JP3735378B2 - 陰極線管 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、蛍光体スクリーン上のビームスポット径を小さくして、高解像度を実現する陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に白黒受像管やカラー受像管、あるいは投写管などの陰極線管は、電子銃から放出された電子ビームを外囲器の外側に装着された偏向ヨークの発生する磁界により偏向して、蛍光体スクリーンを水平、垂直走査することにより、画像を再生する構造に形成されている。
【0003】
図4にその一例として、カラー受像管を示す。このカラー受像管は、通常パネルといわれているフェースプレート1 およびこのフェースプレート1 に一体に接合された漏斗状のファンネル2 からなる外囲器を有し、そのフェースプレート1 の内面に3色蛍光体層からなる蛍光体スクリーン3 が形成され、この蛍光体スクリーン3 に対向して、その内側に多数の電子ビーム通過孔の形成された色選別電極としてのシャドウマスク4 が配置されている。一方、ファンネル2 のネック5 内に3電子ビーム6B,6G,6Rを放出する電子銃7 が封止されている。そしてファンネル2 の外側に装着された偏向ヨーク8 の発生する磁界により、上記電子銃7 から放出された3電子ビーム6B,6G,6Rを偏向して、蛍光体スクリーン3 を水平、垂直走査する構造に形成されている。
【0004】
特に現在一般に使用されているインライン型カラー受像管では、蛍光体スクリーン3 はストライプ状の3色蛍光体層で形成され、電子銃7 は、同一水平面上を通るセンタービーム6Gおよび一対のサイドビーム6B,6Rを放出するものとなっている。
【0005】
このような陰極線管に使用される電子銃としては、従来より各種方式のものがあるが、いずれの電子銃も、陰極からの電子放出を制御しかつ放出された電子を集束して電子ビームを形成する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から引出された電子ビームを蛍光体スクリーン上に集束する主電子レンズ部とを有する。
【0006】
図5(a)にその一例を示す。この電子銃は、陰極K およびこの陰極K 上に順次所定間隔離れて蛍光体スクリーン3 方向に配置された第1ないし第4グリッドG1〜G4からなる。その第1および第2グリッドG1,G2は、陰極K に対応して比較的小さな電子ビーム通過孔の形成された板状電極からなる。また第3グリッドG3はカップ状の電極、第4グリッドG4は筒状の電極からなり、その第3グリッドG3の第2グリッドG2側には、上記第2グリッドG2の電子ビーム通過孔よりも大きな電子ビーム通過孔が形成され、第3グリッドG3の第4グリッドG4側および第4グリッドG4には、さらに大きな電子ビーム通過孔が形成されている。
【0007】
この電子銃の各電極には、図5(a)に示した電極構成に対応して同(b)に示した電位10が付与される。すなわちたとえば陰極K に100〜200V、第1グリッドG1に0V、第2グリッドG2に500〜1000V、第3グリッドG3に4〜8kV、第4グリッドG4に陽極電圧である20〜30kVの電位が付与され、それにより、陰極K および第1、第2、第3グリッドG1,G2,G3により電子ビーム発生部GEA が形成され、第3、第4グリッドG3,G4により主電子レンズ部MLA が形成される。
【0008】
図5(c)に上記電位を付与したとき形成される電子レンズを光学的モデルで示す。陰極K から放出された電子は、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2によりクロスオーバCOを形成し、ついで第2、第3グリッドG2,G3間に形成されるプリフォーカスレンズPL(予備集束レンズ)によりわずかに集束され、電子ビーム6 を形成して第3グリッドG3に発散しながら入射する。ついでこの第3グリッドG3に入射した電子ビーム6 は、第3、第4グリッドG3,G4間に形成される主電子レンズMLにより蛍光体スクリーン3 上に集束され、この蛍光体スクリーン3 上にビームスポットSPを形成する。
【0009】
この蛍光体スクリーン3 上にビームスポットSPは、上記第3グリッドG3に発散しながら入射する電子ビーム6 の陰極K 側への延長上に得られる仮想クロスオーバVCO を図5(d)に示すように物点11として、これを蛍光体スクリーン上に像点12として結像させたものとみなすことができる。
【0010】
したがって蛍光体スクリーン3 上のビームスポットSPをできるだけ小さくして、蛍光体スクリーン3 上に描かれる画像特性を良好にするためには、主電子レンズMLのレンズ性能を向上させることも重要であるが、物点11である仮想クロスオーバVCO の径をできるだけ小さくすること、および主電子レンズMLに入射する電子ビーム6 の発散角αを小さく抑えて、主電子レンズMLの収差の影響を受けにくくすることもきわめて重要である。特にこの主電子レンズMLの収差の影響は、電子ビーム6 の電流量(ビーム電流量)が多いときに有効である。
【0011】
上記主電子レンズに入射する電子ビームの発散角を小さく抑えるために、電子ビーム発生部と主電子レンズとの間に補助電子レンズ部を形成して、電子ビーム発生部とこの電子ビーム発生部に接近して形成された補助電子レンズ部とでもって電子ビーム形成部とし、それにより主電子レンズに入射する電子ビームの状態を調整する電子銃が、特公昭29−2216号公報、特公昭60−51775号公報、特開昭57−30247号公報などに示されている。
【0012】
このうち、特公昭29−2216号公報および特公昭60−51775号公報に示されている電子銃は、それぞれ図6(a)、図7(a)に示すように、第2グリッドG2と第3グリッドG3との間に、第1、第2、補助グリッドSg1 ,Sg2 または第1、第2、第3,第4補助グリッドSg1 ,Sg2 ,Sg3 ,Sg4 が配置され、これら補助グリッドSg1 ,Sg2 ,Sg3 ,Sg4 を含む各電極に同(b)に示す電位10を付与して、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2により形成される電子ビーム発生部GEA と、第1、第2補助グリッドSg1 ,Sg2 と第3グリッドG3または第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 と第3グリッドG3とにより形成される補助電子レンズ部SLA とで電子ビーム形成部を形成し、第3、第4グリッドG3,G4により主電子レンズ部MLA を形成し、同(c)に示すように、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2により形成される電子ビーム発生部GEA からクロスオーバCOを経て形成される電子ビーム6 を、上記第1、第2補助グリッドSg1 ,Sg2 と第3グリッドG3または第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 と第3グリッドG3とにより形成される補助電子レンズ部SLA の1つの補助電子レンズSLにより少し集束して、第3、第4グリッドG3,G4間に形成される主電子レンズMLに入射する電子ビーム6 の発散角αを小さく抑えようとしている。
【0013】
しかしこの構造の電子銃では、前記図5に示した補助電子レンズを形成しない電子銃にくらべ、仮想クロスオーバVCO の径が大きくなり、そのために蛍光体スクリーン3 上のビームスポットSPを大幅に小さくすることはできない。
【0014】
この仮想クロスオーバVCO の径の増大は、上記公報に述べられているように、クロスオーバCO部の空間電位を高くして、クロスオーバCO部の空間電荷の反発効果を抑制し、クロスオーバCOの径を小さくするよりも結果的に悪くなる。そのため、蛍光体スクリーン3 上のビームスポットSPの径を小さくすることはできない。
【0015】
また特開昭57−30247号公報に示されている電子銃は、図8(a)に示すように、第2グリッドG2と第3グリッドG3との間に1個の補助グリッドSgを配置し、この補助グリッドSgを含む各電極に同(b)に示す電位10を付与して、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2により形成される電子ビーム発生部GEA と、第2グリッドG2、補助グリッドSgおよび第3グリッドG3により形成される補助電子レンズ部SLA とにより電子ビーム形成部を形成し、第3、第4グリッドG3,G4により主電子レンズ部MLA を形成し、同(c)に示すように、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2により形成される電子ビーム発生部GEA からクロスオーバCOを経て形成される電子ビーム6 の外側ビーム6o(離軸ビーム)のみを、第2グリッドG2、補助グリッドSgおよび第3グリッドG3により形成される補助電子レンズSLで強く集束し、この外側ビーム6oのみを第3、第4グリッドG3,G4間に形成される主電子レンズMLの手前で電子ビーム軸13(ビーム軸)と交差させることにより、この外側ビーム6oが主電子レンズMLの収差の影響を受けても、その収差の影響を受けない内側ビーム6i(近軸ビーム)と同じように蛍光体スクリーン3 上に集束するようにし、それによりブルーミング現象を解消しようとするものである。
【0016】
しかし外側ビーム6oのみを主電子レンズMLの手前で電子ビーム軸13と交差させるほど補助電子レンズSLを強くすると、内側ビーム6iも強く集束される。そのため、上記公報に述べられているように、主電子レンズMLを通過する内側ビーム6iと外側ビーム6oとを同時に蛍光体スクリーン3 上に適正に集束することはきわめて難しく、内側ビーム6iも主電子レンズMLの手前でビーム軸13と交差し、同(d)に示すように、主電子レンズMLからみた物点11は、主電子レンズMLに近づく。その結果、電子光学的倍率が悪くなり、像点12で示したように蛍光体スクリーン上のビームスポットは大きくなる。
【0017】
このことは、電子ビーム発生部からのビーム電流量が少ない低電流時に、電子ビームが主電子レンズの手前でビーム軸13と交差しているとして、改良手段を提案している特開昭57−44944号公報からも明らかである。
【0018】
また上記公報には、高電流時には、内側ビームは主電子レンズの手前で電子ビーム軸と交差しないとして、低電流時には、補助電子レンズを働かせないで、高電流時にのみ補助電子レンズを働かせる、いわゆるビーム電流量によるダイナミック補正方法が示されているが、このように高電流時に内側ビームが主電子レンズの手前でビーム軸と交差しないように補助電子レンズの強さを調整したとしても、前述したように外側ビームのみを主電子レンズの手前でビーム軸と交差させるほど強く補助電子レンズを働かせると、内側ビームも強く集束され、主電子レンズを通過する内側ビームと外側ビームとを同時に蛍光体スクリーン上に適正に集束することがきわめて難しくなる。
【0019】
またビーム電流量に対応したダイナミック補正をおこなう場合は、高周波のため、陰極線管の駆動回路が複雑になり、使用しにくいばかりでなく高価になる。さらにインライン型カラー受像管の電子銃のように一列配置の3個の電子銃が一体化された電子銃では、同一平面上を通る一列配置の3電子ビームに対して個々にビーム電流量に対応したダイナミック補正をおこなうことができないという致命的な問題もある。
【0020】
一方、補助電子レンズを形成することなく、主電子レンズに入射する電子ビームの発散角を抑えるとともに、仮想クロスオーバの径を小さくするために、プリフォーカスレンズの最適化を図った電子銃が、特開昭59−148242号公報などに示されている。
【0021】
この電子銃は、図5に示した電子銃の第2グリッドと第3グリッドとの間に形成されるバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズを特に強く働かせようとしたものである。このプリフォーカスレンズは、図9(a)にその電子ビーム発生部を拡大して示し、同(b)にその銃軸14上の電位分布Vおよび2階微分V 〃をそれぞれ曲線15, 16で示したように、第2グリッドG2と第3グリッドG3との間に、バイポテンシャル型電子レンズの特性上、第2グリッドG2側に集束レンズCL、第3グリッドG3側に発散レンズDLが形成され、全体として集束作用をもつプリフォーカスレンズPLとしたものである。
【0022】
このプリフォーカスレンズPLは、上記公報によれば、内側ビームと外側ビームのクロスオーバCOの位置と発散角が異なるため、プリフォーカスレンズPLの集束作用を強めることにより、主として外側ビームのみを強く集束し、電子ビーム6 全体の発散角を抑えるとともに、仮想クロスオーバVCO の径も小さくなるとしている。さらにこのようなプリフォーカスレンズPLのみを強く効かせても、内側ビームが発散角の大きいまま主電子レンズMLに入射することを防止するため、図7に示したように補助電子レンズ部を設け、プリフォーカスレンズPLで外側ビームを、また補助電子レンズ部で徐々に外側になっていく内側ビームを主として集束し、主電子レンズMLに入射させる方法も考えられるとしている。
【0023】
しかし陰極K から放出される電子を集束して得られる電子ビーム6 の密度分布は、図9に示すように、クロスオーバCO部のa面では、裾の広がりの少ない高密度分布17a となっており、プリフォーカスレンズPL部のb面でも、なお裾の広がりの少ない可なり急峻な密度分布17b であり、この部分で外側ビームと内側ビームを区分することは困難である。なお第3グリッドG3の内側のc面およびd面では、17c ,17d で示したように裾の広がりが可なり大きくなる。したがって上記公報の記載のようにプリフォーカスレンズPLで外側ビームのみを主として集束させることは、きわめて困難である。
【0024】
これは、図8に示した電子銃についても、電子ビームの密度分布から外側ビームも内側ビームも同じように集束されるため、同様である。
【0025】
つまり、いずれの電子銃においても、プリフォーカスレンズのレンズ作用を強くしても、クロスオーバから発散する電子ビームは、外側ビームも内側ビームもともに強く集束され、仮想クロスオーバの径は大きくなる。
【0026】
このことは、たとえば図6に示した電子銃のように補助電子レンズ部を設けても、プリフォーカスレンズで主として外側ビームのみを強く集束することができないため、主電子レンズ部に入射する電子ビームの最大発散角は抑えられても、仮想クロスオーバの径を十分に小さくできないことを示している。またプリフォーカスレンズの強さを変えるために、第2グリッドと第3グリッドとの間隔を変えたり、第1、第2グリッドの板厚や第1、第2、第3グリッドの電子ビーム通過孔の大きさを変えたりすると、陰極から電子を取出すためのカットオフ特性が変化し、所望の陰極線管とならず、また必要なビーム電流量を確保できなくなるなどの実用上の不都合が生ずる。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、陰極線管の画像特性を向上させるためには、蛍光体スクリーン上のビームスポットができるだけ小さくなるように、物点である仮想クロスオーバの径をできるだけ小さく、かつ主電子レンズ部に入射する電子ビームの発散角αを小さく抑えて、主電子レンズ部の収差の影響を受けにくくすることが重要かつ有効である。そのために従来より第2グリッドと第3グリッドとの間に電子ビーム発生部からの電子ビームを集束する補助電子レンズ部を形成する補助グリッドを配置した電子銃がある。しかしこのように補助グリッドを配置しても、従来の電子銃は、蛍光体スクリーン上のビームスポットを小さくすることは困難であり、特に高電流時のブルーミング現象を十分に抑制することができず、高電流域における画像特性を向上させることが困難であった。
【0028】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、物点である仮想クロスオーバの径を小さくするとともに、主電子レンズ部に入射する電子ビームの発散角を小さく抑え、高電流域におけるブルーミング現象を抑制して、低電流域から高電流域まで、良好な画像特性をもつ陰極線管を得ることを目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】
陰極およびこの陰極上に順次蛍光体スクリーン方向に配置された複数個のグリッドを有し、その陰極および複数個のグリッドにより陰極からの電子放出を制御しかつ放出された電子を集束して電子ビームを形成する電子ビーム形成部とその電子ビーム形成部から引出された電子ビームを蛍光体スクリーン上に集束する主電子レンズ部とを形成する電子銃を備える陰極線管において、その電子ビーム形成部を陰極とこの陰極に順次隣接して蛍光体スクリーン方向に配置された制御グリッド、加速グリッド、複数個の補助グリッドおよび主電子レンズ部を形成するグリッドで形成し、その制御グリッドには0Vの基準電圧を、加速グリッドには0.5kV〜3kVの電圧を、この加速グリッドに隣接する補助グリッドには5kV〜9kVの少なくとも加速グリッドよりも高い電圧を夫々印加して、その加速グリッドとこの加速グリッドに隣接する第1補助グリッドとの間に予備集束レンズを形成し、複数個の補助グリッドとこの補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドによって少なくとも第1集束レンズと第2集束レンズとを形成し、その第1集束レンズと陰極との間隔L1を
2mm<L1<5mm
第2集束レンズと第1集束レンズとの間隔L2を
2mm<L2<15mm
に設定するとともに、その加速グリッドの電子ビーム通過孔径をφ2とし、第1集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs1、また、第2集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs2としたときに、
φ2≦φs1≦φs2
で、かつ、φs1、φs2を
1mm≦φs1≦2mm、1mm≦φs2≦6mm
に設定した。
【0030】
また、電子ビーム形成部を加速グリッド側から順次蛍光体スクリーン方向に配置された第1補助グリッド、第2補助グリッド、第3補助グリッドおよび第4補助グリッドと主電子レンズ部を形成するグリッドを有し、その第1補助グリッドには5kV〜9kVの高電圧、第2補助グリッドには0.5kV〜3kVの第1補助グリッドよりも相対的に低い電圧、第3補助グリッドには5kV〜9kVの高電圧、第4補助グリッドには第3補助グリッドの電圧よりも相対的に低く、かつ、隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドよりも相対的に低電圧の0.5kV〜3kVの電圧を印加し、この第4補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドには5kV〜9kVの高電圧を印加し、その第1、第2、第3補助グリッドによりユニポテンシャル型の第1集束レンズを形成し、第3、第4補助グリッドおよびこの第4補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドによりユニポテンシャル型の第2集束レンズを形成するようにした。
【0031】
さらに、電子ビーム形成部を加速グリッド側から順次蛍光体スクリーン方向に配置された第1補助グリッド、第2補助グリッドおよび第3補助グリッドと主電子レンズ部を形成するグリッドを有し、その第1補助グリッドには5kV〜9kVの中電圧、第2補助グリッドには0.5kV〜3kVの第1補助グリッドよりも相対的に低い電圧、第3補助グリッドには5kV〜9kVの中電圧を印加し、この第3補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドには20kV〜30kVの高電圧を印加し、その第1、第2、第3補助グリッドによりユニポテンシャル型の第1集束レンズを形成し、第3補助グリッドおよびこの第3補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドによりバイポテンシャル型の第2集束レンズを形成するようにした。
【0032】
【作用】
上記のように電子銃を構成すると、いずれの場合も、陰極、制御グリッドおよび加速グリッドによりクロスオーバを形成して発散する電子ビームを、加速グリッドと第1補助グリッドとの間に形成される予備集束レンズにより少し集束して、電子ビーム全体の発散角を抑え、ついでこの電子ビームの密度分布の裾が少し広がって大きくなり、外側ビームと内側ビームが区別できるようになったところで、複数個の補助グリッドにより形成される第1集束レンズにより主としてその外側ビームを強く集束する。それにより外側ビームが内側に入り、内側ビームが徐々に外側になる。そこで補助グリッドにより形成される第2集束レンズにより、その電子ビーム全体を少し集束して、徐々に外側になっていく電子ビームの発散角を抑えるようにすることができる。
【0033】
したがって上記のように形成される電子ビームは、その最大発散角が小さく抑えられ、かつ主電子レンズ部からみた仮想クロスオーバの径の大きさは、外側ビームと内側ビームのそれぞれの仮想クロスオーバの位置の差が小さくなるため、その径を小さくすることができる。したがってこの電子ビームを主電子レンズ部で集束した場合、集束特性は非常に良好となり、蛍光体スクリーン上のビームスポットの径をいちじるしく小さくすることができる。
【0034】
この場合、従来のように電子ビーム発生部からの電子ビームの外側ビームのみを主電子レンズ部の手前で電子ビーム軸と交差させるほど強く、補助グリッドにより形成される集束レンズで集束するわけではないので、内側ビームもビーム軸と交差することはなく、またビーム電流量の少ない低電流時においても、電子ビーム全体が主電子レンズ部の手前でビーム軸と交差することがない。したがって低電流時から高電流時まで、蛍光体スクリーン上のビームスポットをいちじるしく小さくすることができる。
【0035】
【実施例】
以下、図面を参照してこの発明を実施例に基づいて説明する。
【0036】
この実施例の陰極線管の全体の構成は、従来の陰極線管と同じであるので、図4を参照して説明する。
【0037】
陰極線管は、フェースプレートと漏斗状のファンネルからなる外囲器を有し、そのフェースプレートの内面に蛍光体スクリーンが形成され、一方、ファンネルのネック内に電子銃が封止され、この電子銃から放出される電子ビームをファンネルの外側に装着された偏向ヨークの発生する磁界により偏向して、蛍光体スクリーンを水平、垂直走査することにより、画像を再生する構造に形成されている。
【0038】
特にカラー受像管については、そのフェースプレート1 (パネル)の内面には、青、緑、赤に発光する3色蛍光体層からなる蛍光体スクリーン3 が形成され、この蛍光体スクリーン3 に対向して、その内側に多数の電子ビーム通過孔の形成された色選別電極としてのシャドウマスク4 が配置されている。一方、ファンネル2 のネック5 内には、3電子ビーム6B,6G,6Rを放出する電子銃7 が封止されている。そしてファンネル2 の外側に装着された偏向ヨーク8 の発生する磁界により、上記電子銃7 から放出される3電子ビーム6B,6G,6Rを偏向して、蛍光体スクリーン3 を水平、垂直走査することにより、カラー画像を再生する構造に形成されている。特にインライン型カラー受像管では、その蛍光体スクリーン3 はストライプ状の3色蛍光体層で形成され、一方、電子銃7 は、同一水平面上を通るセンタービーム6Gおよび一対のサイドビーム6B,6Rを放出するものとなっている。
【0039】
図1(a)に上記陰極線管の電子銃を示す。この電子銃は、陰極K 、この陰極K を加熱するヒータ(図示せず)および上記陰極K 上に順次所定間隔離れて蛍光体スクリーン3 方向に配置された第1グリッドG1(制御グリッド)、第2グリッドG2(加速グリッド)、第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 、第3、第4グリッドG3,G4を有し、それらが絶縁支持体(図示せず)により一体に固定された構造に形成されている。
【0040】
その第1、第2グリッドG1,G2は、それぞれ陰極K に対応して比較的小さな電子ビーム通過孔が同軸に形成された板状電極からなる。またこの第2グリッドG2に順次隣接する4個の第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 は、それぞれ第2グリッドG2の電子ビーム通過孔よりも大きい電子ビーム通過孔が同軸に形成された板状電極からなり、特に第4補助グリッドSg4 には、他の補助グリッドSg1 〜Sg3 の電子ビーム通過孔よりも大きな電子ビーム通過孔が形成されている。さらに第3グリッドG3はカップ状の電極、第4グリッドG4は筒状の電極からなり、その第3グリッドG3の第4補助グリッドSg4 側には、第4補助グリッドSg4 の電子ビーム通過孔と同一大きさの電子ビーム通過孔が形成され、第3グリッドG3の第4グリッドG4側および第4グリッドG4には、さらに大きな電子ビーム通過孔が形成されている。
【0041】
表1にこの電子銃の具体的な寸法を示す。
【0042】
【表1】
この電子銃においては、図1(b)に示す電位10が付与される。すなわち陰極Kに100〜200V、これに映像信号を重畳した電位、第1グリッドG1に0V、第2グリッドG2に500〜1000V、第1補助グリッドSg1に5〜9kV、第2補助グリッドSg2に0.5〜3kV、第3補助グリッドSg3に第1補助グリッドSg1と同じ5〜9kV、第4補助グリッドSg4に第2補助グリッドSg2と同じ0.5〜3kV、第3グリッドG3に5〜9kV、第4グリッドG4に陽極電圧である20〜30kVの電位が付与される。
【0043】
それにより、陰極K 、第1、第2グリッドG1, G2および第1補助グリッドSg1 により電子ビーム発生部GEA が形成され、続く第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 および第3グリッドG3により補助電子レンズ部SLA が形成され、これら電子ビーム発生部GEA と補助電子レンズ部SLA とにより、電子ビーム形成部が構成される。さらに第3、第4グリッドG3, G4により主電子レンズ部MLA が形成される。
【0044】
この電子銃では、上記電位10の付与により、図1(c)に示すように、第2グリッドG2と第1補助グリッドSg1 との間にバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLが形成され、第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 により、ユニポテンシャル型の第1補助電子レンズSL1 (第1集束レンズ)が、また第3、第4補助グリッドSg3 ,Sg4 および第3グリッドG3により、同じくユニポテンシャル型の第2補助電子レンズSL2 (第2集束レンズ)が形成され、さらに第3、第4グリッドG3,G4間にバイポテンシャル型の主電子レンズMLが形成される。
【0045】
それにより、陰極K から放出された電子は、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2によりクロスオーバCOを形成し、ついで第2グリッドG2と第1補助グリッドSg1 との間に形成されるバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLによりわずかに集束される。このプリフォーカスレンズPLでは、電子ビーム6 の密度分布20a は、まだ急峻であるため、電子ビームの全体にプリフォーカスレンズPLの集束作用が及び、電子ビーム全体が少し集束される。
【0046】
一般にクロスオーバCOの径は、ビーム電流量が3〜5mAのときでも、100μm 程度であり、プリフォーカスレンズPLでも、まだ100〜200μm 程度である。また第2グリッドG2の電子ビーム通過孔でも、400μm 程度の急峻な密度分布であるため、プリフォーカスレンズPLにより、電子ビーム6 の外側ビームと内側ビームとに対する集束作用を大きく異ならしめることは、ほとんどできない。
【0047】
なお、このプリフォーカスレンズPLがない場合は、電子ビーム6 は、大きな発散角をもって広がり、電極に衝突するようになる。またこの電子銃でのバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLは、これを形成する第1補助グリッドSg1 の電位が5〜9kVと高いため、電子ビーム6 の反発による広がりを抑える上に有効に作用している。
【0048】
つぎに、上記プリフォーカスレンズPLにより少し集束された電子ビーム6 は、第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 により形成されるユニポテンシャル型の第1補助電子レンズSL1 により少し強く集束される。
【0049】
この第1補助電子レンズSL1 に入射する電子ビーム6 は、プリフォーカスレンズPLで集束されてはいるが、まだ最大発散角が5〜10°程度の大きな発散角のため、かなり大きな径となっている。すなわち、この第1補助電子レンズSL1 での電子ビーム6 の密度分布20b は、上記密度分布20a にくらべてピークが低くなりかつ裾がひろがって、密度の薄い外側ビームと密度の濃い内側ビームとを分けることが可能な状態となる。一方、この第1補助電子レンズSL1 は、これを形成する第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 の電子ビーム通過孔が小さいため、レンズ口径が小さい。そのため、大きく広がった電子ビーム6 は、外側ビームが、大きな球面収差を受け、かつ密度の濃い内側ビームよりも強い集束作用を受ける。その結果、密度の薄い外側ビームの発散角は、大きく抑えられるが、密度の濃い内側ビームの発散角は、その割には抑えられない。
【0050】
つまり、第1補助電子レンズSL1 は、上記説明から明らかなように電子ビーム6 の密度分布がある程度裾が広がったところで、レンズの球面収差を利用して集束するものである。そのためにこの第1補助電子レンズSL1 は、陰極K の電子放出面との間隔L1 が2〜8mm程度、好ましくは2〜5mmの位置に形成することが必要である。
【0051】
上記第1補助電子レンズSL1 により強い集束作用を受けた電子ビーム6 は、外側ビームが徐々に内側に入込む。一方、内側ビームの外側部分が徐々に外側になりながら、第3、第4補助グリッドSg3 ,Sg4 および第3グリッドG3により形成されるユニポテンシャル型の第2補助電子レンズSL2 に入射する。この第2補助電子レンズSL2 は、第1補助電子レンズSL1 のレンズ口径よりも大きく、電子ビーム6 全体の発散角を抑えるように集束する。それにより、徐々に外側になる内側ビームの発散を抑える。
【0052】
この第2補助電子レンズSL2 の主な作用は、クロスオーバCOから発散してくる電子ビーム6 が、さらに密度分布のピークが低くなり、かつ裾が広がるのを防止するものである。
【0053】
すなわち、第1補助電子レンズSL1 がないと仮定すると、前記密度分布20b をもった電子ビームは、この第2補助電子レンズSL2 の位置で破線20c で示すようにピークが低下しかつ裾が広がる。さらにこの第2補助電子レンズSL2 がないと仮定すると、主電子レンズMLに入射する電子ビーム6 は、裾が大きく広がり、主電子レンズMLの収差の影響を大きく受けるようになる。しかし上記のように第1補助電子レンズSL1 に隣接して第2補助電子レンズSL2 を設けると、20d で示したようにその電子ビーム6 の密度分布のピークの低下を抑えかつ裾の広がりを抑制する。
【0054】
したがってこの第2補助電子レンズSL2 は、電子ビーム6 が広がってその径があまり大きくなりすぎたところでは効果が少なくなるため、その形成位置は、重要であり、第1補助電子レンズSL1 との間隔L2 が2〜15mmになる位置に形成するとよい。
【0055】
上記第2補助電子レンズSL2 により集束された電子ビーム6 は、その後、第3、第4グリッド間に形成される主電子レンズMLに入射し、この主電子レンズMLにより蛍光体スクリーン3 上に集束される。
【0056】
なお、上記説明では、第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 により第1補助電子レンズSL1 が形成され、第3、第4補助グリッドSg3 ,Sg4 および第3グリッドG3により第2補助電子レンズSL2 が形成されるとしたが、この補助グリッドと第3グリッドG3とにより形成される補助電子レンズは、図2(a)の電極構成と対比して同(b)に銃軸14上の電位分布Vを曲線15、その2階微分V″を曲線16で示すように、集束レンズと発散レンズの組合わせとなっている。すなわち、同(c)に示すように、第2グリッドG2と第3グリッドG3との間には、第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 の配置により、第2グリッドG2から第3グリッドG3の方向に、順次集束レンズCL1 −発散レンズDL1 −発散レンズDL2 −集束レンズCL2 −発散レンズDL3 −発散レンズDL4 −集束レンズCL3 −発散レンズDL5 が形成され、総合的にこれら電子レンズにより、同(d)に示すように、プリフォーカスレンズPLおよび集束レンズである第1補助電子レンズSL1 、第2補助電子レンズSL2 が形成される。
【0057】
ところで、上記のように電子銃を構成すると、主電子レンズMLからみた物点11、すなわち仮想クロスオーバVCO は、図1(c)に示したように、従来の電子銃に比べ、主電子レンズMLから遠く離れた位置に形成される。しかもこの仮想クロスオーバVCO は、電子ビーム発生部GEA からクロスオーバCOを経て形成された電子ビーム6 が主電子レンズ部MLA に入射する前に、補助電子レンズ部SLA により選択的な集束作用を受け、電子ビーム6 の状態(密度分布)が作り換えられるために、従来と異なり、非常に小さく形成される。またこの電子銃に形成される2個の補助電子レンズSL1 ,SL2 は、電子ビーム6 の外側ビームおよび内側ビームの発散角をそれぞれ適度に抑制することができるため、主電子レンズMLでの電子ビーム6 の径を大きくすることがなく、したがって主電子レンズMLでの収差の影響を受けにくくなる。
【0058】
したがってこの電子銃では、図1(d)に示したように、小さな物点11を主電子レンズMLでの収差の影響を受けることなく蛍光体スクリーン上に像点12を形成することができるため、電子光学的倍率を小さく、かつ蛍光体スクリーン上のビームスポットをいちじるしく小さくすることができる。
【0059】
なお、この電子銃は、前述した特公昭29−2216号公報や特公昭60−51775号公報などの電子銃のように、電子ビーム発生部からの電子ビームを1個の補助電子レンズにより全体的に集束して発散角を抑制しようとするものではないので、仮想クロスオーバVCO の径の増大をまねくことがない。また特開昭57−30247号公報や特開昭57−44944号公報などの電子銃のように、電子ビーム発生部からの電子ビームを主電子レンズの手前でビーム軸と交差させるほど強く集束するものでもないので、電子光学的倍率が悪化して、蛍光体スクリーン上のビームスポットを大きくすることもない。また高電流時と低電流時とで、補助電子レンズのレンズ作用を変えるという使いにくい操作も不要であり、低電流域(0.1〜1mA)から高電流域(3〜5mA)まで、良好なビームスポットが得られる。
【0060】
また一般に陰極線管は、前述したように電子銃から放出される電子ビームをファンネルの外側に装着された偏向ヨークの発生する磁界により偏向することにより、蛍光体スクリーンを走査して画像を再生するため、電子銃から蛍光体スクリーンまでの距離は、蛍光体スクリーン中央部までの距離にくらべ、蛍光体スクリーン周辺部までの距離の方が長い。そのため、蛍光体スクリーンの中央部において、適正な集束が得られるようにすると、周辺部では過集束状態となる。この蛍光体スクリーン周辺部での過集束状態を調整するため、従来は主電子レンズ部での集束力を弱くしている。しかしたとえば同一平面上を通る一列配置の3電子ビームを放出するインライン型カラー受像管の電子銃において、特公昭52−32714号公報などに示されているように、主電子レンズ部を形成する一方のグリッドのサイドビームの通過する電子ビーム通過孔(サイドビーム通過孔)を他方のグリッドのサイドビーム通過孔に対して偏心させて、一対のサイドビームをセンタービーム側に曲げることにより、3電子ビームの集束を主電子レンズ部でおこなうようにした電子銃では、上記のように主電子レンズ部の集束力を変えると、3電子ビームの集中状態も変化する。
【0061】
しかし、この電子銃では、補助電子レンズ部の第1補助電子レンズSL1 の集束力を強くすることにより、集束不足状態にすることができるため、蛍光体スクリーン3 の周辺部での過集束状態を容易に調整することができる。すなわち、本発明者等が確認したところによれば、蛍光体スクリーン3 の周辺部で過集束状態になる主因が外側ビームであることから、第1補助電子レンズSL1 を強く効かせて外側ビームを強く集束し、この外側ビームが、主電子レンズMLでビーム軸14の近くになるようにすると、主電子レンズMLの集束力があまり効かなくなり、結果的に集束不足状態にすることができ、蛍光体スクリーン3 の周辺部での過集束状態を調整することができるようになる。
【0062】
つまり、この電子銃は、主電子レンズ部で3電子ビームを集束するとともに集中するカラー受像管に適用して、3電子ビームの集中を変化させることなく集束することができるというすぐれた効果が得られる。
【0063】
つぎに、他の実施例について説明する。
【0064】
上記実施例では、主電子レンズ部を第3、第4グリッド間に形成されるバイポテンシャル型の電子レンズとしたが、この主電子レンズ部は、ユニポテンシャル型の電子レンズやトライポテンシャル型の電子レンズ、あるいはこれらの型の電子レンズを組合わせた各種電子レンズで形成してもよい。また同一平面上を通る一列配置の3電子ビームを放出するインライン型カラー受像管の電子銃の主電子レンズ部について、その主電子レンズの性能を向上させるために、たとえば特開平2−1668543公報に示されているように主電子レンズ部を3電子ビームに対して共通に作用する主電子レンズと3電子ビームに対して個々に作用する個別の電子レンズを組合わせた主電子レンズ部とし、センタービームと一対のサイドビームに対する偏向収差の相違を補正するようした電子銃などにも適用可能である。
【0065】
また、上記実施例では、電子ビーム発生部から補助電子レンズ部、主電子レンズ部のすべてを対称電子レンズとしたが、たとえば蛍光体スクリーン周辺部の偏向収差対策など、陰極線管の性能を向上させるため、非対称電子レンズを形成する電子銃にも適用可能である。
【0066】
さらに、上記実施例では、補助電子レンズ部を第1ないし第4補助グリッドと第3グリッドとで形成し、その第1ないし第3補助グリッドにより第1補助電子レンズを形成し、第3、第4補助グリッドと第3グリッドとで第2補助電子レンズを形成したが、このような第1、第2の補助電子レンズからなる補助電子レンズ部は、他の構成で形成することも可能である。
【0067】
他の実施例として、図3に、図1に示した電子銃とは構成の異なる電子銃を示す。この電子銃は、陰極K、この陰極Kを加熱するヒータ(図示せず)および上記陰極K上に順次所定間隔離れて蛍光体スクリーン3方向に配置された第1、第2グリッドG1,G2、第1ないし第3補助グリッドSg1〜Sg3、第3ないし第5グリッドG3〜G5を有し、それらが絶縁支持体(図示せず)により一体に固定された構造に形成されている。
【0068】
その第1、第2グリッドG1,G2は、それぞれ陰極K に対応して比較的小さな電子ビーム通過孔が同軸に形成された板状電極からなる。またこの第2グリッドG2に順次隣接する3個の第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 は、それぞれ第1、第2グリッドG1,G2の電子ビーム通過孔よりも大きい電子ビーム通過孔が同軸に形成された板状電極からなり、特に第3補助グリッドSg3 は、第1、第2補助グリッドSg1 ,Sg2 よりも板厚が厚く形成されている。このような補助グリッドSg3 は、カップ状の電極でも形成することができる。さらに第3グリッドG3はカップ状の電極、第4および第5グリッドG4,G5は筒状の電極からなり、その第3グリッドG3の第3補助グリッドSg3 側には、第3補助グリッドSg3 の電子ビーム通過孔よりも大きな電子ビーム通過孔が形成され、第3グリッドG3の第4グリッドG4側および第4、第5グリッドG4,G5には、さらに大きな電子ビーム通過孔が形成されている。
【0069】
この電子銃では、陰極Kおよび各グリッドG1,G2、Sg1,Sg2、Sg3,G3,G4,G5に図3(b)に示す電位が付与される。すなわち、陰極Kおよび第1、第2グリッドG1,G2には、図1に示した電子銃と同程度の電位が付与される。第1補助グリッドSg1には、その第2グリッドG2の電位よりも高い電位が、第2補助グリッドSg2には、第2グリッドG2と同程度の電位が、第3補助グリッドSg3には、第1補助グリッドSg1と同程度の電位が付与される。さらに第3グリッドG3には、第5グリッドG5と同じ陽極電圧が、第4グリッドG4には、第3補助グリッドSg3と同程度の電位が付与される。
【0070】
それにより、陰極K 、第1、第2グリッドG1,G2および第1補助グリッドSg1 により電子ビーム発生部GEA が形成され、第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 および第3グリッドG3により補助電子レンズ部SLA が形成され、これら電子ビーム発生部GEA と補助電子レンズ部SLA とにより、電子ビーム形成部が構成される。さらに第3、第4、第5グリッドG3,G4,G5により主電子レンズ部MLA が形成される。
【0071】
この電子銃では、上記電位の付与により図3(b)に示したように、第2グリッドG2と第1補助グリッドSg1との間にバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLが形成され、第1ないし第3補助グリッドSg1〜Sg3によりユニポテンシャル型の第1補助電子レンズSL1が、また第3補助グリッドSg3と第3グリッドG3との間にバイポテンシャル型の第2補助電子レンズSL2が形成され、さらに第3ないし第5グリッドG3〜G5によりユニポテンシャル型の主電子レンズMLが形成される。
【0072】
それにより、陰極K から放出された電子は、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2によりクロスオーバを形成し、ついで第2グリッドG2と第1補助グリッドSg1 との間に形成されるバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLによりわずかに集束される。このプリフォーカスレンズPLにより集束された電子ビームは、つぎの第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 により形成されるユニポテンシャル型の第1補助電子レンズSL1 および第3補助グリッドSg3 と第3グリッドG3との間に形成されるバイポテンシャル型の第2補助電子レンズSL2 により、選択的に集束され、密度分布が良好な状態に作り換えられる。そしてこの選択的に集束された電子ビームは、第3ないし第5グリッドG3〜G5により形成されるユニポテンシャル型の主電子レンズMLにより蛍光体スクリーン上に集束される。
【0073】
このような電子銃においても、図1に示した電子銃と同様の効果が得られ、蛍光体スクリーン上に小さなビームスポットを形成することができる。
【0074】
【発明の効果】
陰極とこの陰極に順次隣接して蛍光体スクリーン方向に配置された制御グリッド、加速グリッド、複数個の補助グリッドおよび主電子レンズ部を形成するグリッドで電子ビーム形成部を形成し、その制御グリッドには0Vの基準電圧を、加速グリッドには0.5kV〜3kVの電圧を、この加速グリッドに隣接する補助グリッドには5kV〜9kVの少なくとも加速グリッドよりも高い電圧を夫々印加して、その加速グリッドとこの加速グリッドに隣接する第1補助グリッドとの間にプリフォーカスレンズを形成し、複数個の補助グリッドとこの補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドにより少なくとも第1集束レンズと第2集束レンズとを形成し、かつその第1集束レンズと陰極との間隔L1を
2mm<L1<5mm
とし、第2集束レンズと第1集束レンズとの間隔L2を
2mm<L2<15mm
に設定するとともに、加速グリッドの電子ビーム通過孔径をφ2とし、第1集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs1、また、第2集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs2としたときに、
φ2≦φs1≦φs2
で、かつ、φs1、φs2を
1mm≦φs1≦2mm、1mm≦φs2≦6mm
に設定すると、電子ビーム形成部からクロスオーバを形成して発散する電子ビームを、加速グリッドと第1補助グリッドとの間に形成されるプリフォーカスレンズにより少し集束して電子ビーム全体の発散角を抑え、ついでこの電子ビームの密度分布の裾が少し広がって大きくなり、外側ビームと内側ビームが区別できるようになったところで、第1集束レンズにより、主としてその電子ビームの外側ビームを強く集束すると、外側ビームが内側に入り、内側ビームが徐々に外側になる。そこで第2集束レンズにより、電子ビーム全体を少し集束して徐々に外側になっていく電子ビームの発散角を抑えると、電子ビームは、その最大発散角が小さく抑えられ、かつ主電子レンズ部からみた仮想クロスオーバの大きさは、外側ビームと内側ビームのそれぞれの仮想クロスオーバの位置の差が小さくなるため小さくでき、この電子ビームを主電子レンズ部で集束した場合の集束特性が非常に良好となり、高電流域から低電流域まで、蛍光体スクリーン上のビームスポットの径を著しく小さくすることができ、画像特性を大幅に向上させることができる。
【0075】
また蛍光体スクリーンの周辺部に対する集束も、容易にフォーカス調整可能な方法が得られ、特に3電子ビームを主電子レンズ部で集中するカラー受像管の場合、その集中を変化させることなく3電子ビームを良好に集束できるというすぐれた効果が得られる。またその3電子ビームを集束する主電子レンズ部を大口径化あるいは長焦点化することにより、さらに蛍光体スクリーン上のビームスポットを小さくすることができ、画像特性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)はこの発明の一実施例に係る電子銃の構成を示す図、図1(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図1(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図、図1(d)はその電子レンズにより形成される物点と像点との関係を示す図である。
【図2】図2(a)は上記電子銃の電子ビーム形成部を示す図、図2(b)はその銃軸上の電位分布およびその2階微分を示す図、図2(c)および(d)はそれぞれ上記電子ビーム形成部に形成される電子レンズを説明するための図である。
【図3】図3(a)はこの発明の他の実施例に係る電子銃の構成を示す図、図3(b)はその各電極に付与する電位および形成される電子レンズの光学的モデル図である。
【図4】カラー受像管の構成を示す図である。
【図5】図5(a)は従来の電子銃の構成を示す図、図5(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図5(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図、図5(d)はその電子レンズにより形成される物点と像点との関係を示す図である。
【図6】図6(a)は従来の補助グリッドの配置された電子銃の構成を示す図、図6(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図6(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図である。
【図7】図7(a)は従来の補助グリッドの配置された異なる電子銃の構成を示す図、図7(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図7(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図である。
【図8】図8(a)は従来の補助グリッドの配置されたさらに異なる電子銃の構成を示す図、図8(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図8(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図、図8(d)はその電子レンズにより形成される物点と像点との関係を示す図である。
【図9】図9(a)は従来の補助レンズを形成することなく仮想クロスオーバを小さくする電子銃を説明するための図、図9(b)はその銃軸上の電位分布およびその2階微分を示す図、図9(c)はその電子銃の各部分における電子ビームの密度分布を示す図である。
【符号の説明】
3 …蛍光体スクリーン
6 …電子ビーム
CO…クロスオーバ
G1…第1グリッド
G2…第2グリッド
G3…第3グリッド
G4…第4グリッド
G5…第5グリッド
GEA …電子ビーム発生部
K …陰極
ML…主電子レンズ
MLA …主電子レンズ部
PL…プリフォーカスレンズ
Sg1 …第1補助グリッド
Sg2 …第2補助グリッド
Sg3 …第3補助グリッド
Sg4 …第4補助グリッド
SL1 …第1補助電子レンズ
SL2 …第2補助電子レンズ
SLA …補助電子レンズ部
VCO …仮想クロスオーバ
【産業上の利用分野】
この発明は、蛍光体スクリーン上のビームスポット径を小さくして、高解像度を実現する陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に白黒受像管やカラー受像管、あるいは投写管などの陰極線管は、電子銃から放出された電子ビームを外囲器の外側に装着された偏向ヨークの発生する磁界により偏向して、蛍光体スクリーンを水平、垂直走査することにより、画像を再生する構造に形成されている。
【0003】
図4にその一例として、カラー受像管を示す。このカラー受像管は、通常パネルといわれているフェースプレート1 およびこのフェースプレート1 に一体に接合された漏斗状のファンネル2 からなる外囲器を有し、そのフェースプレート1 の内面に3色蛍光体層からなる蛍光体スクリーン3 が形成され、この蛍光体スクリーン3 に対向して、その内側に多数の電子ビーム通過孔の形成された色選別電極としてのシャドウマスク4 が配置されている。一方、ファンネル2 のネック5 内に3電子ビーム6B,6G,6Rを放出する電子銃7 が封止されている。そしてファンネル2 の外側に装着された偏向ヨーク8 の発生する磁界により、上記電子銃7 から放出された3電子ビーム6B,6G,6Rを偏向して、蛍光体スクリーン3 を水平、垂直走査する構造に形成されている。
【0004】
特に現在一般に使用されているインライン型カラー受像管では、蛍光体スクリーン3 はストライプ状の3色蛍光体層で形成され、電子銃7 は、同一水平面上を通るセンタービーム6Gおよび一対のサイドビーム6B,6Rを放出するものとなっている。
【0005】
このような陰極線管に使用される電子銃としては、従来より各種方式のものがあるが、いずれの電子銃も、陰極からの電子放出を制御しかつ放出された電子を集束して電子ビームを形成する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から引出された電子ビームを蛍光体スクリーン上に集束する主電子レンズ部とを有する。
【0006】
図5(a)にその一例を示す。この電子銃は、陰極K およびこの陰極K 上に順次所定間隔離れて蛍光体スクリーン3 方向に配置された第1ないし第4グリッドG1〜G4からなる。その第1および第2グリッドG1,G2は、陰極K に対応して比較的小さな電子ビーム通過孔の形成された板状電極からなる。また第3グリッドG3はカップ状の電極、第4グリッドG4は筒状の電極からなり、その第3グリッドG3の第2グリッドG2側には、上記第2グリッドG2の電子ビーム通過孔よりも大きな電子ビーム通過孔が形成され、第3グリッドG3の第4グリッドG4側および第4グリッドG4には、さらに大きな電子ビーム通過孔が形成されている。
【0007】
この電子銃の各電極には、図5(a)に示した電極構成に対応して同(b)に示した電位10が付与される。すなわちたとえば陰極K に100〜200V、第1グリッドG1に0V、第2グリッドG2に500〜1000V、第3グリッドG3に4〜8kV、第4グリッドG4に陽極電圧である20〜30kVの電位が付与され、それにより、陰極K および第1、第2、第3グリッドG1,G2,G3により電子ビーム発生部GEA が形成され、第3、第4グリッドG3,G4により主電子レンズ部MLA が形成される。
【0008】
図5(c)に上記電位を付与したとき形成される電子レンズを光学的モデルで示す。陰極K から放出された電子は、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2によりクロスオーバCOを形成し、ついで第2、第3グリッドG2,G3間に形成されるプリフォーカスレンズPL(予備集束レンズ)によりわずかに集束され、電子ビーム6 を形成して第3グリッドG3に発散しながら入射する。ついでこの第3グリッドG3に入射した電子ビーム6 は、第3、第4グリッドG3,G4間に形成される主電子レンズMLにより蛍光体スクリーン3 上に集束され、この蛍光体スクリーン3 上にビームスポットSPを形成する。
【0009】
この蛍光体スクリーン3 上にビームスポットSPは、上記第3グリッドG3に発散しながら入射する電子ビーム6 の陰極K 側への延長上に得られる仮想クロスオーバVCO を図5(d)に示すように物点11として、これを蛍光体スクリーン上に像点12として結像させたものとみなすことができる。
【0010】
したがって蛍光体スクリーン3 上のビームスポットSPをできるだけ小さくして、蛍光体スクリーン3 上に描かれる画像特性を良好にするためには、主電子レンズMLのレンズ性能を向上させることも重要であるが、物点11である仮想クロスオーバVCO の径をできるだけ小さくすること、および主電子レンズMLに入射する電子ビーム6 の発散角αを小さく抑えて、主電子レンズMLの収差の影響を受けにくくすることもきわめて重要である。特にこの主電子レンズMLの収差の影響は、電子ビーム6 の電流量(ビーム電流量)が多いときに有効である。
【0011】
上記主電子レンズに入射する電子ビームの発散角を小さく抑えるために、電子ビーム発生部と主電子レンズとの間に補助電子レンズ部を形成して、電子ビーム発生部とこの電子ビーム発生部に接近して形成された補助電子レンズ部とでもって電子ビーム形成部とし、それにより主電子レンズに入射する電子ビームの状態を調整する電子銃が、特公昭29−2216号公報、特公昭60−51775号公報、特開昭57−30247号公報などに示されている。
【0012】
このうち、特公昭29−2216号公報および特公昭60−51775号公報に示されている電子銃は、それぞれ図6(a)、図7(a)に示すように、第2グリッドG2と第3グリッドG3との間に、第1、第2、補助グリッドSg1 ,Sg2 または第1、第2、第3,第4補助グリッドSg1 ,Sg2 ,Sg3 ,Sg4 が配置され、これら補助グリッドSg1 ,Sg2 ,Sg3 ,Sg4 を含む各電極に同(b)に示す電位10を付与して、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2により形成される電子ビーム発生部GEA と、第1、第2補助グリッドSg1 ,Sg2 と第3グリッドG3または第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 と第3グリッドG3とにより形成される補助電子レンズ部SLA とで電子ビーム形成部を形成し、第3、第4グリッドG3,G4により主電子レンズ部MLA を形成し、同(c)に示すように、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2により形成される電子ビーム発生部GEA からクロスオーバCOを経て形成される電子ビーム6 を、上記第1、第2補助グリッドSg1 ,Sg2 と第3グリッドG3または第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 と第3グリッドG3とにより形成される補助電子レンズ部SLA の1つの補助電子レンズSLにより少し集束して、第3、第4グリッドG3,G4間に形成される主電子レンズMLに入射する電子ビーム6 の発散角αを小さく抑えようとしている。
【0013】
しかしこの構造の電子銃では、前記図5に示した補助電子レンズを形成しない電子銃にくらべ、仮想クロスオーバVCO の径が大きくなり、そのために蛍光体スクリーン3 上のビームスポットSPを大幅に小さくすることはできない。
【0014】
この仮想クロスオーバVCO の径の増大は、上記公報に述べられているように、クロスオーバCO部の空間電位を高くして、クロスオーバCO部の空間電荷の反発効果を抑制し、クロスオーバCOの径を小さくするよりも結果的に悪くなる。そのため、蛍光体スクリーン3 上のビームスポットSPの径を小さくすることはできない。
【0015】
また特開昭57−30247号公報に示されている電子銃は、図8(a)に示すように、第2グリッドG2と第3グリッドG3との間に1個の補助グリッドSgを配置し、この補助グリッドSgを含む各電極に同(b)に示す電位10を付与して、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2により形成される電子ビーム発生部GEA と、第2グリッドG2、補助グリッドSgおよび第3グリッドG3により形成される補助電子レンズ部SLA とにより電子ビーム形成部を形成し、第3、第4グリッドG3,G4により主電子レンズ部MLA を形成し、同(c)に示すように、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2により形成される電子ビーム発生部GEA からクロスオーバCOを経て形成される電子ビーム6 の外側ビーム6o(離軸ビーム)のみを、第2グリッドG2、補助グリッドSgおよび第3グリッドG3により形成される補助電子レンズSLで強く集束し、この外側ビーム6oのみを第3、第4グリッドG3,G4間に形成される主電子レンズMLの手前で電子ビーム軸13(ビーム軸)と交差させることにより、この外側ビーム6oが主電子レンズMLの収差の影響を受けても、その収差の影響を受けない内側ビーム6i(近軸ビーム)と同じように蛍光体スクリーン3 上に集束するようにし、それによりブルーミング現象を解消しようとするものである。
【0016】
しかし外側ビーム6oのみを主電子レンズMLの手前で電子ビーム軸13と交差させるほど補助電子レンズSLを強くすると、内側ビーム6iも強く集束される。そのため、上記公報に述べられているように、主電子レンズMLを通過する内側ビーム6iと外側ビーム6oとを同時に蛍光体スクリーン3 上に適正に集束することはきわめて難しく、内側ビーム6iも主電子レンズMLの手前でビーム軸13と交差し、同(d)に示すように、主電子レンズMLからみた物点11は、主電子レンズMLに近づく。その結果、電子光学的倍率が悪くなり、像点12で示したように蛍光体スクリーン上のビームスポットは大きくなる。
【0017】
このことは、電子ビーム発生部からのビーム電流量が少ない低電流時に、電子ビームが主電子レンズの手前でビーム軸13と交差しているとして、改良手段を提案している特開昭57−44944号公報からも明らかである。
【0018】
また上記公報には、高電流時には、内側ビームは主電子レンズの手前で電子ビーム軸と交差しないとして、低電流時には、補助電子レンズを働かせないで、高電流時にのみ補助電子レンズを働かせる、いわゆるビーム電流量によるダイナミック補正方法が示されているが、このように高電流時に内側ビームが主電子レンズの手前でビーム軸と交差しないように補助電子レンズの強さを調整したとしても、前述したように外側ビームのみを主電子レンズの手前でビーム軸と交差させるほど強く補助電子レンズを働かせると、内側ビームも強く集束され、主電子レンズを通過する内側ビームと外側ビームとを同時に蛍光体スクリーン上に適正に集束することがきわめて難しくなる。
【0019】
またビーム電流量に対応したダイナミック補正をおこなう場合は、高周波のため、陰極線管の駆動回路が複雑になり、使用しにくいばかりでなく高価になる。さらにインライン型カラー受像管の電子銃のように一列配置の3個の電子銃が一体化された電子銃では、同一平面上を通る一列配置の3電子ビームに対して個々にビーム電流量に対応したダイナミック補正をおこなうことができないという致命的な問題もある。
【0020】
一方、補助電子レンズを形成することなく、主電子レンズに入射する電子ビームの発散角を抑えるとともに、仮想クロスオーバの径を小さくするために、プリフォーカスレンズの最適化を図った電子銃が、特開昭59−148242号公報などに示されている。
【0021】
この電子銃は、図5に示した電子銃の第2グリッドと第3グリッドとの間に形成されるバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズを特に強く働かせようとしたものである。このプリフォーカスレンズは、図9(a)にその電子ビーム発生部を拡大して示し、同(b)にその銃軸14上の電位分布Vおよび2階微分V 〃をそれぞれ曲線15, 16で示したように、第2グリッドG2と第3グリッドG3との間に、バイポテンシャル型電子レンズの特性上、第2グリッドG2側に集束レンズCL、第3グリッドG3側に発散レンズDLが形成され、全体として集束作用をもつプリフォーカスレンズPLとしたものである。
【0022】
このプリフォーカスレンズPLは、上記公報によれば、内側ビームと外側ビームのクロスオーバCOの位置と発散角が異なるため、プリフォーカスレンズPLの集束作用を強めることにより、主として外側ビームのみを強く集束し、電子ビーム6 全体の発散角を抑えるとともに、仮想クロスオーバVCO の径も小さくなるとしている。さらにこのようなプリフォーカスレンズPLのみを強く効かせても、内側ビームが発散角の大きいまま主電子レンズMLに入射することを防止するため、図7に示したように補助電子レンズ部を設け、プリフォーカスレンズPLで外側ビームを、また補助電子レンズ部で徐々に外側になっていく内側ビームを主として集束し、主電子レンズMLに入射させる方法も考えられるとしている。
【0023】
しかし陰極K から放出される電子を集束して得られる電子ビーム6 の密度分布は、図9に示すように、クロスオーバCO部のa面では、裾の広がりの少ない高密度分布17a となっており、プリフォーカスレンズPL部のb面でも、なお裾の広がりの少ない可なり急峻な密度分布17b であり、この部分で外側ビームと内側ビームを区分することは困難である。なお第3グリッドG3の内側のc面およびd面では、17c ,17d で示したように裾の広がりが可なり大きくなる。したがって上記公報の記載のようにプリフォーカスレンズPLで外側ビームのみを主として集束させることは、きわめて困難である。
【0024】
これは、図8に示した電子銃についても、電子ビームの密度分布から外側ビームも内側ビームも同じように集束されるため、同様である。
【0025】
つまり、いずれの電子銃においても、プリフォーカスレンズのレンズ作用を強くしても、クロスオーバから発散する電子ビームは、外側ビームも内側ビームもともに強く集束され、仮想クロスオーバの径は大きくなる。
【0026】
このことは、たとえば図6に示した電子銃のように補助電子レンズ部を設けても、プリフォーカスレンズで主として外側ビームのみを強く集束することができないため、主電子レンズ部に入射する電子ビームの最大発散角は抑えられても、仮想クロスオーバの径を十分に小さくできないことを示している。またプリフォーカスレンズの強さを変えるために、第2グリッドと第3グリッドとの間隔を変えたり、第1、第2グリッドの板厚や第1、第2、第3グリッドの電子ビーム通過孔の大きさを変えたりすると、陰極から電子を取出すためのカットオフ特性が変化し、所望の陰極線管とならず、また必要なビーム電流量を確保できなくなるなどの実用上の不都合が生ずる。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、陰極線管の画像特性を向上させるためには、蛍光体スクリーン上のビームスポットができるだけ小さくなるように、物点である仮想クロスオーバの径をできるだけ小さく、かつ主電子レンズ部に入射する電子ビームの発散角αを小さく抑えて、主電子レンズ部の収差の影響を受けにくくすることが重要かつ有効である。そのために従来より第2グリッドと第3グリッドとの間に電子ビーム発生部からの電子ビームを集束する補助電子レンズ部を形成する補助グリッドを配置した電子銃がある。しかしこのように補助グリッドを配置しても、従来の電子銃は、蛍光体スクリーン上のビームスポットを小さくすることは困難であり、特に高電流時のブルーミング現象を十分に抑制することができず、高電流域における画像特性を向上させることが困難であった。
【0028】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、物点である仮想クロスオーバの径を小さくするとともに、主電子レンズ部に入射する電子ビームの発散角を小さく抑え、高電流域におけるブルーミング現象を抑制して、低電流域から高電流域まで、良好な画像特性をもつ陰極線管を得ることを目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】
陰極およびこの陰極上に順次蛍光体スクリーン方向に配置された複数個のグリッドを有し、その陰極および複数個のグリッドにより陰極からの電子放出を制御しかつ放出された電子を集束して電子ビームを形成する電子ビーム形成部とその電子ビーム形成部から引出された電子ビームを蛍光体スクリーン上に集束する主電子レンズ部とを形成する電子銃を備える陰極線管において、その電子ビーム形成部を陰極とこの陰極に順次隣接して蛍光体スクリーン方向に配置された制御グリッド、加速グリッド、複数個の補助グリッドおよび主電子レンズ部を形成するグリッドで形成し、その制御グリッドには0Vの基準電圧を、加速グリッドには0.5kV〜3kVの電圧を、この加速グリッドに隣接する補助グリッドには5kV〜9kVの少なくとも加速グリッドよりも高い電圧を夫々印加して、その加速グリッドとこの加速グリッドに隣接する第1補助グリッドとの間に予備集束レンズを形成し、複数個の補助グリッドとこの補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドによって少なくとも第1集束レンズと第2集束レンズとを形成し、その第1集束レンズと陰極との間隔L1を
2mm<L1<5mm
第2集束レンズと第1集束レンズとの間隔L2を
2mm<L2<15mm
に設定するとともに、その加速グリッドの電子ビーム通過孔径をφ2とし、第1集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs1、また、第2集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs2としたときに、
φ2≦φs1≦φs2
で、かつ、φs1、φs2を
1mm≦φs1≦2mm、1mm≦φs2≦6mm
に設定した。
【0030】
また、電子ビーム形成部を加速グリッド側から順次蛍光体スクリーン方向に配置された第1補助グリッド、第2補助グリッド、第3補助グリッドおよび第4補助グリッドと主電子レンズ部を形成するグリッドを有し、その第1補助グリッドには5kV〜9kVの高電圧、第2補助グリッドには0.5kV〜3kVの第1補助グリッドよりも相対的に低い電圧、第3補助グリッドには5kV〜9kVの高電圧、第4補助グリッドには第3補助グリッドの電圧よりも相対的に低く、かつ、隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドよりも相対的に低電圧の0.5kV〜3kVの電圧を印加し、この第4補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドには5kV〜9kVの高電圧を印加し、その第1、第2、第3補助グリッドによりユニポテンシャル型の第1集束レンズを形成し、第3、第4補助グリッドおよびこの第4補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドによりユニポテンシャル型の第2集束レンズを形成するようにした。
【0031】
さらに、電子ビーム形成部を加速グリッド側から順次蛍光体スクリーン方向に配置された第1補助グリッド、第2補助グリッドおよび第3補助グリッドと主電子レンズ部を形成するグリッドを有し、その第1補助グリッドには5kV〜9kVの中電圧、第2補助グリッドには0.5kV〜3kVの第1補助グリッドよりも相対的に低い電圧、第3補助グリッドには5kV〜9kVの中電圧を印加し、この第3補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドには20kV〜30kVの高電圧を印加し、その第1、第2、第3補助グリッドによりユニポテンシャル型の第1集束レンズを形成し、第3補助グリッドおよびこの第3補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドによりバイポテンシャル型の第2集束レンズを形成するようにした。
【0032】
【作用】
上記のように電子銃を構成すると、いずれの場合も、陰極、制御グリッドおよび加速グリッドによりクロスオーバを形成して発散する電子ビームを、加速グリッドと第1補助グリッドとの間に形成される予備集束レンズにより少し集束して、電子ビーム全体の発散角を抑え、ついでこの電子ビームの密度分布の裾が少し広がって大きくなり、外側ビームと内側ビームが区別できるようになったところで、複数個の補助グリッドにより形成される第1集束レンズにより主としてその外側ビームを強く集束する。それにより外側ビームが内側に入り、内側ビームが徐々に外側になる。そこで補助グリッドにより形成される第2集束レンズにより、その電子ビーム全体を少し集束して、徐々に外側になっていく電子ビームの発散角を抑えるようにすることができる。
【0033】
したがって上記のように形成される電子ビームは、その最大発散角が小さく抑えられ、かつ主電子レンズ部からみた仮想クロスオーバの径の大きさは、外側ビームと内側ビームのそれぞれの仮想クロスオーバの位置の差が小さくなるため、その径を小さくすることができる。したがってこの電子ビームを主電子レンズ部で集束した場合、集束特性は非常に良好となり、蛍光体スクリーン上のビームスポットの径をいちじるしく小さくすることができる。
【0034】
この場合、従来のように電子ビーム発生部からの電子ビームの外側ビームのみを主電子レンズ部の手前で電子ビーム軸と交差させるほど強く、補助グリッドにより形成される集束レンズで集束するわけではないので、内側ビームもビーム軸と交差することはなく、またビーム電流量の少ない低電流時においても、電子ビーム全体が主電子レンズ部の手前でビーム軸と交差することがない。したがって低電流時から高電流時まで、蛍光体スクリーン上のビームスポットをいちじるしく小さくすることができる。
【0035】
【実施例】
以下、図面を参照してこの発明を実施例に基づいて説明する。
【0036】
この実施例の陰極線管の全体の構成は、従来の陰極線管と同じであるので、図4を参照して説明する。
【0037】
陰極線管は、フェースプレートと漏斗状のファンネルからなる外囲器を有し、そのフェースプレートの内面に蛍光体スクリーンが形成され、一方、ファンネルのネック内に電子銃が封止され、この電子銃から放出される電子ビームをファンネルの外側に装着された偏向ヨークの発生する磁界により偏向して、蛍光体スクリーンを水平、垂直走査することにより、画像を再生する構造に形成されている。
【0038】
特にカラー受像管については、そのフェースプレート1 (パネル)の内面には、青、緑、赤に発光する3色蛍光体層からなる蛍光体スクリーン3 が形成され、この蛍光体スクリーン3 に対向して、その内側に多数の電子ビーム通過孔の形成された色選別電極としてのシャドウマスク4 が配置されている。一方、ファンネル2 のネック5 内には、3電子ビーム6B,6G,6Rを放出する電子銃7 が封止されている。そしてファンネル2 の外側に装着された偏向ヨーク8 の発生する磁界により、上記電子銃7 から放出される3電子ビーム6B,6G,6Rを偏向して、蛍光体スクリーン3 を水平、垂直走査することにより、カラー画像を再生する構造に形成されている。特にインライン型カラー受像管では、その蛍光体スクリーン3 はストライプ状の3色蛍光体層で形成され、一方、電子銃7 は、同一水平面上を通るセンタービーム6Gおよび一対のサイドビーム6B,6Rを放出するものとなっている。
【0039】
図1(a)に上記陰極線管の電子銃を示す。この電子銃は、陰極K 、この陰極K を加熱するヒータ(図示せず)および上記陰極K 上に順次所定間隔離れて蛍光体スクリーン3 方向に配置された第1グリッドG1(制御グリッド)、第2グリッドG2(加速グリッド)、第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 、第3、第4グリッドG3,G4を有し、それらが絶縁支持体(図示せず)により一体に固定された構造に形成されている。
【0040】
その第1、第2グリッドG1,G2は、それぞれ陰極K に対応して比較的小さな電子ビーム通過孔が同軸に形成された板状電極からなる。またこの第2グリッドG2に順次隣接する4個の第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 は、それぞれ第2グリッドG2の電子ビーム通過孔よりも大きい電子ビーム通過孔が同軸に形成された板状電極からなり、特に第4補助グリッドSg4 には、他の補助グリッドSg1 〜Sg3 の電子ビーム通過孔よりも大きな電子ビーム通過孔が形成されている。さらに第3グリッドG3はカップ状の電極、第4グリッドG4は筒状の電極からなり、その第3グリッドG3の第4補助グリッドSg4 側には、第4補助グリッドSg4 の電子ビーム通過孔と同一大きさの電子ビーム通過孔が形成され、第3グリッドG3の第4グリッドG4側および第4グリッドG4には、さらに大きな電子ビーム通過孔が形成されている。
【0041】
表1にこの電子銃の具体的な寸法を示す。
【0042】
【表1】
この電子銃においては、図1(b)に示す電位10が付与される。すなわち陰極Kに100〜200V、これに映像信号を重畳した電位、第1グリッドG1に0V、第2グリッドG2に500〜1000V、第1補助グリッドSg1に5〜9kV、第2補助グリッドSg2に0.5〜3kV、第3補助グリッドSg3に第1補助グリッドSg1と同じ5〜9kV、第4補助グリッドSg4に第2補助グリッドSg2と同じ0.5〜3kV、第3グリッドG3に5〜9kV、第4グリッドG4に陽極電圧である20〜30kVの電位が付与される。
【0043】
それにより、陰極K 、第1、第2グリッドG1, G2および第1補助グリッドSg1 により電子ビーム発生部GEA が形成され、続く第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 および第3グリッドG3により補助電子レンズ部SLA が形成され、これら電子ビーム発生部GEA と補助電子レンズ部SLA とにより、電子ビーム形成部が構成される。さらに第3、第4グリッドG3, G4により主電子レンズ部MLA が形成される。
【0044】
この電子銃では、上記電位10の付与により、図1(c)に示すように、第2グリッドG2と第1補助グリッドSg1 との間にバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLが形成され、第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 により、ユニポテンシャル型の第1補助電子レンズSL1 (第1集束レンズ)が、また第3、第4補助グリッドSg3 ,Sg4 および第3グリッドG3により、同じくユニポテンシャル型の第2補助電子レンズSL2 (第2集束レンズ)が形成され、さらに第3、第4グリッドG3,G4間にバイポテンシャル型の主電子レンズMLが形成される。
【0045】
それにより、陰極K から放出された電子は、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2によりクロスオーバCOを形成し、ついで第2グリッドG2と第1補助グリッドSg1 との間に形成されるバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLによりわずかに集束される。このプリフォーカスレンズPLでは、電子ビーム6 の密度分布20a は、まだ急峻であるため、電子ビームの全体にプリフォーカスレンズPLの集束作用が及び、電子ビーム全体が少し集束される。
【0046】
一般にクロスオーバCOの径は、ビーム電流量が3〜5mAのときでも、100μm 程度であり、プリフォーカスレンズPLでも、まだ100〜200μm 程度である。また第2グリッドG2の電子ビーム通過孔でも、400μm 程度の急峻な密度分布であるため、プリフォーカスレンズPLにより、電子ビーム6 の外側ビームと内側ビームとに対する集束作用を大きく異ならしめることは、ほとんどできない。
【0047】
なお、このプリフォーカスレンズPLがない場合は、電子ビーム6 は、大きな発散角をもって広がり、電極に衝突するようになる。またこの電子銃でのバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLは、これを形成する第1補助グリッドSg1 の電位が5〜9kVと高いため、電子ビーム6 の反発による広がりを抑える上に有効に作用している。
【0048】
つぎに、上記プリフォーカスレンズPLにより少し集束された電子ビーム6 は、第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 により形成されるユニポテンシャル型の第1補助電子レンズSL1 により少し強く集束される。
【0049】
この第1補助電子レンズSL1 に入射する電子ビーム6 は、プリフォーカスレンズPLで集束されてはいるが、まだ最大発散角が5〜10°程度の大きな発散角のため、かなり大きな径となっている。すなわち、この第1補助電子レンズSL1 での電子ビーム6 の密度分布20b は、上記密度分布20a にくらべてピークが低くなりかつ裾がひろがって、密度の薄い外側ビームと密度の濃い内側ビームとを分けることが可能な状態となる。一方、この第1補助電子レンズSL1 は、これを形成する第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 の電子ビーム通過孔が小さいため、レンズ口径が小さい。そのため、大きく広がった電子ビーム6 は、外側ビームが、大きな球面収差を受け、かつ密度の濃い内側ビームよりも強い集束作用を受ける。その結果、密度の薄い外側ビームの発散角は、大きく抑えられるが、密度の濃い内側ビームの発散角は、その割には抑えられない。
【0050】
つまり、第1補助電子レンズSL1 は、上記説明から明らかなように電子ビーム6 の密度分布がある程度裾が広がったところで、レンズの球面収差を利用して集束するものである。そのためにこの第1補助電子レンズSL1 は、陰極K の電子放出面との間隔L1 が2〜8mm程度、好ましくは2〜5mmの位置に形成することが必要である。
【0051】
上記第1補助電子レンズSL1 により強い集束作用を受けた電子ビーム6 は、外側ビームが徐々に内側に入込む。一方、内側ビームの外側部分が徐々に外側になりながら、第3、第4補助グリッドSg3 ,Sg4 および第3グリッドG3により形成されるユニポテンシャル型の第2補助電子レンズSL2 に入射する。この第2補助電子レンズSL2 は、第1補助電子レンズSL1 のレンズ口径よりも大きく、電子ビーム6 全体の発散角を抑えるように集束する。それにより、徐々に外側になる内側ビームの発散を抑える。
【0052】
この第2補助電子レンズSL2 の主な作用は、クロスオーバCOから発散してくる電子ビーム6 が、さらに密度分布のピークが低くなり、かつ裾が広がるのを防止するものである。
【0053】
すなわち、第1補助電子レンズSL1 がないと仮定すると、前記密度分布20b をもった電子ビームは、この第2補助電子レンズSL2 の位置で破線20c で示すようにピークが低下しかつ裾が広がる。さらにこの第2補助電子レンズSL2 がないと仮定すると、主電子レンズMLに入射する電子ビーム6 は、裾が大きく広がり、主電子レンズMLの収差の影響を大きく受けるようになる。しかし上記のように第1補助電子レンズSL1 に隣接して第2補助電子レンズSL2 を設けると、20d で示したようにその電子ビーム6 の密度分布のピークの低下を抑えかつ裾の広がりを抑制する。
【0054】
したがってこの第2補助電子レンズSL2 は、電子ビーム6 が広がってその径があまり大きくなりすぎたところでは効果が少なくなるため、その形成位置は、重要であり、第1補助電子レンズSL1 との間隔L2 が2〜15mmになる位置に形成するとよい。
【0055】
上記第2補助電子レンズSL2 により集束された電子ビーム6 は、その後、第3、第4グリッド間に形成される主電子レンズMLに入射し、この主電子レンズMLにより蛍光体スクリーン3 上に集束される。
【0056】
なお、上記説明では、第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 により第1補助電子レンズSL1 が形成され、第3、第4補助グリッドSg3 ,Sg4 および第3グリッドG3により第2補助電子レンズSL2 が形成されるとしたが、この補助グリッドと第3グリッドG3とにより形成される補助電子レンズは、図2(a)の電極構成と対比して同(b)に銃軸14上の電位分布Vを曲線15、その2階微分V″を曲線16で示すように、集束レンズと発散レンズの組合わせとなっている。すなわち、同(c)に示すように、第2グリッドG2と第3グリッドG3との間には、第1ないし第4補助グリッドSg1 〜Sg4 の配置により、第2グリッドG2から第3グリッドG3の方向に、順次集束レンズCL1 −発散レンズDL1 −発散レンズDL2 −集束レンズCL2 −発散レンズDL3 −発散レンズDL4 −集束レンズCL3 −発散レンズDL5 が形成され、総合的にこれら電子レンズにより、同(d)に示すように、プリフォーカスレンズPLおよび集束レンズである第1補助電子レンズSL1 、第2補助電子レンズSL2 が形成される。
【0057】
ところで、上記のように電子銃を構成すると、主電子レンズMLからみた物点11、すなわち仮想クロスオーバVCO は、図1(c)に示したように、従来の電子銃に比べ、主電子レンズMLから遠く離れた位置に形成される。しかもこの仮想クロスオーバVCO は、電子ビーム発生部GEA からクロスオーバCOを経て形成された電子ビーム6 が主電子レンズ部MLA に入射する前に、補助電子レンズ部SLA により選択的な集束作用を受け、電子ビーム6 の状態(密度分布)が作り換えられるために、従来と異なり、非常に小さく形成される。またこの電子銃に形成される2個の補助電子レンズSL1 ,SL2 は、電子ビーム6 の外側ビームおよび内側ビームの発散角をそれぞれ適度に抑制することができるため、主電子レンズMLでの電子ビーム6 の径を大きくすることがなく、したがって主電子レンズMLでの収差の影響を受けにくくなる。
【0058】
したがってこの電子銃では、図1(d)に示したように、小さな物点11を主電子レンズMLでの収差の影響を受けることなく蛍光体スクリーン上に像点12を形成することができるため、電子光学的倍率を小さく、かつ蛍光体スクリーン上のビームスポットをいちじるしく小さくすることができる。
【0059】
なお、この電子銃は、前述した特公昭29−2216号公報や特公昭60−51775号公報などの電子銃のように、電子ビーム発生部からの電子ビームを1個の補助電子レンズにより全体的に集束して発散角を抑制しようとするものではないので、仮想クロスオーバVCO の径の増大をまねくことがない。また特開昭57−30247号公報や特開昭57−44944号公報などの電子銃のように、電子ビーム発生部からの電子ビームを主電子レンズの手前でビーム軸と交差させるほど強く集束するものでもないので、電子光学的倍率が悪化して、蛍光体スクリーン上のビームスポットを大きくすることもない。また高電流時と低電流時とで、補助電子レンズのレンズ作用を変えるという使いにくい操作も不要であり、低電流域(0.1〜1mA)から高電流域(3〜5mA)まで、良好なビームスポットが得られる。
【0060】
また一般に陰極線管は、前述したように電子銃から放出される電子ビームをファンネルの外側に装着された偏向ヨークの発生する磁界により偏向することにより、蛍光体スクリーンを走査して画像を再生するため、電子銃から蛍光体スクリーンまでの距離は、蛍光体スクリーン中央部までの距離にくらべ、蛍光体スクリーン周辺部までの距離の方が長い。そのため、蛍光体スクリーンの中央部において、適正な集束が得られるようにすると、周辺部では過集束状態となる。この蛍光体スクリーン周辺部での過集束状態を調整するため、従来は主電子レンズ部での集束力を弱くしている。しかしたとえば同一平面上を通る一列配置の3電子ビームを放出するインライン型カラー受像管の電子銃において、特公昭52−32714号公報などに示されているように、主電子レンズ部を形成する一方のグリッドのサイドビームの通過する電子ビーム通過孔(サイドビーム通過孔)を他方のグリッドのサイドビーム通過孔に対して偏心させて、一対のサイドビームをセンタービーム側に曲げることにより、3電子ビームの集束を主電子レンズ部でおこなうようにした電子銃では、上記のように主電子レンズ部の集束力を変えると、3電子ビームの集中状態も変化する。
【0061】
しかし、この電子銃では、補助電子レンズ部の第1補助電子レンズSL1 の集束力を強くすることにより、集束不足状態にすることができるため、蛍光体スクリーン3 の周辺部での過集束状態を容易に調整することができる。すなわち、本発明者等が確認したところによれば、蛍光体スクリーン3 の周辺部で過集束状態になる主因が外側ビームであることから、第1補助電子レンズSL1 を強く効かせて外側ビームを強く集束し、この外側ビームが、主電子レンズMLでビーム軸14の近くになるようにすると、主電子レンズMLの集束力があまり効かなくなり、結果的に集束不足状態にすることができ、蛍光体スクリーン3 の周辺部での過集束状態を調整することができるようになる。
【0062】
つまり、この電子銃は、主電子レンズ部で3電子ビームを集束するとともに集中するカラー受像管に適用して、3電子ビームの集中を変化させることなく集束することができるというすぐれた効果が得られる。
【0063】
つぎに、他の実施例について説明する。
【0064】
上記実施例では、主電子レンズ部を第3、第4グリッド間に形成されるバイポテンシャル型の電子レンズとしたが、この主電子レンズ部は、ユニポテンシャル型の電子レンズやトライポテンシャル型の電子レンズ、あるいはこれらの型の電子レンズを組合わせた各種電子レンズで形成してもよい。また同一平面上を通る一列配置の3電子ビームを放出するインライン型カラー受像管の電子銃の主電子レンズ部について、その主電子レンズの性能を向上させるために、たとえば特開平2−1668543公報に示されているように主電子レンズ部を3電子ビームに対して共通に作用する主電子レンズと3電子ビームに対して個々に作用する個別の電子レンズを組合わせた主電子レンズ部とし、センタービームと一対のサイドビームに対する偏向収差の相違を補正するようした電子銃などにも適用可能である。
【0065】
また、上記実施例では、電子ビーム発生部から補助電子レンズ部、主電子レンズ部のすべてを対称電子レンズとしたが、たとえば蛍光体スクリーン周辺部の偏向収差対策など、陰極線管の性能を向上させるため、非対称電子レンズを形成する電子銃にも適用可能である。
【0066】
さらに、上記実施例では、補助電子レンズ部を第1ないし第4補助グリッドと第3グリッドとで形成し、その第1ないし第3補助グリッドにより第1補助電子レンズを形成し、第3、第4補助グリッドと第3グリッドとで第2補助電子レンズを形成したが、このような第1、第2の補助電子レンズからなる補助電子レンズ部は、他の構成で形成することも可能である。
【0067】
他の実施例として、図3に、図1に示した電子銃とは構成の異なる電子銃を示す。この電子銃は、陰極K、この陰極Kを加熱するヒータ(図示せず)および上記陰極K上に順次所定間隔離れて蛍光体スクリーン3方向に配置された第1、第2グリッドG1,G2、第1ないし第3補助グリッドSg1〜Sg3、第3ないし第5グリッドG3〜G5を有し、それらが絶縁支持体(図示せず)により一体に固定された構造に形成されている。
【0068】
その第1、第2グリッドG1,G2は、それぞれ陰極K に対応して比較的小さな電子ビーム通過孔が同軸に形成された板状電極からなる。またこの第2グリッドG2に順次隣接する3個の第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 は、それぞれ第1、第2グリッドG1,G2の電子ビーム通過孔よりも大きい電子ビーム通過孔が同軸に形成された板状電極からなり、特に第3補助グリッドSg3 は、第1、第2補助グリッドSg1 ,Sg2 よりも板厚が厚く形成されている。このような補助グリッドSg3 は、カップ状の電極でも形成することができる。さらに第3グリッドG3はカップ状の電極、第4および第5グリッドG4,G5は筒状の電極からなり、その第3グリッドG3の第3補助グリッドSg3 側には、第3補助グリッドSg3 の電子ビーム通過孔よりも大きな電子ビーム通過孔が形成され、第3グリッドG3の第4グリッドG4側および第4、第5グリッドG4,G5には、さらに大きな電子ビーム通過孔が形成されている。
【0069】
この電子銃では、陰極Kおよび各グリッドG1,G2、Sg1,Sg2、Sg3,G3,G4,G5に図3(b)に示す電位が付与される。すなわち、陰極Kおよび第1、第2グリッドG1,G2には、図1に示した電子銃と同程度の電位が付与される。第1補助グリッドSg1には、その第2グリッドG2の電位よりも高い電位が、第2補助グリッドSg2には、第2グリッドG2と同程度の電位が、第3補助グリッドSg3には、第1補助グリッドSg1と同程度の電位が付与される。さらに第3グリッドG3には、第5グリッドG5と同じ陽極電圧が、第4グリッドG4には、第3補助グリッドSg3と同程度の電位が付与される。
【0070】
それにより、陰極K 、第1、第2グリッドG1,G2および第1補助グリッドSg1 により電子ビーム発生部GEA が形成され、第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 および第3グリッドG3により補助電子レンズ部SLA が形成され、これら電子ビーム発生部GEA と補助電子レンズ部SLA とにより、電子ビーム形成部が構成される。さらに第3、第4、第5グリッドG3,G4,G5により主電子レンズ部MLA が形成される。
【0071】
この電子銃では、上記電位の付与により図3(b)に示したように、第2グリッドG2と第1補助グリッドSg1との間にバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLが形成され、第1ないし第3補助グリッドSg1〜Sg3によりユニポテンシャル型の第1補助電子レンズSL1が、また第3補助グリッドSg3と第3グリッドG3との間にバイポテンシャル型の第2補助電子レンズSL2が形成され、さらに第3ないし第5グリッドG3〜G5によりユニポテンシャル型の主電子レンズMLが形成される。
【0072】
それにより、陰極K から放出された電子は、陰極K および第1、第2グリッドG1,G2によりクロスオーバを形成し、ついで第2グリッドG2と第1補助グリッドSg1 との間に形成されるバイポテンシャル型のプリフォーカスレンズPLによりわずかに集束される。このプリフォーカスレンズPLにより集束された電子ビームは、つぎの第1ないし第3補助グリッドSg1 〜Sg3 により形成されるユニポテンシャル型の第1補助電子レンズSL1 および第3補助グリッドSg3 と第3グリッドG3との間に形成されるバイポテンシャル型の第2補助電子レンズSL2 により、選択的に集束され、密度分布が良好な状態に作り換えられる。そしてこの選択的に集束された電子ビームは、第3ないし第5グリッドG3〜G5により形成されるユニポテンシャル型の主電子レンズMLにより蛍光体スクリーン上に集束される。
【0073】
このような電子銃においても、図1に示した電子銃と同様の効果が得られ、蛍光体スクリーン上に小さなビームスポットを形成することができる。
【0074】
【発明の効果】
陰極とこの陰極に順次隣接して蛍光体スクリーン方向に配置された制御グリッド、加速グリッド、複数個の補助グリッドおよび主電子レンズ部を形成するグリッドで電子ビーム形成部を形成し、その制御グリッドには0Vの基準電圧を、加速グリッドには0.5kV〜3kVの電圧を、この加速グリッドに隣接する補助グリッドには5kV〜9kVの少なくとも加速グリッドよりも高い電圧を夫々印加して、その加速グリッドとこの加速グリッドに隣接する第1補助グリッドとの間にプリフォーカスレンズを形成し、複数個の補助グリッドとこの補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドにより少なくとも第1集束レンズと第2集束レンズとを形成し、かつその第1集束レンズと陰極との間隔L1を
2mm<L1<5mm
とし、第2集束レンズと第1集束レンズとの間隔L2を
2mm<L2<15mm
に設定するとともに、加速グリッドの電子ビーム通過孔径をφ2とし、第1集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs1、また、第2集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs2としたときに、
φ2≦φs1≦φs2
で、かつ、φs1、φs2を
1mm≦φs1≦2mm、1mm≦φs2≦6mm
に設定すると、電子ビーム形成部からクロスオーバを形成して発散する電子ビームを、加速グリッドと第1補助グリッドとの間に形成されるプリフォーカスレンズにより少し集束して電子ビーム全体の発散角を抑え、ついでこの電子ビームの密度分布の裾が少し広がって大きくなり、外側ビームと内側ビームが区別できるようになったところで、第1集束レンズにより、主としてその電子ビームの外側ビームを強く集束すると、外側ビームが内側に入り、内側ビームが徐々に外側になる。そこで第2集束レンズにより、電子ビーム全体を少し集束して徐々に外側になっていく電子ビームの発散角を抑えると、電子ビームは、その最大発散角が小さく抑えられ、かつ主電子レンズ部からみた仮想クロスオーバの大きさは、外側ビームと内側ビームのそれぞれの仮想クロスオーバの位置の差が小さくなるため小さくでき、この電子ビームを主電子レンズ部で集束した場合の集束特性が非常に良好となり、高電流域から低電流域まで、蛍光体スクリーン上のビームスポットの径を著しく小さくすることができ、画像特性を大幅に向上させることができる。
【0075】
また蛍光体スクリーンの周辺部に対する集束も、容易にフォーカス調整可能な方法が得られ、特に3電子ビームを主電子レンズ部で集中するカラー受像管の場合、その集中を変化させることなく3電子ビームを良好に集束できるというすぐれた効果が得られる。またその3電子ビームを集束する主電子レンズ部を大口径化あるいは長焦点化することにより、さらに蛍光体スクリーン上のビームスポットを小さくすることができ、画像特性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)はこの発明の一実施例に係る電子銃の構成を示す図、図1(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図1(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図、図1(d)はその電子レンズにより形成される物点と像点との関係を示す図である。
【図2】図2(a)は上記電子銃の電子ビーム形成部を示す図、図2(b)はその銃軸上の電位分布およびその2階微分を示す図、図2(c)および(d)はそれぞれ上記電子ビーム形成部に形成される電子レンズを説明するための図である。
【図3】図3(a)はこの発明の他の実施例に係る電子銃の構成を示す図、図3(b)はその各電極に付与する電位および形成される電子レンズの光学的モデル図である。
【図4】カラー受像管の構成を示す図である。
【図5】図5(a)は従来の電子銃の構成を示す図、図5(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図5(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図、図5(d)はその電子レンズにより形成される物点と像点との関係を示す図である。
【図6】図6(a)は従来の補助グリッドの配置された電子銃の構成を示す図、図6(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図6(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図である。
【図7】図7(a)は従来の補助グリッドの配置された異なる電子銃の構成を示す図、図7(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図7(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図である。
【図8】図8(a)は従来の補助グリッドの配置されたさらに異なる電子銃の構成を示す図、図8(b)はその各電極に付与する電位を示す図、図8(c)はその電子銃に形成される電子レンズの光学的モデル図、図8(d)はその電子レンズにより形成される物点と像点との関係を示す図である。
【図9】図9(a)は従来の補助レンズを形成することなく仮想クロスオーバを小さくする電子銃を説明するための図、図9(b)はその銃軸上の電位分布およびその2階微分を示す図、図9(c)はその電子銃の各部分における電子ビームの密度分布を示す図である。
【符号の説明】
3 …蛍光体スクリーン
6 …電子ビーム
CO…クロスオーバ
G1…第1グリッド
G2…第2グリッド
G3…第3グリッド
G4…第4グリッド
G5…第5グリッド
GEA …電子ビーム発生部
K …陰極
ML…主電子レンズ
MLA …主電子レンズ部
PL…プリフォーカスレンズ
Sg1 …第1補助グリッド
Sg2 …第2補助グリッド
Sg3 …第3補助グリッド
Sg4 …第4補助グリッド
SL1 …第1補助電子レンズ
SL2 …第2補助電子レンズ
SLA …補助電子レンズ部
VCO …仮想クロスオーバ
Claims (3)
- 陰極およびこの陰極上に順次蛍光体スクリーン方向に配置された複数個のグリッドを有し、上記陰極および複数個のグリッドにより上記陰極からの電子放出を制御しかつ放出された電子を集束して電子ビームを形成する電子ビーム形成部と上記電子ビーム形成部から引出された電子ビームを上記蛍光体スクリーン上に集束する主電子レンズ部とが形成される電子銃を備える陰極線管において、
上記電子ビーム形成部は上記陰極とこの陰極に順次隣接して蛍光体スクリーン方向に配置された制御グリッド、加速グリッド、複数個の補助グリッドおよび主電子レンズ部を形成するグリッドからなり、上記制御グリッドには0Vの基準電圧を、加速グリッドには0.5kV〜3kVの電圧を、この加速グリッドに隣接する補助グリッドには5kV〜9kVの少なくとも加速グリッドよりも高い電圧を夫々印加して上記加速グリッドとこの加速グリッドに隣接する第1補助グリッドとの間に予備集束レンズを形成し、上記複数個の補助グリッドとこの補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドにより少なくとも第1集束レンズと第2集束レンズとを形成し、
上記第1集束レンズと上記陰極との間隔L1を
2mm<L1<5mm
上記第2集束レンズと上記第1集束レンズとの間隔L2を
2mm<L2<15mm
に設定するとともに、
上記加速グリッドの電子ビーム通過孔径をφ2とし、上記第1集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs1、また、上記第2集束レンズを形成する複数のグリッドの電子ビーム通過孔径をφs2としたときに、
φ2≦φs1≦φs2
で、かつ、φs1、φs2を
1mm≦φs1≦2mm、1mm≦φs2≦6mm
に設定したことを特徴とする陰極線管。 - 電子ビーム形成部は加速グリッド側から順次蛍光体スクリーン方向に配置された第1補助グリッド、第2補助グリッド、第3補助グリッドおよび第4補助グリッドと主電子レンズ部を形成するグリッドを有し、上記第1補助グリッドには5kV〜9kVの高電圧、上記第2補助グリッドには0.5kV〜3kVの第1補助グリッドよりも相対的に低い電圧、上記第3補助グリッドには5kV〜9kVの高電圧、上記第4補助グリッドには上記第3補助グリッドの電圧よりも相対的に低く、かつ、隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドよりも相対的に低電圧の0.5kV〜3kVの電圧を印加し、この第4補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドには5kV〜9kVの高電圧が印加され、上記第1、第2、第3補助グリッドによりユニポテンシャル型の第1集束レンズを形成し、上記第3、第4補助グリッドおよびこの第4補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドによりユニポテンシャル型の第2集束レンズを形成することを特徴とする請求項第1項記載の陰極線管。
- 電子ビーム形成部は加速グリッド側から順次蛍光体スクリーン方向に配置された第1補助グリッド、第2補助グリッドおよび第3補助グリッドと主電子レンズ部を形成するグリッドを有し、上記第1補助グリッドには5kV〜9kVの中電圧、上記第2補助グリッドには0.5kV〜3kVの第1補助グリッドよりも相対的に低い電圧、上記第3補助グリッドには5kV〜9kVの中電圧を印加し、この第3補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドには20kV〜30kVの高電圧が印加され、上記第1、第2、第3補助グリッドによりユニポテンシャル型の第1集束レンズを形成し、上記第3補助グリッドおよびこの第3補助グリッドに隣接する主電子レンズ部を形成するグリッドによりバイポテンシャル型の第2集束レンズを形成することを特徴とする請求項第1項記載の陰極線管。
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