JP3731013B2 - パラジクロロベンゼン固形物及びその製造方法並びにパラジクロロベンゼン製剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、パラジクロロベンゼンを主成分とする固形物及びその製造方法並びにこのパラジクロロベンゼンを主成分とする製剤に係り、特に、内部に種々の添加剤が略均一な分散状態で封じ込められたパラジクロロベンゼンの固形物及びその製造方法並びに製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
パラジクロロベンゼンは強力な防虫及び防臭作用を有し、その錠剤は衣料品等の防虫剤やトイレ等の防臭剤として用いられている。このパラジクロロベンゼン錠剤は、パラジクロロベンゼン結晶の一定量を打錠して所定の形状、例えばタブレット状、ボール状あるいは棒状等に成型したものであり、この錠剤を衣料品等と共にタンス等の収納具内に入れておくと、この錠剤からパラジクロロベンゼンが昇華してその気体成分が収納具内に揮散し、防虫効果を発揮し、また、トイレ等に設置すれば防臭効果を発揮する。
【0003】
しかるに、このパラジクロロベンゼンは独特の臭気を有し、通常の使用条件でも気体成分の揮散量が多くなると鼻を突く刺激臭となる。このため、この刺激臭を軽減させる方法として、フレーク状のパラジクロロベンゼン固形物の表面に液体状の香料成分を噴霧付着させ、粉砕し打錠し成型して錠剤として用いられている。これによって、パラジクロロベンゼンの気体成分と共に揮散する香料成分によりパラジクロロベンゼンの刺激臭を緩和するものである。
【0004】
しかし、この場合には、香料成分が専らフレーク状のパラジクロロベンゼンの表面に付着しているだけであるため、先にこの香料成分が揮散してしまい、長期に亘って芳香を発散させることが難しく、使用初期には香料成分の芳香が強く、使用に従ってこの芳香が弱くなり、ついにはパラジクロロベンゼン特有の刺激臭のみになってしまう、という問題がある。
【0005】
また、従来においては、固体状のパラジクロロベンゼン中に添加できる香料成分の添加量は、通常0.01〜0.3重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%の範囲とされている。これは、添加量が0.01重量%より少ないと、パラジクロロベンゼン特有の刺激臭を緩和する効果が少なく、反対に、0.3重量%より多くなると、添加された香料成分が液体状であって常温でパラジクロロベンゼンの表面に存在するため、打錠時にこの添加剤が錠剤表面に滲み出てしまう。また、パラジクロロベンゼン錠剤の使用時に添加剤が衣料品等に付着してシミ等の原因になるからである。
【0006】
更に、パラジクロロベンゼン錠剤には、最低限その形状を保てるだけの強度が要求されるが、液体状の添加剤の濃度が高くなるとそれだけ錠剤の強度が低下し、通常0.3重量%を越えて高くなると錠剤形状を維持するだけの強度を付与するのが困難になる。そこで、この点からも、錠剤製造のためにパラジクロロベンゼン固形物中に添加可能な香料成分等の液体状添加剤の添加量は0.3重量%程度が限界であるとされていた。
【0007】
そして、パラジクロロベンゼン錠剤については、メントン等の防虫作用と防かび作用とを有する芳香物質を添加し、防虫、防かび効果を高めると共にパラジクロロベンゼン特有の刺激臭を軽減することが知られており(特開昭62−283903号公報)、また、レモングラス油、タイムホワイト油、ピメント油等の防虫作用を有する天然植物精油をパラジクロロベンゼンに1〜30重量%の割合で混合し、防虫作用の向上とパラジクロロベンゼン特有の刺激臭の軽減とを図る方法も知られている(特開平5−286818号公報)。
【0008】
しかしながら、この方法においても、フレーク状のパラジクロロベンゼン固形物の表面に0.5重量%以上の添加剤を加えているので、打錠時に滲み出しや錠剤強度の低下等の問題が発生し、錠剤中に1〜10重量%の芳香物質や天然植物精油を混入させることは困難であった。
【0009】
更に、特開平6−199605号公報においては、パラジクロロベンゼンの溶融液中に天然植物精油又はその抽出成分を溶解するか、あるいは、パラジクロロベンゼンと天然植物精油又はその抽出成分との混合物を溶融し、得られた溶融液を自然放冷するか、あるいは、氷水中で急冷することにより、パラジクロロベンゼンの固形物中に天然植物精油又はその抽出成分が封じ込められたパラジクロロベンゼン固形物及びこれを用いた製剤が提案されている。
【0010】
しかしながら、天然植物精油又はその抽出成分からなる添加剤を溶解したパラジクロロベンゼン溶融液を自然放冷して凝固させると、パラジクロロベンゼンはゆっくりと凝固し、その過程で添加剤が滲出して分離してしまい、凝固したパラジクロロベンゼン固形物中に含まれる添加剤濃度が低く、大部分の添加剤が固形物表面に滲出して付着した状態で存在し、0.5重量%以上の添加剤を用いて得られたパラジクロロベンゼン固形物を打錠しても錠剤内部には0.3重量%程度しか残存しない。また、錠剤強度も弱く、実用には耐え難かった。
【0011】
また、天然植物精油又はその抽出成分からなる添加剤を溶解したパラジクロロベンゼン溶融液を氷水中で急冷して凝固させる方法においては、得られたパラジクロロベンゼン固形物を脱水する必要が生じ、厄介な廃水処理をしなければならなくなるほか、パラジクロロベンゼン固形物中に300ppm程度の水分が不可避的に残留し、これが原因して本来白色であるべきパラジクロロベンゼン錠剤が使用時に褐変(褐色への変化)して外観や使用感を損ねるという問題が生じる。
【0012】
更にまた、パラジクロロベンゼンはその性質上保存中に固結し、塊状になって打錠時に取り扱いが困難になるので、これを防止するため、フレーク調製時又は調製されたフレークに固結防止剤を添加することが知られている。
例えば、特開昭62−148435号公報や特公昭42−1006号公報においては、添加剤として0.005〜1.0重量%の範囲で有機酸アミド等からなる固結防止剤を含むパラジクロロベンゼン溶融液をドラムフレーカーで凝固させ、表面を固結防止剤で被ったフレーク状のパラジクロロベンゼン固形物を製造する方法が開示されており、またこの際に、20℃に冷却されたバット中で0.005〜1.0重量%の固結防止剤を含んだパラジクロロベンゼン溶融液をフレーク状に凝固させることも開示されている。
【0013】
しかしながら、これらの公報には運転条件が明示されておらず、また、添加剤が固形物表面を覆うような形で残存させているので、添加剤が局在化し、初期の固結防止効果を発揮させることはできるが、保存中に添加剤が揮散してしまい、長時間に亘って十分な固結防止効果を発揮させることは困難であった。
【0014】
また、特開昭48−15836号公報には、パラジクロロベンゼンの固形物の表面に着色剤を吹き付けてパラジクロロベンゼン固形物を着色することが記載されており、更に、特公昭49−13966号公報においては、着色剤を高濃度に添加したパラジクロロベンゼンフレークと着色剤添加のない白色のパラジクロロベンゼンフレークとを混ぜ合わせて適度に着色したパラジクロロベンゼンフレークを調製する方法が提案されている。
【0015】
しかしながら、前者の方法においては、着色剤が固形物の表面にしか存在しないためにその色彩を長時間維持することは難しく、また、後者の方法においても、着色剤とパラジクロロベンゼンとの間の親和性が悪いために、パラジクロロベンゼンフレークを適度に、かつ、均一に着色することが困難であるという問題がある。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、パラジクロロベンゼンの固形物及びその製剤において、その内部に添加剤及び必要に応じて着色剤を略均一に分散せしめ、これによって防虫剤や防臭剤等として使用した際にその使用初期から使用後期に至るまでパラジクロロベンゼン及び添加剤の成分を略均等に揮散させ、また、着色を持続させることのできるパラジクロロベンゼンの固形物及びその製剤について鋭意研究を重ねた結果、添加剤を溶解したパラジクロロベンゼン溶融液を間接冷却凝固装置の冷却面を介して急冷することにより、得られた固形物内部に添加剤を略均一な分散状態で封じ込めることができることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
従って、本発明の目的は、固形物内部に添加剤を略均一な分散状態で封じ込めたパラジクロロベンゼン固形物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、固形物内部に添加剤が略均一な分散状態で封じ込められており、使用初期から使用後期に至るまでパラジクロロベンゼン及び添加剤の気体成分を略均等に揮散させることのできるパラジクロロベンゼン製剤を製造するためのパラジクロロベンゼン固形物を提供することにある。
【0018】
更に、本発明の他の目的は、このように固形物内部に添加剤が略均一な分散状態で封じ込められたパラジクロロベンゼン固形物を工業的に有利に製造するための方法を提供することにある。
更にまた、本発明の他の目的は、製剤内部に添加剤が略均一な分散状態で封じ込められており、使用初期から使用後期に至るまでパラジクロロベンゼン及び添加剤の気体成分を略均等に揮散させることのできるパラジクロロベンゼン製剤を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、植物精油、植物精油の抽出成分、動物抽出物、香料、ピレスロイド系殺虫剤及び固結防止剤から選ばれた1種又は2種以上の添加剤が固形物内部に比分散度15%以内の略均一な分散状態で封じ込められているパラジクロロベンゼン固形物である。
【0020】
また、本発明は、植物精油、植物精油の抽出成分、動物抽出物、香料、ピレスロイド系殺虫剤及び固結防止剤から選ばれた1種又は2種以上の添加剤、あるいは、この添加剤及び着色剤を溶解したパラジクロロベンゼン溶融液を、間接冷却凝固装置の冷却面を介して急冷して得られた固形物であって、その固形物内部に上記添加剤、あるいは、この添加剤及び着色剤が略均一な分散状態で封じ込められているパラジクロロベンゼン固形物である。
【0021】
また、本発明は、パラジクロロベンゼン溶融液に植物精油、植物精油の抽出成分、動物抽出物、香料、ピレスロイド系殺虫剤及び固結防止剤から選ばれた1種又は2種以上の添加剤、あるいは、この添加剤に加えて着色剤を溶解し、得られた溶解液を冷却して凝固させることにより、固形物内部に添加剤、あるいは、この添加剤及び着色剤が略均一な分散状態で封じ込められているパラジクロロベンゼン固形物を製造する方法であり、上記溶解液を、連続式間接冷却凝固装置の冷却面においてこの冷却面から成長する固体の厚さ方向平均固体成長速度1〜15 mm /分及びこの冷却面に形成される固形物の層厚0.5〜3 mm の条件で、急冷して凝固させる、パラジクロロベンゼン固形物の製造方法である。
【0022】
更に、本発明は、固形物内部に添加剤、あるいは、この添加剤及び着色剤が略均一な分散状態で封じ込められたパラジクロロベンゼン固形物を製剤化して得られたものであって、この製剤内部に添加剤、あるいは、この添加剤及び着色剤が略均一な分散状態で封じ込められているパラジクロロベンゼン製剤である。
【0023】
本発明において、原材料として使用するパラジクロロベンゼンとしては、それが防虫剤や防臭剤として製剤化可能なものであればどのような製造方法で製造されたものであってもよく、特に制限はない。
また、このパラジクロロベンゼンに添加剤や着色剤(以下「添加剤等」と略称することがある)を添加して形成されるパラジクロロベンゼン固形物の形状についても特に制限はなく、間接冷却凝固装置の冷却面から薄片状固形物として剥し採ったそのままの形状であっても、これを粉砕し、あるいは、篩等で分級して製剤化し易い形状、例えば顆粒状に調製したものであってもよい。
【0024】
本発明においては、このようなパラジクロロベンゼン固形物中に添加される添加剤としては、植物精油、植物精油の抽出成分、動物抽出物、香料、ピレスロイド系殺虫剤及び固結防止剤から選ばれた1種又は2種以上の混合物であり、最終的に製造されるパラジクロロベンゼン製剤の用途等に応じて適宜選択して単独であるいは併用して使用される。
【0025】
例えば、パラジクロロベンゼン製剤が衣料用防虫剤として使用される場合、防虫作用のある植物精油、殺菌又は防かび作用のある植物精油及び香料の3種類の成分を併用して使用すると、香料のマスキング作用によりパラジクロロベンゼン特有の刺激臭が和らげられると共に、このパラジクロロベンゼンの防虫作用と植物精油が有する防虫作用や殺菌又は防かび作用とが相乗効果を発揮し、害虫や菌又はかびから衣料をより強力に保護することができる。
【0026】
これらの添加剤のうち、植物精油、植物精油の抽出成分、動物抽出物、香料及びピレスロイド系殺虫剤のほとんどは常温液体状である。なお、植物精油の抽出成分のうちのチモール等は常温固体状であるが、パラジクロロベンゼン溶融液に溶解させて均一に分散させることができる。
【0027】
この添加剤の植物精油としては、例えば、防虫作用のあるナツメグ油、チョウジ油、セージ油、タイム油、ラベンダー油、バジル油、ヒノキ油、レモングラス油、カッシャ油、ピメント油、月桃油等や、芳香消臭作用のあるビターアーモンド油、ヒノキ油、ナツメグ油、ゼラニウム油、ラベンダー油、ライム油、ペパーミント油、ベチパー油、スイートオレンジ油、タイム油等や、殺菌又は防かび作用のあるカラシ油、西洋ワサビ油、ヒバ油、タイム油、チョウジ油、ナツメグ油、ヒノキ油等が挙げられる。
【0028】
また、植物精油の抽出成分としては、例えば、防虫作用のあるαビネン、オイゲノール、ツヨン、チモール、ヒノキチオール、シンナミックアルデヒト、カルバクロール等や、芳香消臭作用のあるベンズアルデヒト、αビネン、ゲラニオール、シトロネラール、リナロール、リモネン、メントール、酢酸リナリル、アミルシンナミックアルデヒト、アンスラニン酸メチル、イソオイゲノール、カブロン酸アリル、酢酸イソブチル、酢酸ベンジル、サリチル酸イソアミル、シトラール、デシルアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、酢酸イソアミル等や、殺菌又は防かび作用のあるチモール、カルバクロール、ビオゾール等のイソプロピルメチルフェノール類や、同じく殺菌又は防かび作用のあるアリルイソチオシアネート、トランス−4−メチルチオ−3−ブテニルイソチオシアネート、フェニルエチルイソチオシアネート等のイソチオシアネート類が挙げられる。
【0029】
更に、動物抽出物としては、例えば、ムスク、アンバーグリス、シベット等が挙げられる。また、香料としては、天然香料や合成香料が挙げられる。
そして、ピレスロイド系殺虫剤としては、例えば、エムペントリン、アレスリン、レスメトリン、フェノトリン等が挙げられる。これらの殺虫剤は、臭いが弱いことから単独又は混合して広く使用されているが、揮発性が低く、その使用初期ではパラジクロロベンゼン製剤よりも防虫効果が低いとされている。しかしながら、本発明において、添加剤の1種としてこのピレスロイド系殺虫剤を用いれば両者の相乗効果が発揮される。
【0030】
また、固結防止剤としては、例えば、ジエチレングリコールやその誘導体、ベンジルアルコールやその誘導体、有機酸アミドやその誘導体、シリコンオイル、トリエチレングリコール誘導体、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類、テトラアルコキシシラン等が挙げられる。
また、着色剤としては、例えば、アミノケトン系染料、キサンテン系顔料、フラビン系顔料等が挙げられる。これらの着色剤は常温では固体であるが、パラジクロロベンゼン融解液中に容易に溶解する。
【0031】
本発明において、パラジクロロベンゼン固形物中に添加される添加剤や着色剤の添加量については、その種類や、単一種類の添加剤等を添加するのか、あるいは、複数種類の添加剤等を添加するのか、更には、このパラジクロロベンゼン固形物を用いて調製されるパラジクロロベンゼン製剤の剤型や用途等によって異なるが、添加総量が0.001〜5重量%の範囲がよく、好ましくは0.1〜1.0重量%の範囲がよい。この添加総量が5重量%を超えると、パラジクロロベンゼン固形物やこれを用いて製造された製剤の強度が弱くなり、少しの衝撃でも固形物や製剤の形が破壊し、これら固形物や製剤の内部に封じ込められていた添加剤が表面に滲出してくる場合がある。
【0032】
更に、本発明においては、添加剤や着色剤をパラジクロロベンゼン固形物の固形物内部に加え、更に固形物表面に付着させてもよい。この固形物表面に付着させる添加剤等は、固形物内部に封じ込められた添加剤等と同じであっても、また、異なっていてもよい。そして、固形物表面に付着させる添加剤等の付着量については、打錠成型する都合上0.3重量%以下であるのがよい。このように、固形物表面にも添加剤等を付着させることにより、これを製剤化して、特に打錠成型して得られた製剤(特に錠剤)中により多くの添加剤等を含有せしめることができる。
【0033】
次に、本発明のパラジクロロベンゼン固形物を製造する方法は、基本的には、パラジクロロベンゼン溶融液に植物精油、植物精油の抽出成分、動物抽出物、香料、ピレスロイド系殺虫剤及び固結防止剤から選ばれた1種又は2種以上の添加剤、あるいは、この添加剤に加えて着色剤を溶解し、得られた溶解液を間接冷却凝固装置の冷却面で急冷して凝固させることにあり、それが回分式であっても、連続式であってもよい。
【0034】
ここで、パラジクロロベンゼン溶融液に添加剤や着色剤を溶解する方法としては、パラジクロロベンゼンの融点が53℃であるので、パラジクロロベンゼンを53〜120℃、好ましくは60〜100℃に加熱して溶融させ、この溶融液中に所定の添加剤等を添加して溶解させてもよく、また、パラジクロロベンゼンと所定の添加剤等を予め混合し、この混合物を53〜120℃、好ましくは60〜100℃に加熱して溶融させてもよい。そして、この際に、放熱による凝固を防ぐため、スチームや温水等の熱源を用いて外部から装置全体又は一部を保温しておくのが好ましい。
【0035】
このようにして得られた溶解液を急冷して凝固させるための間接冷却凝固装置としては、それが冷却面を有して急冷可能なものであればよく、例えばディップフィードタイプ、サイドフィードタイプ、トップフィードタイプ等のドラムフレーカーや、ベルトフレーカー等を挙げることができ、経済性の点から好ましくはディップフィードタイプのドラムフレーカーがよい。
【0036】
そして、このような間接冷却凝固装置による冷却速度については、添加した添加剤や着色剤の種類や量によっても若干異なるが、好ましくはその冷却面から成長する固体の厚さ方向平均固体成長速度が1〜15mm/分、より好ましくは2〜10mm/分、最適には2.5〜7mm/分であり、これによって固形物内部に添加剤等が略均一な分散状態にに封じ込められたパラジクロロベンゼン固形物を得ることができる。この平均固体成長速度が1mm/分より遅くなると、凝固(晶析)中に結晶の純化が進み、また、固形物中に添加剤等を略均一な分散状態で含有させることが難しくなり、冷却凝固面当りの生産性が低くなり経済的でない。反対に、15mm/分より速くなると結晶の一次粒子は細かくなり、添加剤の結晶粒界の存在割合が高くなり、打錠時に滲み出し易くなる。また、冷却面の温度を低くせざるを得ないので経済的でない。
【0037】
また、この冷却速度の制御は、例えばディップフィードタイプのフレーカーを用いた場合、ディップ内のパラジクロロベンゼン溶融液の温度、凝固装置の冷却面の温度、パラジクロロベンゼン溶融液と冷却面との接触時間や流れ等の接触条件、雰囲気温度等を制御することにより行うことができる。
【0038】
ところで、間接冷却凝固装置の冷却面での固形物の析出は、この冷却面から溶解液方向へ、つまり冷却面から垂直方向へと進む。そして、この垂直方向の単位時間当たりの固形物の成長速度を凝固速度とすると、パラジクロロベンゼンの熱伝導率が小さいために、この凝固速度はパラジクロロベンゼン固形物の成長につれて小さくなる。すなわち、間接冷却凝固装置の冷却面近傍付近で凝固した固形物の凝固速度は速く、冷却面から離れた位置で凝固した固形物の凝固速度は遅くなる。それ故、パラジクロロベンゼン固形物はその厚さ方向に添加剤等の濃度分布を持つことになり、結局、凝固装置の冷却面から凝固して形成された固形物の厚さ方向にパラジクロロベンゼンの純度が高くなり、逆に添加剤等の濃度が低くなる傾向がある。
【0039】
このため、溶解液を急冷して間接冷却凝固装置の冷却面に形成された固形物の層厚については、通常0.5〜3mm、好ましくは0.8〜2mmであるのがよい。形成された固形物の層厚がこの範囲であれば、溶解液の凝固速度の変化による添加剤等の濃度変化を問題にならない程度に抑えることができ、略均一に添加剤を含有したパラジクロロベンゼン固形物を得る上で好ましい。
【0040】
ここで、略均一な分散状態とは、パラジクロロベンゼン固形物全体の添加剤含有量に対し、厚さ方向の濃度分布差がほとんどない、あるいは、小さいことを意味している。つまり、厚さ方向の表面を含む上層部の約30%の部分、厚さ方向の表面を含む下層部の約30%の部分、及び、これら上層部と下層部の間の中層部約30%の部分にそれぞれ含まれる添加剤濃度が、固形物全体の添加剤濃度の平均に対して比分散度15%以内、好ましくは10%以内となっている状態である。
【0041】
すなわち、比分散度(%)は、次の計算式
比分散度(%)={〔(上層部、中層部又は下層部の添加剤濃度)−(固形物全体の添加剤濃度)〕の絶対値÷(固形物全体の添加剤濃度)}×100
で定義され、略均一な分散状態とは、これら上層部、中層部及び下層部におけるそれぞれの比分散度(%)がいずれも15%以内、好ましくは10%以内であることを意味する。この比分散度が15%を超えると、その超えた部分において添加剤が局在化していることを示しており、具体的には打錠時に滲み等の問題が生じ易い。
【0042】
本発明方法で得られたパラジクロロベンゼン固形物の形状は、間接冷却凝固装置の冷却面から剥されて薄片状になっている。また、必要であれば、粉砕、分級等の操作によって必要な粒度に調整することができる。
【0043】
本発明のパラジクロロベンゼン固形物は、必要により、錠剤、顆粒、粉末等の剤型に製剤化され、製剤内部に添加剤あるいはこの添加剤及び着色剤が略均一な分散状態で封じ込められたパラジクロロベンゼン製剤として、防虫剤、防虫・防臭剤、防虫・防黴剤等の種々の用途に使用される。このような製剤のうち、パラジクロロベンゼン固形物を打錠成型して得られた錠剤は、その錠剤内部に比較的多量の添加剤等を略均一な分散状態で封じ込めることができ、取扱上便利なので、剤型として好ましい。
【0044】
【作用】
本発明においては、パラジクロロベンゼンの固形物又はその製剤において、0.3重量%以上の添加剤を容易に含有させることができ、また、その内部に添加剤や着色剤が略均一に分散しており、これを防虫剤や防臭剤等として使用した際に、パラジクロロベンゼンの昇華につれてこれら添加剤等が表面に露出し、その使用初期から使用後期に至るまでパラジクロロベンゼン及び添加剤成分を略均等に揮散させることができる。
【0045】
また、本発明の製造方法によれば、添加剤や着色剤を含有したパラジクロロベンゼン溶融液を間接冷却凝固装置の冷却面を介して急冷するので、溶解液からパラジクロロベンゼンや添加剤あるいは着色剤が偏析する前にこの溶解液が凝固し、得られた固形物内部に添加剤等が略均一な分散状態で封じ込められている。
更に、得られた固形物を製剤化した製剤中に0.3重量%以上の添加剤を容易に含有させることができ、また、添加剤が略均一な分散状態で封じ込められ、特に打錠して得られた錠剤中にも添加剤が略均一な分散状態で封じ込められる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
【0047】
実施例1
外部加熱可能なステンレス容器にパラジクロロベンゼン99.5kgを仕込み、80℃まで加熱してパラジクロロベンゼンを溶融し、この溶融液中に防虫作用を有する植物精油のタイムホワイトオイル(タイム油を精製したオイル)0.5kg(0.5重量%)、黄色染料〔日本化薬(株)製商品名:カヤセットイエローSF−G〕1g(10ppm)及び青色染料〔日本化薬(株)製商品名:ソルベントブルーFG〕0.1g(1ppm)を添加し、100℃に加熱して溶解し、タイムホワイトオイル0.5重量%含有の緑色の溶解液1を得た。
【0048】
一方、液体相から固体相への相変化においては純化過程を経ることになるので、固化した固形物中に0.5重量%の添加剤を含ませるためにはこの実施例の条件下では添加剤濃度0.7重量%の液体相を用いる必要があり、そこで、上記溶解液1とは別に、タイムホワイトオイル0.7重量%、黄色染料のカヤセットイエローSF−G14ppm及び青色染料のソルベントブルーFG1.4ppm含有の緑色の溶解液2を調製した。次に、6kgの溶解液2をディップフィードタイプの0.3m3 ドラムフレーカーの底部(ディップ)に仕込み、パラジクロロベンゼン固形物の製造準備を行った。
【0049】
次に、連続でパラジクロロベンゼン固形物を調製するため、上記溶解液1を固形物の製造所定量を連続で供給しながら、冷却水温度20℃、ディップ溶解液温度65℃、冷却面(ドラム面)での固化時間18秒の条件で上記溶解液を急冷し、厚さ方向平均固体成長速度3.7mm/分で厚さ1.1mmの薄片状のパラジクロロベンゼン固形物を調製した。
【0050】
得られたパラジクロロベンゼン固形物の上層部、中層部、下層部及び全体平均並びに洗浄品における添加剤濃度、染料含有量、色ムラ、及び、曲げ強度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、添加剤の分散度を示すパラジクロロベンゼン固形物中の添加剤濃度は、上層部、中層部、下層部及び全体平均並びに洗浄品いづれもほぼ同一の濃度を示し、その分布は全体平均の±15%以内となった。また、得られたパラジクロロベンゼン固形物は、黄緑色半透明、色ムラなしで、曲げ試験では30°の曲がりを示す均一に添加剤が分布した固形物であった。
【0051】
次に、このようにして得られたパラジクロロベンゼン固形物を粉砕し、成形機(打錠機)を用いて直径21mm、中央部厚み約9mm、重量約4gの碁石状に製剤化し、パラジクロロベンゼン錠剤を調製した。
得られた錠剤について、その打錠時における添加剤等の滲みの程度、錠剤強度及び、打錠直後のパラジクロロベンゼン刺激臭を観察あるいは測定した。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、得られた錠剤の表面には滲みがなく、錠剤強度も十分であり、パラジクロロベンゼン特有の刺激臭もないパラジクロロベンゼン製剤として好ましい性状を示していた。
【0052】
また、恒温送風乾燥機を用いて上記で得られた錠剤を25℃で昇華させ、錠剤中に残留したタイムホワイトオイル(残留添加剤)の濃度を経時的に測定する昇華試験を行い、24時間昇華後の残留物の臭いを観察した。結果を表2に示す。表2の結果から明らかなように、この錠剤の昇華試験における残存パラジクロロベンゼン中の添加剤の濃度は、経時的に低くなるが問題となるレベルではなく、長期に渡ってパラジクロロベンゼン特有の臭いを軽減することができた。
このように、実施例1では添加剤を含んだパラジクロロベンゼン固形物及び製剤を問題なく製造でき、得られたパラジクロロベンゼン製剤に不具合は見られなかった。
【0053】
比較例1
パラジクロロベンゼン99.5kgをガラス瓶中で溶融し、これにタイムホワイトオイル0.5kg(0.5重量%)と青色染料のソルベントブルーFG0.5mg(5ppm)とを添加し、加熱下に溶解させて70℃の青色の溶解液を得た。
20℃に調整された恒温水槽の水上に平らなステンレス製容器を浮かべ、この容器内に上で得られた溶解液を厚さ約1.2mmとなるように流し込んで放置し、凝固させた。
【0054】
溶解液は徐々に固化して行き、約2分で表面に若干の液状物質が滲出した状態になって凝固が停止した。この際の厚さ方向平均固体成長速度は0.6mm/分であった。また、容器内を目視で観察したところ、固形物中に取り込まれずに固形物表面に滲出した添加剤等が確認された。
【0055】
このようにして得られた固形物を容器から取り出し、その一部を分析用に採取し、上記実施例1と同様に、その固形物の上層部、中層部、下層部及び全体平均並びに洗浄品における添加剤濃度、染料含有量、色ムラ、及び、曲げ強度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、洗浄品中の添加剤濃度はその平均値より低く、洗浄操作により添加剤が洗い流されたことがわかる。しかるに、タイムホワイトオイルは固形物内部にはほとんど含まれておらず、固形物表面や粒界に付着した形で存在していた。
【0056】
更に、得られたパラジクロロベンゼン固形物を使用し、実施例1と同様に錠剤を製造し、得られた錠剤についてその打錠時の滲み、錠剤強度、パラジクロロベンゼン刺激臭を観察あるいは測定すると共に、24時間の昇華試験を行い、残存パラジクロロベンゼン中の添加剤濃度及び24時間後の残留パラジクロロベンゼン製剤の臭いを観察した。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、得られた錠剤の表面は滲んでおり、錠剤強度も低い。また、得られた錠剤では、パラジクロロベンゼン特有の臭いはしないが、昇華試験の初期にタイムホワイトが揮発してしまい、24時間後にはパラジクロロベンゼン特有の刺激臭が観察された。
【0057】
比較例2
パラジクロロベンゼン99.5gに添加剤等としてレモングラスオイル0.5g(0.5重量%)、黄色染料〔日本化薬(株)製商品名:カヤセットイエロー016〕1mg(10ppm)及びカヤセットブルーFG0.1mg(1ppm)を添加し、90℃で溶融して全体を均一に溶解し、60℃の緑色の溶解液を調製した。
得られた溶解液を平たいステンレス製容器に厚さ約8mmとなるように流し込み、30分かけて自然放冷し、凝固させた。この時の厚さ方向平均固体成長速度は0.26mm/分であった。
【0058】
また、容器内を目視で観察したところ、容器中央部において、固形物内部に取り込まれずに液体状のままの緑色添加剤が表面に確認された。また、結晶の着色は不均一で緑色の濃い部分とほとんど透明な部分とが観察された。
【0059】
このようにして得られた固形物を容器から取り出し、その一部を分析用に採取し、上記実施例1と同様に、その固形物の上層部、中層部、下層部及び全体平均並びに洗浄品における添加剤濃度、染料含有量、色ムラ、及び、曲げ強度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、得られた固形物にはかなりの色ムラがあり、添加剤濃度も固形物平均に対し、上層部で著しく高くなった。つまり、レモングラスオイルは、固形物内部にはほとんど含まれず、固形物上層部付近に局在化していた。
【0060】
更に、得られたパラジクロロベンゼン固形物を使用し、実施例1と同様に、錠剤を製造し、得られた錠剤についてその打錠時の滲み、錠剤強度、パラジクロロベンゼン刺激臭を観察あるいは測定するとともに、24時間昇華試験を行い、残存パラジクロロベンゼン中の添加剤濃度及び24時間後の残留パラジクロロベンゼン製剤の臭いを観察した。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、得られた錠剤の表面には滲みが見られる不具合があり、昇華試験でも添加剤の残留性が低く、24時間後にはパラジクロロベンゼン特有の刺激臭が観察された。
【0061】
実施例2
外部加熱可能なステンレス容器中にパラジクロロベンゼン9.95kgを仕込み、これを100℃に加熱して溶融し、次いでタイムホワイトオイルを0.05kg(0.5重量%)とカヤセットイエロー016を20mg(200ppm)とをそれぞれ添加し、溶解して黄色溶解液を調製した。
【0062】
この溶解液をディップフィードタイプのドラムフレーカーのディップに仕込み、冷却水温度5℃、ディップ溶解液温度65℃、冷却面(ドラム)での固化時間15秒の条件で厚さ1.2mmの薄片状のパラジクロロベンゼン固形物を調製した。この時の厚さ方向平均固体成長速度は4.8mm/分であった。
【0063】
得られた固形物について、上記実施例1と同様に、その固形物の上層部、中層部、下層部及び全体平均並びに洗浄品における添加剤濃度、染料含有量、色ムラ、及び、曲げ強度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、添加剤は固形物中に略均一に分散し、不具合は見られなかった。
【0064】
タイムホワイトオイル0.1重量%を噴霧しながら上記で得られたパラジクロロベンゼン固形物を粉砕し、実施例1と同様に、錠剤を製造し、得られた錠剤について昇華試験を行い、また、打錠時の滲みの観察、錠剤強度、残存パラジクロロベンゼン中の添加剤含有率、及び、24時間後のパラジクロロベンゼン刺激臭を観察あるいは測定した。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、従来は、0.5重量%より多い添加剤を錠剤に含ませることができなかったが、本実施例で得られた錠剤では、0.5重量%より多い添加剤を含むにもかかわらず十分な錠剤強度が確保できた。また、昇華試験でも不具合は見られなかった。
【0065】
実施例3
外部加熱可能なステンレス容器にパラジクロロベンゼン990gを仕込み、これを100℃に加熱して溶融し、次いで防虫作用を有する植物精油の抽出物のチモール(1重量%)を含むフローラル香料10g(1重量%)及び黄色染料〔日本化薬(株)製商品名:カヤセットイエロー937〕0.2g(200ppm)を添加し、溶解して溶解液を調製した。
【0066】
この溶解液を恒温装置付き容器中で攪拌なしで60℃に保持し、500mlのステンレス製ビーカーの内部に0℃の氷水を入れた冷却器を浸漬し、このステンレス製ビーカーの外面にパラジクロロベンゼン固形物を凝固させた。
この際に、浸漬時間10秒で厚さ1.2mmの薄片状パラジクロロベンゼン固形物20gが得られ、この操作を繰り返して合計200gの固形物を得た。この時の厚さ方向平均固体成長速度は7.2mm/分であった。
【0067】
得られた固形物について、上記実施例1と同様に、その固形物の上層部、中層部、下層部及び全体平均並びに洗浄品における添加剤濃度、染料含有量、色ムラ、及び、曲げ強度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、得られたパラジクロロベンゼン固形物中には、約1重量%の添加剤が略均一に分散していた。
【0068】
更に、得られたパラジクロロベンゼン固形物を使用し、実施例1と同様に、錠剤を製造し、得られた錠剤についてその打錠時の滲み、錠剤強度、パラジクロロベンゼン刺激臭を観察あるいは測定するとともに、24時間昇華試験を行い、残存パラジクロロベンゼン中の添加剤濃度及び24時間後の残留パラジクロロベンゼン製剤の臭いを観察した。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、得られた錠剤の錠剤強度は十分なものであり、従来技術では不可能であった0.3重量%以上の添加剤を含む錠剤を不具合なく得ることができた。また、昇華試験でも不具合なくパラジクロロベンゼン特有の刺激臭を軽減することができた。
【0069】
実施例4
ガラス瓶中でパラジクロロベンゼン99.8gを溶融し、これにピレスロイド系殺虫剤のエムペントリン0.2g(0.2重量%)、フローラル香料0.3g(0.3重量%)及びカヤセットブルーFG0.005g(50ppm)を添加し、溶解して60℃の溶解液を調製した。
【0070】
この溶解液を−25℃のメタノール恒温槽に浮かべた平たいステンレス製容器に厚さ約20mmとなるように流し込み、5秒間急冷凝固させた。この間、凝固しなかった溶解液を取り除き、ステンレス製容器底面に厚さ1.1mmのパラジクロロベンゼン固形物を得た。この時の厚さ方向平均固体成長速度は13.2mm/分であった。
【0071】
得られた固形物について、上記実施例1と同様に、その固形物の上層部、中層部、下層部及び全体平均並びに洗浄品における添加剤濃度、染料含有量、色ムラ、及び、曲げ強度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、添加剤のエムペントリン及びフローラル香料とも略均一な濃度で分布したパラジクロロベンゼン固形物が得られた。
【0072】
更に、得られたパラジクロロベンゼン固形物を使用し、実施例1と同様に、錠剤を製造し、得られた錠剤についてその打錠時の滲み、錠剤強度、パラジクロロベンゼン刺激臭を観察あるいは測定するとともに、24時間昇華試験を行い、残存パラジクロロベンゼン中の添加剤濃度及び24時間後の残留パラジクロロベンゼン製剤の臭いを観察した。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、添加剤のエムペントリン及びフローラル香料ともパラジクロロベンゼンの昇華とともに徐々に揮発させることができた。
【0073】
比較例3
パラジクロロベンゼン99.97gに固結防止剤のジエチルフタレート0.03g(300ppm)を添加して溶融溶解し、得られた溶解液を20℃の恒温水槽に浮かべた平たいステンレス製容器に厚さ約1.2mmとなるように流し込み、自然放冷した。この時の厚さ方向平均固体成長速度は0.6mm/分であった。
【0074】
得られた固形物について、上記実施例1と同様に、その固形物の上層部、中層部、下層部及び全体平均並びに洗浄品における添加剤濃度、染料含有量、色ムラ、及び、曲げ強度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0075】
得られた固形物を容器から取り出し、その粉砕時にフローラル香料0.3重量%を添加し、次いで実施例1と同様に、錠剤を製造し、得られた錠剤について昇華試験を行い、また、打錠時の滲みの観察、錠剤強度、残存パラジクロロベンゼン中の添加剤量、及び、48時間後のパラジクロロベンゼン刺激臭を観察あるいは測定した。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、得られた錠剤の表面には若干の滲みが見られ、また、昇華試験では香料が初期に揮発してしまい、24時間後にはパラジクロロベンゼン特有の刺激臭が観察される不都合が生じた。
【0076】
比較例4
フローラル香料をタイムホワイトオイルに代えてその添加量を0.5重量%とした以外は、上記比較例3と同様にしてパラジクロロベンゼン錠剤を製造し、得られた錠剤について昇華試験を行い、また、打錠時の滲みの観察、錠剤強度、パラジクロロベンゼン残存率、及び、24時間後のパラジクロロベンゼン刺激臭を観察あるいは測定した。結果を表2に示す。
【0077】
実施例5
添加剤として用いるタイムホワイトオイルを0.2kg(2重量%)とした以外は、実施例2と同様の方法でパラジクロロベンゼンの固形物及び錠剤を調製し、また、同様の方法で所定の観察あるいは測定を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0078】
実施例6
添加剤として用いるタイムホワイトオイルを0.4kg(4重量%)とした以外は、実施例2と同様の方法でパラジクロロベンゼンの固形物及び錠剤を調製し、また、同様の方法で所定の観察あるいは測定を行った。結果を表1及び表2に示す。打錠時の錠剤表面には若干の滲み出しが観察されたが問題になるほどではなく、錠剤中に3重量%の添加剤を含有させることができた。
【0079】
実施例7
冷却水温度を30℃とし、フレークの厚みを0.95mm、添加剤として用いるタイムホワイトオイルを0.14kg(1.4重量%)とした以外は、実施例2と同様の方法でパラジクロロベンゼンの固形物及び錠剤を調製し、また、同様の方法で所定の観察あるいは測定を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0080】
実施例8
実施例1で得られた溶解液1及び溶解液2に、固結防止剤のジブチルフタレートをそれぞれ35g(350ppm)及び49g(490ppm)添加した以外は、上記実施例1と同様にしてパラジクロロベンゼンの固形物及び錠剤を調製し、また、同様の方法で所定の観察あるいは測定を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0081】
更に、この実施例8で得られたパラジクロロベンゼン固形物をポリエチレン製フレキシブルコンテナー中常温で2週間放置して保存したが、この保存中に固結の現象は認められず、コンテナーからの円滑な搬出が可能であり、ブロッキングもなく十分に打錠可能であった。また、打錠時に錠剤表面に対する滲みも認められず、錠剤強度も十分であってパラジクロロベンゼン特有の刺激臭もなく、パラジクロロベンゼン製剤として望ましい性状を有していた。
【0082】
なお、本発明における実施例及び比較例の評価は、下記の方法で行った。
パラジクロロベンゼン固形物の上層部、中層部及び下層部における添加剤濃度は、それぞれ表面を含む上層部及び下層部並びにこれらの間の中層部から厚さ方向の約30%づつをサンプルとして切出し、これをジクロロメタンに溶解し、ガスクロマトグラフにより定量分析して測定した。
【0083】
また、固形物の洗浄品における添加剤濃度は、ジクロロメタンを含んだ脱脂綿で固形物表面を拭い、得られた固形物を用いてガスクロマトグラフにより定量分析して測定した。
また、パラジクロロベンゼン固形物の染料含有量は、固形物のメタノール溶液を紫外可視分光光度計で測定して求めた。
【0084】
更に、色ムラは、固形物から厚さ1mmのサンプルを切出し、30倍の光学顕微鏡写真を撮り、この写真を元にして1mm2 内における着色濃度の異なる部分の比率を求め、色ムラがなく均一のものをA、少しムラのあるものをB、かなりムラのあるものをCとする3段階評価をした。
そして、曲げ強度は、固形物から厚さ0.5〜2mmのサンプルを切出し、これを左手の掌の上に載せ、右手人差指でこのサンプルを押圧し、その際の曲がり具合を観察して求めた。不均一なサンプルでは細かく割れてしまう傾向がある。
【0085】
また、錠剤強度は、図1に示すような専用の治具を用意し、木屋式硬度計(藤原製作所製)を用いて厚さ方向に2つに割って強度を測定し、錠剤10個の平均値を求めて錠剤強度とした。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【発明の効果】
本発明のパラジクロロベンゼン固形物は、その固形物内部に添加剤が略均一な分散状態で封じ込められている。このため、このパラジクロロベンゼン固形物を用いて、使用初期から使用後期に至るまでパラジクロロベンゼン及び添加剤の気体成分を略均等に揮散させることのできるパラジクロロベンゼン製剤を製造することができる。
【0089】
また、本発明の製造方法によれば、固形物内部に添加剤が略均一な分散状態で封じ込められたパラジクロロベンゼン固形物を工業的に有利に製造することができる。
【0090】
更にまた、本発明のパラジクロロベンゼン製剤は、その製剤内部に添加剤が略均一な分散状態で封じ込められており、使用初期から使用後期に至るまでパラジクロロベンゼン及び添加剤の気体成分を略均等に揮散させるこができる。また、従来不可能であった、0.3重量%より多い添加剤を錠剤中に含有せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、錠剤強度を測定するために用意した専用の治具を示す部分断面説明図である。
Claims (7)
- パラジクロロベンゼン溶融液に植物精油、植物精油の抽出成分、動物抽出物、香料、ピレスロイド系殺虫剤及び固結防止剤から選ばれた1種又は2種以上の添加剤、あるいは、この添加剤に加えて着色剤を溶解し、得られた溶解液を冷却して凝固させることにより、固形物内部に添加剤、あるいは、この添加剤及び着色剤が略均一な分散状態で封じ込められているパラジクロロベンゼン固形物を製造する方法であり、上記溶解液を、連続式間接冷却凝固装置の冷却面においてこの冷却面から成長する固体の厚さ方向平均固体成長速度1〜15 mm /分及びこの冷却面に形成される固形物の層厚0.5〜3 mm の条件で、急冷して凝固させることを特徴とするパラジクロロベンゼン固形物の製造方法。
- 溶解液を凝固させる際に、固形物内部に添加剤あるいは添加剤と着色剤とを比分散度15%以内で分散させる請求項1に記載のパラジクロロベンゼン固形物の製造方法。
- 請求項1又は2の方法により製造されたパラジクロロベンゼン固形物であり、この固形物内部に植物精油、植物精油の抽出成分、動物抽出物、香料、ピレスロイド系殺虫剤及び固結防止剤から選ばれた1種又は2種以上の添加剤が比分散度15%以内の略均一な分散状態で封じ込められていることを特徴とするパラジクロロベンゼン固形物。
- 固形物が層厚0.5〜3 mm の薄片状である請求項3に記載のパラジクロロベンゼン固形物。
- 植物精油、植物精油の抽出成分、動物抽出物、香料、ピレスロイド系殺虫剤及び固結防止剤から選ばれた1種又は2種以上の添加剤、あるいは、この添加剤に加えて着色剤が固形物表面に付着している請求項3又は4に記載のパラジクロロベンゼン固形物。
- 請求項3〜5のいずれかに記載されたパラジクロロベンゼン固形物を製剤化して得られたものであって、この製剤内部に添加剤あるいはこの添加剤及び着色剤が略均一な分散状態で封じ込められていることを特徴とするパラジクロロベンゼン製剤。
- 製剤がパラジクロロベンゼン固形物を打錠成型して得られた錠剤である請求項6記載のパラジクロロベンゼン製剤。
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