JP3750920B2 - ブレーキ増圧マスタシリンダ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操作手段の操作力による入力に応じて調圧された液圧によりマスタシリンダ圧が増圧されて出力される増圧マスタシリンダの技術分野に属し、特に、入力側の作動と出力側の作動とを分離して出力側の作動に影響されることなく、入力ストロークを種々設定できる増圧マスタシリンダの技術分野に属するものである。なお、以下の説明において、マスタシリンダをMCYとも表記する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車のブレーキシステムにおいては、従来、液圧によりブレーキペダルのペダル踏力を所定の大きさに倍力させて大きなブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧倍力装置が採用されている。このブレーキ液圧倍力装置は、小さなブレーキペダル踏力で大きなブレーキ力を得ることができ、これにより、制動を確実にしかつ運転者の労力を軽減することができるものである。
【0003】
このような従来のブレーキ液圧倍力装置は、ブレーキペダルのペダル踏力に基づく入力で制御弁が作動して入力に応じた作動液圧を発生させ、この作動液圧を動力室に導入することで、入力を所定の倍力比で倍力して出力するようになっている。そして、このブレーキ液圧倍力装置の出力でブレーキマスタシリンダのピストンを作動させて、マスタシリンダがマスタシリンダ圧を発生し、このマスタシリンダ圧がホイールシリンダにブレーキ液圧として導入されることにより、ブレーキが作動するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のブレーキシステムにおいては、例えば、アンチロック制御(ABS)や急ブレーキ時等にブレーキ力をアシストするブレーキアシスト制御や回生ブレーキを併用する際の回生協調ブレーキ制御等のブレーキ作動中のブレーキ液圧制御、および車間制御用ブレーキ制御や障害物等の回避のための衝突回避ブレーキ制御やトラクションコントロール(TRC)のためのブレーキ制御等の自動ブレーキ制御等の種々のブレーキ液圧制御が行われている。
このようなブレーキ制御が行われるとき、液圧倍力装置の入力ストロークが、例えばブレーキフィーリング等のため、このブレーキ制御に影響されないようにすることが求められる。
【0005】
しかしながら、従来のブレーキ液圧倍力装置とブレーキマスタシリンダとを組み合わせたブレーキシステムでは、マスタシリンダとホイールシリンダとの関係から、マスタシリンダピストンのストロークが決まり、このマスタシリンダピストンのストロークでブレーキ液圧倍力装置の入力ロッドのストローク、つまりブレーキペダルのペダルストロークが決まるようになっている。このため、入力側のストロークがブレーキ制御に影響されてしまい、従来のブレーキ液圧倍力装置とブレーキマスタシリンダとの組み合わせでは、前述の要求に確実にかつ十分に応えることが困難であった。
【0006】
また、ブレーキフィーリング等のため、入力側であるブレーキペダルのストローク特性を変更する場合、ブレーキマスタシリンダおよびブレーキマスタシリンダより先のブレーキ回路も影響を受けるため、マスタシリンダのサイズ変更等のこれら出力側の変更が必要となる。しかも、出力側を変更すると、ブレーキの出力特性が影響されてしまうため、ブレーキシステム全体の見直し変更が必要となり、変更規模が大がかりになってしまう。
【0007】
更に、車両の種類やサイズ等によってマスタシリンダより先のブレーキ回路が種々変わっても、入力側はこのような異なるブレーキ回路にできるだけ影響されないようにすることが望まれる。
そこで、入力側と出力側とをただ単に分離させて、入力ストロークに関係なく、出力を発生させるようにすると、入力側がストロークしなくなってしまい、入力側のストロークを確保することができなくなる。
【0008】
このようなことから、従来では、マスタシリンダより先のブレーキ回路にストロークシミュレータを設けて、ブレーキ液圧倍力装置の入力ストロークがブレーキ制御に影響されないようにするとともに、入力ストロークを確保することが提案されている。
しかしながら、ストロークシミュレータを特別に設けたのでは、このストロークシミュレータに用いられているストロークシリンダや電磁開閉弁等の多くの部品を必要とするため、構成が複雑であるばかりでなく、コストが高いものとなってしまう。
また、ストロークシミュレータ等を設けた場合にも、液圧源の失陥時には、確実にブレーキ作動を行うことができるようにしなければならないという問題もある。
【0009】
更に、アンチロック制御システムにおいては、制動時車輪がロック傾向になった場合には、ブレーキ力を制御して車輪のロック傾向を解消できるようにすることが望まれる。更に、回生ブレーキと組み合わされた回生ブレーキ協調システムにおいては、ブレーキ液圧倍力装置の作動中に回生ブレーキ作動が作動した場合に、この回生ブレーキ作動によるブレーキ力の分だけ、ブレーキ液圧倍力装置の作動によるブレーキ力を下げる必要があり、このような場合にブレーキ液圧倍力装置の出力をその分低下できるようにすることが望まれる。また、ブレーキアシストシステムと組み合わされたブレーキシステムにおいては、ブレーキ液圧倍力装置の作動時に運転者が所定のペダル踏力で踏み込めないことにより所定のブレーキ力を得ることができず、ブレーキアシストが必要な場合に、ブレーキ液圧倍力装置の作動によるブレーキ力を上げる必要があり、このような場合にブレーキ液圧倍力装置の出力を上昇できるようにしたりすることが望まれる。
このようにブレーキ作動中にブレーキ制御が行われた場合に、ブレーキペダルがその影響を受けないようにすることが求められる。
【0010】
更に、車間制御ブレーキシステムでは、走行中、前車との車間距離が短くなるとブレーキを自動的に作動させてこの車間距離を一定の距離に保持することが望まれ、また、衝突回避ブレーキシステムでは、前方等に障害物等があり、この障害物等に衝突するおそれがある場合に、ブレーキを自動的に作動させてこの障害物等との衝突を回避することが望まれる。更に、トラクションコントロールシステムでは、車両発進時に駆動車輪がスリップ傾向になった場合に、この駆動車輪にブレーキを自動的に作動させてこのスリップ傾向を解消し、車両が確実に発進できるようにすることが望まれる。
【0011】
このように自動ブレーキが行われた場合に、ブレーキペダルがその影響を受けないようにすることが求められている。
しかも、このようなブレーキ作動中のブレーキ力制御や自動ブレーキ制御等を行うためのシステムを簡単な構成で形成することが求められている。
更に、車両等の状況に応じて、入力−ストローク特性、入力−ブレーキ圧特性あるいはストローク−ブレーキ圧特性等を簡単な構成で変更できるようにすることも求められている。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、出力側に影響されずに入力側のストローク特性を種々変更することが可能なブレーキ増圧マスタシリンダを提供することである。
本発明の他の目的は、簡単な構造で、増圧したマスタシリンダ圧を発生させて大きなブレーキ力を得ることのでブレーキ増圧マスタシリンダを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明は、ブレーキペダル等のブレーキ操作部材の操作時に加えられる入力でストロークする入力ロッドと、前記入力ロッドで作動制御されて液圧源の液圧を前記入力に応じて制御された液圧を発生させる制御弁と、この制御弁で制御された液圧が供給される加圧室と、ブレーキシリンダに接続されるマスタシリンダ圧室と、前記加圧室に供給された液圧で作動して前記マスタシリンダ圧室にマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダピストンと、前記操作時に作動して前記マスタシリンダ圧室のブレーキ液を前記ブレーキシリンダに送出するブレーキ液送出制御手段とを備え、前記ブレーキ液送出制御手段が、前記操作時にストロークして前記マスタシリンダ圧室のブレーキ液を前記ブレーキシリンダに送出するストロークピストンと、このストロークピストンを作動制御するストロークピストン作動手段とを備えていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2の発明は、前記ストロークピストンが、液圧や圧縮空気等の流体圧または電磁力で作動するようになっていることを特徴としている。
更に、請求項3の発明は、前記マスタシリンダピストンにその作動方向に作用力を必要時に付与するマスタシリンダピストン作用力付与手段を備えていることを特徴している。
【0015】
更に、請求項4の発明、前記ストロークピストンが、ブレーキ増圧マスタシリンダの先端側に前記マスタシリンダピストンに対向して直列に配置されていることを特徴としている。
【0016】
更に、請求項5の発明は、前記マスタシリンダピストン作用力付与手段が出力補助ピストンを備え、外部液圧源の液圧をこの出力補助ピストンに作用することで、前記マスタシリンダピストンの入力を増大するようになっていることを特徴としている。
【0017】
更に、請求項6の発明は、前記マスタシリンダピストン作用力付与手段は出力補助ピストンを備え、ブレーキ増圧マスタシリンダのマスタシリンダ圧をブレーキ液圧制御に応じて制御してホイールシリンダに供給するブレーキ液圧制御装置によってブレーキ液圧制御に応じて制御された液圧をこの出力補助ピストンに作用することで、前記マスタシリンダピストンの入力を増大するようになっていることを特徴としている。
【0018】
更に、請求項7の発明は、前記ストロークピストン作動手段が、ブレーキ増圧マスタシリンダのマスタシリンダ圧をブレーキ液圧制御に応じて制御してホイールシリンダに供給するブレーキ液圧制御装置で構成されており、前記ストロークピストンは、前記ブレーキ液圧制御装置によってブレーキ液圧制御に応じて制御された液圧で作動するようになっていることを特徴としている。
【0019】
【作用】
このような構成をした本発明のブレーキ増圧MCYにおいては、MCY自体が増圧機能を有しているので、従来の負圧倍力装置や液圧倍力装置等の倍力装置を必要とせず、ブレーキ増圧MCYの全長を従来のMCYと倍力装置とを組み合わせたものに比べて倍力装置がない分短くなる。これにより、ブレーキシステムが簡素化されるとともに、ブレーキ増圧MCYの搭載性が向上する。
【0020】
また、ブレーキペダル等のブレーキ操作部材の操作時に作動するブレーキ液送出制御手段により、マスタシリンダ圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに送出されるので、その分、マスタシリンダピストンのストロークが短くなる。したがって、ブレーキ操作部材の操作時の入力ロッドのストロークが短縮する。
更に、ブレーキ液送出制御手段の作動量を制御することで、入力ロッドのストロークが調整されるので、ブレーキ増圧マスタシリンダはストロークシミュレータ機能を有するようになる。これにより、出力側に影響されずに入力側のストローク特性が種々変更可能となる。
【0021】
更に、マスタシリンダピストン作用力付与手段によりマスタシリンダピストンにその作動方向に作用力が付与されるようになる。これにより、マスタシリンダ圧を必要時増圧することが可能になり、ブレーキ増圧マスタシリンダのサーボ比を種々変更可能となる。
【0022】
更に、マスタシリンダピストン作用力付与手段によりマスタシリンダピストンにその作動方向に作用力が付与可能となることで、次のようなブレーキ液圧制御が可能となる。すなわち、回生協調ブレーキシステムにおいては、回生ブレーキ作動時にはマスタシリンダピストン作用力付与手段によるマスタシリンダピストンへの作用力付与を行わないで回生ブレーキ力の分だけブレーキ増圧MCYのマスタシリンダ圧を小さく制御してブレーキ力を小さくし、回生ブレーキ非作動時にはマスタシリンダピストン作用力付与手段によりマスタシリンダピストンへ作用力を付与して、回生ブレーキ力がなくなる分だけブレーキ増圧MCYのマスタシリンダ圧を大きく制御してブレーキ力を大きくすることが可能になる。また、自動ブレーキシステムを備えたブレーキシステムにおいては、自動ブレーキの作動条件成立時にマスタシリンダピストン作用力付与手段によりマスタシリンダピストンへ作用力を付与してマスタシリンダピストンを作動させることでマスタシリンダ圧を発生し、このマスタシリンダ圧で自動的にブレーキを作動させることが可能となる。更に、ブレーキアシストシステムを備えたブレーキシステムにおいては、例えば急ブレーキ操作時等のブレーキアシストが必要なときにマスタシリンダピストン作用力付与手段によりマスタシリンダピストンへ作用力を付与してマスタシリンダ圧を増大させて、ブレーキ操作力の不足分、ブレーキアシストが可能となる。
【0023】
特に、マスタシリンダ圧をブレーキ液圧制御に応じて制御するブレーキ液圧制御装置によって制御された液圧で、マスタシリンダピストンおよびマスタシリンダピストン作用力付与手段の少なくとも一方を作動させることにより、ブレーキ液圧制御に応じてペダルストロークが変更しないようにすることおよびペダル踏力が変更しないようにしてマスタシリンダ圧をブレーキ液圧制御に応じて制御することの少なくとも一方が可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係るブレーキ増圧マスタシリンダの実施の形態の第1例が適用されているブレーキシステムを示す図、図2はこの第1例のブレーキ増圧マスタシリンダの断面図、図3は図2に示すブレーキ増圧マスタシリンダの増圧制御部の部分拡大断面図である。なお、以下の説明において、「前」はいずれの図においても図の左を指し、「後」は図の右を指す。
【0025】
図1に示すように、ブレーキ増圧マスタシリンダの第1例が適用されているブレーキシステム1は、制動時に運転者によって踏み込まれるブレーキペダル2と、このブレーキペダル2のペダル踏力等のブレーキ操作部材の操作力により作動されるブレーキ増圧MCY3と、ブレーキ液を蓄えるリザーバ4と、ブレーキ増圧MCY3で発生されたMCY圧がブレーキ圧として供給されてブレーキ力を発生する前輪側の左右のホイールシリンダ(本発明のブレーキシリンダに相当)5,6と、MCY圧がブレーキ圧としてプロポーショニングバルブ(Pバルブ)7を介して供給されてブレーキ力を発生する後輪側の左右のホイールシリンダ8,9(本発明のブレーキシリンダに相当)と、リザーバ4からブレーキ液を吸い込んでブレーキ増圧MCY3に吐出する第1ポンプ10と、この第1ポンプ10とブレーキ増圧MCY3との間に設けられた常閉の電磁開閉弁11と、第1ポンプ10とこの電磁開閉弁11との間に設けられた第1ポンプ10からブレーキ増圧MCY3へ向かうブレーキ液の流れのみを許容する第1チェックバルブ12と、リザーバ4からブレーキ液を吸い込んでブレーキ増圧MCY3に吐出する第2ポンプ13と、この第2ポンプ13とブレーキ増圧MCY3との間に設けられ、非作動時リザーバ4に接続するとともに作動時第2ポンプ13の吐出側に接続する電磁切換弁14(本発明のストロークピストン作動手段に相当)と、第2ポンプ13とこの電磁切換弁14との間に設けられた第2ポンプ13からブレーキ増圧MCY3へ向かうブレーキ液の流れのみを許容する第2チェックバルブ15と、第1および第2ポンプ10,13を駆動するモータ16と、ブレーキペダル2のストロークを検出するストロークセンサ17と、ホイールシリンダ5,6に供給されるMCY圧を検出する圧力センサ18と、ストロークセンサ17および圧力センサ18からの各検出信号が入力されるとともに、第1および第2電磁開閉弁11,14とモータ16とを作動制御する制御装置(以下、CPUともいう)19とを備えている。
【0026】
図2および図3に示すように、この第1例におけるブレーキ増圧マスタシリンダ3はオープンセンタ型制御弁を有しており、ブレーキペダル2のペダル踏力に応じて調圧した液圧を発生する増圧制御部20とこの増圧制御部20で調圧された液圧で増圧されたMCY圧を発生するマスタシリンダ圧発生部21とからなっている。
ブレーキ増圧MCY3はハウジング22を有し、このハウジング22は右端に開口する第1孔23と、この第1孔23の左端に連続して形成され、第1孔23の径より小さい径の第2孔24と、この第2孔24の左端に連続して形成され、第2孔24の径より小さい径の第3孔25と、この第3孔25の左端に連続して形成され、第3孔25の径より小さい径の第4孔26と、この第4孔26の左端に連続して形成され、第4孔26の径より小さい径の第5孔27とからなる段付孔を有している。
【0027】
この段付孔内の第1孔23には円筒状のプラグ部材28が挿入されかつ螺合されることでハウジング22に固定されている。その場合、プラグ部材28の前端部は第2孔24に液密に嵌合されている。また、ハウジング22とプラグ部材28との間には円筒状部材29が配設されており、この円筒状部材29の前端部は第3孔25に液密に嵌合されているとともに、円筒状部材29の後端部はプラグ部材28の第1内孔30に嵌合されている。そして、この円筒状部材29はハウジング22とプラグ部材28とにより軸方向に移動不能に固定されている。
更に、プラグ部材28の第2内孔31には円筒状のパワーピストン32が液密にかつ摺動可能に嵌合されており、このパワーピストン32の前端部は円筒状部材29に摺動可能に嵌合されている。パワーピストン32の内孔にはバルブスリーブ33が液密に嵌合されているとともに、このバルブスリーブ33の内孔にはバルブスプール34が摺動可能に嵌合されている。
【0028】
円筒状の反力ピストン35がプラグ部材28の外側から内側へ液密にかつ摺動可能に設けられている。この反力ピストン35の前端部がパワーピストン32内に進入しているとともにバルブスリーブ33の外周に液密にかつ摺動可能に外嵌されている。反力ピストン35はパワーピストン32と反力ピストン35との間に縮設されたスプリング36のばね力で常時前方へ付勢されており、図示の非作動時は反力ピストン35の前端がパワーピストン32の段部37に当接している。
【0029】
反力ピストン35の内孔には入力ロッド38が液密にかつ摺動可能に挿入されている。この入力ロッド38は前端部が小径で後端部が大径の段付ロッドで構成されており、この入力ロッド38の段部39に反力ピストン35の内孔の段部40が当接可能となっている。その際、入力ロッド38の段部39に設けられたゴム等の弾性部材41により、反力ピストン35の段部40が入力ロッド38の段部39に当接する時の当接音の発生が抑制されている。そして、この入力ロッド38はこれに取り付けられたストップリング42が反力ピストン35に当接することにより反力ピストン35に対する後退限が規制されており、図示の反力ピストン35の後退限では反力ピストン35の段部40が入力ロッド38の段部39から離間している。
パワーピストン32の後端とプラグ部材28との間には、加圧室43が設けられているとともに、バルブスリーブ33の後端と反力ピストン35との間には第1室44が設けられている。
【0030】
バルブスプール34はパワーピストン32との間に縮設されたスプリング45のばね力で常時後方に付勢されており、その後端が入力ロッド38の前端に第1室44内で常時当接されている。また、バルブスプール34には前方へ開口する軸方向孔46が穿設されているとともに、外周に環状溝47が形成されており、更に環状溝47と軸方向孔46とを常時連通する径方向孔48および第1室44と軸方向孔46とを常時連通する径方向孔49がそれぞれ穿設されている。
バルブスリーブ33には、加圧室43に面する外周側と内周側とを常時連通する径方向孔50が穿設されており、この径方向孔50と環状溝47とにより、入力ロッド38の入力つまりブレーキペダル2のペダル踏力に応じた液圧を加圧室43に発生する制御弁が構成されている。
【0031】
更に、反力ピストン35の前端部にはその外周側と内周側とを連通する径方向孔51が穿設されているとともに、パワーピストン32の後端部にその外周側と内周側とを連通する径方向孔52が穿設されている。この径方向孔52は、プラグ部材28の第3内孔53の内周面とパワーピストン32の外周面との間に形成された、加圧室43の一部である環状空間43a、プラグ部材28に穿設された傾斜孔54、プラグ部材28の外周面とハウジング22の第1孔23の内周面との間に形成された環状空間55、および作動液圧導入孔56を介して電磁開閉弁11の出口側に常時接続されている。
【0032】
MCY圧発生部21にはプライマリピストン57およびセカンダリピストン58が設けられている。プライマリピストン57は前端部が小径で後端部が大径の円筒状の段付ピストンとして形成されており、その場合プライマリピストン57の後端大径部が円筒状部材29内に液密にかつ摺動可能に嵌合されている。また、セカンダリピストン58は後端側が開口した有底円筒状に形成されてハウジング22の第4孔26内に液密にかつ摺動可能に嵌合されている。セカンダリピストン58の後端部は円筒状部材29内に進入しているとともに、このセカンダリピストン58の後端部の内周には、プライマリピストン14の前端小径部が第1カップシール59により液密にかつ摺動可能に内嵌されている。
【0033】
更に、第4孔26および第5孔27内には、ストロークピストン60が両孔26,27に対していずれも液密にかつ摺動可能に嵌合されている。このストロークピストン60は後端側が開口した有底円筒状に形成されている。ストロークピストン60および電磁切換弁14により、本発明のブレーキ液送出制御手段が構成されている。このストロークピストン60の後端部の内周には、セカンダリピストン58の前端小径部が第2カップシール61により液密にかつ摺動可能に内嵌されている。
【0034】
そして、プライマリピストン57の後端大径部が液密にかつ摺動可能に嵌合する円筒状部材29の内周面の内径とセカンダリピストン58の軸方向中央の大径部が液密にかつ摺動可能に嵌合するハウジング22の第4孔26の内周面の内径とが互いに等しく設定されているとともに、プライマリピストン57の前端小径部が液密にかつ摺動可能に嵌合するセカンダリピストン58の内周面の内径とセカンダリピストン58の前端小径部が液密にかつ摺動可能に嵌合するストロークピストン60の内周面の内径とが互いに等しく設定されている。
【0035】
プライマリピストン57の前端とセカンダリピストン58との間には第1大気圧室62が形成されており、この第1大気圧室62は、プライマリピストン57の軸方向孔63、パワーピストン32の前端に形成された径方向溝64、円筒状部材29に穿設された径方向孔65、プラグ部材28の第1内孔30の内周面と円筒状部材29の外周面との間に形成された環状空間66、およびハウジング22に穿設された孔67を介してリザーバ4に常時連通している。
なお、バルブスプール34の軸方向孔46もパワーピストン32の径方向溝64に常時連通しており、したがってリザーバ4に常時連通している。
【0036】
また、セカンダリピストン58の前端とストロークピストン60との間には第2大気圧室68が形成されており、この第2大気圧室68は、ストロークピストン60の径方向孔69、ハウジング22の第5内孔27の内周面とストロークピストン60の外周面との間に形成された環状空間70、およびハウジング22に穿設された孔71を介してリザーバ4に常時連通している。
【0037】
円筒状部材29の内側でプライマリピストン57とセカンダリピストン58の後端との間には第1MCY圧室72が形成されており、この第1MCY圧室72は、円筒状部材29の前端に形成された径方向の溝73およびハウジング22に穿設された通路孔74を介して前輪ブレーキ系統の各ホイールシリンダ5,6に常時接続されている。更に、セカンダリピストン58の後端部には第1MCY圧室72に常時連通する径方向孔75が穿設されている。そして、図示のように第1カップシール59が径方向孔75より後方に位置しているときは、径方向孔75が第1大気圧室62と連通するので、第1MCY圧室72は径方向孔75を介して第1大気圧室62つまりリザーバ4に接続され、また、第1カップシール59が径方向孔75より前方に位置すると、径方向孔75が第1大気圧室62から遮断されるので、第1MCY圧室72は第1大気圧室62つまりリザーバ4から遮断されるようになっている。
【0038】
一方、ハウジング22の第4孔26内側でセカンダリピストン58とストロークピストン60の後端との間には第2MCY圧室76が形成されており、この第2MCY圧室76は、ハウジング22に穿設された通路孔77およびPバルブ7を介して後輪ブレーキ系統の各ホイールシリンダ8,9に常時接続されている。更に、ストロークピストン60の後端部には第2MCY圧室76に常時連通する径方向孔78が穿設されている。そして、図示のように第2カップシール61が径方向孔78より後方に位置しているときは、径方向孔78が第2大気圧室68と連通するので、第2MCY圧室76は径方向孔78を介して第2大気圧室68つまりリザーバ4に接続され、また、第2カップシール61が径方向孔78より前方に位置すると、径方向孔78が第2大気圧室68から遮断されるので、第2MCY圧室76は第2大気圧室68つまりリザーバ4から遮断されるようになっている。
【0039】
ストロークピストン60の前端部によりハウジング22の第5孔27内に圧力室79が設けられている。この圧力室79はハウジング22に穿設された通路孔80を介して電磁切換弁14に接続されている。そして、圧力室79は電磁切換弁14の非作動時にはリザーバ4に接続されて大気圧に設定されるとともに、電磁切換弁14の作動時には第2ポンプ13の吐出側に接続されて第2ポンプ13の吐出圧が導入されるようになっている。
【0040】
第1大気圧室62内でプライマリピストン57とセカンダリピストン58との間には、第1リターンスプリング81が縮設されており、この第1リターンスプリング81は伸張制限部材82によってその最大限の伸張が制限されている。第1リターンスプリング81のばね力でプライマリピストン57は後方に付勢されるようになっている。また、第2MCY圧室76内でセカンダリピストン58とストロークピストン60との間には、第2リターンスプリング83が縮設されており、この第2リターンスプリング83のばね力でセカンダリピストン58は常時後方に付勢されている。
【0041】
そして、ブレーキ増圧MCY3の非作動時には、セカンダリピストン58は図示のようにその後端が円筒状部材29の前端に当接されて後退限となっており、また、プライマリピストン57の後端が図示のようにパワーピストン32の前端に当接し更にパワーピストン32の後端がプラグ部材28に当接されて、プライマリピストン57およびパワーピストン32はともに後退限となっている。このとき第1カップシール59が径方向孔75より後方に位置し、第1MCY圧室72は第1大気圧室62を経てリザーバ4に連通しているとともに、第2カップシール61が径方向孔78より後方に位置し、第2MCY圧室76は第2大気圧室68を経てリザーバ4に連通している。
【0042】
更に、ブレーキ増圧MCY3の非作動時には、入力ロッド38のストッパリング42が反力ピストン35に当接して後退限となっているとともに、バルブスプール34の後端が入力ロッド38の前端に当接している。このときには、バルブスプール47の環状溝47がバルブスリーブ33の径方向孔50に最大通路面積で接続されている、すなわち制御弁は最大に開いている。
【0043】
更に、CPU19には、入力ロッド38の入力に対応するMCY圧に対する入力ロッド38のストロークの特性が予め記憶されている。したがって、CPU19は、圧力センサ18からのMCY圧検出信号とストロークセンサ17からのブレーキペダル2または入力ロッド38のストローク検出信号に基づいて、MCY圧に対する入力ロッド38のストロークが予め記憶している特性となるように電磁切換弁14を切換制御して圧力室79の液圧を制御することで、ストロークピストン60のストロークを制御するようになっている。これにより、MCY出力側の状態に関係なく、入力(つまりはペダル踏力)に対する入力ロッド38(つまりはブレーキペダル2)のストロークが制御可能となり、ブレーキ増圧MCY3はストロークシミュレータ機能を有している。
【0044】
次に、このように構成された第1例のブレーキシステム1の作動について説明する。
ブレーキペダル2が踏み込まれないブレーキシステム1の非作動時には、パワーピストン32、プライマリピストン57、セカンダリピストン58、バルブスプール34および入力ロッド38は、いずれも図示の後退限の非作動位置となっている。また、反力ピストン35はその前端が図示のようにパワーピストン32に当接した非作動位置となっているとともに、ストロークピストン60はその前端が図示のようにハウジング22に当接した非作動位置となっている。
更に、モータ16が停止しており、更に図示のように電磁開閉弁11が閉じているとともに電磁切換弁14が圧力室79をリザーバ4に接続する位置に設定されている。
【0045】
この図示の非作動時では、制御弁の開弁量は最大となっており、このときには、加圧室43が最大通路断面積でリザーバ4に接続されていて、加圧室43は大気圧となっている。また、第1および第2MCY圧室72,76と圧力室79も、同じくリザーバ4に接続されて大気圧となっている。
【0046】
ブレーキペダル2が踏み込まれると、このブレーキペダル2の踏込がストロークセンサ17で検知され、CPU19がストロークセンサ17からの検知信号でモータ16を駆動するとともに電磁開閉弁11を開き、更に電磁切換弁14を切り換えて圧力室79を第2ポンプ13の吐出側に接続する。これにより、第1および第2ポンプ10,13がともに運転され、第1ポンプ10から吐出された作動液が電磁開閉弁11、作動液圧導入孔56、環状空間55、傾斜孔54、環状空間43a、および径方向孔52を介して加圧室43に供給される。この加圧室43に供給された作動液は、更に径方向孔51および径方向孔50を通って環状溝47の方へ流れるようになる。
【0047】
このとき、ブレーキペダル2の踏込で入力ロッド38が前進ストロークするので、バルブスプール34が前進する。すると、径方向孔50と環状溝47との通路断面積が次第に小さくなる、つまり制御弁の開弁量が小さくなるので、径方向孔50から環状溝47へ流れる作動液が絞られる。これにより、径方向孔50すなわち加圧室43に液圧が発生する。この液圧により、パワーピストン32が前進してプライマリピストン57が前進し、プライマリピストン57の前端部に組み付けられている第1カップシール59が径方向孔75を通過してこの径方向孔75より前方へ移動する。すると、第1MCY圧室72が第1大気圧室62から遮断され、更にプライマリピストン57が前進することで第1MCY圧室72内にMCY圧が発生する。
【0048】
更に、この第1MCY圧室72のMCY圧でセカンダリピストン58が前進し、セカンダリピストン58の前端部に組み付けられている第2カップシール61が径方向孔78を通過してこの径方向孔78より前方へ移動する。すると、第2MCY圧室76が第2大気圧室68から遮断され、更にセカンダリピストン58が前進することで第2MCY圧室76内にMCY圧が発生する。第1および第2MCY圧室72,76のMCY圧がそれぞれ通路孔74,77を介して各ホイールシリンダ5,6,8,9に供給され、ブレーキ力が発生する。これにより、前後輪のブレーキが作動開始する。
【0049】
加圧室43の液圧が所定圧になると、この液圧により反力ピストン35がスプリング36をのばね力に抗して後退し、その段部40が入力ロッド38の段部39に当接する。これにより、反力ピストン35に作用する液圧による作用力が反力として入力ロッド38に作用するとともに、更にこの反力がブレーキペダル2に伝達され、運転者はブレーキ反力を感知する。反力ピストン35から反力が入力ロッド38に作用することで、入力ロッド38の入力つまりペダル踏力に応じて加圧室43の液圧が制御される。反力ピストン35が入力ロッド38に当接するまでは、ペダル踏力が増加せずに加圧室43の液圧のみが一定量上昇するようになり、このときの液圧上昇分がジャンピング量となり、このジャンピング量の分だけ、ペダル踏力が増加しないにもかかわらずブレーキ力が急激に上昇する、いわゆる従来周知のジャンピング特性が発揮される。そして、加圧室43の液圧がペダル踏力に応じて制御されることで、これ以後、発生するブレーキ力もペダル踏力に応じて制御されるようになる。
【0050】
更に、第2ポンプ13が吐出する作動液が、電磁切換弁14および通路孔80を介して圧力室79に供給されて圧力室79内の液圧が上昇する。この圧力室79内の液圧によりストロークピストン60を図で右方に押す作用力が第2MCY圧室76内もMCY圧によりストロークピストン60を図で左方に押す作用力より大きくなると、ストロークピストン60は図で右方にストロークする。
【0051】
いま、ストロークピストン60が右方へストロークしない場合における、第2MCY圧室76から各ホイールシリンダ8,9に送給されるブレーキ液の量は、セカンダリピストン58のストローク量に比例する。しかし、ストロークピストン60が右方へストロークすると、このストロークピストン60のストロークによってもブレーキ液が第2MCY圧室76から各ホイールシリンダ8,9に送給されるので、このストロークピストン60のストロークによって送給されるブレーキ液に見合う分だけ、セカンダリピストン58のストロークは小さくなる。そして、セカンダリピストン58のストロークが小さくなることに応じて、入力ロッド38のストロークも小さくなる。したがって、圧力室79の液圧を制御することにより、同じ入力(ペダル踏力)に対して入力ロッド38のストロークを変えることができるようになる。この圧力室79の液圧制御は電磁切換弁14をCPU19によりオン、オフ制御することにより行われる。
【0052】
このように、ブレーキ作動時にストロークピストン60がストロークすることで、ブレーキシステム1のブレーキ特性にほとんど影響を与えずに、入力ロッド38のストロークつまりブレーキペダル2のペダルストロークが小さくなる。そして、CPU19は、圧力センサ18からのMCY圧検出信号とストロークセンサ17からの入力ロッド38(またはブレーキペダル2)のストローク検出信号に基づいて、MCY圧に対する入力ロッド38(またはブレーキペダル2)のストロークが予め記憶している特性となるように電磁切換弁14を切換制御して圧力室79の液圧を制御することで、ストロークピストン60のストロークを制御する。
【0053】
ブレーキペダル2の踏込が解放されると、入力ロッド38が後退するとともにバルブスプール34も後退するので、制御弁の開弁量が大きくなり、加圧室43のブレーキ液がリザーバ4に排出され、加圧室43の液圧が低下する。また、ストロークセンサ17からの検出信号によりCPU19がモータ16を停止するとともに電磁開閉弁11を閉じ、更に電磁切換弁14をリザーバ4側に切り換える。
【0054】
加圧室43の液圧低下により、パワーピストン32およびプライマリピストン57が第1リターンスプリング81のばね力と第1MCY圧室72のMCY圧により後退する。すると、第1MCY圧室72のMCY圧が低下するので、セカンダリピストン58が第2リターンスプリング83のばね力と第2MCY圧室76のMCY圧により後退し、第2MCY圧室76のMCY圧が低下する。
【0055】
プライマリピストン57の後退で第1カップシール59が径方向孔75より後方へ移動すると第1MCY圧室72が第1大気圧室62に連通し、またセカンダリピストン58の後退で第2カップシール61が径方向孔78より後方へ移動すると第2MCY圧室76が第2大気圧室68に連通するので、第1および第2MCY圧室72,76の各MCY圧がともにリザーバ4に排出される。また、圧力室79の液圧も通路孔80および電磁切換弁14を介してリザーバ4に排出されるので、第2リターンスプリング83のばね力でストロークピストン60が前進する。そして、プライマリピストン57、セカンダリピストン58、パワーピストン32および入力ロッド38がともに図示の後退限位置になり、またストロークピストン60が図示の前進限位置になると、第1および第2MCY圧室72,76、加圧室43、および圧力室79がいずれも大気圧となって、ブレーキ増圧MCY3が図示の非作動となり、ブレーキが解除する。
【0056】
モータ16、第1および第2ポンプ10,13、電磁開閉弁11等の液圧源側が失陥して加圧室43に液圧が供給されないときは、ブレーキペダル2を大きく踏み込むと、入力ロッド38が前進してその段部39が反力ピストン35の段部40に当接する。更に、ブレーキペダル2を踏み込むことで、反力ピストン35が前進するので、パワーピストン32およびプライマリピストン57が前進する。これにより、前述と同様に第1MCY圧室72にMCY圧が発生するとともに、このMCY圧でセカンダリピストン58が前進ストロークして、前述と同様に第2MCY圧室76にMCY圧が発生する。これらのMCY圧が、各ホイールシリンダ5,6,8,9に供給され、ブレーキが作動する。こうして、液圧源側が失陥して加圧室43に液圧を発生させることができなくても、ブレーキを確実に作動させることができるようになる。
【0057】
このように、この第1例のブレーキ増圧MCY3によれば、MCY自体に増圧機能を有しているので、従来の負圧倍力装置や液圧倍力装置等の倍力装置を必要とせず、ブレーキ増圧MCY3の全長を従来のMCYと倍力装置とを組み合わせたものに比べて倍力装置がない分短くできる。これにより、ブレーキシステムを簡素化できるとともに、ブレーキ増圧MCY3の搭載性が向上する。
また、ストロークピストン60がストロークすることにより、セカンダリピストン58のストロークが小さくなるので、入力ロッド38のストロークおよびブレーキペダル2の踏込ストロークを短縮できる。
【0058】
更に、外部液圧源である第2ポンプ13からの圧力室79への供給液圧を調整してストロークピストン60のストロークを制御することで、入力ロッド38のストロークを変えることができるので、MCY圧出力側の状態に関係なく、入力ロッド38のストロークを調整することができる。これにより、この例のブレーキ増圧MCY3によれば、回生協調ブレーキ、自動ブレーキ、ブレーキアシスト等のブレーキ制御に関係しない入力ロッド38のストローク調整および車両の種類に関係しない入力ロッド38のストローク調整を行うことができる。
【0059】
例えば、入力ロッド38における入力と入力ロッドストロークとが所定の特性となるように、第2ポンプ13(外部液圧源)から圧力室79へ供給される液圧を調整する。これにより、MCY出力側に関係なく入力に対する所定の入力ロッドストロークを得ることができる(ストロークシミュレータ機能)。なお、入力の検出としては、ペダル踏力の検出(踏力検出センサは不図示)、MCY圧の検出(圧力センサ18で検出)、あるいは加圧室43の液圧の検出(圧力検出センサは不図示)等がある。
【0060】
また、入力または入力ロッドストロークを検出し、それらに応じて第2ポンプ13(外部液圧源)から圧力室79へ供給される液圧を調整する。これにより、入力ロッド38のストロークを短縮できる(ストローク短縮機能)。
更に、MCY3の出力側に設けられた、例えば回生協調ブレーキ制御装置、自動ブレーキ制御装置、ブレーキアシスト制御装置等のブレーキ制御装置の作動に応じてペダルストロークが変化しないように液圧を制御する(MCY3の出力側のブレーキ制御装置の作動時のペダルストローク変化防止機能)。
【0061】
なお、この第1例のブレーキシステム1では、自動ブレーキ作動条件が成立したとき、CPUがモータ16を駆動するとともに、電磁切換弁14を第2ポンプ13側に切り換えて第2ポンプ13の吐出圧を圧力室79に供給することで、ストロークピストン60を右方へ移動させる。これにより、第2MCY圧室76がMCY圧を発生させることで後輪側のブレーキを自動的に作動させることが可能である。その場合、図示しないが電磁開閉弁等を用いて、前輪側の各ホイールシリンダ5,6をリザーバ4から遮断しかつ第2MCY圧室76に発生したMCY圧を前輪側の各ホイールシリンダ5,6に供給するようにすることで、前輪側のブレーキも自動的に作動させることが可能である。
また、この第1例ではポンプを2つ設けているが1つのポンプで加圧室43と圧力室79とにポンプ吐出液を供給することもできる。
【0062】
図4は本発明に係るブレーキ増圧マスタシリンダの実施の形態の第2例が適用されているブレーキシステムを示す図、図5はこの第2例のブレーキ増圧マスタシリンダの断面図、図6は図5に示すブレーキ増圧マスタシリンダの増圧制御部の部分拡大断面図である。なお、前述の第1例と同じ構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0063】
前述の第1例では2つのポンプ10,13が用いられているが、図4に示すように、この第2例のブレーキシステム1では1つのポンプが設けられている(以下、このポンプには符号「10」を付す)。また第2例では、ポンプ12の吐出側にチェックバルブ12を介してアキュムレータ84が設けられているとともに圧力スイッチ85が設けられている。圧力スイッチ85は、アキュムレータ84の液圧を検出しその液圧が所定圧より低くなったときオンし、また液圧が所定圧以上になったときオフするようになっている。そして、圧力スイッチ85がオンしたときモータ16が駆動され、またオフになったときモータ16が停止されるようになっている。したがって、この圧力スイッチ85により、アキュムレータ84には常時所定圧の液圧が蓄えられるようなっている。なお、この圧力スイッチ85はオンする液圧とオフする液圧を異ならせて、そのオン、オフ作動にヒステリシスを持たせることもできる。
【0064】
更に、この第2例のブレーキシステム1では、第1例の電磁開閉弁11が設けられていなく、アキュムレータ84がブレーキ増圧MCY3の作動液圧導入孔56に直接接続されている。また、アキュムレータ84は電磁切換弁14に接続されている。更に、アキュムレータ84は電磁切換弁86を介してブレーキ増圧MCY3の後述する出力可変用作動液圧導入孔99に接続されるようになっている。電磁切換弁86は出力可変用作動液圧導入孔99を非作動時にはリザーバ4に接続し、作動時にはアキュムレータ84に接続するようになっている。
【0065】
前述の第1例のブレーキ増圧MCY3ではパワーピストン32とプライマリピストン57とが別体に形成されているが、図5および図6に示すように第2例のブレーキ増圧MCY3では、パワーピストン32とプライマリピストン57とが一体に形成されている。
【0066】
また、第1例のブレーキ増圧MCY3ではオープンセンタ型の制御弁が用いられているが、この第2例のブレーキ増圧MCY3ではクローズドセンタ型の制御弁が用いられている。この制御弁は、パワーピストン32に摺動可能に設けられた円錐弁87と、パワーピストン32に固定され、円錐弁87が着離座可能な第1弁座88と、入力ロッド38の前端部に設けられ、円錐弁87が着離座可能な第2弁座89とから構成されている。円錐弁87はスプリング90によって第1弁座88の方へ常時付勢されている。更に、入力ロッド38がスプリング91によって常時後方へ付勢されていて、第2弁座89が円錐弁87から離れる方向に常時付勢されている。
【0067】
そして、円錐弁87が第1弁座88に着座する位置より前方の空間92が、パワーピストン32に穿設された径方向孔93、パワーピストン32に形成された環状溝94、円筒状部材29に穿設された径方向孔95、環状空間55、および作動液圧導入孔56を介してアキュムレータ84に常時接続されている。また、円錐弁87が第1弁座88に着座する位置より後方は加圧室43となっている。更に円錐弁87には軸方向に貫通する軸方向孔96が穿設されており、後述するようにこの軸方向孔96はプライマリピストン57の軸方向孔63および第1大気圧室62を介してリザーバ4に常時連通しているとともに、円錐弁87が第2弁座89から離座しているときは加圧室43に接続されるようになっている。
【0068】
したがって、円錐弁87が図示のように第1弁座88に着座し、かつ第2弁座89から離座しているときは、加圧室43は軸方向孔96、軸方向孔63および第1大気圧室62を介してリザーバ4に連通し、また円錐弁87が第2弁座89に着座し、かつ第1弁座88から離座しているときは、加圧室43はアキュムレータ84に連通するようになっている。
【0069】
更に、第1例の反力ピストン35は削除され、出力補助ピストン103が入力ロッド38の外周部に液密にかつ摺動可能に設けられている。この出力補助ピストン103と電磁切換弁86によって、本発明のマスタシリンダピストン作用力付与手段が構成されている。この出力補助ピストン103は、その前端の大径部が部材104を介してパワーピストン32に当接した状態でナット105によりパワーピストン32に固定されており、その小径部はプラグ部材28を貫通しなく、その後端部103aがプラグ部材28内に設けられた増圧室97に収容されている。そして、入力ロッド38がプラグ部材28を液密にかつ摺動可能に貫通してハウジング22の外部に延出している。
【0070】
加圧室43は、ナット105の内周面と出力補助ピストン103の外周面との間の環状空間、パワーピストン32の内周面と出力補助ピストン103の大径部外周面との間の環状空間、および部材104の溝を介して第1弁座88の後側空間に常時連通している。
【0071】
増圧室97はプラグ部材28に穿設された径方向孔98を介してハウジング22に穿設された出力可変用作動液導入孔99に常時接続されており、この出力可変用作動液導入孔99は前述のように電磁切換弁86に接続されている。したがって、電磁切換弁86の作動時には増圧室97にアキュムレータ84に蓄えられている液圧が供給されて出力補助ピストン103の後端部103aに前方に向けて作用し、また電磁切換弁86の非作動時には増圧室97に供給された液圧がリザーバ4に排出されて増圧室97が大気圧になるようにされている。
【0072】
一方、マスタシリンダ圧発生部21においては、ハウジング22の第5孔27の前方は開口されており、この開口部がプラグ部材100の大径部100aによって液密に閉塞されている。プラグ部材100は大径部100aから後方に延設されたこの大径部100aより小径の中径部100bと、中径部100bから後方に延設されたこの中径部100bより小径の小径部100cとを有している。
【0073】
また、セカンダリピストン58が液密に摺動する第4孔26とストロークピストン60が液密に摺動する第5孔27はともに同径に形成されて1つの長孔となっている。ストロークピストン60は第1例と同様に第5孔27に内嵌されているが、更にプラグ部材100の中径部100bに液密にかつ摺動可能に外嵌されている。その場合、ストロークピストン60の前端がプラグ部材100に当接することで、ストロークピストン60の前進限が規定されている。ストロークピストン60とプラグ部材100との間に、圧力室79および通路孔80が設けられている。
【0074】
セカンダリピストン58内に位置している第1大気圧室62は後方の軸方向孔63を介してはリザーバ4に連通しなく、逆に、前方のプラグ部材100にそれぞれ穿設された軸方向孔101および径方向102を介してリザーバ4に常時連通している。また、このため、セカンダリピストン58の前端部はプラグ部材100の小径部100cの外周を液密にかつ摺動可能にされている。したがって、非作動時、加圧室43は、円錐弁87の軸方向孔96,プライマリピストン57の軸方向孔63、第1大気圧室62,プラグ部材100の軸方向孔101および径方向孔102を介してリザーバ4に接続し、大気圧になっている。なお、第2例では、第1例における第1リターンスプリング81の最大限の伸張を制限する伸張制限部材82は省略されている。
この第2例のブレーキシステム1の他の構成は前述の第1例と、本発明の特徴部分に直接関係しない部分の一部で若干異なるだけで、実質的には同じである。
【0075】
次に、このように構成された第2例のブレーキシステム1の作動について説明する。
ブレーキシステム1の非作動時は、円錐弁87が第1弁座88に着座し、かつ第2弁座89から離座して、加圧室43はリザーバ4に連通して大気圧となっている。また、電磁切換弁86が増圧室97をリザーバ4に連通させており、増圧室97も大気圧となっている。
【0076】
ブレーキペダルが踏み込まれると、入力ロッド38が前進して第2弁座89が円錐弁87に当接するとともに、円錐弁87が第1弁座88から離れる。すると、加圧室43がリザーバ4から遮断され、アキュムレータ84の液圧が加圧室43に供給される。これにより、パワーピストン32およびプライマリピストン57がともに前進する。以下、前述の第1例と同様にして第1および第2MCY圧室72,76にそれぞれMCY圧が発生し、前後輪にブレーキが作動する。なお、第1例ではブレーキペダルの踏込でCPU19がモータ16を駆動するが、この第2例ではCPU19が前述のようにモータ16の駆動制御をアキュムレータ84の液圧でオン、オフする圧力スイッチ85によって行うので、ブレーキペダル2の踏込ではモータ16は駆動制御されない。なお、ブレーキペダル2の踏込でもモータ16を駆動制御するようにできることは言うまでもない。
【0077】
また、前述の第1例の場合と同様にブレーキペダルの踏込で電磁切換弁14が切り換えられ、圧力室79にもアキュムレータ84の液圧が供給されてストロークピストン60に作用するので、ストロークピストン60が後方にストロークし、入力ロッド38のストロークが短縮する。
【0078】
一方、加圧室43の液圧が出力補助ピストン103に後方に向けて作用するが、このとき、電磁切換弁86が切り換えられていなく、増圧室97は大気圧の状態が保持されているので、加圧室43の液圧はパワーピストン32の外径と出力補助ピストン103の小径部の外径との面積差に作用してパワーピストン32を前方に押すことになる。
【0079】
いま、加圧室43に液圧が供給された状態で、CPU19が電磁切換弁86を切り換えると、アキュムレータ84の液圧が増圧室97に供給され、増圧室97の液圧は出力補助ピストン103を前方に向けて押圧する。すると、パワーピストン32を前方に向けて押圧する作用力がその分増加し、入力ロッド38への反力を変えずにパワーピストン32の出力を増大させるようになる。これにより、ブレーキ増圧MCY3のサーボ比を大きくすることができる。このように、CPU19によって電磁切換弁86を切換制御して増圧室97の液圧を制御することにより、ブレーキ増圧MCY3のサーボ比を任意の大きさに設定することができるようになる。
【0080】
ブレーキペダル2の踏込を解放すると、電磁切換弁86が作動している場合はCPU19が電磁切換弁86を非作動位置に切り換えて増圧室97の液圧をリザーバ4に排出する。一方、ブレーキペダル2の解放で入力ロッド38が後退し、円錐弁87が第1弁座88に着座して加圧室43がアキュムレータ84から遮断されるとともに、円錐弁87が第2弁座89から離座して加圧室43がリザーバ4に接続されるので、加圧室43の液圧が軸方向孔96、軸方向孔63、第1大気圧室62,軸方向孔101および径方向102を介してリザーバ4に排出され、加圧室43の液圧が低下する。すると、パワーピストン32およびプライマリピストン57が後退する。以後、第1例と同様にして加圧室43、第1および第2MCY圧室72,76がともに大気圧となってブレーキが解除される。
【0081】
ところで、前述のように増圧室97への液圧供給制御により出力補助ピストン103を前方へ移動可能となっているので、前述のように単にサーボ比を変えるだけでなく、例えば回生協調ブレーキ、自動ブレーキ、ブレーキアシスト等の種々のブレーキ制御が可能となる。
【0082】
例えば、
(1) 回生協調ブレーキ:
回生ブレーキと協調してブレーキ作動を行うようになっているブレーキシステムにおいては、回生ブレーキ作動時は、増圧室97への液圧供給は行わなく、サーボ比を小さくして回生ブレーキ力の分だけブレーキ増圧MCY3によるブレーキ力を小さくする。また、回生ブレーキ非作動時は、増圧室97へ液圧を供給し、サーボ比を大きくして回生ブレーキ力がない分ブレーキ増圧MCY3によるブレーキ力を大きくすることで、回生ブレーキ力の分を補う。その場合、増圧室97の供給液圧は、加圧室97の液圧(この液圧の検出のための圧力センサは不図示)またはMCY圧(例えば、圧力センサ18で検出する)を検出して、その圧力に応じて所定サーボ比となるように調整される。
【0083】
(2) 自動ブレーキ:
駆動輪の空転時にブレーキをかけて駆動輪の駆動力を抑制して空転を解消するトラクションコントロール(TRC)、定速走行制御、車間距離制御等で自動ブレーキをかける場合、増圧室97に液圧を供給し、この液圧で出力補助ピストン103を前方に押圧する。これにより、パワーピストン32を前進させ、ブレーキが作動する。その場合、増圧室97の供給液圧は、その自動ブレーキに必要なブレーキ力が得られるように調整される。
【0084】
(3) ブレーキアシスト:
ブレーキペダル2の踏込速度を検出して、CPU19が運転者が急ブレーキをかけたと判断すると、電磁切換弁86を切り換えて増圧室97に液圧を供給して、サーボ比を大きくする。これにより、急ブレーキ時にブレーキペダル2の踏込が不足しても発生するブレーキ力を大きくして急ブレーキ作動をより確実に行うようにし、運転者のブレーキ操作をアシストする。その場合、増圧室97の供給液圧の調整としては、次のようなものがある。▲1▼ 加圧室97の液圧またはMCY圧を検出して、その圧力に応じて所定サーボ比となるように増圧室97の供給液圧を調整する、▲2▼ 予め所定圧に調整して増圧室97へ供給する、▲3▼ ペダル踏込速度に応じた液圧(例えば、ペダル踏込速度が速いほど大きい液圧等)を増圧室97に供給する。
【0085】
また、この第2例のブレーキシステムでも、前述のように圧力室79への供給液圧制御により入力ロッド38のストローク調整が可能であるが、この入力ロッド38のストローク調整については第1例の場合と同じである。
この第2例のブレーキシステム1の他の作動および作用効果構成は前述の第1例と実質的に同じである。
【0086】
図7は本発明に係るブレーキ増圧マスタシリンダの実施の形態の第3例が適用されているブレーキシステムを示す図である。なお、前述の第1および第2例と同じ構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
この第3例のブレーキ増圧MCY3は前述の図5および図6に示す第2例のブレーキ増圧MCY3とまったく同じであるので、その説明は緒略する
【0087】
また、前述の図4に示す第2例のブレーキ増圧MCY3では、ストロークピストン6を作動制御するストロークピストン作動手段である電磁切換弁14を備えているとともに、マスタシリンダピストン作用力付与手段の1つの構成要素であり、出力補助ピストン103を作動制御する電磁切換弁86を備えているが、この第3例のブレーキ増圧MCY3では、図7に示すようにこれらの電磁切換弁14,86は設けられていない。
【0088】
更に、第3例のブレーキ増圧MCY3の通路孔74と前輪側のホイールシリンダ5,6とを接続する通路107および通路孔77と後輪側のPバルブ7とを接続する通路108に、ブレーキ液圧制御装置106が設けられている。このブレーキ液圧制御装置106は、例えば前述のアンチロック制御装置、回生協調ブレーキ制御装置、車間距離制御や衝突回避制御等の自動ブレーキ制御装置、ブレーキアシスト制御装置等の従来公知のブレーキ液圧制御装置であり、その非作動時には各ホイールシリンダ5,6およびPバルブ7にブレーキ増圧MCY3のマスタシリンダ圧をそのまま供給し、また、ブレーキ制御による作動時にはそのときのブレーキ液圧制御に応じたブレーキ液圧に制御して各ホイールシリンダ5,6およびPバルブ7に供給するようになっている。ブレーキ液圧制御装置106はCPU19によって制御されて、アンチロック制御、回生協調ブレーキ制御、自動ブレーキ制御、ブレーキアシスト制御等のブレーキ液圧制御を行うようになっている。
【0089】
更に、ストロークピストン作動手段、およびマスタシリンダピストン作用力付与手段の1つの構成要素であり、出力補助ピストン103を作動制御する手段も、このブレーキ液圧制御装置106によって構成されている。すなわち、アキュムレータ84が、通路109、ブレーキ液圧制御装置106、および通路110を介してブレーキ増圧MCY3の通路孔80(つまり、圧力室79)に、およびブレーキ液圧制御装置106および通路孔111を介して出力可変用作動液圧導入孔99(つまり、増圧室97)にそれぞれ接続可能となっている。
【0090】
このブレーキ液圧制御装置106の出力側に圧力センサ18が設けられており、この圧力センサ18はブレーキ液圧制御装置106の出力液圧を検出して、CPU19に供給するようになっている(図示例では、圧力センサ18はブレーキ液圧制御装置106の前輪側の出力液圧を検出するようになっているが、ブレーキ液圧制御装置106の後輪側の出力液圧を検出するようにすることもできる)。
【0091】
CPU19はブレーキ液圧制御装置106を作動制御して、前述のブレーキ液圧制御を行うとき、このブレーキ液圧制御信号、ストロークセンサ17および圧力センサ18からの出各力信号に基づいて、ブレーキ液圧制御に応じてアキュムレータ84と圧力室79との連通・遮断を制御して圧力室79に供給する液圧をブレーキ液圧制御に応じて制御し、ストロークピストン60のストロークを制御することにより、ブレーキ液圧制御によるペダルストロークの変化を防止するようになっている。
【0092】
また、CPU19は同様にブレーキ液圧制御を行うとき、このブレーキ液圧制御信号、ストロークセンサ17および圧力センサ18からの出各力信号に基づいて、ブレーキ液圧制御に応じてアキュムレータ84と増圧室97との連通・遮断を制御して増圧室97に供給する液圧をブレーキ液圧制御に応じて制御し、出力補助ピストン103の押圧力つまりパワーピストン32の押圧力を制御することにより、ブレーキ液圧制御に応じてサーボ比を変えるようになっている。
【0093】
更に、ブレーキペダル2の非踏込時にはブレーキ液圧制御装置106はアキュムレータ84と圧力室79とを遮断しており、ブレーキペダル2の踏込時にはストロークセンサ17からの出力信号に基づいてブレーキ液圧制御装置106を作動することにより、ブレーキ液圧制御装置106はアキュムレータ84と圧力室79とを連通し、アキュムレータ84の液圧が圧力室79に供給されるようになっている。前述の各例と同様に、圧力室79に供給された液圧がストロークピストン60に作用するので、ストロークピストン60が後方にストロークし、入力ロッド38のストロークが短縮するようになる。このように、ブレーキ液圧制御装置106は、前述の各例の電気切換弁14の機能と同じ機能も有している。
【0094】
更に、サーボ比を変化させないときにはブレーキ液圧制御装置106はアキュムレータ84と増圧室97とを遮断しており、サーボ比を変化させるときにはブレーキ液圧制御装置106を作動し、ブレーキ液圧制御装置106はアキュムレータ84と増圧室97を連通し、アキュムレータ84の液圧が増圧室97に供給されるようになっている。前述の第2例と同様に、増圧室97に供給された液圧が出力補助ピストン103を前方に向けて押圧することでパワーピストン32の出力を増大するので、ブレーキ増圧MCY3のサーボ比を任意の大きさに設定することができるようになる。このように、ブレーキ液圧制御装置106は、前述の第2例の電気切換弁86の機能と同じ機能も有している。
この第3例のブレーキ増圧MCY3の他の構成、他の作動、および他の作用効果は第2例と同じである。
【0095】
この第3例のブレーキ液圧制御装置106は、前述の第2例のブレーキ増圧MCY3を用いたブレーキシステム1に適用しているが、前述の図1に示す第1例のブレーキ増圧MCY3を用いたブレーキシステム1にも適用することができる。この場合には、ストロークピストン60によるストローク変更の制御のみが行われ、サーボ比変更制御は行われないことは言うまでもない。
【0096】
なお、前述の第1および第2例のブレーキ増圧MCY3はいずれもマスタシリンダピストンが2個、MCY圧室が2つ有するタンデムマスタシリンダとされているが、本発明はマスタシリンダピストンが1個、MCY圧室が1有するシングルマスタシリンダを用いることもできる。その場合は、ストロークピストンはこの1つのMCY圧室を区画して、このストロークピストンがストロークすることでMCY圧室のブレーキ液を各ホイールシリンダに送給することで、入力ロッドのストロークを短縮するようになる。
【0097】
また、ストロークピストン60はストロークピストン作動手段である前述の各例の電磁切換弁14で制御される液圧により作動する以外に、ストロークピストン作動手段で制御される圧縮空気や負圧等の他の流体圧により作動することもできるし、あるいはストロークピストン作動手段で制御される電磁力により作動することもできる。
【0098】
更に、前述の各例では、ストロークピストン60によるストローク制御、またはストロークピストン60によるストローク制御と出力補助ピストン103によるサーボ比制御を行うようになっているが、出力補助ピストン103によるサーボ比制御のみを行うようにすることもできる。
【0099】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のブレーキ増圧MCYによれば、マスタシリンダ自体に増圧機能を有するようにしているので、従来の負圧倍力装置や液圧倍力装置等の倍力装置を必要とせず、ブレーキ増圧MCYの全長を短くでき、これにより、ブレーキ倍力システムを簡素化できるとともに、ブレーキ増圧MCYの搭載性を向上できる。
【0100】
また、作動時ブレーキ液送出制御手段により、マスタシリンダ圧室のブレーキ液をブレーキシリンダに送出するようにしているので、その分、マスタシリンダピストンのストロークを短くでき、ブレーキペダル等のブレーキ操作部材の操作時の入力ロッドのストロークを短縮できる。
更に、ブレーキ液送出制御手段の作動量を制御することで、入力ロッドのストロークが調整されるので、ブレーキ増圧マスタシリンダにストロークシミュレータ機能を持たせることが可能となる。これにより、ブレーキ増圧マスタシリンダの出力側に影響されずに入力側のストローク特性が種々変更可能となる。
【0101】
更に、マスタシリンダピストン作用力付与手段によりマスタシリンダピストンにその作動方向に作用力を付与可能としているので、ブレーキ増圧マスタシリンダのサーボ比を可変にできる。
【0102】
更に、マスタシリンダピストン作用力付与手段によりマスタシリンダピストンにその作動方向に作用力が付与可能となることで、次のようなブレーキ制御が可能となる。すなわち、回生協調ブレーキシステムにおいては、回生ブレーキ作動時に回生ブレーキ力の分だけブレーキ増圧MCYによるブレーキ力を小さくでき、また回生ブレーキ非作動時に回生ブレーキ力がなくなる分だけブレーキ増圧MCYによるブレーキ力を大きくすることができる。また、自動ブレーキシステムを備えたブレーキシステムにおいては、自動ブレーキの作動条件成立時にマスタシリンダピストン作用力付与手段によりマスタシリンダピストンへ作用力を付与してマスタシリンダピストンを作動させることで、自動的にブレーキを作動させることが可能となる。更に、ブレーキアシストシステムを備えたブレーキシステムにおいては、例えば急ブレーキ操作時等のブレーキアシストが必要なときにマスタシリンダピストン作用力付与手段によりマスタシリンダピストンへ作用力を付与してマスタシリンダピストンを作動させることでサーボ比を大きくし、ブレーキ操作力の不足分、ブレーキアシストが可能となる。
【0103】
特に、マスタシリンダ圧をブレーキ液圧制御に応じて制御するブレーキ液圧制御装置によって制御された液圧で、マスタシリンダピストンおよびマスタシリンダピストン作用力付与手段の少なくとも一方を作動させることにより、ブレーキ液圧制御に応じてペダルストロークが変更しないようにすることおよびペダル踏力が変更しないようにしてマスタシリンダ圧をブレーキ液圧制御に応じて制御することの少なくとも一方を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るブレーキ増圧マスタシリンダの実施の形態の第1例が適用されているブレーキシステムを示す図である。
【図2】 図1に示す第1例のブレーキ増圧マスタシリンダの断面図である。
【図3】 図2に示すブレーキ増圧MCYの増圧制御部の部分拡大断面図である。
【図4】 本発明に係るブレーキ増圧マスタシリンダの実施の形態の第2例が適用されているブレーキシステムを示す図である。
【図5】 図4に示す第2例のブレーキ増圧マスタシリンダの断面図である。
【図6】 図5に示すブレーキ増圧MCYの増圧制御部の部分拡大断面図である。
【図7】 本発明に係るブレーキ増圧マスタシリンダの実施の形態の第3例が適用されているブレーキシステムを示す図である。
【符号の説明】
1…ブレーキシステム、2…ブレーキペダル、3…ブレーク増圧マスタシリンダ、4…リザーバ、5,6,8,9…ホイールシリンダ、10…第1ポンプ、11…電磁開閉弁、13…第2ポンプ、14…電磁切換弁、16…モータ、17…ストロークセンサ、18…圧力センサ、19…制御装置(CPU)、20…増圧制御部、21…マスタシリンダ圧発生部、22…ハウジング、28…プラグ部材、29…円筒状部材、32…パワーピストン、33…バルブスリーブ、34…バルブスプール、35…反力ピストン、38…入力ロッド、39,40…段部、43…加圧室、47…環状溝、50…径方向孔、57…プライマリピストン、58…セカンダリピストン、59…第1カップシール、60…ストロークピストン、61…第2カップシール、62…第1大気圧室、68…第2大気圧室、72…第1MCY圧室、75…径方向孔、76…第2MCY圧室、79…圧力室、84…アキュムレータ、86…電磁切換弁、87…円錐弁、88…第1弁座、89…第2弁座、97…増圧室、103…出力補助ピストン、106…ブレーキ液圧制御装置

Claims (7)

  1. ブレーキペダル等のブレーキ操作部材の操作時に加えられる入力でストロークする入力ロッドと、前記入力ロッドで作動制御されて液圧源の液圧を前記入力に応じて制御された液圧を発生させる制御弁と、この制御弁で制御された液圧が供給される加圧室と、ブレーキシリンダに接続されるマスタシリンダ圧室と、前記加圧室に供給された液圧で作動して前記マスタシリンダ圧室にマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダピストンと、前記操作時に作動して前記マスタシリンダ圧室のブレーキ液を前記ブレーキシリンダに送出するブレーキ液送出制御手段とを備え、
    前記ブレーキ液送出制御手段は、前記操作時にストロークして前記マスタシリンダ圧室のブレーキ液を前記ブレーキシリンダに送出するストロークピストンと、このストロークピストンを作動制御するストロークピストン作動手段とを備えていることを特徴とするブレーキ増圧マスタシリンダ。
  2. 前記ストロークピストンは、液圧や圧縮空気等の流体圧または電磁力で作動するようになっていることを特徴とする請求項記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  3. 前記マスタシリンダピストンにその作動方向に作用力を必要時に付与するマスタシリンダピストン作用力付与手段を備えていることを特徴とする請求項1または2記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  4. 前記ストロークピストンは、ブレーキ増圧マスタシリンダの先端側に前記マスタシリンダピストンに対向して直列に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  5. 前記マスタシリンダピストン作用力付与手段は出力補助ピストンを備え、外部液圧源の液圧をこの出力補助ピストンに作用することで、前記マスタシリンダピストンの入力を増大するようになっていることを特徴とする請求項3または4記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  6. 前記マスタシリンダピストン作用力付与手段は出力補助ピストンを備え、ブレーキ増圧マスタシリンダのマスタシリンダ圧をブレーキ液圧制御に応じて制御してホイールシリンダに供給するブレーキ液圧制御装置によってブレーキ液圧制御に応じて制御された液圧をこの出力補助ピストンに作用することで、前記マスタシリンダピストンの入力を増大するようになっていることを特徴とする請求項3または4記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  7. 前記ストロークピストン作動手段は、ブレーキ増圧マスタシリンダのマスタシリンダ圧をブレーキ液圧制御に応じて制御してホイールシリンダに供給するブレーキ液圧制御装置で構成されており、前記ストロークピストンは、前記ブレーキ液圧制御装置によってブレーキ液圧制御に応じて制御された液圧で作動するようになっていることを特徴とする請求項1、3ないし6のいずれか1記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
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