JP3741088B2 - 自動演奏装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、MIDI規格等の自動演奏データに基づく自動演奏を行う自動演奏装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、MIDI規格等の自動演奏データに基づき楽曲の自動演奏(楽曲再生)を行う自動演奏装置が知られている。このような装置では、楽曲再生時のチューニング、テンポ等の各種演奏特性を、ユーザ所望に応じて適宜調整・変更することができ、例えば、自動演奏装置から発生する伴奏音と伴にユーザ(演奏者)が楽器演奏して、アンサンブル演奏や自動演奏装置の演奏を模範演奏とする演奏練習を行う場合等には、ユーザの楽器演奏に合わせた自動演奏を行わせることができる。このような各種演奏特性のユーザ設定は、ユーザがパネル操作子入力等により任意の演奏特性要素の設定変更を指示することで、自動演奏装置側で設定変更処理が実行される。
【0003】
しかしながら、再生する自動演奏データの規格によっては、例えばMIDI−GM規格やMIDI−XG規格におけるGMシステム・オンやXGシステム・オン等の初期化指示コマンドのように、チューニング等の複数の各種演奏特性を夫々所定の設定値(初期値)に一括して強制的に設定変更するための設定コマンドが含まれている場合がある。従来の自動演奏装置では、後着優先の論理に従い最新の設定変更指示に応じて変更制御がなされていたため、自動演奏の開始時にユーザがチューニング等を所望の値に設定したとしても、演奏途中で前記初期化指示コマンド等の設定コマンドを受信すると、該コマンドに対応する最新のメッセージに従って強制的に設定変更がなされてしまい、当初にユーザ設定したチューニング値等が演奏中に変更されてしまうという不都合があった。また、例えば、演奏練習の際に同一曲を繰り返し再生する場合も、或る楽曲について自動演奏の開始時にユーザがチューニング等を所望の値に設定したとしても、当該楽曲の再生を曲頭から繰り返す度に、演奏データの先頭に入っている初期化指示コマンドにより各種演奏特性が一括して初期化されてしまい、その都度ユーザ所望の設定変更を指示しなおさなければならず、非常に面倒であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、再生する自動演奏データに含まれる設定コマンドよりもユーザ設定に基づく各種演奏特性の設定状態を優先させることができるようにした自動演奏装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、自動演奏データを取得する演奏データ取得手段と、前記自動演奏データに含まれる特定のコマンドに基づき演奏特性を自動設定する自動設定手段と、ユーザのマニュアル操作に基づき演奏特性をマニュアル設定するマニュアル設定手段と、前記マニュアル設定による演奏特性の優先指示を設定する優先指示手段と、前記優先指示が設定されているとき前記マニュアル設定を前記自動設定に優先させるために該自動設定時に前記マニュアル設定された演奏特性を保持するよう制御し、他方、前記演奏データ取得手段により他の自動演奏データが取得されたとき前記優先指示を解除する制御手段と、前記設定された演奏特性に応じて、前記演奏データ取得手段にて取得した自動演奏データに従った楽音を生成する楽音生成手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
この発明は、装置の発明として構成し、実施することができるのみならず、方法の発明として構成し実施することができる。また、本発明はコンピュータまたはDSP等のプロセッサのプログラムの形態で実施することができるし、そのようなプログラムを記憶した記録媒体の形態で実施することもできる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照してこの発明の一実施例について詳細に説明する。図1は、この発明の一実施例に係る自動演奏装置の全体的なハード構成例を示すブロック図であり、図2は同実施例に係る自動演奏装置20の外観の概略を示す平面図である。この自動演奏装置は、MIDI規格の自動演奏データに基づき楽曲の自動演奏(再生)を行うもので、音量を始めとして、チューニング、テンポ、ベロシティ等の各種演奏特性を、ユーザによる設定指示操作(以下「パネル設定」という)に基づきユーザ所望の設定値に設定可能である。図2において、自動演奏装置20は、ハンディタイプの、全体として小型且つ薄型な筐体から成り、その上面には、前記パネル設定を行うための複数の操作子21〜27及び表示パネル28が所定配置で設けられている。勿論、実際の装置には、これらの他にも、電源オン/オフスイッチや音量制御用操作子等を始めとして各種操作子・スイッチ類や各種入力及び出力ピン類等が多数設けられているが、便宜上これらの図示及び説明は省略する。また、自動演奏装置20には、例えば図示しないスロット孔を介して、自動演奏データを供給するための着脱可能な外部記録媒体30が挿入できる。
【0008】
図1において、この実施例に係る自動演奏装置20は、CPU1、ROM2、RAM3、パネル操作子4、表示器5、外部入出力インターフェース(外部I/O)6、記憶装置インターフェース7、音源装置(音源)8、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)9を具え、前記各装置間はバス1Bを介して接続される。外部記録媒体30は、自動演奏装置20に対して記憶装置インターフェース7を介して着脱式に接続される。
CPU1は、ROM2あるいはRAM3等メモリ内の各種プログラムを実行し、この自動演奏装置20の全体的な動作制御を行い、また、記録媒体30から取り込んだ自動演奏データに基づき演奏音の発音(楽曲再生)制御を行う。更に、CPU1には、タイマ割り込み処理(インタラプト処理)における割り込み時間や各種時間を計時するタイマ1Aが接続される。このタイマ1Aは、楽曲再生の際に用いる演奏テンポを設定するためのタイミングカウンタを計時するためのテンポクロックパルスを発生することにも利用する。
【0009】
パネル操作子4は、ユーザのマニュアル操作により各種設定を行うための操作子群である。パネル操作子4の操作状態に応じたスイッチイベントは、バス1Bを介してCPU1に出力される。このパネル操作子4には、図2に示す操作子21〜27が含まれる。図2において、操作子21は楽曲再生(自動演奏)の開始を指示するスイッチ(スタートスイッチ)である。操作子22は、自動演奏ストップスイッチ機能とロック制御スイッチ機能とを持ち、自動演奏進行中は現在実行中の楽曲再生の停止を指示するストップスイッチとして機能し、自動演奏開始前においては、演奏特性の設定値をユーザによるマニュアル設定値に固定するロック(LOCK)機能のオン・オフを切り換え指示するロック制御スイッチとして機能する。ロック機能とは、自動演奏実行中において自動演奏データに含まれる特定のコマンドに基づき各種演奏特性を所定値に自動設定することが指示されたとしても、この自動設定指示には従わずに、ユーザによって設定された各種演奏特性の設定値を維持する、つまりユーザによるマニュアル設定を自動設定に優先させる機能である。換言すれば、操作子22の操作に応じて発生されるロック機能をオンに設定する指示信号は、マニュアル設定を自動設定に優先させることを指示する優先指示命令に相当する。操作子23は現在実行中の楽曲再生の一時停止を指示するスイッチである。操作子24は「チューニング設定」モードの選択に用いるスイッチである。該「チューニング設定」モードでは、自動演奏装置20で発音する演奏音のピッチ(チューニング値)をユーザ所望に応じて調整可能である。また、操作子25は「テンポ設定」モードの選択に用いるスイッチである。該「テンポ設定」モードでは、自動演奏装置20での楽曲再生テンポをユーザ所望に応じて調整可能である。操作子26及び27は、自動演奏装置20で再生する楽曲の選択や、楽曲再生の際に用いるチューニングやテンポ等の各種演奏特性を、設定、調整するためのインクリメントスイッチ(操作子27)及びデクリメントスイッチ(操作子28)である。図示しないが、この他にも、自動演奏させる楽曲を選択に用いる操作子や、リズム、音色等を選択する操作子等、各種操作子を含んでよい。
表示器5は、CPU1の制御状態、チューニング、テンポ等の各種設定状態、や、前記ロック機能の設定状態、あるいは、ユーザが選択した再生楽曲名や、再生楽曲を選択するための曲リスト等を表示するもので、例えばLCD(液晶表示器)等からなる。図2の表示パネル28がこれに相当する。
【0010】
外部I/O6は、外部に対する自動演奏データ(MIDIデータ)等の各種データの入出力を行うもので、例えばMIDIインターフェース等である。当該自動演奏装置20は、外部I/O6を介して外部の演奏装置60等適宜の外部装置(例えば他のMIDI機器等)と接続しうる。自動演奏装置20では外部演奏装置60から受信した自動演奏データに基づき演奏音を発音させてもよいし、また、自動演奏装置20から自動演奏データを外部の演奏装置60に送信して、外部音源を用いた演奏音を発音させることも可能である。なお外部I/O6は外部の演奏装置60等と有線式で接続するものに限らず、無線式(ラジオ無線や赤外線無線)で接続するようになっていてもよく、また、インターネットや電話回線を介して接続されるようになっていてもよい。
【0011】
この実施例では、記憶媒体30は、例えばスマートメディア(登録商標)のようなスティック式の記憶媒体を利用している。記憶媒体30には、例えばスタンダードMIDIファイル(SMF)等の所定フォーマットから成る自動演奏データ(MIDIデータ)が複数曲分記録されている。記録媒体30としては、その他にも、フレキシブルディスク又はフロッピー(登録商標)ディスク(FDD)、コンパクトディスク(CD−ROM)、磁気ディスク(MO)、DVD(Digital Versatile Disk)、磁気メモリ等、適宜の記録媒体を採用してよい。
【0012】
CPU1による制御により、記憶媒体30に記憶された自動演奏データに基づく自動演奏再生処理がなされ、再生すべき楽音を指示する演奏データがバス1Bを介して音源8に与えられる。音源8は、与えられた演奏データに応じた音高、音色、音量等からなる楽音信号を生成する。音源8の音源方式(楽音発生方式)は、波形メモリ読み出し方式やFM方式など従来から知られるいかなる方式を用いてもよく、また、ハードウェア音源ボードで構成されていてもよいし、ソフトウェア音源プログラムで構成されていてもよい。音源8で生成した楽音信号は、DSP9にて各種のエフェクトが付与されて、ディジタル/アナログ変換の後にアンプやスピーカなどを含むサウンドシステム10から発音される。
【0013】
この自動演奏装置20では、ユーザの選択に従って記録媒体30から任意の楽曲の自動演奏データをRAM3に読み込み、該楽曲の自動演奏データを再生するための各種演奏特性(チューニング、テンポ等)の「パネル設定」を受け付ける。そして、自動演奏開始指示がなされると、該演奏データに基づく「自動演奏処理」が行われる。次に、この実施例の動作の一例について図3〜図5のフローチャートに基づき説明する。図3はCPU1により実行されるメインルーチン処理の一例を示す。このメインルーチンは、自動演奏装置20の電源がオンされることでスタートし、所定の初期化処理(ステップS1)を行った後、パネル設定処理(ステップS2)と、自動演奏処理(ステップS3)を繰り返して実行する。パネル設定処理(ステップS2)では、パネル操作子4の各操作子をスキャンして、そのオン・オフを検出し、その検出結果に基づき各種処理を行う。自動演奏処理(ステップS3)では、前記「パネル設定処理」にて演奏開始指示が検出されると、自動演奏を実行するための発音処理を行う。
【0014】
次に、図3のステップS2で行われる「パネル設定処理」の一例について図4を参照して説明する。前記メインルーティンの実行過程では、割り込み処理によりパネル操作子4を常にスキャンし、各スイッチのオン・オフを検出しており(ステップS10)、パネル操作子4で何らかの操作入力があったか否かを判定する。そうして何らかの操作入力がなされた場合は、ステップS11以降の処理を行う。
【0015】
ステップS11では、所定の演奏特性(この例ではチューニング)を設定するための操作子(この例ではチューニングスイッチつまり操作子24)が操作されたかどうかを判定する。YESの場合、装置の制御状態が「チューニング設定」モードに移行して、表示パネル28には現在のチューニング値(設定状態)が表示されて、チューニングの設定値変更が可能となる(ステップS12)。次いで、ステップS13では、チューニング設定値の変更と該チューニング設定値についての前記ロック機能のオン・オフを受け付ける。この実施例では、ユーザがインクリメントスイッチ(26)あるいはデクリメントスイッチ(27)を操作することにより、チューニング基準音(A4)の周波数を、420Hzを中心にして415.2Hz〜466.2Hzの範囲で可変設定することでチューニング設定がなされる。また、このようにチューニング設定モードの状態で、ユーザが操作子22を操作することにより、チューニング設定値(ユーザによるマニュアル設定値)についてのロック設定(前記ロック機能をオンすること)が行われる。ロックを解除(オフ)するには、ロック設定状態で操作子22を再度操作することで指示できる。
ステップS14では、前記ステップS13にて設定されたチューニングのユーザ設定値に基づき自動演奏装置20におけるチューニング調整を行い、ロック設定(オン)が指示された場合は、該マニュアル設定値をRAM3等内の所定の優先データ記憶領域に保存する。そして、表示パネル28に前記ステップS13での設定変更に応じて、チューニング値とロック制御状態(オン/オフ)を表示更新する。
【0016】
上記とは別の演奏特性(この例ではテンポ)を設定するための操作子(この例ではテンポスイッチつまり操作子25)が操作された場合は、上記ステップS11ではNOと判定され、ステップS15に進む。ステップS15では、当該別の演奏特性(テンポ)を設定するための操作子(テンポスイッチつまり操作子25)が操作された場合、YESと判定し、ステップS16〜ステップS18の処理に進み、「テンポ設定」モードの処理を行う。ステップS16〜ステップS18では、前述のS12〜S14と同等な処理を「テンポ設定」モードについて行う。これにより、自動演奏に用いるテンポのユーザによるマニュアル設定が行われ、且つ、ユーザ設定されたテンポのマニュアル設定値についてのロック設定/解除を上記と同様に行える。
各演奏特性毎のロック設定/解除状態をRAM3等の所定エリア(レジスタ又はフラグ等)に記憶され、後述するように、随時参照できる。
【0017】
例えば自動演奏の開始あるいは停止、楽曲選択等、自動演奏に係わる操作入力があった場合は、ステップS19ではYESと判定され、装置の制御状態が「楽曲再生」モードに移行して、ステップS20以降の処理にて、操作されたスイッチに応じた処理が実行される。一方、操作入力が自動演奏に係わる操作入力では無かった場合は、ステップS30で、該操作入力により指示された事項に応じた処理を行う。なお、ステップS30で行う処理の一例としては、例えば、外部演奏装置60等の外部からの自動演奏データの取得要求を行い、外部から受信した該演奏データに基づく演奏処理を行うこと等がある。
【0018】
スタートスイッチ(操作子21)の操作がなされた場合(ステップS20のYES)、ステップS21で、自動演奏動作を開始させる処理(例えば演奏RUNフラグをセットする)を行う。その後メインルーチンにリターンし、図5に示すような自動演奏処理が実行される。自動演奏動作中に前記操作子22が操作された場合は、前述の通り、ストップスイッチとして機能し、ステップS22でストップスイッチの入力あり(YES)と判定される。その場合、ステップS23で、自動演奏動作を停止させる処理(例えば演奏RUNフラグをリセットする)を行う。
【0019】
また、演奏曲データの変更指示がなされた場合(ステップS24のYES)は、パネル表示器28に曲目リストを表示して、演奏曲の選択を促す(ステップS25)。ユーザは、インクリメントスイッチ(操作子26)あるいはデクリメントスイッチ(操作子27)の操作により、リストされた複数の楽曲の中から所望の楽曲を選択すると(ステップS26)、該選択された楽曲の自動演奏データが再生可能にセットされる(ステップS27)。このようにして選択された楽曲の自動演奏データについて図5の自動演奏処理が行われる。なお、自動演奏すべき楽曲の変更(新規選択)がなされたとき、ステップS28の処理によりチューニング、テンポ等全ての演奏特性(若しくはその一部でもよい)についてのロック設定が解除される。これは、この実施例では、前記ロック機能のオン・オフは、1つの楽曲毎に個別に受け付けるものとしているためであり、演奏すべき楽曲の曲目が変更された場合は、それまで選択されていた楽曲についてのロック設定状態(マニュアル設定を優先する状態)を自動的に解除するようになっている。
なお、操作入力が上記以外のものである場合は、その操作入力に応じて処理を行う(ステップS29)。
【0020】
次に、図3のステップS3で行われる「自動演奏処理」の動作手順の一例を図5の概略フローチャートに沿って説明する。ステップS31において、自動演奏処理が実行中(上記演奏RUNフラグがセット状態)であると判定すると、ステップS32に進む。ステップS32では、選択された楽曲の自動演奏データをその演奏順序に従って取得する。このステップS32では、例えば、記憶媒体30から選択された楽曲の自動演奏データの全部または一部をRAM3に予め転送するタイプの場合は、現時点で読み出すべき演奏データを該RAM3から読み出す。或いは、記憶媒体30から選択された楽曲の自動演奏データを直接読み出すタイプの場合は、現時点で読み出すべき演奏データを該媒体30から読み出す。或いは、外部I/O6を介して外部の演奏装置60から演奏データを取得し、これをRAM3等にバッファ記憶するタイプの場合は、現時点で読み出すべき演奏データを該RAM3から読み出す。或いは、現時点で再生すべき演奏データ(イベントデータ)を外部I/O6を介して外部の演奏装置60からその都度取得するタイプの場合は、現時点で取得すべき演奏データを該外部I/O6を介して取得する。前3者(1〜3番目)のタイプの場合は何れも自動演奏の時間進行制御(シーケンサ処理)は本自動演奏装置20のCPU1により行うが、その詳細説明は省略する。4番目のタイプの場合は、自動演奏の時間進行制御(シーケンサ処理)は本自動演奏装置20のCPU1により行うようにしてもよいし、或いは外部の演奏装置60の側で行うようにしてもよい。なお、演奏データは、曲の先頭のヘッダー部と実際の演奏に対応するメインデータ部とからなり、ノート等の演奏楽音を指定するデータの他に各種のコマンドデータも含む。これらのコマンドデータは、ヘッダー部に含まれることもあるし、メインデータ部(つまり曲の途中)に含まれることもある。
ステップS33では、前ステップS32で取得したデータに基づき現時点で処理すべきデータがあるか否かを判定する。例えば、自動演奏データがデュレーションデータとイベントデータとの組み合わせからなる形式の場合、現時点が次に処理すべきイベントデータの処理タイミングである場合、ステップS33でYESと判定される。或いは、自動演奏データの形式が俗にベタ方式と言われる、時間位置に対応するアドレス位置にイベントデータを記憶する形式の場合、現時点でイベントデータが読み出された場合、ステップS33でYESと判定される。その他適宜の自動演奏の時間進行制御方式に従い、ステップS33での判定がなされる。なお、当該楽曲の自動演奏データのヘッダー部に含まれる各種初期設定データやコマンドデータについては、該楽曲の演奏開始直前の所定タイミングで、ステップS33でYESと判定される、つまり、これらのデータに基づき現時点で処理すべきデータがあると判定される。つまりステップS33がYESの場合、そのデータの指示内容に応じてステップS34以降の処理が実行される。
【0021】
ステップS34では、現時点で処理すべきデータが、チューニング等の所定の1又は複数の演奏特性の自動設定(例えば「初期化」)を一括して指示する或る特定のコマンド(例えばMIDI規格での「GMシステムオン」や「XGシステムオン」等の初期化指示コマンド)データであるかどうかを判定し、YESであれば、前記初期化指示コマンドによって初期化指示される全ての要素(演奏特性)につき、その設定値を所定の初期値に設定変更する(ステップS35)。
次いで、ステップS36では、前記RAM3等の所定エリア内に記憶された各演奏特性毎のロック設定/解除状態を参照し、前記ステップS35で初期値に設定変更された演奏特性がロック設定(ロックオン)されているか否かを判定する。ロック設定されていることを検出すると、ステップS37に分岐する。
そして、ステップS37では、前記ステップS35で初期値に設定変更された演奏特性のうちロック設定された演奏特性(例えばチューニング)について、前記ステップS35にて自動設定された初期値から、ユーザによるマニュアル設定値に再度設定変更する(つまりマニュアル設定値に即座に戻すことでロック状態を維持する)。前述の通り、ロック設定されたマニュアル設定値はRAM3等内の所定の優先データ記憶領域に保存されているので、該ステップS37では、その記憶されたマニュアル設定値を使用すればよい。
【0022】
ステップS38では、現時点で処理すべきデータが上述とは別の或る特定のコマンド(例えば「テンポ」設定コマンド)データであるかどうかを判定し、YESであれば、該コマンドに対応する所定の演奏特性(例えばテンポ)の設定値を該コマンドによって自動設定される所定の設定値に変更する(ステップS39)。 次に、ステップS36に進み、前記各演奏特性毎のロック設定/解除状態を参照し、前記ステップS39で自動設定された所定の演奏特性(例えばテンポ)がロック設定されているか否かを判定する。YESであれば、ステップS37に分岐し、前記ステップS39で自動設定された当該演奏特性の設定値をユーザによるマニュアル設定値に再度設定変更する(つまりマニュアル設定値に即座に戻すことでロック状態を維持する)。このように、自動演奏データに含まれるコマンドデータは、1又は複数の演奏特性の自動設定を一括して指示するコマンドであってもよいし、或る特定の演奏特性の自動設定値をダイレクトに指示するコマンドであってもよい。
【0023】
一方、現時点で処理すべきデータが発音開始指示データ(例えばノートオンイベント)である場合(ステップS40のYES)、該発音開始指示データに対応する演奏信号(楽音信号)の波形生成開始を音源8に指示し(ステップS41)、且つ該音源8に対して該生成した演奏信号(楽音信号)についての所定の発音処理(この場合発音を開始させる処理)を行うよう指示する(ステップS42)。
他方、現時点で処理すべきデータが発音停止指示データ(例えばノートオフイベント)である場合(ステップS43のYES)、該発音停止指示データに対応する発音中の演奏信号(楽音信号)の波形生成停止を音源8に指示し(ステップS44)、且つ、該音源8に対して当該発音中の演奏信号(楽音信号)についての所定の発音処理(この場合発音を終了させる処理)を行うよう指示する(ステップS42)。
他方、現時点で処理すべきデータが上記以外の何らかのデータ(例えばピッチベンドや音色設定等)であった場合、該データに従う適宜の処理が行われる(ステップS45)。
【0024】
この実施例によると、自動演奏装置20では、各種演奏特性(要素)をユーザによりマニュアル設定された値にロック設定指示(マニュアル設定を優先指示)することで、該ロック設定したマニュアル設定による演奏特性の設定を自動設定指示コマンドより優先させることができる。これにより、自動演奏途中で初期化指示コマンド等の設定コマンドを受信しても、ユーザがマニュアル設定したチューニング値等が演奏中に変更されることなく、ユーザ所望の演奏状態を維持することができる。また、マニュアル設定値を自動演奏データのヘッダー部に含まれるコマンドデータ(初期化指示コマンド等)より優先させることができるので、同一曲を繰り返し再生する際、その都度マニュアル設定する手間がなくなる。
【0025】
なお、上述の実施例では、ロック設定の対象となる演奏特性として、「チューニング」及び「テンポ」を例示したが、これに限らず、レベルやベロシティ等、の各種演奏特性をマニュアル設定値でロックすることも可能である。
【0026】
上述の図5の例では、ステップS35〜ステップS37で行う処理において、初期化指示コマンドによって初期化指示される全ての要素につき、その設定値を所定の初期値に設定変更した後に、ロック設定された演奏特性(上述の例ではチューニング)について、ユーザによるマニュアル設定値に再度設定変更する例を示したが、この変更例として、ロック設定された演奏特性については、自動設定コマンド(例えば初期化指示コマンド等)によるを設定変更を受け付けないようにしてもよい。すなわち、ロック設定された演奏特性については、自動設定コマンドによる所定の設定値に変更しないことで、ロック状態を維持することができる。
【0027】
また、上述の図4の例では、演奏すべき楽曲の曲目が変更された場合は、それまで選択されていた楽曲についてのロック設定状態を自動的に解除するように処理(ステップS24〜S28で行う処理)したが、ロック設定状態をロックする指示を更に行えるようにすることで、演奏すべき楽曲の曲目が変更されてもロック解除が行われないようにしてもよい。こうすることで、演奏する楽曲の曲目が変更された場合にも、一度行ったロック設定を維持させることができる。
【0028】
また、上述の例では、ロック設定の指示(すなわち、マニュアル設定を自動設定に優先させる優先指示命令)は、操作子22の入力によりユーザが行うものとしたが、このようなマニュアル指示操作に限らず、例えば、「練習」モードや、「初心者」モード等といった特定の機能に連動して自動的にロック設定したり、あるいは、特定の機器が外部I/O6を介して接続されるとこれに連動して自動的にロック設定される等、自動的にロック設定(ロックオン)指示がなされるようにしてもよい。あるいは、ネットワーク等を介して外部からロック設定(ロックオン)指示データが与えられるようにしてもよい。
【0029】
なお、上述の実施例では、チューニングやテンポといった各演奏特性の要素毎にロック設定指示するものとしたが、これに限らず、複数の演奏特性の要素を1グループとして纏めて、例えばチューニングとテンポと音量とを纏めて、ロック設定できるようにしてもよいし、或いは、ユーザによりマニュアル設定された全ての演奏特性の設定値を一括してロック設定できるようにしてもよい。
【0030】
なお、本発明は、上述したような専用のハードウェア装置(自動演奏装置)によって実施する構成のみならず、パーソナルコンピュータ等によって実行されるソフトウェアプログラムで構成するようにしてもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によると、再生する自動演奏データに含まれる設定コマンドよりもユーザ設定に基づく各種演奏特性の設定状態を優先させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る自動演奏装置のハード構成を示すブロック図。
【図2】 同実施例に係る自動演奏装置の外観の概略を示す上面図。
【図3】 同実施例に係る自動演奏装置においてCPU1が実行する「メインルーチン」の一例を示すフローチャート。
【図4】 同実施例に係る「パネル設定処理」の一例を示すフローチャート。
【図5】 同実施例に係る「再生処理」の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
1 CPU,2 ROM,3 RAM,4 パネル操作子,5 表示機,6 外部入出力インターフェース,7 記憶装置,8 音源装置,9 DSP,10 サウンドシステム20 自動演奏装置,21〜27 操作子,28表示パネル,30 記憶媒体,60 外部の演奏装置

Claims (4)

  1. 自動演奏データを取得する演奏データ取得手段と、
    前記自動演奏データに含まれる特定のコマンドに基づき演奏特性を自動設定する自動設定手段と、
    ユーザのマニュアル操作に基づき演奏特性をマニュアル設定するマニュアル設定手段と、
    前記マニュアル設定による演奏特性の優先指示を設定する優先指示手段と、
    前記優先指示が設定されているとき前記マニュアル設定を前記自動設定に優先させるために該自動設定時に前記マニュアル設定された演奏特性を保持するよう制御し、他方、前記演奏データ取得手段により他の自動演奏データが取得されたとき前記優先指示を解除する制御手段と、
    前記設定された演奏特性に応じて、前記演奏データ取得手段にて取得した自動演奏データに従った楽音を生成する楽音生成手段と
    を具備する自動演奏装置。
  2. 前記優先指示を保持させるロック指示を行う手段を更に具備し、前記制御手段は、該ロック指示がなされているならば、前記演奏データ取得手段により前記他の自動演奏データが取得されたとき前記優先指示を解除することなく、該自動演奏データの取得を行わせるよう制御することを特徴とする請求項1に記載の自動演奏装置。
  3. 自動演奏を行うために、コンピュータによって実行されるプログラムであって、
    自動演奏データを取得する手順と、
    前記自動演奏データに含まれる特定のコマンドに基づき演奏特性を自動設定する手順と、
    ユーザのマニュアル操作に基づき演奏特性をマニュアル設定する手順と、
    前記マニュアル設定による演奏特性の優先指示を設定する手順と、
    前記優先指示が設定されているとき前記マニュアル設定を前記自動設定に優先させるために該自動設定時に前記マニュアル設定された演奏特性を保持するよう制御し、他方、前記演奏データ取得手段により他の自動演奏データが取得されたとき前記優先指示を解除する制御手順と、
    前記設定された演奏特性に応じて、前記自動演奏データを取得する手順にて取得した自動演奏データに従った楽音を生成する手順と
    を含むプログラム。
  4. 前記優先指示を保持させるロック指示を行う手順を更に具備し、前記制御手順では、該ロック指示がなされているならば、前記自動演奏データを取得する手順で前記他の自動演奏データが取得されたとき前記優先指示を解除することなく、該自動演奏データの取得を行わせるよう制御することを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
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