JP3742097B1 - 廃プラスチックなどの有機物を含む廃棄物の処理方法及び廃棄物リサイクルシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 廃棄物を水熱反応により処理する際に、混入している紙、木、金属、ガラス、陶磁器などの固形物と共に撹拌することによりプラスチック類の溶着を防止しながら処理して細粒状〜粉末状に変質させて混入物との分離を容易な形態とし、反応後減圧排気して水蒸気と共に含有水分を放出して乾燥させ、また、排出した水蒸気を水中にブローして凝縮させることにより、上記反応により廃棄物から遊離して水蒸気に伴って排出された塩分、重金属類を水中に捕捉して廃棄物より分離する。
上記プラスチックを含む有機物から生成した細粒状〜粉末状物質は油化原料に好適である。
【選択図】 なし
Description
これらの廃棄物の再資源化を図るためには、収集・回収の段階で再資源化原料に適した種類、形態に分別する必要があり、このため、産業廃棄物、一般廃棄物、或いはこれらを更に分別して可燃物や不燃物などの種別に分別収集されている。
しかしながら、これらの廃棄物は鉱石などの従来のいわゆる工業資源とは異なり、出所由来が種々様々であって、一般家庭や商店・企業などから排出される廃棄物はその形態/組成共に多種多様なものがある。
従来は、これらの個々の物質・材料別の選別処理の困難性から、これらの廃棄物から、比較的容易に選別分離できる有価物、例えば磁力により比較的サイズの大きな鉄屑類を分離したり、手選別によりプラスチック類などを分離して回収した後は、破砕していわゆる不燃物残渣として、可燃性のものを多く含むものは焼却して熱エネルギーを回収すると共に焼却灰として減容して埋め立てることが行なわれている。
しかしながら、熱エネルギーの形で回収され、また埋立て地の制約の多い実情に対して焼却灰の形態とすることによって減容が図れる利点があるが、なお、これら不燃物残渣に含まれる種々の物質の再資源化を図ることはできなかった。
たとえば、一般的に不燃物のカテゴリーとして収集される廃棄物は、地域自治体によって対象とされる内容は異なるが、多くはプラスチック類、紙片、木片などの有機物、各種金属類、及びガラス、陶磁器類からなり、ある分析例に拠れば、これらから有価物を回収した後の不燃物残渣の組成は、ガラス、陶磁器類:50%、廃プラスチック、紙片類などの有機物:40%、鉄、非鉄金属類:10%であった。
これらの不燃物として定義される具体的な例を挙げると次のようなものが含まれる。
スプレー缶、カセットボンベなど
化粧品のビン、ガラス製の食器など
なべ、やかん、フライパン、金属製の食器など
瀬戸物、陶器、植木鉢など
蛍光灯、電球、乾電池など
炊飯器、ドライヤーなどの小型電気製品
傘の骨、鏡、ハンガーなど
本出願人は、先に廃ガラス材を破砕して細粒化することにより、自然砂に代わる土木、建築用資材として有用な特性を確認し、その利用と資源化を提唱しているが、これらの不燃物残渣について上記のような再資源化して利用可能なガラス質を多く含むこと、また、廃プラスチック等の有機物は油化原料として利用できれば、焼却して熱エネルギーとして回収するよりも付加価値が高く、効果的な再資源化が図れることに着目した。
ちなみに、現在日本国内で一年間に排出される一般廃棄物の総量は凡そ52,000,000トン、そのうちこれまで再資源化の対象とならなかった不燃残渣物は10,000,000トンに達し、総処理費用は凡そ2兆4千億円に上るとされている。
このことからも、これらの可燃性のものを単に燃焼処理すればそのCO2発生量は膨大なものとなり、また実現されなかった有用な資源量としても極めて大きな損失となることが伺える。
しかしながら、従来の手法により採算可能な範囲で有価物を選別回収した後の、これらのいわゆる不燃物残渣は、上記したような各種の材料・物質が種々の形態で密に混合した状態にあるため、従来の選別分離手法を適用しても、完全にこれらを分離して再生原料としての材料別の品位を十分なものとすることができず、完全なリサイクルシステムとして構築することが困難であった。
このような想定されるリサイクルシステムの例を示すと、図1のようになる。
処理対象となる不燃物残渣は、予めある程度破砕されているが、後の分離工程の条件を整えるために、脱水し、熱風などにより殺菌、乾燥して余分な水分を除去し、次いで静電気や風力などにより軽い廃プラスチック、紙片、木屑類を分離してそれぞれリサイクル原料とするが、なおこの工程ではサイズの大きな廃プラスチックなどの有機物や中身の残留したままのビン類、ラベルが付着したり、或いはこれらが結合した形態のもの、物質は異なるが近比重のものはこれらの機械処理では分離できないので手作業で識別して分離する必要がある。
さらに、鉄、非鉄金属類は磁気選別などの選別法により分離され、更に個別の金属の種類ごとに分けられて原材料にリサイクルされる。
これらの分離工程後、50%近く残る残留廃棄物であるガラス・陶磁器類は、様々な色の着色ガラスが混在し、或は比重の近似する陶磁器類が混在するなど、従来の技術では更なる選別ができないため、ガラスとしてのリサイクルもできずに埋め立て処分するのみであった。これに対して本出願人は、先に陶磁器類を含む廃ガラス類を破砕した造粒砂が砂に代わる土木用資材として有用であることを明らかにしてそれらの用途を開拓しているが、これらの不燃物残渣を対象とする場合、最終選別工程に到るまで、なお若干の廃プラスチックや木屑などの有機系材料の混入が避けられず、これらの用途向けの特性を確保するためには振動篩などの各種の選別工程を繰り返し行わなければならない。
さらに、上記したように金属類、重金属類の混入に対してもそれに適した分離、若しくは浄化処理を行わなければ十分な品質を確保できず、それぞれのリサイクル用途に用いることができない。
また、これらの不燃物残渣は、破砕処理後ストックヤードに置かれるなどして通常かなりの水分を含有し、いわゆる湿った状態にあるためその後の分離工程に適した乾燥状態とする必要があり、衛生管理上の必要もあって加熱乾燥するが、上記の熱風乾燥法は連続的に熱した空気によって水分を除去するため、加熱空気自体が運び去る熱量が大きく、連続的に送風する間に消費するエネルギー消費量は非常に大きく、処理コスト上大きな比率を占めている。
また、これらの各組成物質ごとの分離は、確実且つ効率的に行なわれなければならないが、これらに含まれる物質の材質、形態は種々雑多であり、しかもなお、想定された範囲外の物質、材質が含まれることがあるため、従来の資源利用に合せて開発された分離手法は必ずしも効果的に機能しない。
例えば、上記の廃プラスチック類についても、他の金属類などと組み合わされたものや絡み合った状態にあるもの、或はサイズや形状によっては、静電気や空気流、比重選別などによる分離が十分にできない。そこで上記のように手選別作業が付加されるが、作業効率、安全、コスト上から好ましくない。
また、これらの選別された分別物に混入したり、付着した異物質があると原材料としてのリサイクルに支障があり、価値も低下する。このため、図示したように最終的な分離までに繰り返しこれらの選別工程を付加する必要があり、処理コスト低減を困難としている
さらに、上記の所謂「不燃物」ごみについても、定義上明確でないものや、その他に区別すべき分類がないものなどが依然として多く存在し、各家庭や企業などで発生した廃棄物のうち、他に行き所の無いものは全て混入し得る。
こののような事情から混入する可能性があり、処理工程の上から考慮しなければならない物質として、塩素を含む廃プラスチックなどのほか、水銀やカドミウムなどの重金属類を含む乾電池類、破損した蛍光管、或いは被覆電線、電気器具部品としてのボードや携帯電話などの小型電気製品などがあり、その他、ガラスやセラミックを樹脂で充填して固めたタイルやボード類などがあり、これらの分離回収や無害化は機械的な分離工程では困難である。
加熱乾燥工程はその後の処理条件を整える上で欠かせないが、熱風乾燥などで消費される熱エネルギー消費量は非常に多く、処理コストの多くを占めるため、その低減が必要である。
重金属類は、水銀、カドミウムなど熱風乾燥時の温度でも気化飛散するものやそのまま残留して影響のある有害元素があり、その他にも塩素分や殺虫剤や農薬由来の有害な物質などが混入して、その後の処理工程で個別の分離が困難であり、これらの処理工程の可能な限り前の段階で分離し、無害化することが望まれる。
廃プラスチック類などの有機物を、効果的に効率よく分離する手段が必要である。特に絡み合ったり、部品などとして組み合わされたもの、或はサイズや形状によっては従来の破砕と機械的分離方法を適用するのみでは容易に分離できないので、これらに対する分離方法を確立しなければならない。
また、廃プラスチック類を含まない場合でも、紙片や木片などの有機系廃棄物は、柔軟であると共に比重が小さく、かさばる形態であるため、機械的分離法によって効果的に分離することが困難であって、様々なサイズの紙片や木片が最終分離工程においても残存しやすく、分離処理における効率向上を困難としている。
すなわち、これらのプラスチックと紙、木屑類を選別の上流工程に当たる段階で完全に選別分離することが上記した再生原料としての選別の効率化と品質向上、ひいてはこれらの廃棄物の組成成分のトータルな利用上、基本的な要件ということができる。
これらのいわゆる上流工程の分離が効率よく、完全に行なうことができれば、その後の金属類やガラス・陶磁器類などの無機物間の選別、分離は比較的容易であって、選別された各材料別の品質を向上することが可能である。また、これらの有機物の分離後のリサイクル原料としての用途、有用性を確保することがリサイクルシステムを構築する上で欠かすことができない。
以上の問題は、いわゆる不燃物残渣について最も典型的な課題を有するものとして述べたが、通常のいわゆる不燃廃棄物や粗大ごみなどの一般廃棄物、建築廃材、自動車シュレッダーダスト、包装済み食品類やそれらの残渣、或は浚渫汚泥や汚染土壌などにも共通するのであって、それが達成できれば、これら廃棄物における各組成物への分離や無害化などの手法は、その多くがそれぞれに適した形態において応用することが可能である。
また、より反応条件の緩やかなものとして、温度200℃、圧力2MPa(20気圧)近傍で処理する水熱反応で活性汚泥などの有機物を処理する方法も検討されているが、この温度条件下でプラスチック類を処理すると、速やかに溶融状態となるため相互に融着して塊状となり、あるいは反応チャンバー壁面に融着して処理不能となる。また、上記同様に各種の混合物である廃棄物に適用し、トータルな再資源化をなし得るものではない。
さらに、対象とする廃棄物として、不燃物残渣のみならず、プラスチック類や有機物を多く含む、いわゆる自動車シュレッダーダストや建築廃棄物、包装済み食品及びそれらの残渣、有害な重金属類を含有することが懸念される各種不燃物や汚染土壌、或は塩分を多く含む浚渫汚泥などを同様にして浄化可能な処理方法を提供する。
温度150℃〜250℃、圧力1.5MPa〜2.5MPa(15kgf/cm2〜25kgf/cm2)の領域で進行する水熱反応により処理することにより、
プラスチックに対しては、上記固形物の撹拌により融着を防止しつつ、
これらの有機物を改質して細粒状若しくは粉末状に変化させて、これら廃棄物中の有機物を分離の容易な形態とすることを特徴とする廃棄物の処理方法、である。この方法により、プラスチックを含む有機物の分離効率を向上することができる。
これらの改質された有機物の効率的な分離手段として振動篩、風力選別法などを採用することにより分離効率を向上することができる。
同様に上記廃棄物が、紙片、木片類及び/又はプラスチックなどの有機物と金属、ガラス、陶磁器類などの無機物を含む廃棄物であって、これらを撹拌しつつ、
温度150℃〜250℃、圧力1.5MPa〜2.5MPa(15kgf/cm2〜25kgf/cm2)の領域で進行する水熱反応により処理することにより、
プラスチックに対しては、上記固形物の撹拌により融着を防止しつつ、
これらの有機物を改質して細粒状若しくは粉末状に変化させることができる。
上記廃棄物が、紙片、木片類及び/又はプラスチックなどの有機物と金属、ガラス、陶磁器類などの無機物を含む廃棄物を撹拌しつつ、
温度150℃〜250℃、圧力1.5MPa〜2.5MPa(15kgf/cm2〜25kgf/cm2)の領域で進行する水熱反応により処理することにより、
プラスチックに対しては、上記固形物の撹拌により融着を防止しつつ、
これらの有機物を改質して細粒状若しくは粉末状に変化させることができる。
反応後水蒸気と共に系外に排出して分離することを特徴とする廃棄物の浄化方法であり、
同様に紙片、木片類及び/又はプラスチックなどの有機物と金属、ガラス、陶磁器類などの無機物を含む廃棄物を撹拌しつつ、
温度150℃〜250℃、圧力1.5MPa〜2.5MPa(15kgf/cm2〜25kgf/cm2)の領域で進行する水熱反応により処理することにより、
プラスチックに対しては、上記固形物の撹拌により融着を防止しつつ、
これらの有機物を改質して細粒状若しくは粉末状に変化させることができる。
また、本発明は、紙片、木片類及び/又はプラスチックなどの有機物と金属、ガラス、陶磁器類などの無機物を含む廃棄物を撹拌しつつ、
温度150℃〜250℃、圧力1.5MPa〜2.5MPa(15kgf/cm2〜25kgf/cm2)の領域で進行する水熱反応により処理することにより、
プラスチックに対しては、上記固形物の撹拌により融着を防止しつつ、
これらの有機物を改質して細粒状若しくは粉末状に変化させてなる生成物であることを特徴とする、炭化水素系油化原料又は固形燃料である。
温度150℃〜250℃、圧力1.5MPa〜2.5MPa(15kgf/cm2〜25kgf/cm2)の領域で進行する水熱反応により処理することにより、
プラスチックに対しては、上記固形物の撹拌により融着を防止しつつ、
これらの有機物を改質して細粒状若しくは粉末状に変化させて、これら廃棄物中のプラスチックを含む有機物を分離の容易な形態として分離し、
反応後、水蒸気を排出して減圧する過程に伴って水分を排出させることにより乾燥せしめると共に水蒸気中に移行した溶出金属類、塩分、水溶性物質、酸・アルカリ類を水蒸気と共に系外に排出して分離し、
乾燥状態となった廃棄物から、改質された上記有機物を分離し、
次いで、金属類、及びガラス、陶磁器類などに分離して回収することを特徴とする、
廃棄物処理システムであり、
上記分離された改質された有機物を加熱処理して炭化水素系油を分離回収し、更に、
上記炭化水素系油の回収残渣より炭化物を回収する廃棄物処理システムである。
廃棄物中のこれら紙片、木片、金属、ガラス、陶磁器類などの固形物の介在する条件下で撹拌してプラスチック類の融着を防止しつつ、水の臨界温度以下、臨界圧力以下の温度、圧力領域で進行する水熱反応によって処理することにより、
プラスチック類を含む有機物を改質して細粒状若しくは粉末状に変化させて、これら廃棄物中のプラスチックを含む有機物を分離の容易な形態にし、
反応後、水蒸気を排出して減圧する過程に伴って水分を排出させることにより乾燥せしめると共に水蒸気中に移行した溶出金属類、塩分を水蒸気と共に系外に排出して分離し、
乾燥状態となった廃棄物から、改質された有機物を炭化水素系油化原料又は燃料として回収し、
次いで、金属類、ガラス、陶磁器類に分離してそれぞれの金属種別に回収し、
ガラス、陶磁器類は土木用資材として回収することを特徴とする、
廃棄物リサイクルシステムであり、さらに、上記回収された油化原料からナフサを主とする炭化水素油を回収し、その残渣を固形燃料として回収することを特徴とする、廃棄物リサイクルシステム、である。
また、この過程で分離された廃プラスチックなどの有機物は、これらの有機物分子構造を残しているため、その後の炭化水素系の油化原料として好適であり、高い収率で回収可能であり、又はそのまま固形燃料として利用することができる。
本発明の処理対象とする廃棄物は、これら水熱反応後の分離工程によって、改質された有機物と金属類及びガラス、陶磁器類との分離には格別の工夫を必要とせずに効率的に分離することが可能であり、且つ分離精度が極めて高くできるために、その後の再生原料としての処理が容易であり、且つ分離して得た再生原料としての付加価値を高めることができる。
特に、金属及びガラス類に付着したもの、被覆材として用いられもの、印刷塗料などとして残存しがちなプラスチック類も上記の反応により完全に除去されるため、これらの再生原料としての品質は極めて高いものとなる。
この水熱反応に必要な水蒸気を加熱する熱量は、所定温度/圧力の水蒸気を処理装置内の廃棄物が反応条件に達するまで供給した後、供給を停止した状態で反応が進行するので、熱風乾燥によって連続的に持ち去られる熱量と比べてはるかに損失が少なく、大幅に熱エネルギーコストの低減が可能となった。
この水熱反応は、これら廃棄物中の有機物の分離やその油化原料、固形燃料などとしての利用を図るのみでなく、その反応過程によって、廃棄物にイオンや錯塩或は錯体などの形態で含有され、或は水熱反応過程でこれらの形態となった水銀、カドミウム、砒素、鉛などの溶出金属類及び塩分や殺虫剤や農薬由来の有害物資などをその含有する廃棄物から遊離させ、水蒸気と共に系外に排出することができる。
このため、廃棄物の浄化・無害化と共に分離されたこれらの有害成分を外部環境に排出することなくその後の処理を容易に行なうことができる。このことは、廃棄物の種類を問わず、いわゆる一般廃棄物や産業廃棄物のみでなく、浚渫汚泥や汚染土壌などの浄化、脱塩に適用できる。
これに対し、廃棄物中には前記のとおり相当量のガラス、陶磁器類、金属類、及び紙片や木片などの固形物が含まれていることにより、これらを反応過程で利用することにより、融着現象を阻止することができる。
すなわち、反応装置に投入されたこれらの廃棄物中に所定温度の水蒸気を送り込み、内容物を撹拌しつつ反応させることにより、廃プラスチック類は溶融してもこれらの固形物の介在により、相互の、或いは壁面に対する融着が阻止され、かつ、これらの介在物に接して新たな反応面を露出し、十分な反応面積を保持された状態で水熱反応条件が維持されるため、反応は速やかに進行し、極く短時間で上記したような細粒状若しくは粉末状になる。
これら生成物の細粒状〜粉末状などの形態や粒度などは、混入する上記の固形物の形状や比率、反応温度、圧力や撹拌条件などにより異なるが、金属類、ガラス、陶磁器などの他の成分との機械的分離を行なうに適した形態とするには、これらの廃棄物の一般的な混合比率で十分である。
さらに上記の反応において、プラスチックなどの有機物が上記のような形態に変化するプロセスは、これら固形物が介在して撹拌されることによって、これらに接した溶融プラスチック類が分断、細分される過程と共に上記の水熱反応が作用することによるが、これらの固形物は溶着を防止する単なる撹拌のための介在物としてでなく、溶融したプラスチック類を細分化して反応条件を積極的に整え、またその結果、反応生成物をその後の分離処理に適した上記の形態とするのである。
また、金属類やガラス、陶磁器などに付着した塗料、ラベル、被覆などの有機塗料或はプラスチック系物質を含め、有機物は上記の処理プロセスで全て上記の形態に変化して、これら金属類やガラス、陶磁器類から分離されるため、その後の選別、分離工程が容易であるばかりでなく、選別されたこれらの再生原料は清浄化された状態となって付加価値を向上することができる。
本発明の上記のプロセスから構成される、廃棄物処理システムを図2に示す。
(1)廃棄物の組成
いわゆる不燃物残渣250kgをサンプルとして用いた。以下の表に成分組成を示す。
これらの成分比は、収集された不燃物残渣から手作業により集計したものである。
また、金属類に付着したプラスチック系塗料などの影響を調べるため、上記の金属類としてこれらの印刷やラベル貼付のされた金属製の蓋や缶等を加えた。
(2)反応装置の設備・構造
内容積:3m3 の密閉圧力容器構造からなり、撹拌手段として25KWのモーター直結で12〜20回転/分の撹拌翼を備える。
加熱、水蒸気供給手段として、ボイラーから温度:210℃、圧力:2MPa(20kgf/cm2)の水蒸気を供給して、所定の水熱反応条件を維持する。
チェンバー中に上記組成の廃棄物を投入し、密閉して所定の温度、圧力になるまで210℃の水蒸気を供給する。水蒸気供給量は、水換算で145 kg(145リットル)であった。反応処理中はチェンバー内の撹拌翼を回転して、処理中の内容物を万遍なく常に撹拌する状態を保つ。温度、圧力が所定値に達して後は上記の導入を停止し、ほぼそのまま維持するが、その間、その他の加熱手段は用いない。
これら反応条件を、表2に示す。
この状態では温度が高いため、これを12時間放置すると、自然乾燥により12.9wt%にまで水分が低下し、さらに6時間天日乾し状態におくと2wt%以下にまで乾燥した。
これは、ガラス、陶磁器や金属類などは付着水以外に水分を含有しないため、上記の水分はほとんど有機物に含有する水分であって、後述するようにこれらの改質後の有機物が細粒状〜粉末状となり、かつサラサラとした性状であって通気性がよいため、速やかに乾燥するものと考えられる。
また、このような改質後の有機物の性状から、格別の乾燥処理を施さなくとも、放置乾燥後、振動篩などによる有機物の分離工程に投入することが可能であった。
温度が低い場合反応時間が長くなる傾向があるが、一方この上限近傍となると反応後に排出した水蒸気に低分子量の炭化水素が混入するようになり、反応生成物を原料として油化処理を行ってもナフサなどの低沸点留分の収率が低下することが考えられる。
高温度での反応時にプラスチックなどの有機物の分解反応が生じるためと考えられるが、油化収率の低下のみでなく、操業時の引火事故などの安全性からも好ましくない。
圧力については、温度ほど厳密ではないが、圧力が高いことが反応進行に有効であって、2.0MPa付近に昇圧すると、撹拌に要する駆動力が急激に低下するなど、反応の進行が促進される傾向が見られるが、設備や運転経費上ほぼ上記の範囲が望ましい。
また反応時間についても、水蒸気を導入して所定の温度/圧力に到達後、水蒸気の供給を止めて反応させるが、上記の挿入例で反応時間30分程度の生成物は後述するようにサラサラした黒褐色の細粒状〜粉末状物質であったが、反応時間を延長して1時間以上とすると、他の固形物を含む生成物全体が集合して塊状になり、破砕しなければ分離できない状態となった。その理由は必ずしも明らかではないが、反応の進行によってプラスチック類がより低分子化し、逆に流動性を増して全体を包んで固化したと考えられる。このことは、後工程の分離や油化の収率向上などにも支障があり、最適反応時間の設定が重要である。
反応装置から排出した廃棄物は、反応系の水蒸気が高圧から大気圧まで減圧して排出されるのに伴って含有水分も水蒸気として放出され、水分を失って乾燥状態となる。
さらに、チェンバーから排出後の廃棄物は、未だかなりの温度にあるため、次工程の分離工程までにさらに水分が蒸発し、ほぼその後の分離工程に支障のない乾燥状態となる。
(イ)廃プラスチック等の有機物:廃プラスチック、紙片、木屑の別なくすべて 黒〜褐色
の脆い細粒状から粉状の物質に変化した。木片などのサイズの大きい有機物(セルロース質)は、軟化状態で一部その形態を留めているが、紙片などは廃プラスチック類と同じように変化した。これらの物質は、サラサラとした状態でほとんど粘性はなく、混在する金属やガラス、陶磁器類などと容易に分離することができた。
上記の実験例では有機物として廃プラスチックの混入率の高い廃棄物を対象としたが、この処理においてはプラスチック類を含まない、紙片や木片を主とする有機物を含むものであっても、改質後の有機物の状態、性状はおが屑状の細粒状〜粉末状となり、一様なサラサラとした性状となるため、混在する金属やガラス、陶磁器類などとの分離は容易に行なうことができた。
(ロ)鉄、非鉄金属類:比較的低温度の処理であるため、形状に変化はなく、又酸化などによる錆の発生もなかった。被覆電線や表面にプラスチック系塗料で印刷され、或いはラベルなどの貼付されたびん容器類の蓋、缶類を投入したが、これらの塗料類は完全に除去されて清浄化された状態となり、被覆電線は銅線のみとなって表面は金属光沢を呈していた。
すなわち、これら廃棄物中の金属、ガラスなどの無機物は、木片などと共に廃プラスチック類が溶着しないように撹拌し、その反応表面積を大きく保つ作用を有するが、これらに対する付着が生じることはなく、しかもこれらの表面に付着していたプラスチック系塗料なども撹拌作用と水熱反応により、粒状〜粉状に変化して除去され、清浄化された。
また、有機物として紙片、木片のみからなる場合でも同様の形態に改質されるため、その後の分離工程を容易に行なうことができる。
上記の実験例よりも水分含有量の多い、水分30%程度を含む不燃物残渣についても、反応後の残存水分は、処理後で約18%、放置空冷後で12〜13%程度であって、通常の振動篩などによる分離処理に差し支えないが、必要により送風程度の乾燥を施すことにより10%以下にできる。
これらの廃棄物の含有水分量は廃棄物の種類により異なるが、食品類を多く含む一般廃棄物や浚渫汚泥などでは、含有水分が50%を越えるものも多い。
これらのように含有水分の多い場合にも、含有水分は水熱反応において導入した水蒸気による温度、圧力下から減圧、排気される際には水蒸気化して共に排出されるから、脱水効果は大きく、効果的、効率的に乾燥することができる。
(5)有害金属類の低減効果について
本発明における有害な溶出金属、低融点合金、或は塩分、残留農薬類などはいずれもその反応過程でこれらの廃棄物から抽出されて水蒸気と共に排出されるため、廃棄物からこれらの凝縮した水蒸気に移行して効果的に分離清浄化される。
上記に実験においては、排出される水蒸気中の含有金属:カドミウム含有量を原子吸光光度法により分析して確認した。
その実験条件と排出された蒸気の分析結果を図2に示す。
横軸の圧力値は、水蒸気の排出時の圧力である。
ブランクは、廃棄物を投入しない状態で、水熱反応条件において排出した蒸気を分析したものである。
この実験においては、原子吸光分析結果から、カドミウムが最も圧力の高い状態で排出された水蒸気中の濃度上昇が確認され、処理物から蒸気側にイオン化した状態で物理的に移行したものと考えられる。すなわち、上記のサンプルにカドミウムの混入があり、本発明の処理によって水蒸気に伴って除去され、清浄化されたことが解る。
これらの結果から、溶出金属類などの除去、清浄化効果のあることは確認されるが、これらの抽出結果のみでは、どれだけの除去、清浄化効果となるのかは明らかとはいえない。このため、予めサンプルの含有量を確認して処理後の含有量を比較する必要があるが、大量で種々の雑多な由来の上記組成について精密分析は不可能であり、また、これらの処理量に見合う有害物質を実際に添加して行なうことも困難である。
そこで、同じくカドミウムを天然に含有するホタテ内臓(天然状態で内臓に有害な金属類を蓄積することが知られている。)について、それぞれカドミウム及び塩分について当初含有量及び本発明の処理システムにおける水熱反応処理後の含有量を分析して効果を確認した。
[試料調整]
これは、被処理物から蒸気側にイオン化した状態で物理的に移動したと考えられる。
これらの反応、若しくは現象/作用はその濃度や対象物が異なっても同様に働くものと考えられる。
以上の結果から、本発明の処理システムにより、廃棄物中のこれらイオンや錯塩,或は錯体などの形態で溶出する金属類は、水熱反応後に水蒸気と共に排出され、処理後の廃棄物から確実に除去されたことが解る。
これらの金属類は、処理後水蒸気と共に排出され、水中に吹き込まれて凝縮する際に水中に捕捉されるので、適当な段階で(これらの濃度が分離抽出に適した値となった段階)個々の金属種別に抽出、分離して回収すればよい。
これらの有害物質の廃棄物からの分離過程は、金属種や物質の種類にかかわらず、これら反応条件の下で溶出、遊離し、排気過程で水蒸気に伴って排出する物質であればその種類は問わない。
なお、水銀については、実験を行なっていないが、水銀は沸点が低く、これらの反応条件下では全て気化し、水蒸気中に移行するので、その後、系外への排出後の凝縮過程で水に捕捉されるため、その分離は同様にして行なうことができる。
上述の水熱反応後、分離して得られた改質有機物5700gを対象として、油化処理実験を行い、本発明の効果を確認した。
実験方法は、酸素を遮断した条件下で、処理後分離した有機物改質物を加熱気化し、気化した炭化水素を触媒に触れさせて、比較的分子量の小さい炭化水素系油に改質し、留分として分離することによって炭化水素系油を得た。
〔反応条件〕
圧力:常圧(大気圧)
温度:185〜312℃
処理時間:180(min)
上記の処理条件で撹拌しつつ抽出される気化物質を触媒に接触させ、17℃に設定した水冷コンデンサによって凝縮分離して黒褐色の液体を得た、残渣は油留分の若干残る粒状炭化物であった。
その結果を表3に挙げる。
成分は、ナフサ留分が主であり、次いで軽油、灯油留分、そしてA重油を含む炭化水素油として回収した。処理温度及び触媒設定温度により、各留分の割合を変化させることは可能である。また、本試験は、試験機での実験のため、混合状態で回収し、その後分析して成分の確認を行なった。
各留分の比率は、上記したように処理条件に異なるが、上記の条件範囲においては、沸点180℃以下のナフサ(組成ガソリン)留分:90.9〜62.6%、沸点180〜350℃の灯軽油留分:36.6〜4.0%、沸点350〜538℃の重質油留分:1.5〜0.7%であった。
炭化物残渣は、2mm以下程度のガラス粉及び同様の針状金属の混入があり、また、312℃で反応を終了させ、そのままパワーオフにしたため、油留分の残留が認められる。これに対して、更に、第2油化槽で処理することにより油留分を完全に回収できると考えられるが、この場合、油化効率は70%近傍に向上可能と推測される。
本発明の処理法により得た上記有機物系改質物は、他の無機物と分離した後、有機物は最早プラスチックやセルロースなどの原物質の形態や構造は失っているが、その基本的炭素骨格を保持され、また他の天然有機物についてアミノ酸などのレベルまでは分解せず、これらの炭素構造が残存することにより、これらが骨格となるナフサなどへの転換反応が容易であり、また、上記した細粒状〜粉末状の形態であることが油化反応に好適であると考えられる。
これらの結果、本発明の処理工程により得られたこれらの有機物質は、炭化水素原料としては歩留まりがよく、油化原料として好適である。
上記の油化処理は、熱分解により生成した気化成分を触媒により反応させて炭素数の小さいナフサ留分を含む炭化水素系油として回収したが、このような改質を行なわずに熱分解のみによって生成油を得る処理方法や、水素添加などの各種の炭化水素油として回収する処理方法に対しても本発明によって得られた上記有機物由来の生成物は同様に有効である。
また、炭化物残渣は、上記実験例のようにガラス、金属などの廃棄物由来の混入物があるが、それ自体は良質の炭素系固形物であって、これらの混入物を取り除けば土壌改良剤や各種の用途向けの固体燃料として有用である。
Claims (2)
- 廃棄物として、いわゆる一般廃棄物、産業廃棄物、浚渫汚泥、汚染土壌を対象として、これらを水熱反応の条件下において処理し、処理後水蒸気を系外に排出して凝縮し、
排気過程で各種塩類、錯体或いは気化などの形態で該水蒸気に伴われて排出される金属類を該凝縮水から分離することを特徴とする、
廃棄物中の含有重金属類の分離方法。 - 上記水熱反応条件が、温度150℃〜250℃、圧力1.5MPa〜2.5MPa(15kgf/cm2〜25kgf/cm2)の範囲にあることを特徴とする、
請求項1記載の廃棄物中の含有重金属類の分離方法。
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