JP3732559B2 - 陰極線管の黒鉛導電膜形成方法 - Google Patents

陰極線管の黒鉛導電膜形成方法 Download PDF

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  • Formation Of Various Coating Films On Cathode Ray Tubes And Lamps (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、陰極線管の外囲器の内面または外面の黒鉛導電膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
陰極線管の一例として、図4にカラー受像管を示す。このカラー受像管は、周辺部にスカート部1が設けられたパネル2とこのパネル2に一体に接合された漏斗状のファンネル3とからなる外囲器を有する。そのパネル2の内面に3色蛍光体層からなる蛍光体スクリーン4が形成され、この蛍光体スクリーン4に対向して、その内側にシャドウマスク5が配置されている。このシャドウマスク5は、パネル2のスカート部1に設けられた複数個のスタッドピン6と、シャドウマスク5に取付けられて各スタッドピン6に係止する複数個の弾性支持体7とにより、パネル2の内側に支持されている。一方、ファンネル3のネック8内に電子銃9が配設されている。
【0003】
さらにこのカラー受像管においては、ファンネル3の径大部10内面からネック8の隣接部内面にかけて、黒鉛を主成分とする導電膜11が形成されている。また上記スタッドピン6まわりのスカート部1内面には、ファンネル3の径大部10に設けられた陽極端子12、導電膜11およびシャドウマスク5に取付けられて導電膜11に圧接するPFコネクタ13を介してシャドウマスク5に供給される陽極高電圧を蛍光体スクリーン4に供給するための黒鉛を主成分とする導電膜14が形成されている。さらにファンネル3の径大部10の外面にも、陽極端子12付近を除いて、黒鉛を主成分とする導電膜15が形成されている。
【0004】
このカラー受像管の導電膜形成方法として、従来よりスプレー法、ローラーコート法、刷毛塗り法などにより、黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布する方法がある。
【0005】
そのスプレー法には、エアスプレーガンを用いて塗布する方法とエアレススプレーガンを用いて塗布する方法とがある。このスプレー法により塗布する方法は、塗膜の均一性にはすぐれているが、基体への密着性が劣る。また塗布液が空気中に分散し、環境を汚染するため、回収装置が必要となる。また塗布しない部分には、カバーなどを用いてマスキングする必要があり、塗布作業が繁雑になる。
【0006】
そのため、最近はスプレー法のかわりに、ローラーコート法によりスポンジローラーを用いて塗布する方法が採用されている。図5(a)および(b)に、それぞれそのスポンジローラー17を用いて、ファンネル3の径大部10内面および外面に黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布する方法を示す。この塗布方法では、スポンジローラー17に黒鉛を主成分とする導電塗料を一定量浸込ませ、このスポンジローラー17をロボットのハンドに取付け、ファンネル3の径大部10内面または外面に押付けて移動させることによりおこなわれる。この場合、スポンジローラー17は、ファンネル3の径大部10内面または外面との接触により回転するが、より均一な塗膜を得るために、スポンジローラー17を回転駆動しながら塗布する方法もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、陰極線管の黒鉛導電膜形成方法として、スポンジローラーに黒鉛を主成分とする導電塗料を浸込ませ、このスポンジローラーを、たとえばファンネルの径大部内面または外面に押付けて移動させることにより塗布する方法がある。この場合、スポンジローラーは、ファンネルの径大部内面または外面との接触により回転するが、より均一な塗膜を得るために、スポンジローラーを回転駆動しながら塗布する方法もある。
【0008】
しかしこの塗布方法は、スポンジローラー内に空気が含まれ、ローラーに浸込ませた導電塗料を塗布するとき、図6(a)に示すように、ローラーに含まれている空気が、導電塗料19とともに気泡20となって塗布されることがある。このような現象は、特にスポンジローラーを回転駆動しながら塗布する場合に発生しやすい。この導電塗料19とともに塗布された気泡20は、やがて破泡して空気中に放出されるが、その破泡時期が遅いため、上記塗布された導電塗料19を乾燥して、たとえば導電膜11を形成する過程で、同(b)に示すように、破泡部分に突起21が生ずる。
【0009】
このように突起21が生ずると、特にファンネル外面の導電膜については、カラー受像管をTVセットに組込むときのアースバンドの接触などにより脱落し、セット内に組込まれた回路基板のショートの原因となる。またファンネル内面の導電膜についても、耐電圧特性の劣化やシヤドウマスクの孔詰まりの原因となる。
【0010】
そのため、スポンジローラーで塗布する場合は、気泡の発生しにくい導電塗料が望まれる。このような導電塗料として、従来表面張力の低い導電塗料あるいは粘度を下げて消泡効果をもたせた導電塗料や、消泡剤を添加した導電塗料が開発されている。しかしこのような導電塗料を用いても、気泡の発生を完全に抑えることはむつかしく、突起が生ずるという問題がある。
【0011】
この発明は、上記問題点に鑑みてなされたものあり、塗布された導電塗料の塗膜中に気泡が含まれても、乾燥後の導電膜に突起が生じない黒鉛導電膜形成方法を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
陰極線管のパネルあるいはファンネルの内面またはファンネルの外面に黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布し、乾燥して導電膜を形成する陰極線管の黒鉛導電膜形成方法において、導電塗料塗布後乾燥開始までの期間に、塗布された導電塗料の塗膜に35〜150℃の温風を0.1〜1m/secの速度で吹付けて塗膜に含まれた気泡を除去し、所定時間静置した後、約100℃の雰囲気で強制乾燥するようにした。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態をカラー受像管について説明する。
【0015】
カラー受像管の黒鉛を主成分とする導電膜は、図4に示したように、パネル2については、スカート部1に設けられたスタッドピン6のまわりに塗布形成され、ファンネル3については、その径大部10内面からネック8の隣接部内面、および径大部10外面に陽極端子12付近を除いて塗布形成されている。
【0016】
一般にカラー受像管は、あらかじめ分離形成されたパネルおよびファンネルにそれぞれ所定の管内部材を形成配置したのち、それらを一体に接合することにより製造される。図1(a)に示すように、パネル2のスタッドピン6のまわりの導電膜14については、写真印刷法によりパネル2の内面に3色蛍光体層30を形成し、この3色蛍光体層30の背面からパネル2のスカート部1の内面にかけて、スパッター法によりアルミニウム蒸着膜31を蒸着して蛍光体スクリーン4を形成したのち、たとえば刷毛塗りにより、同(b)に示すように、スカート部1に設けられたスタッドピン6のまわりに少なくとも一部がスカート部1の内面に蒸着されたアルミニウム蒸着膜31と重なるように、黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布したのち、乾燥することにより形成される。この導電膜14は、スタッドピン6とアルミニウム蒸着膜31とを電気的に接続する。なお、シャドウマスク5は、上記導電膜14形成後、シャドウマスク5に取付けられた弾性支持体7をスタッドピン6に係止することにより装着される。
【0017】
一方、図2に示すように、ファンネル3の内面の導電膜11については、パネルと接合する前にローラーコート法により黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布したのち、乾燥することにより形成される。また外面の導電膜については、パネルとファンネルとを接合し、外囲器内を真空排気してカラー受像管を完成したのち、同じくローラーコート法により黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布したのち、乾燥することにより形成される。このローラーコート法によるファンネル3の内外面に対する導電塗料の塗布は、スポンジローラーに黒鉛を主成分とする導電塗料を一定量浸込ませ、このスポンジローラーをたとえばロボットのハンドに取付け、ファンネル3の内面または外面にこのスポンジローラーを押付けて移動、あるいは押付けかつ回転駆動しながら移動することによりおこなわれる。
【0018】
特にこの例の導電膜形成方法では、図3に示すように、カラー受像管の所定部分に黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布したのち、その塗膜に35〜150℃の温風を0.1〜1m/sec の速度で吹付ける。その後、所定時間静置したのち、約100℃の雰囲気で強制乾燥する。上記導電塗料塗布後の温風吹付けは、塗布された導電塗料の自然乾燥が始まる前におこなう必要があり、導電塗料塗布後、少なくとも数秒以内におこなうことが望まれる。また温風吹付け後、強制乾燥までの静置時間は、塗膜の安定化のため、数十秒程度の放置が望まれる。
【0019】
上記のように黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布したのち、その塗膜に35〜150℃の温風を吹付けると、塗膜中に気泡が生じても、温風の吹付けによる塗膜の粘度低下や吹付けによる衝撃などにより、塗膜の粘度が低く、塗布された導電塗料が流動しやすい状態で破泡するため、その後の静置によって塗膜が安定化し、従来の導電膜のように破泡部分に突起を生ずることなく、平滑な導電膜とすることができる。
【0020】
表1に、スポンジローラーを用いて黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布したのち、空気を吹付けることなく静置した場合および常温、50℃、80℃、150℃の温風を吹付けた場合について、塗膜中の気泡の消失割合いを実験的に測定した結果を示す。この表1に示したように、常温よりも高い温風を吹付けることにより、塗膜から効果的に気泡をなくすことができる。
【0021】
【表1】
Figure 0003732559
なお、上記実施の形態では、カラー受像管の黒鉛を主成分とする導電膜の形成方法について説明したが、この発明は、カラー受像管以外の陰極線管の黒鉛を主成分とする導電膜の形成にも適用して、同様の結果が得られる。
【0022】
【発明の効果】
陰極線管の所定部分に黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布したのち、その塗膜に温風を、好ましくは35〜150℃の温風を吹付けると、塗膜中に含まれる気泡を効果的に除去することができ、従来の導電膜のように破泡部分に突起を生じない平滑な導電膜とすることができる。したがってこのような方法により黒鉛を主成分とする導電膜を形成すると、従来上記突起の脱落により生じた回路基板のショートや耐電圧特性の劣化を防止でき、またカラー受像管については、シャドウマスクの電子ビーム通過孔の孔詰まりによる画質の劣化を防止できる。さらに気泡の発生しにくい導電塗料の選定も不要となり、信頼性の高い陰極線管を安定に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)および(b)はそれぞれこの発明の一実施の形態であるカラー受像管のパネルのスタッドピンまわりの導電膜を説明するための図である。
【図2】同じくカラー受像管のファンネル内面の導電膜を説明するための図である。
【図3】上記カラー受像管の導電膜の形成方法を説明するための図である。
【図4】カラー受像管の構成を示す図である。
【図5】図5(a)はカラー受像管のファンネル内面に対する従来の導電塗料塗布方法を説明するための図、図5(b)はファンネル外面に対する従来の導電塗料塗布方法を説明するための図である。
【図6】図6(a)および(b)はそれぞれ従来の導電塗料塗布方法の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
2…パネル
3…ファンネル
4…蛍光体スクリーン
6…スタッドピン
11…黒鉛を主成分とする導電膜
14…黒鉛を主成分とする導電膜
15…黒鉛を主成分とする導電膜
21…黒鉛料乾燥後に生じる突起

Claims (1)

  1. 陰極線管のパネルあるいはファンネルの内面またはファンネルの外面に黒鉛を主成分とする導電塗料を塗布し、乾燥して導電膜を形成する陰極線管の黒鉛導電膜形成方法において、
    導電塗料塗布後乾燥開始までの期間に、塗布された導電塗料の塗膜に35〜150℃の温風を0.1〜1m/secの速度で吹付けて上記塗膜に含まれた気泡を除去し、所定時間静置した後、約100℃の雰囲気で強制乾燥することを特徴とする陰極線管の黒鉛導電膜形成方法。
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