JP3742224B2 - シートベルト用リトラクター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートベルト装置のリトラクター(巻取装置)に関し、特にエネルギー吸収機構を備えたシートベルト用リトラクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両の乗員等を座席に安全に保持するためのシートベルト用リトラクターにおいては、急な加速、衝突又は減速に反応する慣性感知手段によってリトラクターを物理的にロックする緊急ロック機構を備えて乗員を効果的及び安全に拘束する緊急ロック式リトラクターが種々用いられている。
【0003】
ところが、このような緊急ロック式リトラクターにおいては、衝突によって緊急ロック機構が作動してウェビングの引き出しが阻止された際に、衝突による衝撃力が極めて大きい場合には、衝突後の時間の経過と共にウェビングに作用する張力が増大して乗員の身体に急激な減速度を生じることになり、ウェビングから乗員にかかる負荷が極めて大きくなる。
【0004】
そこで、実公昭61−11085号、特開平7−47923号及び特開平7−10310号公報等に開示されたシートベルト用リトラクターのように、ウェビングに作用する張力が予め設定した所定値以上となった際、ウェビングを所定量引き出させることにより、乗員の身体に生じる衝撃を吸収するエネルギー吸収機構を備え、乗員の身体をより確実に保護するようにしたシートベルト用リトラクターが種々提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特開平7−47923号公報等に開示されたシートベルト用リトラクターのように、捩り棒の捩れ変形によるウェビングの最大引き出し量を制限する機構がない場合には、エネルギー吸収時のウェビングの引き出し量が多すぎて、特にスペースの小さな車両では乗員がいわゆる2次衝突を引き起こす可能性が高くなるため、リトラクターの他にエアバッグ等の補助拘束装置の装備が不可欠になるという問題が生じる。
【0006】
又、上記実公昭61−11085号公報等に開示されたシートベルト用リトラクターのように、エネルギー吸収時の巻取軸の回転に伴って捩り棒上を螺進するストッパー部材の移動範囲を規制することにより、巻取軸の回転量を規制して捩り棒の破断を防止する場合には、巻取軸の回転軸方向に対する寸法増大によりリトラクターの大型化を招くという問題がある。更に、ストッパー部材や該ストッパー部材が螺合する捩り棒端部には、高精度なねじ加工が必要で、その加工コストのためにコストアップを招くという問題も生じる。
【0007】
又、上記特開平7−10310号公報等に開示されたシートベルト用リトラクターのように、巻取軸の外周部に装備した塑性変形部によりエネルギー吸収を行う構造では、エネルギー吸収時のウェビングの最大引き出し量は、前記塑性変形部の塑性変形量によって決まってしまう。そこで、ウェビングの最大引き出し量を増大させるには、前記塑性変形部の塑性変形量を大きく設定すればよいが、実際上は、取り付けスペース等の関係で巻取軸の外形寸法が制限されるため、塑性変形部の大きさも制限されるので、エネルギー吸収量やウェビングの引き出し量に対する設計の自由度が低いという問題がある。
【0008】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することにあり、エネルギー吸収時におけるウェビングの確実な引き出し量の制御を行うことができる小型で安価なシートベルト用リトラクターを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、ウェビングが巻装される略筒状の巻取軸と、前記巻取軸の中心穴を挿通して一端が前記巻取軸と相対回転不能に結合される共に他端がロッキングベースと相対回転不能に結合される捩り棒と、車両緊急時に前記ロッキングベースをリトラクターベースに係合させて前記捩り棒の回転を阻止することにより前記巻取軸のウェビング引出し方向への回転を阻止する緊急ロック手段とを備え、前記緊急ロック手段の作動時にウェビングに作用する張力が所定値を超えると前記捩り棒の捩れ変形によって乗員の身体に生じる衝撃を吸収するシートベルト用リトラクターであって、
前記ロッキングベースと前記巻取軸の対向部分の一方には、弾性部材によって他方の対向部分に向けて押圧付勢されたストッパー部材が配設されると共に、
前記対向部分の他方には、前記捩り棒の捩れ変形によってロッキングベースと巻取軸との間に生じる相対回転量が所定量に達した時に前記ストッパー部材が係合してロッキングベースと巻取軸とを相対回転不能に連結可能な被係合部が配設されていることを特徴とするシートベルト用リトラクターにより達成される。
【0010】
上記構成によれば、緊急ロック手段の作動時にウェビングに作用する張力が所定値を超えると、捩り棒の捩れ変形によりウェビングを引き出させてエネルギー吸収を行う。
エネルギー吸収時に捩り棒の捩れ変形によって生じるロッキングベースと巻取軸との間の相対回転量が所定量に達すると、対向部分の一方に配設されたストッパー部材が他方の対向部分に配設された被係合部に係合し、ロッキングベースと巻取軸とを相対回転不能に連結する。
そこで、巻取軸の回転が阻止され、ウェビングの引き出しが阻止される。
【0011】
尚、好ましくは前記緊急ロック手段が、前記リトラクターベースの側板の巻取軸貫通穴を貫通する前記ロッキングベースに取付けられると共に、前記巻取軸貫通穴に設けられた係合内歯に車両緊急時に係合することにより前記ロッキングベースのウェビング引出し方向への回転を阻止する係止部材と、該係止部材が前記係合内歯に係合した際の係合部からの所定以上の反力により偏倚するロッキングベースの外周部に形成され、前記係合内歯に噛み合い可能な係合凹部とを備える。
【0012】
上記緊急ロック手段の構成によれば、車両緊急時にロッキングベースの係止部材が係合内歯に係合されて所定以上の反力を受けると、偏倚した該ロッキングベースの外周部に形成された係合凹部も係合内歯に押し付けられて係合し、ロッキングベースは実質的に二カ所で係合内歯に係合するので、リトラクターに対するロッキングベースのロック強度を上げる事ができる。なお、前記係合凹部は、係合内歯に噛み合い可能な形状であれば良く、例えば、少なくとも一つの切り欠き部や溝部として形成することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態に係るシートベルト用リトラクターを詳細に説明する。
図1乃至図9に示した本発明の第1実施形態に係るシートベルト用リトラクター1は、外周にウェビングが巻装される略筒状の巻取軸としてのボビン3と、該ボビン3の中心穴を挿通して一端がスリーブ5を介して前記ボビン3の一端部に相対回転不能に結合される共に他端がロッキングベース7に相対回転不能に結合される捩り棒9と、車両緊急時に前記ロッキングベース7をリトラクターベース11に係合させて前記捩り棒9の回転を阻止することにより前記ボビン3のウェビング引き出し方向への回転を阻止する緊急ロック手段13と、前記捩り棒9の捩れ変形によるロッキングベース7とボビン3との相対回転量を制限する回転規制機構20とを備えている。
【0014】
前記リトラクターベース11は、その大部分がコの字状断面を有し、対向する側板11a,11bには前記ボビン3と組み合わされた捩り棒9が回動自在に橋架されている。捩り棒9の他端には、ウェビングを巻取る方向(矢印X1 )に該捩り棒9を常時付勢している公知の巻取りばね装置(図示せず)が装備される。
【0015】
前記捩り棒9の一端側にはボビン3と一体回転可能な結合を果たすボビン結合部9aを有し、他端側にはロッキングベース7と一体回転可能な結合を果たすロッキングベース結合部9bを有している。これらの各結合部9a,9bは、断面形状を六角形に成形したものである。
前記ボビン結合部9aは断面六角形状を有し、ボビン3の一端側に形成された断面六角形の嵌合凹部3bに嵌合されたリテーナ5の断面六角形の挿通穴5aに嵌挿することで、ボビン3の一端と一体回転可能に結合されている。尚、該リテーナ5は、ブッシュ15を介して側板11bに回動自在に支持されている。
【0016】
一方、前記ロッキングベース結合部9bは断面六角形状を有し、ロッキングベース7のボビン側端面7aに突設された円筒状のボス部7bの断面六角形の挿通穴7dに嵌挿することで、ロッキングベース7と一体回転可能に結合されている。又、前記ボビン3のロッキングベース側端部は、前記捩り棒9に対し相対回転可能に軸支されている。
【0017】
前記捩り棒9は、前記結合部9a,9b間に所定以上の回転トルクが作用して、これら結合部9a,9b間に形成された捩り変形部9cが捩じれ変形を起こすことにより、乗員の身体に作用する衝撃エネルギーの吸収を行なうように構成されたエネルギー吸収機構である。
【0018】
本発明において、車両緊急時に前記ロッキングベース7のウェビング引出し方向への回転を拘束する緊急ロック手段13の具体的な構成は、公知の種々のものを採用することができる。例えば、本第1実施形態の場合は、図1に示すように、ロッキングベース7の支軸16には、先端に係止歯17aを備えた係止部材としてのポール17が揺動回動可能に軸支されている。また、前記側板11aに開口された巻取軸貫通穴11cの外側には、前記係止歯17aが噛合可能な係合内歯19aを内周に備えた内歯ラチェット19が並設されている。
そこで、前記緊急ロック手段13は、車両緊急時に前記ポール17の係止歯17aを前記内歯ラチェット19の係合内歯19aに噛合させることで、ロッキングベース7のウェビング引出し方向への回転を阻止する構成となっている。
【0019】
但し、本第1実施形態に係る前記ロッキングベース7の外周部には、図2に示すように、係合凹部としての切り欠き部37が形成されており、前記ポール17が前記係合内歯19aに係合した際の係合部からの所定以上の反力により前記ロッキングベース7が偏倚すると、該切り欠き部37の角部37aが係合内歯19aに噛み合うように構成されている。
そこで、ウェビング張力が増大し、前記係合内歯19aに係合した前記ポール17の係合部からの反力が所定以上となると、前記ロッキングベース7が偏倚して切り欠き部37の角部37aも係合内歯19aに押し付けられて係合し、該ロッキングベース7は実質的に二カ所で係合内歯19aに係合することができる。
【0020】
即ち、通常使用状態においては、図3に示すように、図示しない公知のロック作動手段により前記緊急ロック手段13のポール17が内歯ラチェット19と非係合な方向に付勢されており、捩り棒9が回動中心上に位置しているロッキングベース7の切り欠き部37も内歯ラチェット19に係合することはないので、ボビン3に巻装されたウェビングの引き出しは自在である。
【0021】
しかして、衝突等の車両緊急時には、ロック作動手段が作動してポール17の係止歯17aを前記内歯ラチェット19の係合内歯19aに係合させることにより、ロッキングベース7のウェビング引出し方向への回転をロックする(図4参照)。
そして更にウェビング張力が増大し、前記係合内歯19aに係合した前記ポール17の係合部からの反力が所定以上となると、図4に示すように、前記ロッキングベース7が矢印Z方向へ偏倚し、切り欠き部37の角部37aも内歯ラチェット19の係合内歯19aに押し付けられて係合する。
【0022】
そこで、前記ロッキングベース7は、実質的に二カ所で前記係合内歯19aに係合することができ、内歯ラチェット19に対するロッキングベース7のロック強度が上がる。
従って、上記緊急ロック手段13によれば、部品点数を増加させて構造を複雑にすることなく、ロッキングベース7にポール17を2個取り付けた状態と同等のロック強度を得ることができるので、前記捩り棒9の捩り変形部9cが捩じれ変形を起こす際の大きな回転トルクを強固に支持することができ、乗員の身体に作用する衝撃エネルギーの吸収を良好に行うことができる。
【0023】
次に、対向部分である前記ロッキングベース7のボビン側端面7aと前記ボビン3のロッキングベース側端面3aとの間に設けられた本第1実施形態における回転規制機構20は、図5及び図6に示すように、ボビン3の軸線方向に沿って前記ロッキングベース側端面3aに穿設されたストッパー収容穴21と、前記ロッキングベース側端面3aから突出しないように前記ストッパー収容穴21内に収容されるストッパー部材22と、前記ストッパー収容穴21の内底部に穿設されたばね収容穴23に収容されて前記ストッパー部材22を前記ボビン側端面7aに向けて押圧付勢する弾性部材としての圧縮コイルばね24と、前記ボビン側端面7aと前記ロッキングベース側端面3aとの間に介在するシャッター部材26と、前記ボビン側端面7aに形成されて前記ストッパー部材22が係合可能な被係合部としての係合溝27とを具備した構成である。
【0024】
前記ストッパー収容穴21は、図6の(b)に示すように、周方向に沿って細長い有底の長穴であり、前記ストッパー部材22は該ストッパー収容穴21に対応した略繭状に形成されている。また、前記ばね収容穴23は、断面円形状の穴であり、前記ストッパー収容穴21の内底部中央に穿設されている。
前記シャッター部材26は、内径部26aが前記ロッキングベース7のボス部7bに嵌装されると共に、外径部が前記ロッキングベース側端面3aの凹部内に収まるように設定された円環状の平板であり、前記ボス部7bに嵌合する内径部26aには、前記ボス部7bに形成された係止溝7cに係合して、前記ロッキングベース7に対する回り止めとなる係止突起26bが形成されている。
【0025】
また、前記シャッター部材26の外周部には係合片26cが突設されており、該係合片26cが前記ロッキングベース側端面3aの凹部内周壁に突設された係合部28に係合することで、該シャッター部材26はエネルギー吸収動作時に前記ボビン3と一体的にウェビング引出し方向(矢印X2 )へ回動される。
更に、前記シャッター部材26には、前記ストッパー収容穴21に対して同心円上に位置するように、前記ストッパー収容穴21と同一断面形状の貫通穴29が形成されている。
【0026】
但し、この貫通穴29は、前記係止突起26bがロッキングベース7の係止溝7cに係合している初期状態では、図6の(b)に示すように前記ストッパー収容穴21と開口位置が完全に一致せず、エネルギー吸収動作時におけるロッキングベース7とボビン3との相対回転量が所定量(略1回転)に達した時に初めて図7の(b)に示すように前記ストッパー収容穴21と開口位置が完全に一致するように、前記ストッパー収容穴21に対して周方向に配置をずらして設定してある。
【0027】
尚、ロッキングベース7とボビン3との相対回転量が所定量に達するまでの間は、前記ストッパー部材22がシャッター部材26のボビン側面上を摺動しており、前記係止突起26bがロッキングベース7の係止溝7cに係合している該シャッター部材26はボビン3と相対回転する。
また、エネルギー吸収動作時におけるボビン3のロッキングベース7に対する相対回転量が所定量(略1回転)に達して前記ストッパー収容穴21と前記貫通穴29とが重なったときに、初めて前記ボビン3の係合部28が前記係合突起26cに当接状態となるように、前記係合突起26cの突設位置が設定されている。
【0028】
そして、前記ストッパー収容穴21と前記貫通穴29とが重なると、前記圧縮コイルばね24の付勢力により、ストッパー部材22の先端部は貫通穴29に突入する。そこで、ウェビング張力による前記ボビン3の回転トルクが、前記ストッパー部材22及び前記係合部28を介して前記シャッター部材26の貫通穴29及び係合突起26cに伝達される。
ウェビング張力によって前記ボビン3から一定以上の回転トルクがシャッター部材26に伝達されると、その回転トルクにより前記係止突起26bが剪断され、以後、シャッター部材26がボビン3と一体回転する。
【0029】
前記ロッキングベース7に形成した被係合部としての係合溝27は、前記ストッパー収容穴21に対して同心円上に形成した円弧形の溝であり、ストッパー部材22の先端が嵌入した状態で周方向に移動可能なように、十分な溝幅を有している。
また、図7と図8から明かなように、シャッター部材26がボビン3と一体回転し始めてから、さらに、ロッキングベース7とボビン3とが所定量の相対回転をするまでは、前記貫通穴29が前記係合溝27上に重ならないように、前記係合溝27の長さや位置が設定されている。
【0030】
即ち、エネルギー吸収動作の開始初期は、図6に示すように、シャッター部材26の係止突起26bとロッキングベース7の係止溝7cとが係合状態にあって、シャッター部材26はロッキングベース7に固定された状態にあり、ボビン3のみが、ロッキングベース7及びシャッター部材26に対してウェビング引き出し方向に相対回転する。この間、ストッパー部材22は、シャッター部材26により突出が押さえられた状態にある。
【0031】
そして、ボビン3の相対回転量が所定量に達すると、図7に示すように、ボビン3に形成したストッパー収容穴21の開口位置が、ロッキングベース7に固定されているシャッター部材26の貫通穴29の開口位置に重なり、シャッター部材26の板厚分だけ、ストッパー部材22がロッキングベース7側に突出する。そこで、ボビン3からシャッター部材26に伝達される回転トルクにより前記係止突起26bが剪断されると、シャッター部材26はボビン3と一体回転可能になり、ボビン3とシャッター部材26とがロッキングベース7に対して相対回転する。
【0032】
そして更に、ボビン3とシャッター部材26とがロッキングベース7に対して相対回転すると、図8に示すように、ボビン3のストッパー収容穴21とシャッター部材26の貫通穴29とが、ロッキングベース7の係合溝27に重なるため、ストッパー部材22の先端部が係合溝27内に突入した状態で、ボビン3及びシャッター部材26はロッキングベース7に対して相対回転を続けることになる。
【0033】
そして、その後の相対回転によって、図9に示すように、ストッパー部材22が係合溝27の終端27aまで到達すると、ロッキングベース7とボビン3とが相対回転不能に連結される。そこで、ボビン3のウェビング引出し方向の回転が阻止されると共に、前記捩り棒9の捩れ変形が停止され、ウェビングの引き出しが阻止される。
【0034】
以上のように、本第1実施形態のシートベルト用リトラクター1は、緊急ロック手段13の作動時にウェビングに作用する張力が所定値を超えると、捩り棒9の捩れ変形によりウェビングを引き出させてエネルギー吸収を行う構成のため、エネルギー吸収量やウェビングの引き出し量に対する設計の自由度が高く、また、ボビン3の大径化を避けることができる。
【0035】
更に、エネルギー吸収時に捩り棒9の捩れ変形によって生じるロッキングベース7とボビン3との間の相対回転量が所定量に達すると、ボビン3のロッキングベース側端面3aに配設されたストッパー部材22がロッキングベース7のボビン側端面7aに配設された係合溝27に係合し、ロッキングベース7とボビン3とを相対回転不能に連結する。そこで、ボビン3の回転が阻止され、ウェビングの引き出しが阻止される。
【0036】
即ち、上記シートベルト用リトラクター1は、従来のねじ部材を使用した構造などと比較すると、単純でコンパクトな機構でエネルギー吸収時のウェビングの最大引き出し量を制限することができる。
さらに、前述したようなシャッター部材26を合わせて採用することによって、エネルギー吸収時におけるウェビング引き出し量の調整が容易になる。即ち、前記係合突起26cの突設位置と前記貫通穴29の開口位置とが異なる複数のシャッター部材を用意するだけで、複数のウェビング引き出し量を適宜設定することができる。
【0037】
従って、ウェビングの最大引き出し量を車両内のスペース等に応じた適正値に設定することが容易で、しかも、ウェビングの最大引き出し量を制限する回転規制機構20にかかる加工コストを抑えてコスト低減を図ることができる。また、ボビン3の大径化を回避すると同時にボビン3の回転軸方向に対する寸法増大を抑え、リトラクターが大型化することなくウェビングの最大引き出し量を増やすこともできる。
【0038】
図10乃至図14に示した本発明の第2実施形態に係るシートベルト用リトラクター31は、前述の第1実施形態に係るシートベルト用リトラクター1における回転規制機構22の構成を回転規制機構32に変更した以外は同様の構成を有するので、同符号を付して詳細な説明を省略する。
前記シートベルト用リトラクター31において、前記捩り棒9の捩れ変形によるウェビングの最大引き出し量を制限する回転規制機構32は、ボビン33のロッキングベース側端部に凹設された凹部33aの内周壁面33bに半径方向に沿って形成されたストッパー収容穴41と、該ストッパー収容穴41内に収容されるストッパー部材42と、前記ストッパー収容穴41の内奥に収容されて前記ストッパー部材42をロッキングベース47のボス部47bの外周面47dに向けて押圧付勢する弾性部材としての圧縮ゴムばね44と、前記内周壁面33bと前記外周面47dとの間に介在するシャッター部材46と、前記ボス部47bに形成されて前記ストッパー部材42が係合可能な被係合部としての係合凹部48とを具備した構成である。
【0039】
前記シャッター部材46は、図11に示すように、前記ロッキングベース47のボス部47bに嵌装されると共に、前記凹部33a内に収まるように設定された円環状部材であり、前記ボス部47bに嵌合する内径部には、前記ボス部47bに形成された係止溝47cに係合して、前記ロッキングベース47に対する回り止めとなる係止突起46bが形成されている。
【0040】
また、前記シャッター部材46の外周部には係合片46cが突設されており、該係合片46cが前記ボビン33の内周壁面33bに突設された係合部50に係合することで、該シャッター部材46はエネルギー吸収動作時に前記ボビン33と一体的にウェビング引出し方向へ回動される。
更に、前記シャッター部材46には、前記ボビン33がロッキングベース47に対して所定量の相対回転をした時に前記ストッパー収容穴41と重なり、前記ストッパー部材42が突入可能な切欠き部49が形成されている。
【0041】
但し、この切欠き部49は、前記係止突起46bがロッキングベース47の係止溝47cに係合している初期状態では、図11の(a)に示すように前記ストッパー収容穴41と開口位置が一致せず、エネルギー吸収動作時におけるロッキングベース47とボビン33との相対回転量が所定量(略1回転)に達した時に初めて図12の(a)に示すように前記ストッパー収容穴41と開口位置が一致するように、前記ストッパー収容穴41に対して周方向に配置をずらして設定してある。
【0042】
尚、ロッキングベース47とボビン34との相対回転量が所定量に達するまでの間は、前記ストッパー部材42がシャッター部材46の外周面上を摺動しており、前記係止突起46bがロッキングベース47の係止溝47cに係合している該シャッター部材46はボビン33と相対回転する。
また、エネルギー吸収動作時におけるボビン33のロッキングベース47に対する相対回転量が所定量(略1回転)に達して前記ストッパー収容穴41と前記切欠き部49とが重なったときに、初めて前記ボビン33の係合部50が前記係合突起46cに当接状態となるように、前記係合突起46cの突設位置が設定されている。
【0043】
そして、前記ストッパー収容穴41と前記切欠き部49とが重なると、前記圧縮ゴムばね44の付勢力により、ストッパー部材42の先端部は切欠き部29に突入する。そこで、ウェビング張力による前記ボビン3の回転トルクが、前記ストッパー部材42及び前記係合部50を介して前記シャッター部材46の切欠き部49及び係合突起46cに伝達される。
ウェビング張力によって前記ボビン33から一定以上の回転トルクがシャッター部材46に伝達されると、その回転トルクにより前記係止突起46bが剪断され、以後、シャッター部材46がボビン33と一体回転する。
【0044】
即ち、エネルギー吸収動作の開始初期は、図11に示すように、シャッター部材46の係止突起46bとロッキングベース47の係止溝47cとが係合状態にあって、シャッター部材46はロッキングベース47に固定された状態にあり、ボビン33のみが、ロッキングベース47及びシャッター部材46に対してウェビング引き出し方向に相対回転する。この間、ストッパー部材42は、シャッター部材46により突出が押さえられた状態にある。
【0045】
そして、ボビン33の相対回転量が所定量に達すると、図12に示すように、ボビン33に形成したストッパー収容穴41の開口位置が、ロッキングベース47に固定されているシャッター部材46の切欠き部49の開口位置に対して同一半径方向に重なり、シャッター部材46の肉厚分だけ、ストッパー部材42がロッキングベース47のボス部47b側に突出する。そこで、ボビン33からシャッター部材46に伝達される回転トルクにより前記係止突起46bが剪断されると、シャッター部材46はボビン33と一体回転可能になり、ボビン33とシャッター部材46とがロッキングベース47に対して相対回転する。
【0046】
そして更に、ボビン33とシャッター部材46とがロッキングベース47に対して相対回転すると、図13に示すように、ボビン33のストッパー収容穴41とシャッター部材46の切欠き部49とが、ロッキングベース47の係合凹部48にに対して同一半径方向に重なるため、ストッパー部材42の先端部が係合凹部48内に突入した状態で、ボビン33及びシャッター部材46はロッキングベース47に対して相対回転を続けることになる。
【0047】
そして、その後の相対回転によって、図14に示すように、ストッパー部材42が係合凹部48の垂直壁48aまで到達すると、ロッキングベース47とボビン33とが相対回転不能に連結される。そこで、ボビン33のウェビング引出し方向の回転が阻止されると共に、前記捩り棒9の捩れ変形が停止され、ウェビングの引き出しが阻止される。
従って、上記シートベルト用リトラクター31は、上記第1実施形態のシートベルト用リトラクター1と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
図15乃至図22に示した本発明の第3実施形態に係るシートベルト用リトラクター51は、前述の第1実施形態に係るシートベルト用リトラクター1における回転規制機構20の構成を回転規制機構52に変更した以外は同様の構成を有するので、同符号を付して詳細な説明を省略する。
前記シートベルト用リトラクター51において、前記捩り棒9の捩れ変形によるウェビングの最大引き出し量を制限する回転規制機構52は、上記第1実施形態のシートベルト用リトラクター1の回転規制機構20におけるシャッター部材26を、第1のシャッター部材54、第2のシャッター部材55、サブプレート56及びCリング57の4枚の板部材に置き換えたような構成としたものであり、それ以外の構成は上記第1実施形態のものとほぼ同様である。
【0049】
前述の第1のシャッター部材54、第2のシャッター部材55、サブプレート56及びCリング57は、図15乃至図17に示したように、ボビン53側から順に重ねた状態で、ボビン53とロッキングベース70との間に装備されている。
これらの第1のシャッター部材54、第2のシャッター部材55、サブプレート56及びCリング57は、図18に示したように、ストッパー部材22の突入可能な切欠き部54d,55d及び貫通溝56d,57dを有している。
【0050】
ここで、第1のシャッター部材54及び第2のシャッター部材55は、第1実施形態におけるシャッター部材26と同様に、前記ロッキングベース70に対するボビン53の相対回転量が所定量に達するまで、前記ストッパー部材22のロッキングベース70側への突出を押さえるもので、初期状態では、ボビン53のロッキングベース側端面53aに穿設されたストッパー収容穴61に対して周方向に配置をずらして設定してある。
【0051】
また、第1のシャッター部材54及び第2のシャッター部材55に装備された切欠き部54d,55dは、図18の(a),(b)に示すように、いずれも円環状の板材の周縁に切り欠き形成されている。
そして、第1のシャッター部材54の切欠き部54dは、図19の(b)に示すように、嵌入したストッパー部材22がボビン周方向に移動する余裕のない大きさの切欠き、即ち、ストッパー部材22の外形寸法にほぼ等しい大きさの切欠きである。一方、第2のシャッター部材55の切欠き部55dは、図20の(c)に示すように、嵌入したストッパー部材22がボビン周方向に移動する余裕を持った少し長尺の切欠きである。尚、第1のシャッター部材54の切欠き部は必ずしもストッパー部材22と同じ位の大きさとする必要はなく、第2のシャッター部材55の切欠き部も必ず長尺の切欠きとする必要はない。又、第1実施形態のシャッター部材26の様なプレートを複数枚使うことも考えられる。
【0052】
また、それぞれのシャッター部材54,55の内周部には、第1実施形態におけるシャッター部材26と同様に、ロッキングベース70のボス部70bの係止溝70cに係合して回り止めとして機能する係止突起54b,55bが突設されている。これらの係止突起54b,55bは、第1実施形態の場合と同様に、一定以上の回転トルクが作用すると、剪断して回り止めとしての機能を失う。
【0053】
また、図19の(b)に示すように、第1のシャッター部材54の外周部には、捩り棒9の捩れ変形によってボビン53のロッキングベース70に対する相対回転量が所定量に達した時に、前記ロッキングベース側端面53aの凹部内周壁に突設された係合部58に係合してボビン53からの回転トルクを受ける係合片54cが突設されている。
【0054】
前記サブプレート56及び前記Cリング57は、ボビン53のストッパー収容穴61内に収容されていたストッパー部材22が、ロッキングベース70に対するボビン53の相対回転により第2のシャッター部材55の切欠き部55dを挿通可能になった時に、ストッパー部材22の更なるロッキングベース70側への移動を許容して、前記ボビン53本体の代わりにストッパー部材22を収容保持するものである。これらサブプレート56及びCリング57は、前記ボビン53のロッキングベース側端に固定されている。
【0055】
これらのサブプレート56及びCリング57に装備された貫通溝56d,57dは、ストッパー部材22が周方向に移動する余裕を十分に与える長溝であり、これにより、後述するように、第2のシャッター部材55を貫通してロッキングベース70の被係合部としての係合溝62に突入したストッパー部材22が係合溝62の終端62aに当接して回転を阻止するまでのボビン53の回転量は、前記Cリング57における貫通溝57d内でのストッパー部材22の移動距離分だけ増大されることになる。
【0056】
次に、本第3実施形態における回転規制機構52の動作を説明する。
緊急ロック手段13の作動時にウェビングに作用する張力が設定値を超えると、捩り棒9の捩れ変形により前記ボビン53のウェビング引き出し方向への回転を許容する。
そして、捩り棒9の捩れ変形によるエネルギー吸収動作の開始初期は、図15に示すように、第1のシャッター部材54及び第2のシャッター部材55の係止突起54b,55bは、いずれもロッキングベース70の係止溝70cに係合状態にあって、いずれのシャッター部材54,55もロッキングベース70に固定された初期状態にある。そして、初期状態では、ボビン53のみが、ロッキングベース70に対してウェビング引き出し方向に相対回転する。この間は、ストッパー部材22は、第1のシャッター部材54により突出が押さえられた状態にある。
【0057】
そして、ボビン53の相対回転量が初期位置から所定量(本実施形態においては320゜)に達すると、図19(c)に示すように、ボビン53に形成したストッパー収容穴61の開口位置が、ロッキングベース70に固定されている第1のシャッター部材54の切欠き部54dの開口位置に重なり、第1のシャッター部材54の板厚分だけ、ストッパー部材22がロッキングベース70側に突出する。そして、ボビン53から係合部58及び係合片54cを介して第1のシャッター部材54に伝達される回転トルクにより前記係止突起54bが破砕されると、第1のシャッター部材54はボビン53と一体回転可能になり、ボビン53と第1のシャッター部材54とがロッキングベース70に対して相対回転する。この状態では、ストッパー部材22のロッキングベース70側への突出は、第2のシャッター部材55によって押さえられている。
【0058】
そして、ボビン53と第1のシャッター部材54とが、ロッキングベース70に対して更に230゜相対回転すると、図20の(b)に示すように、ボビン53に形成したストッパー収容穴61の位置が、ロッキングベース70に固定されている第2のシャッター部材55の切欠き部55dの開口位置に重なり、ストッパー部材22が更にロッキングベース70側に突出する。
【0059】
そして、この状態では、図20の(c)に示すように、サブプレート56及びCリング57の貫通溝56d,57dの領域内にストッパー部材22の位置が重なっているため、ストッパー部材22はボビン53内に装備されている圧縮コイルばね24の付勢力により前記貫通溝56d,57d内に移行し、図20の(a)に示すように、ストッパー部材22は、基端側がCリング57の貫通溝57dに収容されると共に、先端側がロッキングベース70の係合溝62に突入した状態になる。
【0060】
前記サブプレート56及びCリング57はボビン53と共に回転可能で、ロッキングベース70に対して更にボビン53が195゜相対回転すると、図21に示すように、ストッパー部材22はロッキングベース70の係合溝62への突入位置に取り残されて、相対的に前記Cリング57の貫通溝57d内を移動した状態となり、Cリング57の貫通溝57dの終端壁57eに当接した状態になる。この状態になると、ボビン53の回転力がCリング57を介してストッパー部材22に伝達される。
【0061】
そして、ロッキングベース70に対してボビン53が279゜更に相対回転すると、図22に示すように、Cリング57の貫通溝57dの終端壁57eによりストッパー部材22がロッキングベース70の係合溝62内を移動して係合溝62の終端62aに到達し、これら2つの貫通溝57dと係合溝62の終端間に挾持された状態になると、前記ボビン53の前記ロッキングベース70に対する相対回転が阻止され、前記捩り棒9の捩れ変形も阻止されるため、ウェビング引き出し方向へのボビン53の回転も止まる。
【0062】
このように、ロッキングベース70に対するボビン53の相対回転量に応じてストッパー部材22をロッキングベース70側に順次移動可能とする切欠き部54d,55dを備えたシャッター部材54,55を設けたり、ボビン53からストッパー部材22の保持を受け継ぐCリング47を適宜装備することで、捩り棒9の捩れ変形によるウェビングの最大引き出し量を簡単に所望の値に設定することができ、例えば構造が単純で安価に製作できるシャッター部材を変更するだけで、エネルギー吸収量やウェビング引き出し量等の仕様変更に対応できる汎用性の高いシートベルト用リトラクターを提供することができる。
【0063】
なお、上記各実施形態では、回転規制機構として、ウェビングの最大引き出し量を制限するためのストッパー部材をボビン側に配設し、該ストッパー部材が係合する被係合部をロッキングベース側に配設したが、逆に、ロッキングベース側に前記ストッパー部材を配設すると共に該ストッパー部材の係合する被係合部をボビン側に配設する構成とすることもできる。
【0064】
また、上記各実施形態においては、回転規制機構として、ロッキングベースに対するボビンの相対回転量が所定量に達するまではストッパー部材の突出を抑止するシャッター部材を装備した構成としたが、エネルギー吸収量やウェビングの引き出し量が小さくて済む場合は、シャッター部材を省略して、ロッキングベースに対するボビンの相対回転量が所定量に達すると、ストッパー部材が直接に被係合部に突入する構成としてもよい。
【0065】
又、上記各実施形態における緊急ロック手段13においては、ロッキングベース7の支軸16に軸支されたポール17をリトラクターベース11の側板11aに併設された内歯ラチェット19の係合内歯19aに係合させることで、ロッキングベース7のウェビング引出し方向への回転を阻止すると共に、前記ポール17が前記係合内歯19aに係合した際の係合部からの所定以上の反力により前記ロッキングベース7が偏倚すると、該ロッキングベース7の外周部に形成された切り欠き部37が係合内歯19aに係合するように構成されているが、緊急ロック手段の構成はこれに限定されるものではなく、種々の形態を採りうることは言うまでもない。
【0066】
図23に示したシートベルト用リトラクターにおいて、リトラクターベース81はその大部分がコの字状断面を有しており、対向する側板81a,81bには対向してそれぞれ巻取軸貫通穴が設けられ、ボビン83がこれら巻取軸貫通穴を挿通した状態で回動自在に軸架されている。
前記側板81aに設けられた巻取軸貫通穴の内周縁には、係合内歯82が直接形成されている。そして、前記側板81aの巻取軸貫通穴を貫通するボビン83の端部には、車両緊急時に前記ボビン83をリトラクターベース81に係合させてウェビング引き出し方向への回転を阻止する緊急ロック手段が配置され、ボビン83の側板81b側の端部には、公知の巻取りばね装置85が配置されており、ボビン83はウェビングを巻取る方向に常時付勢されている。
【0067】
前記ボビン83は、アルミニウム合金等で一体成形された略円筒形の巻取軸であり、ウェビングが巻回される胴部84には、ウェビング端部を挿通させて保持するため直径方向に貫通するスリット開口84aが設けられている。また、ボビン83の外周面には別体で形成されたフランジ部材86が装着され、ウェビングの巻乱れを防止する。
【0068】
前記側板81aの巻取軸貫通穴を貫通するボビン83のセンサー側端面には、側板81aに構成された係合内歯82に係合可能な係止部材であるポール87を揺動回動可能に軸支する支軸88が突設されている。
そこで、前記緊急ロック手段は、車両緊急時に前記ポール87の係止歯87aを前記係合内歯82に噛合させることで、ボビン83のウェビング引出し方向への回転を阻止する構成となっている。
【0069】
また、該ボビン83のセンサー側外周部には、係合凹部としての溝90が形成されており、前記ポール87が前記係合内歯82に係合した際の係合部からの所定以上の反力により前記ボビン83が偏倚すると、回動軸線方向に延びる溝90の角部90aが係合内歯82に噛み合うように構成されている。尚、溝90は一本だけに限らず、回動軸線に平行な複数本の溝を周方向に沿って設けても良い。そこで、ウェビング張力が増大し、前記係合内歯82に係合した前記ポール87の係合部からの反力が所定以上となると、前記ボビン83が偏倚して溝90の角部90aも係合内歯82に押し付けられて係合し、該ボビン83は実質的に二カ所で係合内歯83に係合することができる。
【0070】
即ち、通常使用状態においては、図示しない公知のロック作動手段により前記緊急ロック手段のポール87が係合内歯82と非係合な方向に付勢されており、回動中心上に位置しているボビン83の溝90も係合内歯82に係合することはないので、ボビン83に巻装されたウェビングの引き出しは自在である。
【0071】
しかして、衝突等の車両緊急時には、ロック作動手段が作動してポール87の係止歯87aを前記係合内歯82に係合させることにより、ボビン83のウェビング引出し方向への回転をロックする。
そして更にウェビング張力が増大し、前記係合内歯82に係合した前記ポール87の係合部からの反力が所定以上となると、前記ボビン83が偏倚し、溝90の角部90aも係合内歯82に押し付けられて係合する。
【0072】
従って、前記ボビン83は、実質的に二カ所で前記係合内歯82に係合することができ、係合内歯82に対するボビン83のロック強度が上がる。即ち、上記緊急ロック手段によれば、部品点数を増加させて構造を複雑にすることなく、ボビン83にポール87を2個取り付けた状態と同等のロック強度を得ることができる。
【0073】
【発明の効果】
本発明のシートベルト用リトラクターによれば、緊急ロック手段の作動時にウェビングに作用する張力が所定値を超えると、捩り棒の捩れ変形によりウェビングを引き出させてエネルギー吸収を行うことができる。
そして、エネルギー吸収時に捩り棒の捩れ変形によって生じるロッキングベースと巻取軸との間の相対回転量が所定量に達すると、対向部分の一方に配設されたストッパー部材が他方の対向部分に配設された被係合部に係合し、ロッキングベースと巻取軸とを相対回転不能に連結するので、巻取軸の回転が阻止され、ウェビングの引き出しが阻止される。
従って、単純でコンパクトな機構でエネルギー吸収時のウェビングの最大引き出し量を制限することができる。又、ウェビングの最大引き出し量を車両内のスペース等に応じた適正値に設定することが容易で、しかも、ウェビングの最大引き出し量を制限する回転規制機構にかかる加工コストを抑えてコスト低減を図ることができる。更に、ボビンの大径化を回避すると同時にボビンの回転軸方向に対する寸法増大を抑え、リトラクターが大型化することなくウェビングの最大引き出し量を増やすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシートベルト用リトラクターの要部分解斜視図である。
【図2】図1に示したシートベルト用リトラクターにおけるロッキングベースの背面側の構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示したシートベルト用リトラクターにおける緊急ロック手段の非作動状態を示す要部拡大図である。
【図4】図3に示した緊急ロック手段の作動状態を示す要部拡大図である。
【図5】図1に示したシートベルト用リトラクターにおけるボビンの組立状態における縦断面図である。
【図6】(a)は図1に示したシートベルト用リトラクターのエネルギー吸収動作開始時の状態を説明する為の要部断面図、(b)は(a)のA−A断面矢視図である。
【図7】(a)は図1に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為の要部断面図、(b)は(a)のB−B断面矢視図である。
【図8】(a)は図1に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為の要部断面図、(b)は(a)のC−C断面矢視図である。
【図9】図1に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為のボビン端部正面図である。
【図10】本発明の第2実施形態にに係るシートベルト用リトラクターおけるボビンの組立状態における縦断面図である。
【図11】(a)は図10に示したシートベルト用リトラクターのエネルギー吸収動作開始時の状態を説明する為の要部断面図、(b)は(a)のD−D断面矢視図である。
【図12】(a)は図10に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為の要部断面図、(b)は(a)のE−E断面矢視図である。
【図13】(a)は図10に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為の要部断面図、(b)は(a)のF−F断面矢視図である。
【図14】図10に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為のボビン端部正面図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係るシートベルト用リトラクターの要部縦断面図である。
【図16】図15のG−G断面矢視図である。
【図17】図15のH−H断面矢視図である。
【図18】図15に示した第1及び第2のシャッター部材、サブプレート及びCリングの正面図である。
【図19】(a)は図15に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為の要部断面図、(b)は(a)のI−I断面矢視図であり、(c)は(a)のJ−J断面矢視図である。
【図20】(a)は図15に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為の要部断面図、(b)は(a)のK−K断面矢視図であり、(c)は(a)のL−L断面矢視図である。
【図21】(a)は図15に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為の要部断面図、(b)は(a)のM−M断面矢視図であり、(c)は(a)のN−N断面矢視図である。
【図22】図15に示したシートベルト用リトラクターにおけるエネルギー吸収動作の経過を説明する為のボビン端部正面図である。
【図23】シートベルト用リトラクターにおける緊急ロック手段の変形例を示す要部分解斜視図である。
【符号の説明】
1 シートベルト用リトラクター
3 ボビン
7 ロッキングベース
9 捩り棒
11 リトラクターベース
13 緊急ロック手段
20 回転規制機構
22 ストッパー部材
24 圧縮コイルばね
26 シャッター部材
27 係合溝
Claims (1)
- ウェビングが巻装される略筒状の巻取軸と、前記巻取軸の中心穴を挿通して一端が前記巻取軸と相対回転不能に結合される共に他端がロッキングベースと相対回転不能に結合される捩り棒と、車両緊急時に前記ロッキングベースをリトラクターベースに係合させて前記捩り棒の回転を阻止することにより前記巻取軸のウェビング引出し方向への回転を阻止する緊急ロック手段とを備え、前記緊急ロック手段の作動時にウェビングに作用する張力が所定値を超えると前記捩り棒の捩れ変形によって乗員の身体に生じる衝撃を吸収するシートベルト用リトラクターであって、
前記ロッキングベースと前記巻取軸の対向部分の一方には、弾性部材によって他方の対向部分に向けて押圧付勢されたストッパー部材が配設されると共に、
前記対向部分の他方には、前記捩り棒の捩れ変形によってロッキングベースと巻取軸との間に生じる相対回転量が所定量に達した時に前記ストッパー部材が係合してロッキングベースと巻取軸とを相対回転不能に連結可能な被係合部が配設されていることを特徴とするシートベルト用リトラクター。
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