JP3738152B2 - パワーショベルの油圧制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、アクチュエータの負荷圧を検出して馬力一定制御をする可変吐出量ポンプでアクチュエータを動作させるパワーショベルの油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から知られているこの種の装置は、各アクチュエータ、例えば旋回モータ、アームシリンダおよびブームシリンダなどを同時に動作させたときには、それらアクチュエータのうちの最大負荷圧を検出し、その最大負荷圧を基準に可変吐出量ポンプの馬力が一定になるように制御している。ここでいう馬力一定制御とは、「圧力×流量」の値を一定値以下に保つことである。つまり、最大負荷圧が大きくなれば、ポンプ吐出量を減らし、最大負荷圧が小さくなれば、ポンプ吐出量を増やして、ポンプの出力馬力を一定値以下に保つようにしている。
【0003】
上記の構成において、例えば、旋回モータとブームシリンダとを同時に起動させたとき、あるいはブームシリンダを起動させた直後に旋回モータを起動させようとしたとき、慣性体である旋回モータの起動時の負荷圧が、ブームシリンダの負荷圧よりも大きくなるのが通常なので、最大負荷圧は旋回モータの負荷圧で決まってしまうことになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の装置では、旋回モータとブームシリンダとを同時に起動させたとき、あるいはブームシリンダを起動させた直後に旋回モータを起動させようとしたとき、その起動時には、旋回モータの負荷圧で可変吐出量ポンプの馬力が制御されるので、ポンプの吐出量が非常に少ないものになる。可変吐出量ポンプの吐出量が少なくなれば、ブームシリンダの作動速度が極端に落ちてしまう。そのために、例えば、土砂をバケットですくいながら、それをダンプカーに積み込むときなどに、バケットが十分に持ち上げられない。バケットが持ち上げられないまま、旋回モータだけが作動してしまうと、バケットがダンプカーに衝突したりする問題があった。
この発明の目的は、旋回モータとブームシリンダとを同時に、あるいはブームシリンダを起動させた直後に旋回モータを起動したとしても、ブームシリンダをある程度のスピードで動作させられる装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、馬力一定制御をする可変吐出量ポンプに、旋回モータ制御用のパイロット切換弁と、アームシリンダ制御用のパイロット切換弁と、ブームシリンダ制御用のパイロット切換弁とを接続してなるパワーショベルの油圧制御装置を前提にする。
【0006】
上記の装置を前提にしつつ、第1の発明は、旋回モータ制御用のパイロット切換弁にストッパーを設けるとともに、このストッパーを当接させてパイロット切換弁の切り換え位置を規制制御する制御シリンダを設ける一方、制御シリンダに圧力流体を供給したり、その供給を阻止したりするタイマーバルブを備え、このタイマーバルブは、その両側にパイロット室を設け、この両側のパイロット室には上記各切換弁を切り換えるためのパイロット圧を導く構成にし、一方のパイロット室にはそのパイロット圧を直接導き、他方のパイロット室にはスプリングを設けるとともに、タイミング制御用絞りを介してパイロット圧を導き、しかも、この他方のパイロット室は圧力保持用絞りを介してタンクに連通させた点に特徴を有する。
【0007】
第2の発明は、ブームシリンダ制御用のパイロット切換弁のパイロットラインを、タイマーバルブを介して制御シリンダに接続した点に特徴を有する。
第3の発明は、旋回モータ制御用のパイロット切換弁のパイロットラインを、タイマーバルブを介して制御シリンダに接続した点に特徴を有する。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に示した第1実施例は、可変吐出量ポンプPに、旋回モータ制御用のパイロット切換弁1、アームシリンダ制御用のパイロット切換弁2およびブームシリンダ制御用のパイロット切換弁3を接続している。
そして、可変吐出量ポンプPは、図示していない馬力一定制御機構によって、その出力馬力が一定に制御される。つまり、各アクチュエータの最高負荷圧を検出し、その負荷圧に応じて可変吐出量ポンプPの吐出量が制御される。
【0009】
上記のようにした旋回モータ制御用のパイロット切換弁1の両側には、一対のストッパー4,5を設けている。このストッパー4,5は、パイロット切換弁1の切り換え動作にともなって移動する。そして、このストッパー4,5の移動軌跡内に、一対の制御シリンダ6,7を設けている。
上記制御シリンダ6,7は、そのピストンロッド6a,7aを切換弁1の切り換え方向と平行に保っている。言い換えると、ピストンロッド6a,7aをストッパー4,5に対して直交するようにしている。なお、制御シリンダ6,7の受圧径は、パイロット切換弁1のスプール受圧径より大きくしている。したがって、パイロット切換弁を切り換えるパイロット圧をこの制御シリンダ6,7に導くことによって、制御シリンダの推力をパイロット切換弁のスプールの推力よりも大きく保てる。
【0010】
そして、制御シリンダ6,7が図示の最収縮位置にあるとき、パイロット切換弁1がフルストローク可能になる。また、制御シリンダ6,7が伸張すると、その伸張位置にあるピストンロッド6a,7aとストッパー4,5とが当たってパイロット切換弁1の切り換え量が規制される。この切り換え量が規制されたパイロット切換弁1は、その開度も全開状態よりも小さな開度に保てる。ただし、その開度は、旋回モータやブームシリンダの容量などの諸条件に応じて異なるが、だいたい全開状態よりも70%〜80%程度に保つのが通常である。
【0011】
一方、パイロット切換弁3のパイロットラインのうち、上記ブームシリンダを上げるときにパイロット圧を導くパイロットライン8に、タイマーバルブ9を接続し、このタイマーバルブ9を介して、パイロットライン8と制御シリンダ6,7とを連通させるようにしている。ただし、タイマーバルブ9がノーマル位置である図面右側位置にあるときには、パイロットライン8と制御シリンダ6,7との連通が遮断される。そして、タイマーバルブ9が図面左側位置に切り換わると、パイロットライン8が制御シリンダ6,7に連通する。
【0012】
上記のようにしたタイマーバルブ9の具体的な構成は、次のとおりである。
タイマーバルブ9の流入ポート9aを、上記パイロットライン8に連通している。また、この流入ポート9aの上流側の圧力を、タイマーバルブ9の両側のパイロット室9b,9cにパイロット圧として導くようにしている。
ただし、一方のパイロット室9bには、上記パイロット圧を直接導いているが、他方のパイロット室9cには、タイミング制御用絞り10を経由してパイロット圧を導くようにしている。
【0013】
また、上記他方のパイロット室9cは、圧力保持用絞り11を介してタンクTにも連通している。ただ、この圧力保持用絞り11の開口径は、タイミング制御用絞り10の開口径よりも十分に小さくしている。このようにした他方のパイロット室9cには、スプリング12を設けている。したがって、両パイロット室9b、9cにパイロット圧が作用していないときには、このスプリング12の作用で、タイマーバルブ9が図示のノーマル位置である右側位置を保つ。
さらに、流出ポート9dは、両制御シリンダ6,7に対してパラレルに接続され、タンクポート9eはタンクTに接続されている。
【0014】
上記のようにしたタイマーバルブ9が右側位置にあるとき、流入ポート9aと流出ポート9dとの連通が遮断され、流出ポート9dがタンクポート9eに連通する。また、タイマーバルブ9が図面左側位置に切り換わると、流出ポート9dとタンクポート9eとの連通が遮断されるとともに、流入ポート9aと流出ポート9eとが連通する。
【0015】
流入ポート9aと流出ポート9eとが連通すれば、パイロットライン8側の圧力流体が、制御シリンダ6,7に供給される。圧力流体が供給された制御シリンダ6,7は伸張するとともに、その最伸張位置で、旋回モータ制御用のパイロット切換弁1に設けたストッパー4または5に当たる。このストッパーと4または5と、制御シリンダ6または7とが当たった位置では、前記したようにパイロット切換弁1の開度が、全開状態の60%〜80%程度に保たれるようにしている。
【0016】
なお、制御シリンダ6,7は、流出ポート9dに対して並列に接続しているので、同時に同一方向に伸張する。ただし、パイロット切換弁1は、常に左右いずれか一方にしか切り換わらないので、その切り換え方向に位置するストッパーだけが、制御シリンダのロッド6aまたは7aに当たることになる。
【0017】
上記のようにしたタイマーバルブ9が切り換わるタイミングは、次のとおりである。まず、パイロットライン8にパイロット圧が発生すると、その圧力が両パイロット室9bおよび9cに導かれる。ただし、一方のパイロット室9bには、パイロットライン8の圧力がダイレクトに導かれるが、他方のパイロット室9bには、タイミング制御用絞り10を経由して導かれる。しかも、他方のパイロット室9bは圧力保持用絞り11を介してタンクTにも通じているので、その昇圧までに多少の時間を必要とする。
【0018】
したがって、一方のパイロット室9b側は、パイロットライン8の圧力まで即座に上昇するが、他方のパイロット室9c側は、タイミング制御用絞り10の圧力降下分だけ昇圧のタイミングが遅れる。
上記のように他方のパイロット室9c側における圧力上昇のタイミングが遅れるので、そのタイミング遅れの時間帯で両パイロット室9b、9cの圧力に差が生じる。この圧力差によって、タイマーバルブ9はスプリング12のバネ力に抗して移動し、図面左側位置に切り換わる。
【0019】
この左側位置では、パイロットライン8の圧力流体を制御シリンダ6,7に供給するので、制御シリンダ6,7がその圧力流体の作用で伸張位置を保つ。
そして、他方のパイロット室9cの圧力が徐々に上昇して、その圧力の作用力とスプリング12のバネ力とを合計した力が、一方のパイロット室9b側の作用力に打ち勝ったとき、タイマーバルブ9が図面右側位置に復帰する。
タイマーバルブ9が図面右側位置に復帰すれば、制御シリンダ6,7が流出ポート9dおよびタンクポート9eを経由してタンクTに連通する。
【0020】
次に、旋回モータとブームシリンダとを同時に起動して、例えば、土砂をバケットですくいながら、それをダンプカーに積み込む場合について説明する。なお、ブームシリンダを起動させた直後に旋回モータを起動させる場合については、旋回モータとブームシリンダとの同時起動とほとんど同じなので、説明を省略する。
旋回モータとブームシリンダとを同時に起動させるためには、旋回モータを制御するパイロット切換弁1のパイロットラインと、パイロット切換弁3のうち、ブームシリンダの上げを制御するパイロットラインとに同時にパイロット圧を導く。
【0021】
ブームシリンダを制御するパイロット切換弁3にパイロット圧を導けば、タイマーバルブ9の両パイロット室9b,9cにも圧力が導かれる。しかし、他方のパイロット室9c側では、その圧力上昇のタイミングが遅れるので、タイマーバルブ9は、パイロット室9bの圧力作用で、図面左側位置に切り換わる。タイマーバルブ9が左側位置に切り換われば、ブームシリンダを上げ制御するためにパイロットライン8に導かれたパイロット圧が、制御シリンダ6,7にも導かれるので、この制御シリンダ6,7が伸張する。
【0022】
制御シリンダ6,7の伸張によって、旋回モータを制御するパイロット切換弁1の切り換え量が規制され、その開度が全開状態の60%〜80%に保たれる。つまり、可変吐出量ポンプPは、旋回モータの起動時の負荷圧で馬力一定制御され、その吐出量が減少させられる。しかし、吐出量が減少した中で、旋回モータ側に供給される流量を絞ることによって、ブームシリンダの動作を確保するようにしている。
【0023】
したがって、パイロット切換弁1および3の切り換え初期には、速度が遅いながらも旋回モータおよびブームシリンダの両方を、同時に起動させることができる。このように旋回モータもブームシリンダも動かせるので、バケットで土砂などをすくってそれを持ち上げながら旋回することができる。
また、旋回モータがいったん起動してしまえば、起動時の抵抗が除かれるので、旋回モータにはそれほど大きな負荷が作用しない。そのために起動後は、ブームシリンダの負荷圧に応じて馬力が一定に制御されることになる。
【0024】
上記のように旋回モータが起動した後には、タイマーバルブ9のパイロット室9c側の圧力も上昇して、それを再び図面右側位置に切り換える。タイマーバルブ9が右側位置に切り換われば、制御シリンダ6,7がタンクTに連通するので、パイロット切換弁1のストッパー4または5を規制する力がなくなる。
【0025】
ストッパー4,5に対する制御シリンダ6,7の規制力がなくなれば、パイロット切換弁1は、そのパイロット圧の作用力で全開位置までフルストロークする。したがって、以後は、通常の制御状態になる。
なお、タイマーバルブ9は、旋回モータがし、発生圧力が高い間、制御シリンダ6,7を伸張状態に保つとともに、圧力低下した後に右側位置に復帰するように、タイミング制御用絞り10と圧力保持用絞り11の開度およびスプリング12のバネ力を調整する。
【0026】
図2に示した第2実施例は、タイマーバルブ9の他方のパイロット室9cを、旋回モータを制御するパイロット切換弁1のパイロットライン13、14に、タイミング制御用絞り15およびシャトル弁16を介して連通させたものである。ただし、この他方のパイロット室9cを、圧力保持用絞り11を介してタンクTに連通している点は、第1実施例と同様である。
また、タイマーバルブ9の一方のパイロット室9bは、第1実施例と同様にパイロットライン8に直接連通させている。
【0027】
なお、この第2実施例は、パイロットライン8,13,14のそれぞれに導かれるパイロット圧が等しいことを前提にしている。
このように各パイロット圧が等しければ、一方のパイロット室9bをパイロットライン8に連通させ、他方のパイロット室9cをパイロットライン13aあるいは14に連通させても、原理的には第1実施例と同じになる。
【0028】
図3に示した第3実施例は、タイマーバルブ9の両パイロット室9b,9cを、旋回モータを制御するパイロット切換弁1のパイロットライン13,14に連通させたものである。そして、この第3実施例でも、旋回モータが慣性力を発生するまでの間、パイロット切換弁のストロークを規制する原理は、第1,2実施例と同じである。
なお、上記各実施例は、1ポンプで制御するロードセンシング制御にも適用できるものである。
【0029】
【発明の効果】
このパワーショベルの油圧制御装置によれば、旋回モータが定常圧になるまでの間、旋回モータを制御するパイロット切換弁の開度を小さく保てるので、旋回モータの負荷が大きくて可変吐出量ポンプの吐出量が少なくなっても、旋回モータとともにブームシリンダを起動させられる。このように旋回モータとブームシリンダとを同時に起動させられるので、例えば、土砂をバケットですくいながら、それを旋回してダンプカーに積み込むときにも、バケットを持ち上げながら旋回させることができる。したがって、バケットが持ち上げられないまま、旋回モータだけが作動してしまうという問題も発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の回路図である。
【図2】第2実施例の回路図である。
【図3】第3実施例の回路図である。
【符号の説明】
P 可変吐出量ポンプ
1〜3 パイロット切換弁
4,5 ストッパー
6,7 制御シリンダ
8 パイロットライン
9 タイマーバルブ
9a 流入ポート
9b 一方のパイロット室
9c 他方のパイロット室
9d 流出ポート
9e タンクポート
10 タイミング制御用絞り
11 圧力保持用絞り
12 スプリング
13,14 パイロットライン
15 タイミング制御用絞り
Claims (4)
- 馬力一定制御をする可変吐出量ポンプに、旋回モータ制御用のパイロット切換弁と、アームシリンダ制御用のパイロット切換弁と、ブームシリンダ制御用のパイロット切換弁とを接続してなるパワーショベルの油圧制御装置において、旋回モータ制御用のパイロット切換弁にストッパーを設けるとともに、このストッパーに当接させてパイロット切換弁の切り換え位置を規制制御する制御シリンダを設ける一方、制御シリンダに圧力流体を供給したり、その供給を阻止したりするタイマーバルブを備え、このタイマーバルブは、その両側にパイロット室を設け、この両側のパイロット室には上記各切換弁を切り換えるためのパイロット圧を導く構成にし、一方のパイロット室にはそのパイロット圧を直接導き、他方のパイロット室にはスプリングを設けるとともに、タイミング制御用絞りを介してパイロット圧を導き、しかも、この他方のパイロット室は圧力保持用絞りを介してタンクに連通させてなるパワーショベルの油圧制御装置。
- ブームシリンダ制御用のパイロット切換弁の上げ制御側のパイロットラインを、タイマーバルブを介して制御シリンダに接続した請求項1記載のパワーショベルの油圧制御装置。
- 旋回モータ制御用のパイロット切換弁のパイロットラインを、タイマーバルブを介して制御シリンダに接続した請求項1記載のパワーショベルの油圧制御装置。
- ブーム制御用のパイロット切換弁の上げ制御側のパイロットラインを、タイマーバルブを介して制御シリンダに接続するとともに、このパイロットラインからの圧力をタイマーバルブの一方のパイロット室に導き、スプリングを設けた他方のパイロット室には、旋回モータ制御用のパイロット切換弁のパイロットライン側のパイロット圧を導いてなる請求項1記載のパワーショベルの油圧制御装置。
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