JP3745570B2 - スライド支持装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、支持部材と、この支持部材により所定方向に沿ってスライド自在に支持されたスライド部材と、このスライド部材を支持部材に対して複数の位置に段階的に保持する保持手段と、この保持手段を操作するための操作部とを具備するスライド支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、このようなスライド支持装置を、例えば椅子に適用して、その肘当てを昇降させるように構成したものが知られている。このものは、支持部材を座から上方に突出させ、上端に肘当てを設けたスライド部材を、この支持部材に支持させるようにしている。そして、スライド部材に、突没可能に構成した爪部を設ける一方、支持部材に複数の凹部を設けておき、この爪部を前記係り突出させていずれかの凹部に係り合わせることにより、肘当ての高さを段階的に調節できるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のものは、この肘当ての昇降範囲を一定範囲に規制するとともに、スライド部材の抜け止めを防止する抜け止め手段をさらに設けている。この抜け止め手段は、爪部にその機能の一部を担わせるようにしたもので、支持部材において凹部を設けてある面の上方に規制部を突出させ、この規制部に没入位置にある爪部が当たるように構成してなる。
【0004】
ところが、このようにすると、スライド部材における爪部を設けてある面と、支持部材における凹部を設けてある面とを面接触させることができない。すなわち、爪部は、没入位置にあって規制部に当たるわけであるから、この爪部を、没入位置においても、自身の設けられた面よりも必ず支持部材側に突出させざるを得ず、その突出スペース分、スライド部材における爪部を設けてある面と、支持部材における凹部を設けてある面とを離間させなければならないこととなる。
【0005】
そのため、従来のものは、支持部材とスライド部材とのスライド移動を担保するためのスライド面を、これら爪部や凹部、あるいは規制部を設けてある領域のさらに上方に設けていた。
しかしながら、このような構成であると、スライド面の領域を十分にとれないため、肘当ての昇降にがたが生じたり、あるいは肘当ての昇降範囲を大きくできなかったりするという不具合が生じ得る。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような点に鑑み、抜け止め機能の一部を、保持手段を構成する爪部に担わせるという従来の発想を完全に捨て去ることによってなしえたものであって、スライド部材及び支持部材に設けた互いに面接触する対向面間に、前記保持手段を形成するとともに、この保持手段の設けられた対向面以外の対向面間に抜け止め手段を設けたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明に係るスライド支持装置は、支持部材と、この支持部材により所定方向に沿ってスライド可能に支持されたスライド部材と、このスライド部材を支持部材に対して複数の位置に段階的に保持し得る保持手段と、このスライド部材の支持部材に対する抜け止めを行う抜け止め手段とを具備するものであって、前記保持手段が、前記所定方向に沿ってスライド部材と支持部材とに形成される相向かい合う対向面のうち、互いに略がたなく面接触させた対向面の一方に間欠的に設けた複数の凹部と、他方の対向面を形成する部材側に突没可能に設けられ、突出して前記凹部に係り合うことの可能な爪部とを具備するものであり、前記抜け止め手段が、爪部を支持する支持体を利用して構成され、前記保持手段の設けられた対向面以外の相向かい合う対向面間に設けられたものであることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、スライド部材を複数に位置変更可能に保持する保持手段を設けてある領域において、互いの部材の対向面同士を互いに面接触させているので、これら接触面の前記所定方向に沿った長さ寸法を十分に確保でき、スライド部材をがたなく円滑にスライド動作させることができるようになる。またこれら対向面を面接触させてその間にスペースを形成していないことから、装置自体のスリム化を図ることができる。加えて、爪部の突没移動距離も、スペースの無い分小さくすることができ、構造のコンパクト化や動作の確実性を向上させることができる。
【0009】
さらに、前記抜け止め手段が、爪部を支持する支持体を利用して構成されているので、抜け止め手段を簡単な構造で実現することができる。
前記抜け止め手段が、爪部を支持する支持体を利用して構成されている具体的な構成としては、支持部材又はスライド部材のいずれか一方の部材に、中間部を回動可能に支持させた伝達アームを設け、この伝達アームの一端部を操作部により動かし、この動きに応じて動く他端部により、爪部を突没させるように構成したものであって、抜け止め手段が、他方の部材に設けた規制面と支持体たる前記伝達アームの回動支軸とを具備し、この規制面に前記回動支軸を当ててスライド部材の支持部材に対する抜け止めを行うものを挙げることができる。
【0010】
装置のスリム化をより促進するには、一方の部材を中空パイプ状のものとし、その内部に伝達アームを挿入しているものが望ましい。より好ましくは、中空パイプ状にした一方の部材の断面形状が正方形状のものを挙げることができる。
スライド移動をより円滑に行わせるとともに、製造の簡単化等を図るには、支持部材又はスライド部材のいずれか一方の部材を、他方の部材に設けた嵌合穴に挿入するようにしたものであって、この他方の部材を、前記嵌合穴の内面にスペーサ部材を固定してなるものとし、このスペーサ部材の内周の一面に凹部を形成し、この凹部を形成した面に、一方の部材の外周の一面を面接触させるように構成しているものが好適である。
【0011】
特に組立工程を容易化する具体的な態様としては、前記スペーサ部材を、前記所定方向に沿って二分できる筒状のものとし、二分した一方の半割体の分割面に切り欠きを設け、この切り欠きの端部に規制面を形成しているものを挙げることができる。
また、本発明の他の実施態様として、支持部材と、この支持部材により所定方向に沿ってスライド可能に支持されたスライド部材と、このスライド部材を支持部材に対して複数の位置に段階的に保持し得る保持手段と、このスライド部材の支持部材に対する抜け止めを行う抜け止め手段とを具備するものであって、前記保持手段が、前記所定方向に沿ってスライド部材と支持部材とに形成される相向かい合う対向面のうち、互いに略がたなく面接触させた対向面の一方に間欠的に設けた複数の凹部と、他方の対向面を形成する部材側に突没可能に設けられ、突出して前記凹部に係り合うことの可能な爪部とを具備するものであり、前記抜け止め手段が、前記保持手段の設けられた対向面以外の相向かい合う対向面間に設けられたものであるとともに、支持部材又はスライド部材のいずれか一方の部材を、他方の部材に設けられた嵌合穴に挿入するようにしたものであって、この他方の部材を、前記嵌合穴の内面にスペーサ部材を固定してなるものとし、このスペーサ部材の内周の一面に凹部を形成し、この凹部を形成した面に一方の部材の外周の一面を面接触させるように構成するとともに、前記スペーサ部材を、前記所定方向に沿って二分できる筒状のものとし、二分した一方の半割体の分割面に切り欠きを設け、この切り欠きの端部に規制面を形成し、この規制面を利用して前記抜け止め手段を構成していることを特徴とするものが挙げられる。
このようなものであっても、スライド部材をがたなく円滑にスライド動作させることができるようにするとともに、構造のコンパクト化や動作の確実性の向上を図ることができるようにするための構成を、組立工程を容易化しつつ実現できる。
型成形による製造を可能ならしめるとともに、嵌合穴にスペーサ部材をがたなく確実に取り付け得るようにし、さらにはスライド部材のスライド移動をがたなく行わせるようにする等の複合的な効果を一挙に得るには、嵌合穴の内面を、その開口方向に向かうにつれ徐々に断面積が大きくなるように傾斜させるとともに、この嵌合穴の内面に固定したスペーサ部材の内面を、前記所定方向と平行をなすように構成しているものが好ましい。
【0012】
具体的な実施態様としては、椅子の肘当てを昇降させる場合に用いられるものであって、支持部材が、椅子を構成する座に固定された上下に延びるものであり、スライド部材が、その上端部において肘当てを支持するものを挙げることができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施例に係るスライド支持装置を適用した椅子100を示している。
まずこの椅子100について簡単に説明すると、この椅子100は、同図に示すように、椅子本体101と、椅子本体101の左右側方に設けた肘掛け102とを具備している。
【0014】
椅子本体101は、脚羽根109の中央から起立する支柱103に座104を支持させ、この座104の後方に背凭れ105を取り付けているものである。
肘掛け102は、図1〜図3に示すように、座104の左右両縁近傍から上方であってやや前向きに向けて突出して設けられ、後述するスライド支持装置の構成要素でもある支持部材1と、この支持部材1の上端部に台座107を介して水平旋回可能に取り付けた肘当て106とを具備するものである。
【0015】
しかして、本実施例に係るスライド支持装置は、この肘当て106を昇降させるための昇降装置とも言うべきもので、前記支持部材1と、この支持部材1により所定方向たるその突出方向Dに沿ってスライド自在に支持されたスライド部材2と、このスライド部材2を支持部材1に対して複数の高さ位置に段階的に保持する保持手段3と、この保持手段3を操作するための操作部たる操作ボタン4とを具備する。
【0016】
図3から図5を参照して詳述すれば、支持部材1は、型成形により製造されるもので、その上面に開口し、前記突出方向Dに沿って延びる嵌合穴11と、この嵌合穴11の内面11aに、皿ビスB等により、着脱可能に固定されたスペーサ部材9とを具備する。この嵌合穴11は、前後方向に長い楕円の前後端部を、それぞれ直線で切った断面形状をなすもので、製造時において型を抜くために、内面11aに若干のテーパ傾斜をつけ、開口に向かうにつれ徐々にその断面積が大きくなるようにしてある。スペーサ部材9は、前半割体91と後半割体92とから構成される二分可能な筒状樹脂製のものであり、内周断面形状を、略正方形状として後述するスライド部材2の断面輪郭形状と一致させてある。そして、その外面9eを、嵌合穴内面11aのテーパ傾斜を打ち消すように、逆向きにテーパ傾斜させてある一方、その内面9a〜9dを前記突出方向Dと平行をなすように構成してある。
【0017】
スライド部材2は、前記台座107の下面に溶接等により一体的に取付けられた断面正方形状をなす金属パイプ製のもので、その下端は開放してある。そして、このスライド部材2を、スペーサ部材9を取り付けた嵌合穴11に挿入することにより、少なくともその前面2a及び後面2bが、前半割体91の後向内面9a及び後半割体92の前向内面9bとそれぞれ略がたなく面接触するように設定してある。ここで、スライド部材2の外面2a〜2dと、スペーサ部材9の内面9a〜9dとが、それぞれ対向面を形成する。なお、本実施例では、このスライド部材2の周囲を覆うとともに、前記支持部材1に外嵌する樹脂製のカバー体108を設け、外観の向上を図っている。
【0018】
保持手段3は、スライド部材2の後面2bよりも後方に突出した突出位置P(図4参照)及び没入した没入位置Q(図5参照)の間で移動可能に構成した爪部31と、スペーサ部材9の前向内面9bに前記突出方向Dに沿って間欠的に複数設けられ、爪部31に係り合うことの可能な矩形貫通孔状の凹部32とを具備する。
【0019】
操作ボタン4は、カバー体108の前面上端部から突出するように配置した押し込み可能なもので、スライド部材2の上端部前面に設けた挿入孔21を貫通して、その後端がスライド部材2の内部にまで至るようにしてある。
しかして、これら操作ボタン4と爪部31とは、上下に延びる伝達アーム8によって連動するように構成してある。このような構成としているのは、爪部31をスライド部材2のなるべく下部に位置させて、肘当て106の昇降範囲を大きくとりつつ、操作ボタン4をなるべく肘当て106の近傍に位置させて、操作性を向上させるためである。詳述すれば、この伝達アーム8は、下端部のみがスライド部材2より下方に露出するように該スライド部材2内に挿入された金属製のもので、中間部をこのスライド部材2に、回動支軸たるピン7を介して回動可能に支持させてなる。そして、この露出した下端部に、後方に延びるように一体に屈曲させてなる片状の爪部31を設けている。一方、伝達アーム8の上端部前面は、操作ボタン4の後端にあたるように構成してあり、操作ボタン4の押し込み操作により、爪部31を後方、すなわち没入位置Q方向に動かせるようにしている。なお、この伝達アーム8には、ばね等の弾性体Sによって、その下端部を後方に動かす向きの力を付与しており、何ら外力の作用しない状態では、爪部31が突出位置P方向に動こうとするように設定してある。
【0020】
さらに本実施例では、スライド部材2の支持部材1に対する抜け止めを行う抜け止め手段6を設けている。この抜け止め手段6は、前記ピン7の各端部をそれぞれスライド部材2の外側面2c、2dより外側へ突出させ、これら突出部分を、スペーサ部材9の対向する内側面9c、9dにそれぞれ設けた規制面6aに当てるように構成したものである。具体的に、この規制面6aは、後半割体92の側壁921を、分割面92aから一部切り欠き、この切り欠き922の上端部に形成される下向面である。また、本実施例では、この切り欠き922の下端部に形成される上向面6bが、ピン7に当たってスライド部材2の挿入終端を規定する。なお、この切り欠き922は、側壁921を厚み方向に貫通するものではなく、厚みの内半分のみに形成してある。
【0021】
しかして、組立時においては、スライド部材2に伝達アーム8をピン7によって組みつけた状態で、スペーサ部材9たる後半割体92及び前半割体91を外側から被せ着け、その後、スペーサ部材9をスライド部材2ごと嵌合穴11に挿入する。
このような構成のスライド支持装置は、以下のように取り扱う。
【0022】
まず、肘当て106を昇降させたい場合には、操作ボタン4を押す。このことにより、伝達アーム8は、弾性体Sの弾性力に逆らってその上端部が後方に、またその下端部が前方に移動し、この下端部に取り付けられた爪部31は、スライド部材2の後面2bよりも没入した没入位置Qに位置する。しかして、この状態(図5参照)では、爪部31はいずれの部材にも干渉せず、スライド部材2を自在にスライドさせ、肘当て106を昇降させることができる。ただし、スライド部材2は、前記ピン7がスペーサ部材9に設けた上向き又は下向きの規制面6b、6aに当たるため、そのスライド範囲は、上下所定範囲に規制され、抜けも防止される。
【0023】
一方、肘当て106が所望の高さになれば、操作ボタン4を離すことで、弾性体Sの復帰力により、伝達アーム8の上端部は前方に、また下端部は後方に移動し、爪部31が突出位置Pに移動する。そして、対応する凹部32に係り合って、肘当て106はその高さに保持されることとなる(図4参照)。
以上のように構成した本実施例に係るスライド支持装置は、保持手段3を構成する爪部31に抜け止め機能を付与しないことによって、保持手段3の配置部位と、抜け止め手段6の配置部位とを異ならせ、凹部31を設けてあるスペーサ部材9の前向内面9bとスライド部材2の後面2bとを面接触できるように構成したものである。したがって、これら接触摺動面9b、2bの突出方向Dに沿った長さ寸法を十分に確保でき、スライド部材2をがたなく円滑にスライド動作させることができるようになる。また、スライド範囲を大きく設定することも無理なく行えるようになる。
【0024】
さらに、凹部31を設けてある前向内面9bとスライド部材2の後面2bとが密接していることから、爪部31の突没移動距離を小さく設定することができ、伝達アーム8の回動範囲を小さく設定できる。したがって、スライド部材2の内径を小さく設定でき、そのスリム化を促進できる。その結果、他の部材の配置位置やデザインの設計自由度が増すといった種々の効果を得ることができる。
【0025】
また、伝達アーム8を支持するピン7を利用して、抜け止め手段6を構成しているので、その構造が複雑化したり部品点数が増えることもない。さらに、スペーサ部材9を二分可能なものとし、後半割体92の半割面92aに切り欠き922を設けて規制面6a、6bを形成しているので、上述したように、スライド部材2に伝達アーム8をピン7によって組みつけた状態で、スペーサ部材9を外側から取り付けることができる。したがって、ピン7を最後に入れるような構成のものと比べて、その組立工程を格段に容易化できる。特に本実施例では、スライド部材2の外周とスペーサ部材9の内周との横断面形状を矩形状(正方形状)にしているので、円形にした場合と比べ、互いの位置決めが容易となり、組立の簡単化により寄与し得る。また、後半割体92と前半割体91とを合わせることにより、同時にピン7の抜け防止も図れる。
【0026】
さらに本実施例では、金属であるスライド部材2の外面2a〜2dが、樹脂製のスペーサ部材9の内面9a〜9dに摺動するので、スライド円滑性をより向上させ、異音の発生防止や製品寿命の増大にも寄与し得る。また、保持手段3を構成する凹部32も、加工容易なこのスペーサ部材9に設けることで、装置全体としての製造を容易化できる。
【0027】
一方、支持部材1を型成形で製造する場合には、嵌合穴11に型抜きのためのテーパ傾斜をつけざるを得ないが、この実施例では、スペーサ部材9により、テーパ傾斜をキャンセルし、その内面9a〜9dを、スライド方向Dと平行をなすように構成して、確実に面接触が営まれるようにしているので、スライド部材2のスライド移動における円滑性をより高め、使用者に安心感や高級感を与えることができる。
【0028】
なお、本発明は上記実施例に限られるものではない。例えば、図6に示すように、伝達アーム8をスライド部材2内に完全に没入させ、爪部31をスライド部材2に設けた貫通孔20から突出させるようにしてもよい。このようにすれば、スライド部材2をより長くでき、スライド円滑性やスライド範囲の増大化をさらに促進させることが可能になる。
【0029】
また、上記実施例では、支持部材にスライド部材を挿入していたが、スライド部材に支持部材を挿入するような構成としてもよいのはもちろんである。この場合には、支持部材及びスライド部材に取り付けるべき伝達アームやスペーサ部材を設ける部位を、上記実施例と逆の構成にすればよい。
さらに、スペーサ部材を半割できるものとせず、例えば図7に示すように、スライド部材2の一面を一部開放して装着されるような断面概略C字型のものとしてもよい。
【0030】
加えて、このスライド支持装置は、肘当ての昇降のみならず、その他種々の部材連結部分に用いることができる。
その他各部の具体的な構成は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明に係るスライド支持装置は、保持手段を構成する爪部に抜け止め機能を付与しないことによって、保持手段の設定部位と、抜け止め手段の設定部位とを異ならせ、凹部を設けてあるスペーサ部材の前向内面とスライド部材の後面とを面接触できるように構成したものである。したがって、これら接触摺動面の突出方向に沿った長さ寸法を十分に確保でき、スライド部材をがたなく円滑にスライド動作させることができるようになる。また、スライド範囲を大きく設定することも無理なく行えるようになる。
【0032】
さらに、抜け止め手段が、爪部を支持する支持体を利用して構成されているので、部品点数の増大を招くことなく、この抜け止め手段を簡単な構造で実現することができる。
具体的に、支持部材又はスライド部材のいずれか一方の部材に、中間部を回動可能に支持させた伝達アームを設け、この伝達アームの一端部を操作部により動かし、この動きに応じて動く他端部により、爪部を突没させるように構成したものであって、抜け止め手段が、他方の部材に設けた規制面と支持体たる前記伝達アームの回動支軸とを具備し、この規制面に前記回動支軸を当ててスライド部材の支持部材に対する抜け止めを行うものであれば、操作部を自在な位置に設定しつつ、十分なスライド移動領域を確保できる。
【0033】
一方の部材を中空パイプ状のものとし、その内部に伝達アームを挿入したものであれば、装置のスリム化を特に促進することができる。
支持部材又はスライド部材のいずれか一方の部材を、他方の部材に設けた嵌合穴に挿入するようにしたものであって、この他方の部材を、前記嵌合穴の内面にスペーサ部材を固定してなるものとし、このスペーサ部材の内周の一面に凹部を形成し、この凹部を形成した面に、一方の部材の外周の一面を面接触させるように構成しているものであれば、スライド移動をより円滑に行わせるとともに、製造の簡単化等を図ることができる。
【0034】
前記スペーサ部材を、前記所定方向に沿って二分できる筒状のものとし、二分した一方の半割体の分割面に切り欠きを設け、この切り欠きの端部に規制面を形成しているものであれば、スライド部材に伝達アームをピンによって組みつけた状態で、スペーサ部材を外側から取り付けることができる。したがって、ピンを最後に入れるような構成のものと比べて、その組立工程を格段に容易化できる。
【0035】
嵌合穴の内面を、その開口方向に向かうにつれ徐々に断面積が大きくなるように傾斜させるとともに、この嵌合穴の内面に固定したスペーサ部材の内面を、前記所定方向と平行をなすように構成しているものであれば、型成形による製造を可能ならしめるとともに、嵌合穴にスペーサ部材をがたなく確実に取り付け得るようにし、さらにはスライド部材のスライド移動をがたなく行わせるようにするといった複合的な効果を一挙に得ることができる。
【0036】
椅子の肘当てを昇降させる場合に用いられるものであって、支持部材が、椅子を構成する座に固定された上下に延びるものであり、スライド部材が、その上端部において肘当てを支持するものであれば、本発明の効果をより顕著にすることができる。
中空パイプ状にした一方の部材の断面形状が正方形状をなすものであれば、例えば、伝達アームの保持等が行いやすいうえ、円形のものに比べ、有効にその内周スペースを活用できるので、コンパクト化を促進できる。また、この一方の部材に、例えば肘当てを水平旋回可能に支持させた場合などに、構造的に有利なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における椅子を示す概略全体斜視図。
【図2】同実施例における肘掛けを示す側面図。
【図3】同実施例におけるスライド支持装置の概略分解斜視図。
【図4】同実施例におけるスライド支持装置の作動を説明するための概略側断面図。
【図5】同実施例におけるスライド支持装置の作動を説明するための概略側断面図。
【図6】本発明の第1変形例を示す部分斜視図。
【図7】本発明の第2変形例を示すスライド部材及びスペーサ部材の横断面図。
【符号の説明】
1…支持部材
11…嵌合穴
2…スライド部材
2b…面接触する対向面
3…保持手段
31…爪部
32…凹部
4…操作部(操作ボタン)
6…抜け止め手段
6a…規制面
7…回動支軸(ピン)
8…伝達アーム
9…スペーサ部材
9b…面接触する対向面
91、92…半割体
922…切り欠き
D…所定方向
P…突出位置
Q…没入位置
106…肘当て

Claims (9)

  1. 支持部材と、この支持部材により所定方向に沿ってスライド可能に支持されたスライド部材と、このスライド部材を支持部材に対して複数の位置に段階的に保持し得る保持手段と、このスライド部材の支持部材に対する抜け止めを行う抜け止め手段とを具備するものであって、
    前記保持手段が、前記所定方向に沿ってスライド部材と支持部材とに形成される相向かい合う対向面のうち、互いに略がたなく面接触させた対向面の一方に間欠的に設けた複数の凹部と、他方の対向面を形成する部材側に突没可能に設けられ、突出して前記凹部に係り合うことの可能な爪部とを具備するものであり、
    前記抜け止め手段が、爪部を支持する支持体を利用して構成され、前記保持手段の設けられた対向面以外の相向かい合う対向面間に設けられたものであることを特徴とするスライド支持装置。
  2. 支持部材又はスライド部材のいずれか一方の部材に、中間部を回動可能に支持させた伝達アームを設け、この伝達アームの一端部を操作部により動かし、この動きに応じて動く他端部により、爪部を突没させるように構成したものであって、
    抜け止め手段が、他方の部材に設けた規制面と支持体たる前記伝達アームの回動支軸とを具備し、この規制面に前記回動支軸を当ててスライド部材の支持部材に対する抜け止めを行うものである請求項記載のスライド支持装置。
  3. 一方の部材を中空パイプ状のものとし、その内部に伝達アームを挿入している請求項記載のスライド支持装置。
  4. 支持部材又はスライド部材のいずれか一方の部材を、他方の部材に設けた嵌合穴に挿入するようにしたものであって、
    この他方の部材を、前記嵌合穴の内面にスペーサ部材を固定してなるものとし、このスペーサ部材の内周の一面に凹部を形成し、この凹部を形成した面に、一方の部材の外周の一面を面接触させるように構成している請求項1、2又は3記載のスライド支持装置。
  5. 支持部材又はスライド部材のいずれか一方の部材を、他方の部材に設けられた嵌合穴に挿入するようにしたものであって、
    この他方の部材を、前記嵌合穴の内面にスペーサ部材を固定してなるものとし、このスペーサ部材の内周の一面に凹部を形成し、この凹部を形成した面に一方の部材の外周の一面を面接触させるように構成するとともに、
    前記スペーサ部材を、前記所定方向に沿って二分できる筒状のものとし、二分した一方の半割体の分割面に切り欠きを設け、この切り欠きの端部に規制面を形成している請求項1、2又は3記載のスライド支持装置。
  6. 支持部材と、この支持部材により所定方向に沿ってスライド可能に支持されたスライド部材と、このスライド部材を支持部材に対して複数の位置に段階的に保持し得る保持手段と、このスライド部材の支持部材に対する抜け止めを行う抜け止め手段とを具備するものであって、
    前記保持手段が、前記所定方向に沿ってスライド部材と支持部材とに形成される相向かい合う対向面のうち、互いに略がたなく面接触させた対向面の一方に間欠的に設けた複数の凹部と、他方の対向面を形成する部材側に突没可能に設けられ、突出して前記凹部に係り合うことの可能な爪部とを具備するものであり、
    前記抜け止め手段が、前記保持手段の設けられた対向面以外の相向かい合う対向面間に設けられたものであるとともに、
    支持部材又はスライド部材のいずれか一方の部材を、他方の部材に設けられた嵌合穴に挿入するようにしたものであって、
    この他方の部材を、前記嵌合穴の内面にスペーサ部材を固定してなるものとし、このスペーサ部材の内周の一面に凹部を形成し、この凹部を形成した面に一方の部材の外周の一面を面接触させるように構成するとともに、
    前記スペーサ部材を、前記所定方向に沿って二分できる筒状のものとし、二分した一方の半割体の分割面に切り欠きを設け、この切り欠きの端部に規制面を形成し、この規制面 を利用して前記抜け止め手段を構成していることを特徴とするスライド支持装置。
  7. 嵌合穴の内面を、その開口方向に向かうにつれ徐々に断面積が大きくなるように傾斜させるとともに、この嵌合穴の内面に固定したスペーサ部材の内面を、前記所定方向と平行をなすように構成している請求項4、5又は6記載のスライド支持装置。
  8. 椅子の肘当てを昇降させる場合に用いられるものであって、
    支持部材が、椅子を構成する座に固定された上下に延びるものであり、
    スライド部材が、その上端部において肘当てを支持するものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のスライド支持装置。
  9. 中空パイプ状にした一方の部材の断面形状が正方形状のものである請求項記載のスライド支持装置。
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