JP3733514B2 - トンネル拡幅方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は既設トンネルを拡幅するためのトンネル拡幅方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
既設の道路トンネルにおける交通量が増大したような場合、既設トンネルを1車線から2車線へ、あるいは2車線から3車線へと拡幅したい場合がある。既設トンネルを拡幅するための有効適切な手法は現在までのところ確立されておらず、またそのための有効な装置も開発されていないが、一般的には次のような手法が考えられている。
【0003】
すなわち、既設トンネルを拡幅するためには、図4(a)に示すように既設トンネル1の両側および上方を掘削してより大断面の拡幅トンネル2とするという手法が一般的であり、そのため(b)に示すようなガントリータイプの掘削機3を用いて、既設覆工4(一次覆工4aおよび二次覆工4b)を解体撤去しつつその周囲の掘削を行い、拡幅トンネル2としての新覆工5(一次覆工5aおよび二次覆工5b)を施工するという工法が考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、既設トンネル1を拡幅する場合にはその既設トンネル1を使用しながら、つまり既設トンネル1内における一般車両の通行を確保しながら作業を行うことが要求されるため、上記工法では(b)に示すように作業区間内に一般車両防護用のプロテクター6を設置する必要がある。そのため、上記の掘削機3におけるガントリーはプロテクター6を跨ぐような大型のものとしなければならず、そのガントリーの寸法に制約されて拡幅断面を必要以上に大きくしなければならない場合もあり、しかもプロテクター6を設けるとはいえ一般車両が掘削機3の下方を通過するので通行止めを含む大掛かりな交通規制を頻繁に行う必要が生じることが通常である。
【0005】
以上のようなことから、現時点では既設トンネルを拡幅するよりは大断面のトンネルを新設する方が経済的であり、それがために既設トンネルを拡幅するのは何らかの事情で新設トンネルを設けることができない場合に限られているのが実状である。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明の目的は既設トンネルを拡幅するための有効な方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、既設トンネルの片側の側部のみを拡幅するためのトンネル拡幅方法であって、トンネル軸方向に移動可能な状態で拡幅部に配置されるガントリーに、既設覆工を解体撤去するための屈曲ブーム式の破砕機と、地山を穿孔するためのドリフターと、新覆工用の支保工を設置するためのエレクターと、トンネル内面にコンクリートを吹き付けるためのコンクリート吹き付け装置とを搭載してなるトンネル拡幅装置を用いて、該トンネル拡幅装置を拡幅部において漸次前進させつつ、既設覆工を解体撤去し、地山を穿孔し、新覆工用の支保工を設置し、拡幅部の内面にコンクリートを吹き付けることにより、既設トンネルの側部に対する拡幅を行うものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の発明のトンネル拡幅方法において、前記トンネル拡幅装置における前記ガントリー上に資機材を取り込むためのクレーンを具備し、該クレーンによりガントリー上に資機材を取り込みつつ拡幅を行うものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明の発明のトンネル拡幅方法において、前記トンネル拡幅装置に作業員が搭乗するケージマニピュレーターを具備し、該ケージマニピュレータに作業員が搭乗して目視点検等の各種作業を行いつつ拡幅を行うものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜図3は本発明のトンネル拡幅方法の実施形態を示すものである。本実施形態の拡幅工法は図1に示すように既設トンネル1の片側だけを拡幅するものである。このような片側だけを拡幅する工法は、図4に示した従来一般の手法のように既設トンネル1の周囲全体つまり両側および上部をそれぞれ拡幅する場合に比較すると、拡幅部が一カ所に集約されるので作業効率に優れ、また以下で説明する拡幅装置10を使用することで既設トンネル1をそのまま使用しながらの作業も容易に可能となるので交通規制も最少限で済むものとなる。
【0011】
本実施形態の拡幅工法において用いる拡幅装置10は、トンネル拡幅に必要な作業のうち、専用機を行うことが最も効率的である切羽掘削と切羽破砕以外の作業の殆どを行うためのもので、既設トンネル1の片側の拡幅部においてトンネル軸方向に移動可能に配置されるガントリー11に、既設覆工4を解体撤去するための屈曲ブーム式の破砕機12と、地山を穿孔するための2台のドリフター13と、新覆工5の支保工を設置するためのエレクター14と、トンネル内面にコンクリートを吹き付けるためのコンクリート吹き付け装置15と、ガントリー11上に資機材を取り込むためのクレーン16と、作業員が搭乗するケージマニピュレーター17とを搭載してなるものである。
【0012】
本例におけるガントリー11は、拡幅部の断面形状と寸法に対応してその形態と寸法が設定された門形のフレーム構造体であって、その内側空間を他の施工機械すなわち切羽掘削のための掘削機や切羽破砕のためのブレーカー等が自由に通過し得るようになっている。符号18は走行車輪、19はアウトリガーであり、工事進捗に伴い漸次前方へ移動することができるようになっている。またこのガントリー11には上記の各搭載機器の駆動源や制御装置類も合わせて搭載されているものである。
【0013】
破砕機12は、屈曲かつ伸縮可能なブームの先端部にペンチ式のヘッドを有するものであって、ガントリー11の前部から前方に突出して設けられて、ブームを自由に旋回させることでヘッドにより既設覆工4のコンクリートを破砕するとともに鋼製支保工を切断可能なものである。
【0014】
ドリフター13は油圧式の穿孔機であって、ガントリー11の前部および上部にそれぞれ設けられ、切羽破砕のための穿孔やロックボルト打設のための穿孔を形成するために使用されるものである。
【0015】
エレクター14は、旋回アームの先端部に支保工を把持可能なクランパーが設けられたもので、クレーン16によりガントリー11上に取り込まれた支保工を把持してその設置作業を行うものである。
【0016】
コンクリート吹き付け装置15は、アームの先端部にノズルを設けたもので、図2に示すようにトンネル内面にコンクリートを吹き付けて覆工コンクリートを形成するものであり、その全体が前後方向に移動可能な状態でガントリー11上に搭載されていて、非使用時は図3に示すように後退してガントリー11上に格納されるようになっている。
【0017】
クレーン16はガントリー11の後部に設けられ、支保工その他の各種資機材を吊り上げてガントリー11上に取り込むためのものである。
【0018】
ケージマニピュレータ17は、図3に示すように作業員が搭乗するケージをアームの先端部に設けたもので、コンクリート吹き付け装置に隣接してそれと同じくその全体が前後方向に移動可能な状態でガントリー11上に搭載されており、非使用時は図2に示すように後退してガントリー11上に格納されるようになっている。
【0019】
上記構成の拡幅装置10は、破砕機12による既設覆工4の破砕、エレクター14による支保工設置、ドリフター13による切羽やトンネル内面に対する穿孔、コンクリート吹き付け装置15によるコンクリート吹き付け、ケージマニピュレーター17を用いての作業員による高所での軽作業や目視点検作業等を実施できる多機能なものであり、したがってこの拡幅装置10を、切羽掘削のための掘削機や切羽破砕のためのブレーカーと併用することでトンネル拡幅作業を極めて効率的に行うことができる。勿論、それらの掘削機やブレーカーはガントリー11の内側空間を支障なく通過できるので、この拡幅装置10が掘削機やブレーカーの移動の障害になることはない。
【0020】
そして、この拡幅装置10は既設トンネル1の片側の拡幅部を漸次前進することのみで上記の各種作業を行い得るものであるから、既設トンネル1における一般車両の通行の支障になることはなく、既設トンネル1をそのまま使用しながらの作業が可能であり、交通規制は最少限度で済む。
【0021】
また、図4に示した従来のガントリータイプの掘削機3は、既設トンネル1の両側部および上部を掘削できかつ既設トンネル1内のプロテクター6を跨ぐことができるような大型のものとする必要があり、それがために拡幅トンネル2の断面を必要以上に大きくしなければならない場合もあったが、本実施形態の拡幅装置10におけるガントリー11は既設トンネル1の片側のみを拡幅できる大きさで良く、かつ既設トンネル1の側部を移動するのみであるからプロテクター6を跨ぐ必要はなく、したがってこの拡幅装置10は図4に示したガントリータイプの掘削機3に比較して十分に小型化を図ることができ、拡幅トンネル2の断面も必要以上に大きくすることはない。
【0022】
なお、本発明の拡幅工法において用いる拡幅装置は、ガントリー11に少なくとも破砕機12、ドリフター13、エレクター14、コンクリート吹き付け装置15を搭載すれば良く、トンネルの規模や形態によっては上記実施形態において設けたクレーン16およびケージマニピュレーター17は省略しても良い。
【0023】
また、逆に必要に応じてさらに他の各種機器を具備しても良く、切羽掘削のための掘削機や切羽破砕のためのブレーカーをも搭載することも不可能ではない。そのようにすればその拡幅装置のみでトンネル拡幅作業の全てを行い得ることになるが、一般的には切羽掘削や切羽破砕は専用機を使用する方がより効率的であるし、それらを搭載するためにはガントリーの大型化が必要となる場合もあるので、上記実施形態のように切羽掘削と切羽破砕は専用機により行うこととして、本発明の拡幅装置ではそれ以外の作業を行うに留めることが現実的である。
【0024】
【発明の効果】
請求項1の発明は、拡幅部に配置されるガントリーに、既設覆工を解体撤去するための屈曲ブーム式の破砕機と、地山を穿孔するためのドリフターと、新覆工用の支保工を設置するためのエレクターと、トンネル内面にコンクリートを吹き付けるためのコンクリート吹き付け装置とを搭載したトンネル拡幅装置を用いて既設トンネルの片側の側部のみを拡幅するものであるから、拡幅作業の大半を効率的に実施することができることはもとより、装置全体の十分な小形簡略化を実現でき、既設トンネルを使用しながらの施工が可能なものであり、既設トンネルの片側のみを拡幅する工法として最適である。
【0025】
請求項2の発明は、上記に加え、ガントリー上に資機材を取り込むためのクレーンを具備したトンネル拡幅装置を用いるから、支保工等の資機材を容易にかつ効率的に取り扱うことができる。
【0026】
請求項3の発明は、上記に加え、作業員が搭乗するケージマニピュレーターを具備したトンネル拡幅装置を用いるから、トンネル内面に対する作業員による軽作業や目視点検作業等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態のトンネル拡幅工法において用いるトンネル拡幅装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】 同、側面図(図1におけるII−II線視図)である。
【図3】 同、側面図(図1におけるIII−III線視図)である。
【図4】 既設トンネルを拡幅する場合の従来一般の工法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 既設トンネル
2 拡幅トンネル
4 既設覆工
4a 一次覆工
4b 二次覆工
5 新覆工
5a 一次覆工
5b 二次覆工
10 トンネル拡幅装置
11 ガントリー
12 破砕機
13 ドリフター
14 エレクター
15 コンクリート吹き付け装置
16 クレーン
17 ケージマニピュレーター
Claims (3)
- 既設トンネルの片側の側部のみを拡幅するためのトンネル拡幅方法であって、トンネル軸方向に移動可能な状態で拡幅部に配置されるガントリーに、既設覆工を解体撤去するための屈曲ブーム式の破砕機と、地山を穿孔するためのドリフターと、新覆工用の支保工を設置するためのエレクターと、トンネル内面にコンクリートを吹き付けるためのコンクリート吹き付け装置とを搭載してなるトンネル拡幅装置を用いて、該トンネル拡幅装置を拡幅部において漸次前進させつつ、既設覆工を解体撤去し、地山を穿孔し、新覆工用の支保工を設置し、拡幅部の内面にコンクリートを吹き付けることにより、既設トンネルの側部に対する拡幅を行うことを特徴とするトンネル拡幅方法。
- 請求項1記載のトンネル拡幅方法において、前記トンネル拡幅装置における前記ガントリー上に資機材を取り込むためのクレーンを具備し、該クレーンによりガントリー上に資機材を取り込みつつ拡幅を行うことを特徴とするトンネル拡幅方法。
- 請求項1または2記載のトンネル拡幅方法において、前記トンネル拡幅装置に作業員が搭乗するケージマニピュレーターを具備し、該ケージマニピュレータに作業員が搭乗して目視点検等の各種作業を行いつつ拡幅を行うことを特徴とするトンネル拡幅方法。
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