JP3737637B2 - パン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油脂固化剤を含有する油脂を原料とするパンに関する。更に詳しくは油脂固化剤を添加することにより油脂の硬さが自在に調整された油脂を含有するパンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、パンは小麦粉に砂糖、油脂(ショートニング)、卵、乳成分等とイ−ストを混合し、発酵、焼成して作られている。添加される油脂は、パンの柔らかさ、容積等を付与する為に重要な役割を持つ。通常は大豆油、菜種油などの液状油に水素添加した油脂、極度硬化油、ワックス等を添加し、適度な硬さを持つペ−スト状としたものが使用される。
しかし、液状油へ硬化油等を添加しただけでは充分な柔らかさのパンを得られない。この点を改良する為に油脂のエステル交換、分別、ステアリン酸モノグリの添加等が行われているのが工程が長く又充分な効果も得られていない。又、大豆油、ナタネ油、コーン油、綿実油、オリーブ油等常温で液状の物をそのまま使用した場合、油が球状となりパン生地中で伸展性を示さず、柔らかさ、容積供に目的とするものが得られない。
【0003】
【発明が解決しようとしている課題】
本発明は天然油脂に油脂固化剤を添加することにより従来の配合、水素添加、エステル交換、分別等の加工処理なしに容易にパン用に適した物性を有する油脂となし、これを用いて食感の改良されたパンを得ることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
パン原料用油脂に炭素数20以上の脂肪酸のエステルを油脂固化剤として含有させる事が上記課題を解決するのに有効であり、その固化状態を調整する為にHLB3以下のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを併用すると更に有効である事を見出し本発明を完成した。すなわち本発明はパン原料用油脂に油脂固化剤を添加し、油脂の硬さを自在に調整した油脂を含有するパンに関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明におけるパンとは、生地から直接混合・発酵・焼成工程をへて得られるもの、生地を混合後冷凍して流通し、解凍・発酵・焼成し得られるもの等工程を特に限定するものでない。またパンの油脂含量は一般に1〜30%程度のものが多いが、特に限定されるものではない。
【0006】
本発明における炭素数20以上の脂肪酸のエステルとは例えば、アラキン酸、ベヘニン酸等とプロピレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等とのエステルである。具体的には、グリセリンモノベヘニン酸エステル、ソルビタンジアラキン酸エステル等が挙げられるがこれらに限定するものではない。
炭素数19以下の脂肪酸のエステルを使用した場合油脂は固化が不充分である。本発明におけるHLB3以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとはトリグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンオクタステアレート、デカグリセリンデカパルミテート等をさし、HLB3以下のショ糖脂肪酸エステルはショ糖のパルミチン酸、ステアリン酸エステルをさすが、これらに限定するものではない。これらを併用することで油脂の固化、硬さの調整を一層容易に行うことができる。本発明で言う油脂固化剤は特定の上記脂肪酸エステルを含有するもので、その含量、剤形等は適宜選択すればよく特に限定するものではない。
【0007】
本発明品のパンを製造する際、通常パン用として利用される乳化剤との併用は何らさしさわりなく特に限定されるものではない。その乳化剤とは、例えば食品衛生法でいう、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。
また、本発明の油脂固化剤が適用される油脂は、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、パーム油、ごま油等の植物油および、魚油、乳脂等の動物油があげられるが、これらに限定するものではない。また、上述の油脂を混合、分別、エステル交換、水素添加したものにも適用可能である。
本発明における油脂固化剤の添加量は、油脂に対し、有効成分の添加量として、0.1〜20%好ましくは0.5〜10%である。少なすぎる場合固化せず、多すぎる場合は硬く固化して使用しづらくなる。尚、油脂への固化剤の添加方法については、特に限定するものではなく、油脂中に固化剤が均一に溶解される方法であれば良い。
以下、発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
【0008】
【実施例】
実施例1
下記の処方にて食パンを調製した。
強力粉 100部
砂 糖 5部
食 塩 2部
油 脂 7部
イ−スト 1.5部
イ−ストフ−ド 0.2部
脱脂粉乳 1部
水 60部
油脂としてナタネ油95%にグリセリンモノベヘニン酸エステル(炭素数22)2.5%とトリグリセリンペンタステアレ−ト(HLB=2)2.5%を溶解混合したものを使用した。全原料を混捏後、27℃で90分発酵する。型に入れ、37℃で40分間ホイロした後、205℃で45分間焼成した。柔らかく良好な組織の食パンが得られた。
【0009】
実施例2
下記の処方にてバタ−ロ−ルを調製した。
強力粉 90部
薄力粉 10部
砂 糖 10部
脱脂粉乳 4部
塩 2部
油 脂 10部
卵 6部
イ−スト 2.5部
イ−ストフ−ド 0.1部
水 57部
油脂としてコ−ン油80%とパ−ム油15%にグリセリンモノベヘニン酸エステル(炭素数22)2.5%とヘキサグリセリンペンタステアレ−ト(HLB=2.5)2.5%を溶解混合したものを使用した。全原料を混捏後、28℃で50分発酵する。成型後、37℃で50分間ホイロした後、200℃で13分間焼成した。柔らかく良好な組織のバタ−ロ−ルが得られた。
【0010】
比較例1
実施例1の処方で油脂としてナタネ油100%を使用して同様に食パンを調製した。実施例1に比べ硬く容積の小さいパンとなった。
【0011】
比較例2
実施例2の処方で油脂としてコ−ン油80%とパ−ム油15%にグリセリンモノステアリン酸エステル(炭素数18)5%を溶解混合したものを使用して同様にバタ−ロ−ルを調製した。実施例2に比べやや硬いバタ−ロ−ルとなった。
【0012】
実施例1、2,比較例1、2で得られたパン,バタ−ロ−ルを評価した結果を表1に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
表1の結果から判るように本発明品(実施例1,2)において良好なパン,バタ−ロ−ルが得られている。
【0015】
【発明の効果】
本発明による油脂固化剤を含有した油脂を用いることにより、水素添加、エステル交換、分別等を行うことなくパン用に適した物性を有し、硬さが調整された油脂を含有するパンを得ることができ、産業上貢献大である。
Claims (2)
- アラキン酸、ベヘニン酸からなる群より選ばれた少なくとも一種と、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリンからなる群より選ばれた少なくとも1種とから得られるエステル化合物である油脂固化剤と、常温で液状の油脂を含有するパン。
- 炭素数20以上の脂肪酸のエステルと、HLB3以下のポリグリセリン脂肪酸エステル及びHLB3以下のショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種とを含有してなる油脂固化剤であって、該炭素数20以上の脂肪酸のエステルが、アラキン酸、ベヘニン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種と、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリンからなる群より選ばれた少なくとも1種とから得られるエステル化合物である油脂固化剤と、常温で液状の油脂を含有するパン。
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