JP3746636B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば、自動車の自動変速機に用いられるトロイダル型無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トロイダル型無段変速機としては、図3に示すものがある。このトロイダル型無段変速機は、第1入力ディスク81,出力ディスク82,第2入力ディスク83が順に同芯軸上に配置されていて、第1,第2入力ディスク81,83と出力ディスク82とが独立して回転するようになっている。また、この変速機は、第1入力ディスク81と出力ディスク82との間に挟まれて、第1入力ディスク81から出力ディスク82に動力を伝達する第1ローラ85と、第2入力ディスク83と出力ディスク82とに挟まれて、第2入力ディスク83から出力ディスク82に動力を伝達する第2ローラ86を備えている。
【0003】
上記第1ローラ85は、第1入力ディスク81および出力ディスク82の凹湾曲面からなる円周軌道81A,82Aに摩擦接触しながら、両ディスク81,82の回転軸と交差する回転軸84回りに回転して、第1入力ディスク81から出力ディスク82に動力を伝達する。また、第2ローラ86は、第2入力ディスク83および出力ディスク82の凹湾曲面からなる円周軌道83A,82Bに摩擦接触しながら、両ディスク83,82の回転軸と交差する回転軸89回りに回転して、第2入力ディスク83から出力ディスク82に動力を伝達する。
【0004】
図3に実線(一点鎖線)で示すように、第1ローラ85および第2ローラ86の回転軸84,89が、上記ディスク81,82,83の回転軸に対する軸直角姿勢から傾いている角度が大きいほど、第1,第2入力ディスク81,83から出力ディスク82への増速比(減速比)が大きくなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、トロイダル型無段変速機では、ディスクとローラとの接触部に必然的にスピンすべりが生じ、このスピンすべりがトルク伝達ロスの原因となるという問題がある。
【0006】
そこで、ディスクとローラの面粗さを変えて、ディスクとローラのトラクション係数を下げると、上記スピンに起因する伝達ロスは小さくなるが、トルク容量が低下するという問題がある。なお、トラクション係数とは、転がり接触面に発生するトラクションを垂直荷重で割った値を言う。また、上記トラクションとは、転がり接触特有の高い面圧条件下の,潤滑下の転がり面において、相対する2面の微少な速度差により生じる摩擦力を言う。
【0007】
そこで、この発明の目的は、トルク容量を確保できると共に、トルク伝達ロスを低減できるトロイダル型無段変速機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明のトロイダル型無段変速機は、凹湾曲面からなる円周軌道を有するディスクを対向させ、この対向するディスクの両円周軌道に摩擦接触しながら回転して、両ディスク間のトルク伝達を行うと共に、このディスクに対して傾斜して変速機を増減速するローラを備えたトロイダル型無段変速機において、
上記ディスクとローラの接触面に働いて上記トルク伝達を行う周方向の摩擦力を増やすと共に、上記接触面に働いて上記トルク伝達ロスの原因になる径方向の摩擦力を低減すべく、
上記ディスクとローラとの接触面の周方向のトラクション係数が、上記接触面の径方向のトラクション係数よりも大きくなるように、上記ディスクの転動面の粗さと上記ローラの転動面の粗さを設定したことを特徴としている。
【0009】
この発明のトロイダル型無段変速機では、ディスクの転動面の粗さとローラの転動面の粗さに異方性を持たせて、ディスクとローラの接触面の周方向のトラクション係数をディスクとローラの接触面の径方向のトラクション係数よりも大きくした。したがって、ディスクとローラの接触面に働く周方向の摩擦力が大きくなる。したがって、ディスクとローラの接触面に働く径方向の摩擦力をディスクとローラの接触面に働く周方向の摩擦力に比較して相対的に低減でき、ディスクとローラとの間のトルク伝達ロスを低減できる。したがって、トルク伝達効率が高くて、トルク容量も大きなトロイダル型無段変速機を実現できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0011】
図1に、この発明のトロイダル型無段変速機の実施の形態を示す。この実施形態は、入力軸1に固定された第1,第2入力ディスク2,3と、この第1,第2入力ディスク2,3の間に配置され、第1,第2入力ディスク2,3と同芯軸上かつ独立に回転できるようになっている出力ディスク5とを備えている。この出力ディスク5は、入力軸1に対して軸受(図示せず)で回転自在に支持されており、ギア部5Aに巻回されたベルト6で出力側に動力を取り出すようになっている。
【0012】
上記第1入力ディスク2は、出力ディスク5の凹湾曲面状円周軌道7に対向する凹湾曲面状円周軌道8を備え、第2入力ディスク3は、出力ディスク5の凹湾曲面助円周軌道10に対向する凹湾曲面状円周軌道11を備えている。軌道8,11および7,10がディスク2,3および5の転動面である。そして、上記第1入力ディスク2の軌道8と出力ディスク5の軌道7の間に第1ローラ12が配置され、第2入力ディスク3の軌道11と出力ディスク5の軌道10との間に第2ローラ13が配置されている。ローラ12,13は、輪状の転動面12A,13Aを有する。第1ローラ12は、ディスク2,5の軌道8,7に摩擦接触しながら回転して、入力ディスク2から出力ディスク5に回転力を伝達し、第2ローラ13は、ディスク3,5の軌道11,10に摩擦接触しながら回転して、入力ディスク3から出力ディスク5に回転力を伝達する。
【0013】
上記第1,第2ローラ12,13は、入力軸1に対して交差する回転軸15,16を備え、この回転軸15,16は、ローラ12,13が出力ディスク5を挟んで対称な傾斜角θ1,θ2になるように制御される。傾斜角θ1が大きいほど減速比が大きくなり、傾斜角θ2が大きいほど増速比が大きくなる。
【0014】
上記構成のトロイダル型無段変速機は、入力軸1が回転すると、第1,第2入力ディスク2,3が一緒に回転し、この入力ディスク2,3の軌道8,11に摩擦接触して回転するローラ12,13が、出力ディスク5の両軌道7,10に摩擦接触して出力ディスク5を回転させ、回転力を伝達する。
【0015】
このトロイダル型無段変速機では、ディスク2,3および5の転動面である軌道8,11および7,10の粗さとローラ12,13の転動面12A,13Aの粗さに異方性を持たせた。この異方性によって、ディスク2,3および5とローラ12,13の接触面の周方向のトラクション係数を、ディスク2,3および5とローラ12,13の接触面の径方向のトラクション係数よりも大きくした。したがって、ディスクとローラの接触面に働く周方向の摩擦力が大きくなって、ディスク2,3,5とローラ12,13との接触面に働く径方向の摩擦力をディスクとローラの接触面に働く周方向の摩擦力に比較して相対的に低減でき、トルク伝達ロスを低減できる。したがって、トルク伝達効率が高くて、トルク容量も大きなトロイダル型無段変速機を実現できる。
【0016】
より詳しくは、図2に模式的に例示するように、ディスク5の転動面をなす軌道10とローラ13の転動面13Aとの接触面において、周方向(矢印C方向)のトラクション係数が径方向(矢印D方向)のトラクション係数よりも大きくなるように、軌道10の面粗さとローラ13の転動面13Aの面粗さを設定した。これにより、ローラ13の転動方向へのトラクション係数を大きくし、ローラ13の転動方向と直角な方向へのトラクション係数を小さくして、ローラ13からディスク10へ回転力を効率良く伝達できる。
【0017】
【発明の効果】
以上より明らかなように、この発明のトロイダル型無段変速機は、ディスクの転動面の粗さとローラの転動面の粗さに異方性を持たせて、ディスクとローラの接触面の周方向のトラクション係数をディスクとローラの接触面の径方向のトラクション係数よりも大きくした。したがって、ディスクとローラの接触面に働く周方向の摩擦力が大きくなって、ディスクとローラの接触面に働く径方向の摩擦力をディスクとローラの接触面に働く周方向の摩擦力に比較して相対的に低減でき、ディスクとローラとの間のトルク伝達ロスを低減できる。したがって、トルク伝達効率が高くて、トルク容量も大きなトロイダル型無段変速機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のトロイダル型無段変速機の実施形態を示す部分断面図である。
【図2】 上記実施形態において、ディスク5とローラ13の接触面でのトラクション係数を説明する模式図である。
【図3】 従来のトロイダル型無段変速機を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1…入力軸、2,3…入力ディスク、5…出力ディスク、5A…ギア部、
6…ベルト、7,8,10,11…凹湾曲面状円周軌道、12…第1ローラ、
13…第2ローラ、15,16…回転軸、θ1,θ2…傾斜角。
Claims (1)
- 凹湾曲面からなる円周軌道を有するディスクを対向させ、この対向するディスクの両円周軌道に摩擦接触しながら回転して、両ディスク間のトルク伝達を行うと共に、このディスクに対して傾斜して変速機を増減速するローラを備えたトロイダル型無段変速機において、
上記ディスクとローラの接触面に働いて上記トルク伝達を行う周方向の摩擦力を増やすと共に、上記接触面に働いて上記トルク伝達ロスの原因になる径方向の摩擦力を低減すべく、
上記ディスクとローラとの接触面の周方向のトラクション係数が、上記接触面の径方向のトラクション係数よりも大きくなるように、上記ディスクの転動面の粗さと上記ローラの転動面の粗さを設定したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14483099A JP3746636B2 (ja) | 1999-05-25 | 1999-05-25 | トロイダル型無段変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP14483099A JP3746636B2 (ja) | 1999-05-25 | 1999-05-25 | トロイダル型無段変速機 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000337466A JP2000337466A (ja) | 2000-12-05 |
JP3746636B2 true JP3746636B2 (ja) | 2006-02-15 |
Family
ID=15371444
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14483099A Expired - Lifetime JP3746636B2 (ja) | 1999-05-25 | 1999-05-25 | トロイダル型無段変速機 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3746636B2 (ja) |
-
1999
- 1999-05-25 JP JP14483099A patent/JP3746636B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000337466A (ja) | 2000-12-05 |
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