JP3750229B2 - アクリル酸製造用触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロパンの気相接触酸化によるアクリル酸の製法に適用される触媒の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
プロパンを気相接触酸化してアクリル酸を製造する触媒は、従来数多く提案されている。このような触媒の具体例としては、V−P−Te〔キャタリシス ツディー(Catal.Today),13,679(1992)〕、
(VO)2 P2 O7 〔日本化学誌、(4),354(1992)〕、AgBiVMoO(特開平2−83348号公報)、BiMo12V5 Nb0.5 SbKOn (USP第5198580号)、Sb−P−Mo(USP第4260822号)、(VO)2 P2 O7 +TeO2 (特開平6−135922号公報)およびMoTeVNb(特開平6−279351号公報)等が挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記触媒では、目的生成物であるアクリル酸の収率が低かったり、または反応方式が複雑で、気相ラジカル反応が並行して起こり実用化が困難であった。
上記特開平6−279351号公報に記載のMoTeVNb系触媒では、アクリル酸の収率は相当に高いが、酢酸、一酸化炭素および二酸化炭素等を生成する副反応が起こり易く、プロパンのアクリル酸への選択率において、なお改良の余地があった。また、USP第5198580号に開示のBi,Mo,V,Nb,SbおよびKからなる金属酸化物の場合も、上記MoTeVNb系触媒と同様に、選択率が今一歩であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、プロパンのアンモ酸化反応の触媒として知られていた、特定な製造法によって得られるバナジウムおよびアンチモンからなる金属酸化物(特開平2−2877号公報)に、モリブデンおよびニオブ、またはモリブデンおよびタンタルを添加しかつ焼成して得られる金属酸化物によれば、プロパンから一段でアクリル酸を極めて高収率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、モノペルオキソバナジウムイオン水溶液と、原子価3のアンチモンを含む化合物を水性媒体中で加熱下に反応させることにより、前記アンチモンの原子価を5価に酸化させる工程(1)と、上記工程(1)で得られた反応生成物に、Moからなる化合物および以下に定義するAからなる化合物を加えて均一に混合し、得られる混合物を焼成することにより、上記金属を酸化物に転換する工程(2)からなることを特徴とする、構成金属の割合が下記組成式(I)で表される金属酸化物からなるプロパンの気相接触酸化によるアクリル酸製造用触媒の製造方法である。
MoVi Sbj Ak (I)
(式中、Aは、NbまたはTaであり、また i、j およびk は、いずれも0.001〜3.0である)
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0005】
【発明の実施の形態】
モノペルオキソバナジウムイオンは、化学式VO(O2 )+ で表されるイオンであり、酸化バナジウム等のバナジウム化合物を過酸化水素水溶液中で酸化することにより得られる。その合成法は公知であり、例えば前記の特開平2−2877号公報に記載されている。
上記反応に使用する過酸化水素水溶液の過酸化水素濃度は、数%〜35%程度が適当である。反応に際しては、バナジウムに対して過酸化水素を理論量より多めに使用することが好ましい。反応は室温下で速やかに進行し、反応の終了時には、反応液は赤色を呈する。かくして、モノペルオキソバナジウムイオンの水溶液を得ることができる。
バナジウム化合物としては、VO、V2 O5 、V2 O3 等のバナジウム酸化物;VOCl3 、VOCl2 、VOCl等のオキシハロゲン化バナジウム;VF3 、VCl3 、VBr3 等のハロゲン化バナジウム;およびメタバナジウム酸等が挙げられる。
【0006】
つぎに、上記モノペルオキソバナジウムイオン水溶液と、原子価3のアンチモンを含む化合物を水性媒体中で加熱下に反応させる。3価のアンチモン化合物としては、三酸化アンチモンおよび酢酸アンチモンが好ましく、また好ましい反応温度は、80℃以上であり、反応時間としては4〜60時間が適当である。
反応の進行に従い反応液は、まず深青色に変色し、最終的に黒緑色となる。この反応において、該ペルオキソバナジウムイオンにより3価のアンチモンが5価のアンチモンに酸化され、一方バナジウムの原子価は、原子種により異なるが、平均で5未満になる。
添加するアンチモンの量は、Sb:Vの原子比で0.3〜0.9の範囲が好ましい。Sb:Vの原子比が、0.3未満であるとアクリル酸製造反応においてアクリル酸の選択率が低く、一方0.9を越えるとプロパンの転化率が低下し易い。
【0007】
本発明においては、上記反応によって得られる黒緑色の分散液または該分散液から水性媒体を除去して得られる固形分に、金属MoおよびA(但しAは、NbまたはTaである)からなる化合物を加えて均一に混合する。
ここで添加する金属化合物の具体例としては、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデン等のモリブデン化合物;ニオブ酸、しゅう酸水素ニオブ、酸化ニオブ、塩化ニオブ等のニオブ化合物;タンタル酸、酸化タンタル、塩化タンタル、タンタルエトキシド等のタンタル化合物等が挙げられる。
上記金属化合物の使用量は、得られる混合物を蒸発乾固して得られた固形分を焼成して得られる金属酸化物における各金属の割合が、次式の原子比を満足する割合である。
MoVi Sbj Ak (I)
(式中、 i、j およびk は、いずれも0.001〜3.0である)
上記式中、より好ましい i、j およびk は、0.1〜0.5である。
上記金属酸化物において、Moを1とした場合のVの割合が、3を越えると燃焼反応の割合が大きくなる。Moを1とした場合のSbの割合が、3を越えるとプロパンの転化率が低下する。また、Moを1とした場合のAの割合が、3を越えると転化率および反応物におけるアクリル酸の割合すなわち選択率のいずれもが低下する。Moを1とした場合のV、SbおよびAの割合が、それぞれ0.001未満であると、いずれの場合にもプロパンの転換率およびアクリル酸選択率に劣る。
【0008】
上記操作によって得られる金属化合物の混合物は、必要により蒸発乾固または噴霧乾燥等の方法により乾燥した後、300〜900℃の温度で1〜20時間焼成することにより、金属酸化物に転換される。焼成の雰囲気は、窒素およびアルゴン等の不活性ガス気流中または空気および酸素等の酸素含有気流中が好ましい。得られた金属酸化物の確認は、螢光X線分析によって行うことができる。
上記方法により得られる金属酸化物すなわち本発明におけるアクリル酸製造用触媒は、適当な粒度にまで粉砕して、表面積を増大させることが好ましく、粉砕方法としては、乾式粉砕法または湿式粉砕法のいずれの方法も使用でき、粉砕装置としては、乳鉢、ボールミル等が挙げられる。本触媒の好ましい粒度は、20μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。
【0009】
本発明におけるアクリル酸製造用触媒は、無担体の状態でも使用できるが、適当な粒度を有するシリカ、アルミナ、シリカアルミナおよびシリコンカーバイド等の担体に担持させた状態で使用することもできる。
アクリル酸製造の原料であるプロパンおよび酸素ガスは、別々に反応器に導入して反応器内で混合させてもよく、また予め両者を混合させた状態で反応器に導入してもよい。
酸素ガスとしては、純酸素ガスまたは空気、ならびにこれらを窒素、スチームまたは炭酸ガスで希釈したガスが挙げられる。プロパンおよび空気を使用する場合、空気のプロパンに対する使用割合は、容積比率で30倍以下が好ましく、さらに好ましくは、0.2〜20倍の範囲である。
好ましい反応温度は300〜600℃であり、より好ましくは350〜500℃である。また、ガス空間速度(以下SVという)としては、300〜5000/hrが適当である。
以下、実施例および比較例を挙げることにより、本発明をさらに具体的に説明する。
【0010】
【実施例1】
蒸留水100mlに五酸化バナジウム4.07gを加え攪拌下に、さらに35%過酸化水素水26.4gを滴下し、五酸化バナジウムを溶解させた。得られた溶液に、三酸化アンチモン5.43gを加え8時間加熱還流させ、スラリー溶液を得た。他方、蓚酸11.27gおよびニオブ酸2.77gを180mlの蒸留水に加熱溶解してニオブ含有水溶液を得た。
上記スラリー液に、モリブデン酸アンモニウム26.31gおよび前記ニオブ含有溶液の全量を加えた後、さらに50℃で30分撹拌を行った。得られたスラリーを加熱して蒸発乾固した後、さらに120℃で3時間乾燥させ、次いで窒素中600℃で2時間焼成した。上記操作により、Mo/Sb/V/Nbの原子比が1.0/0.25/0.3/0.11(螢光X線分析による測定結果)の酸化物を得た。得られた酸化物を16〜30メッシュに粉砕し、アクリル酸製造用反応器に充填した。
【0011】
触媒を充填した反応器を温度400℃に維持し、プロパン4.4容量%、酸素7.0容量%、窒素26.3容量%および水蒸気62.3容量%の混合ガス(以下テストガスという)をSV1600/hrの速度で該反応器中に供給して、アクリル酸製造を行った。
この反応におけるプロパン転化率(%)、プロピレン選択率(%)およびアクリル酸選択率(%)を、それぞれ以下の式によって算出し、結果を表1に記載した。
・プロパン転化率(%)
=〔(供給プロパン−未反応プロパン)/供給プロパン〕×100
・プロピレン選択率(%)
=〔生成プロピレン/(供給プロパン−未反応プロパン)〕×100
・アクリル酸選択率(%)
=〔生成アクリル酸/(供給プロパン−未反応プロパン)〕×100
上記式の左辺の物質の量の単位は、いずれもモルである。
【0012】
【実施例2】
反応温度を380℃とした以外は、すべて実施例1と同一の条件で反応を行った。反応の結果は表1に記載のとおりである。
【0013】
【比較例1】
メタバナジン酸アンモニウム12.3gを蒸留水259mlに加熱溶解させた後、三酸化アンチモン12.7gを加えて12時間加熱還流させ、スラリー液を得た。他方、蓚酸26.3gおよびニオブ酸6.5gを180mlの蒸留水に加熱溶解して、ニオブ含有水溶液を得た。
上記スラリー液に、モリブデン酸アンモニウム61.0gおよび前記ニオブ含有水溶液の全量を加えた後、さらに30分撹拌を行った。得られたスラリーを蒸発乾固し、さらに120℃で3時間乾燥させた後、窒素中600℃で2時間焼成して前記金属を含む金属酸化物を得た。
上記金属酸化物におけるMo/Sb/V/Nbの原子比は、1.0/0.25/0.3/0.11であった。該金属酸化物を16〜30メッシュに粉砕し、反応器に充填して、以下実施例1と同様にプロパンを反応させて、その結果を表1に記載した。
【0014】
【表1】
【0015】
【発明の効果】
本発明のアクリル酸製造用触媒によれば、プロパンから一段反応により高収率でアクリル酸を製造することができる。
Claims (1)
- モノペルオキソバナジウムイオン水溶液と、原子価3のアンチモンを含む化合物を水性媒体中で加熱下に反応させることにより、前記アンチモンの原子価を5価に酸化させる工程(1)と、上記工程(1)で得られた反応生成物に、Moからなる化合物および以下に定義するAからなる化合物を加えて均一に混合し、得られる混合物を焼成することにより、上記金属を酸化物に転換する工程(2)からなることを特徴とする、構成金属の割合が下記組成式(I)で表される金属酸化物からなるプロパンの気相接触酸化によるアクリル酸製造用触媒の製造方法。
MoVi Sbj Ak (I)
(式中、Aは、NbまたはTaであり、また i、j およびk は、いずれも0.001〜3.0である)
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JP29930996A JP3750229B2 (ja) | 1996-10-24 | 1996-10-24 | アクリル酸製造用触媒の製造方法 |
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JP29930996A JP3750229B2 (ja) | 1996-10-24 | 1996-10-24 | アクリル酸製造用触媒の製造方法 |
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JPH10118491A JPH10118491A (ja) | 1998-05-12 |
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