JP3748096B2 - 切削加工方法 - Google Patents

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    • B23C5/00Milling-cutters
    • B23C5/02Milling-cutters characterised by the shape of the cutter
    • B23C5/10Shank-type cutters, i.e. with an integral shaft
    • B23C5/1009Ball nose end mills

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンドミルを用いて、エンドミル軸線と直交する方向に対して傾斜した加工面を加工する切削加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にエンドミルなどの切削工具を用いて金型などの形彫り加工を行う場合、図3に示すような荒加工を行い、続いて図4に示すような仕上げ加工が行われて工作物105を所望の形状に加工している。
図3に示す荒加工では、ある程度形状が整えば形状精度はあまり問題ではないので、加工時間を短縮するために大径のボールエンドミル100を使用し、取り代tも大きく設定して加工を行う。
【0003】
そして、図4に示す仕上げ加工では、加工面の最小R形状に一致する小径のボールエンドミル100を使用して荒加工よりも取り代tを小さくして加工を行っている。そして、一般的には荒加工の取り代tは1mm以上であり、仕上げ加工の取り代tは0.1mm程度である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
荒加工の場合、大径のボールエンドミル100を使用するために工具剛性が高く、変形し難い。また図3に示すように、取り代tの形状により軸線103と直交する水平方向の切削抵抗はほとんどなく、軸線103と平行な(Z方向)上向きの切削抵抗が大きい。これに対して仕上げ加工の場合は、一般に取り代が0.1mm程度と小さいので図4に示すように、ボールエンドミル100の先端102の一部分しか工作物105と接触しておらず、合成された切削抵抗は図4に示すように軸線103に対して傾斜した方向に作用する。
【0005】
このように、図4に示すような取り代tの仕上げ加工の場合は、ボールエンドミル100の先端102の一部分しか工作物105と接触しておらず、ボールエンドミル100の先端102は変位自由な状態で切削送りが行われ、軸線103と平行な方向(X方向)の剛性は直交する方向(Z方向)の剛性に比べて非常に弱いので、工具100が切削抵抗によりX方向(図4の左右方向)に撓み易く、工具100の振動が発生するという問題がある。
【0006】
工具100に振動が発生すると加工面にうねりが発生し加工精度が悪化する。さらに振動が大きい場合は、正常に加工を行うことすらできなくなる。よって、仕上げ加工の場合は荒加工に比べて工具100が振動しない程度まで十分に加工能率、つまり工具100の回転速度Sおよび送り速度Fを落として加工を行う必要がある。特に工具ホルダ101からの突き出し量Lと工具直径Dの比であるL/Dが大きい、細長い工具の場合は、この振動の問題は顕著である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、エンドミルを用いて前記エンドミルの軸線と直交する方向に対して傾斜した加工面を加工する切削加工方法において、前記工作物の取り代を、少なくとも前記エンドミル軸線と直交しかつ前記加工面と対向する方向において前記エンドミル軸線に対して対称になるように設定し、前記エンドミルが受ける切削抵抗を前記エンドミル軸線と平行な上向きに作用させることを特徴とするものである。
【0008】
また、具体的には前記取り代tを、エンドミルの先端半径Rおよび加工面の、エンドミルの軸線と直交する方向に対する傾斜角度θを用いてt=2Rsinθに設定することを特徴とするものである。また、前記取り代を最終仕上げ加工時に残すように、前記最終仕上げ加工に先立って行われる前工程の加工を行うことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、本細書中においては特にことわりのない限り、取り代とは切削工具の軸線と直交しかつ加工面に対向する方向での肉厚を表わすものとする。よって、図面においては紙面の左右方向であるX方向での肉厚を取り代tと定義する。
【0010】
図1は本発明による切削加工方法を用いて図4に示すようなポケット形状を仕上げ加工する加工状態を現しており、一部分を拡大表示したものである。
図1において、1はボールエンドミルであり、傾斜角度つまり、ボールエンドミル1の軸線2と直交する方向であるX方向との成す角度が60°である工作物の加工面5に最終の仕上げ加工を施すものとする。この最終の仕上げ加工における取り代tは、ボールエンドミル1の軸線2と直交し、かつ加工面5と対向する方向であるX方向(図1の左右方向)において軸線2に対して左右対称になるように設定する。
【0011】
これにより、ボールエンドミル1の先端3の円弧部分が取り代tの部分と接触している長さが、ボールエンドミル1の軸線2と直交し、かつ加工面5と対向する方向であるX方向においてボールエンドミル1の軸線2を中心として左右で等しくなる。よって、ボールエンドミル1が受ける切削抵抗の内、X方向に作用する成分は軸線2を中心として左右で対称となって打ち消し合うので、ボールエンドミル1が受ける切削抵抗はほぼ先端中心4を通り、軸線2と平行な上向き(Z方向)に作用すると考えられる。ボールエンドミル1の軸線2と平行な方向での剛性は、軸線2と直交する方向の剛性よりも非常に強いので、加工能率を上げて加工を行ってもボールエンドミル1には振動が発生し難い。
【0012】
次に取り代tの具体的な設定方法について図2に基づいて説明する。
取り代tをボールエンドミル1の軸線2と直交し、かつ加工面5と対向する方向においてボールエンドミル1の軸線2に対して対称にするためには、図2に示すような幾何学的な関係を利用する。
つまり、加工面5のボールエンドミル1の軸線2と直交する方向であるX方向との成す角度である傾斜角度をθ、ボールエンドミル1の先端3の半径をRとした場合、ボールエンドミル1の軸線2から先端3が加工面5に接触する点までのX方向での距離は図2に示すように、Rsinθとなるので、ボールエンドミル1の軸線2と直交し、かつ加工面5と対向する方向であるX方向において取り代tを軸線2に対して対称とするためには、
t=2Rsinθ ・・・式1
で算出される値を取り代tとすればよい。
【0013】
そして、CAMなどによりボールエンドミル1のツールパスを作成する時点で、上記式1を用いてボールエンドミル1の先端3の半径R及び加工面5の傾斜角度θから、t=2Rsinθを計算し、最終の仕上げ加工時にボールエンドミル1の軸線2と直交し、かつ加工面5と対向する方向において、ボールエンドミル1の軸線2対して左右対称な取り代tが残こるように最終の仕上げ加工の前工程の加工である荒加工時のツールパスを作成し、このツールパスにて荒加工を行う。
【0014】
そして、加工面5に対する荒加工および最終の仕上げ加工は、等高線モードにより加工を行う。図4に示すようなポケット形状の仕上げ加工を等高線モードで行うには、所定量だけZ方向に切り込みを与えた状態でZ方向への移動を停止し、この状態でX−Y平面内を所望の加工面5に沿ってボールエンドミル1を周回(図2に示す状態からのボールエンドミル1の送り方向は紙面に垂直方向である)させ、ボールエンドミル1が1周回して元の位置に戻ったら再びZ方向に所定量だけ切り込みを与え、加工面5に沿って再び1周回させる。以下、これを繰り返すことで全ての加工を行う。
【0015】
ここで、本発明の効果を確認するために行った、同一の工作物および工具を用いて、従来の取り代t=0.1mmとして加工を行った場合と、本発明によるt=2Rsinθで算出される取り代で加工を行った場合との加工能率の比較実験の結果を示す。
実験は、先端半径R=1mmのボールエンドミルを使用し、工具ホルダからの突き出し量L=20mmの状態で行った。この場合、L/D=10となる。
【0016】
この結果、従来の取り代t=0.1mmの場合、加工の支障になるような振動が発生しない加工条件は、
回転速度S=10000min−1、送り速度F=500mm/minとなり、本発明の取り代t=2Rsinθの場合は、
回転速度S=40000min−1、送り速度F=5000mm/minとなった。
この結果より、本発明の取り代t=2Rsinθの加工は、従来の取り代t=0.1mmの加工に比べて10倍の加工能率を有しているということが確認された。
【0017】
なお、上記した本発明の実施の形態では、等高線モードによって加工を行うようにしてたが、本発明はこれに限定されるものではなく、走査線モードによって加工を行うようにしてもよい。
また、上記した本発明の実施の形態では、切削工具としてボールエンドミルを使用するにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、切削工具として、外周および端面に切刃を有するラジアスエンドミルを使用するようにしてもよい。
【0018】
【発明の効果】
上述したように請求項1の発明によれば、エンドミルが受ける切削抵抗は、ほぼエンドミル先端中心を通り、エンドミル軸線と平行な上向きに作用するので、エンドミルには振動が発生し難く、加工能率を上げても高精度な加工を行うことができる。
【0019】
また、請求項2の発明によれば、取り代tを算出するのにエンドミルの先端半径Rとエンドミルの軸線と直交する方向に対する加工面の傾斜角度θという2つの情報のみでよいので、取り代tの算出が容易にできる。また、取り代tはエンドミルの先端半径Rが同一ならば加工面の傾斜角度θだけで算出することができるので、1つの加工形状において加工面の傾斜角度θが変化するような複雑な形状の加工面でも取り代tを容易に算出することができる。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、最終の仕上げ加工において振動が発生し難いので最終の仕上げ加工に要する加工時間を短縮することができる。また、最終の仕上げ加工の取り代が従来よりも大きくなるので必然的にその前工程の加工での取り代を少なくすることができ、最終の仕上げ加工まで含めた全体の加工に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における最終の仕上げ加工の状態を現す図である。
【図2】取り代t=2Rsinθを説明する図1の一部拡大図である。
【図3】従来の荒加工の状態を現す図である。
【図4】従来の仕上げ最終の加工の状態を現す図である。
【符号の説明】
1 ボールエンドミル
2 ボールエンドミルの軸線
3 ボールエンドミルの先端
4 ボールエンドミル先端の中心
5 加工面
t 取り代
R ボールエンドミルの先端半径
θ 加工面の傾斜角度

Claims (3)

  1. エンドミルを用いて前記エンドミルの軸線と直交する方向に対して傾斜した加工面を加工する切削加工方法において、前記工作物の取り代を、少なくとも前記エンドミル軸線と直交しかつ前記加工面と対向する方向において前記エンドミル軸線に対して対称になるように設定し、前記エンドミルが受ける切削抵抗を前記エンドミル軸線と平行な上向きに作用させることを特徴とする切削加工方法。
  2. 前記取り代tを、前記エンドミルの先端半径Rおよび前記加工面の、前記エンドミルの軸線と直交する方向に対する傾斜角度θを用いてt=2Rsinθに設定することを特徴とする請求項1に記載の切削加工方法。
  3. 前記取り代を最終仕上げ加工時に残すように、前記最終仕上げ加工に先立って行われる前工程の加工を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削加工方法。
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