエッチング不良の有無と加工精度を判定した。このと
きのフォトエッチングは、液温60℃、47ボーメ濃度
の塩化第二鉄水溶液をスプレー圧2.0kgf/cm2
でスプレー処理する条件で行なった。エッチング不良の
有無は、一方向光源を用いた透過光および反射光による
目視観察によって判定し、加工精度は電子ビーム通過孔
の面積について設計寸法に対する変動率の平均を求め
た。
【0043】
【表2】
【0044】表2に示すように、本発明例であるNo.
1〜17ではエッチング不良が発生せず、特に{10
0}結晶面の配向比率が高いNo.11〜17では極め
て高い加工精度が得られた。
【0045】これに対して、比較例であるNo.18〜
29はいずれも{100}結晶面の配向度比率に対して
Niのミクロ偏析率が高すぎたために、Ni成分の濃度
変動による相対的なエッチング速度の差が助長されてス
ジむらを生じるとともに、エッチング孔の設計寸法に対
して大きなずれを生じた。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
特定組成のFe−Ni系合金またはFe−Ni−Co
合金を素材として用い、圧延面に対する{100}結晶
面の配向度比率とNiのミクロ偏析率を所定の範囲に規
定することにより、エッチング不良が発生せず、高精度
の加工が可能な電子部品用の低熱膨張合金薄板が提供さ
れ、特にコンピュータディスプレイに使用されるシャド
ウマスク用素材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Niのミクロ偏析率の求め方を説明するための
図。
【図2】圧延面に対する{100}結晶面の配向度比率
およびNiのミクロ偏析率と、エッチング不良発生との
関係を示すグラフ。
【図3】エッチングファクターを説明するための模式
図。
【図4】シャドウマスクにおいてエッチング加工後に発
生したスジむらの状態を説明するための模式図。
【符号の説明】
1……合金薄板、2……レジスト膜、d1……レジスト
膜の開孔径、d2……エッチング後の開孔径、H……エ
ッチング後の孔の深さ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01J 1/52 H01J 1/52 29/07 29/07 Z (72)発明者 鹿毛 勇 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−9658(JP,A) 特開 平6−279946(JP,A) 特公 昭63−64514(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 H01J 1/48

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni:32〜38wt%を含有するFe
    −Ni系合金からなり、圧延面に対する{100}結晶
    面の配向度比率(%)と、エッチング加工する面内にお
    ける圧延方向に直交する方向についてのNiのミクロ偏
    析率(%)との関係が、これらをそれぞれ横軸および縦
    軸にとった図2に示す座標において、A(0,3)、B
    (65,3)、C(100,2)を結ぶ線以下の範囲内
    であることを特徴とする、エッチング加工による孔ピッ
    チが300μm以下の製品の原板として使用されるエッ
    チング性に優れた電子部品用低熱膨張合金薄板。ただ
    し、Niのミクロ偏析率(%)=濃度変動幅(wt%)
    /平均濃度(wt%)×100
  2. 【請求項2】 Ni:23〜38wt%、Co:7wt
    %以下を含有し、かつNi+Coが30〜38wt%で
    あるFe−Ni−Co系合金からなり、圧延面に対する
    {100}結晶面の配向度比率(%)と、エッチング加
    工する面内における圧延方向に直交する方向についての
    Niのミクロ偏析率(%)との関係が、これらをそれぞ
    れ横軸および縦軸にとった図2に示す座標において、A
    (0,3)、B(65,3)、C(100,2)を結ぶ
    線以下の範囲内であることを特徴とする、エッチング加
    工による孔ピッチが300μm以下の製品の原板として
    使用されるエッチング性に優れた電子部品用低熱膨張合
    金薄板。ただし、Niのミクロ偏析率(%)=濃度変動
    幅(wt%)/平均濃度(wt%)×100
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