JP3740004B2 - クリーニングシ―ト、及びこれを用いた基板処理装置のクリーニング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の基板処理装置をクリーニングするシート、及びこれを用いた基板処理装置のクリーニング方法に関し、例えば、半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板などの製造装置や検査装置など、異物を嫌う基板処理装置のクリーニングシート及びクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種基板処理装置は、各搬送系と基板とを物理的に接触させながら搬送する。その際、基板や搬送系に異物が付着していると、後続の基板を次々に汚染することになり、定期的に装置を停止させ、洗浄処理をする必要があった。このため、稼働率低下や多大な労力が必要になるという問題があった。これらの問題を解決するため、粘着性の物質を固着した基板を搬送することにより基板処理装置内の付着した異物をクリーニング除去する方法が提案されている(例えば特開平10−154686号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
粘着性の物質を固着した基板を搬送することにより基板処理装置内の付着した異物をクリーニング除去する方法は、前述の課題を克服する有効な方法である。しかしこの方法では粘着性物質と装置接触部とが強く接着しすぎて剥れない恐れがあり、基板を確実に搬送できなくなる恐れがあった。
本発明は、このような事情に照らし、基板処理装置内に基板を確実に搬送できると共に、装置内に付着している異物を簡便かつ確実に除去できるクリーニングシートを提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討した結果、クリーニングシートあるいはクリーニングシートを設けた基板等の搬送部材を搬送することにより、基板処理装置内の付着した異物をクリーニング除去するにあたり、該クリーニング層のヴィッカース硬度を特定値以上、さらに表面自由エネルギーおよび水の接触角を特定範囲に設定することにより、前記問題を生じることなく、さらに異物を簡便かつ確実に除去できることを見出し、本発明を完成するに至つた。
【0005】
即ち、本発明は、搬送部材に設けられて基板処理装置内に搬送することで異物を除去するためのクリーニングシートであって、ヴィッカース硬度が10以上、表面自由エネルギーが30〜50mJ/m2 、水の接触角が50〜90度であるクリーニング層を有することを特徴とするクリーニングシート(請求項1)、クリーニング層が、実質的に粘着性を有さず、かつ実質的に導電性を有しないことを特徴とする請求項1記載のクリーニングシート(請求項2)、搬送部材に設けられて基板処理装置内に搬送することで異物を除去するためのクリーニングシートであって、支持体の少なくとも片面に、請求項1または2記載のクリーニング層が設けられてなるクリーニングシート(請求項3)、搬送部材に設けられて基板処理装置内に搬送することで異物を除去するためのクリーニングシートであって、請求項1または2記載のクリーニング層の片面に、通常の粘着剤層が設けられてなるクリーニングシート(請求項4)、搬送部材に設けられて基板処理装置内に搬送することで異物を除去するためのクリーニングシートであって、支持体の片面に請求項1または2記載のクリーニング層が設けられ、他面に通常の粘着剤層が設けられてなるクリーニングシート(請求項5)に係るものである。
また、本発明は、請求項4又は5記載のクリーニングシートが、粘着剤層を介して搬送部材に設けられてなるクリーニング機能付き搬送部材(請求項6)に係るものである。さらに、本発明は、請求項1〜3いずれか記載のクリーニングシート又は請求項6記載の搬送部材を、基板処理装置内に搬送することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法(請求項7)に係るものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のクリーニングシートのクリーニング層は、そのヴィッカース硬度が10以上、好ましくは20〜500であることが必要である。 本発明においてヴィッカース硬度とは、JIS Z2244に準じダイヤモンド圧子に所定の荷重をかけて、永久くぼみを形成し、その荷重をくぼみの表面積で除した値をいう。
本発明においては、クリーニング層のヴィッカース硬度をこのような特定値以上に設定することにより、クリーニングシートなどの搬送時にクリーニング層が被クリーニング部位と密着しすぎることなく、スムーズに搬送できるという効果が得られる。
また本発明のクリーニングシートのクリーニング層は、さらにその表面自由エネルギーが30〜50mJ/m2 であることが望ましい。 本発明においてクリーニング層(固体)の表面自由エネルギーとは、クリーニング層表面に対して水およびヨウ化メチレンを用いてそれぞれ接触角を測定し、この測定値と接触角測定液体の表面自由エネルギー値(文献より既知)を、Young の式および拡張Fowkesの式から導かれる下記の式1に代入し、得られる二つの式を連立一次方程式として解くことにより、求められる固体の表面自由エネルギー値を意味するものである。
【0007】
<式1>
(1+cosθ)γL=2√(γs dγL d)+2√(γs pγL p)
ただし、式中の各記号は、それぞれ以下の通りである。
θ:接触角
γL:接触角測定液体の表面自由エネルギー
γL d:γLにおける分散力成分
γL p:γLにおける極性力成分
γs d:固体の表面自由エネルギーにおける分散力成分
γs p:固体の表面自由エネルギーにおける極性力成分
【0008】
また、クリーニング層表面の水の接触角は50〜90度となるようにするのが望ましい。 本発明においては、さらにクリーニング層の表面自由エネルギーや水の接触角をこのような特定の範囲に設定することにより、クリーニングシートなどの搬送時にクリーニング層が被クリーニング部位の異物を確実に除去できるという効果が得られる。
【0009】
かかるクリーニング層は、そのヴィッカース硬度が上記の特定値以上であればその材質などは特に限定されないが、紫外線や熱などの活性エネルギー源により架橋反応や硬化が促進されて、その引張弾性率を大きくできるものが好ましい。
本発明において好ましいクリーニング層は、その引張弾性率(試験法JIS K7127に準ずる)が0.1N/mm2以上、好ましくは1〜3000N/mm2である。
さらに、その分子構造が三次元網状化して実質的に粘着性を有さず、搬送系材料とぬれ難いものが好ましい。 かかる材料からなるクリーニング層を用いると、搬送時にクリーニング層が被クリーニング部と強く接着することがなく、確実に搬送できる。
またクリーニング層は、実質的に導電性を有しないことが好ましい。 ここで実施的に導電性を有しないとは、その表面抵抗率が1×1013Ω/□以上、好ましくは1×1014Ω/□以上であることが望ましい。 クリーニング層の表面抵抗率をかかる特定値以上に設計して、クリーニング層をできるだけ絶縁体にすることにより、静電気による異物の捕獲、吸着できるという効果が得られる。
かかるクリーニング層は、その粘着力と導電性とが実質的にない限り、その材質や構成などは特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカルボジイミドなどのプラスチックフィルム、硬化型粘着剤を硬化させて粘着性を実質的に消失させたものなどが挙げられる。
またクリーニング層の厚さは特に限定されないが、通常5〜100μm程度である。
【0010】
かかるクリーニング層の具体例としては、例えば感圧接着性ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物と重合開始剤を少なくとも含有させたものを、活性エネルギーにより重合硬化反応させて粘着性が実質的に消失されてなるものが挙げられる。 かかる感圧接着性ポリマーとしては、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルから選ばれる(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとしたアクリル系ポリマーが挙げられる。このアクリル系ポリマーの合成にあたり、共重合モノマーとして分子内に不飽和二重結合を2個以上有する化合物を用いるか、あるいは合成後のアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を有する化合物を官能基間の反応で化学結合させるなどして、アクリル系ポリマーの分子内に不飽和二重結合を導入しておくことにより、このポリマー自体も活性エネルギーにより重合硬化反応に関与させるようにすることもできる。
【0011】
ここで、分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物(以下、重合性不飽和化合物という)としては、不揮発性でかつ重量平均分子量が10000以下の低分子量体であるのがよく、特に硬化時の接着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、5000以下の分子量を有しているのが好ましい。
また、クリーニング層に添加される重合開始剤は、特に限定されず公知のものを使用でき、例えば活性エネルギー源に熱を用いる場合は、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどの熱重合開始剤、また光を用いる場合は、ベンゾイル、ベンゾインエチルエーテル、シベンジル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンクロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドルキシシクロヒキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシジメチルフェニルプロパン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの光重合開始剤が挙げられる。
【0012】
またかかるクリーニング層が支持体に設けられる場合(請求項3又は5)の支持体としては特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカルボジイミドなどのプラスチックフィルムなどが挙げられる。 その厚みは通常10〜100μm程度である。
【0013】
本発明はさらに、クリーニング層の片面に、通常の粘着剤層が設けられてなるクリーニングシート(請求項4)、支持体の片面にクリーニング層が設けられ、他面に通常の粘着剤層が設けられてなるクリーニングシート(請求項5)も提供する。 この通常の粘着剤層は、粘着機能を満たす限りその材質などは特に限定されず、通常の粘着剤(例えばアクリル系、ゴム系など)を用いることができる。
かかる構成とすることにより、クリーニングシートを通常の粘着剤層により各種基板や他のテープ・シートなどの搬送部材に貼り付けて、クリーニング機能付き搬送部材として装置内に搬送して、被洗浄部位に接触させてクリーニングすることができる。 また、上記の基板などの搬送部材を再利用するために、クリーニング後に基板をかかる粘着剤層から剥がす場合は、かかる通常の粘着剤層の粘着力は再剥離できる範囲であれば特に限定されないが、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力が0.20〜0.98N/10mm、特に0.40〜0.98N/10mm程度であれば、搬送中に剥離することなく、かつクリーニング後に容易に再剥離できるので好ましい。
【0014】
クリーニングシートが貼り付けられる搬送部材としては特に限定されないが、例えば半導体ウエハ、LCD、PDPなどのフラットパネルディスプレイ用基板、その他コンパクトディスク、MRヘッドなどの基板などが挙げられる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 なお、以下、部とあるのは重量部を意味するものとする。
実施例
アクリル酸−2−エチルヘキシル75部、アクリル酸メチル20部、及びアクリル酸5部からなるモノマ―混合液から得たアクリルポリマー(重量平均分子量70万)100部に対して、ポリエチレングリコ―ル200ジメタクリレ―ト(新中村化学製:商品名:NKエステル4G)100部、およびポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製:商品名:コロネートL)3部、および光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティケミカルズ製:商品名:イルガキュアー651)3部を均一に混合して、紫外線硬化型の粘着剤溶液Aを調整した。
一方、上記粘着剤溶液Aから光重合開始剤のベンジルジメチルケタールを除いた以外は、上記と同様にして得た粘着剤溶液を、幅250mm、厚み25μmのポリエステル製支持体フィルムの片面に、乾燥後の厚みが10μmになるように塗布して通常の粘着剤層を設け、その表面に厚み38μmのポリエステル系剥離フィルムを貼った。 次に支持体フィルムのもう一方の側に、前記の紫外線硬化型粘着剤溶液Aを乾燥後の厚みが10μmになるように塗布してクリーニング層としての粘着剤層を設け、その表面に同様の剥離フィルムを貼った。
このシートに中心波長365nmの紫外線を積算光量2000mJ/cm2照射して、本発明のクリーニングシートを得た。 このクリーニングシートのクリーニング層側の剥離フィルムを剥がし、ヴィッカース硬度計(NEC製、薄膜硬度計 MHA−400)にてこのクリーニング層のヴィッカース硬度を測定したところ、45であった。 またこのクリーニング層の表面自由エネルギーを測定したところ、40.1mJ/m2、水の接触角は88.2度であった。
また、このクリーニング層の紫外線硬化後の引張弾性率は147.2N/mm2であった。ここで引張弾性率は、試験法JIS K7127に準じて測定した。また、クリーニング層をシリコンウエハのミラー面に幅10mmで貼り付け、JIS Z0237に準じてシリコンウエハに対する180°引き剥がし粘着力を測定した結果、0.0049N(0.5g)/10mmで実質的に粘着性を有さないことが確認できた。
また、温度23℃、湿度60%RHの条件下でクリーニング層上から表面抵抗率を表面抵抗測定計(三菱化学社製、型式MCP−UP450)にて測定したところ、9.99×1013Ω/□以上で測定不能であった。 この結果から、クリーニング層は実質的に導電性を有さないことが確認できた。
【0016】
このクリーニングシートの通常の粘着剤層側の剥離フィルムを剥がし、8inchのシリコンウエハの裏面(ミラー面)にハンドローラで貼り付け、クリーニング機能付き搬送用クリーニングウエハを作製した。
【0017】
一方、基板処理装置のウエハステージを2つ取り外し、レーザー式異物測定装置で、0.3μm以上の異物を測定したところ、8inchウエハサイズのエリア内で1つは25000個、もう一方は23000個であった。
【0018】
次いで前記で得た搬送用クリーニングウエハのクリーニング層側の剥離フィルムを剥がし、上記の25000個の異物が付着していたウエハステージを持つ基板処理装置内に搬送したところ、支障なく搬送できた。 その後にウエハステージを取り外し、レーザー式異物測定装置で0.3μm以上の異物を測定したところ、8inchウエハサイズのエリア内で4800個となっており、クリーニング前に付着していた異物数の4/5以上を除去することができた。
【0019】
比較例
クリーニング層用粘着剤として、アクリル酸−2−エチルヘキシル30部、アクリル酸メチル70部、及びアクリル酸10部からなるモノマ―混合液から得たアクリルポリマー(重量平均分子量280万)100部に対して、ポリエチレングリコ―ル600ジアクリレ―ト(新中村化学製:商品名:NKエステルA−600)100部、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製:商品名:コロネートL)3部および光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティケミカルズ製:商品名:イルガキュアー651)10部を均一に混合して調整した紫外線硬化型粘着剤溶液Bを用いた以外は実施例と同様にしてクリーニングシートを作製した。 その後、上記と同様にしてヴィッカース硬度を測定したところ、5であり、クリーニング層の表面自由エネルギーを測定したところ、34.6mJ/cm2、水接触角は82.3度であった。
【0020】
このクリーニングシートから実施例と同じ方法で作製した搬送用クリーニングウエハを、23000個異物が付着していたウェハステージを持つ基板処理装置内に搬送させたところ、1枚目でウエハステージに固着し、搬送できなくなった。
【0021】
【発明の効果】
以上のように本発明のクリーニングシートによれば、基板処理装置内を確実に搬送できると共に、装置内に付着している異物を簡便かつ確実に除去できる。
Claims (7)
- 搬送部材に設けられて基板処理装置内に搬送することで異物を除去するためのクリーニングシートであって、ヴィッカース硬度が10以上、表面自由エネルギーが30〜50mJ/m2 、水の接触角が50〜90度であるクリーニング層を有することを特徴とするクリーニングシート。
- クリーニング層が、実質的に粘着性を有さず、かつ実質的に導電性を有しないことを特徴とする請求項1記載のクリーニングシート。
- 搬送部材に設けられて基板処理装置内に搬送することで異物を除去するためのクリーニングシートであって、支持体の少なくとも片面に、請求項1または2記載のクリーニング層が設けられてなるクリーニングシート。
- 搬送部材に設けられて基板処理装置内に搬送することで異物を除去するためのクリーニングシートであって、請求項1または2記載のクリーニング層の片面に、通常の粘着剤層が設けられてなるクリーニングシート。
- 搬送部材に設けられて基板処理装置内に搬送することで異物を除去するためのクリーニングシートであって、支持体の片面に請求項1または2記載のクリーニング層が設けられ、他面に通常の粘着剤層が設けられてなるクリーニングシート。
- 請求項4又は5記載のクリーニングシートが、粘着剤層を介して搬送部材に設けられてなるクリーニング機能付き搬送部材。
- 請求項1〜3いずれか記載のクリーニングシート又は請求項6記載の搬送部材を、基板処理装置内に搬送することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法。
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