JP3730603B2 - 目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物 - Google Patents

目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
次の3成分を含有する新しい目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関し、その目的は、皮膚のたるみの予防を目的とした局所使用のほか、特に加齢および疲労の視覚的徴候、特に目の下の「たるみ」および「くま」の治療を目的とする。
a)ヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体
b)ジペプチドの構造がH - Val - Trp - OHであるアンギオテンシン変換酵素(EC 3.4.15.1)阻害ジペプチド。
c)オリゴペプチドR-(AA)-Pro-Arg-OH[式中、(AA)はアミノ酸残基(AA)またはアミノ酸誘導体をもつペプチド残基、は1〜3、RはHまたは炭素数2〜22のアルキル鎖を表す]。
尚、本発明における皮膚外用剤組成物には、化粧品、医薬品及び医薬部外品に属するあらゆる物を含むものとする。
【0002】
【従来の技術】
皮膚生理に関する現在の知見により、外的作用または加齢によって引き起こされるさまざまな機能障害に対して化粧品による解決法を提案することが可能となった。依然として多くのことが明らかにされておらず、誤って理解されていることや誤って習得されていることもある。
【0003】
これには、たとえば一般に「目の下のたるみ」、「目の腫れ」(英語では「puffy eyes」)と呼ばれる症状が挙げられる。このような目の下の皮膚の状態は、文献にも十分な記載があるように、ある程度の腫れ、多くの場合、炎症、皮膚のたるみ、紅斑を特徴とし、明確な病因は明らかになっていない。
【0004】
今日、顔の肌の改善を目的とした皮膚外用剤組成物が多数提案されている。保湿製品、抗しわクリーム、抗刺激作用をもつ鎮静ローションはその一部である。本発明者らの知る限り、これまで「目の下のたるみ」の問題に体系的、集中的に取り組み、原因および症状に対して同時にさまざまなレベルで作用するものはなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、3つのカテゴリーの作用物質(ヘスペリジン、アンギオテンシンIをアンギオテンシンIIに変換する酵素の阻害ペプチド、免疫調節ペプチドおよび免疫グロブリンのフラグメント)の相乗作用によって水分貯留、炎症、血管脆弱および皮膚組織のたるみの問題に同時に取り組み、この「たるみ」による美容的問題を解決することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、以下のa)乃至c)の3成分を含有することを特徴とする目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
a)ヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体
b)ジペプチドの構造がH - Val - Trp - OHであるアンギオテンシン変換酵素(EC 3.4.15.1)阻害ジペプチド。
c)オリゴペプチドR-(AA)-Pro-Arg-OH[式中、(AA)はアミノ酸残基(AA)またはアミノ酸誘導体をもつペプチド残基、は1〜3、RはHまたは炭素数2〜22のアルキル鎖を表す]。
【0007】
請求項2に係る発明は、ヘスペリジン誘導体がヘスペリジンメチルカルコンであることを特徴とする請求項1に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
請求項に係る発明は、ジペプチドを化学合成、酵素法、発酵または植物由来タンパク質からの抽出により得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
請求項に係る発明は、オリゴペプチドがH-Gly-Gln-Pro-Arg-OHまたはパルミトイル-Gly-Gln-Pro-Arg-OHであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
請求項に係る発明は、オリゴペプチドを化学合成、酵素法、発酵または植物由来タンパク質からの抽出により得ることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
【0008】
請求項に係る発明は、濃度0.001%(p/p)〜50%(p/pのヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体を使用することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
請求項に係る発明は、濃度0.0001%(p/p)〜1%(p/p)のアンギオテンシン変換酵素阻害ジペプチドを使用することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
請求項に係る発明は、R-(AA)-Pro-Arg-OHの配列をもつ濃度0.0001%(p/p)〜1%(p/p)のオリゴペプチドを使用することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
請求項に係る発明は、請求項1に記載のa)〜c)の成分を溶液、分散液、乳剤、泥膏または粉末として単独で用いるか予め混合して用いるほか、マクロカプセル、マイクロカプセルまたはナノカプセルなどの担体、リポソームまたはキロミクロン、マクロ粒子、マイクロ粒子またはナノ粒子あるいはマイクロスポンジによって単独で送達するか予め混合して送達する、あるいは粉末有機高分子、タルク、ベントナイトおよび他の鉱物に吸収させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
【0010】
請求項10に係る発明は、請求項1に記載のa)〜c)の成分のほか、通常化粧品に混合する有機溶剤または水溶性グリコール、抽出脂質または合成脂質、イオン性または非イオン性増粘剤、鎮痛剤、乳白剤、安定剤、皮膚軟化剤、シリコン、α―ヒドロキシ酸、消泡剤、水和剤、ビタミン、香料、保存料、金属イオン封鎖剤、着色剤、高分子ゲルおよびビスコース、表面活性剤および乳化剤、他の水溶性または脂溶性有効成分、植物抽出物、組織抽出物、海洋抽出物、日焼け止め剤、抗酸化物質のうち1つ以上の成分を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の目的に従って、次の(a)〜(c)の3成分を含有することを基本的な特徴とする新しい目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物を提案する。
a)ヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体
b)ジペプチドの構造がH−Val−Trp−OHであるアンギオテンシン変換酵素(EC 3.4.15.1)阻害ジペプチド。
c)オリゴペプチドR−(AA)−Pro−Arg−OH〔式中、(AA)はアミノ酸残基(AA)またはアミノ酸誘導体をもつペプチド残基、は1〜3、RはHまたは炭素数2〜22のアルキル鎖を表す〕。
【0012】
本発明は目の下のたるみおよびくまの治療を目的とした皮膚外用剤組成物の使用または製造を対象としている。このほか、基本的に本発明による組成物の有効量を目の下のたるみおよびくまに適用する美容的処置の方法を本発明の対象としている。本発明品の他の特徴、概要および利点は、以下の詳細な説明に記載する。
【0013】
ヘスペリジンおよびヘスペリジン誘導体、特にヘスペリジンメチルカルコンは天然物質であるものもあれば天然物質から合成されるものもあり、ビタミンPの作用で知られている。発明FR2183612に毛細血管脆弱の治療におけるこのような物質の使用が記載されている。ヘスペリジンメチルカルコンは血管拡張剤および毛細血管透過性調節剤などの医薬品に用いられることが多い。
【0014】
ジペプチドのうちジペプチドVal−Trpは、アンギオテンシン変換酵素を阻害することができることで知られている(Dobbins D.E.ら(1990) Microcirc Endothelium Lymphatics 6:409-425)。このため、このジペプチドは循環ブラジキニン量を調節し、リンパ管の蠕動に影響を及ぼすことによってリンパ循環を増大させてリンパドレナージを促進することができる。その結果、皮膚の内側から有害な液体および代謝物が排出される。
【0015】
これについては、このようなジペプチド、特にVal−Trpの使用により有益性が得られる。本発明者らは、「たるみ」の出現は水分貯留、局所浮腫の現象と関係があると述べた。アンギオテンシンII(アンギオテンシン変換酵素によりアンギオテンシンIより変換される)は血管の全体的な水分不足および水分貯留の現象を同時に増大させる強力な血管収縮剤であることが知られている。このため、このペプチドによるアンギオテンシン変換酵素の阻害によりアンギオテンシンII(活性型のみ)の循環量は減少するが、ブラジキニンの循環量は増加する。このように、ペプチドVal−Trpは水分貯留、ナトリウムの不均衡(「たるみ」を来たす)および局所浮腫の形成に対して作用する。
【0016】
アンギオテンシン変換酵素阻害剤は耐容性または毒性、法律、製剤適性、生物学的利用率などさまざまな理由から化粧品には使用することができないことが知られている。このため、この変換酵素の最初の阻害活性が失われない範囲で、この分子に対して何らかの化学修飾を施す(吸収性または皮膚透過性を増大させるために親水性または親液性にする)ことができるのは明らかである。
【0017】
それぞれのアンギオテンシン変換酵素阻害ジペプチドの構造がH−X−Y−OHで、XはVal,His,Trp,ArgまたはTyrでYはTyr,PheまたはTrpである場合、アルコールでカルボキシル基を直鎖または分枝、水酸化または非水酸化のエステルに変換しH−X−Y−ORの構造をとるか、アミンによるアミド化によりH−Val−Trp−ONRの構造をとるようにすることができる[式中Rは炭素数1〜24のアルキル鎖(炭素数1〜3または14〜18で、Rは互いに独立していることが好ましい)、Hまたは炭素数1〜12のアルキル鎖(炭素数1〜3が好ましい)を表す]。このような修飾によって変換酵素の作用が変化することはない。
【0018】
このほか、ペプチドGly−Gln−Pro−Argおよびこの誘導体は抗炎症作用があり(PCT/FR00/00031)、特に皮膚細胞中のインターロイキン6(IL6)の分泌を阻害することができることで知られている。本発明に関する試験によりペプチド、特にその誘導体であるパルミトイル−Gly−Gln−Pro−Arg−OHには意外にも化粧品としての機能、具体的に言うと、頸部および顔の肌を強化し再構築する作用があることが明らかになった。この再構築作用により被膜の水和が促進される。
【0019】
このように、本発明は次に記載する相補的作用をもつ、少なくとも、以下のa)乃至c)の3成分を組み合わせ、化粧品として局所適用することにより、「目の下のたるみおよび/またはくま」と呼ばれる症状を著明に減少させることができるという発見を対象とする。
a)ヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体
b)ジペプチドの構造がH - Val - Trp - OHであるアンギオテンシン変換酵素(EC 3.4.15.1)阻害ジペプチド。
c)オリゴペプチドR-(AA)-Pro-Arg-OH[式中、(AA)はアミノ酸残基(AA)またはアミノ酸誘導体をもつペプチド残基、は1〜3、RはHまたは炭素数2〜22のアルキル鎖を表す]。
【0020】
このためには、この皮膚外用剤組成物に十分かつ有効な濃度の有効成分を混合し、十分かつ有効な量を顔の該当部位に2週間〜2ヶ月以上適用すればよい。
【0021】
ヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体はさまざまな植物(シトラス属(Citrus)、ルスカス属(Ruscus)など)の抽出物から得られる。本発明を実現するには、特にヘスペリジンメチルカルコン(トリメチルヘスペリジンカルコンともいう)であることが好ましい。これは通常、アルカリ環境下で硫酸ジメチルを用いて天然ヘスペリジンをアルキル化することにより得られるが(I. Sakieki, Nippon KagakuZasshi 79, 1958, 733)、当分野の技術者が他の方法を用いる場合もある。また、ヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体は、本発明の天然または合成ヘスペリジンの他のアルキル誘導体にも含まれる。
【0022】
本発明により組成される化粧品に含有されるヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体の濃度は0.001%(p/p)〜50%(p/p)とさまざまであるが、0.01%(p/p)〜10%(p/p)、特に0.05%(p/p)〜1%(p/p)であることが好ましい。
【0023】
アンギオテンシン変換酵素阻害ジペプチドH−X−Y−OH(XはVal,His,Trp,ArgまたはTyrでYはTyr,PheまたはTrp)は通常の化学合成(均一相または不均一相で)またはアミノ酸構成成分またはアミノ酸誘導体から酵素合成によって得られる(Kullmanら、J. Biol. Chem. 1980, 255, 8234)。
【0024】
このようなジペプチドの生物学的利用率および皮膚透過性を向上させるには、アルコールでカルボキシル基を直鎖または分枝、水酸化または非水酸化のエステルに変換しH−X−Y−ORの構造をとるか、アミンによるアミド化によりH−Val−Trp−ONRの構造をとるようにすることによって親油性を増加させる[式中、Rは炭素数1〜24のアルキル鎖(炭素数1〜3または14〜18でRは互いに独立していることが好ましい)、Hまたは炭素数1〜12のアルキル鎖(炭素数1〜3が好ましい)を表す]。また、所望の配列またはさまざまなフラグメントを生成するために細菌株の発酵、遺伝子操作による修飾によってジペプチドを得ることもできる。
【0025】
このほか、ジペプチドは構造にこのような配列が含まれる可能性のある動物由来または植物由来タンパク質の抽出物[植物由来の方が好ましい(コムギおよびコメに存在することが明らかにされている。Saito,1993)]から得ることができる。この場合、制御下で酵素により(酵素によらない場合もある)加水分解し、構造にこのような配列が含まれる可能性のある植物のVal−Trp配列のペプチドフラグメントを分離する。慎重に加水分解することによりペプチドフラグメントを分離することができる。
【0026】
タンパク質およびペプチドの抽出および純化に精通した当分野の技術者は、このほかの簡単な方法または複雑な方法のなかから、この製品を安価でかつ純粋なものにする方法を容易に考えることができる。
【0027】
上に記載した本発明による皮膚外用剤組成物に用いるアンギオテンシン変換酵素阻害ペプチドまたはその抽出物の濃度は0.001%(p/p)〜1%(p/p)までさまざまに設定することができるが、0.01%(p/p)〜0.05%(p/p)であることが好ましい。
【0028】
本発明のもうひとつの成分は、R−(AA)−Pro−Arg−OH、の配列のひとつまたは複数のペプチドからなる。式中、(AA)はアミノ酸残基(AA)またはアミノ酸誘導体をもつペプチド残基で、は1〜3、RはHまたは炭素数2〜22のアルキル鎖を表す。(AA)鎖はグリシル-グルタミニル(−Gly−Gln−)から構成され、Rは炭素数2〜22のアルキル鎖、特にパルミトイル鎖(C16)であることが好ましい。
【0029】
本発明による皮膚外用剤組成物に用いるこのようなペプチドの濃度は0.0001%(p/p)〜1%(p/p)までさまざまに設定することができるが、0.001%(p/p)〜0.05%(p/p)であることが好ましい。
【0030】
発明を実現する方法により、ヘスペリジンメチルカルコンを含有する皮膚外用剤組成物の濃度は0.05〜1.0%(p/p)とし、合成ペプチドH−Val−Trp−OR(RはHまたはCHまたは−NH)の濃度は0.001〜0.01%(p/p)、ペプチドR−Gly−Gln−Pro−Arg−OH(RはHまたは炭素数2〜18のアルキル鎖)とした。
【0031】
この組成物には皮膚軟化ローション、乳液またはクリーム、皮膚または毛髪ケア用乳液またはクリーム、クレンジングクリーム、ローションまたは乳液、ファンデーション、日焼け止めローション、乳液またはクリーム、日焼け用ローション、乳液またはクリーム、シェービングクリームまたはムース、アフターシェーブローション、シャンプー、口紅、マスカラまたはマニキュアなどがある。また、このような組成物には唇の着色またはひび割れ防止用のスティック、あるいはアイメーキャップ用品または顔用の紅白粉およびファンデーションなどもある。
【0032】
本発明を実現する組成物には、水溶性グリコール、抽出脂質または合成脂質、イオン性または非イオン性増粘剤、鎮痛剤、乳白剤、安定剤、皮膚軟化剤、シリコン、α-ヒドロキシ酸、消泡剤、水和剤、ビタミン、香料、保存料、金属イオン封鎖剤、着色剤、高分子ゲルおよびビスコース、表面活性剤および乳化剤、他の水溶性または脂溶性有効成分、植物抽出物、組織抽出物、海洋抽出物、日焼け止め剤、抗酸化物質のうち1つ以上(複数が好ましい)の成分を含有することができる。
【0033】
本特許請求の対象である(a)〜(c)の3つの成分(ヘスペリジン、アンギオテンシン変換酵素阻害ペプチドおよびH−(AA)−Pro−Arg−OH)は、本発明による目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物に適切な賦形剤と予め混合して用いるか、溶液、分散液、乳剤、泥膏または粉末として用いることができる。このような組成物はマクロカプセル、マイクロカプセルまたはナノカプセル、リポソームまたはキロミクロン、マクロ粒子、マイクロ粒子またはナノ粒子あるいはマイクロスポンジなどの担体によって単独または併用により送達することができる。また、粉末有機高分子、タルク、ベントナイトおよび他の鉱物に吸収させることもできる。
【0034】
本発明の一例として代表的な化粧品処方をいくつか記載する。
【表1】
Figure 0003730603
【0035】
下準備を必要とせずに得られるこのジェルは、浮腫性浸潤を抑制するために顔の肌、特に目の周りに連日適用することができる。
【0036】
【表2】
Figure 0003730603
【0037】
この乳剤は顔の肌、特に皮膚の脆弱な部位の水分補給、再構成および鎮静化に用いることができる。
【0038】
この説明の最初に記載した作用の実施例を以下に示す。
実施例3:アンギオテンシン変換酵素を阻害するためのジペプチドVal-Trpの作用変換酵素(EC 3.4.15.1)により合成ペンタペプチドFAPGGがFAPおよびグリコグリシンに分解される。340nmで光学密度(ΔO.D.)の変化を測定したところFAPGGの消失と完全に比例しており、これによりこの変換酵素の作用を定量化することができる。
【0039】
同じ原理に従って、さまざまな濃度で分子の阻害作用を検討した。下の表に別々の5件の試験により得られた結果(平均、標準偏差)を示す。
【0040】
【表3】
Figure 0003730603
【0041】
以上の結果から、このペプチドのN末端部分を修飾した場合には阻害作用が失われ、これをエステル化した場合には阻害作用が維持されることが明らかになった。
【0042】
実施例4:パルミトイル-Gly-Gln-Pro-Arg-OH(Pal-GQPR)の抗炎症作用:IL-6の比率の調整さまざまな濃度(10〜45ppm)のペプチドPal-GQPRの存在下または非存在下で健常人の線維芽細胞および角化細胞を通常の環境下で培養した。24時間後、この細胞を同じ環境下で(ただしPal-GQPRの非存在下で)洗浄し35mJ/cm2-1で照射したのち、この細胞をPal-GQPR存在下または非存在下で最初の培養と同じ濃度で48時間培養した。続いて標準のElisaキットを用いてIL-6を定量した。
【0043】
下の表にパルミトイル-Gly-Gln-Pro-Arg-OHを用いて実施した5件の試験で得られた結果を示す。以下の結果(平均、σ)はpg/ml-1/20,000cells-1で示す。
【0044】
【表4】
Figure 0003730603
【0045】
以上のデータから、ペプチドPal-GQPRは検討した2種類の細胞に対する重要な作用が2つあることが明らかになった。
・IL-6の比率の低下:検討した濃度ではいずれもIL-6の比率が低下し、検討した最高濃度では線維芽細胞で26.4%、角化細胞で49.2%低下した。
・紫外線照射によるIL-6過剰産生の抑制:検討した濃度ではいずれも無処置細胞で比率の低下が認められ、検討した最高濃度では線維芽細胞で-48.0%、角化細胞で-56.8%であった。
最後に、上に記載した作用は使用した製品の濃度に完全に依存しており、このことからペプチドの作用は特異的であるという考えをさらに強めることとなった。同じ条件下で別の配列を用いた場合にも同じような結果が得られた。
【0046】
例5:抗たるみ作用21例(平均年齢51歳)を対象に、本特許請求の対象とする3種類の有効成分を含有するクリームの使用を検討した。以下の処方を検討した。
【表5】
Figure 0003730603
【0047】
自己評価/質問表のほか、1/100mmの精度で顔表面の変化を測定する「干渉縞投影」により目の下の「たるみ」を評価した。被験製品を当該部位に1日2回56日間適用した。第1日目〜第56日目まで測定を行った。この試験結果をまとめると、「たるみ」を深さ1mmまで軽減することができた。さらに、被験者の大半が「抗たるみ」効果が認められたと評価している。
【0048】
【発明の効果】
本発明に係る目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物は、化粧品として許容できる媒体に少なくとも、a)ヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体、b)ジペプチドの構造がH - Val - Trp - OHであるアンギオテンシン変換酵素(EC 3.4.15.1)阻害ジペプチドおよびc)オリゴペプチドR-(AA)-Pro-Arg-OH[式中、(AA)はアミノ酸残基(AA)またはアミノ酸誘導体をもつペプチド残基、は1〜3、RはHまたは炭素数2〜22のアルキル鎖を表す]の3成分を含有するから加齢および疲労の視覚的徴候、特に目の下の「たるみ」および「くま」の治療をすることができる。

Claims (10)

  1. 以下のa)〜c)の3成分を含有することを特徴とする目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
    a)ヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体
    b)ジペプチドの構造がH−Val−Trp−OHであるアンギオテンシン変換酵素(EC 3.4.15.1)阻害ジペプチド。
    c)オリゴペプチドR−(AA)−Pro−Arg−OH[式中、(AA)はアミノ酸残基(AA)またはアミノ酸誘導体をもつペプチド残基、は1〜3、RはHまたは炭素数2〜22のアルキル鎖を表す]。
  2. ヘスペリジン誘導体がヘスペリジンメチルカルコンであることを特徴とする請求項1に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
  3. ジペプチドを化学合成、酵素法、発酵または植物由来タンパク質からの抽出により得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
  4. オリゴペプチドがH−Gly−Gln−Pro−Arg−OHまたはパルミトイル−Gly−Gln−Pro−Arg−OHであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
  5. オリゴペプチドを化学合成、酵素法、発酵または植物由来タンパク質からの抽出により得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
  6. 濃度0.001重量%〜50重量%のヘスペリジンまたはヘスペリジン誘導体を使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
  7. 濃度0.0001%重量%〜1重量%のアンギオテンシン変換酵素阻害ジペプチドを使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
  8. −(AA)−Pro−Arg−OHの配列をもつ濃度0.0001重量%〜1重量%のオリゴペプチドを使用することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
  9. 請求項1に記載のa)〜c)の成分を溶液、分散液、乳剤、泥膏または粉末として単独で用いるか予め混合して用いるほか、マクロカプセル、マイクロカプセルまたはナノカプセルなどの担体、リポソームまたはキロミクロン、マクロ粒子、マイクロ粒子またはナノ粒子あるいはマイクロスポンジによって単独で送達するか予め混合して送達する、あるいは粉末有機高分子、タルク、ベントナイトおよび他の鉱物に吸収させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
  10. 請求項1に記載のa)〜c)の成分のほか、通常化粧品に混合する有機溶剤または水溶性グリコール、抽出脂質または合成脂質、イオン性または非イオン性増粘剤、鎮痛剤、乳白剤、安定剤、皮膚軟化剤、シリコン、α―ヒドロキシ酸、消泡剤、水和剤、ビタミン、香料、保存料、金属イオン封鎖剤、着色剤、高分子ゲルおよびビスコース、表面活性剤および乳化剤、他の水溶性または脂溶性有効成分、植物抽出物、組織抽出物、海洋抽出物、日焼け止め剤、抗酸化物質のうち1つ以上の成分を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の目の下のたるみおよびくまを緩和するための皮膚外用剤組成物。
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