JP3740354B2 - プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に用いられる電子写真感光体及び導電部材に関し、特には、プリンタ、ファクシミリ及び複写機等の電子写真装置及び該装置に着脱自在のプロセスカートリッジに用いられる電子写真感光体、帯電部材、現像剤担持体部材、転写部材、クリーニング部材及び除電部材等の被接触物を電気的にコントロールする導電部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真プロセスにおける帯電プロセスは、金属ワイヤーに高電圧(直流電圧6〜8kV)を印加して発生するコロナシャワーにより被帯電体である感光体面を所定の極性・電位に一様帯電させるコロナ帯電器が広く利用されていた。しかし、高圧電源を必要とする、比較的多量のオゾンが発生する等の問題があった。
【0003】
これに対して、帯電部材を感光体に接触させながら電圧を印加して、感光体表面を帯電させる接触帯電方式が実用化されている。これは、感光体に、ローラ型、ブレード型、ブラシ型及び磁気ブラシ型等の電荷供給部材としての帯電部材を接触させ、この接触帯電部材に所定の帯電バイアスを印加して感光体面を所定の極性・電位に一様帯電させるものである。
【0004】
この帯電方式は、電源の低電圧化とオゾンの発生量が少ないという利点を有している。この中でも特に接触帯電部材として導電ローラ(帯電ローラ)を用いたローラ帯電方式が帯電の安定性という点から好ましく用いられている。
【0005】
しかしながら、帯電の均一性に関してはコロナ帯電器と比較してやや不利である。
【0006】
帯電均一性を改善するために、特開昭63−149669号公報に開示されるように、所望の被帯電体表面電位Vdに相当する直流電圧に帯電開始電圧(VTH)の2倍以上のピーク間電圧を持つ交流電圧成分(AC電圧成分)を重畳した電圧(脈流電圧;時間とともに電圧値が周期的に変化する電圧)を接触帯電部材に印加する「AC帯電方式」が用いられる。これはAC電圧による電位のならし効果を目的としたものであり、被帯電体の電位はAC電圧のピークの中央である電位Vdに収束し、環境等の外乱には影響されることはなく、接触帯電方法として優れた方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、直流電圧印加時における放電開始電圧(VTH)の2倍以上のピーク間電圧である高圧の交流電圧を重畳させるため、直流電源とは別に交流電源が必要となり、装置自体のコストアップを招く。更には、交流電流を多量に消費することにより、帯電ローラ及び感光体の耐久性が低下し易いという問題点があった。
【0008】
また、これらの問題点は、帯電ローラに直流電圧のみを印加して帯電を行うことにより解消されるものの、帯電ローラに直流電圧のみを印加すると、以下の問題点が発生した。
【0009】
前記従来の帯電部材に直流電圧のみを印加すると、感光体等の被帯電体表面に所望の帯電電位以上に過剰に帯電された電位ムラが発生する(以後、過剰帯電電位ムラと呼ぶ)。特に、一次帯電前に感光体上の電位を消去するための工程である前露光のない電子写真プロセスにおいて、ハーフトーン画像領域の電位部に発生し易い。表面電位計を用いて、ハーフトーン電位部の感光体表面電位を測定すると、感光体の2周目以降の位置に相当する場所で電位差が数十ボルト程度過剰に帯電された電位ムラを観測することができる。
【0010】
このような問題の発生する従来の帯電ローラを用いて、例えば、反転現像方式を用いた電子写真装置によりハーフトーン画像を出力すると、上記の過剰帯電電位ムラは画像上、部分的な白抜けやガサついたハーフトーン画像面となって現れ、画像品質が低下するという問題があった。この過剰帯電電位ムラの発生は、低温低湿環境において、特に顕著に現れる傾向がある。
【0011】
直流電圧のみを印加して帯電の均一性を得る方法として、特開平5−341626号公報において、帯電部材と被帯電体との間に形成される、上流側の微少ギャップに、光照射(ニップ露光)し、被帯電体面の電荷を除去して、下流側の微少ギャップを介して帯電を行う技術が開示されている。この方法により、比較的均一に被帯電体面を帯電することができるが、十分ではなかった。
【0012】
また、接触帯電方式を用いる電子写真装置においては、帯電部材の汚れ(現像剤の表面付着)による帯電不良により画像濃度ムラ等が生じ、耐久性に問題が生じる傾向にあり、帯電部材の汚れによる帯電不良の影響を防止することが複数枚のプリントを可能にするため急務であった。特に、帯電部材に直流電圧のみを印加するDC帯電方式の場合、帯電部材の汚れの影響がAC帯電方式に比べ、画像不良として現れ易い傾向にある。
【0013】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、導電部材に直流電圧のみを印加して被帯電体の帯電処理を行った場合でも、過剰帯電電位ムラが発生しにくいプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、導電部材の汚れに起因した帯電不良が発生しにくく、長期にわたって良好な帯電特性を維持することのできるプロセスカートリッジ及び該電子写真装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、ドラム型の電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触配置され、直流電圧のみの電圧が印加される帯電ローラとを一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、
該電子写真感光体が支持体、電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に有し、
該電荷輸送層が12〜40μmの厚さを有し、
該帯電ローラが導電性支持体及び該導電性支持体上に設けられた被覆層を有し、
温度15℃、湿度10%の環境下、該帯電ローラと円筒電極とを接触させ、該帯電ローラ及び該円筒電極が停止した状態で該帯電ローラに−1000Vの直流電圧を印加し、該帯電ローラを流れる電流値を読み取り、その波形データを
I=I 0 exp(−t/τ)
〔Iは電流値、I 0 は初期の電流値、tは時間〕
で表したときの、該帯電ローラの電流の時定数τが0.1秒以下である
ことを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0016】
また、本発明は、ドラム型の電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触配置された帯電ローラと、該帯電ローラに直流電圧のみの電圧を印加するための電源とを有する電子写真装置において、
該電子写真感光体が支持体、電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に有し、
該電荷輸送層が12〜40μmの厚さを有し、
該帯電ローラが導電性支持体及び該導電性支持体上に設けられた被覆層を有し、
温度15℃、湿度10%の環境下、該帯電ローラと円筒電極とを接触させ、該帯電ローラ及び該円筒電極が停止した状態で該帯電ローラに−1000Vの直流電圧を印加し、該帯電ローラを流れる電流値を読み取り、その波形データを
I=I 0 exp(−t/τ)
〔Iは電流値、I 0 は初期の電流値、tは時間〕
で表したときの、該帯電ローラの電流の時定数τが0.1秒以下である
ことを特徴とする電子写真装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の導電部材を接触帯電部材(帯電ローラ)として用いる電子写真装置を示す。この帯電部材に電圧を印加すると、帯電部材と感光体との微少な空間で放電が起こって感光体表面が帯電される。
【0018】
我々の検討では帯電部材から流れる電流は、図4に示すような減衰曲線となることがわかった。
【0019】
より均一な帯電を行うためには、図4に示すような一定値に落ち着いた定常状態における放電電流により感光体面が帯電されるのが最も好ましいと考えられる。
【0020】
安定した定常状態に比べ、電圧が印加された初期の段階では、帯電部材から多量の電流が流れている(I0 )。つまり、帯電部材は電流が流れ始めた初期においては抵抗の低い状態にあると考えられる。言い換えると、電流が流れ始めた初期の段階は、金属のような抵抗の低い導電体で帯電処理を行っているようなものである。我々のこれまでの検討で金属を用いて感光体を帯電処理しても均一な帯電面が得られないことが分かっている。
【0021】
即ち、帯電部材表面のある一点が感光体との放電領域に達した時、瞬時に帯電部材の放電電流が定常状態になる(I1 )ことが、均一な帯電処理を行うためには理想であると我々は考えた。そこで、我々は帯電部材の放電電流の減衰曲線の変化の目安として時定数τに着目したのである。
【0022】
帯電部材の時定数と放電領域を通過する時間との関係については、特開平10−26866号公報で開示されているが、特開平10−26866号公報で、発明が解決しようとする課題に挙げられている「局部帯電ムラ」という現象と、本発明が解決しようとする課題である「過剰帯電電位ムラ」という現象は異なった現象である。例えば、特開平10−26866号公報には、帯電部材の表面移動速度が速くなると「局部帯電ムラ」という現象が発生し易いと記述されているが、本発明が解決しようとする課題である「過剰帯電電位ムラ」は、我々が検討を重ねた結果、特開平10−26866号公報とは逆に、帯電部材の表面移動速度が遅い方が発生し易い傾向にあった。
【0023】
また、特開平10−26866号公報では時定数τを静電容量Cと抵抗値Rの積から計算により求めている。この特開平10−26866号公報で記載される方法で時定数τを算出した場合、本発明の導電部材と、そうでない他の導電部材とが同じような時定数τの値を持つことがわかった。しかしながら、これら両者の導電部材を「過剰帯電電位ムラ」について評価検討を行ったところ、本発明の導電部材は過剰帯電電位ムラの発生はなかったが、同じような時定数を持つ他の導電部材においては、過剰帯電電位ムラが発生した。
【0024】
我々が鋭意検討を重ねた結果、図5に示すような装置により、導電部材に直流電圧を印加して導電部材の電流値をレコーダーに読み込み、得られた電流値の波形データをもとに、時定数τを近似式により算出した場合、上述した特開平10−26866号公報に記載された時定数の計算方法では、同じような時定数を持つ導電部材であっても、異なった時定数τを示すことがわかり、両者を区別することが可能となった。なお、図中、2は導電部材、11は円筒電極(金属ローラ)、12は固定抵抗器、13はレコーダー、S3は電源を示す。
【0025】
特に、図5に示すような装置において、導電部材へ印加する直流電圧をV0 としたとき、直流電圧V0 の値を、導電部材が被帯電体を帯電する時の放電開始電圧VTH以上の高い電圧とすることにより、本発明の導電部材とそうでない導電部材との時定数τの差を明確に区別できることがわかった。
【0026】
また、導電部材は被帯電体と接触しているため、実際の帯電時の導電部材の抵抗は電気的な接触抵抗を含み、なおかつ、導電部材と被帯電体との接触面積及び、導電部材の変形具合にも依存する。よって、導電部材の電流値は導電部材と電極との接触状態を被帯電体とのものと同一にして測定した電流値が実際の帯電時の状態を反映する。そこで本発明では、図5のような電流測定方法により実際の帯電時に近い導電部材の電流値を求めることにしたのである。
【0027】
更に、過剰帯電電位ムラは低温低湿環境において顕著に現れることから、導電部材の電流値の測定は低温低湿環境(例えば温度15℃、湿度10%)において行い、そして、得られた電流値より時定数を求めるのが好ましい。
【0028】
本発明の測定方法により算出した電流の時定数τの値が、0.1以下である導電部材は、「過剰帯電電位ムラ」の発生を防止するのに大変有効であることがわかった。
【0029】
また、本発明においては、導電部材の表面の静摩擦係数が1.0以下であれば、導電部材表面に汚れが付着しにくくなり導電部材の汚れに起因した帯電不良が発生しにくく、本発明の導電部材の構成と相乗的に作用し、非常に優れた画像を得ることができる。特に、図1のように、独立したクリーニング手段を有さず、転写後感光体上に残留したトナーを現像手段により回収する、所謂現像兼クリーニング(クリーナーレス)方式を採用し電子写真装置の複数枚プリントを可能にするのに有効である。
【0030】
また、本発明においては、導電部材の表面粗さをJIS B0601における十点平均表面粗さRzで10μm以下にすることで、導電部材表面の凹凸に起因した帯電ムラの発生を防止することができ、本発明の導電部材の構成と相乗的に作用し、非常に均一な帯電を可能にする。
【0031】
次に、本発明の電子写真装置の概略構成について説明する。
【0032】
(1)電子写真装置例
図1は本発明のプロセスカートリッジを具備する電子写真装置例の概略構成図である。本例の電子写真装置は、転写式電子写真利用の、反転現像方式、現像兼クリーニング方式(クリーナーレス)の装置である。
【0033】
1は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体であり、矢印の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0034】
2は感光体の帯電手段としての帯電ローラ(本発明の導電部材)であり、感光体1に所定の押圧力で接触させてあり、本例では帯電ローラを駆動し、感光体1と等速回転する。この帯電ローラ2に対して帯電バイアス印加電源S1から所定の直流電圧(この場合−1300Vとした)が印加されることで感光体1の表面が所定の極性電位(暗部電位−700Vとした)に一様に接触帯電方式・DC帯電方式で帯電処理される。
【0035】
3は露光手段であり、例えばレーザービームスキャナーである。回転感光体1の一様帯電処理面に該露光手段3により目的の画像情報に対応した露光Lがなされることにより、感光体帯電面の露光明部の電位(明部電位−120Vとした)が選択的に低下(減衰)して静電潜像が形成される。
【0036】
4は反転現像手段であり、感光体面の静電潜像の露光明部に、感光体の帯電極性と同極性に帯電(現像バイアス−350V)しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー画像として可視化する。図中、4aは現像ローラ、4bはトナー供給ローラ、4cはトナー層厚規制部材を示す。
【0037】
5は転写手段としての転写ローラであり、感光体1に所定の押圧力で接触させて転写ニップ部を形成させてあり、感光体の回転と順方向に感光体の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S2からトナーの帯電極性とは逆極性の転写電圧が印加される。転写ニップ部に対して不図示の給紙機構部から転写材Pが所定の制御タイミングで給紙され、その給紙転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラ5によりトナーの帯電極性とは逆極性に帯電されることにより、転写ニップ部において感光体1面側のトナー画像が転写材Pの表面側に静電転写される。
【0038】
転写ニップ部でトナー画像の転写を受けた転写材は回転感光体面から分離されて、不図示のトナー画像定着手段へ導入されてトナー画像の定着処理を受けて画像形成物として出力される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合はこの画像形成物が不図示の再循環搬送機構に導入されて転写ニップ部へ再導入される。
【0039】
転写残余トナー等の感光体上の残留物は、帯電ローラ2により感光体の帯電極性と同極性に帯電される。
【0040】
そして、その転写残余トナーは露光部を通って現像手段4に至って、バックコントラストにより電気的に現像装置内に回収され、現像兼クリーニング(クリーナーレス)を達成したものである。
【0041】
本例では電子写真感光体1、帯電ローラ2、現像手段4を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在のプロセスカートリッジ6としている。この際、現像手段は別体としてもよい。
【0042】
(2)電子写真感光体
本発明のプロセスカートリッジ及び電子写真装置に用いられる像担持体である電子写真感光体1は以下のように構成される(図6)。
【0043】
感光層1bは、導電性の支持体1aの上に設けられる。
【0044】
支持体1aとしては、アルミニウム及びステンレス等の金属、紙、及びプラスチック等の円筒状シリンダー、シートまたはフィルム等が用いられる。また、これらの円筒状シリンダー、シートまたはフィルムは、必要に応じて導電性ポリマー層あるいは酸化スズ、酸化チタン及び銀粒子等の導電性粒子を含有する樹脂層を有していてもよい。
【0045】
また、図6に示すように感光層1bは支持体1a上に少なくとも電荷発生層11b及び電荷輸送層12bを順次積層して構成される。このとき、図7に示すように支持体1aと感光層1b(電荷発生層11b)の間には、バリアー機能と接着機能をもつ下引き層1cを設けることができる。
【0046】
下引き層は感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良及び感光層の電気的破壊に対する保護等のために形成される。その厚さは0.2〜2μmであることが好ましい。
【0047】
電荷発生物質としては、ピリリウム、チオピリリウム系染料、フタロシアニン系顔料、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラトロン顔料、アゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン系顔料、非対称キノシアニン及びキノシアニン等を用いることができる。
【0048】
電荷輸送物質としては、ヒドラゾン系化合物、ピラゾリン系化合物、スチリル系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアリールメタン系化合物及びポリアリールアルカン系化合物等を用いることができる。
【0049】
電荷発生層11bは、前記の電荷発生物質を質量基準で0.2〜4倍量の結着樹脂及び溶剤と共に、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル及び高圧衝突分散機等の方法でよく分散し、塗布、乾燥されて形成される。その厚さは5μm以下、特には0.01〜1μmの範囲が好ましい。
【0050】
電荷輸送層12bは一般的には前記の電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解し、塗布して形成する。電荷輸送物質と結着樹脂との混合割合は質量基準で2:1〜1:2であることが好ましい。溶剤としてはアセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル及び酢酸エチル等のエステル類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、及びクロルベンゼン、クロロホルム及び四塩化炭素等の塩素系炭化水素類等が用いられる。この溶液を塗布する際には、例えば浸漬コーティング法、スプレーコーティング法及びスピンコーティング法等の塗工法を用いることができ、乾燥は好ましくは10℃〜200℃、より好ましくは20℃〜150℃の範囲の温度で、好ましくは5分〜5時間、より好ましくは10分〜2時間の時間で送風乾燥または静止乾燥下で行うことができる。
【0051】
形成した電荷輸送層の厚さは、12〜40μmであり、12〜23μmであることが好ましく、特には12〜18μmであることが好ましい。電荷輸送層の厚さが40μmを超える電子写真感光体では、直流電圧のみを印加して接触帯電を行った場合に、低温低湿環境において、画像上に過剰帯電電位ムラに起因すると考えられる微小な白抜けやガサツキが発生し易くなる。また、厚さが12μm未満では、削れによる電位変動が大きくなるという傾向がある。例えば、同じ削れ量において、電荷輸送層の薄い感光体は、電荷輸送層の厚い感光体に比べ、容量の変化が大きく、その分電位変動が大きくなる。特にDC帯電方式の場合は、削れにより放電開始電圧VTHが変化してしまうため帯電電位安定性や耐久性の面で好ましくない。
【0052】
なお、層の厚さは電子写真感光体の断面を透過型電子顕微鏡で観察することによって測定することができる。
【0053】
電荷輸送層を形成するのに用いられる結着樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂及び不飽和樹脂等から選ばれる樹脂が好ましい。特に好ましい樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリカーボネート樹脂、ジアリルフタレート樹脂及びポリアリレート樹脂等が挙げられる。
【0054】
また、電荷発生層あるいは電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び潤滑剤等種々の添加剤を含有させることができる。
【0055】
本発明における電子写真感光体の表面を粗面にする方法としては、研磨剤を用いたり、サンドブラスト法等による機械的な研磨方法の他、感光体の表面層中に金属酸化物や樹脂粉体等の電気的に不活性な粒子を分散する方法等を用いることができる。
【0056】
(3)帯電ローラ
本発明における時定数τは、導電部材を構成する材料、用いる材料の量比及び用いる材料の混合状態等の様々な要因に依存するが、本発明においては時定数が0.1以下であることが重要なのであって、その実現手段は特に限定されることはない。
【0057】
本発明においては、時定数が0.05秒以下であることが好ましく、特には0.00001秒以上であることが好ましい。時定数が0.1秒を超えると、本願発明の顕著な効果を得ることができず、0.00001秒未満であると、電子写真感光体にピンホールが存在する場合、ピンホールの箇所は勿論、その周囲の電位も降下し、特にハートーン画像においてピンホールの周囲がにじんだような画像になり易い。
【0058】
例えば、帯電部材は図2に示すようにローラ形状であり、導電性支持体2aと、被覆層としてその外周に一体に形成された弾性層2bと、該弾性層の外周に形成された表面層2cから構成されている。
【0059】
本発明の帯電部材の他の構成を図3に示す。図3に示すように帯電部材は、弾性層2b及び抵抗層2dと表面層2cからなる3層であってもよいし、抵抗層2dと表面層2cの間に第2の抵抗層2eを設けた、4層以上を導電性支持体2aの上に形成した構成としてもよい。
【0060】
本発明に用いられる導電性支持体2aは、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の金属材料の丸棒を用いることができる。更に、これらの金属表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施してもさしつかえないが、導電性を損なわないことが必要である。
【0061】
帯電ローラ2において、弾性層2bは被帯電体としての感光体1に対する給電や、帯電ローラ2の感光体1に対する良好な均一密着性を確保するために適当な導電性と弾性を持たせてある。また、帯電ローラ2と感光体1の均一密着性を確保するために弾性層2bを研磨によって中央部を一番太く、両端部に行くほど細くなる形状、いわゆるクラウン形状に形成することも好ましい。一般に使用されている帯電ローラ2が、支持体2aの両端部に所定の押圧力を与えて感光体1と当接されているので、中央部の押圧力が小さく、両端部ほど大きくなっているために、帯電ローラ1の真直度が十分であれば問題ないが、十分でない場合には中央部と両端部に対応する画像に濃度ムラが生じてしまう場合がある。クラウン形状はこれを防止するために形成する。
【0062】
弾性層2bの導電性はゴム等の弾性材料中にカーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物等の電子電導機構を有する導電剤及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン電導機構を有する導電剤を適宜添加することにより1010Ωcm未満に調整されるのがよい。弾性層2bの具体的弾性材料としては、例えば、天然ゴムやエチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)及びクロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、更にはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂及びシリコーン樹脂等も挙げられる。本発明の電気特性を達成するためには、特に中抵抗の極性ゴム(例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、CR及びウレタンゴム等)やポリウレタン樹脂を弾性材料として用いるのが好ましい。これらの極性ゴムやポリウレタン樹脂は、ゴムや樹脂中の水分や不純物がキャリアとなり、わずかではあるが導電性をもつと考えられ、これらの導電機構はイオン伝導であると考えられる。但し、これらの極性ゴムやポリウレタン樹脂に導電剤を全く添加しないで弾性層を作成し、得られた帯電部材は低温低湿環境において、抵抗値が高くなり1010Ωcm以上となってしまうものもあるため帯電部材に高電圧を印加しなければならなくなる。
【0063】
そこで、低温低湿環境で帯電部材の抵抗値が1010Ωcm未満になり、かつ、導電部材の時定数τが0.1秒以下になるように前述した電子導電機構を有する導電剤やイオン導電機構を有する導電剤を適宜添加して調整するのが好ましい。我々が鋭意検討を重ねた結果、イオン導電機構を有する導電剤を添加して抵抗調整を行った場合の方が帯電部材の電流の時定数が小さくなる傾向にあることがわかった。しかしながら、イオン導電機構を有する導電剤は抵抗値を低くする効果が小さく、特に低温低湿環境でその効果が小さい。そのためイオン導電機構を有する導電剤の添加と併せて電子導電機構を有する導電剤を補助的に添加して抵抗調整を行ってもよい。
【0064】
電子導電機構を有する導電剤としては、異形性の層状化合物やウィスカ等、例えばグラファイト等を添加した弾性層とするのが好ましい傾向にあった。
【0065】
また、これらの弾性材料を発泡成形した発泡体を弾性層2bに用いてもよい。
【0066】
図3に示す抵抗層2dは、弾性層に接した位置に形成されるため弾性層中に含有される軟化油や可塑剤等の帯電部材表面へのブリードアウトを防止する目的で設けたり、帯電部材全体の電気抵抗を調整する目的で設ける。
【0067】
本発明に用いる抵抗層を構成する材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの材料は単独または2種類以上を混合してもよく、共重合体であってもよい。本発明に用いる抵抗層2dは、導電性もしくは半導電性を有している必要がある。導電性、半導電性の発現のためには、各種電子電導機構を有する導電剤(導電性カーボン、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル及び鉄粉等)あるいはイオン電導機構を有する導電剤(アルカリ金属塩及びアンモニウム塩等)を適宜用いることができる。この場合、所望の電気抵抗を得るためには前記各種導電剤を2種以上併用してもよい。但し、環境変動や感光体の汚染を考慮すると、電子導電機構を有する導電剤であることが好ましい。
【0068】
抵抗層の抵抗値は、104 〜1012Ωcmであることが好ましく、時定数τを0.1秒以下にするためには弾性層の抵抗の10-2〜105倍であることが好ましい。
【0069】
また、厚さは5〜1000μmであることが好ましい。
【0070】
また、前述のように、本発明においては、導電部材の表面の静摩擦係数が1.0以下であることが好ましい。この特性を達成するためには、静摩擦係数が0.50以下の結着樹脂を材料選択することが好ましい。
【0071】
以下、導電部材の表面の静摩擦係数をμsとし、表面層の結着樹脂の静摩擦係数をμsB とする。
【0072】
本発明において、表面層の材料選択における結着樹脂の静摩擦係数μsB の測定は、アルミニウムシート上に結着樹脂を塗膜として形成し、サンプルシートを得、静摩擦係数測定器;HEIDON トライボギアミューズ TYPE:941(新東科学(株)製)を用いて測定し、導電部材表面層の結着樹脂の静摩擦係数μsB とした。
【0073】
この測定方法より得られた0.50以下の静摩擦係数μsB を有する材料に導電剤及びその他添加剤を含有させ、導電部材の表面層とする。そして、更に導電部材として表面が静摩擦係数μs1.0以下となるように導電部材を材料設計する。
【0074】
本発明における導電部材の表面の静摩擦係数μsの測定は、図8にその概要を示す。本測定方法は測定物がローラ形状の場合に好適な方法で、オイラーのベルト式に準じた方法であり、この方法によれば、測定物である導電部材と所定の角度(θ)で接触したベルト(厚さ20μm、幅30mm、長さ180mm)は、片方の端部が測定部(荷重計)と、他端部が重りWと結ばれている。この状態で導電部材を所定の方向、速度で回転させた時、測定部で測定された力をF(g)、重りの重さをW(g)としたとき、摩擦係数(μ)は以下の式で求められる。
【0075】
μ=(1/θ)ln(F/W)
この測定方法により得られるチャートの一例を図9に示す。ここにおいて、導電部材を回転させた直後の値が回転を開始するのに必要な力であり、それ以降が回転を継続するのに必要な力であることがわかるので、回転開始点(即ち、t=0秒時点)の力が静摩擦力ということができ、また、0<t(秒)≦60の任意の時間における力が任意の時間における動摩擦力ということができる。
【0076】
従って、静摩擦係数:μs=(1/θ)ln(F<t=0> /W)で求めることができる。
【0077】
本測定方法において、ベルトの表面(導電部材と接触する面)を所定の材料(例えば感光体の最外層や現像剤を適当な手段によって塗布したもの、あるいはステンレス等の標準物質)とすることによって様々な物質に対する摩擦係数を求めることができる。つまり、接触する面の材質や回転速度、荷重等を実機のプロセス条件に合せればより好ましいが、導電部材と感光体との摩擦係数の測定と導電部材とステンレスとの摩擦係数の測定を行い比較検討の結果、ステンレスに対する摩擦係数を用いても良いことが判明した。即ち、導電部材と感光体との摩擦係数=K×導電部材とステンレスとの摩擦係数で概ね表される。ここで、Kは感光体表面の材料や状態によって決定される数値で、感光体材料や表面状態が同一であればほぼ一定の値となるが、それらが多少なりとも異なれば変化してしまう。
【0078】
従って、材料種やそれらの配合比、製造条件あるいは表面物性等を実際の系にできるだけ合致させることが望ましいが、そのためには、非常な煩雑さを伴うこと、及び上記の通り導電部材と感光体との摩擦係数と導電部材とステンレスとの摩擦係数が、相関関係を有するので、本発明においては、簡便のために、摩擦係数は対ステンレス(表面の十点平均粗さRzが5μm以下)、回転速度は100rpm、荷重は50gの条件で測定した。
【0079】
我々が鋭意検討を重ねた結果、導電部材の表面を上記のような物性(μs≦1.0)とした場合、導電部材表面にトナーが付着しにくくなるために総印字枚数が増えても均一な帯電を行うことができ、画像上カブリを生じることが無くなる。また、トナー付着による画像カブリの発生し易い低温低湿環境においても、総印字枚数が増しても画像カブリを生じないことがわかった。静摩擦係数μsが1.0を超える場合は導電部材表面の離型性が小さくなるため転写残余トナーが付着し易くなり、画質の劣化を招く原因となり得る。特に、低温低湿環境において画質の劣化を招く原因となり易い。従って、本発明の構成に加え、静摩擦係数μsが1.0以下であることは特に現像兼クリーニング方式(クリーナーレス方式)を採用した画像形成装置において有効である。
【0080】
また、表面層2cは、導電部材の表面を構成し、被帯電体である感光体と接触するため感光体を汚染してしまう材料構成であってはならない。
【0081】
本発明の特性を発揮させるための表面層2cの結着樹脂材料としては、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)及びオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が挙げられる。
【0082】
これらの結着樹脂に静摩擦係数を小さくする目的で、グラファイト、雲母、二硫化モリブテン及びフッ素樹脂粉末等の固体潤滑剤、あるいはフッ素系界面活性剤、ワックス及びシリコーンオイル等を添加してもよい。
【0083】
表面層には、環境変動や感光体の汚染を考慮すると、電子導電機構を有する導電剤(導電性カーボン、グラファイト、導電性酸化錫、導電性酸化チタン、銅、アルミニウム、ニッケル及び鉄粉等)を適宜用いることが好ましい。この場合、所望の電気抵抗を得るためには前記各種導電剤を2種以上併用してもよい。
【0084】
表面層の抵抗値は、104〜1015Ωcmであることが好ましく、時定数τを0.1秒以下にするためには弾性層の抵抗の10-2〜109 倍であることが好ましい。
【0085】
また、厚さは1〜500μm、特には1〜50μmであることが好ましい。
【0086】
また、前述のように、本発明の導電部材の十点平均表面粗さRzは、10μm以下であることが好ましい。本発明の導電部材を用いる場合、導電部材の表面が粗いと、その表面の凹凸によって微妙に帯電ムラが生じ、結果として画像不良が生じてしまうことがある。あるいは、感光体表面を侵食(削れ等)する恐れがある。従って、導電部材の表面は、より滑らかな方が好ましく、十点平均表面粗さRzが10μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
【0087】
(4)現像剤(トナー)
本発明に用いられるトナーとしては、特に制限されるものではなく、公知のものが使用できる。帯電ローラへのトナー付着量を低減するためには、転写効率の良い、球状トナー粒子を用いることが好ましい。
【0088】
また、現像兼クリーニング方式を採用した電子写真装置においては、転写効率の良い、球状トナー粒子を用いることが特に好ましい。球状トナー粒子としては、例えば重合法により生成されたトナー粒子を用いることが好ましい。
【0089】
【実施例】
(実施例1)
<導電部材の作成>
下記の要領で本発明の導電部材としての帯電ローラを作成した。
【0090】
エピクロルヒドリンゴム(三元共重合体) 100部
四級アンモニウム塩 2部
炭酸カルシウム 30部
酸化亜鉛 5部
脂肪酸 2部
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにより10分間混練した後、エピクロルヒドリンゴム100部に対してエーテルエステル系可塑剤15部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーにより更に20分間混練し、原料コンパウンドを調整する。このコンパウンドに原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーDM 1部、ノクセラーTS 0.5部を加え、20℃に冷却した2本ロール機により10分間混練する。得られたコンパウンドを、φ6(mm、以下同様)ステンレス製芯金の周囲にローラ状になるように押出成形機にて成形し、加熱加硫成形した後、外径φ12になるように研磨処理して弾性層を形成した。弾性層の抵抗は4×106 Ωcmであった。
【0091】
上記弾性層の上に以下に示すような表面層を被覆形成した。
【0092】
表面層2cの材料として、
フルオロオレフィン(4フッ化タイプ)
ヒドロキシアルキルビニルエーテル
カルボン酸ビニルエステル
を共重合させて得られたフッ素樹脂共重合体を用い、その溶液100部(固形分50質量%)に対して、イソシアネート(HDI)5部と導電性酸化錫45部を加えた塗料を用いて、浸漬コーティング法により塗布して厚さ10μmの表面層を被覆形成しローラ形状の帯電部材を得た。表面層の抵抗は3×1014Ωcmであった。
【0093】
<電子写真感光体の作成>
外径φ30、内径φ28.5、長さ260mmのアルミニウムシリンダーを導電性支持体とした。この上にポリアミド(商品名アミランCM8000、東レ(株)製)の5%メタノール溶液を浸漬コーティング法で塗布し、厚さ0.40μmの下引き層を形成した。
【0094】
次に、下記構造式のジスアゾ顔料10部
【0095】
【化1】
及びポリビニルブチラール(商品名エスレックBLS、積水化学工業(株)製)10部及びシクロヘキサノン100部を1φガラスビーズを用いたサンドミル装置で20時間分散した。この分散液にメチルエチルケトン100部を加えて、下引き層上に塗布し、厚さ0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0096】
次に、下記構造式のトリフェニルアミン系化合物10部
【0097】
【化2】
及び下記構造式のビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量23,000)10部をモノクロロベンゼン100部に溶解した。
【0098】
【化3】
この溶液を前記電荷発生層上に塗布して100℃、1時間熱風乾燥して25μmの厚さの電荷輸送層を形成した。こうして実施例1の電子写真感光体を作成した。
【0099】
「帯電ローラの表面層材料の静摩擦係数μsB の測定」
表面層を形成したものと同一の結着樹脂を塗料化し、そのクリア塗料を用いてアルミニウムシート上にコーティングし、静摩擦係数(μsB )測定用のサンプルシートとした。
【0100】
このサンプルシートの静摩擦係数測定を静摩擦係数測定器;HEIDON トライボギア ミューズTYPE:941(新東科学(株)製)を用いて行った。静摩擦係数μsB はサンプルシートの任意の5点を測定した値の平均値とした。本実施例の表面層の結着樹脂の静摩擦係数は0.12であった。
【0101】
「帯電ローラ表面の静摩擦係数μsの測定」
前述したように図8に示すような測定装置を用いて静摩擦係数μsを測定したところ、本実施例の帯電ローラの表面の静摩擦係数μsは0.27であった。
【0102】
「帯電ローラ表面粗さの測定」
帯電ローラ表面の十点平均表面粗さRzは2.9μmであった。
【0103】
「帯電ローラの電流測定、時定数の算出」
図5に示すような装置で帯電部材(帯電ローラ)の電流測定を温度15℃、湿度10%の環境において行った。この装置は図1に示す電子写真装置において、ドラム型の感光体を同一形状の導電性の円筒電極(ステンレス製)に代えた以外は、帯電ローラの円筒電極への押圧力等は全て図1と同様として、外部電源より直流電圧(−1000V)を印加し、その時流れる電流値をレコーダーにて読み取り、その波形データを以下の近似式
I=I0 exp(−t/τ)
で表し、帯電ローラの電流の時定数τを求めた。その結果、本実施例の帯電ローラの時定数は
τ=0.021[sec]
であった。従って、実施例1のτは、τ≦0.1[sec]を満たしている。
【0104】
「帯電ローラに直流電圧のみを印加した時の画像評価」
図1に示す電子写真装置に上記で得られた帯電ローラを取り付けて、環境1(温度23℃、湿度55%)、環境2(温度32.5℃、湿度80%)、環境3(温度15℃、湿度10%)の各環境下において、画像出しを行い、帯電ローラの過剰帯電電位ムラに起因した部分的な白抜けやガサつきの発生について目視にて画像評価を行った。結果を表1に示す。但し、感光体の暗部電位VD が−700V付近となるように印加電圧を各環境で変えて画像を出力した。
【0105】
表中のAAは得られた画像が非常に良い、Aは良い、Bはハーフトーン画像において濃度ムラとガサつきがややあり、Cはハーフトーン画像において部分的な白抜けが多数ある、ことを示す。
【0106】
なお、トナーとしては、懸濁重合法により作成した球状トナー粒子(粒径8μm)を用いた。
【0107】
「帯電ローラ上のトナー付着による画像カブリ評価」
図1に示す電子写真装置に上記で得られた帯電ローラを取り付けて、環境1(温度23℃、湿度55%)、環境2(温度32.5℃、湿度80%)、環境3(温度15℃、湿度10%)の各環境下において、複数枚画像出し耐久試験を行った。得られた画像を目視にて観察することによって、帯電ローラ上にトナーが付着し、それが原因となる印字用紙上のカブリの発生について評価を行った。結果を表2に示す。
【0108】
表中のAAは得られた画像が非常に良い、Aは良い、Bはややハーフトーン画像に帯電ローラ周期の濃度のムラがあり、Cは帯電ローラ周期のカブリが見られる、ことを示す。
【0109】
その結果、全ての環境下で初期から良好な画像が得られ、10,000枚の画像出し後でも初期とほとんど変わらない画像が得られた。
【0110】
なお、トナーとしては、懸濁重合法により作成した球状トナー粒子(粒径8μm)を用いた。
【0111】
(実施例2)
帯電部材としての帯電ローラを下記の構成とした以外は、実施例1と同様の方法で帯電ローラ及び電子写真感光体を作成した。
【0112】
NBR 100部
リチウム塩 1.5部
エステル系可塑剤 25部
炭酸カルシウム 30部
酸化亜鉛 5部
脂肪酸 2部
【0113】
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにより10分間混練した後、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調整する。このコンパウンドに原料ゴムのNBR 100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーTS 3部を加え、20℃に冷却した2本ロール機により10分間混練する。得られたコンパウンドを、φ6ステンレス製芯金の周囲にローラ状になるように押出成形機により成形し、加熱加硫成形した後、外径φ12になるように研磨処理して弾性層を形成した。弾性層の抵抗は7×107 Ωcmであった。
【0114】
上記弾性層の上に以下に示すような表面層を被覆形成した。
【0115】
表面層2cを形成する材料を
ポリビニルブチラール樹脂を用い、そのエタノール溶液100部(固形分50質量%)に対して、導電性酸化チタン40部を加えた塗料を用いて、浸漬コーティング法により塗布して厚さ5μmの表面層を被覆形成しローラ形状の帯電部材を得た。表面層の抵抗は1×1013Ωcmであった。
【0116】
表面層を形成した塗料と同一の結着樹脂を塗料化し、そのクリア塗料を用いてアルミニウムシート上にコーティングし、静摩擦係数測定用の表面層サンプルシートとした。
【0117】
本実施例の結着樹脂の静摩擦係数μsB は0.26であった。
【0118】
また、本実施例の帯電ローラ表面の静摩擦係数μsは、図8に示すような方法で測定したところ、0.36であった。
【0119】
また、帯電ローラの電流の時定数は実施例1同様の方法で算出した。その結果、時定数τは
τ=0.019[sec]
であった。従って、実施例2のτは、τ≦0.1[sec]を満たしている。
【0120】
また、帯電ローラ表面の十点平均表面粗さRzは1.8μmであった。
【0121】
得られた帯電ローラについて、実施例1同様の方法で、過剰帯電電位ムラについての画像評価及びトナー付着によるカブリについての画像評価を行った。
【0122】
更に、前記環境3(温度15℃、湿度10%)において、電荷輸送層の厚さを振って過剰帯電電位ムラについて画像評価した結果を表3に示した。表3に示すように、電子写真感光体の電荷輸送層の厚さが40μm以下では、過剰帯電電位ムラあるいは白ポチの発生しない良好な画像が得られた。
【0123】
(実施例3)
帯電部材としての帯電ローラを下記の構成とした以外は、実施例1と同様の方法で評価等を実施した。
【0124】
エピクロルヒドリンゴム(三元共重合体) 100部
四級アンモニウム塩 1.5部
導電性カーボングラファイト 30部
炭酸カルシウム 30部
酸化亜鉛 5部
脂肪酸 2部
【0125】
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにより10分間混練した後、エピクロルヒドリンゴム100部に対してエーテルエステル系可塑剤15部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調整する。このコンパウンドに原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーDM 1部、ノクセラーTS 0.5部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練する。得られたコンパウンドを、φ6ステンレス製芯金の周囲にローラ状になるように押出成形機により成形し、加熱加硫成形した後、ゴム部の外径が中央φ12.0、両端部φ11.9のクラウン形状になるように研磨処理して弾性層を形成した。弾性層の抵抗は5×106 Ωcmであった。
【0126】
上記弾性層の上に以下に示すような抵抗層を被覆形成した。
【0127】
抵抗層2dの材料として、
エピクロルヒドリンゴム(二元共重合体) 100部
をトルエン溶媒により分散溶解して抵抗層用塗料を作成する。この塗料を弾性層2b上に浸漬コーティング法により塗布して厚さ100μmの抵抗層2dを被覆形成した。抵抗層の抵抗は8×107 Ωcmであった。
【0128】
更に、抵抗層2dの上に以下に示す表面層2cを被覆形成した。
【0129】
表面層2cの材料として、
フルオロオレフィン(4フッ化タイプ)
ヒドロキシアルキルビニルエーテル
カルボン酸ビニルエステル
【0130】
を共重合させて得られたフッ素樹脂共重合体を用い、その溶液100部(固形分50質量%)に対して、イソシアネート(HDI)5部と導電性酸化錫40部を加えた塗料を用いて、浸漬コーティング法により塗布して厚さ5μmの表面層を被覆形成しローラ形状の帯電部材を得た。表面層の抵抗は9×1014Ωcmであった。
【0131】
表面層を形成した塗料と同一の結着樹脂を塗料化し、そのクリア塗料を用いてアルミニウムシート上にコーティングし、静摩擦係数測定用の表面層サンプルシートとした。
【0132】
本実施例の結着樹脂の静摩擦係数μsB は0.12であった。
【0133】
また、本実施例の帯電ローラ表面の静摩擦係数μsは0.25であった。
【0134】
また、帯電ローラの電流の時定数は実施例1と同様の方法で算出した。その結果、時定数τは
τ=0.042[sec]
であった。従って、実施例3のτは、τ≦0.1[sec]を満たしている。
【0135】
また、帯電ローラ表面の十点平均表面粗さRzは2.5μmであった。
【0136】
(実施例4)
電子写真感光体を以下の構成とした以外は、実施例1と同様の方法で評価等を実施した。
【0137】
<電子写真感光体の作成>
電荷輸送層の結着樹脂を下記構造式のアリレート樹脂(重量平均分子量83000)に代え、厚さを35μmの構成とした以外は、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作成した。
【0138】
【化4】
(実施例5)
<帯電ローラの作成>
NBR 100部
導電性カーボンブラック 15部
エステル系可塑剤 25部
炭酸カルシウム 30部
酸化亜鉛 5部
脂肪酸 2部
【0139】
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにより10分間混練した後、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調整する。このコンパウンドに原料ゴムのNBR 100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーTS 3部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練する。得られたコンパウンドを、φ6ステンレス製芯金の周囲にローラ状になるように押出成形機により成形し、加熱加硫成形した後、外径φ12になるように研磨処理して弾性層を形成した。弾性層の抵抗は6×105 Ωcmであった。
【0140】
上記弾性層の上に以下に示すような抵抗層を被覆形成した。
【0141】
抵抗層2dの材料として、
エピクロルヒドリンゴム(二元共重合体) 100部
をトルエン溶媒により分散溶解して抵抗層用塗料を作成する。この塗料を弾性層2b上に浸漬コーティング法により塗布して厚さ50μmの抵抗層2dを被覆形成した。抵抗層の抵抗は1×108 Ωcmであった。
【0142】
上記抵抗層の上に以下に示すような表面層を被覆形成した。
【0143】
表面層2cを形成する材料を
ポリビニルブチラール樹脂を用い、そのエタノール溶液100部(固形分50質量%)に対して、導電性酸化チタン35部を加えた塗料を用いて、浸漬コーティング法により塗布して厚さ15μmの表面層を被覆形成しローラ形状の帯電部材を得た。表面層の抵抗は6×1013Ωcmであった。
【0144】
得られた帯電ローラについて、実施例1同様にローラ特性の評価を行った。
【0145】
本実施例の結着樹脂の静摩擦係数μsB は0.26であった。
【0146】
また、本実施例の帯電ローラの表面の静摩擦係数μsは0.35であった。
【0147】
また、帯電ローラの時定数は実施例1同様の方法で算出した。その結果、時定数τは
τ=0.067[sec]
であった。従って、実施例5のτは、τ≦0.1[sec]を満たしている。
【0148】
また、帯電ローラ表面の十点平均表面粗さRzは2.5μmであった。
【0149】
<電子写真感光体の作成>
実施例1の電子写真感光体の電荷輸送層の厚さを18μmとした以外、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0150】
上記の帯電ローラ、電子写真感光体を用いて、実施例1同様の評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0151】
(実施例6)
実施例1において帯電ローラの表面層の材料を以下の構成とした以外、実施例1と同様に帯電ローラ及び電子写真感光体を作成し、評価等を行った。
【0152】
表面層の材料として、
ウレタン樹脂 100部
導電性酸化チタン 60部
【0153】
をメチルエチルケトン(MEK)溶媒により分散溶解して表面層用塗料を作成する。この塗料を弾性層2b上に浸漬コーティング法により塗布して厚さ10μmの表面層を被覆形成しローラ形状の帯電部材を得た。表面層の抵抗は4×1012Ωcmであった。
【0154】
本実施例の帯電ローラ表面層の結着樹脂の静摩擦係数μsB は0.45であった。
【0155】
また、本実施例の帯電ローラ表面の静摩擦係数μsは0.82であった。
【0156】
また、本実施例の帯電ローラの電流の時定数τは、
τ=0.033[sec]
であった。従って、実施例6のτは、τ≦0.1[sec]を満たしている。
【0157】
また、帯電ローラ表面の十点平均表面粗さRzは6.2μmであった。
【0158】
(比較例1)
下記の方法で帯電ローラを作成した。
【0159】
EPDM 100部
導電性カーボンブラック 30部
酸化亜鉛 5部
脂肪酸 2部
【0160】
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにより10分間混練した後、EPDM 100部に対してパラフィンオイル15部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調整する。このコンパウンドに原料ゴムのEPDM 100部に対し加硫剤としての硫黄0.5部、加硫促進剤としてのMBT 1部、TMTD 1部、ZnMDC 1.5部を加え、20℃に冷却した2本ロール機により10分間混練する。得られたコンパウンドを、φ6ステンレス製芯金の周囲に外径φ12のロール状になるようにプレス成形機により加熱加硫成形することにより弾性層を形成した。弾性層の抵抗は7×103 Ωcmであった。
【0161】
上記弾性層の上に以下に示すような抵抗層を被覆形成した。
【0162】
抵抗層2dの材料として、
ポリウレタン樹脂 100部
導電性カーボンブラック 15部
【0163】
をメチルエチルケトン(MEK)溶媒により分散溶解して抵抗層用塗料を作成する。この塗料を弾性層2b上に浸漬コーティング法により塗布して厚さ100μmの抵抗層2dを被覆形成した。抵抗層の抵抗は5×1010Ωcmであった。
【0164】
更に、抵抗層2dの上に以下に示す表面層2cを被覆形成した。
【0165】
表面層2cの材料として、
SEBS(スチレン−エチレンブチレン−スチレン) 100部
導電性カーボンブラック 10部
【0166】
をトルエン溶媒により分散溶解して表面層用塗料を作成する。この塗料を用いて、浸漬コーティング法により塗布して厚さ5μmの表面層を被覆形成しローラ形状の帯電部材を得た。表面層の抵抗は8×1013Ωcmであった。
【0167】
表面層を形成した塗料と同一の塗料を用いてアルミニウムシート上にコーティングし、静摩擦係数測定用の表面層サンプルシートとした。
【0168】
比較例1の帯電ローラ表面層の結着樹脂の静摩擦係数μsB は0.62であった。
【0169】
また、帯電ローラ表面の静摩擦係数μsは1.07であった。
【0170】
また、帯電ローラの電流の時定数は実施例1同様の方法で算出した。その結果、時定数τは
τ=0.112[sec]
であった。従って、比較例1のτは、τ≦0.1[sec]を満たしていない。
【0171】
また、帯電ローラ表面の十点平均表面粗さRzは、10.5μmであった。
【0172】
この帯電ローラについて実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1、表2に示した。この帯電ローラを用いた電子写真装置により出力した画像には過剰帯電電位ムラが原因となる白抜けやガサつきが発生していた。なお、ハーフトーン画像領域の感光体表面電位を測定したところ、感光体の2周目に相当する位置の電位が−60Vほど過剰に帯電されていた。また、複数枚画像出し耐久試験においてトナー付着が原因となる画像濃度ムラが発生していた。
【0173】
(比較例2)
下記の方法で帯電ローラを作成した。
【0174】
NBR 100部
過塩素酸リチウム塩 5部
炭酸カルシウム 30部
酸化亜鉛 5部
脂肪酸 2部
【0175】
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにより10分間混練した後、NBR 100部に対してDOS可塑剤20部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調整する。このコンパウンドに原料ゴムのNBR 100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーTS 3部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練する。得られたコンパウンドを、φ6ステンレス製芯金の周囲にローラ状になるように押出成形機により成形し、加熱加硫成形した後、外径φ12になるように研磨処理して弾性層を得た。弾性層の抵抗は2×105 Ωcmであった。
【0176】
表面層2cの材料として、
ポリウレタンエラストマー 100部
導電性カーボンブラック 5部
【0177】
をメチルエチルケトン(MEK)溶媒により分散溶解して表面層用塗料を作成する。この塗料を用いて、浸漬コーティング法により塗布して厚さ10μmの表面層を被覆形成しローラ形状の帯電部材を得た。表面層の抵抗は5×1013Ωcmであった。
【0178】
表面層を形成した塗料と同一の塗料を用いてアルミニウムシート上にコーティングし、静摩擦係数測定用の表面層サンプルシートとした。
【0179】
比較例2の帯電ローラの結着樹脂の静摩擦係数μsB は0.57であった。
【0180】
また、帯電ローラの表面の静摩擦係数μsは1.03であった。
【0181】
また、帯電ローラの電流の時定数は実施例1同様の方法で算出した。その結果、時定数τは
τ=0.102[sec]
であった。従って、比較例2のτは、τ≦0.1[sec]を満たしていない。
【0182】
また、帯電ローラ表面の十点平均表面粗さRzは、12.1μmであった。
【0183】
この帯電ローラについて実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1、表2に示した。この帯電ローラを用いた電子写真装置により出力した画像には過剰帯電電位ムラが原因となる白抜けやガサつきが発生していた。なお、ハーフトーン画像領域の感光体表面電位を測定したところ、感光体の2周目に相当する位置の電位が−40Vほど過剰に帯電されていた。また、複数枚画像出し耐久試験においてトナー付着が原因となる画像濃度ムラが発生していた。
【0184】
(比較例3)
帯電部材としての帯電ローラを下記の構成とした以外は、実施例1と同様の方法で帯電ローラ及び電子写真感光体を作成した。
【0185】
NBR 100部
過塩素酸リチウム 5部
エステル系可塑剤 15部
炭酸カルシウム 30部
酸化亜鉛 5部
脂肪酸 2部
【0186】
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにより10分間混練した後、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調整する。このコンパウンドに原料ゴムのNBR 100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーTS 3部を加え、20℃に冷却した2本ロール機により10分間混練する。得られたコンパウンドを、φ6ステンレス製芯金の周囲にローラ状になるように押出成形機により成形し、加熱加硫成形した後、外径φ12になるように研磨処理して弾性層を形成した。弾性層の抵抗は1×108 Ωcmであった。
【0187】
上記弾性層の上に以下に示すような表面層を被覆形成した。
【0188】
表面層2cを形成する材料を
ポリウレタン樹脂を用い、そのメチルエチルケトン(MEK)溶液(固形分25質量%)を用いて、浸漬コーティング法により塗布して厚さ30μmの表面層を被覆形成しローラ形状の帯電部材を得た。表面層の抵抗は1×1014Ωcmであった。
【0189】
表面層を形成した塗料を用いてアルミニウムシート上にコーティングし、静摩擦係数測定用の表面層サンプルシートとした。
【0190】
本比較例の結着樹脂の静摩擦係数μsB は0.40であった。
【0191】
また、本比較例の帯電ローラ表面の静摩擦係数μsは、0.81であった。
【0192】
また、帯電ローラの電流の時定数は実施例1同様の方法で算出した。その結果、時定数τは
τ=0.125[sec]
であった。従って、比較例3のτは、τ≦0.1[sec]を満たしていない。
【0193】
また、帯電ローラ表面の十点平均表面粗さRzは8.0μmであった。
【0194】
この帯電ローラについて実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1、表2に示した。この帯電ローラを用いた電子写真装置により出力した画像には過剰帯電電位ムラが原因となる白抜けやガサつきが発生していた。なお、ハーフトーン画像領域の感光体表面電位を測定したところ、感光体の2周目に相当する位置の電位が−25Vほど過剰に帯電されていた。また、複数枚画像出し耐久試験においてトナー付着が原因となる画像濃度ムラが発生していた。
【0195】
【表1】
【0196】
【表2】
【0197】
【表3】
【0198】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、導電部材に直流電圧のみを印加して被帯電体の帯電処理を行った場合でも、過剰帯電電位ムラが発生しにくいプロセスカートリッジ及び電子写真装置を可能になった。また、導電部材の汚れに起因した帯電不良が発生しにくく、長期にわたって良好な帯電特性を維持することのできるプロセスカートリッジ及び該電子写真装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真装置の概略構成図である。
【図2】帯電ローラの概略図である。
【図3】他の帯電ローラの概略図である。
【図4】帯電部材の電流値の挙動を示す概略図である。
【図5】帯電部材の電流値測定装置の概略図である。
【図6】電子写真感光体の層断面図である。
【図7】他の電子写真感光体の層断面図である。
【図8】帯電ローラ表面の摩擦係数測定装置の概略図である。
【図9】摩擦係数測定装置より得られたチャートの一例である。
【符号の説明】
1 像担持体(電子写真感光体)
2 帯電部材(帯電ローラ)
3 像露光手段
4 現像手段
5 転写手段(転写ローラ)
S1,S2,S3 バイアス印加電源
P 転写材
11 円筒電極(金属ローラ)
12 固定抵抗器
13 レコーダー
Claims (31)
- ドラム型の電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触配置され、直流電圧のみの電圧が印加される帯電ローラとを一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、
該電子写真感光体が支持体、電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に有し、
該電荷輸送層が12〜40μmの厚さを有し、
該帯電ローラが導電性支持体及び該導電性支持体上に設けられた被覆層を有し、
温度15℃、湿度10%の環境下、該帯電ローラと円筒電極とを接触させ、該帯電ローラ及び該円筒電極が停止した状態で該帯電ローラに−1000Vの直流電圧を印加し、該帯電ローラを流れる電流値を読み取り、その波形データを
I=I 0 exp(−t/τ)
〔Iは電流値、I 0 は初期の電流値、tは時間〕
で表したときの、該帯電ローラの電流の時定数τが0.1秒以下である
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。 - 前記電荷輸送層の厚さが12〜23μmである請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記時定数τが0.05秒以下である請求項1または2に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記時定数τが0.00001秒以上である請求項1乃至3のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記帯電ローラが、前記被覆層として、弾性層及び該弾性層上に設けられた層を有する請求項1乃至4のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記弾性層上に設けられた層が電子導電機構を有する導電剤を含有する請求項5に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記弾性層が1010Ωcm未満の抵抗値を有する請求項5または6に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記弾性層上に設けられた層が抵抗層である請求項5に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記抵抗層が104〜1012Ωcmの抵抗値を有する請求項8に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記弾性層上に設けられた層が表面層である請求項5に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記表面層が104〜1015Ωcmの抵抗値を有する請求項10に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記弾性層上に設けられた層が抵抗層かつ表面層である請求項5に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記抵抗層が104〜1012Ωcmの抵抗値を有し、該表面層が104〜1015Ωcmの抵抗値を有する請求項12に記載のプロセスカートリッジ。
- 該導電部材の表面が1.0以下の静摩擦係数を有する請求項1乃至13のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記帯電ローラの表面の十点平均表面粗さ(Rz)が、10μm以下である請求項1乃至14のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- ドラム型の電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触配置された帯電ローラと、該帯電ローラに直流電圧のみの電圧を印加するための電源とを有する電子写真装置において、
該電子写真感光体が支持体、電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に有し、
該電荷輸送層が12〜40μmの厚さを有し、
該帯電ローラが導電性支持体及び該導電性支持体上に設けられた被覆層を有し、
温度15℃、湿度10%の環境下、該帯電ローラと円筒電極とを接触させ、該帯電ローラ及び該円筒電極が停止した状態で該帯電ローラに−1000Vの直流電圧を印加し、該帯 電ローラを流れる電流値を読み取り、その波形データを
I=I 0 exp(−t/τ)
〔Iは電流値、I 0 は初期の電流値、tは時間〕
で表したときの、該帯電ローラの電流の時定数τが0.1秒以下である
ことを特徴とする電子写真装置。 - 前記電荷輸送層の厚さが12〜23μmである請求項16に記載の電子写真装置。
- 前記時定数τが0.05秒以下である請求項16または17に記載の電子写真装置。
- 前記時定数τが0.00001秒以上である請求項16乃至18のいずれかに記載の電子写真装置。
- 前記帯電ローラが、前記被覆層として、弾性層及び該弾性層上に設けられた層を有する請求項16乃至19のいずれかに記載の電子写真装置。
- 前記弾性層上に設けられた層が電子導電機構を有する導電剤を含有する請求項20に記載の電子写真装置。
- 前記弾性層が10 10 Ωcm未満の抵抗値を有する請求項20または21に記載の電子写真装置。
- 前記弾性層上に設けられた層が抵抗層である請求項20に記載の電子写真装置。
- 前記抵抗層が10 4 〜10 12 Ωcmの抵抗値を有する請求項23に記載の電子写真装置。
- 前記弾性層上に設けられた層が表面層である請求項20に記載の電子写真装置。
- 前記表面層が10 4 〜10 15 Ωcmの抵抗値を有する請求項25に記載の電子写真装置。
- 前記弾性層上に設けられた層が抵抗層かつ表面層である請求項20に記載の電子写真装置。
- 前記抵抗層が10 4 〜10 12 Ωcmの抵抗値を有し、該表面層が10 4 〜10 15 Ωcmの抵抗値を有する請求項27に記載の電子写真装置。
- 該導電部材の表面が1.0以下の静摩擦係数を有する請求項16乃至28のいずれかに記載の電子写真装置。
- 前記帯電ローラの表面の十点平均表面粗さ(Rz)が、10μm以下である請求項16乃至29のいずれかに記載の電子写真装置。
- 電子写真装置が現像兼クリーニング方式を採用している請求項16乃至30のいずれかに記載の電子写真装置。
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