JP3751396B2 - 絶縁膜の評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、絶縁膜の評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置に用いられる絶縁膜の一つであるゲート酸化膜の評価を行うにあたっては、化学エッチング液による化学的ウェットエッチング法が用いられていた。図18〜図20は、このような化学的ウェットエッチング法を用いたゲート酸化膜の評価方法を順に示す断面図である。
【0003】
図18は、評価対象である半導体装置の構造を示す断面図である。シリコン基板1上に絶縁膜たるゲート酸化膜2が形成され、さらに、ゲート酸化膜2上にポリシリコン膜3が形成されている。このとき、ゲート酸化膜2には、欠陥4及び膜質異常による絶縁耐圧不良部5が生じているものとする。
【0004】
この半導体装置を化学エッチング液7に浸漬する(図19)。この化学エッチング液7は、シリコン基板1及びポリシリコン膜3に対してはエッチングレートが高く、シリコン酸化物たるゲート酸化膜2に対してはエッチングレートが低いという性質を有しており、その代表的なものとしては、KOH,NaOH,LiOH,CsOH,NH4OH,エチレンジアミンピロカテコール,ヒドラジン及びコリンを含むようなアルカリ溶液が挙げられる。例えば、化学エッチング液7として60°Cに昇温した5規定のKOHを用いることができる。
【0005】
上述のごとく化学エッチング液7はポリシリコン膜3に対してエッチングレートが高いため、化学エッチング液7中に浸漬されたポリシリコン膜3は表面から次第にエッチングされる。また、図18に示すようにゲート酸化膜2に欠陥4が生じている場合には、欠陥4を埋めるポリシリコン膜3もエッチング液7によってエッチングされる。さらに、化学エッチング液7はシリコン基板1に対してもエッチングレートが高いため、シリコン基板1のうち欠陥4を埋めるポリシリコン膜3と接触していた部分は、化学エッチング液7によって結晶面に沿ってエッチングされ、シリコン基板1の表面にエッチング跡12が形成される(図20)。従って、このエッチング跡12の形成の有無を観察することにより、ゲート酸化膜2に生じている欠陥4の位置を同定することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の絶縁膜の評価方法では、ゲート酸化膜2に絶縁耐圧不良部5が生じていても、これが化学エッチング液7に対するマスクとして機能するため、絶縁耐圧不良部5の下にあるシリコン基板1が化学エッチング液7によってエッチングされることはない。従って、絶縁耐圧不良部5の下にあるシリコン基板1の表面にはエッチング跡12が形成されないため、絶縁耐圧不良部5を発見することができないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、半導体装置のゲート酸化膜に生じている欠陥とともに、絶縁耐圧不良部をも発見できるような評価方法を得ること、さらには、欠陥や絶縁耐圧不良部の程度を分類することができるような評価方法を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明のうち請求項1に係る絶縁膜の評価方法は、導電体上に形成された絶縁膜を評価する方法であって、(a)絶縁膜上に複数に分離された半導体層を形成する工程と、(b)工程(a)で得られた構造を水酸基を含むアルカリ性溶液に浸漬する工程と、(c)アルカリ性溶液に対して導電体の電位を高めることにより、水酸基の働きによって、絶縁膜の欠陥上に形成されている部分の半導体層の表面に不動態化層を形成するとともに、不動態化層の形成と並行して他の部分の半導体層を除去する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
この発明のうち請求項2に係る絶縁膜の評価方法は、導電体上に形成された絶縁膜を評価する方法であって、(a)絶縁膜上に複数に分離された半導体層を形成する工程と、(b)工程(a)で得られた構造を水酸基を含むアルカリ性溶液に浸漬する工程と、(c)アルカリ性溶液に対して導電体の電位を高める工程とを備え、導電体の電位を高めるために印加する電圧を下げつつ、工程(b)と(c)とを繰り返すことを特徴とするものである。
【0010】
この発明のうち請求項3に係る絶縁膜の評価方法は、導電体上に形成された絶縁膜を評価する方法であって、(a)絶縁膜上に半導体層を形成する工程と、(b)工程(a)で得られた構造を水酸基を含むアルカリ性溶液に浸漬する工程と、(c)アルカリ性溶液及び半導体層に対して導電体の電位を高めることにより、水酸基の働きによって、絶縁膜の欠陥上に形成されている部分の半導体層の表面に不動態化層を形成するとともに、不動態化層の形成と並行して他の部分の半導体層を除去する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
この発明のうち請求項4に係る絶縁膜の評価方法は、導電体上に形成された絶縁膜を評価する方法であって、(a)絶縁膜上に半導体層を形成する工程と、(b)工程(a)で得られた構造を水酸基を含むアルカリ性溶液に浸漬する工程と、(c)アルカリ性溶液及び半導体層に対して導電体の電位を高める工程とを備え、半導体層の電位を固定するために、半導体層の上面を覆って電極を形成することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する前に、まず、本発明の先駆けとなった技術、及びその課題について述べる。
【0013】
図1は、評価対象たる半導体装置の構造を示す断面図である。半導体装置は、シリコン基板1上に形成されたゲート酸化膜2と、ゲート酸化膜2上に形成されたポリシリコン膜3とを備えている。また、ゲート酸化膜2には欠陥4及び絶縁耐圧不良部5が生じているものとする。
【0014】
図2〜図4は、図1に示す半導体装置における絶縁膜の評価方法を順に示す断面図である。図2に示されるように、半導体装置は湿式エッチング装置11の備える化学エッチング液7に浸漬される。湿式エッチング装置11はさらに、化学エッチング液7に浸漬される接地電極8並びに接地電極8に接続される負極及びシリコン基板1に接続される正極を有する直流電圧電源6を備えている。そしてシリコン基板1と化学エッチング液7との間に直流電圧を印加した状態で化学エッチングを行う。化学エッチング液7の代表的なものとしては、従来の技術でも示したように、KOH,NaOH,LiOH,CsOH,NH4OH,エチレンジアミンピロカテコール,ヒドラジン及びコリンのようなアルカリ溶液が挙げられる。ここでヒドラジン(N2H4)自体は水酸基を持たないが、水溶液中では
【0015】
【化1】
【0016】
のようになり、水酸基が発生する。例えば化学エッチング液7として60°Cに昇温された5規定のKOHを用いることができる。
【0017】
直流電圧電源6によってシリコン基板1と化学エッチング液7との間に電圧を印加すると、欠陥4又は絶縁耐圧不良部5を介してシリコン基板1からポリシリコン膜3へリーク電流が流れ込み、ポリシリコン膜3のうち欠陥4又は絶縁耐圧不良部5上にある部分はシリコン基板1と同電位になる。そのため図3に示すように、欠陥4又は絶縁耐圧不良部5上に形成されているポリシリコン膜3の表面には、陽極酸化によって不動態化層9が形成される。また、シリコン基板1のうち化学エッチング液7に接する面には不動態化層10が形成される。
【0018】
このとき、欠陥4や絶縁耐圧不良部5が生じていないゲート酸化膜2上のポリシリコン膜3の表面に不動態化層9が形成されないように、印加する直流電圧の大きさを調整する必要がある。
【0019】
ポリシリコン膜3のうち、表面に不動態化層9が形成されていない部分は化学エッチング液7によってエッチングされる。このエッチングは不動態化層9の形成と並行して行われる。従って図4に示すように、欠陥4又は絶縁耐圧不良部5上においてのみ不動態化層9は残存する。
【0020】
ここで、不動態化層9の形成及び化学エッチングによる除去について説明する。シリコン基板1を構成するポリシリコンのアルカリ溶液中での酸化は、
【0021】
【化2】
【0022】
のように起こり、酸化シリコンである不動態化層9が形成される。この酸化と並行して
【0023】
【化3】
【0024】
のようなシリコン化合物のエッチングが起こる。酸化シリコンのエッチング反応も同様であると考えられる。特に化学エッチング液7としてKOHが用いられる場合には、
【0025】
【化4】
【0026】
の反応が進み、シリコンは
【0027】
【化5】
【0028】
のようにエッチングされる。以上の化学式より、不動態化層9の形成及び除去のどちらにも水酸基が関与することが分かる。
【0029】
以上のように、欠陥4及び絶縁耐圧不良部5のいずれもが導電性を有することを利用してこれらの上に不動態化層9を形成し、不動態化層9が形成されていない領域のポリシリコン膜3を化学エッチング液7で化学エッチングするため、欠陥4のみならず、従来の技術では発見が不可能であった絶縁耐圧不良部5をも発見することができる。
【0030】
しかし、上記のような評価方法においては、欠陥4や絶縁耐圧不良部5が生じているゲート酸化膜2上にあるポリシリコン膜3の表面のみに不動態化層9を形成させるように電圧印加条件を適切に設定する必要があり、しかもこの設定は必ずしも容易ではなかった。即ち、ポリシリコン膜3は抵抗が低いため、印加電圧が適切な条件よりわずかでも大きすぎると不動態化層9が広範囲に形成されてしまうため欠陥4や絶縁耐圧不良部5の位置を同定することができず、逆にわずかでも小さすぎるとポリシリコン膜3に電圧が印加されず、全てエッチングされてしまうという問題があった。
【0031】
そこで、このような課題を克服するための技術として、以下、本発明の実施の形態について述べる。
【0032】
実施の形態1.
図5〜図7は、評価対象となる半導体装置の製造工程を順に示す断面図である。まずシリコン基板1上にゲート酸化膜2を形成し(図5)、次にゲート酸化膜2上にポリシリコン膜30を形成する(図6)。その後、通常用いられているホトリソグラフィー技術により、ポリシリコン膜30を可能な限り微細にパターニングしてポリシリコンパターン31とする。ここで、ゲート酸化膜2には欠陥4及び絶縁耐圧不良部5が生じており、これらはポリシリコンパターン31によって覆われているものとする(図7)。なお図8は、図7に示す断面構造を上方から見たときの構造を示す平面図である。ポリシリコンパターン31がゲート酸化膜2上で縦列方向に複数に分離されていることが分かる。
【0033】
図9及び図10は、図7に示す半導体装置の評価方法を順に示す断面図である。評価対象である半導体装置のシリコン基板1を直流電圧電源6の正側、接地電極8を直流電圧電源6の負側に接続し、半導体装置及び接地電極8を化学エッチング液7に浸漬する(図9)。なお、直流電圧電源6、化学エッチング液7、接地電極8は、いずれも上述の先駆技術で使用されていたものと同様のものである。
【0034】
次に、シリコン基板1と化学エッチング液7との間に、不動態化層が形成される電圧以上の電圧を直流電圧電源6によって印加する。すると、すべてのポリシリコンパターン31のうち、欠陥4や絶縁耐圧不良部5が生じていないゲート酸化膜2上のポリシリコンパターン31には電圧が印加されないため、上述の先駆技術の説明で述べたのと同様の作用によりこれらのポリシリコンパターン31はエッチングされるが、欠陥4や絶縁耐圧不良部5が生じているゲート酸化膜2上のポリシリコンパターン31には当該欠陥4又は絶縁耐圧不良部5を介して電圧が印加されるため、その表面に不動態化層9が形成され、これらのポリシリコンパターン31のエッチングは進まない。なお、エッチング液7と接するシリコン基板1の表面に不動態化層10が形成され、エッチングが進まないのは、先駆技術の場合と同様である(図10)。
【0035】
しかも、欠陥4又は絶縁耐圧不良部5上のポリシリコンパターン31の表面に不動態化層9を形成する工程と、その他のポリシリコンパターン31を化学エッチング液7によってエッチングする工程とが同時に行われるため、これを別工程で行う場合と比較すると処理時間を短縮することができる。
【0036】
図11は、KOH水溶液によるシリコンのエッチングレートを表すグラフであるが、これによると、例えば、化学エッチング液7として60°Cに昇温された0.25規定以上のKOHを用いた場合は、電圧が印加されない部分のシリコンのエッチングレートはKOHの濃度によらずほぼ500nm/minであり、数Vの電圧を1分程度印加することにより、処理を完了することができる。なお、5規定のKOHを用いれば自己発熱によって65°C程度に液温が上昇する。
【0037】
従って、本処理が完了した時点で不動態化層9がゲート酸化膜2上に残置しているか否かを観察することにより、ゲート酸化膜2に欠陥4又は絶縁耐圧不良部5が生じていたか否かを判断でき、その位置を同定することができる。
【0038】
しかも、本実施の形態1に係る半導体装置の評価方法においては、ポリシリコン膜30を複数に分離してポリシリコンパターン31としたので、ポリシリコンパターン31をゲート酸化膜2上にパターン単位で残すことができ、不動態化層9が広範囲に残って正確な同定の妨げとなるということもない。従って、不動態化層9が形成され始める電圧よりもかなり高い電圧を印加することができるため、微小な欠陥4や絶縁耐圧不良部5を発見することができる。
【0039】
さらに、先駆技術のように不動態化層9を局所的に残置させるための困難な電圧設定を行う必要がないため、欠陥4又は絶縁耐圧不良部5が生じている箇所を簡便に同定することができる。
【0040】
また、評価対象である半導体装置は、従来から用いられている周知の技術を用いて非常に簡便に形成することができ、さらに、一般にTEG(Test Element Group)による電気的特性の測定ではtest elementに電圧を印加したり、test elementの電位を固定するための配線やパッドが必要であったのに対し、本実施の形態1に係る半導体装置の評価方法によるとポリシリコンパターン31の電位を固定する必要等がないため、その分構造が単純になり、形成工程を減少させることができる。
【0041】
なお、本実施の形態1に係る絶縁膜の評価方法においては、個々のポリシリコンパターン31の大きさが小さく、隣り合うポリシリコンパターン31同士の間隔が狭い方が、欠陥4及び絶縁耐圧不良部5の位置をより正確に同定することができるのはいうまでもない。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態1ではゲート酸化膜2に生じている欠陥4及び絶縁耐圧不良部5の位置を簡便に同定するための方法について述べたが、欠陥4及び絶縁耐圧不良部5の程度を分類できればさらに望ましい。
【0043】
図12は、ポリシリコン膜に電圧を印加しながら化学エッチング液中に浸漬したときの、印加電圧とポリシリコン膜表面に形成される不動態化層の厚さとの関係を示したグラフである。このように、印加電圧の上昇に伴って不動態化層の厚さが増加することが実験により判明している。
【0044】
従って、実施の形態1において、直流電圧電源6によってシリコン基板1と化学エッチング液7との間に印加する電圧が高い方が、欠陥4又は絶縁耐圧不良部5を介してシリコン基板1からポリシリコンパターン31に流れるリーク電流も増加し、ポリシリコンパターン31の電位も高くなるため、より微小な欠陥4及び絶縁耐圧不良部5を発見することができる。
【0045】
本実施の形態2に係る半導体装置の評価方法は、これを利用して欠陥4及び絶縁耐圧不良部5の程度を分類するものである。
【0046】
図13は、評価対象となる半導体装置の構造を示す断面図である。半導体装置自体は実施の形態1に示した場合と同様に周知の技術によって製造されるが、図13に示すように、ゲート酸化膜2に、程度の大きい欠陥4aと程度の小さい欠陥4bとが生じており、これらはポリシリコンパターン3a,3bにそれぞれ覆われているものとする。
【0047】
図14及び図15は、本実施の形態2に係る絶縁膜の評価方法を順に示す断面図である。まず、図13で示した半導体装置のシリコン基板1を直流電圧電源6の正側、接地電極8を直流電圧電源6の負側に接続し、半導体装置及び接地電極8を化学エッチング液7に浸漬する。このとき、実施の形態1でシリコン基板1に印加した電圧、即ち、ポリシリコンパターンの表面に不動態化層9が形成され始める電圧よりもかなり高い電圧V1を印加する。
【0048】
すると、欠陥4a,4bが生じていないゲート酸化膜2上に形成されたポリシリコンパターン31には電圧が印加されないので、実施の形態1に示した場合と同様に、これらのポリシリコンパターン31は化学エッチング液7によりエッチングされる。一方、欠陥4a,4bが生じているゲート酸化膜2上に形成されたポリシリコンパターン3a,3bには欠陥4a,4bを介してシリコン基板1からリーク電流が流れ込み、電圧が印加されるので、ポリシリコンパターン3a,3bの表面に不動態化層9a1,9bが形成される。このとき、程度の大きい欠陥4aを介してポリシリコンパターン3aに流れ込むリーク電流の方が、程度の小さい欠陥4bを介してポリシリコンパターン3bに流れ込むリーク電流に比較して大きいため、図12に示したグラフの関係により、不動態化層9a1の膜厚の方が、不動態化層9bの膜厚よりも厚くなる(図14)。
【0049】
次に、上記と同様に半導体装置を化学エッチング液7中に浸漬した状態で、シリコン基板1と化学エッチング液7との間に、V1よりも低い電圧を印加する。
【0050】
印加電圧が低い場合には、ポリシリコンパターン3aには欠陥4aを介してリーク電流が流れ込み電圧が印加されるが、欠陥4bは欠陥4aより小さいため、ポリシリコンパターン3bにはリーク電流が流れ込まず電圧が印加されないことがある。
【0051】
このとき化学エッチング液7はシリコンより速度は遅いが不動態化層もエッチングするので、ポリシリコンパターン3bの表面に形成された不動態化層9bはやがてエッチングされ、そして、ポリシリコンパターン3bもエッチングされる。一方、ポリシリコンパターン3aの表面には、不動態化層9a1よりも薄いが不動態化層9a2が形成される(図15)。従って、印加電圧を下げた後にゲート酸化膜2上に不動態化層が残っているか否かを観察することにより、欠陥の程度を分類することができる。
【0052】
つまりゲート酸化膜2に欠陥4や絶縁耐圧不良部5が多数混在するときは、シリコン基板1に印加する電圧をV1から少しずつ下げて順次評価することにより、欠陥4の程度を細かく分類することができる。
【0053】
以上、ゲート酸化膜2に欠陥4a,4bが存在する場合について述べたが、絶縁耐圧不良部5が存在する場合であっても同様にその程度の分類を行うことができる。
【0054】
以上のように、本実施の形態2に係る半導体装置の評価方法によれば、シリコン基板1に印加する電圧を下げてエッチングを行った後にゲート酸化膜2上に不動態化層が残置しているか否かを観察するという工程を繰り返すので、欠陥4及び絶縁耐圧不良部5の位置が同定できるだけでなく、その程度も分類することができる。
【0055】
実施の形態3.
実施の形態1及び2では、ゲート酸化膜2に生じている欠陥4又は絶縁耐圧不良部5の位置をポリシリコンパターン単位で同定しており、ポリシリコンパターンの個々の大きさを可能な限り小さくすることで、その位置の同定もほぼ正確に行うことができるが、さらに局所的に欠陥4及び絶縁耐圧不良部5の位置を同定することもできる。
【0056】
図16及び図17は、本発明の実施の形態3に係る絶縁膜の評価方法を順に示す断面図である。まず、半導体装置のシリコン基板1を直流電圧電源6の正側、接地電極8を直流電圧電源6の負側に接続する。さらにポリシリコン膜30の上面を覆うように電極13を形成し、この電極13を直流電圧電源6の負極に接続する。これによりポリシリコン膜30の電位が接地電極8の電位、即ち化学エッチング液7の電位に固定される。なお、評価対象たる半導体装置は実施の形態1又は2の場合と同様に周知の技術によって製造されるが、ここではゲート酸化膜2に欠陥4cが生じているものとする。
【0057】
次に、半導体装置及び接地電極8を化学エッチング液7中に浸漬し、シリコン基板1と化学エッチング液7及びポリシリコン膜30との間に、ポリシリコン膜30の表面に不動態化層が形成される電圧以上の電圧を印加する(図16)。
【0058】
すると、シリコン基板1には直流電圧電源6によって正の電圧が印加されるので、欠陥4cを介してシリコン基板1からポリシリコン膜30へリーク電流が流れ込むが、このときポリシリコン膜30の電位は接地電極8の電位と同電位に固定されているため、直流電圧電源6による正の電圧はポリシリコン膜30のうち欠陥4cに接触する部分のみにしか印加されない。
【0059】
従って、欠陥4cに接触する部分以外のポリシリコン膜30はエッチング液7によってポリシリコン膜30の側壁部分から次第にエッチングされるが(図17)、ポリシリコン膜30のうち欠陥4cに接触する部分にには直流電圧電源6から正の電圧が印加されるので、その部分のポリシリコン膜30の表面に不動態化層9cが形成され、エッチング液7によってエッチングされることはない。
【0060】
従って、本実施の形態3に係る絶縁膜の評価方法によれば、ポリシリコン膜30の電位を接地電極8の電位と同電位にすることにより、ポリシリコン膜30のうち正の電圧が印加される領域が狭くなり、より局所的に不動態化層9cを残すことができるため、ゲート酸化膜2に生じている欠陥や絶縁耐圧不良部の位置をさらに正確に同定することができる。
【0061】
また、ポリシリコン膜30の電位が固定されていることから、実施の形態1又は2に示したように予めポリシリコン膜30を複数に分離する必要がなく、また、シリコン基板1にかなり高い電圧を印加することができるため、程度の小さい欠陥や絶縁耐圧不良部についても、簡便かつ正確にその位置を同定することができる。
【0062】
【発明の効果】
この発明のうち請求項1に係るものによれば、絶縁膜に生じている欠陥又は絶縁耐圧不良部上の半導体層は溶液に対して陽極として機能し、その表面に不動態化層が形成されるため、これが溶液によって除去されることはない。一方、その下の絶縁膜に欠陥や絶縁耐圧不良部が生じていない半導体層の表面には不動態化層が形成されないため、この半導体層は溶液によって除去される。従って、絶縁膜上に不動態化層が形成されているか否かを観察することにより、絶縁膜に生じている欠陥及び絶縁耐圧不良部の位置を同定することができる。
【0063】
しかも、半導体層は予め複数に分離されているため、溶液に対して半導体層の電位が高くなる領域は拡大せず、不動態化層が広範囲に形成されることを防止することができる。従って、導電体と溶液との間に印加すべき電圧は不動態化層が形成される電圧以上の電圧であれば高めに設定してもよく、煩雑な印加電圧の調整を行う必要もない。
【0064】
また、この発明のうち請求項2に係るものによれば、導電体の電位を高めるために印加する電圧を下げながら、工程(a)で得られた構造を溶液に浸漬する工程と導電体の電位を高める工程とを繰り返す。よって、欠陥又は絶縁耐圧不良部が生じている絶縁膜上に形成された半導体層の表面に形成された不動態化層は、その欠陥等の程度が小さいものから順に溶液によって除去される。従って、欠陥及び絶縁耐圧不良部の位置を同定できるのみならず、その程度をも分類することができる。
【0065】
また、この発明のうち請求項3に係るものによれば、溶液及び半導体層に対して導電体の電位を高めることから、導電体に高電圧を印加しても、絶縁膜に生じている欠陥又は絶縁耐圧不良部に接触する部分の半導体層のみが陽極化される。従って、半導体層の表面に不動態化層が形成される領域がより局所的になるため、欠陥や絶縁耐圧不良部の位置をさらに正確に同定することができる。
【0066】
また、この発明のうち請求項4に係るものによれば、半導体層の上面を覆って電極を形成するため、半導体層の上面から半導体層が除去されることはなく、電極と半導体層との接触不良を回避しつつ半導体層の電位を固定することができる。しかも、半導体層の側壁部が溶液に接触しているため、この部分から半導体層が次第に除去されることを促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の先駆技術を示す断面図である。
【図2】 本発明の先駆技術を示す断面図である。
【図3】 本発明の先駆技術を示す断面図である。
【図4】 本発明の先駆技術を示す断面図である。
【図5】 本発明の実施の形態1に係る絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図6】 本発明の実施の形態1に係る絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図7】 本発明の実施の形態1に係る絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図8】 本発明の実施の形態1に係る絶縁膜の評価方法を示す平面図である。
【図9】 本発明の実施の形態1に係る絶縁膜の評価方法を示す平面図である。
【図10】 本発明の実施の形態1に係る絶縁膜の評価方法を示す平面図である。
【図11】 KOH水溶液によるシリコンのエッチングレートを表すグラフである。
【図12】 印加電圧とポリシリコン膜表面に形成される不動態化層の厚さとの関係を示したグラフである。
【図13】 本発明の実施の形態2に係る絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図14】 本発明の実施の形態2に係る絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図15】 本発明の実施の形態2に係る絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図16】 本発明の実施の形態3に係る絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図17】 本発明の実施の形態3に係る絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図18】 従来の絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図19】 従来の絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【図20】 従来の絶縁膜の評価方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1 シリコン基板、2 ゲート酸化膜、3,30 ポリシリコン膜、31 ポリシリコンパターン、4,4a,4b,4c 欠陥、5 絶縁耐圧不良部、6 直流電圧電源、7 化学エッチング液、8 接地電極、9,9a1,9a2,9b,9c,10 不動態化層、13 電極。
Claims (4)
- 導電体上に形成された絶縁膜を評価する方法であって、
(a)前記絶縁膜上に複数に分離された半導体層を形成する工程と、
(b)前記工程(a)で得られた構造を水酸基を含むアルカリ性溶液に浸漬する工程と、
(c)前記アルカリ性溶液に対して前記導電体の電位を高めることにより、前記水酸基の働きによって、前記絶縁膜の欠陥上に形成されている部分の前記半導体層の表面に不動態化層を形成するとともに、前記不動態化層の形成と並行して他の部分の前記半導体層を除去する工程と
を備える絶縁膜の評価方法。 - 導電体上に形成された絶縁膜を評価する方法であって、
(a)前記絶縁膜上に複数に分離された半導体層を形成する工程と、
(b)前記工程(a)で得られた構造を水酸基を含むアルカリ性溶液に浸漬する工程と、
(c)前記アルカリ性溶液に対して前記導電体の電位を高める工程と
を備え、
前記導電体の電位を高めるために印加する電圧を下げつつ、前記工程(b)と(c)とを繰り返す、絶縁膜の評価方法。 - 導電体上に形成された絶縁膜を評価する方法であって、
(a)前記絶縁膜上に半導体層を形成する工程と、
(b)前記工程(a)で得られた構造を水酸基を含むアルカリ性溶液に浸漬する工程と、
(c)前記アルカリ性溶液及び半導体層に対して前記導電体の電位を高めることにより、前記水酸基の働きによって、前記絶縁膜の欠陥上に形成されている部分の前記半導体層の表面に不動態化層を形成するとともに、前記不動態化層の形成と並行して他の部分の前記半導体層を除去する工程と
を備える絶縁膜の評価方法。 - 導電体上に形成された絶縁膜を評価する方法であって、
(a)前記絶縁膜上に半導体層を形成する工程と、
(b)前記工程(a)で得られた構造を水酸基を含むアルカリ性溶液に浸漬する工程と、
(c)前記アルカリ性溶液及び半導体層に対して前記導電体の電位を高める工程と
を備え、
前記半導体層の電位を固定するために、前記半導体層の上面を覆って電極を形成する、絶縁膜の評価方法。
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