JP3644292B2 - 構造物の加振試験装置及び加振試験方法 - Google Patents

構造物の加振試験装置及び加振試験方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物の一部を加振機により加振試験するとともに、この加振試験の結果を用いて構造物全体を数値モデル化して解析する構造物の加振試験装置及び加振試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から構造物の加振試験では、構造物全体の実物または模型を加振装置を用いて加振している。この従来の方法では、構造物を部分的に改良する場合や仕様を変更する際に、その都度新たに構造物全体を加振試験することが必要となり開発に要する経費や時間が多大になる。また、大型の構造物の場合には、加振装置の容量の制限から構造物全体を加振試験するのが困難である。この不具合を解決するために、近年、部分構造合成法に基づき加振試験と振動解析を併用する手法が提案されている。
【0003】
例えば、特開平8-82571号公報には、予め構造物全体を加振試験して構造物全体の振動モードを求め、この加振試験した構造物に対する変更箇所について有限要素解析し、構造物全体の振動モードを修正して振動応答を評価することが記載されている。また、日本機械学会論文集(C編)63巻616号(1997-12)P4134〜P4139には、初めに、実験モード解析により部分構造のモデルを求め、このモデルと他の部分の数値モデルとを結合して全体系をシミュレーションし、そのシミュレーション結果を用いて部分構造を加振することが記載されている。さらに、特開平5-10846号公報には、部分構造物を加振試験し、部分構造物以外の部分は数値モデルを用いて振動解析し、この加振試験と振動解析を同時に行い連成させることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平8-82571号公報に記載のものは、変更部分を数値モデル化で対処しており、様々な変更が容易であるという利点を有するが、部分構造物の振動特性が複雑なときには正確なモデル化が困難である。また、日本機械学会論文集(C編)63巻616号(1997-12)P4134〜P4139に記載のものは、初めに部分構造物の振動特性を同定するため、加振レベルによって部分構造物の特性が異なってくる場合や加振により特性が変化する場合には適用が難しい。さらに、特開平5-10846号公報に記載のものは、計測した部分構造物からの応答を直接数値モデルの時刻歴計算に用いており、供試体の特性変化にも対応することができるが、加振機の応答遅れという課題を有している。
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、試験対象の部分構造物の加振試験により得られる振動特性と、数値モデル化された構造物全体の振動応答を組合わせて評価する加振試験を実行することにより、高精度に振動応答を評価することを目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、部分構造物と数値モデルとを組み合せて振動応答を評価するいわゆるハイブリッド加振試験において、高周波で加振したときにも高精度に振動応答を評価することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、部分構造物と数値モデルとを組み合せて振動応答を評価するいわゆるハイブリッド加振試験において、非線形性が強い構造物においても、振動応答を評価可能にすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の第1の特徴は、部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験するものであって、前記部分構造物を加振する加振手段と、この加振手段が加振した部分構造物の変位を検出する変位検出手段と、部分構造物からの反力を検出する荷重検出手段とを有する構造物の加振試験装置において、数値モデルの振動応答を演算する演算手段と、部分構造物を数値モデル化した振動モデルを格納する格納手段とを設け、前記演算手段はさらに前記変位検出手段が検出した変位と荷重検出手段が検出した反力に基づいて振動モデルを同定して前記格納手段に格納し、この振動モデルと数値モデルとを合成して構造物全体を数値モデル化した全体系モデルを構築し、この全体系モデルの振動応答を演算することにある。
【0009】
そして好ましくは、演算手段が全体系モデルの振動応答を演算するときの入力信号を入力する手段を有する;演算手段に、加振する部分構造物の加振条件を変更させる加振対象選択手段を設け、この加振対象選択手段が加振条件を変更することにより、異なる部分構造物を同一の部分構造物で加振試験可能にすることにある。
【0010】
上記目的を達成するための本発明の第2の特徴は、複数の部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験する構造物の加振試験装置において、複数の部分構造物毎に、部分構造物を加振する加振手段と、この加振手段が加振した部分構造物の変位を検出する変位検出手段と、部分構造物からの反力を検出する荷重検出手段とを設け、これら検出された変位と反力に基づいて部分構造物毎に対応する振動モデルを同定し、この複数の振動モデルと数値モデルとを合成して前記構造物に対応した全体系モデルを構築し、この全体系モデルの振動応答を演算する演算手段を備えたことにある。
【0011】
上記目的を達成するための本発明の第3の特徴は、部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験するものであって、部分構造物を加振する複数の加振手段と、この加振手段毎に設けられ各加振手段が加振した部分構造物の変位を検出する変位検出手段と部分構造物からの反力を検出する荷重検出手段と、を有する構造物の加振試験装置において、数値モデルの振動応答を演算する演算手段と、部分構造物を数値モデル化した振動モデルを格納する格納手段とを設け、前記演算手段はさらに前記複数の変位検出手段が検出した変位と複数の荷重検出手段が検出した反力に基づいて振動モデルを同定して前記格納手段に格納し、この振動モデルと数値モデルとを合成して構造物全体を数値モデル化した全体系モデルを構築し、この全体系モデルの振動応答を演算することにある。
【0013】
上記目的を達成するための本発明の第の特徴は、部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験する構造物の加振試験方法において、部分構造物に対応した振動モデルを作成し、この振動モデルと数値モデルとから全体系モデルを作成し、全体系モデルを部分構造物の加振試験結果に基づき補正するものである。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の第の特徴は、部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験する構造物の加振試験方法において、(1)部分構造物に対応した振動モデルと数値モデルとから構造物に対応した全体系モデルを構築し、(2)構築した全体系モデルについて構造物に加わる加振入力信号に基づいて振動応答を演算し、(3)この振動応答に基づいて部分構造物の加振信号を生成して部分構造物を加振機により加振し、(4)加振された部分構造物の変位及び荷重に基づいて振動モデルを更新同定し、(5)この更新された振動モデルに基づいて全体系モデルを再構築し、(6)この全体系モデルについて振動応答を演算し、上記(3)から(6)のステップを繰り返すものである。
【0015】
そして好ましくは、上記(1)のステップの前に、任意の信号により部分構造物を予備加振して振動モデルを同定するステップを含む;振動モデルを複数備え、同一の加振手段の加振条件を変えてこの複数の振動モデルに対応させたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のいくつかの実施例を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例の模式図であり、橋梁やビルディング等の構造物の振動応答を評価する場合の例である。図2は、本発明の概要を模式的に示した図、図3は、評価手順を示したフローチャートである。図2に示すように、評価対象である構造物100(本図では高層ビルディング)は、その一部(本図では基層部)が実物またはモデルで構成されている。これを部分構造物1と呼ぶ。構造物100の部分構造物1以外の部分は、数値的に表すことが可能である。これを数値モデル2と呼ぶ。数値モデル2は、1または複数の要素に分けられ、これら要素毎に空間座標及び質量、ダンピング係数、ばね定数等が定められている(aijk(m,k,c,x,y,z))。これらの値は、要素毎に計算機3に格納されている(ステップ31)。部分構造物1は、振動台11上に設置され、これを加振機5で加振する。ここまでの手順は、通常のいわゆるハイブリッド加振試験と同様である。
【0017】
ところで、本発明では、部分構造物1をも数値モデル化して、計算機3に格納している(bijk(m,k,c,x,y,z))。これを振動モデル9と呼ぶ。振動モデル9は、後述する車輌の車輪系を対象とするようなときには、複数個あってもよい。振動モデル9と数値モデル2とを組み合せたものは、構造物100の広義の数値モデルであり(cijk(m,k,c,x,y,z))、これを全体系モデル10と呼ぶ(ステップ32)。
【0018】
部分構造物1は、数値モデル2と仮想的に接続されている。部分構造物1の近傍であって、数値モデル2との境界部分に相当する所に加振機5が設けられている。加振機5には変位計6が内蔵されており、部分構造物1に生ずる変位を計測する。加振機5の先端と部分構造物1の間には、ロードセル7が設置されており、このロードセル7が部分構造物1から加振機5に加わる荷重を検出する。一方、計算機3には、地震等の波形を発生可能な波形発振器8が接続されている。
【0019】
全体系モデル10が構築された後に、波形発振器8から所定の入力信号が計算機3に入力される。計算機3は、数値モデル2と振動モデル9とを組み合わせた全体系モデル10について、全体系モデル10に外力が加わる条件で、構造物全体の応答を計算する(ステップ33)。この外力の位置は、構造物100の端面でも、内部の点であってもよい。全体系モデル10の振動応答から、振動モデル9と数値モデル2との境界部分の変位応答を算出する。
【0020】
次に、試験対象の構造物100が車輌の車輪系のように、形状的には左右同じ場合には、車輪1個を含む部分構造物1を用いて加振試験すればよい。そして右車輪と左車輪の運転状態に応じて加振試験条件を変えればよい。そのため、左車輪の運転か右車輪の運転かに応じて、加振対象(運転条件)を選択する(ステップ34)。計算機3は、求めた境界部の変位応答値を各条件にしたがって、指令信号として制御盤4に入力する(ステップ35)。制御盤4は、この入力値にしたがって加振機5を加振制御する(ステップ36)。
【0021】
変位計6が部分構造物1の変位応答を、ロードセル7が荷重応答を計測する(ステップ37)。測定された変位応答と荷重応答を計算機3に入力し、変位と荷重の伝達関数を求める(ステップ38)。求められた伝達関数から、加振状態における部分構造物1の振動特性が把握され、振動モデル9のダンピング係数やばね定数を更新する。これを振動モデルの同定と呼ぶ(ステップ39)。部分構造物1が、ステップ35からステップ39で実験したものと対をなす部分構造物のときには、ステップ35からステップ39と同様に、ステップ35aからステップ39aを実行する。
【0022】
部分構造物1の振動モデル9が新たに同定されると、振動モデル9と数値モデル2との新しい組み合わせである更新された全体系モデル10について、振動応答が計算される。以下、上記の手順を繰り返す。すなわち、応答演算結果に従って、部分構造物1を加振し、伝達関数を得る。新たに求められた伝達関数から部分構造物1の振動モデルを同定し直す。次いで、全体系モデル10を更新し、構造物全体の応答を演算する。なお、本実施例では、加振対象として2個の対をなす部分構造物を取り上げたが、部分構造物は1個でも、3個以上あってもよい。部分構造物1が1個の場合には、当然ステップ24は省略される。また、同一構造の繰返しのみによって形成される構造物100については、数値モデル2を用いなくてもよい。
【0023】
さらに、加振対象を振動モデルの同定ごとに切替えてもよく、一方の加振対象の振動モデルの誤差が一定値以下に収束するごとに切替えてもよい。振動モデルの同定ごとに切替えれば、2つの部分構造物の振動応答を比較しながら構造物の振動応答を検討できるという利点があり、一定値に収束するごとに切替えれば、切替え回数を減らして試験の短縮を図ることが出来る。本実施例に示した加振対象の切替えは、例えば、自動車や列車の車輪系などの機械構造物や、重量物を複数点で支持する装置や、橋脚など繰返しをもった構造物、また、同一構造が重なった層状の構造物等に好適である。本実施例によれば、一つの部分構造物を使って、構造物全体の応答をより精度が高く評価できる。また、部分構造物が全体構造物に占める相対位置の変化による振動応答の違いを、容易に知ることが可能になる。なお、構造物が対称性や繰り返し性を有していて振動状態が複数箇所で再現されるとみなされるときには、加振対象を切替えずに同定した同一部分構造物の振動モデルを複数箇所に適用することもできる。
【0024】
構造物100全体の応答に基づく部分構造物1の加振と、伝達関数の測定による振動モデル9の更新を繰返すことにより、順次同定される振動モデル9及び全体系モデル10の振動状態をより精度良く把握できる。例えば、部分構造物1の特性が非線形性を有するときには、部分構造物以外の部分の部分構造物1に及ぼす影響が、構造物全体の振動状態によって変化する。そのため、振動応答の挙動も変化する。本実施例においては、このような非線形性を有する場合であっても、部分構造物の振動モデルを更新するたびに、部分構造物への加振を修正するので、順次真の応答状態に近づく。
【0025】
次に、上記実施例においてモデルを構築する方法を、図4を用いて説明する。簡単化のために、部分構造物は1個のみで、数値モデル2と部分構造物1とは1点P2で接続されており、外力が数値モデル2の1箇所P1に作用している場合を例にとる。ステップ42内の図に示したように、数値モデル2は部分構造物1と点P2で接続し、数値モデルの点P1に、外力F1が作用している。数値モデル2の変位{X}と外力{F}の伝達特性は、既知の動剛性{K}を用いて、ステップ41内の式のように表される。ここで、{F}はF1,F2を成分とする行列であり、{X}はX1,X2を成分とする行列、{K}は、Kij(I=1,2;j=1,2)を成分とする行列である。一方、部分構造物1の動剛性Keを、加振試験から計測された変位Xeと外力Feを用いて求め、振動モデル9を固定する(ステップ44、45)。この2種類の動剛性を部分構造合成法を用いて結合する。このとき、接続点P2においては、数値モデル2の変位と部分構造物1の変位は同じであり、荷重は、数値モデル2の荷重と部分構造物1の荷重との和で表される。これにより、全体系の特性が得られる(ステップ42)。
【0026】
外力に対する応答変位を、動剛性マトリクス[K]の逆マトリクス{H}(ステップ42内の(c)式参照。)を用いて算出する。以上の演算時には、点P1に外力FINが作用していることから、F1=FINとして、数値モデル2と部分構造物1の境界点P2の変位応答を算出する(ステップ43)。この算出された変位応答にしたがって部分構造物1を加振試験し、動剛性を算出する(ステップ44)。
【0027】
部分構造物1の加振試験では、構造物100全体が加振されるのと同じ状態で変形が与えられる。したがって、伝達特性も構造物100を加振したときと同じ状態になる。より実際の構造物100の加振状態に近づけるために、振動モデル9を修正して、応答計算を継続する。振動モデル9が修正されると、部分構造物1の加振条件も変化し、部分構造物1の応答状態が変化する。部分構造物1が非線形性等を有しているときには、動剛性が変化するので、再度振動モデル9を修正する。この手順を繰返すことにより、入力に応じた応答状態を再現できる。
【0028】
図5に、上記図4における外力が、スペクトル入力の場合の動剛性マトリクスの具体的な求め方を示す。なお、この手順は時刻歴波形でも同様である。数値モデル2及び部分構造物1をともに1自由度系とした2自由度系の構造物を考える。図5において、上側が数値モデル2、下側が部分構造物1である。特定の地震で特徴的なスペクトルを有する入力を、例えば全体系モデル10に加えたときの応答特性を求める。
【0029】
応答特性は、2自由度系の2つのピークを有する。入力スペクトルと応答特性を掛け算することにより、境界点の変位スペクトルが得られる。この演算と並行して、境界点の変位スペクトルに従い部分構造物1を加振する。これにより、境界点の変位スペクトルに応じた部分構造物1の特性スペクトルが得られる。この特性スペクトルを用いて部分構造物1の振動モデル9を同定し、数値モデル2と振動モデル9とを組み合わせて、全体系モデル10を再構築する。再構築された全体系モデル10の応答特性により、境界点のスペクトルが変化し、部分構造物1の振動状態が変化する。その結果、再構築した全体系モデルについてより実際に近い応答特性が得られる。この演算結果を、グラフや構造物100の振動変位の動画として計算機3が備えるモニター手段12によってモニター可能である。
【0030】
本発明の他の実施例を、図6に示す。本発明が上記実施例と異なるのは、構造物100は部分構造物を2個1a,1b有し、この部分構造物1a、1bを同時に加振可能にしたことにある。構造物100の中に加振評価すべき部分構造物が複数個存在する場合に、本実施例は有効である。
【0031】
すなわち、部分構造物1aを加振機5aに、部分構造物1bを加振機5bにそれぞれ設置する。部分構造物1aと部分構造物1b以外の部分を数値モデル2として、入力手段13を用いて計算機3に入力する。波形発振器8から入力される入力信号に対して、数値モデル2と同定された部分構造物1aの振動モデル9a及び部分構造物1bの振動モデル9bとから全体系モデル10を構築する。全体系モデル10の振動計算から、部分構造物1aと数値モデル2の境界点の変位、及び部分構造物1bと数値モデル2の境界点の変位を求める。これら境界における変位から、各制御盤4a、4bへの指令値を求め、制御盤4a、4bに入力する。制御盤4aは加振機5aを、制御盤4bは加振機5bをそれぞれ制御し、加振機5aは部分構造物1aを、加振機5bは部分構造物1bを加振する。部分構造物1aの変位と荷重を変位計6a、荷重計7aで計測して計算機3に入力し、伝達関数を算出して振動モデル9aを同定する。同じく、部分構造物1bの変位と荷重を変位計6b、荷重計7bで計測して計算機3に入力し、伝達関数を算出して振動モデル9bを同定する。同定した部分構造物1a及び部分構造物1bの振動モデル9a,9bと、数値モデル2とから全体系モデル10を再構築する。以下、この過程を繰返す。本実施例によれば、部分構造物1aと部分構造物1bの相互の影響を含んだ評価が行える。
【0032】
なお、上記いずれの実施例においても、部分構造物の加振方向を水平方向1方向にしているが、部分構造物を加振する加振機を振動応答を評価する自由度に応じた個数設けることができる。図7に加振方向を2方向とした例を示す。
【0033】
水平方向には加振機5aを、上下方向には加振機5bを設置している。伝達関数の算出までは各加振方向毎に行い、水平方向及び上下方向の2つの伝達関数から部分構造物1の振動モデル9を同定する。この振動モデル9と数値モデル2とを合成して全体系モデル10を構築し、応答計算に用いる。計測して得られる伝達関数が更新されるごとに振動モデル9を更新し、全体系モデル10を逐次修正する。以上の過程を繰返し行うことにより、自由度数が増えても、本発明による方法を適用できる。なお、図13では水平および上下の2自由度の場合について示したが、加振方向及び個数の設定はこれに限るものではなく、評価自由度に応じて加振機の数及び設置方向を変更可能である。
【0034】
なお、上記実施例において、部分構造物1を本加振に先立ちランダム波等により予備加振して、振動モデル9を同定してもよい。つまり、予備加振により得られた結果を、本加振の部分構造物1の振動モデル9の初期値に設定して加振試験を行う。この場合、部分構造物のパラメータが全く不明であっても、ある程度、真値に近い状態から本加振を始めることが可能となり、試験時間を短縮できる。また、入力信号8aを予め入力手段13により計算機3内に入力し、試験開始とともにこの入力信号を読み込むようにしてもよい。
【0035】
以上の実施例において、計算機はディジタル計算機が望ましい。また、計測値から伝達関数を算出して部分構造物の振動モデルを同定することと、全体系モデルを構築して振動応答計算を行うことととを異なる演算装置で実行してもよい。さらに、部分構造物を加振する加振機としては、油圧式加振機、動電式加振機等を用いることが出来る。
【0036】
以上の実施例では、部分構造物の変位を計測する手段として加振機に内蔵された変位計を用いているが、外部に設けたレーザー変位計等であってもよい。また、荷重を計測するロードセルの設置場所は部分構造物と加振機の間に限らず、荷重を計測できるいずれかの位置に配置すればよく、荷重計測手段もロードセルには限らない。以上のように本発明の構成は上記実施例には限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な構成を取り得るものである。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、試験対象の構造物を、部分構造物と数値モデルとから構成し、部分構造物については加振試験に基づいて振動モデルを作成し、振動モデルと数値モデルとを合成して計算機で演算可能な全体系モデルを構成している。そして、全体系モデルについて振動応答を演算し、この演算結果に基づいて全体系モデルを修正し、上記手順を繰り返すので、非線形性等を有する構造物であっても実際の構造物の振動応答に近い振動応答を演算できる。これにより、実際の構造物を、高精度に近似した全体系モデルが得られる。また、加振部分が少なくて済むので、加振試験が簡便になり、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる加振試験装置の一実施例の模式図である。
【図2】本発明の原理を説明する図である。
【図3】図1に示した加振試験装置による加振試験方法の一実施例のフローチャートである。
【図4】本発明の一実施例におけるモデル構築の概念図である。
【図5】本発明にかかる加振試験方法の一実施例を説明する図である。
【図6】本発明にかかる加振試験装置の他の実施例の模式図である。
【図7】本発明にかかる加振試験装置のさらに他の実施例の模式図である。
【符号の説明】
1…部分構造物、2…数値モデル、3…計算機、
4…制御盤、5、5a、5b…加振機、
6、6a、6b…変位計、7、7a、7b…ロードセル、
8…波形発振器、9…振動モデル、
10…全体系モデル、12…モニター手段、
13…入力手段、100…構造物。

Claims (9)

  1. 部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験するものであって、前記部分構造物を加振する加振手段と、この加振手段が加振した部分構造物の変位を検出する変位検出手段と、部分構造物からの反力を検出する荷重検出手段とを有する構造物の加振試験装置において、
    数値モデルの振動応答を演算する演算手段と、部分構造物を数値モデル化した振動モデルを格納する格納手段とを設け、前記演算手段はさらに前記変位検出手段が検出した変位と荷重検出手段が検出した反力に基づいて振動モデルを同定して前記格納手段に格納し、この振動モデルと数値モデルとを合成して構造物全体を数値モデル化した全体系モデルを構築し、この全体系モデルの振動応答を演算することを特徴とする構造物の加振試験装置。
  2. 前記演算手段が全体系モデルの振動応答を演算するときの入力信号を入力する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の構造物の加振試験装置。
  3. 前記演算手段に、加振する部分構造物の加振条件を変更させる加振対象選択手段を設け、この加振対象選択手段が加振条件を変更することにより、異なる部分構造物を同一の部分構造物で加振試験可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の構造物の加振試験装置。
  4. 複数の部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験する構造物の加振試験装置において、
    前記複数の部分構造物毎に、部分構造物を加振する加振手段と、この加振手段が加振した部分構造物の変位を検出する変位検出手段と、部分構造物からの反力を検出する荷重検出手段とを設け、これら検出された変位と反力に基づいて部分構造物毎に対応する振動モデルを同定し、この複数の振動モデルと数値モデルとを合成して前記構造物に対応した全体系モデルを構築し、この全体系モデルの振動応答を演算する演算手段を備えたことを特徴とする構造物の加振試験装置。
  5. 部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験するものであって、部分構造物を加振する複数の加振手段と、この加振手段毎に設けられ各加振手段が加振した部分構造物の変位を検出する変位検出手段と部分構造物からの反力を検出する荷重検出手段と、を有する構造物の加振試験装置において、
    数値モデルの振動応答を演算する演算手段と、部分構造物を数値モデル化した振動モデルを格納する格納手段とを設け、前記演算手段はさらに前記複数の変位検出手段が検出した変位と複数の荷重検出手段が検出した反力に基づいて振動モデルを同定して前記格納手段に格納し、この振動モデルと数値モデルとを合成して構造物全体を数値モデル化した全体系モデルを構築し、この全体系モデルの振動応答を演算することを特徴とする構造物の加振試験装置。
  6. 部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験する構造物の加振試験方法において、部分構造物に対応した振動モデルを作成し、この振動モデルと数値モデルとから全体系モデルを作成し、全体系モデルを部分構造物の加振試験結果に基づき補正することを特徴とする構造物の加振試験方法。
  7. 部分構造物とこの部分構造物に仮想的に接続された数値モデルとを用いて構造物を加振試験する構造物の加振試験方法において、
    (1)部分構造物に対応した振動モデルと数値モデルとから構造物に対応した全体系モデルを構築し、(2)構築した全体系モデルについて構造物に加わる加振入力信号に基づいて振動応答を演算し、(3)この振動応答に基づいて部分構造物の加振信号を生成して部分構造物を加振機により加振し、(4)加振された部分構造物の変位及び荷重に基づいて前記振動モデルを更新同定し、(5)この更新された振動モデルに基づいて前記全体系モデルを再構築し、(6)この全体系モデルについて振動応答を演算し、上記(3)から(6)のステップを繰り返すことを特徴とする構造物の加振試験方法。
  8. 前記(1)のステップの前に、任意の信号により前記部分構造物を予備加振して振動モデルを同定するステップを含むことを特徴とする請求項に記載の構造物の加振試験方法。
  9. 前記振動モデルを複数備え、同一の加振手段の加振条件を変えてこの複数の振動モデルに対応させたことを特徴とする請求項に記載の構造物の加振試験方法。
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