JP3740555B2 - クローポール型発電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クローポール型発電機、特には自転車用として用いられるクローポール型発電機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のクローポール型発電機は、永久磁石を有する筒体と、互いの磁極片が円周方向に交互に並列するように配置された2つのクローポール型のステータヨークと、両ステータヨークを磁気的に結合するコアヨークと、該コアヨークの周囲に配置されるコイルとで構成されている(特許文献1参照)。該クローポール型発電機は、永久磁石を外側回転子とし、ステータヨーク、コアヨーク、及びコイルを内側固定子として、永久磁石の回転によりコアヨークに交番磁束を発生させ、これにより、コイルに電流が流れて発電するようになっている。
【0003】
前記ステータヨーク及びコアヨークには、交番磁束が発生するに伴い渦電流が発生し、該渦電流は発電効率を低下させる要因となるため、クローポール型発電機においては渦電流の発生を抑制することが望まれている。このような渦電流は、交番磁束の通過量が多くなるコアヨークや、ステータヨークの中心付近で大きくなるため、コアヨーク外周に軸方向のスリットを設けたり(特許文献2参照)、ステータヨークの中心付近に半径方向のスリットを設けることにより(特許文献1参照)、渦電流の発生を抑える構成が考案されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2991705号公報(図1,3)
【特許文献2】
特開2001−327139号公報(図2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した構成により渦電流の発生が抑制され、クローポール型発電機の発電効率が向上されるが、クローポール型発電機は、更に小型化、軽量化が望まれており、それに伴い、更なる発電効率の向上も望まれている。特に、自転車の車輪のハブ軸に固定されて、照明ランプ等の電力として利用される所謂自転車用ハブダイナモにおいては、小型化、軽量化とともに、自転車の車輪の回転数程度の回転力で照明ランプ用等として十分な電力を安定して発生させることが必要である。従って、コアヨークやステータヨークの中心付近のみならず、その他の部分での渦電流の発生も抑制することが望ましい。
【0006】
本発明は、これらに鑑みてなされたものであり、クローポール型発電機、特に自転車用として用いられるクローポール型発電機のステータヨークにおいて、渦電流の発生を抑制する手段を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るクローポール型発電機は、環状に配置された永久磁石と、複数の爪状の極片を夫々有し、該各極片が円周方向に交互に並列し且つ前記永久磁石と対向するように配置された2つのステータヨークと、前記2つのステータヨークを磁気的に連結するコアヨークと、前記コアヨークの周囲に配置されたコイルと、を具備してなるクローポール型発電機において、前記ステータヨークは、円盤部と、該円盤部周縁から周方向に所定間隔で、且つその軸方向の長さがステータヨークの外側に配置されるに従って順次短くなるように軸方向へ延設された複数の極片とを備えてなる複数の薄板材が、厚み方向に積層されたものであることを特徴とする。これにより、ステータヨークの円盤部の厚み方向へ渦電流が流れ難くなり、ステータヨークにおける渦電流の発生を抑制して、クローポール型発電機の発電効率を向上させる。また、各薄板材の極片を夫々永久磁石と対向させることができ、各薄板材に交番磁束が効率良く発生する。
0008
また、前記各薄板材は、その厚み方向に設けられた嵌合凹凸又は嵌合孔により夫々嵌合されて一体とされたものとすることが、加工及び組立の便宜上好適である。また、前記各薄板材を珪素鋼板材から作製することにより、各薄板材は磁束が通り易く且つ電気抵抗が大きなものとなるので、ステータヨークに生ずる渦電流を一層抑制することができる。また、前記クローポール型発電機を、自転車の車輪のハブ軸に固定されて用いられる自転車用のものとすることにより、小型、軽量であり、且つ自転車の車輪の回転数程度の回転力で照明ランプ用等に十分な電力を安定して発生させるハブダイナモを実現することができる。
0009
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るクローポール型発電機100の全体構成を示す図であり、図に示すように、本クローポール型発電機100は、環状に配置された永久磁石101と、該永久磁石101と対向するように配置された2つのステータヨーク102L,102Rと、該ステータヨーク102L,102Rを磁気的に連結するコアヨーク103と、該コアヨーク103の周囲に配置されたコイル104とを具備してなるものである。このように構成されたクローポール型発電機100が、公知且つ任意の自転車の車輪のハブ軸1に固定されて自転車用ハブダイナモを構成している。なお、図には詳細に示していないが、該ハブ軸1には雄ネジが形成されており、自転車の車輪用フォークFにナット等により固定されるようになっている。
0010
前記ハブ軸1には、ハブケーシング2がベアリング3を介して回転自在に取り付けられている。ハブケーシング2は、ドラムハブ2aとスポークハブ2bとを備えてなり、該ドラムハブ2aは、図1及び図2に示すように、中央付近が径大であって、両端へ向かってテーパ状に縮径された円筒体であり、ドラムハブ2aの両端に、円盤状のスポークハブ2bが夫々設けられている。スポークハブ2bの周縁近傍には複数の孔2cが周方向に列設されており、該孔2cにスポークSが挿通されて、スポークハブ2bと車輪のリム(不図示)とが該スポークSにより連結されるようになっている。また、ハブケーシング2からは、ハブケーシング2内に収容されたクローポール型発電機100の電力を取り出すための端子4が外方へ突設されている。
0011
前記永久磁石101は、前記ハブケーシング2aの中央の径大部分の内周面にバックアップリング10を介して固定されている。バックアップリング10は、図3に示すように、円環状の枠体であり、その内周面には永久磁石101を構成する4つの磁石鋼が連続環状に固定されている。円環状に配置された永久磁石101は、その周方向にN極とS極とが交互となって計28極存在するように着磁されたものとなっている。このような永久磁石101と前記ハブケーシング2とが、本クローポール型発電機100の外側回転子を構成しており、自転車の車輪がハブ軸1を軸として回転することにより、ハブケーシング2が回転するとともに、その内周面に円環状に配置された永久磁石101も回転する。
0012
前記ステータヨーク102L,102Rは、図1に示すように、前記永久磁石101の内側に位置するように、ハブ軸1に外嵌されている。図4に示すように、ステータヨーク102Lとステータヨーク102Rとは同形状のものであるので、以下、ステータヨーク102Lを例に、これらの構成を説明する。図4(a)に示すように、ステータヨーク102Lは、円盤部20Lと、該円盤部20Lの周縁から周方向に所定間隔で円盤部20Lの厚み方向へ延設された複数の極片21Lとを具備してなるものであり、図には詳細に示していないが、複数の薄板材が厚み方向に積層されることにより構成されている。該積層構造については後に詳述する。
0013
前記円盤部20Lは、前記永久磁石101の内方に納まる程度の大きさであり、その外径は、図1に示すように各ステータヨーク102L,102Rが永久磁石101の内側に配置された場合に、各極片21Lに永久磁石101の磁力が作用する程度に離間されるように設定されている。円盤部20Lの中央にはハブ軸1を挿通するための挿通孔22が穿設されており、該挿通孔22周りの4箇所にコアヨーク103を嵌合するためのコア嵌合孔23が穿設されている。さらに、円盤部20の外周縁の4箇所から半径方向にスリット24が形成されている。該スリット24は、交番磁束に伴い円盤部20Lの周方向に流れる渦電流を抑制するためのものである。詳細には、前記コア嵌合孔23に嵌合されるコアヨーク103の軸方向に交番磁束が発生すると、該交番磁束周り、即ち円盤部20Lの周方向に渦電流が発生する。該渦電流の流路に前記スリット24を設けることにより、円盤部20Lの周方向へ渦電流が流れ難くして、渦電流の発生を抑制する。前記極片21Lは、円盤部20Lの外周縁に14極設けられており、円盤部20Lの厚み方向へ略直角に延設されることにより、その長手方向が円盤部20Lの挿通孔22に挿通されるハブ軸1の軸方向と平行になっている。
0014
このように構成された2つのステータヨーク102L,102Rが、図4(b)に示すように、互いの極片21L,21Rが円周方向に交互に並列するように組み合わされ、これらが前記永久磁石101の内側に配置された場合に、各々14極の極片21L,21Rが永久磁石101の28極の磁極と夫々対向するようになっている。
0015
次に、ステータヨーク102Lを例に、複数の薄板材が厚み方向に積層された積層構造について説明する。図5(a)は、前記ステータヨーク102Lの縦断面図であるが、図に示すように、ステータヨーク102Lは、所定形状の6枚の薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fが積層された積層体であり、これらが一体となって前記円盤部20L及び極片21Lを構成している。
0016
図6は、前記薄板材25aの展開図であるが、図に示すように、薄板材25aは、円盤部250aと、該円盤部250aの周縁から延設された複数の極片251aとを具備してなるものであり、円盤部250aが前記ステータヨーク102Lの円盤部20Lに、極片251aが極片21Lに相当する。該円盤部250aの中央にはハブ軸1を挿通するための挿通孔252が穿設されており、該挿通孔252周りの4箇所にコアヨーク103を嵌合するためのコア嵌合孔253が穿設されている。さらに、円盤部250aの外周縁の4箇所から半径方向にスリット254が形成されている。これらも前記ステータヨーク102の挿通孔22、コア嵌合孔23、及びスリット24に夫々相当するものである。なお、前記各極片251aは、円盤部250aと略直角となるように折り曲げられ、前記挿通孔252の軸方向へ突出するものとなる。また、円盤部250aには嵌合孔255aが適宜形成されている。該嵌合孔255aは、薄板材25aが隣接する薄板材25b(不図示)の嵌合凹凸と嵌合するためのものである。
0017
図7は、前記薄板材25fの展開図であるが、該薄板材25fも、前記薄板材25aと同様に、円盤部250fと、該円盤部250fの周縁から延設された複数の極片251fとを具備してなり、該円盤部250fには、ハブ軸1を挿通するための挿通孔252と、コアヨーク103を嵌合するためのコア嵌合孔253が穿設され、さらに、円盤部250fの外周縁の4箇所から半径方向にスリット254が形成されているが、前記極片251fの突出長さが、前記薄板材25aの極片251aの突出長さより短い点で異なる。各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fの各極片251a,251b,251c,251d,251e,251fの突出長さは、図中に点線で表したように、ステータヨーク102の外側に積層されるに従って順次短くなるように形成されており、これにより、各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fが積層されてステータヨーク102Lを構成した際には、該ステータヨーク102Lの極片21Lは、図5(b)に示すように、各極片251a,251b,251c,251d,251e,251fの端部近傍が露呈した状態となる。これにより、各極片251a,251b,251c,251d,251e,251fを夫々永久磁石101と対向させて、永久磁石101の磁力を効率良く各極片251a,251b,251c,251d,251e,251fに作用させることができる。
0018
また、前記円盤部250fには、前記嵌合孔255aと対応する位置に嵌合凹凸255fが穿設されている。該嵌合凹凸255fは、積層状態において隣接する薄板材250eと嵌合するためのものであり、前記円盤部250fに半抜きパンチを施すことにより、図8(a)に示すように、円盤部250fに凹凸を一体として形成したものである。なお、図には示していないが、同様の嵌合凹凸が薄板材25b,25c,25d,25eに形成されている。各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fが、図7(b)に示すように順次積挿された場合に、薄板材25a以外の各薄板材25b,25c,25d,25e,25fに形成された各嵌合凹凸255b,255c,255d,255e,255fの凸部と凹部とが嵌合し、嵌合凹凸255bの凸部が前記嵌合孔255aに嵌合して、6枚の薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fが一体となる。このように、円盤部250aについては、嵌合凹凸に代えて嵌合孔255aを穿設することにより、ステータヨーク102Lの外面から嵌合凹凸の凸部を突出させることなく、各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25f同士を嵌合させて一体化することができる。なお、本実施の形態では、薄板材25aに嵌合孔255aを穿設したが、嵌合凹凸の凹凸方向を逆にして、薄板25aに嵌合凹凸を、薄板25fに嵌合孔を形成するようにしてもよい。
0019
このように、ステータヨーク102Lを各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fを積層して構成することにより、ステータヨーク102Lの極片21Lから円盤部20Lの中央へ向かって、円盤部20Lの半径方向に交番磁束が生じた場合に、該磁束方向周り、即ち円盤部20Lの厚み方向に生ずる渦電流の流路を、薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fの境界で分断することができる。
0020
以下、本ステータヨーク102Lの作製方法について説明する。
図9は、前記ステータヨーク102Lを製造するための高速プレスの順送金型の工程配置図である。順送型内かしめ金型により珪素鋼板材から各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fを打ち抜いてステータヨーク102Lを得る方法である。珪素鋼板材を用いることにより、各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fが磁束が通り易く且つ電気抵抗が大きなものとなるので、ステータヨーク102Lに生ずる渦電流を効果的に抑制することができるので好ましいが、前記ステータヨーク102L,102Rは珪素鋼板材に限定されるものではなく、例えば純鉄材や、SPCC、SPCD、SPCE等の冷延鋼帯のように、交番磁束を生じさせる公知且つ任意の磁性材を用いることができる。以下、各工程を順次説明する。
0021
帯状の珪素鋼板材800に、予め、位置決めの基準となるパイロット穴80を適宜穿った後、前記スリット254を打ち抜き(S1)、さらに、前記挿通孔252及びコアコア嵌合孔253を打ち抜く(S2)。これら挿通孔252、コアコア嵌合孔253、及びスリット254は各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fに共通のものである。
0022
つぎに、薄板材25a以外の各薄板材25b,25c,25d,25e,25fの各極片251b,251c,251d,251e,251fの先端を決める極片用カット穴81b,81c,81d,81e,81fと、薄板材25aの嵌合孔255aとを打ち抜く(S3〜S8)。詳細には、順送方向の上流から薄板材25aの嵌合孔255a(S8)、薄板材25bの極片251bの先端を決める極片用カット穴81b(S7)、薄板材25cの極片251cの先端を決める極片用カット穴81c(S6)、薄板材25dの極片251dの先端を決める極片用カット穴81d(S5)、薄板材25eの極片251eの先端を決める極片用カット穴81e(S4)、薄板材25fの極片251fの先端を決める極片用カット穴81f(S3)が打ち抜かれる。各極片用カット穴81b,81c,81d,81e,81fは、各薄板材25b,25c,25d,25e,25fの各極片251b,251c,251d,251e,251fの突出長さが順次短くなるようにするためのものであり、各々が14極の極片に対応するように放射状に配置されており、各極片251b,251c,251d,251e,251fの突出長さが順次短くなるに従い、各極片用カット穴81b,81c,81d,81e,81fの半径方向の長さが順次長くなっている。
0023
前記各極片用カット穴81b,81c,81d,81e,81fと薄板材25aの嵌合孔255aとを形成するためのカットパンチは、1個のステータヨーク102Lとして積層される6枚の薄板材に対して同時になされるものであり、該カットパンチが1回行われた後は、5回分だけカットパンチが休止されるようにカウンタ等でコントロールされている。これにより、その後の工程で、各極片251b,251c,251d,251e,251fの長さが異なる各薄板材25b,25c,25d,25e,25fを順送方向の上流側から連続的に打ち抜き、金型内で嵌合させることができるようになる。
0024
つぎに、薄板材25a以外の各薄板材25b,25c,25d,25e,25fに、嵌合凹凸255b,255c,255d,255e,255fを夫々形成するための半抜きパンチを行う(S9)。該半抜きパンチは、珪素鋼板材800の板厚の60%前後となるようにパンチが出されるものであり、これにより、珪素鋼板材800の上面側に凹、下面側に凸の嵌合凹凸255b,255c,255d,255e,255fが夫々形成される。なお、半抜きパンチの位置は、前述した嵌合孔255aを形成するためのカットパンチと同一であり、薄板材25aには既に嵌合孔255aが形成されているので、前記半抜きパンチが出されても嵌合凹凸は形成されない。
0025
つぎに、外形部82を打ち抜いて排圧を与える(S10)。これにより、珪素鋼板材800から各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fが抜き出されるとともに、排圧により既に打ち抜かれた薄板材と圧接し、形合孔255aと嵌合凹凸255b,255c,255d,255e,255fが図8(b)に示すように嵌合して、各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fが型内で積層され、一体化したステータヨーク102Lとなる。前記外形部82は、薄板材25aの外形であるが、薄板材25a以外の各25b,25c,25d,25e,25fについては、既に極片用カット穴81b,81c,81d,81e,81fが夫々形成されているので、これに従って順次長さが短かくなるように極片251b,251c,251d,251e,251fが形成される。なお、各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fを圧接させるための排圧は、周知の排圧リング等により付与することができる。また、図には示していないが、外形部82が打ち抜かれた後の珪素鋼板材800は、適当な長さ毎にスクラップカットされる。
0026
図10は、各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fが打ち抜かれて積層された状態を示す平面図である。このように一体化された各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fの各極片251a,251b,251c,251d,251e,251fを夫々略90°曲折して、図5に示すようなステータヨーク102Lを得る。
0027
なお、本実施の形態で各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fは珪素鋼板材800から下方へ打ち抜かれて順次積層されるものとしたが、各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fを打ち抜いた後、珪素鋼板材800の上側へ排出して積層することも勿論可能である。また、前記嵌合孔255a及び嵌合凹凸255b,255c,255d,255d,255e,255fは所望の位置及び個数で設けることが可能であるが、各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fに作用する嵌着力が均一となるように、複数の嵌合凹凸を円周方向に略均等となるように所定間隔で配置することが好ましい。また、レーザ溶接等、薄板材同士を積層するための他の固着手段を併用することも可能である。
0028
図11は、コアヨーク103及びコイル104を示すものであるが、図に示すように、コアヨーク103は、4個のコアヨーク片30が、ハブ軸1を挿通可能な環状に組み合わされてなり、コイル104が巻回されるボビン40の中空部40aに収容されている。各コアヨーク片30の両端面には、前記ステータヨーク102L,102Rのコア嵌合孔23に嵌入される嵌合凸部31が夫々凸設されており、コアヨーク103の両端にステータヨーク102L,102Rを嵌合して、該ステータヨーク102L,103Rを磁気的に連結できるようになっている。このようなコアヨーク片30は公知且つ任意の構成が可能であり、例えば珪素鋼板や電磁鉄材等から作製することができ、また、フェライト等の粉末焼結材を用いて一体のものとして作製してもよい。
0029
前記ボビン40は、コイル104を巻回するための樹脂製のものであり、外周面にコイルを巻回するための溝41が形成されている。また、ボビン40の上部には、外周縁から半径方向へスリット42が形成されており、ボビン40に巻回されたコイルの内周側の一端を該スリット42から引き出しておくことができるようになっている。このようなボビン40の中空部40aに前記コアヨーク103が配設され、一方、ボビン40の溝41にコイル104が巻回されることにより、コアヨーク103の周囲にコイル104が配置される。
0030
このように構成されたコアヨーク103、コイル104、及びボビン40が、図1に示すように、ハブ軸1に外嵌され、更にコアヨーク103両端の各嵌合凸部31にステータヨーク102L,102Rを夫々嵌合し、これらを一体としてナット等によりハブ軸1に固定して、本クローポール型発電機100の内側固定子が構成されている。
0031
以下、本クローポール型発電機100の動作について説明する。
本クローポール型発電機100が装備された自転車を走行させると、自転車の車輪がハブ軸1を軸として回転し、ハブケーシング2が回転するとともに、その内周面に円環状に配置された永久磁石101が回転する。該永久磁石101の28極は、その内側に配置されたステータヨーク102L,102Rの各極片21L,21Rと対応しており、永久磁石101の回転により該ステータヨーク102L,102R及びコアヨーク103に交番磁束が生じて、コイル104に誘導電流が流れる。
0032
図12は、前記交番磁束を示す模式図であるが、ステータヨーク102Lの極片21Lから円盤部20L、コアヨーク103、ステータヨーク102Rの円盤部21R、極片21Rへと交番磁束Gが生じた場合に、該交番磁束Gの磁束方向周りに渦電流が発生する。ここで、ステータヨーク102L,102Rの各円盤部20L,2ORに注目すると、磁束方向は各円盤部20L,2ORの半径方向であり、渦電流Iは各円盤部20L,20Rの厚み方向で発生するが、ステータヨーク102L,102Rは前述したような積層体であり、各円盤部20L,20Rは、6枚の薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fが厚み方向に積層されたものであるので、前記渦電流Iは各薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fの境界により流路が分断されて、流れ難くなる。これにより、各円盤部20L,20Rの厚み方向に発生する渦電流Iを抑制する。これにより、クローポール型発電機100の発電効率が向上される。
0033
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るクローポール型発電機によれば、環状に配置された永久磁石と、複数の爪状の極片を夫々有し、該各極片が円周方向に交互に並列し且つ前記永久磁石と対向するように配置された2つのステータヨークと、前記2つのステータヨークを磁気的に連結するコアヨークと、前記コアヨークの周囲に配置されたコイルと、を具備してなるクローポール型発電機において、前記ステータヨークは、円盤部と、該円盤部周縁から周方向に所定間隔で、且つその軸方向の長さがステータヨークの外側に配置されるに従って順次短くなるように軸方向へ延設された複数の極片とを備えてなる複数の薄板材が、厚み方向に積層されたものとしたので、ステータヨークの円盤部の厚み方向へ渦電流が流れ難くなり、ステータヨークにおける渦電流の発生を抑制して、クローポール型発電機の発電効率を向上させることができる。これにより、軽量且つ小型であり、起電力の大きなクローポール型発電機を実現することが可能である。また、各薄板材の極片を夫々永久磁石と対向させることができ、各薄板材に交番磁束が効率良く発生する。これにより、クローポール型発電機の発電効率を向上させることができる。
0034
また、本発明によれば、前記各薄板材を、その厚み方向に設けられた嵌合凹凸又は嵌合孔により夫々嵌合されて一体とされたものとしたので、加工及び組立作業が容易となる。これにより、クローポール型発電機の組立コストを軽減することが可能となる。
0035
また、前記各薄板材を珪素鋼板材から作製したので、各薄板材を、磁束が通り易く且つ電気抵抗が大きなものすることができ、ステータヨークに生ずる渦電流を一層抑制することができる。また、前記クローポール型発電機を、自転車の車輪のハブ軸に固定されて用いられる自転車用のものとすることにより、小型、軽量であり、且つ自転車の車輪の回転数程度の回転力で照明ランプ用等に十分な電力を安定して発生させるハブダイナモを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自転車の車輪のハブ軸1に固定されたクローポール型発電機100の全体構成を示す正面図である。
【図2】 クローポール型発電機100の側面図である。
【図3】 永久磁石101の構成を示す正面図である。
【図4】 (a)は、組み合わされた状態のステータヨーク102L,102Rを示す正面図であり、(b)は、これらの側面図である。
【図5】 (a)は、ステータヨーク102Lの縦断面を示す断面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【図6】 薄板材25aの構成を示す平面図である。
【図7】 薄板材25fの構成を示す平面図である。
【図8】 (a)は、嵌合凹凸255fを示す部分断面であり、(b)は、嵌合状態の嵌合孔255a及び嵌合凹凸255b,255c,255d,255e,255fを示しす部分断面図である。
【図9】 ステータヨーク102の作製方法を説明するための工程配置図である。
【図10】 (a)は、積層状態の薄板材25a,25b,25c,25d,25e,25fの構成を示す平面図であり、(b)は、これらの縦断面を示した断面図である。
【図11】 (a)は、コアヨーク103、コイル104、ボビン40の構成を示す正面図であり、(b)は、これらの部分断面を示した側面図である。
【図12】 本クローポール型発電機100に生じた交番磁束G及び渦電流Iを示す模式図である。
【符号の説明】
1 ハブ軸
100 クローポール型発電機
101 永久磁石
102L,102R ステータヨーク
103 コアヨーク
104 コイル
20L,20R 円盤部
21L,21R 極片
25a,25b,25c,25d,25e,25f 薄板材
251a,251b,251c,251d,251e,251f極片
255b,255c,255d,255e,255f 嵌合凹凸
255a 嵌合孔
800 珪素鋼板材

Claims (4)

  1. 環状に配置された永久磁石と、複数の爪状の極片を夫々有し、該各極片が円周方向に交互に並列し且つ前記永久磁石と対向するように配置された2つのステータヨークと、前記2つのステータヨークを磁気的に連結するコアヨークと、前記コアヨークの周囲に配置されたコイルと、を具備してなるクローポール型発電機において、
    前記ステータヨークは、円盤部と、該円盤部周縁から周方向に所定間隔で、且つその軸方向の長さがステータヨークの外側に配置されるに従って順次短くなるように軸方向へ延設された複数の極片とを備えてなる複数の薄板材が、厚み方向に積層されたものであることを特徴とするクローポール型発電機。
  2. 前記各薄板材は、その厚み方向に設けられた嵌合凹凸又は嵌合孔により夫々嵌合されて一体とされたものである請求項1記載のクローポール型発電機。
  3. 前記各薄板材は、珪素鋼板材から作製されたものである請求項1又は2に記載のクローポール型発電機。
  4. 前記クローポール型発電機は、自転車の車輪のハブ軸に固定されて用いられる自転車用のものである請求項1乃至3のいずれかに記載のクローポール型発電機。
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