JP3747222B2 - 保水性舗装体および保水性舗装方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保水性舗装体および保水性舗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市化の進行が著しい。一般に都市部では、コンクリート建築物が多く、広場や道路などがコンクリートやアスファルトで覆われている。そのため、日中にそれらが太陽熱を吸収して、夏場にはそれらの表面温度が60〜70℃にも達し、都市部の日中気温を押し上げている。また夜間にもそれらからの放熱が続き、夜間気温も押し上げられている。これは、都市部の気温が周辺地域に比べ際立って高くなるというヒートアイランド現象の一因にもなっている。かくして今日の都市部では、酷暑、高乾燥状態が慢性化し、都市部特有の深刻な環境問題になっている。
【0003】
本来、自然環境では、地盤に浸透された水分が太陽熱で蒸発する際、気化熱を奪うため、地盤の過度の温度上昇が抑えられるというメカニズムが機能していたが、道路がアスファルトなどの不透水性材料で舗装されているため、その機能が妨げられ、事態を一層悪化させている。
【0004】
また、雨水が路面から吸収されず、下水などに流れ込んでしまうため、水循環のバランスが崩れ、土地の乾燥化、地下水の枯渇などが進み、都市部とその近郊の緑化地区における、農業、造園、園芸にも支障をきたしている。
【0005】
従来、このような問題に対処する目的で、道路、歩道、広場などに透水性舗装を施したり、乾燥地盤に水補給を行う自動潅水装置が一部で利用されたりしてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、透水機能を備えた舗装では、乾燥地盤に水を浸透させて温度上昇を低減したり、地下への水循環サイクルを緩和したりする効果はあるが、水を地表近くに保つことができないので、その効果が一時的で、夏場などの降雨量の少ない季節では、あまり気温を低減することができないという問題があった。
また、自動潅水装置などは、設備やメンテナンスの費用がかさむため、用途、設置場所が限られてしまうという問題があった。
そこで、都市部を広範囲に覆っている舗装構造を改善し、都市部の熱環境やヒートアイランド現象、ひいては地球温暖化現象の緩和や、適正な水循環の回復に寄与することができる、人と環境に優しい爽やかな、道路・歩道などの舗装構造が強く求められていた。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、透水性と保水性を兼ね備えて、温度上昇を緩和することが可能で、安価で容易に施工することができる保水性舗装を行うための、保水性舗装体および保水性舗装方法を提供することを目的とする。
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、透水可能な空隙を備える、多孔質状基体単体または多孔質状基体の集合体の内部に、水分を吸収して保水ゲルとなり、温度が上昇すると保水ゲルに保持されていた水分を排水する、可逆的な吸水排水特性を備える保水性ポリマーを分散させて構成された保水性舗装材と、該保水性舗装材を覆う透水性舗装材とを備える保水性舗装体であって、前記透水性舗装材が、骨材と繊維化樹脂を用いたバインダーとから構成され、前記骨材間に透水可能な空隙が形成された状態で固化されて保水性舗装体の厚さ方向に連続する部分が形成されるとともに、前記保水性舗装材の上下方および側方を覆う構造とされた構成とする。
このような保水性舗装体によれば、保水性舗装材が、降雨時などの低温では水分を吸収して保水し、日射を受けて温度が上昇すると水分を保水ゲルから徐々に排水する。その水分は最終的に蒸発して、多孔質基体の空隙を通して外部に流出する。
また、前記透水性舗装材が、骨材と、繊維化樹脂を用いたバインダーとからなる構成を用いるため、種々の骨材を用いた透水性舗装材によって覆われるので、透水量、強度、デザインなどを容易に変化させることが可能な保水性舗装体とすることができる。
また、保水性舗装体の厚さ方向において、部分的に透水性舗装材が連続するので、舗装面からの荷重を面方向に分散できるとともに、厚さ方向に連続した透水性舗装材の部分で荷重が下方に伝達されるから、保水性舗装体の強度が透水性舗装材に依存するものとなり、保水性舗装材の強度にかかわらず、高強度を備えることができる。
なお、ここで繊維化樹脂とは、液体合成樹脂の液だれや、バインダーの不均一による構造体の強度や透水性のばらつきを改善するために、樹脂と繊維を混練した合成樹脂である。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の保水性舗装体において、前記保水性舗装材の前記多孔質状基体が熱可塑性合成樹脂の発泡体からなる構成とする。
そのため、保水ポリマーを偏り少なく分散して含有させることが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の保水性舗装体において、前記保水性舗装体が、該保水性舗装材を内部に納めたブロック状とされた構成とする。
そのため、すでにブロック状とされた保水性舗装体を用いるので、施工が容易である。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の保水性舗装体において、前記保水性ポリマーが、ポリアクリル酸、メタクリル酸、2−メタアクリロイルエタンスルホン酸の少なくともいずれかからなる高分子電解質のアルカリ金属塩と、該アルカリ金属塩と、アクリルアミドまたは2−ヒドロキシエチルメタアクリレートとの共重合体と、アルキルアクリルアミドの重合架橋体とを主成分とする混合物である構成を用いる。
そのため、保水性ポリマーが、低温時には、水分を吸収して保水ゲルとなり、高温時には、水分を排水(発水)して保水ゲルを収縮させる、という可逆的な温度依存の吸水排水特性を備えている。すなわち、ある温度以上になると徐々に排水量が増え、やがて急峻な排水量の増加が現れ、ある程度の温度範囲内で排水が起こる。
【0012】
請求項5に記載の発明では、骨材と繊維化樹脂を用いたバインダーとから構成され、前記骨材間に透水可能な空隙が形成された状態で固化される透水性舗装材を敷き均して路盤に敷設し、その上に、透水可能な空隙を備える、多孔質状基体単体または多孔質状基体の集合体の内部に、水分を吸収して保水ゲルとなり、温度が上昇すると保水ゲルに保持されていた水分を排水する、可逆的な吸水排水特性を備える保水性ポリマーを分散させて構成された保水性舗装材を、少なくとも水平方向に間隔を空けて敷設し、さらにそれらの上に、前記透水性舗装材を敷き均して表面を覆い、養生して前記透水性舗装材を固化させる方法とする。
【0013】
請求項6に記載の発明では、保水性舗装方法において、骨材と繊維化樹脂を用いたバインダーとから構成され、前記骨材間に透水可能な空隙が形成された状態で固化される透水性舗装材に、透水可能な空隙を備える、多孔質状基体単体または多孔質状基体の集合体の内部に、水分を吸収して保水ゲルとなり、温度が上昇すると保水ゲルに保持されていた水分を排水する、可逆的な吸水排水特性を備える保水性ポリマーを分散させて構成された保水性舗装材を小片化して混ぜたものを、路盤に敷設して舗装下層を形成し、その上に前記透水性舗装材を敷設して舗装表面層を形成し、養生して前記透水性舗装材を固化させる方法とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なおすべての図面を通して、同一または相当する部材は、同一の符号を付している。
図1は、本発明に係る保水性舗装ブロックを用いた道路舗装の様子を示す斜視部分断面図である。また図2は、本発明に係る保水性舗装ブロックの厚さ方向の断面図である。
【0018】
図1は、周知のアスファルト舗装施工によって車道部8を形成し、歩道部7に本発明を適用したものである。その断面構造は、路盤3の上に砂等からなるフィルタ層2が敷き詰められ、車道部8はその上にアスファルト舗装体5が敷設され、歩道部7はアスファルト舗装体5に代えて保水性舗装体1が敷設された構造をとっている。保水性舗装体1は、具体的には、本発明に係る保水性舗装ブロック11を敷き詰めることによって構成されている。後述するように、保水性舗装体1は、本発明に係る保水性舗装構造によって構成することもできる。歩道部7と車道部8を仕切っているのは排水溝ブロック4である。また符号6は街路樹などの樹木である。
【0019】
本発明に係る保水性舗装ブロック11は、大きくは透水性を有する部分と保水性を有する部分からなる成形ブロックであり、以下に説明するような種々の構成を備えるものである。図2、3はその一例を示す厚さ方向の断面図である。
【0020】
まず、本発明に係る保水性構造および保水性舗装ブロックに共通使用される保水性舗装材13の詳細構成について説明する。保水性舗装材13は、水分を吸収して排水可能に保水する保水性ポリマーを、耐水性を備えるポリウレタン発泡体(多孔質状基体)の内部に分散して含有させたものであり、ポリウレタン発泡体の発泡前の原料液に保水性ポリマーを混合してから発泡させることにより製作される。発泡状態は、大部分が連続気泡(空隙)からなる軟質のポリウレタン発泡体となるように調整され、ポリウレタン発泡体内部への吸水および透水が可能とされている。
【0021】
保水性ポリマーは、例えば、ポリアクリル酸やメタクリル酸、2−メタアクリロイルエタンスルホン酸などの高分子電解質のアルカリ金属塩や、それらとアクリルアミドや2−ヒドロキシエチルメタアクリレートなどとの共重合体、またアルキルアクリルアミドの重合架橋体を主成分とする混合物である。その形状は、1mm以下に結晶化されたものを採用することができる。あるいは、適宜加工して同様な大きさの無定形粉末状としてもよく、球形粒状、リン片状などとしてもよい。この程度の大きさとすることで、ポリウレタン発泡原料液内で比較的均一に分散され、発泡後の位置の偏りが低減される。ただし、位置の偏りに問題がない程度の大きさであれば、繊維状を用いてもよいことは言うまでもない。
【0022】
上記主成分からなる保水性ポリマーは、低温時には、水分を吸収して保水ゲルとなり、高温時には、水分を排水(発水)して保水ゲルを収縮させる、という可逆的な温度依存の吸水排水特性を備えている。一般には、ある温度以上になると徐々に排水量が増え、やがて急峻な排水量の増加が現れ、ある温度からはほとんど吸水しなくなるという特性であり、排水は実際にはある程度の温度範囲内で起こる。
【0023】
前記急峻な排水量の増加に転じる代表温度を発水温度と呼ぶことにすると、発水温度は保水性ポリマーの材質に固有であり、発水温度が異なる保水性ポリマーの配合割合によって変化させることによって、排水増加特性を変化させることが可能である。また保水量と膨潤体積の関係は主成分ごとに知られているので、主成分の配合割合によって、膨潤後の体積を予想することは容易である。
【0024】
発明者は、種々実験を積み重ねた結果、一例を挙げれば、上記保水性ポリマー10〜100gを、ポリウレタン樹脂未発泡液体1000mlに分散・混合することにより、保水量がポリウレタン発泡体容積の90%以上に達する保水性舗装材13を製作することができた。すなわち、最大限保水しても保水前の保水性舗装材13の容積と変わらないものが得られた。
【0025】
また保水性舗装材13は、ポリウレタン発泡体の内部に保水性ポリマーを分散させたものなので、純粋なポリウレタン発泡体の場合と同様にして、主に発泡倍率によって決まる内部の空隙率や、弾性特性を調整することができ、形状も、例えば、マット状、ブロック状、チップ状、粒状などの種々の形状に成形することが可能である。また、マット状、ブロック状に成形してから、種々の形状に切断加工することも容易である。
【0026】
また例えば、それらを熱プレスしてブロック状に再加工し、保水性舗装材13をポリウレタン発泡体の集合体(多孔質状基体の集合体)とすることも可能である。この場合、保水性舗装材13に含まれる空隙は、各ポリウレタン発泡体チップ内部の空隙と各チップ間に生じる空隙の和になる。
【0027】
なお、ポリウレタン発泡体は廃材リサイクルが可能であり、上記構成はリサイクル材料でも容易に実現可能であるという利点がある。
【0028】
次に、本発明に係る保水性構造および保水性舗装ブロックに共通使用される透水性舗装材14を説明する。本発明に係る透水性舗装材14は、大きくは、骨材14aをバインダー14bで固着し、透水可能な空隙16を形成したものである。
【0029】
骨材14aは、例えば、砂利、砕石、貝殻、ガラスカレット、溶融スラグなどの単体またはそれらの混合物を採用することができる。
【0030】
バインダー14bは、液だれすることなく骨材14aを比較的均一の強度で、しかも骨材14aの間に透水可能な適度の空隙が形成されるように結合するものであって、例えば主剤として、脂環族ジオール・ジグリシジルエーテルのエポキシ系樹脂1000gに、セラミックウール15〜50g、ガラスウール50〜200g、石英フィラメント100〜200gと増粘剤10〜60gを、それぞれに示したような割合で添加し、硬化剤として液体変性脂環式ポリアミン450〜500gを添加して混練したものを採用することができる。
【0031】
例えば、上記バインダー14bと骨材14a(例えば4〜6mmの市販品金華砂利35〜40kg)を常温で混練して均一に混ぜて、型に入れ、60℃で2〜3時間養生をかけて固化させることにより、空隙率が20〜35%、曲げ強度8N/mm2以上、圧縮強度20N/mm2以上の耐候性の透水性舗装材14が得られる。
【0032】
本発明に係る保水性舗装ブロック11の実施態様の1つは、図2に示したように、ブロック状に成形した保水性舗装材13を内部に配し、その周囲に骨材14aとバインダー14bからなる透水性舗装材14を配してブロック状とされたものである。その大きさや厚さは、歩道舗装用途向の一例を挙げれば、ブロック20×10×6cmの直方体形状で、保水性舗装材13の厚さが2cm程度、透水性舗装材14の層の厚さを2cm程度のものを採用することができる。言うまでもなく、それぞれの大きさや厚さは、保水量、透水性舗装材14の強度などを考慮して種々に設定することが可能であり、透水性舗装材14の強度は、骨材14aの大きさや種類、バインダー14bの配合によって調整可能である。
【0033】
次に、本発明に係る保水性舗装ブロック11の作用を説明する。
保水性舗装ブロック11は、外周が透水性舗装材14によって覆われているために、図1のようにフィルタ層2上に敷設された場合、歩道部7上に降り注ぐ雨水などの水分は、透水性舗装材14の空隙16を通して透水、下降する。厚さ方向に透水性舗装材14のみが存在する領域では、水分はフィルタ層2、路盤3を通して、地下に浸透し、一部が地中に保水され、あるいは地下水の流れに合流する。一方、保水性舗装材13の上方では水分が、保水性舗装材13のポリウレタン発泡体の連続気泡からなる空隙に浸透し、毛細管現象により保水性舗装材13全体に浸潤する。
【0034】
その水分が、保水性舗装材13に分散された保水性ポリマーと接触すると、保水性ポリマーに取り込まれて保水ゲルが形成される。水分の供給が続くと保水ゲルはさらに膨潤し、ポリウレタン発泡体の空隙中に広がる。ポリウレタン発泡体は軟質なので、ポリウレタン樹脂が弾性変形してたわんだり伸びたりすることによって、ある程度の膨潤は内部に吸収される。保水性ポリマーは、膨潤体積がポリウレタン発泡体の空隙以内に納まるように配されているので、保水性舗装材13は見かけ上の容積を変えることなく保水ゲルを膨潤させることが可能となっている。したがって、保水性舗装材13が初期の容積より膨張して、保水性舗装材13を取り囲む透水性舗装材14に内圧負荷を与え、その結果、舗装面が膨らんだり、透水性舗装材14がひび割れしたりすることを防止できる。
【0035】
なお、ポリウレタン発泡体を単体で用いず、集合体で用いる場合、単体間にも空隙が生じ、単体の空隙の総和より、空隙が大きくなる場合がある。この場合、その空隙の範囲まで膨潤しても集合体全体の容積は変化しないから、ポリウレタン発泡体単体が初期体積を越えて膨張しても上記と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0036】
このようにして、保水状態になると、ある程度温度が上がるまでは、排水されない。しかし、日射などによって舗装面の温度が上昇し、保水性舗装材13の温度が上昇すると、徐々に保水ゲルが収縮し、排水が起こる。このとき、排水された水分は、はじめ毛細管現象により、保水性舗装材13内に留まるが、周囲から熱量の供給を受けると徐々に気化熱を奪って蒸発し、透水性舗装材14の空隙16を通過して上昇し、この過程で骨材14aからも熱を奪いながら大気中に逃がれていく。このような過程により、排水が進むと保水性舗装ブロック11が冷却されるものである。
【0037】
保水性舗装ブロック11が冷却されると保水性舗装材13からの排水量も減るので、これらを繰り返すうちに、平衡温度に達し、結果として、保水性舗装ブロック11にまったく保水されていない場合に比べて舗装面の温度を格段に低減することができる。
【0038】
この作用を検証する実験結果の一例を、図3〜6に示した。
実験試料は、保水性舗装のサンプル試料(以下、保水性舗装とも略称する)として、上記の構成・寸法からなる本発明に係る保水性舗装ブロックを、約28℃から排水が始まって徐々に排水量が増える吸水排水特性を備えるように調整して製作したものを用意し、一般舗装を代表する対照試料(以下、一般舗装とも略称する)として実際の道路舗装に使われるアスファルト舗装を同形状のブロックとして用意した。
【0039】
実験は、所定温度に設定された恒温槽を用意し、事前に十分に含水させた保水性舗装ブロックのサンプル試料と、対照試料とその中に入れて、その表面温度を測定した。
【0040】
図3は、恒温槽温度を44℃に設定した場合の実験結果を示すグラフである。横軸は、観測時間を時分表示で示しており、縦軸は表面温度を℃単位で示している。なお、横軸と縦軸は以下のすべてのグラフに共通で、単に表示範囲が異なるだけなので、以下では説明を繰り返さない。また、折れ線20は一般舗装の表面温度の変化を示し、折れ線21は保水性舗装の表面温度の変化を示す。
【0041】
いずれも初期温度28℃から70分間温度上昇を続けたのち、ほぼ平衡温度に達している。すべての観測時間において、保水性舗装の表面温度は一般舗装の表面温度を下回っており、平衡温度で、5℃の差が発生した。
【0042】
図4は、引き続いて、恒温槽温度を56℃に設定して、実験した結果を示すグラフである。折れ線22は一般舗装の結果、折れ線23は保水性舗装の結果である。約100分後に平衡に達している。すべての観測時間において、保水性舗装の表面温度は一般舗装の表面温度を下回っており、平衡温度で、10℃の差が発生した。
【0043】
図5は、引き続いて、恒温槽温度を66℃に設定して、実験した結果を示すグラフである。折れ線24は一般舗装の結果、折れ線25は保水性舗装の結果である。約80分後に平衡に達している。すべての観測時間において、保水性舗装の表面温度は一般舗装の表面温度を下回っており、平衡温度で、12℃の差が発生した。
【0044】
図6は、引き続いて、恒温槽温度を74℃に設定して、実験した結果を示すグラフである。折れ線26は一般舗装の結果、折れ線27は保水性舗装の結果である。約100分後に平衡に達している。すべての観測時間において、保水性舗装の表面温度は一般舗装の表面温度を下回っており、平衡温度で、15℃の差が発生した。
【0045】
上記の実験結果が示すように、本発明に係る保水性舗装ブロックは、アスファルト舗装にない温度低減作用を備え、しかも高温になればなるほどその温度低減効果が高く、夏場の日中の路面温度である60〜70℃の範囲でもきわめて高い温度低減効果を発揮するものである。しかもその効果は持続性がある。
【0046】
また上記の保水性舗装ブロック11は、ブロック化されているので、敷設が容易であって、施工が容易となる利点がある。また、強度大きい透水性舗装材14で周囲を覆ったブロックとしたので、保水性舗装材13には強度の低いものを採用することができる利点がある。
【0047】
次に保水性舗装ブロック11の変形例を説明する。図7に示したのは、本発明に係る保水性舗装ブロック11の変形例であって、チップ状など小片化した保水性舗装材13を骨材14aとバインダー14bからなる透水性舗装材14の内部に分散させて設け、外周表面が透水性舗装材14で取り囲まれるようにブロック状とされたものである。
【0048】
このような構成においても個々の保水性舗装材13は上記の説明と同様の作用効果を発揮する。さらにそれぞれが小片化されているので、熱の授受がすばやく行われて周囲温度に対する感応性が高く、ブロック状の保水性舗装材13に比べ排水表面積が大きくなるから、平衡温度になるまでの時間が短縮されるという利点がある。また、保水性舗装材13がチップ状なので、製作する保水性舗装ブロック11の大きさにより、種々の大きさのものを予め用意する必要がなくて、汎用性を備えるから、製作効率がよいという利点がある。
【0049】
次に、保水性舗装体1(図1)を本発明に係る保水性構造で構成した実施の形態を説明する。
図8に示したのは、本発明の参考例の形態を示す断面図である。マット状に成形した保水性舗装材13の上に、骨材14a、バインダー14bからなる透水性構造部12を重ねて設けたものである。それぞれの材質は、上記に説明したものと同様である。
【0050】
この保水性舗装構造を設けるには、まず、フィルタ層2の上に、例えば厚さ2cm程度のマット状に成形された保水性舗装材13を敷き詰め、次にその上に、骨材14aとバインダー14bを常温で混練した透水性舗装材14を、例えば2cm程度に敷き均し、1日ほど養生をかけて、固化させることにより、透水性構造部12を形成する、という方法をとることができる。
【0051】
この場合、透水性構造部12を透過した水分が保水性舗装材13に保水され、温度が上昇すると排水して舗装面の温度を低減する効果は、保水性舗装ブロックを用いた場合と同様である。透水性構造部12の下面全面に保水性舗装材13が敷かれるので、保水効率がよいという利点がある。また透水性構造部12に一体性があるので、舗装面からの荷重が保水性舗装材13に分散されて伝達されるから、保水性舗装材13が比較的強度が低くても舗装面の局部的なへこみなどが発生しにくいという利点がある。
【0052】
また、この構造では、すでに透水性舗装が施されている場所でもその下に保水性舗装材13を敷くだけなので、施工が容易であり、しかも既設の透水性舗装の外観を変更することなく改良施工が行えるという利点がある。
【0053】
また、図2、7に示した保水性舗装ブロック11と同様の断面構成を保水性舗装構造として採用することもできる。
【0054】
図2のような断面構成を形成するには、まず、骨材14aとバインダー14bを常温で混練した透水性舗装材14を用意し、それをフィルタ層2の上に敷き、その上に、適宜ブロック状に小片化された保水性舗装材13を適宜間隔を空けて配置し、その上から透水性舗装材14を敷き均して表面を覆い、1日ほど養生をかけて、固化させる。それぞれの厚さは任意に設定できるが、例えば、それぞれ2cm程度とすることができる。
【0055】
また、図7のような断面構成を形成するには、まず、常温で骨材14aとバインダー14bを混練した透水性舗装材14を用意し、それをフィルタ層2の上に敷き、その上に、チップ状などの小片化された保水性舗装材13を透水性舗装材14に混ぜたものを敷き、さらにその上から透水性舗装材14を敷き均して表面を覆い、1日ほど養生をかけて、固化させる。それぞれの厚さは任意に設定できるが、例えば、透水性舗装材14の厚さをそれぞれ2cm程度とし、保水性舗装材13を500g/m2程度分散させることができる。
【0056】
なお、この場合、小片化された保水性舗装材13を透水性舗装材14に混ぜるために、施工過程で保水性舗装材13と透水性舗装材14を交互に敷くことにより、保水性舗装材13が階層状に分散されるようにしてもよい。
【0057】
上記に説明した保水性舗装構造によれば、保水性舗装体1の厚さ方向において、部分的に透水性舗装材14が連続するので、舗装面からの荷重を面方向に分散できるとともに、厚さ方向に連続した透水性舗装材14の部分で荷重が下方に伝達されるから、保水性舗装体1の強度が透水性舗装材14に依存するものとなり、保水性舗装材13の強度にかかわらず、高強度を備えることができるという利点がある。
【0058】
なお、上記の保水性舗装ブロック、保水性舗装構造に共通する利点として、保水性舗装材13が透水性舗装材14に覆われているので、保水性舗装材13が直接、紫外線に暴露されることがないから、保水性ポリマーや多孔質基体に耐候性を付与しなくても長期の性能を保持でき、耐候性加工のためのコストを削減できるという利点がある。
【0059】
なお、上記の説明では、保水性舗装材13の多孔質状基体はポリウレタン発泡体として説明したが、耐水性を備え、透水可能な空隙を備えていれば、他の材質も採用できる。例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリブテン樹脂などの熱可塑性合成樹脂を素材とした発泡体を採用することができる。
【0060】
また、多孔質状基体は、発泡体と限定されるものではなく、例えば繊維質からなって透水可能とされたものでもよい。
【0061】
なお、上記の説明では、透水性舗装材14として、骨材14aと、繊維化樹脂を用いたバインダー14bの組合せを挙げ、その一例のみを記載しているが、舗装に用いることができて透水性を備える構成であれば、これに限るものではない。
【0062】
また、繊維化樹脂も上記の例のみに限られるものではなく、骨材14aの間に透水可能な適度の空隙が形成されるように結合されれば、何を用いてもよい。しかし、敷設後6ヶ月を越えても黄変、光沢消失や水の影響による結合強度劣化を起こすおそれのない耐候性を備えた耐候性繊維化樹脂を用いれば、より効果的である。例えば、特開2001−164096公報に開示されている種々の樹脂、繊維や耐水剥離防止剤などからなるバインダーはすべて採用することができる。そのような耐候性繊維化樹脂は、上記エポキシ樹脂に限定されるものではなく、アクリル樹脂やウレタン樹脂を採用することができる。
【0063】
すなわち、還元反応により芳香族ベンゼン環を置換した脂環族エポキシ系樹脂と、繊維径100ミクロン以下、繊維長1mm以下のセラミックウール、ガラスウール、金属繊維、炭素繊維又は高分子材料の繊維との混練物を主成分とすることを特徴とする耐候性エポキシ系繊維化樹脂を採用できる。
また、還元反応により芳香族ベンゼン環を置換した脂環族エポキシ系樹脂と、繊維径100ミクロン以下、繊維長1mm以下のセラミックウール、ガラスウール、金属繊維、炭素繊維又は高分子材料の繊維との混練物を主成分とし、これに耐水剥離防止剤を添加・混練したことを特徴とする耐候・耐水性エポキシ系繊維化樹脂を採用できる。
また上記のような耐候・耐水性エポキシ系繊維化樹脂に、シラン系カップリング剤、有機チタン系カップリング剤、有機リン酸塩系カップリング剤又はクロムコンプレックス系カップリング剤を耐水剥離防止剤として添加してもよい。
またさらに、上記に、芳香族ベンゼン環を含まない化合物からなる耐候性・難黄変性の硬化剤及び/又は硬化調整触媒を添加してもよい。
【0064】
上記、還元反応により芳香族ベンゼン環を置換した脂環族エポキシ系樹脂は、具体的には、例えば、脂環族ジオールジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂を採用することができる。
また、シラン系の耐水剥離防止剤としては、例えば、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シランなどを採用することができる。
【0065】
また、同公報に開示されているエポキシ系樹脂を、そのままあるいは適宜周知の変更を加えて、アクリル樹脂やウレタン樹脂と置換して構成したバインダーも採用することができる。
【0066】
なお、上記の説明では、保水性舗装材の発水温度を一定としたサンプル試料で効果を検証しているが、発水温度の異なる保水性ポリマーを多孔質状基体単体に分散させたり、発水温度の異なる保水性ポリマーがそれぞれ分散された多孔質状基体単体から集合体を構成したりして保水性舗装材を製作してもよいことは言うまでもない。その場合、比較的低い発水温度のものを少なく、比較的高い発水温度のものを多く配合することにより、水分を効率的に利用できる。つまり、一定温度で一斉に発水が起こると、冷却に必要な水分を越えても発水が続き、余分な水分が気化しないまま凝結してやがて下方に流出し路盤3に浸透して失われてしまうが、上記のように調整すればそのような無駄な流出を緩和することができるから、保水された水分を長期間保持できるという利点がある。
【0067】
さらに、高発水温度のものを内部側に、低発水温度のものを外部側にというように、発水温度が層状に変化するように保水性舗装材を構成してもよい。その場合外部側が排水する間は内部側の温度が低下するから、部分的に高温となるところで排水が促進されて早く水分が失われることがないという利点がある。また、通常、舗装面から路盤3に向かって温度分布が生じることを考慮すれば、保水舗装材の発水温度分布を舗装面側上方から下方へ向かって低温から高温となるように構成して、階層的に保水しても同様な効果を奏することができる。
【0068】
なお、上記の説明では、保水性舗装ブロック11は直方体状のブロックとして説明したが、舗装面を覆うことができれば、大きさや形状が上記に説明したものに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0069】
なお、上記では、歩道部7の保水性舗装体1を形成する例で説明したが、本発明が歩道の舗装に限られるものでないことは言うまでもない。例えば、車道、広場、ビル屋上床、果樹菜園、庭園、駐車場などさまざまな場所への応用が可能である。特に樹木6(図1)のように、植物がその中または周囲に置かれる場合、温度低減効果のみならず地中への潅水作用も発揮することができるので、きわめて好都合であり、都市部の緑化の促進にも寄与することができる。
【0070】
【発明の効果】
以上に述べたように、請求項1に記載の発明では、保水性舗装材が、降雨時などの低温では水分を吸収して保水し、日射を受けて温度が上昇すると水分を保水ゲルから徐々に排水する。その水分は最終的に蒸発して、多孔質基体の空隙を通して外部に流出するから、その過程で奪われる気化熱により、保水性舗装材の温度が低減されるという効果を奏する。
また、透水量、強度、デザインなどを容易に変化させることが可能な保水性舗装体とすることができるから、保水性を備えながら幅広い舗装用途に容易に応じることができるという効果を奏する。
また、保水性舗装体の強度が透水性舗装材に依存するものとなり、保水性舗装材の強度にかかわらず、高強度を備えることができるという効果を奏する。
【0071】
請求項2に記載の発明では、保水ポリマーを偏り少なく分散して含有させることが可能となるから、保水性ポリマー1個体当たりに多孔質基体の空隙が均等に分配される結果、吸水と保水を効率的行うことができるという効果を奏する。
【0072】
請求項3に記載の発明では、透水量、強度、デザインなどを容易に変化させることが可能であり、保水性を備えながら幅広い舗装用途に応じることができるとともに、ブロック状とされた保水性舗装体を用いるので、施工が容易となり、施工期間や施工コストが低減できるという効果を奏する。
また、既設のブロック舗装を容易に保水性舗装に置き換えることができるという効果を奏する。
【0073】
請求項4に記載の発明では、保水性ポリマーを、ポリアクリル酸、メタクリル酸、2−メタアクリロイルエタンスルホン酸の少なくともいずれかからなる高分子電解質のアルカリ金属塩と、該アルカリ金属塩と、アクリルアミドまたは2−ヒドロキシエチルメタアクリレートとの共重合体と、アルキルアクリルアミドの重合架橋体とを主成分とする混合物により構成するので、発水温度が異なる保水性ポリマーの配合割合によって変化させることによって、排水増加特性を変化させることができ、44℃〜74℃の範囲で良好な温度低減効果を有するため、夏場の日中の路面温度である60〜70℃の範囲でもきわめて高い温度低減効果を発揮することができるという効果を奏する。
【0074】
請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の保水性舗装体を形成することができるから、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0075】
請求項6に記載の発明では、舗装下層と舗装表面層を通して、部分的に透水性舗装材が連続する構成とすることができるから、舗装面荷重を、透水性舗装材を介して路盤に伝達することができるので、低強度の保水性舗装材を用いることができるという効果を奏する。
また、請求項1に記載の保水性舗装体を形成することができるから、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る保水性舗装ブロックを用いた道路舗装の様子を示す斜視部分断面図である。
【図2】 本発明に係る保水性舗装ブロックの厚さ方向の断面図である。
【図3】 本発明に係る保水性舗装ブロックの表面温度低減効果を示す第1の実験結果のグラフである。
【図4】 同じく温度条件変えた第2の実験結果のグラフである。
【図5】 同じく温度条件変えた第3の実験結果のグラフである。
【図6】 同じく温度条件変えた第4の実験結果のグラフである。
【図7】 本発明に係る保水性舗装ブロックの変形例を示す断面図である。
【図8】 本発明の参考例の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 保水性舗装体
2 フィルタ層
3 路盤
4 排水溝ブロック
5 アスファルト舗装体
6 樹木
7 歩道部
8 車道部
11 保水性舗装ブロック
12 透水性構造部
13 保水性舗装材
14 透水性舗装材
14a 骨材
14b バインダー
16 空隙
20〜27 折れ線
Claims (6)
- 透水可能な空隙を備える、多孔質状基体単体または多孔質状基体の集合体の内部に、水分を吸収して保水ゲルとなり、温度が上昇すると保水ゲルに保持されていた水分を排水する、可逆的な吸水排水特性を備える保水性ポリマーを分散させて構成された保水性舗装材と、該保水性舗装材を覆う透水性舗装材とを備える保水性舗装体であって、
前記透水性舗装材が、
骨材と繊維化樹脂を用いたバインダーとから構成され、
前記骨材間に透水可能な空隙が形成された状態で固化されて保水性舗装体の厚さ方向に連続する部分が形成されるとともに、前記保水性舗装材の上下方および側方を覆う構造とされたことを特徴とする保水性舗装体。 - 前記保水性舗装材の前記多孔質状基体が熱可塑性合成樹脂の発泡体からなることを特徴とする請求項1に記載の保水性舗装体。
- 前記保水性舗装体が、該保水性舗装材を内部に納めたブロック状とされたことを特徴とする請求項1または2に記載の保水性舗装体。
- 前記保水性ポリマーが、
ポリアクリル酸、メタクリル酸、2−メタアクリロイルエタンスルホン酸の少なくともいずれかからなる高分子電解質のアルカリ金属塩と、
該アルカリ金属塩と、アクリルアミドまたは2−ヒドロキシエチルメタアクリレートとの共重合体と、
アルキルアクリルアミドの重合架橋体とを主成分とする混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の保水性舗装体。 - 骨材と繊維化樹脂を用いたバインダーとから構成され、前記骨材間に透水可能な空隙が形成された状態で固化される透水性舗装材を敷き均して路盤に敷設し、
その上に、透水可能な空隙を備える、多孔質状基体単体または多孔質状基体の集合体の内部に、水分を吸収して保水ゲルとなり、温度が上昇すると保水ゲルに保持されていた水分を排水する、可逆的な吸水排水特性を備える保水性ポリマーを分散させて構成された保水性舗装材を、少なくとも水平方向に間隔を空けて敷設し、
さらにそれらの上に、前記透水性舗装材を敷き均して表面を覆い、
養生して前記透水性舗装材を固化させることを特徴とする保水性舗装方法。 - 骨材と繊維化樹脂を用いたバインダーとから構成され、前記骨材間に透水可能な空隙が形成された状態で固化される透水性舗装材に、透水可能な空隙を備える、多孔質状基体単体または多孔質状基体の集合体の内部に、水分を吸収して保水ゲルとなり、温度が上昇すると保水ゲルに保持されていた水分を排水する、可逆的な吸水排水特性を備える保水性ポリマーを分散させて構成された保水性舗装材を小片化して混ぜたものを、路盤に敷設して舗装下層を形成し、
その上に前記透水性舗装材を敷設して舗装表面層を形成し、
養生して前記透水性舗装材を固化させることを特徴とする保水性舗装方法。
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