JP3744711B2 - 超音波加工機におけるスピンドル構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波振動によってワークに機械加工するための超音波加工機に係り、特に研磨や研削のための加工チップに対して回転軸周りの振れ等を伴わずに超音波振動を高効率で伝達でき、しかも高精度の機械加工ができるようにした超音波加工機におけるスピンドル構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
精密加工及び超精密加工の分野において、ワークの表面研磨や孔開け加工には超音波加工機が従来から広く利用されている。この超音波加工機の基本的な構成は、モータによって回転駆動されるスピンドルを主軸として備え、このスピンドルに同軸配置として超音波ヘッドを配置するとともに、この超音波ヘッドに一体に連結したホーンの先端に加工チップを取り付けるというものである。このような超音波加工機では、超精密加工に対応できるように、スピンドル及び超音波ヘッドとホーンとのアセンブリの組立て精度を厳しくする必要がある。そして、超音波ヘッドによる超音波振動が軸線方向に完全に一致し且つ振幅も変動することがないように、加工チップに対して超音波振動を伝達できるようにすることが最も重要な設計課題とされている。
【0003】
本願出願人は、加工チップへの超音波振動の伝達を最適化するための構造をすでに提案して実願平1−147834号として出願し、実用新案登録第2506321号として実用新案登録を取得した。先の出願は、スピンドル本体の中に備える超音波ヘッドをカップリングホーンで支持固定する超音波スピンドルに関するもので、この構成を適用した孔開け用の超音波加工機の例を図5に示す。
【0004】
図5において、円筒状のハウジング1の上端に駆動モータ2を備え、この駆動モータ2の出力軸にカップリング2aを介して連接したスピンドル3がラジアル・スラストの軸受1aによってハウジング1内に同軸上に組み込まれている。
【0005】
スピンドル3は、上端側をカップリング2aに連結するロッド3aと、このロッド3aの下端に同軸上に形成されて下端を開放した円筒状のスリーブ3bとを備えたものである。ロッド3aにはカップリング2aの直ぐ下に環状の給電ブラシ3cを備え、ハウジング1に固定した給電ユニット1bと給電ブラシ3cとの間を通電可能としている。そして、スリーブ3bの中に給電ブラシ3cに導通させた超音波振動子4を収納し、この超音波振動子4の下端には支持ホーン21とホルダホーン5とを同軸上に連結している。超音波振動子4は圧電素子を利用して20kHz以上の周波数の超音波振動を軸線方向に励起し、ホルダホーン5はその先端に微小な内径の孔を穿孔するための加工チップ5aを同軸上に取り付けている。
【0006】
支持ホーン21は、自身に一体化する超音波振動子4をスリーブ3b内で同軸上に固定保持するとともにホルダホーン5へ振動を伝達するための部材である。そして、先の出願に係る考案に基づく構成として、中実の本体部21aの外周面にフランジ21bを半径方向に突き出して形成するとともに、このフランジ21bの外周縁から本体部21aと同軸上に円筒体21cを備え、更にこの円筒体21cの上端に取付けフランジ21dを設けている。円筒体21cはフランジ21b及び取付けフランジ21dよりもかなり薄い肉厚としたものであり、取付けフランジ21dはスピンドル3のスリーブ3bの内周に嵌め込んで固定される。
【0007】
このような支持ホーン21を備えると、超音波振動子4による振動励起があるとき、その振動は支持ホーン21からホルダホーン5側だけでなく、フランジ21b,円筒部21c,取付けフランジ21dからスピンドル3側にも伝達される。したがって、超音波振動子4による振動エネルギの一部はスピンドル3によって吸収されることになる。
【0008】
これに対し、円筒部21cは薄肉であって簡単に変形したり変位したりするように振る舞うので、このような変位や変形が本体部21aからスリーブ3b側への振動の伝達に対する緩衝となる。このため、振動エネルギがスリーブ3b側に無駄に吸収される度合いが小さくなり、ホルダホーン5側への振動伝達の効率を上げて加工性能を向上させることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このようなスリーブ3b側への振動伝達の抑制は、要するに、薄肉の円筒体21cが変形したり変位したりしやすくして、支持ホーン21の軸線方向及び半径方向の振動振幅を吸収するというものである。すなわち、スリーブ3b側への振動の伝達を抑えるには、支持ホーン21とスリーブ3bとの連接構造に弾性的な要素を含ませたり剛性が低い構造とするほうが都合がよい。
【0010】
ところが、支持ホーン21は超音波振動子4及びホルダホーン5とを連結してこれらをスリーブ3bに固定する部材である。したがって、支持ホーン21がスリーブ3bに対して弾性的にまたは低剛性で連結されていると、超音波振動子4による振動負荷を受けるとき、スリーブ3bに対する支持ホーン21の姿勢の安定度が崩れてしまう可能性がある。このように支持ホーン21の姿勢の安定性が失われると、ホルダホーン5の軸線方向及び軸線周りの半径方向に不規則な振れが引き起こされる。したがって、超音波振動子4による設定された振動数や振幅から外れてホルダホーン5が振動し、加工チップ5aがその半径方向に振れ動作するとワークの穿孔径が大きくなったり加工チップ5aが折れたりする。
【0011】
一方、支持ホーン21だけでなく、先に説明した登録番号の実用新案登録公報の第1図及び第3図に示されているように、スリーブ3bの外からねじを差し込んで超音波振動子4の周面に突き当ててこの超音波振動子4を保持すれば、ホルダホーン5の振れの発生を抑えることはできる。しかしながら、ねじによって超音波振動子4がスピンドル3に剛的に連結されるので、スピンドル3側への振動の伝達が促されてしまい、ホルダホーン5側への振動エネルギの伝達量が低下することになる。
【0012】
このように、従来の超音波加工機のスピンドル構造では、超音波振動子からスピンドル側へ逃げる振動エネルギを抑えて加工チップへの振動の伝達効率を高く維持できるものの、加工チップの振れ回りや無用な揺れを伴いやすく、加工精度に大きく影響するという問題がある。
【0013】
本発明は、スピンドル側への振動エネルギの逃げを抑えてホルダホーン側への振動伝達効率を高く維持すると同時にホルダホーンを回転主軸であるスピンドルと同軸姿勢を保って加工精度を大幅に向上させる超音波加工機のスピンドル構造を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の超音波加工機におけるスピンドル構造は、軸線回りに回転駆動されるスピンドルと、前記スピンドルに形成された中空のスリーブの中に配置する超音波振動子と、前記超音波振動子に同軸上に連接され且つ前記スリーブの内周壁に拘束固定される少なくとも2個の支持ホーンと、前記支持ホーンに同軸上に基端を連接され先端に加工チップを備えるホルダホーンとを備え、前記支持ホーンは前記超音波振動子から前記スピンドル側への振動伝達を抑制する緩衝機構を備え、前記超音波振動子から加工チップまでを、超音波振動負荷時に前記支持ホーンには圧縮変形と引張り変形が配列方向の順に相互に引き起こされる振動系としたことを特徴とする。
【0015】
このような構成おいて、前記支持ホーンは、前記超音波振動子に同軸配置される本体と、前記本体の外周面と間隔をおいてほぼ同軸上に形成されて前記緩衝機構を構成する取付け環とを備え、前記取付け環は、前記本体の軸線方向のほぼ中間位置に一体化した基部と、前記基部から前記本体の周りに同軸形成された弾性変形可能な薄肉円筒状の緩衝スリーブと、前記緩衝スリーブの軸線方向の両端に形成され前記スピンドルのスリーブの内周壁に没入させるフランジとを備え、前記緩衝スリーブは、前記本体の圧縮変形及び引張り変形のときの半径方向の膨張及び収縮に倣い変形可能としたものとしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の超音波加工機の要部を示す縦断面図であり、図5で示した従来例と同じ構成部材については共通の符号で指示しその詳細な説明は省略する。
【0017】
図1において、中空円筒状のハウジング1と、駆動モータ2にカップリング2aを介して連接され軸受1aによってハウジング1内に回転自在に支持されたスピンドル3は、従来例で示したものよりも軸線長さが長い。スピンドル3のスリーブ3bの中に同軸上に収納される超音波振動子4と、ハウジング1の下端から突き出る配置のホルダホーン5とは従来例のものと同様の部材である。すなわち、超音波振動子4はセラミックスを利用した圧電素子4aを正負の電極プレート4b,4cで挟み込み、下端側の部分を振動を増幅させる質点として機能する出力部4dとしたものである。電極プレート4b,4cはリード線4b−1,4c−1によってスピンドル3のロッド3aに取り付けた環状の給電ブラシ3cに導通している。そして、給電ユニット1bから通電すると、圧電素子4aの作動によって出力部4dにはその軸線方向を振幅とする20kHz〜40kHzの超音波振動が励起される。
【0018】
超音波振動子4とホルダホーン5との間には、2個の支持ホーン6,7を同軸上で連結する。これらの支持ホーン6,7は共通部品であり、図2に上段配置の支持ホーン6の詳細を示す。図2の(a)は支持ホーン6の平面図、図2の(b)は切欠正面図である。
【0019】
支持ホーン6はたとえばステンレス鋼を素材とした一体成形品であり、中実状の本体6aとその外周に形成した取付け環6bとを備えたものである。本体6aは円柱体であって、その上端にはにボルトを連結するとともに下端には下段配置の支持ホーン7のボルト6a−1を螺合連結するための雌ねじ孔6a−2を形成している。
【0020】
取付け環6bは、本体6aの軸線方向の中央位置の外周面から突き出る基部6cと、この基部6cの突き出し周面に一体化され本体6aと同軸配置として形成した緩衝スリーブ6dと、この緩衝スリーブ6dの上下両端から外向きに突き出る断面として形成した一対のフランジ6e,6fとから構成されたものである。基部6cとフランジ6e,6fの肉厚はほぼ等しく、緩衝スリーブ6dはこれらの基部6c及びフランジ6e,6fに比べて薄くすることによって、弾性変形しやすくしている。
【0021】
支持ホーン6は、ステンレス鋼のインゴットの周面を切削して本体6aの上下両端の外周面,緩衝スリーブ6dの外周面及びフランジ6e,6fを加工し、フランジ6e,6fの端面から軸線方向に環状溝を切削して基部6bと緩衝スリーブ6dの内周面を切削することによって得られる。なお、下段配置の支持ホーン7についても同様の構造であり、その符号7,7a〜7fを括弧付きとして示している。
【0022】
支持ホーン6,7は、図1に示すように超音波振動子4の出力部4dとホルダホーン5との間に同軸配置として直結して組み立てるとともに、それぞれの取付け環6b,7bのフランジ6e,6f,7e,7fの外周縁をスピンドル3のスリーブ3bの内周面に嵌合させて固定する。すなわち、超音波振動子4とホルダホーン5及びこれらの間に同軸結合させた支持ホーン6,7は、4枚のフランジ6e,6f,7e,7fによってスピンドル3に固定され、スピンドル3のスリーブ3bの軸線方向の4点で拘束されて固定される。このような固定構造では、薄肉とした緩衝スリーブ6d,7dが弾性変形しやすいことから、超音波振動子4からの振動がスピンドル3側へ逃げるのが抑えられる。また、支持ホーン6,7を同軸上で2連配置とし、その両者の間で発生する半径方向及び軸線方向の収縮変形を互いに吸収し合うようにすることで、半径方向の揺れと軸線方向への伸縮による加工チップ5aの位置ずれ変位を抑えることができる。これらの2点について図3及び図4を用いて説明する。
【0023】
図3は超音波振動子4の出力部4dから超音波振動の負荷を受けたときの支持ホーン6の変形の概要を模式的に描いたものである。超音波振動が支持ホーン6の軸線方向に作用するときには、振幅が軸線方向に一致するので支持ホーン6にはその軸線方向に圧縮と引張りが作用する。この圧縮と引張りは20kHz以上の周波数で加わり、一方加工の際には加工チップ5aがワークから反力を受け、ホルダホーン5からこの反力が支持ホーン6に伝達される。したがって、支持ホーン6は図3の(b)に示すように圧縮されて本体6aが軸線方向に収縮し半径方向に膨らむ変形と、引張りによって同図の(a)のように軸線方向に伸びて半径方向に収縮する変形を繰り返す。すなわち、このような支持ホーン6の圧縮と引張りの繰り返しは、下端に連結されたホルダホーン5にも一体に伝わり、圧縮変形と引張り変形の総和が加工チップ5aの軸線方向の超音波振動のストロークとなる。なお、実際には、後述するように、ホルダホーン5も同様に圧縮と引張り変形を繰り返し、このホルダホーン5の変形量を加えたものが加工チップ5aの超音波振動のストロークとなる。
【0024】
一方、取付け環6bはスリーブ3bの内周壁に固定されているので、以上のような圧縮と引張りの変形があるときには、図3の(a)及び(b)の変形を繰り返す。このとき、取付け環6bの緩衝スリーブ6dは薄肉なので弾性変形しやすく、本体6aの超音波振動はこの弾性変形によって吸収される。すなわち、本体6aがスリーブ3bに剛的に固定されていると、超音波振動子4から支持ホーン6の本体6aに伝達された振動はホルダホーン5側にそのまま伝わるのに対し、緩衝スリーブ6dによってスピンドル3への伝達が緩衝される。したがって、超音波振動子4からの超音波振動をスピンドル3側へ逃がすことなく、高効率でホルダホーン5へ伝達することができる。
【0025】
下段配置の支持ホーン7も図3に示した支持ホーン6と同様に変形し、支持ホーン7からスピンドル3側への超音波振動の伝達を抑える。したがって、超音波振動子4からの超音波振動のエネルギは、2連の支持ホーン6,7を経てホルダホーン5に伝達される間にスピンドル3側へ逃げてしまう度合いが小さくなり、ホルダホーン5へ高効率で超音波振動が伝達される。このため、ホルダホーン5に取り付けた加工チップ5aの軸線方向の超音波振動も高効率で励起され、駆動モータ2による回転との合成によって高精度の孔開け加工が可能となる。
【0026】
支持ホーン6が超音波振動の負荷を受けるときには、図3に示したように軸線方向及び半径方向へ伸縮変形を繰り返す。すなわち、軸線方向へ引張り変形するときには半径方向に収縮し、軸線方向の中間位置での収縮変形が最大となる。また、圧縮されて軸線方向に収縮すると半径方向へ膨らみ、引張り変形の場合と同様に軸線方向の中間位置で変形量は最大となる。
【0027】
そこで、一方の支持ホーン6が軸線方向に引張り変形するとき、他方の支持ホーン7が軸線方向に収縮変形するような超音波振動のモードに設定すれば、支持ホーン6では半径方向に収縮し他方の支持ホーン7では膨らむように相反するものとすることができる。このような現象を利用すると、支持ホーン6,7を軸線方向の4点で嵌合しているスピンドル3のスリーブ3bの半径方向に対する負荷変動も小さくできる。
【0028】
図4はこのような支持ホーン6,7どうしの間の軸線方向及び半径方向の相反する変形が得られるようにした超音波振動子5による振動モードと支持ホーン6,7の位置関係を説明するための図である。
【0029】
或る時刻でのモードでは、同図の(a)に示すように、上段配置の支持ホーン6は軸線方向へ収縮し、下段配置の支持ホーン7は軸線方向へ伸び変形する。また、別の或る時刻では、同図の(b)に示すように、上段配置の支持ホーン6は軸線方向に伸び変形し、下段配置の支持ホーン7は軸線方向へ収縮変形する。このような支持ホーン6,7の変形のパターンを得るためには、超音波振動子4の振動周波数,超音波振動子4と支持ホーン6,7及びホルダホーン5の加工チップ5aまでの全体の固有振動数,この固有振動数にスピンドル3を質点として含む振動系の固有振動数等が適切となるように、各部材の形状や質量を最適化すればよい。
【0030】
このように、或る時刻でのモードでは上段配置の支持ホーン6は膨らみ下段配置の支持ホーン7は細くなり、或る別の時刻では逆の関係となる変形を相互に繰り返していく。このとき、図4の(a)及び(b)の変形パターンは、超音波振動子4による超音波振動の1周期の時間にほぼ一致する微小なインターバルで繰り返される。したがって、2個の支持ホーン6,7を同軸結合してそれぞれの取付け環6b,7bをスピンドル3のスリーブ3b内に嵌合する組立て構造であれば、スリーブ3bに対する半径方向の負荷を相互に相殺し合うようになる。
【0031】
すなわち、図4の(a)では上段配置の支持ホーン6は半径方向に膨らんでいるので、取付け環6bがスリーブ3bに加える負荷は大きく、したがってスリーブ3b側からの反作用によって取付け環6bに対する嵌合力も大きくなる。一方、下段配置の支持ホーン7では、半径方向に収縮しているので、逆にスリーブ3bによる支持ホーン7の嵌合力は低下する。そして、このようなスリーブ3bとの間の嵌合力には、取付け環6b,7bの薄肉の緩衝スリーブ6d,7dの弾性変形による弾性反力が含まれることは無論である。
【0032】
ここで、上下の支持ホーン6,7が同時に半径方向の収縮と膨張の同じ変形をするような振動モードに設定されたとする。この場合では、支持ホーン6,7が膨張変形しているときには、本体6a,7aが取付け環6b,7dを外に押し出すようになるので、スリーブ3bに対する嵌合度も強くなり安定した支持力が得られる。しかし、支持ホーン6,7が収縮変形している期間では、取付け環6b,7bから本体6a,7aが中心側に離れるようになって外への押し出しがないので、スリーブ3bに対する嵌合度は弱くなり、両方の支持ホーン6,7の安定支持が崩れる。
【0033】
これに対し、図4の(a)及び(b)で示したように、両方の支持ホーン6,7が互いに相反する向きの膨張と収縮変形を繰り返すような振動モードに設定することで、どの時点でも支持ホーン6,7のいずれか一方を膨張変形させた態勢に維持できる。このため、支持ホーン6,7は相互に助け合ってスリーブ3bに対して安定保持され、軸線周りの振れ周りが阻止される。したがって、スピンドル3側への超音波振動の伝達を抑えるために弾性変形しやすい薄肉の緩衝スリーブ6d,7dを形成した取付け環6b,7bを備えていても、支持ホーン6,7の半径方向の振れが抑えられ、ホルダホーン5の加工チップ5bの無用な振れ回りもなくなる。
【0034】
以上の構成において、超音波振動子4が作動して支持ホーン6,7を介してホルダホーン5に超音波振動のエネルギが伝達されるとき、支持ホーン6,7のそれぞれの取付け環6b,7bの緩衝スリーブ6d,7dの弾性変形によって、超音波振動がスリーブ3b側へ逃げることが抑制される。したがって、超音波振動のエネルギを損失することなくホルダホーン5に伝達でき、加工チップ5aによる穿孔の加工性の向上が得られる。
【0035】
また、図4に示したように、支持ホーン6,7の半径方向の膨張及び収縮変形が互いに逆向きとなるように超音波振動子4による振動系に含ませることで、加工チップ5aの振れ回りも抑えられる。したがって、加工チップ5aの調心性を高く維持できるので、ワークに開ける孔径が無用に大きくなることがなく、高精度の孔開け加工が可能となる。
【0036】
なお、図示の例では2個の支持ホーン6,7としたが、3個以上を同軸上に並べる構成としてもよく、この場合でも支持ホーンの配列順に圧縮変形と伸び変形が相互に繰り返されるような振動系とすればよい。
【0037】
【発明の効果】
請求項1の発明では、支持ホーンからスピンドル側への超音波振動エネルギの逃げを抑えて加工チップ側へ高効率で超音波振動を伝達できると同時に、ホルダホーンの半径方向の振れを抑えることができる。したがって、加工チップによるワークの加工効率が向上するとともに、加工チップのワークに対する調心性を保って高精度の加工を維持できる。
【0038】
請求項2の発明では、支持ホーンの本体の半径方向の膨張及び収縮変形が最大となる部分に取付け環の基部を設けているので、この基部に連ねて形成した緩衝スリーブの本体に対する倣い変形がしやすくなり、ワークへの調心性がより高くなるとともにスピンドル側への振動の伝達抑制効果も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスピンドル構造を備えた穿孔用の超音波加工機の概略縦断面図である。
【図2】 支持ホーンの詳細であって、(a)は平面図、(b)は一部切欠正面図である。
【図3】 超音波振動の負荷による支持ホーンの変形を示す模式図であって、(a)は引張り変形時及び(b)は圧縮変形時を示す図である。
【図4】 2連の支持ホーンの位置関係と軸線方向及び半径方向の変形のパターンを示す概略図である。
【図5】 1個の支持ホーンによる超音波振動子のスピンドル側への連接構造を備えた従来の超音波加工機の概略縦断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
1a 軸受
2 駆動モータ
2a カップリング
3 スピンドル
3a ロッド
3b スリーブ
3c 給電ブラシ
4 超音波振動子
4a 圧電素子
4b,4c 電極プレート
4b−1,4c−1 リード線
4d 出力部
5 ホルダホーン
5a 加工チップ
6,7 支持ホーン
6a,7a 本体
6b,7b 取付け環
6c,7c 基部
6d,7d 緩衝スリーブ
6e,6f,7e,7f フランジ
Claims (1)
- 軸線回りに回転駆動されるスピンドルと、前記スピンドルに形成された中空のスリーブの中に配置する超音波振動子と、前記超音波振動子に同軸上に連接され且つ前記スリーブの内周壁に拘束固定される少なくとも2個の支持ホーンと、前記支持ホーンに同軸上に基端を連接され先端に加工チップを備えるホルダホーンとを備え、
前記支持ホーンは、前記超音波振動子に同軸配置される本体と、前記本体の外周面と間隔をおいてほぼ同軸上に形成されて、前記超音波振動子から前記スピンドル側への振動伝達を抑制する緩衝機構を構成する取付け環とを備え、
前記取付け環は、前記本体の軸線方向のほぼ中間位置に一体化した基部と、前記基部から前記本体の周りに同軸形成された弾性変形可能な薄肉円筒状の緩衝スリーブと、前記緩衝スリーブの軸線方向の両端に形成され前記スピンドルのスリーブの内周壁に没入させるフランジとを備え、
前記緩衝スリーブは、前記本体の圧縮変形及び引張り変形のときの半径方向の膨張及び収縮に倣い変形可能としたことを特徴とする超音波加工機におけるスピンドル構造。
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1999
- 1999-03-05 JP JP05922899A patent/JP3744711B2/ja not_active Expired - Fee Related
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CN102717313A (zh) * | 2012-06-28 | 2012-10-10 | 青岛科技大学 | 机械去毛刺装置 |
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