JP3745066B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関し、詳しくは操縦安定性および剛性感が高く、安定したコーナリング特性が得られ、しかもカーカス耐久性も向上した偏平空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気入りラジアルタイヤにおいては、ビード部の形を整えるとともに剛性を付与するために、カーカスプライと該カーカスプライの折り返し間におけるビードコア上に略三角形状の硬質ゴム部材のビードエペックスを入れる場合がある。かかるビードエペックスの底辺幅Aはビードコア最大幅Bと略同一であり、操縦安定性や振動乗り心地性等の特性から決まるビードエペックス高さHにより、必然的に略三角形のビードエペックスの容積は決められていた。即ち、ビードエペックスは、ビード安全率より決定されるビードコア幅(径)を底辺幅Bとして、操縦安定性および振動乗り心地性より決まるビードエペックス高さHで一律に決まる略三角形状であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、タイヤ偏平化による性能追求が進むにつれ、タイヤサイドの高さも低くなり、ビード部での径方向剛性の勾配が急激に変化をきたすようになってきた。その結果、荷重下でのサイド変形がトレッド端直下のバットレスに集中し、これにより、カーカス耐久性が低下し、また操縦安定性についても、ビード部の剛性が高いにも拘らず剛性感に欠けるタイヤという悪い評価を招いていた。
【0004】
そこで本発明の目的は、操縦安定性および剛性感が高く、安定したコーナリング特性が得られ、しかもカーカス耐久性も向上した空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、偏平率が65%以下である空気入りラジアルタイヤのサイド部の径方向曲げ剛性をなだらかにしてサイド変形のバットレス集中を防ぐこと、即ちサイド全域で変形するようにすることを目標にビードエペックスの容積について鋭意検討した結果、ビードエペックスの底辺幅Aを前記ビードコア最大幅Bより狭幅とすることにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部の両側で連なる一対のサイドウォール部の内周に夫々形成された一対のビード部と、該ビード部で両端部が折り返され係止されたカーカスプライとを備え、かつ、該ビード部にコード補強層を有しない、偏平率が65%以下である空気入りラジアルタイヤにおいて、前記カーカスプライと該カーカスプライの折り返し間で前記ビード部のビードコア上に存在する、略三角形状のビードエペックスの底辺幅Aが前記ビードコア最大幅Bより狭幅であることを特徴とするものである。
【0008】
前記ビードエペックスの底辺幅Aは、前記ビードコア最大幅Bの1/2〜1/3であることが好ましく、また前記ビードコアがケーブルビードコアまたは丸型ビードコアであることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、タイヤ偏平化によるカーカス耐久性や操縦安定性の低下を防ぐことを狙いとするものであることから、適用タイヤの偏平率は65%以下である。
【0010】
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいては、図1に示すように、カーカスプライ3と該カーカスプライ3の折り返し間で前記ビード部1のビードコア2上に略三角形状のビードエペックス4が設けられており、このビードエペックス4の底辺幅Aが前記ビードコア最大幅Bより狭幅である。
【0011】
ここで、ビードエペックス4の底辺幅Aが前記ビードコア最大幅Bより狭幅であるとは、例えば図2の(イ)〜(ハ)に示すように、ビードコア2の断面が四角形のときはその一辺を、ビードコア2の断面が円形のときはその直径を、またビードコア2の断面が多角形のときはその最大幅を夫々Bとしたときに、この幅Bよりもビードエペックス4の底辺幅Aが狭幅であることであり、好ましくは底辺幅Aが幅Bの1/2〜1/3である。偏平タイヤの場合、高さが低いため、サイド部に占めるビード部の割合が高くなる。従って、ビード部剛性が高いと横力を受けたときのサイド部の変形はトレッド側に集中する。ビード部の耐久性を大きく低下させないでビード部剛性を低くする上で最も好ましいのが1/2〜1/3である。なお、底エペックスの底辺幅が1/3未満のときには、ビード部の耐久性が大きく低下することが懸念される。
ところで、ビードコアとしては、ケーブルビードコアまたは丸型ビードコアであることが好ましい。
【0012】
従来の底辺幅を有するビードエペックスを用いた空気入りラジアルタイヤの場合は、図3の(イ)に示すように、タイヤサイドの径方向曲げ剛性がビードエペックスが有る部分とない部分とで変化量が大きく、荷重下での変形がバットレス部に集中し易く、カーカス耐久性に対して悪影響を及ぼすだけでなく、ビード剛性が十分にあるにも拘らずタイヤとしては柔らかくて剛性感がなく、操縦安定性に劣り、荷重変動に対しても挙動が敏感に反応し、扱いにくいタイヤという好ましくないフィーリング評価がなされていた。
【0013】
これに対して、ビードエペックスの底辺幅Aをビードコア最大幅Bより狭幅とする本発明の空気入りラジアルタイヤにおいては、図3の(ロ)に示すように、タイヤサイドの径方向曲げ剛性がビードエペックスが有る部分とない部分とで変化量が小さく、バットレス部の変形曲率半径も従来のものより大きくなり、カーカス耐久性が向上する。また、ビードエペックスの容積を低減したにも拘らず、サイド部全域で変形する結果として剛性感が向上して操縦安定性が良好となり、限界付近での挙動もマイルドで扱い易いという良好なフィーリング評価が得られた。
【0014】
図4は、ビード部にコード補強層を設けた参考図であるが、本発明の空気入りラジアルタイヤにおいては、ビード部にコード補強層を設けない。なお、図4の(イ)は、コード補強層としてインサート5を、ビードエペックス4とカーカスプライ3の折り返しとの間に入れた例、(ロ)は、フリッパー6をビードエペックス4を包むようにしてカーカスプライ3と該カーカスプライ3の折り返しとの間に入れた例、(ハ)は、インサート5とフリッパー6との双方を入れた例である。ビードエペックス以外のタイヤ構造は従来の偏平率65%以下のタイヤ構造を採用することができ、またビードエペックスの材質も、従来その用途において既知の硬質ゴムを用いることができる。
【0015】
【実施例】
次に本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
ビードエペックスの高さおよび材質は同じで、底辺幅Aが丸型ビードコア最大幅Bの2分の1のもの(実施例)と、実質的に同一のもの(従来例)を夫々用意し、これらを用いてサイズ235/45ZR17の空気入りラジアルタイヤを試作した。ここで、ビードエペックスは、ともに高さが40mm、材質が100%伸長時モジュラス(M100)50kgf/cm(室温)のものを用いた。
【0016】
これら試作タイヤにおいて、荷重変動に対するタイヤ接地幅の変動をグラフにして図5に示す。図5から明らかなように、実施例のタイヤではモールド形状を変えることなく接地面積を増加させることができ、また荷重変動に対して接地長さは同一のままで従来例に比しより直線的に接地幅を増加させることができる。
【0017】
また、実車走行試験においては、サーキット走行(4km/周)を行った場合、実施例のタイヤは従来例のタイヤに比しラップタイムが0.5秒速く、またフィーリングは、実施例のタイヤ剛性はしっかりしており、タイヤのサイド変形が全体でしなっており、路面をしっかり捉えていた。
【0018】
更に、室内にてドラム走行試験を行った結果、従来例のタイヤの転がり抵抗値を100としたとき、実施例のタイヤは98と低転がり抵抗で良好であり、また耐久性について従来例のタイヤを100としたとき、実施例のタイヤは125と良好であった。尚、ドラム走行条件は、内圧2.0kgf、負荷荷重420kgfの状態で、タイヤのスピードを次第に上げてゆき(例えば、100km/hで20分、140km/hで15分、160km/hで10分)、タイヤにセパレーションが発生した時点の速度と時間を測定して、上記のように指数評価した。
【0019】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明の空気入りラジアルタイヤにおいては、ビードエペックスの底辺幅Aをビードコア最大幅Bより狭幅としたことにより、荷重下でのバットレス部の曲率半径が従来のものに比し大きくなることからカーカス耐久性が向上し、また操縦安定性の面で剛性感が高く、グリップ性能が向上し、限界域での性格もマイルドなものとなり、安定したコーナリング特性が得られるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りラジアルタイヤの左部分断面図である。
【図2】(イ)〜(ハ)は、夫々本発明に係るビードエペックスとビードコアとの関係を示す断面図である。
【図3】(イ)および(ロ)は、夫々ビードエペックスとタイヤサイドの径方向曲げ剛性との関係を示す説明図である。
【図4】(イ)〜(ハ)は、ビードエペックス近傍へのコード補強層の適用状態を示す断面図である。
【図5】実施例および従来例のタイヤにおける荷重とタイヤ接地幅との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ビード部
2 ビードコア
3 カーカスプライ
4 ビードエペックス
5 インサート
6 フリッパー

Claims (3)

  1. トレッド部の両側で連なる一対のサイドウォール部の内周に夫々形成された一対のビード部と、該ビード部で両端部が折り返され係止されたカーカスプライとを備え、かつ、該ビード部にコード補強層を有しない、偏平率が65%以下である空気入りラジアルタイヤにおいて、
    前記カーカスプライと該カーカスプライの折り返し間で前記ビード部のビードコア上に存在する、略三角形状のビードエペックスの底辺幅Aが前記ビードコア最大幅Bより狭幅であることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
  2. 前記ビードエペックスの底辺幅Aが前記ビードコア最大幅Bの1/2〜1/3である請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
  3. 前記ビードコアがケーブルビードコアまたは丸型ビードコアである請求項1または2記載の空気入りラジアルタイヤ。
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