JP3749416B2 - スード試験方法およびスード試験装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の地震時などにおける挙動を調べるスード試験方法およびスード試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物の地震時における挙動を調べるためなど地動加速度による応答試験を行うとき、実物建造物をそのまま大型振動試験台に設置して台面上の加速度波を地動加速度波(Accelerated Wave:ACC波)と同一になるよう制御する方法が考えられる。この場合には、図4の(a)に模式的に示すように、振動台上に試験体を載置し、アクチュエータに地動加速度波を入力して振動台を駆動する。
しかしながら、この方法は、次のような理由により技術上実用化は困難である。
(1)正確に地動加速度波(ACC波)を振動台上で再現することは困難である。ACC波を忠実に再現するためには、繰り返し行うことが必要となるが、最初の1回でACC波を再現しないと試験体を何度も破損することとなってしまい、非常に高コストとなってしまう。
(2)振動台装置が巨大なものとなってしまう。何10〜100トンもの質量が存在する場合や高層ビルディングになると、実際上、振動台は製作不能である。
(3)地震波の継続時間と同じ短時間の試験となり、試験体の疲労過程や破壊過程を目視で観測することが困難である。
【0003】
そこで、低コストの手法として注目されているのが、地震時における構造物の挙動を静的実験装置でシミュレートするスードダイナミック試験方法(Pseudodynamic Test Method 、以下、単に「スード試験方法」という)である。これは、ハイブリッド試験方法、仮想試験方法あるいはオンライン実物地震応答システムなどとも呼ばれている。この試験方法は、構造物を質点と柱等の剛性に相当するバネ定数とからなる質点モデルに置き換えて、このモデルの運動方程式を解くことにより求めた応答値を用いる方法である。
以下、建物をその中に分散する質量を1点に集中するとした質量Mと柱の水平剛性に相当するバネ定数Kからなる1質点モデルに置き換えた場合を例にとって説明する。
【0004】
図4の(b)は、前記図4の(a)をモデル化して示した図である。この図において、地動加速度波(ACC波)により、地面(振動台面)がxだけ変位し、それに伴い、質点Mがyだけ変位する。
ここで、前記質点Mの地面に対する相対変位をD(=y−x)とおくと、図4の(c)に示すモデルとなる。このモデルのバランス式は次の式(1)により表される。
【数1】
Figure 0003749416
ここで、Dの上のドットは、時間微分を表している。また、Kは構造物のバネ定数(スティフネス)[kgf/cm]、Mは質量[kg]、Cは減衰定数(ダンピング係数)[kgf/sec ]、Dは質点の空間静止点からの変位[cm]、d2D/dt2 は質点の加速度[cm/sec2 ]、d2D0/dt2 は地動加速度[cm/sec2]、 dD/dtは質点の速度[cm/sec]である。
【0005】
また、この質点系の固有振動周波数fo は次の式(2)により表される。
【数2】
Figure 0003749416
ここで、図4の(b)に示す振動台上の力と、図4の(c)に示す反力Rとが一致しているときには、両者は等価であるということができる。
【0006】
スード試験方法はこのことを利用した手法であり、前記バネ定数Kの値をリアルタイムで実測しながら前記式(1)を解くことにより質点の相対変位Dを求め、構造物である試験体に対し、該算出した相対変位DをアクチュエータACTにより与えるようにして地震などの加速度波に対する試験体の挙動を測定する試験方法である。図4の(d)は、このスード試験方法の様子を模式的に示す図であり、アクチュエータACTにより、試験体を加力している。また、ロードセル(L/C)により試験体に発生する反力を計測している。
【0007】
このようなスード試験において、地動加速度(d2Do/dt2) を示すACC波形が不規則な波形であるため、前記式(1)を解くために、全区間を微小な時間Δt[sec ]に区切り、所定の仮定に基づきΔt内で逐次積分を行い、Δt秒後の応答値を求める、すなわち、Δt秒後の応答値を現時刻の応答値の関数とするという過程を、地震応答時間だけ繰り返し行い前記応答値を求めるという近似的解法が採用されている。この手法は、前記微小な時間きざみ(時間ステップ)Δt内に適用する前述した仮定に応じて、次のような種類に分けられる。
(1)中央差分法(Basic Central Difference Method )
(2)総和型中央差分法(Summed-Form Central Difference Method )
(3)ニューマーク法(Newmark Explicit Method )
(4)改良ニューマーク法(Modified Newmark Method )
実際のハイブリッド試験においては、精度の上から上記(3)と(4)がよく用いられている。
【0008】
代表的に用いられている(3)ニューマーク法を例にとって説明する。
ニューマーク法は、第n番目の時間ステップのデータDnと第(n+1)番目の時間ステップのデータDn+1の関係を用いて微分を行なうものであり、変位Dn+1、変位Dn+1の1階微分(dDn+1/dt )および2階微分(d2Dn+1/dt2) は、それぞれ、次の式(3)〜式(5)のように表わされる。
【数3】
Figure 0003749416
ここで、Rn+1は、反力(復元力)の計測値であり、前記式(4)の右辺の分子に実測した復元力Rn+1を用いて逐次積分法で応答値Dを求めている。すなわち、この方法では、反力R(=K・D)を図4の(d)におけるロードセルなどの荷重センサで実測し、この値を用いて、次時間ステップの相対変位Dを算出している。
【0009】
図5に、このニューマーク法の処理フローチャートを示す。
まず、ステップ1において、前時間ステップの応答変位である応答解析時目標変位Dnより、前記式(3)に基づき、この時間ステップの応答解析時目標変位Dn+1を求める。なお、試験の開始時においては、D0 =0とされている。
次に、ステップ2に進み、前記ステップ1において算出した応答変位Dn+1に基づき、アクチュエータで試験体を加振する。
該ステップ2の結果試験体に発生する反力(復元力)Rn+1を荷重センサにより計測し、読み込む(ステップ3)。
そして、該計測したRn+1および加速度入力値d2Don+1/dt2を前記式(4)に代入して、応答加速度d2Dn+1/dt2を求める(ステップ4)。
次に、前時間ステップの応答速度 dDn/dt 、応答加速度d2Dn/dt2および前記ステップ4において算出されたこの時間ステップの応答加速度d2Dn+1/dt2に基づき、前記式(5)より、この時間ステップの応答速度 dDn+1/dt を求める(ステップ5)。
そして、この時間ステップにおいて求めた応答変位Dn+1、応答速度 dDn+1/dt および応答加速度d2Dn+1/dt2を前時間ステップのものとし(ステップ6)、前記ステップ1に戻り、ステップ1〜ステップ6を繰り返し実行する。
【0010】
このようにスード試験方法においては、地震時に計測された加速度データ(ACC波形データ)を前記式(1)の運動方程式に入力し、バネ定数Kの値(上述した例においては、反力R(=K・D))のみリアルタイムで実測して、前記運動方程式をリアルタイムで解きながら、式の出力として得られる相対変位DとなるようにアクチュエータACTで構造物の質点部に加力する。なお、上述した(1)、(2)および(4)の方法においても、用いる式が異なるだけで、同様に反力を実測しながら相対変位Dを求めている。
このようなスード試験方法によれば、運動方程式のパラメータに予め入力しておくのは、質量Mと減衰定数Cであり、バネ定数Kはリアルタイムの実測値を使用する。このため、質量Mを式内に置くため実物の質量部を除くことができ、そのため柱などの構造体のみを対象に静的に試験することができるという特徴がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図5のステップ2において、求めた目標変位Dn+1で試験体をアクチュエータにより加振する際には、アクチュエータの変位すなわち試験体に加わる変位が、目標変位Dn+1になればよい(試験は波形の再現ではなく、レベル再現である)ので、アクチュエータの変位を、一定の大きさ〔1クロック(たとえば100μsec)当たりのビット数で決定されている〕の変化速度Vで増減させ、そして、目標変位Dn+1に達したか否かを判断して、達したと判断すると、変位の増減を停止している。また、アクチュエータの変位の変化速度の向きは、たとえば、アクチュエータのピストンの伸びる側を+とすると、引っ込む側が−となっている。そして、この変化速度Vの向きは、前時間ステップの応答速度 dDn/dt の向きで決定されている。応答速度 dDn/dt の向きを示すフラグが+である(応答速度 dDn/dt が0以上の時にフラグは+となる)と、変化速度Vの向きも+にし、一方、応答速度 dDn/dt の向きを示すフラグが−であると、変化速度Vの向きも−にしている。すなわち、図8(b)に図示するようなACC波を試験体に加え、各点P1,P2,P3,P4 において、アクチュエータで試験体に変位a1,a2,a3,a4 を与える際には、図8(a)に図示するように、変位は、一定の大きさの変化速度Vすなわち一定勾配で増加または減少して、目標変位a1,a2,a3,a4 となっている。
【0012】
図8に図示する事例では、変位は順次増大しているが、図9に図示するように、点P3における変位a3と点P4における変位a4とが略同じ場合がある。この様な場合では、点P3から点P4に行く際に、点P3における応答速度 dDn/dt の向きのフラグは+であるので、+の向きで、かつ、一定の大きさの変化速度Vが加算され、a3+Vとなる。したがって、点P3における変位a3と点P4における変位a4との差分が、変化速度Vの大きさよりも小さいと、目標変位に達したか否かを判断する際には、目標変位a4を既にオーバーすることになる。
【0013】
この様に、一定の大きさの変化速度Vで変位を増減すると、目標変位との間に微視的な誤差が生じることがある。そして、スード試験の運動方程式は、時々刻々の積分値として変位解を得ており、この様な微視的な誤差の発生は、時々刻々演算される積分解に大きな影響を与える。なお、変位の変化速度Vの大きさを極く小さくすることも考えられるが、アクチュエータの作動速度が遅くなり、スード試験に要する時間が長くなる。
【0014】
本発明は、以上のような課題を解決するためのもので、より正確な目標変位を試験体に与えることができるスード試験方法およびスード試験装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のスード試験方法は、波形発生手段(41)から入力される加速度波形、および、試験体(14)に発生する反力(R)を検出する荷重センサ(31)の出力に基づいて、所定の時間ステップごとに試験体に負荷する変位(D)を応答解析演算手段(42)により応答解析時目標変位(Dn+1)として算出し、この応答解析時目標変位に基づいてアクチュエータ(13)を制御して前記試験体に変位を与える。そして、応答解析演算手段が算出した応答解析時目標変位と前回の応答解析時目標変位との差を差分(ΔD)として算出し、この差分の大きさが、設定されている最小値(ΔDmin )よりも小さいときには、前記アクチュエータの目標変位(Dm)を変更せず、一方、差分の大きさが、設定されている最大値(ΔDmax )よりも大きいときには、差分の大きさを前記最大値に制限し、差分の大きさが最小値以上の時に、差分に略比例する目標変位変化速度(d)を生成して、アクチュエータの目標変位をこの目標変位変化速度で変化させる。
【0016】
本発明のスード試験装置は、加速度波形を発生する波形発生手段と、試験体に発生する反力を測定する荷重センサと、前記波形発生手段の出力、および、前記荷重センサの検出した反力に基づいて、所定の時間ステップごとに試験体に負荷する変位を応答解析時目標変位として算出する応答解析演算手段と、前記応答解析時目標変位に基づいて前記試験体に変位を与えるアクチュエータとを備える。そして、応答解析演算手段が算出した応答解析時目標変位と前回の応答解析時目標変位との差を差分として算出するとともに、この差分の大きさが、設定されている最小値よりも小さいときには、目標変位変化速度生成部に出力しないでアクチュエータの目標変位を変更せず、一方、差分の大きさが、設定されている最大値よりも大きいときには、差分の大きさを前記最大値に制限して目標変位変化速度生成部(49)に出力する差分算出手段(47)と、この差分算出手段からの差分に略比例する目標変位変化速度を生成する目標変位変化速度生成手段と、アクチュエータの目標変位を前記目標変位変化速度で変化させるアクチュエータ用目標変位生成手段(51)とを備えており、アクチュエータはアクチュエータ用目標変位生成手段からの目標変位に追随するように試験体に変位を与える。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明におけるスード試験装置の実施の一形態を説明する。図1は本発明のスード試験装置の実施の一形態の構成を示すブロック図である。図2は図1のブロック図のデジタル制御部の拡大図である。図3は差分算出部の詳細図である。図4はスード試験方法を説明するための図である。図5はニューマーク法を用いたスード試験における処理のフローチャートである。図6はアクチュエータを作動させる際のフローチャートである。図7はアクチュエータへの出力の説明図で、(a)が差分ΔDと目標変位変化速度dとの関係を示す図、(b)がアクチュエータ用目標変位の変化の図である。なお、図7(a)においては、差分ΔDが正の部分のみが図示されている。また、デジタル制御部1は、マイコンやパソコンなどで構成され、ソフトウェアで作動しているが、図2では、複数のブロックとして図示している。
【0018】
まず始めに、図1でスード試験装置の全体構成を説明する。詳細は後述するデジタル制御部1はマイコンやパソコンなどからなり、このデジタル制御部1は、アクチュエータ用目標変位Dmを出力している。このアクチュエータ用目標変位Dmは、D/A変換器2でD/A変換されて、変位用加算部3に出力されている。一方、変位用加算部3の出力Drは、変位用調整部4を介して比例・微分・積分(PID)および増幅され、油圧アクチュエータ(ACT)13のサーボバルブ(S/V)12に入力されている。アクチュエータ13のピストンは、伸びたり、引っ込んだりして、試験体14に変位を与える。なお、この明細書においては、ピストンの伸びる方向を+にし、引っ込む方向を−にしている。そして、アクチュエータ13のピストンの変位(すなわち、試験体14の変位)Dは、変位センサ21で検出されている。この変位センサ21は、アームを有する歪みゲージ式伸び計、静電容量式伸び計やレーザー式変位量測定器などで構成され、この変位センサ21で検出した変位Dは、変位センサ用アンプ22で増幅され、ついで、変位用加算部3に入力されている。
【0019】
そして、変位用加算部3は、デジタル制御部1からのアクチュエータ用目標変位Dmと変位センサ21からの変位Dとの差信号Drを、前述のように調整部4に出力している。この様にして、材料試験片14に加わる変位Dが、デジタル制御部1のアクチュエータ用目標変位Dmに追随する様に、フィードバック制御されている。
【0020】
また、アクチュエータ13のピストンに加わる反力Rは、ロードセル(L/C)などの荷重センサ31で検出されている。この荷重センサ31の出力信号である反力Rは、荷重センサ用アンプ32で増幅され、ついで、A/D変換器33でA/D変換されて、デジタル制御部1に入力されている。
【0021】
ついで、デジタル制御部1の詳細なブロックを図2で説明する。
波形発生手段41は、例えば、地動加速度データがデータサンプル時間間隔で格納された波形テーブルを格納したメモリにより構成されている。そして、試験を行うときには、前記波形テーブルの読み出しアドレスをステップバイステップで計算し、サンプルデータを読み出して地動加速度d2D0n/dt2 のデータを応答解析演算手段としての応答解析部42に与えていくようになされている。この応答解析部42は、荷重センサ31からの反力R(この反力Rは時々刻々変化するのでサンプリング時点の反力Rは反力Rnと表示する。) および波形発生手段41からの地動加速度d2D0n/dt2 が入力され、ニューマーク法などの前述した手法に基づいて演算し、試験体14に与える変位を応答解析時目標変位Dn+1として算出する。この演算は一定時間毎に行われている。
【0022】
そして、この応答解析時目標変位Dn+1は、目標変位記憶部46、差分算出部47および判別部48に入力されている。目標変位記憶部46は、入力された応答解析時目標変位Dn+1を記憶するとともに、前回の応答解析時目標変位Dnを差分算出部47に出力する。差分算出部47は、入力された応答解析時目標変位Dn+1と前回の応答解析時目標変位Dnとの差を差分ΔDとして算出し〔差分演算部47a(図3参照)〕、ついで、この差分ΔDの大きさ(すなわち、絶対値)が、操作盤などにより予め設定されている最小値ΔDmin よりも小さいか否かを判定し、小さい場合には、応答解析部42に演算開始信号を出力する(最小値制限部47b)。応答解析部42はこの演算開始信号が入力されると、一定時間が経過するのを待たないで、次の演算を開始する。さらに、差分算出部47は、この差分ΔDの大きさが、操作盤などにより予め設定されている最大値ΔDmax よりも大きいか否かを判定し、大きい場合には、差分ΔDの大きさを最大値ΔDmax にして制限する(最大値制限部47c)。そして、差分算出部47は、差分ΔDの大きさが最小値ΔDmin 以上の場合には、決定された差分ΔDを目標変位変化速度生成部49に出力する。目標変位変化速度生成部49は、差分ΔDに比例定数Jを掛け算し、目標変位変化速度d〔大きさは1クロック(たとえば100μsec)当たりのビット数で、また、向きは+または−のフラグで表されている〕を生成し、アクチュエータ用目標変位算出部51に出力する。差分ΔDと目標変位変化速度dとは図7(a)に図示するような関係となる。アクチュエータ用目標変位算出部51は、前回のアクチュエータ用目標変位Dm-1に目標変位変化速度dを加算して、新しいアクチュエータ用目標変位Dmを算出し、D/A変換器2を介して変位用加算部3に出力する。アクチュエータ用目標変位Dmは、たとえば目標変位変化速度dが1クロック当たり2ビットの場合には、図7(b)に図示するように変化する。
【0023】
また、アクチュエータ用目標変位Dmは判別部48にも出力され、判別部48において、アクチュエータ用目標変位Dmが応答解析時目標変位Dn+1に達したか否かを判断し、達している場合には、アクチュエータ用目標変位算出部51に一致信号を出力する。アクチュエータ用目標変位算出部51は、一致信号が入力されると、アクチュエータ用目標変位Dmを変化させずに、その値を維持する。
【0024】
スード試験のメインフローは、前述の図5と同じであるが、この実施の形態におけるメインフローのステップ2の詳細は、図6に図示されている。
ステップ11において、記憶部に記憶されている前回の応答解析時目標変位Dnを読みだし、ステップ12に行く。なお、応答解析時目標変位Dnの初期値は0にセットされている。ついで、ステップ12において、今回の応答解析時目標変位Dn+1と前回の応答解析時目標変位Dnとの差である差分ΔDを求め、ステップ13に行く。ステップ13において、差分ΔDの大きさが、最小値ΔDmin よりも小さい場合には、メインフローに戻り、直ちに、メインフローの演算を開始する。一方、差分ΔDの大きさが、最小値ΔDmin 以上の場合には、ステップ14に行く。ステップ14において、差分ΔDの大きさが、最大値ΔDmax よりも大きい場合には、ステップ15に行き、ステップ15において、差分ΔDの大きさを最大値ΔDmax にして、ステップ16に行く。一方、差分ΔDの大きさが、最大値ΔDmax 以下の場合には、直接、ステップ16に行く。ステップ16において、差分ΔDに比例定数Jを掛け算して、目標変位変化速度dを求め、ステップ17に行く。ステップ17において、前回のアクチュエータ用目標変位Dm-1に目標変位変化速度dを加算して、新しいアクチュエータ用目標変位Dmを求め、このアクチュエータ用目標変位DmをD/A変換器2を介して変位用加算部3に出力する。そして、ステップ18に行く。ステップ18において、アクチュエータ用目標変位Dmが応答解析時目標変位Dn+1に達したか否かを判定し、達していない場合にはステップ17に戻り、ステップ17およびステップ18を繰り返し、アクチュエータ用目標変位Dmを目標変位変化速度dの大きさで増加または減少させる。一方、ステップ18において、達したと判定された場合には、ステップ19に行く。ステップ19において、応答解析時目標変位Dn+1を、前回の応答解析時目標変位Dnとして記憶部に記憶する。そして、図5に図示するメインフローに戻る。
【0025】
なお、前述の最小値ΔDmin の下限は、デジタル制御部1におけるデジタル信号の最小分解能値となる。また、アクチュエータ13の追随能力には限界があり、かつ、アクチュエータ13のピストンなどには慣性があるので、目標変位変化速度dが大きすぎると、目標値と実際の値とに比較的大きな差が生じたり、また、アクチュエータ13がオーバーシュートしたりして不安定となる。そのため、差分ΔDを最大値ΔDmax 以下にして、目標変位変化速度dの大きさを制限している。
【0026】
前述の様に、この実施の形態では、応答解析部42の算出する応答解析時目標変位Dn+1と前回の応答解析時目標変位Dnとの差である差分ΔDが小さい場合には、アクチュエータ13に与えるアクチュエータ用目標変位Dmを変更せずに、直ちに、応答解析部42での次の応答解析の演算を開始している。したがって、試験体14に与える変位が行き過ぎることを極力防止することができる。また、アクチュエータ用目標変位Dmの変更に要する時間が不要となり、スード試験に要する時間を短縮することができる。
【0027】
また、目標変位変化速度dは差分ΔDに略比例して決定されているので、差分ΔDの大きさに応じて、適当な目標変位変化速度dで試験体14に変位を与えることができ、スード試験に要する時間を極力短くすることができる。さらに、目標変位変化速度dの大きさを制限しているので、アクチュエータ13がオーバーシュートしたりすることを防止することができる。
【0028】
なお、最大値ΔDmax および最小値ΔDmin は、差分ΔDに対して設定されているが、差分ΔDと目標変位変化速度dとは略比例しているので、目標変位変化速度dに対して、最大値ΔDmax や最小値ΔDmin を設定しても実質的には略同じこととなる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、応答解析時目標変位と前回の応答解析時目標変位との差を差分として算出し、この差分の大きさが、設定されている最小値よりも小さいときには、アクチュエータの目標変位を変更せず、一方、差分の大きさが、設定されている最大値よりも大きいときには、差分の大きさを前記最大値に制限し、差分の大きさが最小値以上の時に、差分に略比例する目標変位変化速度を生成して、アクチュエータの目標変位をこの目標変位変化速度で変化させる。したがって、差分の大きさが小さいときには、アクチュエータの目標変位が変更せず、アクチュエータの目標変位がオーバーすることを極力防止することができる。しかも、差分に略比例する目標変位変化速度を生成し、アクチュエータの目標変位をこの目標変位変化速度で変化させており、差分の大きさに応じて、適当な目標変位変化速度で試験体に変位を与えることができ、スード試験に要する時間を極力短くすることができる。さらに、差分の大きさ、すなわち目標変位変化速度の大きさを制限しているので、アクチュエータの速度が速くなりすぎてオーバーシュートすることを極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明のスード試験装置の実施の一形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は図1のブロック図のデジタル制御部の拡大図である。
【図3】図3は差分算出部の詳細図である。
【図4】図4はスード試験方法を説明するための図である。
【図5】図5はニューマーク法を用いたスード試験における処理のフローチャートである。
【図6】図6はアクチュエータを作動させる際のフローチャートである。
【図7】図7はアクチュエータへの出力の説明図で、(a)が差分ΔDと目標変位変化速度dとの関係を示す図、(b)がアクチュエータ用目標変位の変化の図である。
【図8】図8は従来のスード試験装置の作動を説明する図である。
【図9】図9は試験体に与える変位の変化状態を示す図である。
【符号の説明】
D 変位
ΔD 差分
ΔDmin 最小値
ΔDmax 最大値
Dm アクチュエータ用目標変位
Dn 応答解析時目標変位
d 目標変位変化速度
R 反力
13 アクチュエータ
14 試験体
31 荷重センサ
41 波形発生手段
42 応答解析部(応答解析演算手段)
47 差分算出部(差分算出手段)
49 目標変位変化速度生成部(目標変位変化速度生成手段)
51 アクチュエータ用目標変位算出部(アクチュエータ用目標変位生成手段)

Claims (2)

  1. 波形発生手段から入力される加速度波形、および、試験体に発生する反力を検出する荷重センサの出力に基づいて、所定の時間ステップごとに試験体に負荷する変位を応答解析演算手段により応答解析時目標変位として算出し、この応答解析時目標変位に基づいてアクチュエータを制御して前記試験体に変位を与えるスード試験方法であって、
    前記応答解析演算手段が算出した応答解析時目標変位と、前回の応答解析時目標変位との差を差分として算出し、
    この差分の大きさが、設定されている最小値よりも小さいときには、前記アクチュエータの目標変位を変更せず、
    一方、差分の大きさが、設定されている最大値よりも大きいときには、差分の大きさを前記最大値に制限し、
    前記差分の大きさが最小値以上の時に、差分に略比例する目標変位変化速度を生成して、アクチュエータの目標変位をこの目標変位変化速度で変化させることを特徴とするスード試験方法。
  2. 加速度波形を発生する波形発生手段と、試験体に発生する反力を測定する荷重センサと、前記波形発生手段の出力、および、前記荷重センサの検出した反力に基づいて、所定の時間ステップごとに試験体に負荷する変位を応答解析時目標変位として算出する応答解析演算手段と、前記応答解析時目標変位に基づいて前記試験体に変位を与えるアクチュエータとを備えるスード試験装置において、
    前記応答解析演算手段が算出した応答解析時目標変位と、前回の応答解析時目標変位との差を差分として算出するとともに、この差分の大きさが、設定されている最小値よりも小さいときには、目標変位変化速度生成部に出力しないでアクチュエータの目標変位を変更せず、一方、差分の大きさが、設定されている最大値よりも大きいときには、差分の大きさを前記最大値に制限して目標変位変化速度生成部に出力する差分算出手段と、
    この差分算出手段からの差分に略比例する目標変位変化速度を生成する目標変位変化速度生成手段と、
    アクチュエータの目標変位を前記目標変位変化速度で変化させるアクチュエータ用目標変位生成手段とを備えており、
    アクチュエータはアクチュエータ用目標変位生成手段からの目標変位に追随するように試験体に変位を与えることを特徴とするスード試験装置。
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