JP3735135B2 - 溶融アーク溶接によって金属部分を結合する方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、小容積の溶接シーム(狭開先溶接)によるアーク溶接を用いて金属部分を結合する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ドイツ国特許第2633829号明細書によれば、小容積の溶接シームによるアーク融接を用いて金属部分を結合する方法が既に公知である。その場合は先づ狭開先を形成している結合されるべき半製品部分を、その突合せ接合部において付加材料と共に又はそれなしで、電子ビーム法、プラズマ法、レーザビーム法又はアルゴンアーク溶接法を用いて形成された基底シームによって溶接する。その後狭開先によって形成された半製品開先面を、一方の開先面及び他方の開先面に交互に付着した、サブマージアーク溶接法に基く溶接ビードによって結合し、かつサブマージアーク溶接の各溶接ビードによってその下方に位置する狭開先の中央分の1/3 をオーバラップし、かつ夫々一方の半製品開先面だけを溶融することができるように規定されており、また狭開先の幅が使用される溶接ワイヤの直径の4倍に等しく、かつ溶接ワイヤの電流密度がサブマージ溶接の際50A/mm2であり、かつ単位長さ当りのエネルギが2.5mmのワイヤ直径の場合は8.5KJ/cm,3mmのワイヤ直径の場合は12.5KJ/cm,4.0mmのワイヤ直径の場合は22KJ/cmに、夫々なりうるように溶接速度が選択されている。
【0003】
この方法は大形機械の回転対称的な部体を結合するのに特に良好に使用可能である。また一方の側からだけアクセス可能であって根元側は後から溶接し得ないような厚肉構造部分は、ドイツ国特許第2633829号明細書に基く方法によって良好に結合可能である。この方法の有利な使用領域は、蒸気タービン及びガスタービン、圧縮機並びにターボ発電機のための、ロータの製造のために使用されるディスク状及び中空円筒状の鍛造部材を結合する場合である。
【0004】
この方法の利点は、半製品部分の結合位置に巻込み物のない微粒状の接着面が形成されるという点である。またこの方法によれば溶着金属部にもまた溶接熱影響ゾーンにも一次組織がもはや存在していない。従って後からの焼準又は熱処理が不必要である。
【0005】
しかしこの方法は、半自動式でしか使用することができないという欠点を有している。更に基底シームが根元領域で鉛直に溶接されかつ所定の深さを有している必要があり、従ってロータが水平状態でサブマージアーク狭開先溶接によって完全に溶接された場合には、溶接されたロータが曲げられないようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこれらの欠点を除去しようとするものである。つまり本発明の課題は、小容積シームを形成するための溶接法において、複雑で嵩張る半製品の場合及び特に溶接プロセスの際一方の側からだけしかアクセスできない様な半製品の場合でも高品質で溶接することができ、かつ完全自動の溶接により従来技術に比較して高い経済性を達成することができるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では請求項1に記載の特徴、つまり結合されるべき金属部分が、サブマージアーク溶接の溶接ビードのための狭開先に続く該狭開先に対して幅の極端に狭い狭開先とそれに続いてセンタリングオフセット部とを有しており、先づ金属部分をセンタリングオフセット部によって相互に位置決めし、前記幅の極端に狭い狭開先の開先底の領域に金属部分の裏面から隆起する逃げ隆起部を形成して、溶接の際目標溶個所を形成することができるようにし、かつサブマージアーク溶接を行う前に前記幅の極端に狭い狭開先によって形成された半製品開先面を、完全自動式タングステンイナートガス(TIG)溶接法又は保護ガス下での金属アーク溶接法(MIG溶接法)を用いて、夫々前記幅の極端に狭い狭開先の全幅に亘って延びる多層状の溶接ビードによって結合することによって、上記課題を解決することができた。その後で狭開先によって形成された半製品開先面を、サブマージアーク溶接法による公知の形式で相互に結合する。
【0008】
【発明の効果】
とりわけ本発明の利点は、幅の極端に狭い狭開先(以下便宜上短く、「極端な狭開先」と称する)を自動的に溶接することができ、ひいては高い経済性を備えた方法を達成することができるという点にある。更に高品質の溶接シームを形成することができるので、結合された半製品を後で熱処理をする必要がない。特に、溶接プロセスのために一方の側からだけしかアクセスし得ないような個々の部分を相互に結合することができる。
【0009】
特に有利なのは、逃げ隆起部がその高さの約3倍の幅を有している場合である。これによって溶接の際に発生するアンダカットが、溶融ビードの両側でひいては支持する横断面の外側にだけ発生しうるように保証されている。
【0010】
更に、極端な狭開先は、その高さがその幅の6倍乃至10倍の範囲内にあって、少くとも40mmの高さを有している場合が特に有利である。溶接シーム高さの増大に伴い熱の持込みがそれにつれて大きくなるため、このような寸法の場合にだけ、最後の溶接ビードを1層だけで溶接することが可能となり、ひいては完全自動化を実現することができる。
【0011】
更に、TIG溶接乃至MIG溶接の際には、直径が極端な狭開先の幅の1/5 乃至1/4 、少くとも0.8mm、多くとも1.6mmでる溶接ワイヤを使用する場合が特に有利である。これによって確実なワイヤ案内と良好な溶接結果を達成することができる。
【0012】
更に、TIG溶接乃至MIG溶接の際には、予熱温度に依存して、1分当り50mm乃至200mmの送り速度の場合200A乃至300Aの範囲の電流強度で作業する場合が特に有利である。
【0013】
最後に保護ガスとして、アルゴン又は最大8%の水素を含んだアルゴン又はアルゴンが30%乃至70%で残余がヘリウムであるアルゴンヘリウム混合体を使用する場合が特に有利である。これによって質的に優れた溶接ビードを形成することができる。
【0014】
【実施例】
次に本発明を、実施例を示す図面に基いて詳しく説明する。
【0015】
図1には、溶接シームの領域における結合されるべき半製品部分の横断面の概略が図示されている。結合されるべき金属部分は符号1及び2で表わされており、狭開先4において互いに向い合って平行に位置するその半製品開先面は符号5及び6で、また極端な狭開先9における開先面は符号13及び14で、夫々表わされている。溶接のためにアクセスできない側(例へば中空部体の内側)では、結合されるべき金属部分1,2がセンタリングオフセット部10において互いに接して突き合って相互に位置決めされている。センタリングオフセット部10は、両方の金属部分1,2を互いに突き合わせた際に、一方の金属部分の開先面13に設けられた段状の突出部によって、他方の金属部分の開先面14に設けられた段状の突出部を受け支えて両方の金属部分1,2の相互の位置決めを行うものである。狭開先9の開先底の領域には金属部分の裏面から隆起する逃げ隆起部11が形成されていて、溶接の際目標溶個所12が発生するようになっており、それによって溶接の際、センタリングオフセット部10の溶融が強制的に行われうるようになっている。その場合アンダカットは溶断ビードの両側だけに発生し、支持している横断面にはアンダカットが発生しない。このことが材料の応力特性に極めて良好な影響を与えている。
【0016】
この実施例の場合センタリングオフセット部10は5mmの高さhを有し、逃し隆起部11は全部で40mmの幅cと15mmの高さdとを有している。水平線と逃げ隆起部11との間に形成される角度αは15°である。この幾何学的な寸法に基いてセンタリングオフセット部10の溶融が、厳格に許容された溶接データ範囲内で達成可能である。
【0017】
この実施例では、5mmの幅bと約40mmの高さeとを備えた極端な狭開先9における平行な半製品開先面13,14の結合が完全自動式のTIG溶接によって行われている。その際溶接ビード15は、一方の半製品開先面13から向い合って位置する他方の半製品開先面14に到達して、夫々両側の半製品開先面を溶融する。アークの位置が一度設定されれば変更はもはや不必要であり、従って溶接作業を自動的に行うことができる。このTIG溶接の場合には1.2mmの直径を備えた溶接ワイヤが使用される。予熱温度に依存して、1分間当り50mm乃至200の送りの場合には200A乃至300Aの範囲内の電流密度で作業を行う。イナートガスとしてはアルゴンが使用される。勿論これ以外の実施例においては、アルゴンと最大8%の水素とから成る混合体又はアルゴンと30%乃至70%のヘリウムとから成る混合体も使用可能であり、その場合最良の結果は、同一割合のアルゴンとヘリウムとを使用した場合に達成される。TIG溶接により品質の優れた溶接シームを達成することができる。
【0018】
これに対し別の実施例にあっては極端な狭開先9の溶接のためにMIG法が使用されており、その場合は空間内に金属部分を吹き付けることに基いて、溶接ワイヤ供給管、保護ガスノズル、溶接溝の半製品開先面並びにスラグコーディング等の一定の不純物が溶接ビード表面に到達するので、極端な狭開先9における溶接シームの品質が、このような結合欠陥のためTIG法の場合に比較して多小劣らざるを得ない。
【0019】
次にこの「基底シーム」の製作後半製品開先面5及び6によって形成された、16mmよりも小さな幅を備えた狭開先を、ドイツ国特許第2633829号明細書によって開示された形式でサブマージアーク溶接法に基いて閉鎖し、半製品開先面6における溶接ビード7と半製品開先面5における溶接ビード8とが交互に位置できるようにする。つまり溶接ビード7,8は狭開先4の中央部の 1/3において夫々オーバラップしている。同時に溶接ワイヤの夫々の軸線位置によって、溶接プロセス中半製品の夫々一方の開先面5又は6だけが溶解させられる。これによって有利な接合部が達成され、溶接部分の組成が全シーム横断面に亘って一定に保持されるようになり、かつ冷却の際の応力が許容可能な限界内に留まるようになる。
【0020】
実際の溶接条件下では、極端な狭開先9内のシーム幅がTIG乃至MIG溶接法15の溶接ビードの数の増加につれて次第に大きくなる。この現象は、TIG乃至MIG溶接法の溶融能力が小さい場合に発生し、かつ熱の影響部を大きくしている。このことは、極端な狭開先9が所定の最大高さeを有している場合にだけ許容されることを意味している。その理由は、それ以外の場合には極端な狭開先9の橋絡が一層の熔接だけではもはや達成され得ないからであり、ひいては自動的な溶接法が不可能になるであろう。
【0021】
本発明の方法は、回転対称的な部体にもまたその他の厚肉金属部分にも使用することができ、特に一方の側からだけアクセス可能で根元側では後溶接の不能な、例へば低合金乃至高合金金属材料から成るプレート、管、ディスク及び中空円筒のようなものの溶接に適合している。
【0022】
本発明の方法の有利な使用領域は、中空室又は端面側の旋削部を備えた個々の回転部体、例へば同一の強度又は同一の肉厚のディスク状又は中空円筒状の鍛造部材から構成されている、エネルギ変換機械のロータを製作する領域である。この鍛造部材を先づ「根元領域」、つまり極端な狭開先9の領域において上述のTIG乃至MIG溶接法を介して鉛直に溶接する。次いでロータを水平状態でサブマージ溶接を用いて狭開先4の領域を完全に溶接する。その際ロータを撓ませないですむようにするためには、極端な狭開先9の所定の高さeを意味する第1シームの所定の深さが存在していなければならない。その場合極端な狭開先9の高さeは、本発明に基いてその幅bの6倍乃至10倍の範囲内で少くとも40mmの高さを有している。
【0023】
極端な狭開先9内におけるTIG溶接法は、Niをベースにした合金から成る金属部分を結合するのに特に良好に適合している。それは、この溶接法にあっては熱影響ゾーンが極く小範囲に限定されており、かつこの材料が熱影響ゾーンに対して極端に敏感であるからである。この様な形式で優れた溶接品質を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶接シーム領域における結合されるべき半製品部分の概略断面図である。
【符号の説明】
1,2 溶接されるべき金属部分
3 溶接部
4 狭開先
5,6 半製品開先面
7,8 サブマージ溶接による溶接ビード
9 極端な狭開先
10 センタリングオフセット部
1 逃げ隆起部
12 目標溶断個所
13,14 極端な狭開先における開先面
15 TIG/MIG溶接法による溶接ビード
a 狭開先の幅
b 極端な狭開先の幅
c 逃げ隆起部の幅
d 逃げ隆起部の高さ
e 極端な狭開先の高さ
h センタリングオフセットの高さ
α 水平線と逃げ隆起部との間の角度

Claims (8)

  1. 小容積溶着部による溶融アーク溶接を用いて金属部分(1,2)を結合する方法であって、狭開先(4)によって形成された半製品開先面(5,6)を、一方の開先面(5)と他方の開先面(6)とに交互に付着した、サブマージアーク溶接法に基く溶接ビード(7,8)によって結合する方法において、
    結合されるべき金属部分(1,2)が狭開先(4)に続く、該狭開先(4)に対して幅の極端に狭い狭開先(9)とそれに続いてセンタリングオフセット部(10)とを有しており、先づ金属部分(1,2)をセンタリングオフセット部(10)によって相互に位置決めし、前記幅の極端に狭い狭開先の開先底の領域に金属部分の裏面から隆起する逃げ隆起部(11)を形成して、溶接の際目標溶個所(12)を形成することができるようにし、かつサブマージアーク溶接を行う前に前記幅の極端に狭い狭開先(9)によって形成された半製品開先面(13,14)を、完全自動式タングステンイナートガス(TIG)溶接法又は保護ガス下での金属アーク溶接法(MIG溶接法)を用いて、夫々前記幅の極端に狭い狭開先(9)の全幅(b)に亘って延びる多層状の溶接ビード(15)によって結合することを特徴とする、溶融アーク溶接によって金属部分を結合する方法。
  2. 逃げ隆起部(11)がその高さ(d)の約3倍の幅(c)を有していることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 幅の極端に狭い狭開先(9)は、その高さ(e)がその幅(b)の6倍乃至10倍の範囲内にあって、少くとも40mmの高さを有していることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  4. TIG溶接乃至MIG溶接の際には、直径が幅の極端に狭い狭開先(9)の幅(b)の1/5 乃至1/4 、少くとも0.8mm、多くとも1.6mmである溶接ワイヤを使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  5. TIG溶接乃至MIG溶接の際には、予熱温度に依存して、1分当り50mm乃至200mmの送り速度の場合200A乃至300Aの範囲の電流強度で作業することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  6. 合金の成分割合に依存して200℃よりも高い予熱温度で作業することを特徴とする、請求項5記載の方法。
  7. 保護ガスとして、アルゴン又は最大8%の水素を含んだアルゴン又はアルゴンが30%乃至70%で残余がヘリウムであるアルゴンヘリウム混合体を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  8. アルゴンが50%でヘリウムが50%であるアルゴムヘリウム混合体を使用することを特徴とする、請求項7記載の方法。
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