JP3748231B2 - ピペットチップおよびその成形金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸引ノズルの先端に装着され、液体を吸引して収容するとともに、所定量の液体を吐出するプラスチック製のピペットチップおよびその成形金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、生化学分析装置においては、血液、尿などの試料液を分析用素子に点着して測定を行うものであり、また、試料液を希釈容器に供給するとともに、希釈液を供給して希釈してから、その混合液を分析用素子に点着して測定を行うものである。これらの試料液、希釈液、混合液などの液体を収容容器から吸引して吐出するために、吸引ノズルの先端に着脱自在にピペットチップを装着し、このピペットチップ内に液体を収容容器から吸引するとともに、分析用素子もしくは希釈容器などに吐出するようにしている。この場合、吸引ノズル内に直接液体を吸引すると、吸引ノズルの洗浄処理が必要となって処理能力が低下するため、通常、ピペットチップは使い捨てとなっている。
【0003】
このようなピペットチップは、ポリプロピレンなどの透明または半透明のプラスチックから成形され、先端に液体を吸引し、吐出する小孔が形成された略円錐管状の収容部と、収容部の基端に連続して形成され、吸引ノズルと装着可能な装着部と、から構成されている(例えば、特開平8−112537号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したピペットチップを成形する場合、樹脂の流動をコントロールすることが困難で、圧力や流動方向の微妙な調整で内周面と外周面との中心ずれが発生し、肉厚が周方向に均一にならず、厚い場合と薄い場合との収縮差によって先端が曲がるという現象が発生していた。このため、180度離れた位置にそれぞれゲートを設けて周方向の溶融樹脂の均一な充填を採用せざるを得ず、2点ゲートを回り込むランナが必要となっていた。この結果、ピペットチップを多数個取りする場合、各ピペットチップについて、2点ゲートを回り込むランナが必要となり、成形金型が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、周方向の肉厚差に伴う先端部の曲がりのないピペットチップを提供するものである。また、1点ゲートによって周方向の肉厚差の発生を可及的に防止することのできるピペットチップの成形金型を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のピペットチップは、先端に液体を吸引し、吐出する小孔が形成された略円錐管状の収容部と、収容部の基端に連続して形成され、吸引ノズルと装着可能な装着部と、からなるプラスチック製のピペットチップにおいて、前記収容部の外周面もしくは内周面の少なくとも一方に、設定されたテーパー角度と設定された円錐長さを有する複数個の円錐面が形成されるとともに、隣接する円錐面の交差する辺に谷および山が交互に複数個ずつ形成されてなり、各谷に向かって外周面と内周面からなる肉厚が漸減することを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、ピペットチップにおける収容部の外周面もしくは内周面の少なくとも一方に、設定されたテーパー角度と設定された円錐長さを有する複数個の円錐面が形成されるとともに、隣接する円錐面の交差する辺に谷および山が交互に複数個ずつ形成され、さらに、各谷に向かって外周面と内周面からなる肉厚が漸減していることにより、内周面と外周面との中心ずれがなく、周方向に均一な厚みを形成することができる。
【0008】
この結果、先端部に曲がりのないピペットチップを得ることができ、歩留りを大きく改善することができる。
【0009】
本発明において、前記小孔と各谷または各山との間の収容部の空間容積が設定量に形成されていると、収容部に収容された液体量を、各山および各谷を目盛として計量することができる。
【0010】
本発明のピペットチップの成形金型は、固定型と、固定型に対して型締め、型開き可能なコアピンと、コアピンと連動可能な突き出しプレートと、からなり、固定型に対して型締めされたコアピンおよび突き出しプレートによってピペットチップに対応するキャビティが形成される成形金型において、前記固定型のキャビティ面もしくはコアピンのキャビティ面の少なくとも一方に、設定されたテーパー角度と設定された円錐長さを有する複数個の円錐面が形成されるとともに、隣接する円錐面の交差する辺に山および谷が交互に複数個ずつ形成されてなり、各山に向かって固定型のキャビティ面とコアピンのキャビティ面からなる間隔が漸減することを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、固定型のキャビティ面もしくはコアピンのキャビティ面に隣接する円錐面が交差することによって山および谷が交互に複数個ずつ形成され、また、各山に向かって固定型のキャビティ面とコアピンのキャビティ面からなる間隔が漸減することにより、溶融樹脂が、固定型のキャビティ面とコアピンのキャビティ面との間隔が漸減する各山に向かって流動する際、抵抗が発生し、周方向に均一になった後、狭窄部となる各山を通過する。
【0012】
この結果、成形されたピペットチップの肉厚は、周方向に均一となり、厚い場合と薄い場合との収縮差による曲がり現象の発生を確実に防止することができる。また、従来の成形金型のように、180度離れた位置にそれぞれゲートを2個設ける必要がないことから、ピペットチップを多数個取りする場合であっても、成形金型の小型化を図ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1には、本発明のピペットチップ1の一実施形態が示されている。
【0015】
このピペットチップ1は、透明または半透明のプラスチック、例えば、ポリプロピレンなどから成形されており、小端径側に液体を吸引し、吐出する小孔2xが形成された略円錐管状の収容部2と、収容部2の大端径側に連続して形成され、図示しない吸引ノズルと装着可能な装着部3と、から構成されている。
【0016】
収容部2は、小孔2xが形成された小端径側から、設定されたテーパー角度Φaの第1外周円錐面21aおよび第1外周円錐面21aのテーパー角度Φaよりも小さなテーパー角度Φbの第2外周円錐面21bからなる外周面21を有し、第1外周円錐面21aと第2外周円錐面21bとが交わる辺に山P1が周方向に形成されている。
【0017】
また、収容部2は、小孔2xが形成された小端径側から、第1外周円錐面21aのテーパー角度Φaよりも小さく、第2外周円錐面21bのテーパー角度Φbよりも大きなテーパー角度φaの第1内周円錐面22aと、第1外周円錐面21aのテーパー角度Φaよりも大きなテーパー角度φbの第2内周円錐面22bと、第1内周円錐面22aのテーパー角度φaよりも小さなテーパー角度φcの第3内周円錐面22cと、第2内周円錐面22bのテーパー角度φbよりも小さく、第1外周円錐面21aのテーパー角度Φaよりも大きなテーパー角度φdの第4内周円錐面22dと、第3内周円錐面22cのテーパー角度φcと略等しいか、わずかに小さなテーパー角度φeの第5内周円錐面22eと、第2外周円錐面21bのテーパー角度Φbと略等しいか、わずかに小さなテーパー角度φfの第6内周円錐面22fと、からなる内周面22を有している。
【0018】
そして、第1内周円錐面22aと第2内周円錐面22bとが交わる辺、第3内周円錐面22cと第4内周円錐面22dとが交わる辺および第5内周円錐面22eと第6内周円錐面22fとが交わる辺にそれぞれ山P2,P3,P4が周方向に形成され、また、第2内周円錐面22bと第3内周円錐面22cとが交わる辺および第4内周円錐面22dと第5内周円錐面22eとが交わる辺にそれぞれ谷B1,B2が周方向に形成されている。
【0019】
一方、第1内周円錐面22aの円錐長さYa、第2内周円錐面22bの円錐長さYb、第3内周円錐面22cの円錐長さYcおよび第4内周円錐面22dの円錐長さYdは、各内周円錐面22a,22b,22c,22dによって区画される空間容積によって設定されている。すなわち、小孔2xを通して液体を吸引し、収容部2に収容する際、円錐長さYaの第1内周円錐面22aで区画される空間に液体が収容された場合の容積がV1に設定され、円錐長さYaの第1内周円錐面22aおよび円錐長さYbの第2内周円錐面22bにわたって区画される空間に液体が収容された場合の容積がV2に設定されている。また、円錐長さYaの第1内周円錐面22a、円錐長さYbの第2内周円錐面22bおよび円錐長さYcの第3内周円錐面22cにわたって区画される空間に液体が収容された場合の容積がV3に設定され、さらに、円錐長さYaの第1内周円錐面22a、円錐長さYbの第2内周円錐面22b、円錐長さYcの第3内周円錐面22cおよび円錐長さYdの第4内周円錐面22dにわたって区画される空間に液体が収容された場合の容積がV4に設定されている。このため、収容部2に収容された液体量を、山P2,P3および谷B1,B2を目盛として計量することができる。
【0020】
ここで、第1外周円錐面21aの円錐長さXaと、第1内周円錐面22aの円錐長さYaおよび第2内周円錐面22bの円錐長さYbの和とは、同一に設定されている。すなわち、外周面21の山P1と、内周面22の谷B1とは、同一位置に形成されている。
【0021】
また、各外周円錐面21a,21bのテーパー角度Φa,Φbおよび各内周円錐面22a,22b,22c,22d,22e,22fのテーパー角度φa,φb,φc,φd,φe,φfの関係は、φe≦φc<φf≦Φb<φa<Φa<φd<φbとなっており、このため、谷B1に向かって第1外周円錐面21aと第2内周円錐面22bとの間隔および第2外周円錐面21bと第3内周円錐面22cとの間隔が漸減し、谷B1の肉厚は、該谷B1を挟む外周面21と内周面22間の肉厚において最小となっている。同様に、谷B2の肉厚は、該谷B2を挟む外周面21と内周面22間の肉厚、すなわち、第2外周円錐面21bと第4内周円錐面22d間の肉厚および第2外周円錐面21bと第5内周円錐面22e間の肉厚において最小となっている。
【0022】
装着部3は、外周円筒面31と、前述した収容部2の第6内周円錐面22fのテーパー角度φfと同一のテーパー角度の内周円錐面32を有し、外周円筒面31の基端部には、つば311が形成されるとともに、つば311の外径と同一外径の複数本の補強リブ312が設定角度間隔をおいて形成されている。また、装着部3の内周円錐面32には、基端部にガイド溝321が形成されるとともに、前述した収容部2との境界にアンダーカットとなる凹状溝322が形成されている。
【0023】
次に、このようなピペットチップ1を成形する成形金型10について説明する。
【0024】
この成形金型10は、図2に示すように、固定型11と、固定型11に対して前後方向に移動して型締め、型開き可能なコアピン12と、コアピン12と連動可能な突き出しプレート13と、から構成され、固定型11には、コアピン12を型締めすることで形成されるキャビティCに臨んでゲート14が形成されるとともに、ゲート14と図示しないスプルブッシュとを連通するランナ15が形成されている。
【0025】
ここで、固定型11に対してコアピン12を型締めして形成されるキャビティCは、前述したピペットチップ1に対応して形成されている。すなわち、固定型11のキャビティ面11aは、ピペットチップ1の収容部2における第1外周円錐面21a、第2外周円錐面21bからなる外周面21、装着部3におけるつば311および補強リブ312を含む外周円筒面31に対応して形成されており、外周面21の山P1に対応する谷P1’が周方向に形成されている。また、コアピン12のキャビティ面12aは、ピペットチップ1の収容部2における第1内周円錐面22a、第2内周円錐面22b、第3内周円錐面22c、第4内周円錐面22d、第5内周円錐面21e、第6内周円錐面22fからなる内周面22、装着部3におけるガイド溝321および凹状溝322を含む内周円錐面32に対応して形成されており、内周面22の山P2,P3,P4に対応する谷P2’,P3’,P4’が周方向に形成されているとともに、内周面22の谷B1,B2に対応する山B1’,B2’が周方向に形成されている。そして、前述したゲート14は、ピペットチップ1の装着部3における外周円筒面31のつば311の近傍に対応する位置に臨んで形成されている。
【0026】
なお、突き出しプレート13は、コアピン12の型開きの際、コアピン12の移動に連動して設定位置まで移動するものの、設定位置において図示しないストッパに規制されてそれ以上追従して移動しないように構成されている(図3(a)参照)。
【0027】
このような成形金型10を用いてピペットチップ1を成形するには、固定型11に対してコアピン12を型締めしてキャビティCを形成した後、図示しない射出装置から溶融樹脂をランナ15およびゲート14を通してキャビティCに射出充填すればよい。
【0028】
この際、キャビティCに充填された溶融樹脂は、固定型11およびコアピン12のキャビティ面11a,12aのうち、ピペットチップ1の装着部3に対応する部分から小孔2x側に向かって収容部3に対応する部分へと充填される。
【0029】
ここで、ピペットチップ1の収容部2における第2外周円錐面21bに対応する固定型11のキャビティ面11aと、ピペットチップ1の収容部2における第5内周円錐面22eに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCは、山B2’に向かって間隔が漸減しているため、溶融樹脂の流動に抵抗が発生する。この結果、溶融樹脂は、周方向に均一になった後、ピペットチップ1の収容部2における第2外周円錐面21bに対応する固定型11のキャビティ面11aと、ピペットチップ1の収容部2における第5内周円錐面22eと第4内周円錐面22dとの谷B2に対応するコアピン12のキャビティ面12aの山B2’とで形成される狭窄部を通過する。
【0030】
次いで、溶融樹脂は、ピペットチップ1の収容部2における第2外周円錐面21bに対応する固定型11のキャビティ面11aと、ピペットチップ1の収容部2における第4内周円錐面22dに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCを経て、第2外周円錐面21bに対応する固定型11のキャビティ面11aと、第3内周円錐面22cに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCに達する。
【0031】
ピペットチップ1の収容部2における第2外周円錐面21bに対応する固定型11のキャビティ面11aと、ピペットチップ1の収容部2における第3内周円錐面22cに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCは、山B1’に向かって間隔が漸減しているため、溶融樹脂の流動に抵抗が発生する。この結果、溶融樹脂は、周方向に均一になった後、ピペットチップ1の収容部2における第2外周円錐面21bと第1外周円錐面21aとの山P1に対応する固定型11のキャビティ面11aの谷P1’と、ピペットチップ1の収容部2における第3内周円錐面22cと第2内周円錐面22bとの谷B1に対応するコアピン12のキャビティ面12aの山B1’とで形成される狭窄部を通過する。
【0032】
この後、溶融樹脂は、ピペットチップ1の収容部2における第1外周円錐面21aに対応する固定型11のキャビティ面11aと、ピペットチップ1の収容部2における第1内周円錐面22aに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCに達する。このキャビティCも、小孔2x側に向かって間隔が漸減しているため、溶融樹脂の流動に抵抗が発生し、溶融樹脂が円周方向に均一になって小孔2xに対応する先端に達する。
【0033】
キャビティCに充填した溶融樹脂が冷却固化したならば、コアピン12を固定型11に対して型開きする。この際、突き出しプレート13もコアピン12の型開きに連動して、図示しないストッパに当接する位置まで移動する(図3(a)参照)。さらに、突き出しプレート13に対してコアピン12が型開きすれば、コアピン12は、突き出しプレート13に当接されたピペットチップ1から強制的に離脱することから、ピペットチップ1を取り出すことができる(図3(b)参照)。
【0034】
このように、固定型11のキャビティ面11aと、コアピン12のキャビティ面12aとの間に、山B2’,B1’による狭窄部が形成されているため、溶融樹脂は、山B2’,B1’による狭窄部を通過する際、その流動抵抗によって円周方向に均一になるものである。この結果、成形されたピペットチップ1の肉厚は、円周方向に均一となり、厚い場合と薄い場合との収縮差による曲がり現象の発生を確実に防止することができる。したがって、ピペットチップ1の歩留りを大きく改善することができる。また、180度離れた位置にそれぞれゲートを2個設ける必要がなく、1点ゲートでよいことから、ピペットチップ1を多数個取りする場合であっても、成形金型10の小型化を図ることができる。
【0035】
ところで、前述した実施形態においては、第1外周円錐面21aおよび第2外周円錐面21bからなる外周面21と、第1内周円錐面22a、第2内周円錐面22b、第3内周円錐面22c、第4内周円錐面22d、第5内周円錐面22eおよび第6内周円錐面22fからなる内周面22とによって収容部2を形成し、かつ、外周面21にテーパー角度の異なる第1外周円錐面21aと第2外周円錐面21bとが交差する辺に山P1を形成する一方、内周面22にテーパー角度の異なる第1内周円錐面22aと第2内周円錐面22bが交差する辺、第3内周円錐面22cと第4内周円錐面22dが交差する辺および第5内周円錐面22eと第6内周円錐面22fが交差する辺にそれぞれ山P2,P3,P4を形成するとともに、テーパー角度の異なる第2内周円錐面22bと第3内周円錐面22cが交差する辺および第4内周円錐面22dと第5内周円錐面22eが交差する辺にそれぞれ谷B1,B2をそれぞれ形成したピペットチップ1を例示したが、図4に示すように、外周面21にテーパー角度および円錐長さが異なる外周円錐面21c,21d,21e,21f,21gを形成し、隣接する外周円錐面21c,21d,21e,21f,21gとの間に山P5,P6および谷B3,B4を形成するようにしてもよい。
【0036】
すなわち、図4に示す実施形態のピペットチップ1の収容部2は、小孔2xが形成された小端径側から、設定されたテーパー角度Φcの第1外周円錐面21cと、第1外周円錐面21cのテーパー角度Φcよりも大きなテーパー角度Φdの第2外周円錐面21dと、第1外周円錐面21cのテーパー角度Φcよりも小さなテーパー角度Φeの第3外周円錐面21eと、第1外周円錐面21cのテーパー角度Φcよりも大きく、第2外周円錐面21dのテーパー角度Φdよりも小さなテーパー角度Φfの第4外周円錐面21fと、第1外周円錐面21cのテーパー角度Φcよりも小さく、第3外周円錐面21eのテーパー角度Φeよりも大きなテーパー角度Φgの第5外周円錐面21gと、からなる外周面21を有し、第1外周円錐面21cと第2外周円錐面21dとが交わる辺および第3外周円錐面21eと第4外周円錐面21fとが交わる辺にそれぞれ谷B3,B4が形成されるとともに、第2外周円錐面21dと第3外周円錐面21eとが交わる辺および第4外周円錐面21fと第5外周円錐面21gとが交わる辺にそれぞれ山P5,P6が形成されている。
【0037】
また、収容部2は、第1外周円錐面21cのテーパー角度Φcよりも小さく、第3外周円錐面21eのテーパー角度Φeよりも大きなテーパー角度φgの内周円錐面22gの内周面22を有している。
【0038】
そして、第1外周円錐面21cの円錐長さXc、第2外周円錐面21dの円錐長さXd、第3外内周円錐面21eの円錐長さXeおよび第4外周円錐面21fの円錐長さXfは、各外周円錐面21c,21d,21e,21fに対応する内周面22によって区画される空間容積によって設定されている。すなわち、小孔2xを通して液体を液体を吸引し、収容部2に収容する際、円錐長さXcに対応する空間に液体が収容された場合の容積がV5に設定され、円錐長さXcおよび円錐長さXdに対応する空間に液体が収容された場合の容積がV6に設定されている。また、円錐長さXc、円錐長さXdおよび円錐長さXeに対応する空間に液体が収容された場合の容積がV7に設定され、さらに、円錐長さXc、円錐長さXd、円錐長さXeおよび円錐長さXfに対応する空間に液体が収容された場合の容積がV8に設定されている。このため、収容部2に収容された液体量を、山P5,P6および谷B3,B4を目盛として計量することができる。
【0039】
なお、装着部3については、先に説明した実施形態と同一であるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
このような実施形態のピペットチップ1を成形する成形金型10は、図5に示すように、先に説明した成形金型10と同様、固定型11と、固定型11に対して前後方向に移動して型締め、型開き可能なコアピン12と、コアピン12と連動可能な突き出しプレート13と、から構成されている。そして、固定型11には、コアピン12を型締めすることで形成されるキャビティCに臨んでゲート14が形成されるとともに、ゲート14と図示しないスプルブッシュとを連通するランナ15が形成されている。
【0041】
固定型11のキャビティ面11aは、ピペットチップ1の収容部2における第1外周円錐面21c、第2外周円錐面21d、第3外周円錐面21e、第4外周円錐面21f、第5外周円錐面21gからなる外周面21、装着部3におけるつば311および補強リブ312を含む外周円筒面31に対応して形成されており、外周面21の山P5,P6に対応する谷P5’,P6’が周方向に形成されているとともに、外周面21の谷B3,B4に対応する山B3’,B4’が周方向に形成されている。また、コアピン12のキャビティ面は、ピペットチップ1の収容部2における内周円錐面22gの内周面22、装着部3におけるガイド溝321および凹状溝322を含む内周円錐面32に対応して形成されている。
【0042】
なお、突き出しプレート13は、先に説明した突き出しプレート13と同一であり、その詳細な説明を省略する。
【0043】
この成形金型10を用いてピペットチップ1を成形する場合も、固定型11に対してコアピン12を型締めしてキャビティCを形成した後、図示しない射出装置から溶融樹脂をランナ15およびゲート14を通してキャビティCに射出充填すればよい。
【0044】
ここで、ピペットチップ1の収容部2における第4外周円錐面21fに対応する固定型11のキャビティ面11aと、ピペットチップ1の収容部2における内周円錐面22gに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCは、山B4’に向かって間隔が漸減しているため、溶融樹脂の流動に抵抗が発生する。この結果、溶融樹脂は、周方向に均一になった後、ピペットチップ1の収容部2における第4外周円錐面21fおよび第3外周円錐面21eが交差する谷B4に対応する固定型11のキャビティ面11aの山B4’と、ピペットチップ1の収容部2における内周円錐面22gに対応するコアピン12のキャビティ面12aとで形成される狭窄部を通過する。
【0045】
次いで、溶融樹脂は、ピペットチップ1の収容部2における第3外周円錐面21eに対応する固定型11のキャビティ面11aと、ピペットチップ1の収容部2における内周円錐面22gに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCを経て、第2外周円錐面21dに対応する固定型11のキャビティ面11aと、内周円錐面22gに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCに達する。
【0046】
ピペットチップ1の収容部2における第2外周円錐面21dに対応する固定型11のキャビティ面11aと、ピペットチップ1の収容部2における内周円錐面22gに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCは、山B3’に向かって間隔が漸減しているため、溶融樹脂の流動に抵抗が発生する。この結果、溶融樹脂は、周方向に均一になった後、ピペットチップ1の収容部2における第2外周円錐面21dと第1外周円錐面21cとの谷B3に対応する固定型11のキャビティ面11aの山B3’と、ピペットチップ1の収容部2における内周円錐面22gに対応するコアピン12のキャビティ面12aとで形成される狭窄部を通過する。
【0047】
この後、溶融樹脂は、ピペットチップ1の収容部2における第1外周円錐面21cに対応する固定型11のキャビティ面11aと、ピペットチップ1の収容部2における内周円錐面22gに対応するコアピン12のキャビティ面12aとによって区画されたキャビティCに達する。このキャビティCも、小孔2x側に向かって間隔が漸減しているため、溶融樹脂の流動に抵抗が発生し、溶融樹脂が円周方向に均一になって小孔2xに対応する先端に達する。
【0048】
キャビティCに充填した溶融樹脂が冷却固化したならば、コアピン12を突き出しプレート13とともに固定型11に対して型開きした後、突き出しプレート13を固定した状態で、突き出しプレート13に対してコアピン12をさらに型開きすれば、ピペットチップ1を取り出すことができる。
【0049】
このように、固定型11のキャビティ面11aと、コアピン12のキャビティ面12aとの間に、山B4’,B3’による狭窄部が形成されているため、溶融樹脂は、山B4’,B3’による狭窄部を通過する際、その流動抵抗によって円周方向に均一になるものである。この結果、成形されたピペットチップ1の肉厚は、円周方向に均一となり、厚い場合と薄い場合との収縮差による曲がり現象の発生を確実に防止することができる。したがって、ピペットチップ1の歩留りを大きく改善することができる。また、180度離れた位置にそれぞれゲートを2個設ける必要がなく、1点ゲートでよいことから、ピペットチップ1を多数個取りする場合であっても、成形金型10の小型化を図ることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように本発明のピペットチップによれば、周方向の肉厚差に伴う先端部の曲がりのないピペットチップを得ることができ、歩留りを大きく改善することができる。
【0051】
また、本発明の成型金型によれば、1点ゲートによる金型の小型化を図ることができるとともに、周方向の肉厚差の発生を可及的に防止してピペットチップを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のピペットチップの一実施形態を示す断面図およびそのA−A線拡大断面図である。
【図2】図1のピペットチップの成形金型を示す断面図である。
【図3】図2の成形金型によるピペットチップの型開き工程を示す説明図である。
【図4】本発明のピペットチップの他の実施形態を示す断面図である。
【図5】図4のピペットチップの成形金型を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ピペットチップ
2 収容部
2x 小孔
21 内周面
21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g 外周円錐面
Φa,Φb,Φc,Φd,Φe,Φf,Φg 外周円錐面のテーパー角度
Xa,Xb,Xc,Xd,Xe,Xf 外周円錐面の円錐長さ
22 外周面
22a,22b,22c,22d,22e,22f,22g 内周円錐面
φa,φb,φc,φd,φe,φf,φg 内周円錐面のテーパー角度
Ya,Yb,Yc,Yd,Ye,Yf 内周円錐面の円錐長さ
3 装着部
31 外周円筒面
32 内周円錐面
10 成形金型
11 固定型
12 コアピン
13 突き出しプレート
P1,P2,P3,P4,P5,P6 山
B1,B2,B3,B4 谷
Claims (3)
- 先端に液体を吸引し、吐出する小孔が形成された略円錐管状の収容部と、収容部の基端に連続して形成され、吸引ノズルと装着可能な装着部と、からなるプラスチック製のピペットチップにおいて、前記収容部の外周面もしくは内周面の少なくとも一方に、設定されたテーパー角度と設定された円錐長さを有する複数個の円錐面が形成されるとともに、隣接する円錐面の交差する辺に谷および山が交互に複数個ずつ形成されてなり、各谷に向かって外周面と内周面からなる肉厚が漸減することを特徴とするピペットチップ。
- 前記小孔と各谷または各山との間の収容部の空間容積が設定量に形成されていることを特徴とする請求項1記載のピペットチップ。
- 固定型と、固定型に対して型締め、型開き可能なコアピンと、コアピンと連動可能な突き出しプレートと、からなり、固定型に対して型締めされたコアピンおよび突き出しプレートによってピペットチップに対応するキャビティが形成される成形金型において、前記固定型のキャビティ面もしくはコアピンのキャビティ面の少なくとも一方に、設定されたテーパー角度と設定された円錐長さを有する複数個の円錐面が形成されるとともに、隣接する円錐面の交差する辺に山および谷が交互に複数個ずつ形成されてなり、各山に向かって固定型のキャビティ面とコアピンのキャビティ面からなる間隔が漸減することを特徴とするピペットチップの成形金型。
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