JP3734672B2 - 射出成形装置の不活性ガス吹込み部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は射出成形装置の不活性ガス吹込み部の構造改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂の射出成形法では、金型内のキャビティに高圧の溶融樹脂を射出してキャビティに樹脂を充填し、凝固させることにより射出成形品(以下、成形品と略す。)を得る。このとき、キャビティに存在している空気の流れを考えると、この空気は射出樹脂で押されてキャビティの隅へ流れる。そして、固定型と可動型の間のパーティングライン(分割面)や、入れ子やスライドコアの隙間を通って型外に排出される。これで、気泡や欠けのない成形品が得られる。
【0003】
しかし、空気は高圧の樹脂で押されて断熱圧縮状態になり、多量の熱が発生し、結果、成形品に黒い焼け跡が発生することがある。これを「焼け」という。
この焼けは成形品の品質を著しく低下させるために好ましくない。その対策の一つに、空気を窒素ガスや不活性ガスに置き換え、この置換ガスを樹脂で押出すことで焼けを回避する方法が知られている。
【0004】
例えば、特開平10−286840号公報「合成樹脂の新規なる成形法」には、炭酸ガスなどのガス体を金型に吹込み、次に樹脂を注入する成形法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報の図2では、ノズル先端3(同公報に記載の符号を流用する。以下同様。)をニードル弁4で閉じておき、通路8から空間7を介してノズル先端3からガス体を図示せぬ金型へ吹込む。次に、ニードル弁4を図右へ移動することにより、ニードル弁4を開き、樹脂をノズル先端3に送ると言うものである。
このときに、樹脂はノズル先端3だけでなく、通路8へも進入(侵入)する。空間7及び通路8には炭酸ガスなどのガス体が存在しているが、ガス体は圧縮性流体であり、非圧縮性流体である樹脂の侵入を抑える力は乏しいからである。
【0006】
そこで、上記公報の図3には、ガス体は通過できるが、合成樹脂は通過できない細孔19(公報の第6頁左欄第9行〜第10行参照。)を通じてガス体を流す金型構造が示されている。このときの細孔19は、いわゆる半透膜と同じ性能を発揮するものであり、樹脂の分子(大きい分子)とガス体の分子(小さい分子)との中間の大きさの孔径にする必要があり、ごく小径にする必要がある。ごく小径であれば、ガス体を流す際の流路抵抗が大きく、必要な量のガス体を迅速に金型へ充填することはできない。すなわち、ガス充填に時間が掛り、生産のサイクルタイムが大幅に延び、結果として、生産性は低下する。
【0007】
この様に上記公報の発明には、ガス流路に樹脂が侵入するか又はサイクルタイムの延長による生産性の低下という課題が残る。
そこで、本発明の目的は不活性ガス吹込み部の構造を改良して、樹脂の侵入を防止し且つサイクルタイムの短縮を図って生産性を高めることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の不活性ガス吹込み部構造は、成形金型(11)にスプルブッシュ(12)を収納するブッシュ収納部(13)を設け、このブッシュ収納部(13)にスライド可能にスプルブッシュ(12)を収納し、ブッシュ収納部(13)に窒素ガスなどの不活性ガスを吹込むガス通路の出口(15)を臨ませ、このガス通路の出口(15)をスプルブッシュ(12)のスライド動作で開閉できるように構成するとともに、ガス通路の出口(15)に至るガス管(23)に、不活性ガスを計量し且つ圧送するガス計量・注入シリンダ(22)、このガス計量・注入シリンダ(22)で圧送したガスの逆流を防止する逆止弁(24)及びこの逆止弁(24)よりガス通路の出口(15)でのガス圧力を計測する圧力センサ(26)を介在させ、キャビティに封じ込めた不活性ガスの圧力を正確に制御できるようにしたことを特徴とする。
【0009】
スプルブッシュをスライドさせてガス通路の出口を開にする。そして、このガス通路を通じて成形金型のキャビティへ不活性ガスを吹込み、キャビティ内部の空気を追い出す。次に、スプルブッシュをスライドさせてガス通路の出口を閉にする。この状態で、スプルブッシュを介してキャビティへ樹脂を射出する。ガス通路の出口は閉じているので、樹脂がガス通路に侵入することはない。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る射出成形装置の不活性ガス吹込み部(第1実施例)の構造図であり、この不活性ガス吹込み部10では、成形金型(固定型)11にスプルブッシュ12を収納するブッシュ収納部13を設け、このブッシュ収納部13に図左右にスライド可能にスプルブッシュ12を収納し、ブッシュ収納部13に窒素ガスなどの不活性ガスを吹込むガス通路の出口15を臨ませ、このガス通路の出口15をスプルブッシュ12のスライド動作で開閉できるように構成したことを特徴とする。
【0013】
詳しくは、ブッシュ収納部13の奥にガス通路の出口15を臨ませ、この出口15に通じるガス通路16を成形金型11に形成する。そして、成形金型11外にガス容器17を配置し、このガス容器17から窒素ガス等の不活性ガスを導く第1ガス管18に制御弁19及び第1逆止弁21を介設した上で、この第1ガス管18をガス計量・注入シリンダ22に繋ぐ。そして、このガス計量・注入シリンダ22からは第2ガス管23を延ばして前記ガス通路16に接続する。なお、第2ガス管23(又はガス通路16)に第2逆止弁24を介設し、この第2逆止弁24とガス通路の出口15との間から分岐通路25を分岐させ、この分岐通路25の端部に圧力センサ26を取付ける。
【0014】
また、ブッシュ収納部13に収納したスプルブッシュ12は、スプリング28にて加熱筒30のノズルヘッド31側へ押出す。ただし、ブッシュ収納部13からスプルブッシュ12が外れぬように適当な形状若しくは構造のストッパ32でスライドの量を制限する。
【0015】
以上の構成からなる不活性ガス吹込み部(第1実施例)の作用を次の図2,3で説明する。
図2(a),(b)は本発明に係る不活性ガス吹込み部(第1実施例)の作用説明図(その1)である。
【0016】
(a):加熱筒30を矢印▲1▼のごとく前進させてノズルヘッド31をスプルブッシュ12に当てる。ただし、スプルブッシュ12を押込まず、それの口を塞ぐ程度の押圧力で当てる。また、制御弁19を開き、同時にガス計量・注入シリンダ22を矢印▲2▼のごとく作動させる。これで、ガス容器17の不活性ガスを第1ガス管18を通じて矢印▲3▼のごとくガス計量・注入シリンダ22に吸引することができる。ガス計量・注入シリンダ22は内径にピストンストロークを乗じることでガスの吸引量を正確に計量することができる。この段階ではキャビティ(図示せず)、ランナ33及びブッシュ収納部13には空気が溜まっている。
【0017】
(b):次に、ガス計量・注入シリンダ22を矢印▲4▼のごとく作動させる。すると、不活性ガスは矢印▲5▼のごとく第2ガス管23、第2逆止弁24及びガス通路16を通じてブッシュ収納部13及びランナ33に至り、図示せぬキャビティを満たす。このときに第1逆止弁21の逆止作用により、高圧化した不活性ガスがガス容器17に戻ることはない。成形金型の微小隙間(パーティングラインなど)から不活性ガスで空気を押出すことにより、キャビティを非酸化性雰囲気に置換することができる。
【0018】
キャビティに封じ込めた不活性ガスの圧力は圧力センサ26で検出することができる。この圧力センサ26で検出した圧力が基準圧を満たしていれば次の工程に進み、基準圧より低いときには不活性ガス充填不足であるから対策を講じてばよい。この様に圧力センサ26で圧力を監視することにより、安定した射出成形が維持できる。
【0019】
図3(a),(b)は本発明に係る不活性ガス吹込み部(第1実施例)の作用説明図(その2)である。
(a):加熱筒30を前進させ、スプルブッシュ12を矢印▲6▼のごとくブッシュ収納部13に進入させる。この結果、スプルブッシュ12でガス通路の出口15を閉じることができる。
【0020】
(b):次に、矢印▲7▼の如く樹脂35を射出する。この射出に引き続いて高圧不活性ガスを噴射することでガスインジェクション成形を実施させることができる。すなわち、図3(b)から加熱筒30を後退させることで、スプルブッシュ12を後退させる。この状態は図2(a)と同様となる。そこで、図2(a),(b)で説明した要領でランナ33に不活性ガスを圧入する。この様な成形法をガスインジェクション成形といい、ガスで樹脂に中空部を形成する。比較的低い中空率の場合は中空部の形成と共にヒケやソリの発生を有効に防止することで品質の向上が期待できる。
ガスインジェクション成形は、家電製品の中空フレーム、中空台、自動車部品としてのインストルメントパネル、家具などの製造に好適である。
【0021】
なお、図3(b)ではガス通路の出口15をスプルブッシュ12で塞いだため、樹脂35がガス通路16へ廻り込む心配はない。
また、図2(b)において、開放状態のガス通路の出口15を通じて不活性ガスを吹込むため、十分な量の不活性ガスを短い時間で吹込むことができ、サイクルタイムを短めることができる。
この様に、図1の不活性ガス吹込み部10によれば、ガス通路16への樹脂の侵入を防止し且つガスの吹込みに要する時間を短め、生産性を高めることができる。
【0022】
図4は射出成形装置の不活性ガス吹込み部の参考図であり、図1と共通部分は図1での符号を流用し、詳しい説明は省略する。
この不活性ガス吹込み部40では、加熱筒30に固定した固定ノズルヘッド41に被せるヘッド収納部42を備えた可動ノズルヘッド43を、固定ノズルヘッド41にスライド可能に取付け、この可動ノズルヘッド43に設けたノズルヘッド収納部42に窒素ガスなどの不活性ガスを吹込むガス通路の出口15を臨ませ、相対的に移動する固定ノズルヘッド41でガス通路の出口15を開閉できるように構成したことを特徴とする。
【0023】
図1と同様に、28はスプリング、32はストッパ、11は成形金型、12はスプルブッシュ、17はガス容器、18は第1ガス管、19は制御弁、21は第1逆止弁、22はガス計量・注入シリンダ、23は第2ガス管、24は第2逆止弁、16はガス通路である。
【0024】
以上の構成からなる不活性ガス吹込み部40の作用を次に述べる。
図5(a),(b)は図4の作用説明図(その1)である。
【0025】
(a):加熱筒30を矢印aのごとく前進させ、可動ノズルヘッド43をスプルブッシュ12に当てる。ただし、可動ノズルヘッド43へ固定ノズルヘッド41を押込まず、可動ノズルヘッド43でスプルブッシュ12の口を塞ぐ程度に押し当てる。また、制御弁19を開き、同時にガス計量・注入シリンダ22を矢印bのごとく作動させる。これで、ガス容器17の不活性ガスを第1ガス管18を通じて矢印cのごとくガス計量・注入シリンダ22に吸引することができる。
【0026】
(b):次に、ガス計量・注入シリンダ22を矢印dのごとく作動させる。すると、不活性ガスは矢印eのごとく第2ガス管23、第2逆止弁24及びガス通路16を通じてノズルヘッド収納部42及びランナ33に至り、図示せぬキャビティを満たす。このときに第1逆止弁21の逆止作用により、高圧化した不活性ガスがガス容器17に戻ることはない。成形金型の微小隙間(パーティングラインなど)から不活性ガスで空気を押出すことにより、キャビティを非酸化性雰囲気に置換することができる。
【0027】
図6(a),(b)は図4の作用説明図(その2)である。
(a):加熱筒30を矢印fのごとく前進させ、可動ノズルヘッド43に固定ノズルヘッド41を進入させる。この結果、固定ノズルヘッド41でガス通路の出口15を閉じることができる。構造的には可動ノズルヘッド43が固定ノズルヘッド41に対してスライドするが、ここでは静止状態の可動ノズルヘッド43へ固定ノズルヘッド41をスライドさせる。このことを相対的に固定ノズルヘッド43が移動するといい、何れのノズル41又は43が他方のノズル43又は41に対して移動してもよいことにする。
【0028】
(b):次に、矢印gの如く樹脂35を射出する。ガス通路の出口15を固定ノズルヘッド41で塞いだため、樹脂35がガス通路16へ廻り込む心配はない。
また、図5(b)において、開放状態のガス通路の出口15を通じて不活性ガスを吹込むため、十分な量の不活性ガスを短い時間で封入することができ、サイクルタイムを短めることができる。
この様に、図4の不活性ガス吹込み部40によれば、ガス通路16への樹脂の侵入を防止し且つガスの吹込みに要する時間を短め、生産性を高めることができる。
【0029】
尚、不活性ガスは狭義の不活性ガス(ネオン、アルゴン、キセノンなど)、非酸化性ガスである窒素ガスや炭酸ガスを加えた広義のガスをさす。
また、実施例では樹脂射出前のガスパージと射出後のガスインジェクションとに本発明の不活性ガス吹込み部構造を適用したが、ガスインジェクションのみに適用することは差支えない。
【0030】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の不活性ガス吹込み部構造は、成形金型にスプルブッシュを収納するブッシュ収納部を設け、このブッシュ収納部にスライド可能にスプルブッシュを収納し、ブッシュ収納部に窒素ガスなどの不活性ガスを吹込むガス通路の出口を臨ませ、このガス通路の出口をスプルブッシュのスライド動作で開閉できるように構成するとともに、ガス通路の出口に至るガス管に、不活性ガスを計量し且つ圧送するガス計量・注入シリンダ、このガス計量・注入シリンダで圧送したガスの逆流を防止する逆止弁及びこの逆止弁よりガス通路の出口でのガス圧力を計測する圧力センサを介在させ、キャビティに封じ込めた不活性ガスの圧力を正確に制御できるようにしたことを特徴とする。
先ず、スプルブッシュをスライドさせてガス通路の出口を開にし、この状態で成形金型のキャビティへ不活性ガスを吹込み、キャビティ内部の空気を追い出す。ガスの流れは円滑となり、ガスの注入に要する時間を短くすることができる。
次に、スプルブッシュをスライドさせてガス通路の出口を閉にし、この状態で、スプルブッシュを介してキャビティへ樹脂を射出する。ガス通路の出口は閉じているので、樹脂がガス通路に侵入することはない。
さらには、ガス通路の出口に至るガス管に、不活性ガスを計量し且つ圧送するガス計量・注入シリンダ、このガス計量・注入シリンダで圧送したガスの逆流を防止する逆止弁及びこの逆止弁よりガス通路の出口でのガス圧力を計測する圧力センサを介在させたので、キャビティに封じ込めた不活性ガスの圧力を正確に制御できる。
【0031】
従って、請求項1によれば、樹脂がガス通路へ侵入する虞れはなく且つガス注入に要する時間を縮めることでサイクルタイムを短縮し、成形品の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る射出成形装置の不活性ガス吹込み部(第1実施例)の構造図
【図2】 本発明に係る不活性ガス吹込み部(第1実施例)の作用説明図(その1)
【図3】 本発明に係る不活性ガス吹込み部(第1実施例)の作用説明図(その2)
【図4】 射出成形装置の不活性ガス吹込み部の参考図
【図5】 図4の作用説明図(その1)
【図6】 図4の作用説明図(その2)
【符号の説明】
10,40…不活性ガス吹込み部、11…成形金型、12…スプルブッシュ、13…ブッシュ収納部、15…ガス通路の出口、30…加熱筒、41…固定ノズルヘッド、42…ヘッド収納部、43…可動ノズルヘッド。
Claims (1)
- 成形金型(11)にスプルブッシュ(12)を収納するブッシュ収納部(13)を設け、このブッシュ収納部(13)にスライド可能にスプルブッシュ(12)を収納し、前記ブッシュ収納部(13)に窒素ガスなどの不活性ガスを吹込むガス通路の出口(15)を臨ませ、このガス通路の出口(15)を前記スプルブッシュ(12)のスライド動作で開閉できるように構成するとともに、前記ガス通路の出口(15)に至るガス管(23)に、不活性ガスを計量し且つ圧送するガス計量・注入シリンダ(22)、このガス計量・注入シリンダ(22)で圧送したガスの逆流を防止する逆止弁(24)及びこの逆止弁(24)より前記ガス通路の出口(15)でのガス圧力を計測する圧力センサ(26)を介在させ、キャビティに封じ込めた不活性ガスの圧力を正確に制御できるようにしたことを特徴とする射出成形装置の不活性ガス吹込み部構造。
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