JP3743982B2 - ポリアミド系プラスチック磁性材料から作製されたモーター用プラスチック磁石 - Google Patents
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Description
しかしながら、近年、磁石の高性能化のためにプラスチック磁性材料中への磁性粉末の充填量が増大するにつれて、プラスチック磁性材料の流動性、並びに作製されたプラスチック磁石の強度および柔軟性の改良が強く求められている。さらには、異方性磁石粉を用いたプラスチック磁石では、磁場中にて成形を行い磁化容易軸を任意の方向にそろえ高性能磁石を作製するが、流動性が悪化すると本来の磁石性能が得られなくなる弊害がある。
この問題の対策として、プラスチック磁性材料に金属石鹸等の様々な滑剤を添加することが提案されている。
そして、プラスチック磁石の強度および柔軟性の低下を防止する手段としては、プラスチック樹脂としてポリアミドとゴムの共重合体を用いること(特開昭57−187910号公報)、ポリアミドと共にポリエーテル基を有するポリアミドエラストマーを用いること(特開昭63−122106号公報)等が提案されている。
3点曲げ試験とは、板状サンプルの下部を2点で支え、その中心部に付加を与えて破壊する試験である。破断点における荷重は破壊強度であり、破壊強度の値がより大きい程、サンプルの強度がより高いことを示す。また破断点における変位は柔軟性の尺度であり、変位がより大きい程、サンプルはより大きな柔軟性を有することを示す。
この図から明らかなように、プラスチック磁性材料の流動性の向上に寄与する金属石鹸の添加は、作製されたプラスチック磁石の強度の低下を招く。従って、金属石鹸等の滑剤
を大量に添加することは避けなければならない。
また、ポリアミドエラストマーを用いることにより、作製されたプラスチック磁石に柔軟性が付与されるが、ポリアミドエラストマーはナイロン12と比較して曲げ強度特性が劣るので、プラスチック磁石の強度は低下する。またポリアミドエラストマーの使用は、プラスチック磁性材料の流動性の低下を招く。
結果として、滑剤によるプラスチック磁性材料の流動性の改良は作製されるプラスチック磁石の強度の低下を引き起こし、一方、ポリアミドエラストマー等によるプラスチック磁石の柔軟性の改良もまた強度の低下を引き起こす。
アルミニウム層の外周にプラスチック磁石層を配設してなるモーター用プラスチック磁石であって、
該プラスチック磁石層は、
(A)磁性粉末、
(B)ポリアミド樹脂、および
(C)該ポリアミド樹脂に基づいて3〜30mass%の次式
R1−CONH−R3−NHCO−R2
[式中、R1およびR2は二重結合を一つ以上有する不飽和炭化水素基を表し、そしてR3は炭化水素基を表す。]で表されるビス不飽和脂肪酸アミド
を混練して得られるポリアミド系プラスチック磁性材料をインサート成形することにより作製されることを特徴とするモーター用プラスチック磁石
に関する。
本発明は、第2観点として、
成分(C)はエチレンビスオレイン酸アミドであることを特徴とする請求項1記載のモーター用プラスチック磁石
に関する。
た本発明のポリアミド系プラスチック磁性材料から作製したプラスチック磁石は、高い強度および良好な柔軟性を有し、さらに作製時の収縮による割れ、熱衝撃による割れ等を起こさない。そのため、本発明のポリアミド系プラスチック磁性材料は、モーター等に使用されるインサート成形用磁性材料として有用である。
特に、ストロンチウムフェライト粉末およびバリウムフェライト粉末が好ましい。
シランカップリング剤の例は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピル−トリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチル−ジクロロシラン、3−クロロプロピルメチル−ジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチル−ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチル−ジメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル−トリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチル−ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、N−2−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、ジアミノシラン、トリアミノプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチル−ジエトキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシエトキシエトキシ)シラン、3−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチル−ジメトキシシラン、3−ウレイドプロピル−トリメトキシシラン、3−ウレイドプロピル−トリエトキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピルメチル−ジメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン等が挙げられる。チタネートカップリング剤の例は、チタンアシレート、チタンアシレートポリマー、チタンホスフェートポリマー、チタンアルコラート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソプロピルオルソチタネート、テトラブチルオルソチタネート、ブチルポリチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジ−イソプロポキシ−ビス−(2,4−ペンタジオネート)−チタニウム、ジ−イソプロピル−ビストリエタノールアミノ−チタネート、オクチレングリコールチタネートHV、チタニウムラクテート、アセトアセチックエステルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チ
タネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。アルミニウムカップリング剤には、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。
特にポリアミド樹脂に好ましいカップリング剤としては、上記で例示したもののうち、分子中にアミノ基を有するものである。
また、カップリング剤のほか、樹脂の酸化を防止するため、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤を添加してもよい。
ポリアミド樹脂は、分子構造中に脂肪族部分を多く含むナイロン樹脂と、アミド結合のほとんどが二つの芳香族環に直接結合しているアラミド樹脂とに大別され、ナイロン樹脂の例としては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン69、ナイロン612、ナイロン1212、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン6T等が挙げられる。一方、アラミド樹脂は、アミド基がメタ位でベンゼン環に結合したメタ系アラミド、例えばポリメタフェニレンテレフタルアミドであっても、パラ位で結合したパラ系アラミド、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミドであってもよい。
R1−CONH−R3−NHCO−R2
で表される構造を有する。
上記式中、R1およびR2は、二重結合を一つ以上有する不飽和炭化水素基を表す。R1およびR2について好ましいのは、10ないし24個の炭素原子および1ないし6個の二重結合を有する直鎖不飽和脂肪族基であり、より特に好ましくは、R1およびR2はC17H33−基を表す。
上記式中、R3は炭化水素基を表す。好ましい炭化水素基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基である。特に好ましくは、R3は−CH2CH2−基を表す。
該混練は従来技術において既知であるあらゆる方法によって行われ得るが、特に二軸押出機等の押出機を用いて有利に行われる。
また該混練では、上記の三成分を同時に混練しても、ポリアミド樹脂とビス不飽和脂肪
酸アミドとを予め混練し、それに表面処理を行った磁性粉末を混合してもよい。
平均粒径1.3μmのストロンチウムフェライトあるいはバリウムフェライト粉末をヘンシェルミキサーで攪拌しながらアミノ基を有するシランカップリング剤を添加して混合−乾燥することにより磁性粉末を得た。得られた磁性粉末にナイロン12およびエチレンビスオレイン酸アミドを添加して、さらに混合した。得られた混合粉末を二軸押出機で混練した後、切断−冷却して、ペレット状の粒状組成物であるポリアミド系プラスチック磁性材料を得た。なお、表1の試料No. (1)、(7)は比較例である。
得られたポリアミド系プラスチック磁性材料から、射出成形により幅10mm、厚さ4mm、長さ80mmの板状のプラスチック磁石を作製して評価用サンプルとし、3点曲げ試験によりプラスチック磁石の強度および柔軟性を評価した。また、得られたポリアミド系プラスチック磁性材料の射出成形において、定圧下での射出時間を計測し、流動性の尺度とした。得られたポリアミド系プラスチック磁性材料の組成および試験結果を表1に示す。
実施例1と同様にして得られた磁性粉末にナイロン12および金属石鹸としてのステアリン酸カルシウムを添加して、さらに混合した。得られた混合粉末を二軸押出機で混練した後、切断−冷却して、ペレット状の粒状組成物であるポリアミド系プラスチック磁性材料を得た。
得られたポリアミド系プラスチック磁性材料について、実施例1と同様にして、プラスチック磁石の強度および柔軟性、並びにプラスチック磁性材料の流動性を評価した。得られたポリアミド系プラスチック磁性材料の組成および試験結果を表1に示す。
実施例1と同様にして得られた磁性粉末にナイロン12、金属石鹸としてのステアリン酸カルシウム、およびプラスチック磁石に柔軟性を付与するためのポリアミドエラストマーを添加して、さらに混合した。得られた混合粉末を二軸押出機で混練した後、切断−冷却して、ペレット状の粒状組成物であるポリアミド系プラスチック磁性材料を得た。
得られたポリアミド系プラスチック磁性材料について、実施例1と同様にして、プラスチック磁石の強度および柔軟性、並びにプラスチック磁性材料の流動性を評価した。得られたポリアミド系プラスチック磁性材料の組成および試験結果を表1に示す。
実施例1と同様にして得られた磁性粉末にナイロン12、およびビス飽和脂肪酸アミド
であるエチレンビスステアリン酸アミドを添加して、さらに混合した。得られた混合粉末を二軸押出機で混練した後、切断−冷却して、ペレット状の粒状組成物であるポリアミド系プラスチック磁性材料を得た。
得られたポリアミド系プラスチック磁性材料について、実施例1と同様にして、プラスチック磁石の強度および柔軟性、並びにプラスチック磁性材料の流動性を評価した。得られたポリアミド系プラスチック磁性材料の組成および試験結果を表1に示す。
2)表面処理剤については、磁性粉末に基づく質量百分率で表記。
3)エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリン酸カルシウム、エチレンビスステアリン酸アミドについては、ナイロン12およびポリアミドエラストマーの合計に基づく質量百分率で表記。
表1から分かるように、本発明に従ってポリアミド系プラスチック磁性材料にエチレンビスオレイン酸アミドを添加すると、強度はほとんど低下せずに柔軟性および流動性が向上する。エチレンビスオレイン酸アミドの添加量が3mass%未満であると十分な流動性および柔軟性が得られない。また30mass%を超えると急激に強度低下を招くため、ポリアミドに対するエチレンビスオレイン酸アミドの添加量は3〜30mass%が好ましい。
それに対して、ステアリン酸カルシウムの添加(比較例1)は、流動性を向上するけれども、強度および柔軟性は大きく低下する。
また、ステアリン酸カルシウムと共にポリアミドエラストマーを添加すると(比較例2)、柔軟性は改良されるが、流動性は改良されない。またポリアミドエラストマーの添加量が増大すると、強度および柔軟性の低下を招く。
さらに、飽和脂肪酸ビスアミドであるエチレンステアリン酸アミドの添加(比較例3)では、流動性改良の効果が認められるけれども、柔軟性については改良されない。柔軟性を付与する効果については、分子中に−CH=CH−を有するビス不飽和脂肪酸アミドに特有である。
このようにして得られたポリアミド系プラスチック磁性材料から、図2に図示するようなインサート成形品を作製した。該インサート成形品は、直径6mmおよび長さ30mmの鉄製の芯材1を、内側に1.5mmのアルミニウム層を備え、そしてアルミニウム層2の外側に隣接して2mmのプラスチック磁石層3を備えた外径13mmおよび内径6mmのドーナツ状の成形品に挿入した構造を有する。
このインサート成形品に対して、−40℃での1時間保持と続く130℃での1時間を繰返すことからなる熱衝撃試験を行った。
また比較として、比較例において得られたポリアミド系プラスチック磁性材料からも同様のインサート成形品を作成して、熱衝撃試験を行った。
試験結果を表2に示す。
2 アルミニウム層
3 プラスチック磁石層
Claims (2)
- アルミニウム層の外周にプラスチック磁石層を配設してなるモーター用プラスチック磁石であって、
該プラスチック磁石層は、
(A)磁性粉末、
(B)ポリアミド樹脂、および
(C)該ポリアミド樹脂に基づいて3〜30mass%の次式
R1−CONH−R3−NHCO−R2
[式中、R1およびR2は二重結合を一つ以上有する不飽和炭化水素基を表し、そしてR3は炭化水素基を表す。]で表されるビス不飽和脂肪酸アミド
を混練して得られるポリアミド系プラスチック磁性材料をインサート成形することにより作製されることを特徴とするモーター用プラスチック磁石。 - 成分(C)はエチレンビスオレイン酸アミドであることを特徴とする請求項1記載のモーター用プラスチック磁石。
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