JP3734397B2 - トルクセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば操舵トルクに応じた操舵補助力を付与するパワーステアリング装置において、その操舵トルクを検出するのに適したトルクセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば車両のパワーステアリング装置においては、ステアリングホイールの回転をステアリングシャフトを介して車輪に伝達する際、そのステアリングシャフトにより伝達されるトルクをトルクセンサにより検出し、その検出トルクの大きさに応じて操舵補助力を付与している。
【0003】
例えば特開平8−240491号公報、特開平9−61263号公報、特開平9−61264号公報により開示されたトルクセンサにおいては、磁性材製の第1回転軸にトーションバーを介して連結された第2回転軸に、導電性を有する非磁性材製の円筒部材が同行回転するように連結され、その円筒部材を囲む磁束発生用コイルが設けられ、その円筒部材に窓が形成され、その円筒部材に囲まれる第1回転軸の外周に溝が形成されている。トルク伝達による両回転軸の相対回転による窓と溝との重なり状態の変化に応じて、その磁性材製の第1回転軸を通過する磁束が変化して電磁誘導によりコイル出力が変化するものとされ、そのコイル出力の変化に基づき伝達トルクが検出される。
【0004】
また、特開平8−114518号公報により開示されたトルクセンサにおいては、磁性材製の第1回転軸に導電性を有する非磁性材製の第1円筒部材が同行回転するように連結され、その第1回転軸にトーションバーを介して連結された第2回転軸に、導電性を有する非磁性材製の第2円筒部材が同行回転するように連結され、両円筒部材を囲む磁束発生用コイルが設けられ、各円筒部材に窓が形成されている。トルク伝達による両回転軸の相対回転による両円筒部材の窓相互の重なり状態の変化に応じて、その磁性材製の第1回転軸を通過する磁束が変化して電磁誘導によりコイル出力が変化するものとされ、そのコイル出力の変化に基づき伝達トルクが検出される。
【0005】
上記従来のトルクセンサにおいては、非磁性材製円筒部材により磁性材製第1回転軸に至る磁束が遮られることから、伝達トルクに応じた両回転軸の相対回転による窓と溝との重なり状態の変化、あるいは窓相互の重なり状態の変化によって、その第1回転軸を通過する磁束が変化する。また、そのコイルの磁束発生に基づき生じる交番磁界内で導電性円筒部材に生じる渦電流によっても磁性材製第1回転軸に至る磁束が遮られる。すなわち、その第1回転軸の通過磁束を変化させることに基づき伝達トルクを検出している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のトルクセンサにおいては、磁性材製第1回転軸はコイルまわりの磁気回路の構成部材として必要とされる以上に大きなものであることから、その磁気回路からの漏れ磁束が多くなり、検出効率が低下するという問題がある。また、その第1回転軸は、磁気回路を構成する上で必要とされる磁気特性と、トルクを伝達する構造部材として必要な機械的特性の双方を充足する必要がある。しかし、磁気特性と機械的特性の双方を十分に充足する材質を選定するのは困難であるという問題がある。さらに、第1回転軸に筒状部材を固定するのにビス等を用いると部品点数が増大し、圧入すると大きな圧入荷重により筒状部材が歪んで磁気特性が変化し、検出精度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することのできるトルクセンサを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のトルクセンサは、第1シャフトと、その第1シャフトに同軸心かつ弾性的に相対回転可能に連結される第2シャフトと、その第1シャフトに同軸心かつ同行回転するように連結される磁性材製の第1筒状部材と、その第2シャフトに同軸心かつ同行回転するように連結される導電性を有する非磁性材製の第2筒状部材と、その第2筒状部材の外周を囲むように配置されると共に、交番磁界を生じるように磁束を発生させるコイルとを備え、その第1シャフトと第1筒状部材とは同行回転するように連結され、その第1筒状部材は、その第1シャフトの外周を囲むと共に前記コイルの発生磁束の通過位置に配置される磁束通過部を有し、その第2筒状部材は、その第1筒状部材の磁束通過部を囲むと共に前記コイルの発生磁束の通過位置に配置される磁束規制部を有し、その磁束通過部に内方側開口が形成され、その磁束規制部に外方側開口が形成され、その磁束通過部の内周と第1シャフトの外周との間に、その内方側開口に通じる環状の隙間が形成され、両シャフトの径方向における外方側開口と磁束通過部との重なり面積が両シャフトの相対回転に応じて変化するように、その外方側開口と内方側開口とは両シャフトの径方向において部分的に重なるように配置され、その重なり面積の変化に応じた前記磁束通過部の通過磁束の変化に基づき、両シャフトにより伝達されるトルクが検出される。
その第1シャフトを構成する材料として、トルクを伝達する構造部材として必要な強度や加工性等の特性に優れた鋼材等を用いることができる。その第1筒状部材を構成する磁性材としては、トルクセンサを構成する上で必要な磁気特性に優れた例えば軟質磁性金属材料や、合成樹脂製の基材中に軟質磁性粉末を分散させることで構成される磁性樹脂材料等を用いることができる。その第2筒状部材を構成する導電性を有する非磁性材としては、アルミニウム等の導電性に優れると共に透磁率の小さい常磁性体の金属材料や、合成樹脂製の基材中に導電性を有する常磁性体の金属粉末を分散させることで構成される導電性を有する非磁性の樹脂材料等を用いることができる。
上記構成においては、トルク伝達時における両シャフトの相対回転により、磁性材製の第1筒状部材の磁束通過部に形成された内方側開口と、導電性を有する非磁性材製の第2筒状部材の磁束規制部に形成された外方側開口との重なり状態が変化する。これにより、両シャフトの径方向における外方側開口と磁束通過部との重なり面積が両シャフトの相対回転に応じて変化する。その第1筒状部材は磁性材製であり、その第2筒状部材は非磁性材製であるので、その外方側開口と磁束通過部との重なり面積の変化によって、その磁束通過部の通過磁束が変化する。また、そのコイルの磁束発生に基づき生じる交番磁界内で導電性の第1筒状部材に生じる渦電流によっても、その磁束通過部に至る磁束が遮られる。これにより、その磁束通過部の通過磁束を、その重なり面積の変化に応じて変化させることができる。その面積変化は伝達トルクに対応する両シャフトの相対回転に対応することから、その磁束変化に基づき両シャフトにより伝達されるトルクを検出できる。
上記構成によれば、その磁性材製の第1筒状部材における磁束通過部の内周と、第1シャフトの外周との間に、環状の隙間が形成されているので、そのコイルまわりの磁気回路から第1シャフトへの磁束の漏れを、その隙間により遮断することができる。その第1筒状部材と第1シャフトとは別部材であるので、その第1筒状部材としては磁気回路を構成する上で必要とされる磁気特性を充足するものを選定でき、その第1シャフトとしては、トルクを伝達する構造部材として必要な機械的特性を充足するものを選定できる。また、その第1シャフトを第1筒状部材に圧入することで、その第1筒状部材を第1シャフトに固定するための部材が不要で部品点数を削減できる。さらに、その第1筒状部材における磁束通過部の内周と第1シャフトの外周との間の環状の隙間により、その圧入荷重を低減し、圧入荷重による第1筒状部材の歪み発生を防止し、検出精度低下を阻止できる。
【0009】
両シャフトの相対回転軸方向において、その隙間の両端間に前記内方側開口が配置されているのが好ましい。
これにより、その磁束の漏れの遮断効果を高め、第1シャフトの第1筒状部材への圧入力を小さくできる。
【0010】
前記コイルを保持する磁性材製のコイルホルダーを備え、そのコイルホルダーは、そのコイルを囲む筒状の外周部分と、その外周部分の一端側から内方に向かう部分と、その外周部分の他端側から内方に向かう部分とを有し、両シャフトの相対回転軸方向において、前記外方側開口の寸法は前記コイルの寸法を超えると共に前記コイルホルダーの寸法未満とされ、前記外方側開口は前記コイルホルダーの両端間に配置され、前記コイルは前記外方側開口の両端間に配置されているのが好ましい。
これにより、第1シャフト、第2シャフト、第2筒状部材、およびコイルの軸方向における相対位置が、製造公差や組み立て公差により変動しても、両シャフトの相対回転軸方向において外方側開口をコイルの発生磁束の通過位置に配置できる。よって、その磁束通過部の通過磁束の公差による変動をなくし、検出精度の低下を防止できる。
【0011】
その外方側開口は、両シャフトの回転軸方向に平行な縁と回転周方向に平行な縁とを有する4辺形に沿う形状を有し、その内方側開口は、両シャフトの相対回転軸に沿う縁を有すると共に、両シャフトの相対回転軸方向において外方側開口よりも長寸とされ、その外方側開口は、検出範囲に対応する両シャフトの相対回転範囲では、両シャフトの相対回転軸方向において内方側開口の両端間に配置され、両シャフトが相対回転していない検出原点位置にある時、その内方側開口における両シャフトの相対回転軸に沿う縁は、その外方側開口における両シャフトの相対回転軸に沿う中心と、径方向において重なるように配置されているのが好ましい。
これにより、両シャフトが一方向に相対回転した時と、他方向に相対回転した時の何れの場合にも、その相対回転量に応じたトルクを検出できる。
【0012】
前記コイルとして、両シャフトの相対回転軸方向に沿って並列する同一仕様の第1コイルと第2コイルとを備え、前記外方側開口として、両シャフトの相対回転軸方向における間隔をおいて配置される第1開口と第2開口とを備え、その第1コイルは第1開口を通過する磁束を発生する位置に配置され、その第2コイルは第2開口を通過する磁束を発生する位置に配置され、その第1開口と内方側開口とは、両シャフトが一方向に相対回転する時は第1開口と磁束通過部との重なり面積が増加し、両シャフトが他方向に相対回転する時は第1開口と磁束通過部との重なり面積が減少するように相対配置され、その第2開口と内方側開口とは、両シャフトが一方向に相対回転する時は第2開口と磁束通過部との重なり面積が減少し、両シャフトが他方向に相対回転する時は第2開口と磁束通過部との重なり面積が増加するように相対配置され、両シャフトの相対回転時において、その第1開口と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値と、その第2開口と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値とは互いに等しくされ、その第1開口との重なり面積の変化に応じた磁束通過部の通過磁束の変化と、その第2開口との重なり面積の変化に応じた磁束通過部の通過磁束の変化との差に基づき、両シャフトにより伝達されるトルクが検出されるのが好ましい。
この構成によれば、トルク伝達時に両シャフトが一方向に相対回転すると、その相対回転量に応じて第1開口と磁束通過部との重なり面積が増加し、第2開口と磁束通過部との重なり面積が減少する。また、トルク伝達時に両シャフトが他方向に相対回転すると、その相対回転量に応じて第1開口と磁束通過部との重なり面積が減少し、第2開口と磁束通過部との重なり面積が増加する。各重なり面積の変化に応じて磁束通過部を通過する磁束が変化する。また、両シャフトの相対回転時において、その第1開口と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値と、その第2開口と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値とは互いに等しくされている。よって、第1開口と磁束通過部との重なり面積の変化に応じた磁束通過部の通過磁束の変化と、第2開口と磁束通過部との重なり面積の変化に応じた磁束通過部の通過磁束の変化との差に基づき、両シャフトにより伝達されるトルクを検出でき、トルク検出感度が増大する。しかも、温度が変動した場合、第1開口と重なる磁束通過部を通過する磁束と、第2開口と重なる磁束通過部を通過する磁束とは同じだけ変化するので、両磁束変化の差に基づきトルクを検出することで温度変動による検出トルクの変動を相殺できる。
【0013】
前記第1開口は、前記第2筒状部材の周方向における等間隔をおいて並列するように複数形成され、前記第2開口は、前記第2筒状部材の周方向における等間隔をおいて並列するように複数形成され、前記内方側開口は、前記第1筒状部材の周方向における等間隔をおいて並列するように複数設けられ、各内方側開口の周方向寸法は、各内方側開口相互間における磁束通過部の周方向寸法よりも大きくされると共に、各外方側開口の周方向寸法よりも大きくされ、各内方側開口相互間における磁束通過部の周方向寸法は、各外方側開口の周方向寸法よりも大きくされ、各第1開口の周方向間に各第2開口が配置され、トルク検出範囲に対応する両シャフトの相対回転範囲において、各外方側開口が重なる内方側開口における両シャフトの相対回転軸に沿う縁は単一とされ、第1開口が重なる内方側開口の縁と、第2開口が重なる内方側開口の縁とは、両シャフトの回転周方向において、その内方側開口の中心からみて互いに逆の側に位置するものとされているのが好ましい。
これにより外方側開口と内方側開口の数を多くしてトルク検出感度を向上できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1〜図5に示すトルクセンサ1は、車両のパワーステアリング装置における操舵トルクを検出する。そのトルクセンサ1は、ハウジング2と、第1シャフト3と、第2シャフト4とを備えている。各シャフト3、4は鋼材等とされている。その第1シャフト3は、軸受5を介してハウジング2により支持され、ブッシュ6を介して第2シャフト4の一端に形成された凹部4aの内周により支持される。その第2シャフト4は、軸受7を介してハウジング2により支持される。その検出トルクに応じて操舵補助力が付与される。
【0015】
その第1シャフト3に形成された軸方向孔3aと、その第2シャフト4の凹部4aとにトーションバー8が挿入されている。そのトーションバー8の一端はピン9により第1シャフト3に同行回転するように連結され、他端はセレーション10を介して第2シャフト4に同行回転するように連結される。これにより、その第2シャフト4は第1シャフト3と同軸心に配置されると共に、第1シャフト3に弾性的に相対回転可能に連結される。その第1シャフト3の一端側はステアリングホイール(図示省略)に接続され、その第2シャフト4の他端側は例えばラックピニオン式ステアリングギア等のステアリングギアに接続される。これにより、操舵のためのステアリングホイールの回転が第1、第2シャフト3、4を介して車輪に伝達され、操舵角が変化する。
【0016】
その第1シャフト3は、円筒形の第1筒状部材11に圧入されている。これにより、その第1シャフト3と第1筒状部材11とは同軸心かつ同行回転するように連結されている。
【0017】
その第2シャフト4は、円筒形の第2筒状部材12と同行回転するように連結されている。本実施形態では、その第2筒状部材12は第2シャフト4の一端側外周に圧入されているが、ネジや溶接等の適当な固着手段により一体化されてもよい。この第2筒状部材12は、ハウジング2内において第1、第2シャフト3、4、第1筒状部材11と同軸心に配置され、第1筒状部材11の外周を隙間を介して覆う。
【0018】
そのハウジング2の内周に、磁性材製の第1コイルホルダー31と磁性材製の第2コイルホルダー32とが挿入されている。図2に示すように、各コイルホルダー31、32は、円筒状の外周部分31a、32aと、その外周部分31a、32aの一端側から内方に向かう円環状の周壁部分31b、32bと、その外周部分31a、32aの他端側から内方に向かう円環状の蓋部分31c、32cとから構成される。各コイルホルダー31、32は、ハウジング2の内周に形成される段差2aと、ハウジング2の内周に嵌め合わされる止め輪53とにより、板バネ54を介して挟み込まれ、これによりハウジング2に固定される。
【0019】
その第1コイルホルダー31により保持される第1コイル33と、その第2コイルホルダー32により保持される第2コイル34とが、両シャフト3、4の相対回転軸方向に沿って並列する。両コイル33、34は同一仕様であり、導線33a、34aを絶縁材製のボビン33b、34bに第1シャフト3の軸心まわりに巻き付けることで構成され、各コイルホルダー31、32の内周に挿入されている。各コイルホルダー31、32及びコイル33、34は、上記第2筒状部材12の外周を隙間を介して囲むように配置される。各コイル33、34は、後述のようにトルク検出回路を構成し、交番磁界を生じるように磁束を発生させる。
【0020】
その第1筒状部材11は磁性材製とされ、第1シャフト3の外周を囲むと共にコイル33、34の発生磁束の通過位置に配置される磁束通過部を有する。その磁束通過部に内方側開口として複数の上部開口41と複数の下部開口42とが形成されている。図3、図4に示すように、それら上部開口41は、互いに第1筒状部材11の周方向における等間隔をおいて並列する。それら下部開口42は、互いに第1筒状部材11の周方向における等間隔をおいて並列する。各開口41、42の形状、寸法は互いに等しくされ、本実施形態では両シャフト3、4の回転軸方向に平行な縁と回転周方向に平行な縁とを有する4辺形に沿う形状を有する。その上部開口41と下部開口42とは、両シャフト3、4の相対回転軸方向に沿って間隔をおいて並列配置されている。各内方側開口41、42の周方向寸法S1は、各内方側開口41、42の相互間における磁束通過部の周方向寸法S2よりも大きくされている。
【0021】
その第1筒状部材11の磁束通過部の内周と第1シャフト3の外周との間に、上記内方側開口41、42に通じる環状の隙間δが形成されている。本実施形態では、その第1シャフト3の外周に周溝3aが形成され、その周溝3aの両縁部の外周に第1筒状部材11の両周縁部の内周が圧入され、その周溝3aの底面と第1筒状部材11の内周との間が隙間δとされている。両シャフト3、4の相対回転軸方向において、その隙間δの両端δ′、δ″間に内方側開口41、42が配置され、後述の磁束の漏れの遮断効果を高め、第1シャフト3の第1筒状部材11への圧入力を小さくしている。
【0022】
その第2筒状部材12は、導電性を有する非磁性材製とされ、その第1筒状部材11の磁束通過部を囲むと共に各コイル33、34の発生磁束の通過位置に配置される磁束規制部を有する。その磁束規制部に外方側開口として複数の第1開口43と複数の第2開口44とが形成されている。その第1開口43と第2開口44とは、両シャフト3、4の相対回転軸方向における間隔をおいて配置されている。それら第1開口43は、互いに第2筒状部材12の周方向における等間隔をおいて並列する。それら第2開口44は、互いに第2筒状部材12の周方向における等間隔をおいて並列する。各開口43、44の形状、寸法は互いに等しくされ、本実施形態では両シャフト3、4の回転軸方向に平行な縁と回転周方向に平行な縁とを有する4辺形に沿う形状を有する。上記第1コイル33は各第1開口43を通過する磁束を発生する位置に配置され、上記第2コイル34は各第2開口44を通過する磁束を発生する位置に配置される。
【0023】
図2に示すように、両シャフト3、4の相対回転軸方向において、各外方側開口43、44の寸法は各コイル33、34の寸法を超えると共に各コイルホルダー31、32の寸法未満とされ、第1開口43は第1コイルホルダー31の両端間に配置され、第2開口44は第2コイルホルダー32の両端間に配置され、第1コイル33は第1開口43の両端間に配置され、第2コイル34は第2開口44の両端間に配置される。これにより、第1シャフト3、第2シャフト4、第1コイル33、第2コイル34、および第2筒状部材12の軸方向における相対位置が、製造公差や組み立て公差により変動しても、両シャフト3、4の相対回転軸方向において外方側開口43、44をコイル33、34の発生磁束の通過位置に配置できる。よって、その磁束通過部の通過磁束の公差による変動をなくし、検出精度の低下を防止できる。
【0024】
両シャフト3、4の径方向における外方側開口と上記第1筒状部材11の磁束通過部との重なり面積が両シャフト3、4の相対回転に応じて変化するように、その外方側開口と上記内方側開口とは両シャフト3、4の径方向において部分的に重なるように配置されている。すなわち、図4に示すように、両シャフト3、4の相対回転軸方向において、各内方側開口を構成する上下部開口41、42それぞれは、各外方側開口を構成する第1、第2開口43、44それぞれよりも長寸とされている。その第1開口43は、トルク検出範囲に対応する両シャフト3、4の相対回転範囲では、両シャフト3、4の相対回転軸方向において上部開口41の両端間に配置され、両シャフト3、4の径方向において上部開口41における両シャフト3、4の相対回転軸に沿う単一の縁41aと重なる。その第2開口44は、トルク検出範囲に対応する両シャフト3、4の相対回転範囲では、両シャフト3、4の相対回転軸方向において下部開口42の両端間に配置され、両シャフト3、4の径方向において下部開口42における両シャフト3、4の相対回転軸に沿う単一の縁42aと重なる。
【0025】
両シャフト3、4が検出原点位置にある時、すなわち舵角が零の時、第1開口43と磁束通過部との重なり面積と第2開口44と磁束通過部との重なり面積とは互いに等しくされている。すなわち図3、図4に示すように、両シャフト3、4が相対回転していない検出原点位置にある時、各上部開口41における両シャフト3、4の相対回転軸に沿う一つの縁41aは、各第1開口43における両シャフト3、4の相対回転軸に沿う中心と径方向において重なるように配置され、各下部開口42における両シャフト3、4の相対回転軸に沿う一つの縁42aは、各第2開口44における両シャフト3、4の相対回転軸に沿う中心と径方向において重なるように配置されている。各外方側開口43、44の周方向寸法P1は、各内方側開口41、42の周方向寸法S1および各内方側開口41、42の相互間における磁束通過部の周方向寸法S2よりも小さくされている。
【0026】
また、両シャフト3、4の径方向における第1開口43と磁束通過部との重なり面積は、両シャフト3、4が一方向に相対回転する時は増加し、両シャフト3、4が他方向に相対回転する時は減少するように、その第1開口43と上部開口41とは相対配置されている。また、両シャフト3、4の径方向における第2開口44と磁束通過部との重なり面積は、両シャフト3、4が一方向に相対回転する時は減少し、両シャフト3、4が他方向に相対回転する時は増加するように、その第2開口44と下部開口42とは相対配置されている。すなわち、各第1開口43の周方向間に各第2開口44が配置され、第1開口43と重なる内方側開口である上部開口41の縁41aと、第2開口44と重なる内方側開口である下部開口42の縁42aとは、両シャフト3、4の回転周方向においてその内方側開口の中心からみて互いに逆の側に位置するものとされている。両シャフト3、4の相対回転時において、その第1開口43と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値と、その第2開口44と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値とは互いに等しくされている。
【0027】
図2において二点鎖線βで示すように、第1コイル33の発生磁束が第1コイルホルダー31、第2筒状部材12の第1開口43、第1筒状部材11の磁束通過部を通過することで、その第1コイルホルダー31および第1筒状部材11の磁束通過部を構成要素として含む第1磁気回路が構成される。また、第2コイル34の発生磁束が第2コイルホルダー32、第2筒状部材12の第2開口44、第1筒状部材11の磁束通過部を通過することで、その第2コイルホルダー32および第2筒状部材12の磁束通過部を構成要素として含む第2磁気回路が構成される。
【0028】
上記構成において、トルク伝達時における両シャフト3、4の相対回転により、磁性材製の第1筒状部材11の磁束通過部に形成された内方側開口41、42と、導電性を有する非磁性材製の第2筒状部材12の磁束規制部に形成された外方側開口43、44との重なり状態が変化する。これにより、両シャフト3、4の径方向における外方側開口43、44と磁束通過部との重なり面積が両シャフト3、4の相対回転に応じて変化する。その第1筒状部材11は磁性材製であり、その第2筒状部材12は非磁性材製であるので、その外方側開口43、44と磁束通過部との重なり面積の変化によって、その磁束通過部の通過磁束が変化する。また、コイル33、34の磁束発生に基づき生じる交番磁界内で導電性の第1筒状部材11に生じる渦電流によっても、その磁束通過部に至る磁束が遮られる。これにより、その磁束通過部の通過磁束を、その重なり面積の変化に応じて変化させることができる。その面積変化は伝達トルクに対応する両シャフト3、4の相対回転に対応する。その磁束変化に基づく電磁誘導によりコイル33、34出力が変化するものとされ、そのコイル出力の変化に基づき伝達トルクが検出される。
【0029】
また、上記構成においては、トルク伝達時に両シャフト3、4が一方向に相対回転すると、その相対回転量に応じて第1開口43と磁束通過部との重なり面積が増加し、第2開口44と磁束通過部との重なり面積が減少する。また、トルク伝達時に両シャフト3、4が他方向に相対回転すると、その相対回転量に応じて第1開口43と磁束通過部との重なり面積が減少し、第2開口44と磁束通過部との重なり面積が増加する。各重なり面積の変化に応じて磁束通過部を通過する磁束が変化する。また、両シャフト3、4の相対回転時において、その第1開口43と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値と、その第2開口44と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値とは互いに等しくされている。よって、第1開口43と磁束通過部との重なり面積の変化に応じた磁束通過部の通過磁束の変化と、第2開口44と磁束通過部との重なり面積の変化に応じた磁束通過部の通過磁束の変化との差に基づき、両シャフト3、4により伝達されるトルクを検出でき、トルク検出感度が増大する。また、両シャフト3、4が一方向に相対回転した時と、他方向に相対回転した時の何れの場合にも、その相対回転量に応じたトルクを検出できる。しかも、温度が変動した場合、第1開口43と重なる磁束通過部を通過する磁束と、第2開口44と重なる磁束通過部を通過する磁束とは同じだけ変化するので、両磁束変化の差に基づきトルクを検出することで温度変動による検出トルクの変動を相殺できる。
【0030】
本実施形態では、各コイル33、34は、ハウジング2の外面側に取り付けられるプリント基板35に配線を介して接続される。そのプリント基板35に、図5に示すトルク検出回路が形成されている。その回路において、第1コイル33は抵抗45を介して発振器46に接続され、第2コイル34は抵抗47を介して発振器46に接続され、各コイル33、34は差動増幅回路48に接続される。これにより、両シャフト3、4間でのトルク伝達によりトーションバー8が捩れることで両シャフト3、4が弾性的に相対回転し、その伝達トルクに応じて外方側開口43、44と磁束通過部との重なり面積が変化し、その重なり面積の変化により磁束通過部の通過磁束が変化することで、第1、第2コイル33、34の出力が変化する。その第1開口43と重なる磁束通過部の通過磁束の変化と、第2開口44と重なる磁束通過部の通過磁束の変化との差に対応する差動増幅回路48の出力に基づき、両シャフト3、4により伝達されるトルクが検出される。その差動増幅回路48から出力される伝達トルクに対応した信号に応じて駆動されるモータ等の図外アクチュエータにより操舵補助力が付与される。その操舵補助力の付与機構は公知の構成を採用できる。
【0031】
上記構成によれば、磁性材製の第1筒状部材11における磁束通過部の内周と、第1シャフト3の外周との間に、環状の隙間δが形成されているので、コイル33、34まわりの磁気回路から第1シャフト3への磁束の漏れを、その隙間δにより遮断することができる。その第1筒状部材11と第1シャフト3とは別部材であるので、その第1筒状部材11としては磁気回路を構成する上で必要とされる磁気特性を充足するものを選定でき、その第1シャフト3としては、トルクを伝達する構造部材として必要な機械的特性を充足するものを選定できる。また、その第1シャフト3を第1筒状部材11に圧入することで、その第1筒状部材11を第1シャフト3に固定するための部材が不要で部品点数を削減できる。さらに、その第1筒状部材11における磁束通過部の内周と第1シャフト3の外周との間の環状の隙間δにより、その圧入荷重を低減し、圧入荷重による第1筒状部材11の歪み発生を防止し、検出精度低下を阻止できる。
【0032】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、第1シャフト3の一端側をステアリングギアに接続し、第2シャフト4の他端側をステアリングホイールに接続するようにしてもよい。また、両シャフト3、4の相対回転軸方向に沿って並列する上部開口41と下部開口42とを、両開口間の仕切り部分をなくすことで一つの内方側開口としてもよい。また、本発明のトルクセンサをステアリング装置以外においてトルクを検出するために用いてもよい。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、検出効率を向上し、トルクの検出だけでなく伝達を行う上で必要な優れた磁気特性と機械的特性とを併せ持ち、部品点数が少なく、検出精度、検出感度の良いトルクセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のトルクセンサの断面図
【図2】本発明の実施形態のトルクセンサの要部の断面図
【図3】本発明の実施形態のトルクセンサの要部の横断面図
【図4】本発明の実施形態のトルクセンサの筒状部材の部分展開図
【図5】本発明の実施形態のトルク検出回路を示す図
【符号の説明】
1 トルクセンサ
3 第1シャフト
4 第2シャフト
11 第1筒状部材
12 第2筒状部材
31、32 コイルホルダー
33 第1コイル
34 第2コイル
41 上部開口(内方側開口)
42 下部開口(内方側開口)
43 第1開口(外方側開口)
44 第2開口(外方側開口)
Claims (2)
- 第1シャフトと、
その第1シャフトに同軸心かつ弾性的に相対回転可能に連結される第2シャフトと、
その第1シャフトに同軸心かつ同行回転するように連結される磁性材製の第1筒状部材と、
その第2シャフトに同軸心かつ同行回転するように連結される導電性を有する非磁性材製の第2筒状部材と、
その第2筒状部材の外周を囲むように配置されると共に、交番磁界を生じるように磁束を発生させるコイルとを備え、
その第1筒状部材は、その第1シャフトの外周を囲むと共に前記コイルの発生磁束の通過位置に配置される磁束通過部を有し、
その第2筒状部材は、その第1筒状部材の磁束通過部を囲むと共に前記コイルの発生磁束の通過位置に配置される磁束規制部を有し、
その磁束通過部に内方側開口が形成され、
その磁束規制部に外方側開口が形成され、
その第1筒状部材の径方向の厚さは、その第2筒状部材の径方向の厚さよりも大きくされ、
その第1シャフトの外周に周溝が形成され、
その周溝の両縁部の外周に第1筒状部材の内周が圧入されることで、その磁束通過部の内周と第1シャフトの外周との間に、その内方側開口に通じる環状の隙間が形成され、
両シャフトの径方向における外方側開口と磁束通過部との重なり面積が両シャフトの相対回転に応じて変化するように、その外方側開口と内方側開口とは両シャフトの径方向において部分的に重なるように配置され、
前記コイルとして、両シャフトの相対回転軸方向に沿って並列する同一仕様の第1コイルと第2コイルとを備え、
前記外方側開口として、両シャフトの相対回転軸方向における間隔をおいて配置される第1開口と第2開口とを備え、
その第1コイルは第1開口を通過する磁束を発生する位置に配置され、その第2コイルは第2開口を通過する磁束を発生する位置に配置され、
その第1開口と内方側開口とは、両シャフトが一方向に相対回転する時は第1開口と磁束通過部との重なり面積が増加し、両シャフトが他方向に相対回転する時は第1開口と磁束通過部との重なり面積が減少するように相対配置され、
その第2開口と内方側開口とは、両シャフトが一方向に相対回転する時は第2開口と磁束通過部との重なり面積が減少し、両シャフトが他方向に相対回転する時は第2開口と磁束通過部との重なり面積が増加するように相対配置され、
両シャフトの相対回転時において、その第1開口と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値と、その第2開口と磁束通過部との重なり面積の変化の絶対値とは互いに等しくされ、
その第1開口との重なり面積の変化に応じた磁束通過部の通過磁束の変化と、その第2開口との重なり面積の変化に応じた磁束通過部の通過磁束の変化との差に基づき、両シャフトにより伝達されるトルクが検出され、
前記第1開口は、前記第2筒状部材の周方向における等間隔をおいて並列するように複数形成され、
前記第2開口は、前記第2筒状部材の周方向における等間隔をおいて並列するように複数形成され、
前記内方側開口は、前記第1筒状部材の周方向における等間隔をおいて並列するように複数設けられ、
各内方側開口の周方向寸法は、各内方側開口相互間における磁束通過部の周方向寸法よりも大きくされると共に、各外方側開口の周方向寸法よりも大きくされ、
各内方側開口相互間における磁束通過部の周方向寸法は、各外方側開口の周方向寸法より も大きくされ、
各第1開口の周方向間に各第2開口が配置され、
トルク検出範囲に対応する両シャフトの相対回転範囲において、各外方側開口が重なる内方側開口における両シャフトの相対回転軸に沿う縁は単一とされ、
第1開口が重なる内方側開口の縁と、第2開口が重なる内方側開口の縁とは、両シャフトの回転周方向において、その内方側開口の中心からみて互いに逆の側に位置するものとされているトルクセンサ。 - その外方側開口は、両シャフトの回転軸方向に平行な縁と回転周方向に平行な縁とを有する4辺形に沿う形状を有し、
その内方側開口は、両シャフトの相対回転軸に沿う縁を有すると共に、両シャフトの相対回転軸方向において外方側開口よりも長寸とされ、
その外方側開口は、検出範囲に対応する両シャフトの相対回転範囲では、両シャフトの相対回転軸方向において内方側開口の両端間に配置され、
両シャフトが相対回転していない検出原点位置にある時、その内方側開口における両シャフトの相対回転軸に沿う縁は、その外方側開口における両シャフトの相対回転軸に沿う中心と、径方向において重なるように配置されている請求項1に記載のトルクセンサ。
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