JP3749256B2 - プレスベルト溝構造 - Google Patents

Description

発明の背景と要約：
この発明は、製紙機械、その他の類似機械用の溝付きプレスベルトに関し、さらに特別には、そのようなプレスベルトの改良された溝構造に関する。
プレスベルトは、製紙機械およびカレンダー掛け機械に用いられる、プレスニップ部を介して連続シートを移送するシュー型プレスのような種々のプレス装置に使用される。先行技術におけるプレスベルトは典型的に、内蔵された補強繊維織成層を有するポリウレタンまたはゴム素材を含んでいる。製紙技術においては、プレスされるシートから水を運び去るためのチャンネルを設けるためにプレスベルトの外表面に溝を設けることがよく知られている。この点において、溝は通常長方形断面に形成される。しかしながら、従来の長方形の溝の構造には２つの重要な問題がある。第１の問題は、長方形状の溝は、ニップ圧の下では閉じる自然の傾向がある点である。ニップ圧は、溝間のランドを溝の両側部が互いに向きあうように変形を強制し、それによって溝を閉じてしまう。この溝の閉塞という問題を解決するために幾つかの解決案が提案された。しかしながら、これらはどれも満足すべきもののようには見えない。US特許第4,880,501号は、ランドの上部が凹部を伴うように形成される溝の構造を開示する。この凹部の形成は、ランドの変形を減少すると信じられている。しかしながら、このタイプの機械加工を施すことは極めて達成が困難であり、さらに、溝の閉塞を完全には排除することができない。US特許第4,908,103号は、外側面が弾性的に変形を受けそうには見えない硬質の素材で作られるプレスベルトを開示している。しかしながら、二種の異なった弾性体を使用すると、二つの弾性体層が剥離したり分離するという問題点に立ち至る。GB特許第881899.3号には、ランド間にクロスピースが延在してランドを支持するプレスベルトを開示する。しかしながら、補強部材であるクロスピースは、溝内の水の流れを阻害することによって溝の性能を低下させる。さらには、クロスピースは機械加工が困難である。
従来の長方形状の溝構造に関連する第２の問題は、ランドがそのベースにおいて破壊を生じる傾向がある点である。ベルトに発生するクラックはベルトの寿命を短縮し、ベルトの交換回数を増大し、そして機械の休止時間を増大する。この点において、処理対象がニップ域を繰り返して通過することにより蓄積された歪みが、ランドの底縁部にクラックを発生させる原因であることがわかった。長方形状の溝の鋭いコーナー部は、素材内部における歪み生成点を作りだし、この場合最大の歪みは素材の他の箇所の歪みの４倍を越える。この問題の解決を図るために、ベルトの溝の表面を硬質の弾性体で作ることが提案されている。しかしながら、これについては前に述べたように剥離の問題がある。これに加えて、プレスベルトに必要となる繰り返し作用する曲げに対しては、一般に硬質な方の弾性体が耐久性に乏しい。示唆されている１つの解決手段は、補強糸条を有する弾性体を提供することである（US特許第4,946,731号）。しかしながら、この弾性体を補強するときは、複数本のフィラメントが使用されるので、溝を切り込むと繊維のマトリクスが露出し、水がベルト内部を流れる通路をあけ、失敗の原因となる。なお、他の解決案は、ランド内にフィラメントを備えることである（GB特許第8818992.3）。しかしながら、フィラメントを正確に位置決めすること、および、フィラメントがランド内に並ぶように溝を機械加工することは極度に困難であって、標準規格に達しないベルト、すなわち廃棄されるベルトの占める割合が高くなる。
したがって、この発明の目的中には、下記のものが含まれる：溝の閉塞を有効に減少するプレスベルトのための溝の構造を提供すること：ベルトのクラックの発生を減少する溝の構造を提供すること：および、構造単純で機械加工が廉価な溝の構造を提供すること：
上記の諸目的は、溝が弧状の底部と上方に向かって発散する２つの側部壁とを備える構造をなす溝を提供することによって達成される。弧状の底部は、準円弧で、溝の開口部の幅の約１／２に等しい直径を有することが好ましい。上に向かって発散する両側部壁は、プレスベルトの両側部壁と外側面の中間に滑らかに遷移する湾曲部をもたらす丸みを含むことが好ましい。各側部壁は、垂直面から約５度と約１５度の中間をなす発散角度を有することが好ましい。第２の実施例においては、溝が実質的にフラットな底部と、前記のフラットな底部と上に向かって発散する両側部壁の間に滑らかな遷移部をもたらす丸みを備える。
この発明のその他の目的、特徴および利点は、説明が、添付図面を考察するとともに添付図面との関連において進行すれば明らかとなろう。
図面の説明：
添付図面は、この発明を実施する上で現時点において考えられるベストモードを描いている。
第１図は、この発明の溝の構造と協働する溝付きプレスベルトの斜視図である。
第２図は、第１図の2-2線に沿う部分断面図。
第３図は、圧縮を受けた状態におけるプレスベルトを示す別の部分断面図。
第４図は、溝構造の第２の実施例の部分断面図。
好ましい実施例の説明：
添付図面を参照すれば、この発明のプレスベルトの第１実施例が第１図〜第３図に符号１０で概略的に示されている。この後でもっと詳細に説明するが、ベルト１０は、圧縮下において溝の閉塞が減少し、溝の底部コーナー部におけるクラックの発生を減少させる溝の構造を含む。
プレスベルト１０は、公知のベルト形成技術によって形成された弾性体素材の連続するループを含む。プレスベルト１０は、１１、１２で一般的に示す内側面と外側面を含み、さらに、１４で一般的に示す長手方向の螺旋溝を含んでいる。使用時には、ベルト１０の溝を備える外側面１２が、圧縮の対象であるシート１８（第３図）と接触する。螺旋溝１４は実際にランド１６によって分離される長手方向の複数本の溝を形成する。プレスベルト１０は、ほぼ３mm〜６mmの厚さで形成される。溝１４は、ほぼ０．５mm〜１．０mmの幅を持ち、ランド１６は溝１４のほぼ２〜５倍の幅を備える。溝１４は、ベルト１０の方向に延在するように描かれているが、溝の方向はベルトの作用にとっては臨界的でない点を理解すべきである。したがって、溝１４は、図示のものに代えて、これとは逆方向に延在しても差し支えなく、またはベルトの方向に対して或る角度をなしてもよい。溝１４は、弧状の底部２０と２つの上に向かって発散する両側部壁２２を備えるように形成される。弧状の底部２０は、溝の開口部（第２図参照）の幅Ｗの約１／２に等しい直径Ｄを有することが好ましい。発散する側部壁２２は、側部壁２２と外側面１２の間に滑らかな遷移部をもたらす丸みを付した上縁部２４を形成することが好ましい。第２図に示すように、各側部壁２２は、垂直面からほぼ５度と１５度の中間をなす発散角度を備えることが好ましい。これよりも大きいか、または、小さい発散角度を適用することももちろん可能ではある。
第３図を参照すると、プレスベルト１０が、（図示しない）シュー型プレス装置内でプレスされるシート１８との関連において示されている。溝１４の両側部壁２２は圧縮下において依然として変形する傾向があるが、両側部壁２２の発散形状が圧縮を補償する。その結果として生じる溝１４（第３図）は、したがって形がほぼ長方形状である。溝１４の湾曲した底部２０は、ニップによる圧縮の歪みをより均等に分散するので、ベルト１０のクラックと欠陥の発生を低下する。底部２０と両側部壁２２の間の遷移域における歪みが、ベルト内部の他の箇所における正規の歪みの約１．１倍にまで有効に減少することが見出だされた。前に論じたとおり、鋭いコーナーに起因する最大歪みはしばしば正規の歪みの４倍を越える。プレスベルト１０のっ寿命は、こうして従来技術のプレスベルトに対して有意な期間だけ延長される。
さて、第４図を参照すると、プレスベルトの第２の実施例が描かれており、符号２６で一般的に示されている。プレスベルト２６は、符号２７、２８で一般的に示される内側面と外側面、および符号３０で一般的に示される長手方向の螺旋溝を含んでいる。プレスベルト１０とは違って、溝３０は、実質的にフラットな底部３４と、上方に発散する両側部壁３６と、フラットな底部３４と発散する両側部壁との間に滑らかな遷移域をもたらす丸みを帯びた底部コーナー３８とを備えるように形成される。両側部壁３６は、丸みを帯びた上縁部４０を備えるように形成することが好ましい。各側部壁３６は、垂直面からて約５度〜１５度の中間をなす発散角度を持つことが好ましい。
使用時には、溝３０の発散する両側部壁３６が圧縮下におけるランド３２の弾性変形を補償し、その結果として長方形状の溝を生じる。丸みを帯びたコーナー部３８が、ニップによる圧縮の歪みをより均等に分散するので、ベルト２６のクラックと欠陥の発生を低下する。
それ故に、この発明がプレスベルト用のユニークで新規な溝構造を提供することが分かる。この溝の構造は、溝の底部と両側部壁の間の遷移域における構造的歪みを有効に低下させる丸みを帯びた、またはＲを有するコーナー部を含んでいる。溝の外部に向かって発散する両側部壁は、プレスベルトの弾性歪みを補償し、かくて、圧縮されるシートから水を運び去るほぼ長方形の溝を提供する。これらの理由から、この発明は、実質的に商業的メリットを備える、技術上の有意義な進歩を代表する。
この発明を具体化する或る特定の構造を示してここに説明を加えたが、発明の精神と下記に述べる発明概念を逸脱することなく諸部分を改変し再構築すること、および、発明の概念が、付属する請求の範囲によって示される内容を除き、ここに示した特別な形態に限定されるものでないことは当業者には明白である。

Claims (5)

1. 製紙機械において使用されるシュータイププレスのプレスニップを通して連続シートを移送する弾性体のプレスベルトであって、
   前記プレスベルトは、内表面と外表面、および、前記外表面の水を運び去る複数個の上向きに開口する長手方向の溝とを有し、
   前記各溝は、１つの底部と、２つの上向きに発散する側壁と、前記底部と前記上向きに発散する側壁の間の滑らかな湾曲遷移部を提供する丸みのある底部コーナーを含むプレスベルト。
2. 前記底部は、弓状の形状である請求項１に記載のプレスベルト。
3. 前記の弓形の形状は円弧状で、前記開口溝の幅の1/２に等しい直径を有する請求項２に記載のプレスベルト。
4. 前記上向きに発散する側壁は、前記プレスベルトの前記側壁と前記外表面との間の滑らかな湾曲遷移部を提供する丸みのある上縁部を含む請求項１に記載のプレスベルト。
5. 前記各側壁は、垂直面から５〜１５度の間の発散角を有する請求項１に記載のプレスベルト。

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