JP3748309B2 - 躯体蓄熱型空気調和システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は躯体蓄熱型空気調和システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
躯体蓄熱型空気調和システムとしては、従来一般に次のようなものが知られていた。
【0003】
A.第1従来例(空気式蓄熱システム)
図8の要部の断面図に示すように、スラブ01の下面と天井板02との間に形成された閉空間S内にファンコイルユニット03が設けられている。天井板02の所定箇所に吸い込み口04と吹き出し口05とが設けられている。ファンコイルユニット03に接続されたダクト06に、閉空間S内に温調空気を吹き出す蓄熱ダクト07と、室内空間R側に温調空気を吹き出す空調ダクト08とが接続され、空調ダクト08が吹き出し口05に接続されている。蓄熱ダクト07および空調ダクト08それぞれに開閉ダンパー09,010が付設されている。
夜間において、蓄熱側の開閉ダンパー09を開くとともに空調側の開閉ダンパー010を閉じ、ファンコイルユニット03を所定時間駆動し、温調空気を閉空間S内に送ってスラブ01に蓄熱する。
一方、始業後や昼間などに、蓄熱された熱を取り出すときには、すべての開閉ダンパー09,010を開き、ファンコイルユニット03を駆動するか、そのファン03aのみを駆動し、空気を閉空間S内に送り、スラブ01との接触によって得られる温調空気を吹き出し口05から室内空間Rに送るとともに吸い込み口04から戻し、放熱する。
蓄熱および放熱のいずれをも行わない場合は、蓄熱側の開閉ダンパー09を閉じるとともに空調側の開閉ダンパー010を開き、ファンコイルユニット03を駆動して通常の空調を行う。なお、複数個の蓄熱側の開閉ダンパー09のうちの一部を開き、通常の空調と並行して放熱を行う場合もある。
【0004】
B.第2従来例(水式蓄熱システム)
図9の要部の断面図に示すように、スラブ01内に、温水または冷水を循環流動するチューブ011を埋設し、チューブ011を通じての伝熱によりスラブ01内に蓄熱する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例の場合には、次のような欠点があった。
【0006】
a.第1従来例の欠点
蓄熱ダクト07に近い箇所と、そこから離れた箇所とで蓄熱温度に差を生じやすく、スラブ01全体に均一に蓄熱するためには、一部の箇所で飽和温度に達しているにもかかわらず、蓄熱運転を継続しなければならず、蓄熱に時間がかかって不経済になる欠点があった。また、放熱においても、蓄熱ダクト07に近い箇所から集中して熱が取り出されることになり、放熱効率が低下する欠点があった。
蓄熱ダクト07を多数分散して設けることにより、均一な蓄熱を行いやすくできるが、イニシャルコストが増大する欠点があった。
【0007】
b.第2従来例の欠点
チューブ011に近い箇所と、そこから離れた箇所とで蓄熱温度に差を生じやすく、スラブ01全体に均一に蓄熱するために時間がかかって不経済になる欠点があった。また、放熱においても、チューブ011に近い箇所から集中して熱が取り出されることになり、放熱効率が低下する欠点があった。
チューブ011を広い領域にわたるように埋設することにより、均一な蓄熱を行いやすくできるが、躯体強度の面から限界があるとともにイニシャルコストが増大する欠点があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、スラブ全体への均一な蓄熱あるいは/およびスラブ全体からの放熱を、安価な構成で効率良く行えるようにすることを目的とし、請求項2に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、スラブに与える熱量やスラブから取り出す熱量を調整できるようにすることを目的とし、請求項3に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、送風装置の個数を少なくしてイニシャルコストを低減できるようにすることを目的とし、請求項4に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、熱交換器を蓄熱用と空調用とに兼用してイニシャルコストを低減できるようにすることを目的とする。
そして、請求項5に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、スラブ全体からの放熱を、安価な構成で効率良く行えるようにすることを目的とし、請求項6に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、スラブから取り出す熱量を調整できるようにすることを目的とし、請求項7に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、放熱のための送風装置の個数を少なくしてイニシャルコストを低減できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、上述のような目的を達成するために、スラブと天井板との間に閉空間を形成し、熱交換によって温調空気を得る熱交換器を設けるとともに、熱交換器からの温調空気を閉空間内に供給してスラブに熱を蓄えるように構成した躯体蓄熱型空気調和システムにおいて、熱交換器とは別に、蓄熱あるいは/および放熱のための空気を閉空間内のスラブの表面全面に流す気流を発生する送風装置を設けて構成する。
【0010】
また、請求項2に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、前述のような目的を達成するために、請求項1に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムにおける送風装置に、空気の流れ状態を変更する制御手段を備えて構成する。
【0011】
また、請求項3に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、前述のような目的を達成するために、請求項1または請求項2のいずれかに係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムにおける送風装置を、送風方向を変更する風向変更手段を備えて構成する。
【0012】
また、請求項4に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、前述のような目的を達成するために、請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムにおける熱交換器からの温調空気を閉空間内に供給する状態と室内に供給する状態とに切り換える切り換え手段を設けて構成する。
【0013】
そして、請求項5に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、前述のような目的を達成するために、蓄熱手段によってスラブに熱を蓄えるように構成した躯体蓄熱型空気調和システムにおいて、スラブに蓄えられた熱を放出させる空気をスラブの表面全面に流す気流を発生する送風装置を設けて構成する。
蓄熱手段としては、熱交換器によって得られた温調空気をスラブの表面に供給して蓄熱する空気式の蓄熱構成とか、あるいは、スラブ内に冷水あるいは温水のチューブを埋設し、チューブを通じての伝熱により蓄熱する水式の蓄熱構成などが採用できる。
【0014】
また、請求項6に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、前述のような目的を達成するために、請求項5に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムにおける送風装置に、空気の流れ状態を変更する制御手段を備えて構成する。
【0015】
また、請求項7に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムは、前述のような目的を達成するために、請求項5または請求項6に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムにおける送風装置を、送風方向を変更する風向変更手段を備えて構成する。
【0016】
【作用】
請求項1に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムの構成によれば、熱交換器からの温調空気を閉空間内に供給するときに、送風装置を起動して気流を発生させ、表面境界空気層の熱伝達抵抗を小さくすることにより熱伝達効率を良くし、さらに、温調空気を閉空間内のスラブの表面全面に流し、温調空気の熱をスラブの表面全面に伝えてスラブに蓄熱することができる。
また、送風装置を起動して気流を発生することにより、蓄熱されたスラブの表面全面に空気を流し、スラブの表面全面から熱を取り出して放熱することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムの構成によれば、制御手段により、空気の流速を変えるとか、送風と送風停止を繰り返すといったようにして空気の流れ状態を変更し、スラブに与える熱量やスラブから取り出す熱量を調整することができる。
【0018】
また、請求項3に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムの構成によれば、風向変更手段により送風方向を変更し、広範囲にわたってスラブの表面全面に空気を流すことができる。
【0019】
また、請求項4に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムの構成によれば、熱交換器からの温調空気の供給状態を切り換えることにより、同一の熱交換器で得られる温調空気を用い、閉空間側に供給してスラブに蓄熱する状態と、室内側に供給して通常の空調を行う状態とを得ることができる。
【0020】
そして、請求項5に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムの構成によれば、送風装置を起動して気流を発生することにより、蓄熱手段によって蓄熱されたスラブの表面全面に空気を流し、スラブの表面全面から熱を取り出して放熱することができる。
【0021】
また、請求項6に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムの構成によれば、制御手段により、空気の流速を変えるとか、送風と送風停止を繰り返すといったようにして空気の流れ状態を変更し、スラブから取り出す熱量を調整することができる。
【0022】
また、請求項7に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムの構成によれば、風向変更手段により送風方向を変更し、広範囲にわたってスラブの表面全面に空気を流すことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の躯体蓄熱型空気調和システムに係る第1実施例の装置構成図を示し、スラブ1の下面と天井板2との間に閉空間Sが形成されるとともに、閉空間S内に、ファンコイルユニットやパッケージエアコンなどの熱交換器としての空気調和機3が設けられている。
【0025】
天井板2の所定箇所に温調空気の室内空間R側への吹き出し口4と室内空間R側からの吸い込み口5とが設けられ、空気調和機3と吹き出し口4とが給気ダクト6を介して接続され、一方、空気調和機3と吸い込み口5とが還気ダクト7を介して接続されている。
【0026】
給気ダクト6に第1の開閉ダンパー6aが設けられている。第1の開閉ダンパー6aと空気調和機3との間において、閉空間Sと連通する第1の分岐ダクト8が給気ダクト6に接続されるとともに、第1の分岐ダクト8に第2の開閉ダンパー8aが設けられている。
【0027】
還気ダクト7に第3の開閉ダンパー7aが設けられている。第3の開閉ダンパー7aと空気調和機3との間において、閉空間Sと連通する第2の分岐ダクト9が還気ダクト7に接続されるとともに、第2の分岐ダクト9に第4の開閉ダンパー9aが設けられている。
天井板2の所定箇所に、閉空間Sと室内空間Rとを連通するチャンバー10が設けられている。
上述の第1、第2、第3および第4の開閉ダンパー6a,8a,7a,9aをして、熱交換器としての空気調和機3からの温調空気を閉空間S内に供給する状態と室内に供給する状態とに切り換える切り換え手段と総称する。
【0028】
スラブ1の下面の隅部に、スラブ1の表面全面に向かって、かつ、それに沿う状態で吹き出すように送風装置11が設けられ、蓄熱や放熱のための空気をスラブ1の表面全面に流す気流を発生するように構成されている。
【0029】
前記第1、第2、第3および第4の開閉ダンパー6a,8a,7a,9aは電磁操作式に構成されている。空気調和機3、第1、第2、第3および第4の開閉ダンパー6a,8a,7a,9a、ならびに、送風装置11は、図示しないが、コントローラに接続され、タイマー制御によって、スラブ1への蓄熱とスラブ1からの放熱とを行いながら自動的に冷房運転および暖房運転を行うように構成されており、その制御形態の一例を次に示す。
【0030】
(1)冷房運転時
このとき、空気調和機3の冷房コイル(図示せず)に冷媒を流す。
(1) 夜間(22:00〜8:00) [蓄熱]
第1および第3の開閉ダンパー6a,7aを閉じて第2および第4の開閉ダンパー8a,9aを開き、その状態で、空気調和機3および送風装置11を駆動する。これにより、第1および第2の分岐ダクト8,9を通じて空気調和機3と閉空間Sとにわたって冷風を循環流動させるとともに、その冷風をスラブ1の表面全面に流し、スラブ1全体を均一に冷却し、スラブ1に冷熱を蓄える。
ここでの蓄熱は、春と真夏といったように要求される蓄熱量の違いに応じ、それらに合った蓄熱時間を適宜設定して行うようにすれば良い。
【0031】
(2) 昼間 (8:00〜13:00)[消極的放熱]
第1および第3の開閉ダンパー6a,7aを開いて第2および第4の開閉ダンパー8a,9aを閉じ、送風装置11の駆動を停止した状態で、空気調和機3を駆動する。これにより、給気ダクト6および還気ダクト7を通じて空気調和機3と室内空間Rとにわたって冷風を循環流動させ、冷房を行う。このとき、スラブ1に蓄えられた冷熱の一部が閉空間Sから室内空間Rに自然的に放熱される。
【0032】
(3) 昼間(13:00〜16:00)[積極的放熱]
第1および第4の開閉ダンパー6a,9aを開いて第2および第3の開閉ダンパー8a,7aを閉じ、空気調和機3および送風装置11を駆動する。これにより、閉空間Sから第2の分岐ダクト9、空気調和機3、給気ダクト6を通じて室内空間Rに冷風を流し、送風装置11によりスラブ1に蓄えられた冷熱をスラブ1の表面全体から均一に強制的に放熱させて冷房を行う。このとき、室内空間Rから閉空間Sへの還気はチャンバー10を通じて行われる。
このように、スラブ1に蓄えられた冷熱を空気調和機3に供給できるため、空気調和機3の負荷を低減してピークカットやピークシフトを行うことができる。より積極的にピークカットやピークシフトを行う場合は、空気調和機3での冷媒の循環運転や室外側熱交換器の駆動を停止して空気調和機3のファン(図示せず)のみを駆動し、スラブ1に蓄えられた冷熱の放熱のみによって冷房を行うようにすれば良い。
【0033】
(4) 昼間から夜間(16:00〜22:00)[放熱]
第1および第4の開閉ダンパー6a,9aを開いて第2および第3の開閉ダンパー8a,7aを閉じ、送風装置11の駆動を停止した状態で、空気調和機3を駆動する。これにより、閉空間Sから第2の分岐ダクト9、空気調和機3、給気ダクト6を通じて室内空間Rに冷風を流し、スラブ1に蓄えられた冷熱を放熱させて冷房を行う。このとき、室内空間Rから閉空間Sへの還気はチャンバー10を通じて行われる。
【0034】
(2)暖房運転時
このとき、空気調和機3の暖房コイル(図示せず)に冷媒を流す。
(1) 夜間(22:00〜8:00) [蓄熱]
第1および第3の開閉ダンパー6a,7aを閉じて第2および第4の開閉ダンパー8a,9aを開き、その状態で、空気調和機3および送風装置11を駆動する。これにより、第1および第2の分岐ダクト8,9を通じて空気調和機3と閉空間Sとにわたって温風を循環流動させるとともに、その温風をスラブ1の表面全面に流し、スラブ1全体を均一に加熱し、スラブ1に温熱を蓄える。
ここでの蓄熱は、秋と真冬といったように要求される蓄熱量の違いに応じ、それらに合った蓄熱時間を適宜設定して行うようにすれば良い。
【0035】
(2) 昼間 (8:00〜10:00)[積極的放熱]
第1および第4の開閉ダンパー6a,9aを開いて第2および第3の開閉ダンパー8a,7aを閉じ、空気調和機3および送風装置11を駆動する。これにより、閉空間Sから第2の分岐ダクト9、空気調和機3、給気ダクト6を通じて室内空間Rに温風を流し、送風装置11によりスラブ1に蓄えられた温熱をスラブ1の表面全体から均一に強制的に放熱させて暖房を行う。このとき、室内空間Rから閉空間Sへの還気はチャンバー10を通じて行われる。
このように、スラブ1に蓄えられた冷熱を空気調和機3に供給できるため、空気調和機3の負荷を低減してピークカットやピークシフトを行うことができる。暖房の場合には、昼間の使用が少ないためにさほど問題にはならないが、厳寒時などで朝方に集中し、より積極的にピークカットやピークシフトを行う必要がある場合は、空気調和機3での冷媒の循環運転や室外側熱交換器の駆動を停止して空気調和機3のファン(図示せず)のみを駆動し、スラブ1に蓄えられた温熱の放熱のみによって暖房を行うようにすれば良い。
【0036】
(3) 昼間から夜間(10:00〜22:00)[放熱]
第1および第4の開閉ダンパー6a,9aを開いて第2および第3の開閉ダンパー8a,7aを閉じ、送風装置11の駆動を停止した状態で、空気調和機3を駆動する。これにより、閉空間Sから第2の分岐ダクト9、空気調和機3、給気ダクト6を通じて室内空間Rに温風を流し、スラブ1に蓄えられた温熱を放熱させて暖房を行う。このとき、室内空間Rから閉空間Sへの還気はチャンバー10を通じて行われる。
【0037】
上記実施例では、蓄熱運転をタイマー制御によって行っているが、例えば、図2の要部の断面図に示すような躯体温度を測定する温度センサを用い、所定の蓄熱量に達したかどうかを検知して蓄熱を自動的に停止させるように構成しても良い。(特公平7−113468号公報参照)
【0038】
すなわち、スラブ1の所定箇所に、その厚み方向に所定間隔を隔てて、躯体温度を測定する、それぞれ熱電対型の第1ないし第4温度センサT1,T2,T3,T4が設けられている。これら第1ないし第4温度センサT1,T2,T3,T4は、スラブ1と等しい熱伝導率のケーシング12で被覆されており、スラブ1の厚み方向における各点の温度と等しい温度を測定できるように構成されている。
【0039】
第1ないし第4温度センサT1,T2,T3,T4からの温度信号がマイクロコンピュータ(図示せず)に入力され、第1温度センサT1の測定温度t1 と第2温度センサT2の測定温度t2 との差t12(=t1 −t2 )、第2温度センサT2の測定温度t2 と第3温度センサT3の測定温度t3 との差t23( =t2 −t3 )、第3温度センサT3の測定温度t3 と第4温度センサT4の測定温度t4 との差t34 (=t3 −t4 )それぞれを算出し、それらの温度差がいずれも設定温度範囲内になったことに基づいてスラブ1内に所定量の蓄熱が行われたことを判別するように構成されている。
この温度センサを用いれば、スラブ1内への蓄熱を過不足無く行うことができ、経済的である。
【0040】
図3は、本発明に係る躯体蓄熱型空気調和システムの第2実施例を示す全体側面図、図4は第2実施例の平面図であり、第1実施例と異なるところは次の通りである。
【0041】
すなわち、スラブ1の梁1aによって囲まれた閉空間S内の一側方に設けられた空気調和機3に、長い給気ダクト13が接続され、その給気ダクト13と、天井板2の所定箇所に設けられた吹き出し口14とが接続ダクト15を介して接続されている。
【0042】
給気ダクト13の空気調和機3に近い箇所に、上方に開口した分岐ダクト16が接続されている。分岐ダクト16に第5の開閉ダンパー16aが設けられている。分岐ダクト16との接続箇所よりも接続ダクト15側において、給気ダクト13に第6の開閉ダンパー13aが設けられている。
上述の第5および第6の開閉ダンパー16a,13aをして、熱交換器としての空気調和機3からの温調空気を閉空間S内に供給する状態と室内に供給する状態とに切り換える切り換え手段と総称する。
【0043】
天井板2の空気調和機3に近い箇所に室内空間Rから空気を吸い込む吸い込み口17が設けられている。閉空間Sに、一対の送風装置18,18が設けられている。
【0044】
この第2実施例においても、空気調和機3、第5および第6の開閉ダンパー16a,13a、送風装置18,18が、図示しないコントローラに接続され、第1実施例と同様に、タイマー制御によって、スラブ1への蓄熱とスラブ1からの放熱とを行いながら自動的に冷房運転および暖房運転を行うように構成されている。冷房運転および暖房運転それぞれにおける蓄熱時および放熱時の動作形態は次の通りである。
【0045】
[蓄熱]
第5の開閉ダンパー16aを開いて第6の開閉ダンパー13aを閉じ、空気調和機3および送風装置18,18を駆動し、空気調和機3での熱交換によって得られた温調空気(冷房の場合は冷風、暖房の場合は温風)を閉空間S内に吹き出し、その温調空気を送風装置18,18によりスラブ1の表面全面に流し、スラブ1全体に均一に蓄熱する。
【0046】
[消極的放熱]
第5の開閉ダンパー16aを閉じて第6の開閉ダンパー13aを開き、送風装置18,18の駆動を停止した状態で空気調和機3を駆動する。これにより、スラブ1に蓄えられた熱の一部が自然的に放熱され、その温調空気と吸い込み口17からの空気とが混じって空気調和機3に供給され、空気調和機3での熱交換によって得られた温調空気を室内空間R内に吹き出し、冷房または暖房を行う。
【0047】
[積極的放熱]
第5の開閉ダンパー16aを閉じて第6の開閉ダンパー13aを開き、空気調和機3および送風装置18,18を駆動する。これにより、送風装置18,18によりスラブ1に蓄えられた熱をスラブ1の表面全体から均一に強制的に放熱させ、その温調空気と吸い込み口17からの空気とが混じって空気調和機3に供給され、空気調和機3での熱交換によって得られた温調空気を室内空間R内に吹き出し、冷房または暖房を行う。
このように、スラブ1に蓄えられた熱を空気調和機3に供給できるため、空気調和機3の負荷を低減してピークカットやピークシフトを行うことができるが、より積極的にピークカットやピークシフトを行う場合は、空気調和機3での冷媒の循環運転や室外側熱交換器の駆動を停止し、スラブ1に蓄えられた熱の放熱のみによって冷房または暖房を行うようにすれば良い。
【0048】
この第2実施例でも、前述したような躯体温度を測定する温度センサを用い、所定の蓄熱量に達したかどうかを検知して蓄熱を自動的に停止させるように構成しても良い。
【0049】
図5は、本発明に係る躯体蓄熱型空気調和システムの第3実施例を示す全体平面図であり、第2実施例と異なるところは次の通りである。
【0050】
すなわち、閉空間S内の1箇所の隅部に送風装置19が設けられている。図6の(a)の平面図、および、図6の(b)の側面図に示すように、送風装置19の支持軸20が鉛直方向の軸芯P周りで回転可能にスラブ1に取り付けられ、その支持軸20にアーム21が一体的に取り付けられている。
【0051】
スラブ1に電動モータ22が設けられ、その電動モータ22のモータ軸22aに円盤23が一体的に取り付けられるとともに、円盤23の周部の1箇所とアーム21がリンク24を介して連結され、電動モータ22の回転により、送風装置19を揺動させ、送風装置19による風の吹き出し方向を90°の範囲で変更するように風向変更手段25が構成されている。他の構成は第2実施例と同じであり、同一番号を付してその説明は省略する。
【0052】
この第3実施例によれば、1個の送風装置19で、広範囲にわたってスラブ1の表面全面に温調空気を流すことができ、送風装置19の使用個数を少なくできる利点を有している。
【0053】
図7は、本発明に係る躯体蓄熱型空気調和システムの第4実施例を示す一部省略全体平面図であり、第2実施例と異なるところは次の通りである。
【0054】
すなわち、送風装置26が、ファン27と、スラブ1の表面全面に分散配置したノズル28とを空気配管29を介して接続して構成されている。これにより、スラブ1の表面全面に均一に温調空気を流すことができるようになっている。
空気調和機等については図示していないが、第2実施例と同様の構成のものが使用できる。
【0055】
本発明としては、第1、第2、第3および第4実施例における送風装置11,18,19,26の構成を、蓄熱手段として、スラブ1内に温水あるいは冷水配管を埋設して蓄熱させるように構成したものに適用し、放熱専用に適用するようにしても良い。
【0056】
また、本発明としては、空気調和機3によって得た温調空気を送風装置11,18,19,26でスラブ1に蓄熱するように構成しているが、例えば、送風装置11,18,19,26に熱交換器を付設し、空気調和機3とは別に、蓄熱専用に構成しても良い。ただし、放熱時には、熱交換器に冷媒を供給せずに送風のみ行うように構成する。
【0057】
また、上記第1、第2、第3および第4実施例における送風装置11,18,19,26それぞれにおいて、そのファンモータの回転数を変更できるようにするとか、あるいは、回転と回転停止とを、すなわち、送風と送風停止とを所定時間ごとに繰り返すなど、空気の流れ状態を変更するように構成した制御手段を備えるようにしても良い。このように構成すれば、スラブに与える熱量やスラブから取り出す熱量を調整することができ、蓄熱の場合には必要な蓄熱量を容易に確保できて経済的であり、かつ、放熱の場合にはピークシフトやピークカットに良好に対応できる利点がある。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムによれば、送風装置を設けて、空気を閉空間内のスラブの表面全面に流す気流を発生させるだけの構成でありながら、空気を媒体としてスラブの表面全面との間で熱を授受できるから、蓄熱ダクトとか、冷水や温水を流すチューブを多数分散させて設けるといったことをせずに済み、スラブ全体への均一な蓄熱あるいは/およびスラブ全体からの放熱を安価な構成で効率良く行えるようになった。
しかも、例えば、冷房の場合に、スラブ表面の一部が局部的に冷却され、一旦結露を生じるとそれ以降は結露を助長する状態になって蓄熱に要する熱量が増大するばかりか蓄熱量が減少してしまうが、本発明によれば、このような局部的な冷却を回避でき、蓄熱量を極力増大できる。
【0059】
また、請求項2に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムによれば、制御手段によって、スラブに与える熱量やスラブから取り出す熱量を調整することができるから、蓄熱の場合には必要な蓄熱量を容易に確保できて経済的であり、かつ、放熱の場合にはピークシフトやピークカットに良好に対応できて実用性に優れている。
【0060】
また、請求項3に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムによれば、送風方向の変更により、ひとつの送風装置から流す範囲を拡大できるから、送風装置の個数を少なくでき、イニシャルコストを低減できるようになった。
【0061】
また、請求項4に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムによれば、温調空気の供給状態を切り換えることにより、同一の熱交換器で得られる温調空気を用いて、蓄熱状態と、通常の空調を行う状態とを得ることができるから、すなわち、熱交換器を蓄熱用と空調用とに兼用するから、イニシャルコストを低減できるようになった。
【0062】
そして、請求項5に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムによれば、送風装置を設けて、空気を閉空間内のスラブの表面全面に流す気流を発生させるだけの構成でありながら、空気を媒体としてスラブの表面全面から熱を取り出せるから、スラブ全体からの放熱を安価な構成で効率良く行えるようになった。
【0063】
また、請求項6に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムによれば、制御手段によって、スラブから取り出す熱量を調整することができるから、ピークシフトやピークカットに良好に対応できて実用性に優れている。
【0064】
また、請求項7に係る発明の躯体蓄熱型空気調和システムによれば、送風方向の変更により、ひとつの送風装置から流す範囲を拡大できるから、放熱のための送風装置の個数を少なくしてイニシャルコストを低減できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る躯体蓄熱型空気調和システムの第1実施例を示す全体システム構成図である。
【図2】温度センサを示す要部の断面図である。
【図3】本発明に係る躯体蓄熱型空気調和システムの第2実施例を示す全体側面図である。
【図4】第2実施例の全体平面図である。
【図5】本発明に係る躯体蓄熱型空気調和システムの第3実施例を示す全体平面図である。
【図6】(a)は送風装置の平面図、(b)は送風装置の側面図である。
【図7】本発明に係る躯体蓄熱型空気調和システムの第4実施例を示す一部省略全体平面図である。
【図8】第1従来例を示す要部の断面図である。
【図9】第2従来例を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
1…スラブ
2…天井板
3…熱交換器としての空気調和機
6a…第1の開閉ダンパー(切り換え手段)
7a…第3の開閉ダンパー(切り換え手段)
8a…第2の開閉ダンパー(切り換え手段)
9a…第4の開閉ダンパー(切り換え手段)
13a…第6の開閉ダンパー(切り換え手段)
16a…第5の開閉ダンパー(切り換え手段)
11…送風装置
18…送風装置
19…送風装置
25…風向変更手段
26…送風装置
R…室内空間
S…閉空間

Claims (7)

  1. スラブと天井板との間に閉空間を形成し、熱交換によって温調空気を得る熱交換器を設けるとともに、前記熱交換器からの温調空気を前記閉空間内に供給して前記スラブに熱を蓄えるように構成した躯体蓄熱型空気調和システムにおいて、
    前記熱交換器とは別に、蓄熱あるいは/および放熱のための空気を前記閉空間内の前記スラブの表面全面に流す気流を発生する送風装置を設けたことを特徴とする躯体蓄熱型空気調和システム。
  2. 請求項1に記載の送風装置に、空気の流れ状態を変更する制御手段を備えてある躯体蓄熱型空気調和システム。
  3. 請求項1または請求項2に記載の送風装置が、送風方向を変更する風向変更手段を備える躯体蓄熱型空気調和システム。
  4. 請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の熱交換器からの温調空気を閉空間内に供給する状態と室内に供給する状態とに切り換える切り換え手段を設けてある躯体蓄熱型空気調和システム。
  5. 蓄熱手段によってスラブに熱を蓄えるように構成した躯体蓄熱型空気調和システムにおいて、
    前記スラブに蓄えられた熱を放出させる空気を前記スラブの表面全面に流す気流を発生する送風装置を設けたことを特徴とする躯体蓄熱型空気調和システム。
  6. 請求項5に記載の送風装置に、空気の流れ状態を変更する制御手段を備えてある躯体蓄熱型空気調和システム。
  7. 請求項5または請求項6に記載の送風装置が、送風方向を変更する風向変更手段を備える躯体蓄熱型空気調和システム。
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