JP3734701B2 - マグネットポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポンプを装着した(エンジン等の振動を発生する)構造物からの振動がポンプハウジングに与える悪影響を低減させることができ、且つその構造を極めて簡単なものとしたマグネットポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネットポンプの隔壁体の開口端部のフランジ状部分の外周にO(オー)リング等の密閉部材を設けてケーシングと水密状に保持されている隔壁体と、その隔壁体の開口端部のフランジ部がケーシングに押え板により押えつけられて固定され、その隔壁体の肉厚の底部の中心に形成された嵌合凹部にフッ素樹脂等のスリーブを介して主軸を嵌合支持し、その主軸の他端をポンプ本体のケーシングと一体的に形成されたボスの偏心孔に嵌合支持されているマグネットポンプが特公平3−43477号に示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
その隔壁体の開口端部のフランジの外周に設けられたO(オー)リングは、ケーシングと水密状に保持するもので、前記隔壁体は、その開口端部のフランジ部を押え板によりケーシングにしっかりと押えつけられて固定されているものである。また、インペラを回転自在に支持する主軸は、隔壁体の肉厚とした底面部と前記ケーシングのボスに嵌合支持された構造なので、前記主軸は両軸端がしっかり固定支持状態になっている。
【0004】
そのために、エンジン等の振動が発生する構造体に装着した場合、前記インペラ軸は前記隔壁体の両嵌合支持部分のクリアランスにおいて嵌合支持孔又は凹部をその振れによって叩く現象が生じて、ポンプの耐久性を低下させてしまうことがある。このようなことから、この種のポンプをエンジンなどの大きな振動が発生する構造体に装着することは、耐久性等の点から極めて困難である。本発明の目的は、このような、振動の発生する使用条件に対して、十分に使用に耐えうるものを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、本発明を、インペラ軸を設けたポンプ室を備えたハウジング本体と、インナーマグネット部の軸方向先端に羽根部が形成され且つ前記インペラ軸に回動自在に装着されるインペラと、前記インナーマグネット部が遊挿され且つ底面に前記インペラ軸の軸端部が挿入するボス穴が形成された収納部と、円筒状の連結部とが形成された隔壁体と、輪状の弾性シール部材とからなり、前記連結部は前記ポンプ室の内周側面に余裕を有して挿入可能となるように、前記連結部と前記ポンプ室の内周側面との間に隙間を設け、前記内周側面と前記連結部との間に前記弾性シール部材が嵌合され、前記インペラ軸の軸芯になるように弾性的且つ可変可能に前記隔壁体が取付られてなるマグネットポンプとしたことにより、エンジン等の振動 によってポンプハウジングに与える悪影響を低減し、且つその構造を極めて簡単なものとすることにより、上記課題を解決したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、ポンプハウジングは、ハウジング本体Aと、隔壁体Cとから構成され、前記ハウジング本体Aと隔壁体Cによって構成されたポンプハウジング内にインペラBが回動自在に収納される。そのハウジング本体Aは、具体的には、アルミニュウム合金材等によってダイカスト鋳造等により加工形成されている〔図1(A),(B)参照〕。
【0007】
そのハウジング本体Aには、略円形状のポンプ室1が形成されており、該ポンプ室1は、略円周状の内周側面1aと略円形状の側面部1bとから形成されている。前記ポンプ室1の中心位置には、後述するインペラBを回動自在に支持するためのインペラ軸2が装着されている。具体的には、前記ポンプ室1内に圧入穴を設けたインペラ軸支持部1cが形成されており、支持部1cに前記インペラ軸2の一端が圧入されている〔図1(A),(B)参照〕。該インペラ軸2は、金属製であり、具体的にはステンレス鋼材等により形成されている。
【0008】
該インペラ軸2には、鍔状部2aが形成され、前記インペラ軸支持部1cに圧入したときの位置決めとしての役目をなしたり、インペラBのハウジング本体A側へのスラスト移動におけるストッパーとしての役目もなしている。前記インペラ軸支持部1cに圧入固定されたインペラ軸2にインペラBが回転自在に装着される。
【0009】
次に、インペラBは、複数の羽根板片から構成された羽根部5と、インナーマグネット部6とから構成されている。該インナーマグネット部6は、マグネット枠部6aとインナーマグネット6bとから構成されている。前記マグネット枠部6aは、円筒形状をなしており、該マグネット枠部6aの内部にインナーマグネット6bが装着されている〔図1(A),(B)参照〕。実際には、インナーマグネット6bは、合成樹脂による鋳込み状態でマグネット枠部6aに収納される構造となっている。また、前記インナーマグネット部6の径方向の中心で且つ軸方向に沿って、軸受部7が装着され、該軸受部7に前記インペラ軸2が挿通する構造となっている(図1,図2参照)。
【0010】
次に、隔壁体Cは、前記ハウジング本体Aのポンプ室1に対向して接合されるものであって、該ポンプ室1と共にインペラBを収納する部品である。前記隔壁体Cは、図1(B),図4等に示すように、その外形が略ハット形状をなしており、前記ポンプ室1を被覆するカバー部8と、前記インペラBのインナーマグネット部6を収納する円筒形状の収納部9とから形成されている〔図1(B)参照〕。該収納部9は、その内面側が前記インナーマグネット部6が収納される収納空隙部9sとなっている。またその収納底面9aの中心には、ボス穴9bが形成され、該ボス穴9bに前記インペラ軸2の先端が挿入するようになっている(図2参照)。
【0011】
前記カバー部8には、真円筒形状の連結部8aが形成され、該連結部8aにはその外周に沿って溝条8bが形成され、該溝条8bにO(オー)リング等の弾性シール部材10が嵌まり込むことができるようになっている。そして、前記ハウジング本体Aのポンプ室1には、前記インペラBがインペラ軸2を介して回動自在に装着され、前記隔壁体Cの連結部8aが前記ポンプ室1の内周側面1aに挿入される。
【0012】
そして、前記ハウジング本体Aと隔壁体Cとが前記弾性シール部材10を介して水密状に接合される構造となっている。その隔壁体Cの収納部9の外周側にアウターマグネットが配置され、該アウターマグネットの回動動作により、隔壁体C内のインペラBが回動するものである。また、隔壁体Cは、合成樹脂材で形成されることが好ましい。
【0013】
その隔壁体Cの連結部8aの外径をD1 とし、前記ハウジング本体Aの内周側面1aの内径をD2 とすると、外径D1 <内径D2 であり、内周側面1aと連結部8aとの間には隙間tが生じるように設定されている。即ち、内周側面1aに対して連結部8aは、隙間tの分,余裕を有して挿入することができるようになっている。そして、弾性シール部材10が前記隙間tを密閉する構造となっている(図2参照)。
【0014】
また、前記弾性シール部材10は、前記ポンプ室1と隔壁体Cにおいて、前記内周側面1aと連結部8aとを弾性的に保持しており、前記隔壁体Cが前記ポンプ室1に対して弾性シール部材10の弾性変形に応じて微動可能となっている。これは、図3(A)に示すように、インペラBからインペラ軸2に伝達された振動を、前記弾性シール部材10が変形しつつ、吸収することができるための移動範囲を確保している。。
【0015】
また、前記ハウジング本体Aと隔壁体Cとは、抜止め手段11によって、弾性的に保持されている隔壁体Cがハウジング本体Aから抜けないようになっている。該抜止め手段11は、ハウジング本体A側にビス等の固着具12にて固定される取付部11aと、前記隔壁体Cのカバー部8を抑えるための押え部11bとから形成され、前記取付部11aがハウジング本体Aに前記固着具12にて固定され、押え部11bが隔壁体Cのカバー部8を僅かの間隔を有して押える状態になっている。具体的には、前記押え部11bは、前記隔壁体Cのカバー部8上を適宜の間隔をおいて当接することなく適宜位置にてカバー部8と当接可能にしたものである。そして、固定部材11aを設けても、前記隔壁体Cは振動と共に移動することができるようになっている〔図3(B)参照〕。
【0016】
前記ハウジング本体Aと接合された隔壁体Cの底部中央に形成されたインペラ軸2のボス穴9bには、前記インペラ軸2の軸端部が挿入し、軸受状に支持されている(図2参照)。また、隔壁体Cの連結部8aは、ポンプ室1の内周側面1aに前記弾性シール部材10によって弾発的に取付けられているので、前記隔壁体Cのインペラ軸2のボス穴9bと、ハウジング本体Aに固定されたインペラ軸2によって隔壁体Cの取付位置を弾性的且つ可変可能にインペラ軸2の軸芯にすることができる。また、図5は、隔壁体Cにおいて前記連結部8aに溝条8bが形成されず、内周側面1a側に弾性シール部材10が挿入される溝条1a1 が形成されたものである。
【0017】
【発明の効果】
請求項1の発明は、インペラ軸2を設けたポンプ室1を備えたハウジング本体Aと、インナーマグネット部6の軸方向先端に羽根部5が形成され且つ前記インペラ軸2に回動自在に装着されるインペラBと、前記インナーマグネット部6が遊挿され且つ底面に前記インペラ軸2の軸端部が挿入するボス穴9bが形成された収納部9と,円筒状の連結部8aとが形成された隔壁体Cと、輪状の弾性シール部材10とからなり、前記連結部8aは前記ポンプ室1の前記内周側面1aに余裕を有して挿入可能となるように、前記連結部8aと前記ポンプ室1の内周側面1aとの間に隙間tを設け、前記内周側面1aと前記連結部8aとの間に前記弾性シール部材10が嵌合され、前記インペラ軸2の軸芯になるように弾性的且つ可変可能に前記隔壁体Cが取付られてなるマグネットポンプとしたことにより、ポンプを装着した(エンジン等の振動を発生する)構造物からの振動がポンプハウジングに与える悪影響を低減させることができ、且つその構造を極めて簡単にすることができ、特にハウジング本体Aと隔壁体Cとの接合箇所に与える悪影響を低減することができる。
【0018】
上記効果を詳述すると、ハウジング本体Aのポンプ室1の内周側面1aと隔壁体Cの連結部8aとの間に隙間tを設け、その接合箇所に弾性シール部材10を介在させているので、前記ハウジング本体Aに対して隔壁体Cを弾発的に支持され、インペラBの可動によって生じる振動がインペラ軸2から隔壁体Cに伝達されても、ポンプ室1の内周側面1aと隔壁体Cの連結部8aとの間の振動が弾性シール部材10により吸収される。
【0019】
これによって、前記インペラ軸2と隔壁体Cとの嵌合部(挿入凹部)の耐久性を向上させることができ、ひいてはポンプの耐久性を向上させることができる。また、ポンプ機能を長期に亘って安定させることができる。また、前述したように、ポンプ室1の内周側面1aと,隔壁体Cの連結部8aとの間に隙間tを設け、その接合箇所に弾性シール部材10を介在させるのみの構造としたものであり、このように耐久性を向上させながらも、ポンプ室1と隔壁体Cとの接合構造を極めて簡単な構造にすることができる。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1において、前記隔壁体Cの連結部8aの外周側に溝条8bが形成され、該溝条8bに前記弾性シール部材10が装着されてなるマグネットポンプとしたことにより、連結部8aの溝条8bに弾性シール部材10を装着することで、該弾性シール部材10は、前記連結部8aに安定した状態で固定され、ハウジング本体Aへ隔壁体Cを接合する組立て作業を効率的に行うことができる。
【0021】
次に、請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記ハウジング本体A側に固定される取付部11aと、前記隔壁体Cを抑えるための押え部11bとから形成され、前記押え部11bは前記隔壁体Cと僅かの間隔を有する抜止め手段11が備えられ、該抜止め手段11を前記隔壁体Cが振動と共に移動可能となるようにハウジング本体Aに固定されてなるマグネットポンプとしたことにより、エンジン等の振動に対して、振動可能に固定されているので、前記隔壁体Cが適宜に振動することができるとともに、その振動によってハウジング本体Aのポンプ室1から外れてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明が設けられたマグネットポンプの一部断面とした側面図
(B)はハウジング本体と隔壁体との分離した状態の縦断側面図
【図2】本発明の構造を示す拡大した縦断側面図
【図3】(A)はインペラ軸の振動状態を誇張した略示図
(B)は隔壁体が振れてポンプ室に対して移動した状態を示す作用図
【図4】ハウジング本体とインペラと一部切除した隔壁体の分解した斜視図
【図5】本発明の別の実施形態の縦断側面図
【符号の説明】
A…ハウジング本体
B…インペラ
C…隔壁体
1…ポンプ室
1a…内周側面
2…インペラ軸
5…羽根部
6…インナーマグネット部
8a…連結部
8b…溝条
9…収納部
9b…ボス穴
10…弾性シール部材
11…抜止め手段
Claims (3)
- インペラ軸を設けたポンプ室を備えたハウジング本体と、インナーマグネット部の軸方向先端に羽根部が形成され且つ前記インペラ軸に回動自在に装着されるインペラと、前記インナーマグネット部が遊挿され且つ底面に前記インペラ軸の軸端部が挿入するボス穴が形成された収納部と、円筒状の連結部とが形成された隔壁体と、輪状の弾性シール部材とからなり、前記連結部は前記ポンプ室の内周側面に余裕を有して挿入可能となるように、前記連結部と前記ポンプ室の内周側面との間に隙間を設け、前記内周側面と前記連結部との間に前記弾性シール部材が嵌合され、前記インペラ軸の軸芯になるように弾性的且つ可変可能に前記隔壁体が取付られてなることを特徴とするマグネットポンプ。
- 請求項1において、前記隔壁体の連結部の外周側に溝条が形成され、該溝条に前記弾性シール部材が装着されてなることを特徴とするマグネットポンプ。
- 請求項1又は2において、前記ハウジング本体側に固定される取付部と、前記隔壁体を抑えるための押え部とから形成され、前記押え部は前記隔壁体と僅かの間隔を有する抜止め手段が備えられ、該抜止め手段を前記隔壁体が振動と共に移動可能となるようにハウジング本体に固定されてなることを特徴とするマグネットポンプ。
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