a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明すると、図1は同実施形態に係る半導体で構成した角速度検出素子の平面図であり、図2は同素子の各部の断面図である。なお、図1及び図2においては、基板10上面との間に隙間のある部材と隙間のない部材とで模様を異ならせて示している。
この角速度検出素子は、水平面内にて互いに直交したX,Y軸各方向の中心線に対してそれぞれ対称に形成されており、シリコンで方形状に形成された基板10上に、振動子20、一対のメインフレーム30−1,30−2及び一対のサブフレーム30−3,30−4をその上面から所定距離だけ隔てた水平面内に延設させている。これらの振動子20及び各フレーム30−1,30−2,30−3,30−4は、基板10上に振動可能に支持された振動部を構成する。
振動子20は、X軸方向に振動している状態で、X,Y両軸に直交するZ軸回りの角速度によって同角速度の大きさに比例した振幅でY軸方向に振動するもので、中央部に設けられて適当な質量を有するとともにX軸及びY軸を各辺の延設方向とする方形状のマス部21と、同マス部21の各対角位置からX軸方向に延設された4つのアーム部22−1〜22−4とからなるほぼH型に形成されている。マス部21、アーム部22−1〜22−4などの幅広の部分には、複数の方形状の貫通孔21aが設けられている。
メインフレーム30−1,30−2は、振動子20をX軸方向に振動させるもので、振動子20のアーム部22−1〜22−4のY軸方向外側位置にてX軸方向にそれぞれ延設された幅広の長尺部31−1,31−2と、両長尺部31−1,31−2の両端にてそれらの両側にそれぞれY軸方向に短く延設された幅広の終端部32−1〜32−4とからなるほぼI型にそれぞれ形成されている。サブフレーム30−3,30−4も、幅広に構成されていて、長尺部31−1,31−2の各外側にてX軸方向にそれぞれ延設されている。これらのメインフレーム30−1,30−2及びサブフレーム30−3,30−4においても、前記振動子20における貫通孔21aと同様な貫通孔が設けられている。
この場合、メインフレーム30−1,30−2における終端部32−1,32−3のY軸方向各内側端及び終端部32−2,32−4のY軸方向各内側端との各間には隙間がそれぞれ設けられている。このことは、メインフレーム30−1,30−2が振動子20の全周囲を囲むことなく、Y軸方向に複数に分割されていることを意味する。
メインフレーム30−1,30−2は、梁33−1〜33−4により振動子20に連結されている。梁33−1〜33−4も、基板10上面から所定距離だけ隔てた水平面内にてX軸方向に延設されており、各一端は振動子20のアーム部22−1〜22−4の根元付近にそれぞれ接続され、各他端はメインフレーム30−1,30−2の各終端部32−1〜32−4にそれぞれ接続されている。また、梁33−1〜33−4は、振動子20のアーム部22−1〜22−4、メインフレーム30−1,30−2の長尺部31−1,31−2及び終端部32−1〜32−4の幅より細く構成されている。これにより、メインフレーム30−1,30−2から振動子20へY軸方向の振動が伝達され難くかつX軸方向の振動が効率よく伝達されるようになるとともに、振動子20がメインフレーム30−1,30−2に対しX軸方向に比べてY軸方向に振動し易くなっている。すなわち、梁33−1〜33−4は、振動子20を、基板10、メインフレーム30−1,30−2及びサブフレーム30−3,30−4に対してY軸方向に振動可能に支持する機能を有する。
メインフレーム30−1は、アンカ41−1,41−2、梁42−1,42−2、サブフレーム30−3及び梁43−1,43−2を介し、基板10に対して振動可能に支持されている。アンカ41−1,41−2は、図2(A)に示すように、メインフレーム30−1の長尺部31−1の各外側位置にて、基板10の上面に固着されている。アンカ41−1,41−2には梁42−1,42−2の各一端がそれぞれ接続されるとともに、同梁42−1,42−2はアンカ41−1,41−2からそれぞれY軸方向外側に延設されている。梁42−1,42−2の各先端はサブフレーム30−3の内側端にそれぞれ接続されており、サブフレーム30−3には、同フレーム30−3のY軸方向内側に延設された梁43−1,43−2の各一端がそれぞれ接続されている。梁43−1,43−2の各他端はメインフレーム30−1の長尺部31−1の外側端にそれぞれ接続されている。梁42−1,42−2,43−1,43−2は、振動子20、メインフレーム30−1,30−2及びサブフレーム30−3,30−4と同様に、基板10から所定距離だけ上方に浮いて設けられており、梁33−1,33−2と同様に狭い幅に構成されている。
メインフレーム30−2は、アンカ41−3,41−4、梁42−3,42−4、サブフレーム30−4及び梁43−3,43−4を介し、基板10に対して振動可能に支持されている。これらのアンカ41−3,41−4、梁42−3,42−4、サブフレーム30−4及び梁43−3,43−4は、アンカ41−1,41−2、梁42−1,42−2、サブフレーム30−3及び梁43−1,43−2とY軸方向の中心線に対して対称かつそれぞれ同様に構成されている。これらの構成により、メインフレーム30−1,30−2は、基板10に対しX軸方向に振動し易くかつY軸方向に振動し難く支持されている。すなわち、梁42−1〜42−4,43−1〜43−4は、メインフレーム30−1,30−2、サブフレーム30−3,30−4及び振動子20を基板10に対してX軸方向に振動可能に支持する機能を有する。また、サブフレーム30−3,30−4は、補強部材として作用して、梁42−1〜42−4,43−1〜43−4をX軸方向以外に変形し難くする。なお、これらのアンカ41−1〜41−4、梁42−1〜42−4,43−1〜43−4,33−1〜33−4が、振動部(振動子20及びフレーム30−1〜30−4)を基板10に対して振動可能に支持する支持部材を構成する。
また、基板10上には、メインフレーム30−1,30−2を基板10に対してX軸方向に駆動するための駆動電極部51−1〜51−4と、前記メインフレーム30−1,30−2の基板10に対するX軸方向の駆動をモニタするための駆動モニタ電極部52−1〜52−4と、振動子20の基板10に対するY軸方向の振動を検出するための検出電極部53−1〜53−4とが設けられている。
駆動電極部51−1〜51−4は、メインフレーム30−1,30−2の終端部32−1〜32−4の各X軸方向外側位置にて同終端部32−1〜32−4に向けてX軸方向に延設した複数の電極指を有する櫛歯状電極51a1〜51a4をそれぞれ備えている。各櫛歯状電極51a1〜51a4は、図2(B)に示すように、同電極51a1〜51a4に接続されたパッド部51b1〜51b4と共にそれぞれ一体的に形成されて基板10の上面に固着されており、パッド部51b1〜51b4の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド51c1〜51c4がそれぞれ設けられている。終端部32−1〜32−4には、X軸方向外側に向けて延設した複数の電極指からなる櫛歯状電極32a1〜32a4が櫛歯状電極51a1〜51a4に対向してそれぞれ設けられている。櫛歯状電極32a1〜32a4は、終端部32−1〜32−4と一体的に形成されて基板10の上面から所定距離だけ浮かして設けられており、同電極32a1〜32a4の各電極指は櫛歯状電極51a1〜51a4の各隣合う電極指の幅方向中心位置に侵入して同隣合う電極指に対向している。
駆動モニタ電極部52−1〜52−4は、メインフレーム30−1,30−2の終端部32−1〜32−4の各X軸方向内側位置にて同終端部32−1〜32−4に向けてX軸方向に延設した複数の電極指を有する櫛歯状電極52a1〜52a4をそれぞれ備えている。各櫛歯状電極52a1〜52a4は、図2(B)及び図2(C)に示すように、同電極52a1〜52a4に接続されたパッド部52b1〜52b4と共にそれぞれ一体的に形成されて基板10の上面に固着されており、パッド部52b1〜52b4の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド52c1〜52c4がそれぞれ設けられている。終端部32−1〜32−4には、X軸方向内側に向けて延設した複数の電極指からなる櫛歯状電極32b1〜32b4が櫛歯状電極52a1〜52a4に対向してそれぞれ設けられている。櫛歯状電極32b1〜32b4は、終端部32−1〜32−4と一体的に形成されて基板10の上面から所定距離だけ浮かして設けられており、同電極32b1〜32b4の各電極指は櫛歯状電極52a1〜52a4の各隣合う電極指の幅方向中心位置に侵入して同隣合う電極指に対向している。
検出電極部53−1〜53−4は、マス部21の各外側位置にてX軸方向内外両側に延設された複数の電極指を有する櫛歯状電極53a1〜53a4をそれぞれ備えている。各櫛歯状電極53a1〜53a4は、図2(D)に示すように、同電極53a1〜53a4に接続されたパッド部53b1〜53b4と共にそれぞれ一体的に形成されて基板10の上面に固着されており、パッド部53b1〜53b4の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド53c1〜53c4がそれぞれ設けられている。振動子20のマス部21には、X軸方向外側に向けて延設した複数の電極指からなる櫛歯状電極21a1〜21a4が櫛歯状電極53a1〜53a4の各一方に対向してそれぞれ設けられている。振動子20のアーム部22−1〜22−4の中間部にも、X軸方向内側に向けて延設した複数の電極指からなる櫛歯状電極22a1〜22a4が櫛歯状電極53a1〜53a4の各他方に対向してそれぞれ設けられている。櫛歯状電極21a1〜21a4,22a1〜22a4は、マス部21及びアーム部22−1〜22−4と一体的に形成されて基板10の上面から所定距離だけ浮かして設けられており、同電極21a1〜21a4,22a1〜22a4の各電極指は櫛歯状電極53a1〜53a4の各隣合う電極指間に侵入して同隣合う電極指に対向している。この場合、櫛歯状電極21a1〜21a4,22a1〜22a4の各電極指は櫛歯状電極53a1〜53a4の隣合う各電極指の幅方向中心位置から一方にずれて設けられている。
さらに、基板10上には、振動子20に梁33−3,33−4、メインフレーム30−2、梁43−3,43−4、サブフレーム30−4、梁42−3及びアンカ41−3を介して電気的に接続されたパッド部20aが設けられている。パッド部20aは、アンカ41−3と一体的に形成されて基板10の上面に固着されており、パッド部20aの上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド20bが設けられている。
次に、上記構成の角速度検出素子の製造方法を、図2を参照しながら簡単に説明しておく。まず、単結晶シリコン層Aの上面上にシリコン酸化膜Bを介して単結晶シリコン層Cを設けたSOI(Silicon−On−Insulator)基板を用意し、単結晶シリコン層Cにリン、ボロン等の不純物をドーピングして同層Cを低抵抗化する。以下、この層を低抵抗層Cという。次に、図1の模様を付けた部分(ただし、振動子20の貫通孔21a、メインフレーム30−1,30−2及びサブフレーム30−3,30−4の貫通孔を除く)及び各種電極指部分をレジスト膜にてマスクして、単結晶シリコン層Cを反応性イオンエッチング等でエッチングして、シリコン酸化膜B上に、アンカ41−1〜41−4、各種櫛歯状電極51a1〜51a4、52a1〜52a4、53a1〜53a4、及び各種パッド部20a、51b1〜51b4、52b1〜52b4、53b1〜53b4など(上記に基板10と固着されているとして説明した部分)を形成する。
次に、前記形成した部分以外の部分に残存する酸化シリコン膜Bをフッ酸水溶液などでエッチングして除去し、振動子20、梁33−1〜33−4、メインフレーム30−1,30−2、サブフレーム30−3,30−4、梁42−1〜42−4,43−1〜43−2及び櫛歯状電極32a1〜32a4,32b1〜32b4,21a1〜21a4,22a1〜22a4(上記に基板10から所定距離だけ浮いているとして説明した部分)を形成する。そして、各種パッド部20a、51b1〜51b4、52b1〜52b4、53b1〜53b4上に、アルミニウム等を蒸着して電極パッド20b、51c1〜51c4、52c1〜52c4、53c1〜53c4を形成する。したがって、基板10上に形成された上述した各部分は基板10とは絶縁された低抵抗層Cで構成されるとともに、振動子20、梁33−1〜33−4、メインフレーム30−1,30−2、サブフレーム30−3,30−4、梁42−1〜42−4,43−1〜43−4及び櫛歯状電極32a1〜32a4,32b1〜32b4,21a1〜21a4,22a1〜22a4が、基板10から所定距離だけ浮いて位置するとともにアンカ41−1〜41−4により基板10に振動可能に支持された構造となる。
上記のように構成した角速度検出素子を用いて角速度を検出するための電気回路装置について説明すると、図3は同電気回路装置をブロック図により示している。
検出電極部53−1,53−2の電極パッド53c1,53c2には高周波発振器61が接続されており、同発振器61は、振動子20の共振周波数よりも極めて高い周波数f1の検出用信号E1sin(2πf1t)を同パッド53c1,53c2に供給する。この高周波発振器61には位相反転回路61aが接続されており、同回路61aは前記検出用信号E1sin(2πf1t)の位相を反転した検出用信号E1sin(2πf1t+π)を検出電極部53−3,53−4の電極パッド53c3,53c4に供給する。
駆動モニタ電極部52−1,52−3の電極パッド52c1,52c3には高周波発振器62が接続されており、同発振器62は、振動子20の共振周波数よりも極めて高くかつ前記周波数f1とは異なる周波数f2のモニタ用信号E2sin(2πf2t)を同パッド52c1,52c3に供給する。高周波発振器62には位相反転回路62aが接続されており、同回路62aはモニタ用信号E2sin(2πf2t)の位相を反転したモニタ用信号E2sin(2πf2t+π)を駆動モニタ電極部52−2,52−4の電極パッド52c2,52c4に供給する。これにより、振動子20のX,Y軸方向の各振動をE0xsin(2πf0t),E0ysin(2πf0t)で表すと、電極パッド20bから出力されて振動子20のX,Y両軸方向の各振動をそれぞれ表す信号は、E2・E0x・sin(2πf0t)・sin(2πf2t),E1・E0y・sin(2πf0t)・sin(2πf1t)となる。なお、周波数f0は、振動子20の共振周波数近傍の周波数である。
駆動電極部51−1〜51−4の各電極パッド51c1〜51c4には、駆動回路70が接続されている。駆動回路70は、電極パッド20bから増幅器63を介して入力した信号に基づいて駆動信号を形成して各電極パッド51c1〜51c4に供給する。
駆動回路70は、増幅器63に直列接続された復調回路71、移相回路72及び利得制御回路73を備えているとともに、復調回路71に接続されて利得制御回路73の利得を制御する検波回路74を備えている。復調回路71は、電極パッド20bから出力された信号を周波数f2で同期検波して(周波数2πf2の信号の振幅エンベロープを取り出して)、振動子20のX軸方向の振動成分を表す信号E0xsin(2πf0t)を出力する。移相回路72は、振動子20の振動を表す検出信号が振動子20を駆動するための信号に対してπ/2(=1/8πf0秒に相当)だけ遅れることを補正するために、入力信号の位相をπ/2だけ進めて出力する。検波回路74は、前記復調回路71からの信号を周波数f0で同期検波して(振動子20のX軸方向の振動成分の振幅エンベロープを取り出して)、振動子20のX軸方向の振動成分の振幅を表す信号E0xを出力する。利得制御回路73は、移相回路72及び利得制御回路73の入力信号の振幅(振動子20のX軸方向の振動成分の振幅)が一定となるように、移相回路72からの出力信号の利得を検波回路74からの信号E0xに応じて制御して出力する、すなわち検波回路74からの信号が大きくなるにしたがって利得制御回路73の出力信号の振幅が小さくなるように制御して出力する。
また、駆動回路70は、利得制御回路73の出力に接続された加算器75−1,75−3も備えているとともに、利得制御回路73に位相反転回路73aを介して接続された加算器75−2,75−4も備えている。位相反転回路73aは、利得制御回路73からの信号を位相反転して出力する。加算器75−1,75−2には可変調整される直流電圧ETを出力する可変電圧源回路76aが接続されるとともに、加算器75−3,75−4には固定された直流電圧EBを出力する定電圧源回路76bが接続されている。
加算器75−1は、利得制御回路73からの信号E0x'sin(2πf0t)と可変電圧源回路76aからの直流電圧信号ETとを加算して、加算電圧ET+E0x'sin(2πf0t)を駆動電極部51−1の電極パッド51c1に供給する。加算器75−2は、位相反転回路73aからの信号E0x'sin(2πf0t+π)と可変電圧源回路76aからの直流電圧信号ETとを加算して、加算電圧ET+E0x'sin(2πf0t+π)を駆動電極部51−2の電極パッド51c2に供給する。加算器75−3は、利得制御回路73からの信号E0x'sin(2πf0t)と定電圧源回路76bからの直流電圧信号EBとを加算して、加算電圧EB+E0x'sin(2πf0t)を駆動電極部51−3の電極パッド51c3に供給する。加算器75−4は、位相反転回路73aからの信号E0x'sin(2πf0t+π)と定電圧源回路76bからの直流電圧信号EBとを加算して、加算電圧EB+E0x'sin(2πf0t+π)を駆動電極部51−4の電極パッド51c4に供給する。
また、増幅器63には、直列接続された復調回路81、検波回路82及び増幅器83からなる出力回路80が接続されている。復調回路81は、電極パッド20bから出力された信号を周波数f1で同期検波して(周波数f1の信号の振幅エンベロープを取り出して)、振動子20のY軸方向の振動成分を表す信号E0ysin(2πf0t)を出力する。検波回路82は、前記復調回路81からの信号を周波数f0で同期検波して(振動子20のY軸方向の振動成分の振幅エンベロープを取り出して)、振動子20のY軸方向の振動成分の振幅を表す信号E0yを出力する。増幅器83は、前記信号E0yを入力して出力端子OUTから振動子20のY軸方向の振動の大きさを表す直流信号を出力する。
上記のように構成した第1実施形態においては、図3に示すように角速度検出素子を電気回路装置に接続して角速度検出装置を構成した後、同装置の出荷前にZ軸回りの角速度を「0」にした状態で出力端子OUTから振動子20のY軸方向の振動の大きさを表す信号を取り出す。この場合、角速度「0」であるから、前記出力信号は「0」であるはずであるが、「0」でなければ可変電圧源回路76aを調整することにより直流電圧信号ETを変更して、同出力信号が「0」になるようにする。
この点について説明を加えると、駆動電極部51−1,51−2には駆動電圧信号ET+E0x'sin(2πf0t),ET+E0x'sin(2πf0t+π)=ET−E0x'sin(2πf0t)が印加されるとともに、駆動電極部51−3,51−4には駆動電圧信号EB+E0x'sin(2πf0t),EB+E0x'sin(2πf0t+π)=EB−E0x'sin(2πf0t)が印加されている。角速度検出素子が精度よく構成されている場合には、可変電圧源回路76aからの直流電圧信号ETと定電圧源回路76bからの直流電圧信号EBとを等しく設定すれば、メインフレーム30−1,30−2には静電引力による均等な力がX軸方向に作用し、同メインフレーム30−1,30−2は振動周波数f0でX軸方向に同期するとともに同一振幅でそれぞれ振動するはずである。そして、この振動は、梁33−1〜33−4を介して振動子20にも伝達され、同振動子20はX軸方向にしか振動しないはずである。したがって、出力端子OUTから取り出された振動子20のY軸方向の振動の大きさを表す信号は「0」になるはずである。
なお、この場合、高周波発振器62、位相反転回路62a及び駆動モニタ電極部52−1〜52−4の作用により、X軸方向の振動成分を表す信号E2・E0x・sin(2πf0t)・sin(2πf2t)が電極パッド20b及び増幅器63を介して駆動回路70に供給される。そして、駆動回路70を構成する復調回路71、検波回路74、移相回路72及び利得制御回路73は、移相回路72及び利得制御回路73の入力信号E0xsin(2πf0t)、すなわち電極パッド20bからのX軸方向の前記振動成分が時間的に常に一定になるように作用するので、振動子20はX軸方向に常に一定振幅で振動する。
一方、角速度検出素子の各部分のばらつき、特にメインフレーム30−1,30−2、梁33−1〜33−4及び駆動電極部51−1〜51−4などの加工上のばらつきにより、メインフレーム30−1,30−2がX軸方向に均等に駆動されない場合には、前記両直流電圧信号ET,EBが等しくても、振動子20にY軸方向の振動が発生する。ここで、メインフレーム30−1,30−2への各駆動力F1,F2に着目すると、駆動力F1は、前記駆動電圧信号ET+E0x'sin(2πf0t),ET−E0x'sin(2πf0t)によるもので、Kを比例定数とすると下記数1で表される。
F1=K・{(ET+E0x'sin(2πf0t))2−(ET−E0x'sin(2πf0t))2}
=4・K・ET・E0x'sin(2πf0t) …数1
また、駆動力F2は、前記駆動電圧信号EB+E0x'sin(2πf0t),EB−E0x'sin(2πf0t)によるもので、下記数2で表される。
F1=K・{(EB+E0x'sin(2πf0t))2−(EB−E0x'sin(2πf0t))2}
=4・K・EB・E0x'sin(2πf0t) …数2
これらの数1,数2からも理解できるように、可変電圧源回路76aから出力される直流電圧信号ETの大きさを変更することにより、メインフレーム30−1,30−2に対する両駆動力の大きさを調整することができる。したがって、振動子20及びメインフレーム30−1,30−2のY軸方向の振動成分を除去できる。
このように、上記第1実施形態によれば、振動子20及びメインフレーム30−1,30−2をX軸方向に駆動するための駆動電極部51−1〜51−4を複数に分割するとともに、各駆動電極部51−1〜51−4に加えられる駆動電圧信号を独立して可変調整するようにしたので、メインフレーム30−1,30−2、梁33−1〜33−4及び駆動電極部51−1〜51−4などに加工上のばらつきがあっても、同加工上のばらつきによる振動子20のY軸方向の漏れ振動を簡単に除去できる。
次に、前記調整を終えた角速度検出装置を使ってZ軸回りの角速度を検出する動作について説明する。まず、この角速度検出装置を角速度を検出しようとする物体に固定して、前述のように電気回路装置を作動させる。この状態で、Z軸回りに角速度が作用すると、振動子20はコリオリ力によって前記角速度に比例した振幅でY軸方向に振動し始める。
この場合、振動子20のY軸方向への振動により検出電極部53−1〜53−4の静電容量が前記振動に応じて変化する。そして、この静電容量の変化は、高周波発振器61及び位相反転回路61aから出力された検出用信号E1sin(2πf1t),E1sin(2πf1t+π)=−E1sin(2πf1tπ)の振幅を変調した信号、すなわちE1・E0y・sin(2πf0t)・sin(2πf1t)となって電極パッド20bに現れ、増幅器63を介して出力回路80に出力される。出力回路80は、復調回路81、検波回路82及び増幅器83の作用により、出力端子OUTから前記振動子20のY軸方向の振動の大きさを表す信号E0yを出力する。そして、このY軸方向の振動の大きさはZ軸回りの角速度に比例するので、同角速度を表す検出信号が出力端子OUTから出力されることになる。
上述したように、この第1実施形態に係る角速度検出素子においては、振動子20、メインフレーム30−1,30−2及びサブフレーム30−3,30−4は、駆動用梁(支持部材)として機能するY軸方向に延設された梁42−1〜42−4,43−1〜43−4により、基板10上にX軸方向に振動可能に支持されると同時に、振動子20は、検出用梁(支持部材)として機能するX軸方向に延設された梁33−1〜33−4により、基板10上にY軸方向に振動可能に支持される。そして、基板10上には、Y軸方向の異なる位置に配置されて振動子20、メインフレーム30−1,30−2及びサブフレーム30−3,30−4を独立してX軸方向に駆動可能な駆動電極部51−1〜51−4が設けられており、これらの駆動電極部51−1〜51−4による各駆動力が駆動回路70によって調整されるようになっているので、角速度検出素子の各部に加工上のばらつきがあっても、振動子20、メインフレーム30−1,30−2及びサブフレーム30−3,30−4のX軸方向の振動が精度よくかつ安定して確保され、Z軸回りの角速度も精度よく検出される。
また、上述のように、メインフレーム30−1,30−2は振動子20の全周囲を囲むことなくY軸方向に複数に分割され、振動子20を介して梁33−1〜33−4によって弾性的に接続されているので、温度変化、外力などの外的要因によりY軸方向に反りが発生するなど基板10が変形しても、同変形が梁33−1〜33−4によって吸収され、メインフレーム30−1,30−2が互いに影響し合うことを抑制することができるとともに、梁42−1〜42−4,43−1〜43−4の各変形量を小さく抑えることができる。したがって、前記外的要因による梁42−1〜42−4,43−1〜43−4における内部応力の発生を極めて小さく抑えることができて、駆動用梁のばね定数の線形性を良好に保つことができるとともに、同梁42−1〜42−4,43−1〜43−4の最大変形量を大きくすることができるので、振動子20を安定かつ大振幅でX軸方向に精度よく振動させることができ、この点においても、前記Z軸回りの角速度の検出精度を高めることができる。
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る角速度検出装置について説明すると、図4は上記図1と同様な手法で示した第2実施形態に係る角速度検出素子の平面図である。
この角速度検出素子は、上記第1実施形態の角速度検出素子に、駆動によるメインフレーム30−1,30−2の斜め振動(Y軸方向の振動成分)の影響を打ち消すための補正電極部54−1〜54−4を設けたことを特徴としている。他の部分に関しては、上記第1実施形態と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。
補正電極部54−1〜54−4は、メインフレーム30−1,30−2の各終端部32−1〜32−4のY軸方向内側部分にてX軸方向内外両側にそれぞれ設けられて、X軸方向に延設した複数の電極指を有する櫛歯状電極54a1〜54a4をそれぞれ備えている。各櫛歯状電極54a1〜54a4は、同電極54a1〜54a4に接続されたパッド部54b1〜54b4と共にそれぞれ一体的に形成されて基板10の上面に固着されており、パッド部54b1〜54b4の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド54c1〜54c4がそれぞれ設けられている。メインフレーム30−1,30−2の各終端部32−1〜32−4のY軸方向内側部分には、X軸方向内外両側に向けて延設した複数の電極指からなる櫛歯状電極32c1〜32c4が櫛歯状電極54a1〜54a4に対向してそれぞれ設けられている。櫛歯状電極32c1〜32c4は、メインフレーム30−1,30−2と一体的に形成されて基板10の上面から所定距離だけ浮かして設けられており、同電極32c1〜32c4の各電極指は櫛歯状電極54a1〜54a4の各隣合う電極指間に侵入して同隣合う電極指に対向している。
この場合も、櫛歯状電極32c1〜32c4の各電極指は櫛歯状電極54a1〜54a4の隣合う各電極指の幅方向中心位置から一方にずれて設けられているが、この場合には、櫛歯状電極32c1〜32c4の各電極指のずれ方向は、上述した検出電極部53−1〜53−4における各櫛歯状電極54a1〜54a4の電極指に対する櫛歯状電極21a1〜21a4,22a1〜22a4の電極指のずれ方向とは逆になっている。したがって、この場合には、メインフレーム30−1,30−2のY軸方向の変位による補正電極部54−1〜54−4の容量(キャパシタンス)変化は、振動子20の前記と同じY軸方向の変位による検出電極部53−1〜53−4の容量変化と逆に変化する。すなわち、メインフレーム30−1,30−2と振動子20のY軸同一方向の変位に対して、補正電極部54−1〜54−4の容量が増加(又は減少)するときには、検出電極部53−1〜53−4の容量は減少(又は増加)する。なお、メインフレーム30−1,30−2のY軸方向の不要な振動によってもたらされる補正電極部54−1〜54−4の容量変化が、振動子20のY軸方向の不要な振動によってもたらされる検出電極部53−1〜53−4の容量変化に対して反対かつ同じ大きさになるように、補正電極部54−1〜54−4及び検出電極部53−1〜53−4を構成しておく必要がある。
次に、この角速度検出素子に接続される第1電気回路装置について説明すると、図5は同電気回路装置をブロック図により示している。この電気回路装置においては、補正電極部54−1,54−2のための電極パッド54c1,54c2が、検出電極部53−1,53−2のための電極パッド53c1,53c2と共通に高周波発振器61の出力に接続されている。また、補正電極部54−3,54−4のための電極パッド54c3,54c4が、検出電極部53−3,53−4のための電極パッド53c3,53c4と共通に位相反転回路61aの出力に接続されている。他の回路については、上記第1実施形態の場合と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
このように構成した第2実施形態に係る角速度検出装置においても、上記第1実施形態と場合と同様にZ軸回りの角速度が検出されるが、この場合には、補正電極部54−1〜54−4は次のように機能する。
すなわち、駆動電極部51−1〜51−4の駆動によってメインフレーム30−1,30−2及び振動子20が基板10に対してX軸から傾いた斜め方向に振動している場合、Z軸回りの角速度が「0」であってもY軸方向の振動成分が出力端子OUTには現れてしまう。しかし、この場合、高周波発振器61からの検出用の高周波信号は、検出電極部53−1,53−2の櫛歯状電極53a1,53a2に供給されるとともに補正電極部54−1,54−2の櫛歯状電極54a1,54a2にも供給され、また位相反転回路61aからの前記高周波信号の位相を反転した信号は、検出電極部53−3,53−4の櫛歯状電極53a3,53a4に供給されるとともに補正電極部54−3,54−4の櫛歯状電極54a3,54a4にも供給されている。そして、前述のように、メインフレーム30−1,30−2と振動子20のY軸同一方向の変位に対して、補正電極部54−1〜54−4の容量は検出電極部53−1〜53−4の容量と逆に変化するように構成されているので、振動子20及びメインフレーム30−1,30−2が同時にX軸から傾いた斜め方向に振動すると、振動子20のY軸方向の振動成分によってもたらされる検出電極部53−1〜53−4の容量変化から、メインフレーム30−1,30−2のY軸方向の振動成分によってもたらされる補正電極部54−1〜54−4の容量変化分が除去される。
一方、メインフレーム30−1,30−2は支持部材としての梁42−1〜42−4,43−1〜43−4の作用によりY軸方向に振動し難く構成されているとともに、振動子20は支持部材としての梁33−1〜33−4の作用によってX軸方向にはメインフレーム30−1,30−2と一体的に振動し易く、かつY軸方向にはメインフレーム30−1,30−2と独立に振動し易く構成されている。したがって、Z軸回りの角速度に対しては、コリオリ力によって振動子20のみが同コリオリ力に比例してY軸方向に振動する。その結果、基板10上の各部品、特に前記メインフレーム30−1,30−2の加工上のばらつきによって振動子20がX軸から傾いた方向に駆動されても、前記駆動による振動子20の傾いた方向への振動による影響が除去され、角速度が精度よく検出されるようになる。
次に、前記第2実施形態に係る角速度検出素子に接続される第2電気回路装置について説明すると、図6は同電気回路装置をブロック図により示している。
この電気回路装置においては、補正電極部54−1,54−2のための電極パッド54c1,54c2は、高周波発振器64の出力に接続されている。補正電極部54−3,54−4のための電極パッド54c3,54c4は、高周波発振器64の出力を位相反転する位相反転回路64aの出力に接続されている。高周波発振器64及び位相反転回路64aは、補正電極部54−1,54−2の容量変化を検出するためのもので、同発振器64は、振動子20の共振周波数よりも極めて高くかつ高周波発振器61,62の各発振周波数f1,f2とは異なる周波数f3の補正電極用信号E3sin(2πf3t)を出力する。
また、この電気回路装置においては、増幅器63の出力に上記復調回路81、検波回路82及び増幅器83と並列に、復調回路84、検波回路85及び増幅器86が接続されている。復調回路84は、電極パッド20bから出力された信号を周波数f3で同期検波して(周波数f3の信号の振幅エンベロープを取り出して)、メインフレーム30−1,30−2のY軸方向の振動成分を表す信号E3ysin(2πf0t)を出力する。検波回路85は、前記復調回路84からの信号を周波数f0で同期検波して(メインフレーム30−1,30−2のY軸方向の振動成分の振幅エンベロープを取り出して)、メインフレーム30−1,30−2のY軸方向の振動成分の振幅を表す信号E3yを出力する。また、増幅器83,86と出力端子OUTの間には、増幅器83の出力値E0yから増幅器86の出力値E3yを減算して出力する減算器87が接続されている。
このように構成した角速度検出装置においても、上記第1実施形態と場合と同様にZ軸回りの角速度が検出されるが、この場合も、補正電極部54−1〜54−4によって検出されたメインフレーム30−1,30−2のY軸方向の振動成分を用いて、駆動による振動子20のY軸方向の振動成分が除去される。
すなわち、駆動電極部51−1〜51−4の駆動によってメインフレーム30−1,30−2及び振動子20が基板10に対してX軸から傾いた斜め方向に振動している場合、この斜め方向の振動におけるメインフレーム30−1,30−2のY軸方向の振動成分の振幅値が、復調回路84、検波回路85及び増幅器86の作用により出力値E3yとして取り出される。そして、減算器87により、振動子20のY軸方向の振動の大きさを表す増幅器83の出力値E0yから前記出力値E3yが減算されて出力端子OUTから出力される。一方、増幅器83から取り出された振動子20のY軸方向の振動を表す出力値E0yには、Z軸回りの角速度による振動成分に加えて、前記メインフレーム30−1,30−2の斜め方向の振動による不要な振動成分も含まれており、この不要な振動成分が減算器87の減算によって除去されることになる。
したがって、この第2電気回路装置を用いた角速度検出装置においても、基板10上の各部品、特に前記メインフレーム30−1,30−2の加工上のばらつきによって振動子20がX軸から傾いた方向に駆動されても、前記駆動による振動子20の傾いた方向への振動による影響が除去され、角速度が精度よく検出されるようになる。
なお、上記第2実施形態に係る角速度検出装置の第1電気回路装置においては、前記メインフレーム30−1,30−2のY軸方向の不要な振動によってもたらされる補正電極部54−1〜54−4の容量変化が、前記振動子20のY軸方向の不要な振動によってもたらされる検出電極部53−1〜53−4の容量変化に対して反対かつ同じ大きさになるように、補正電極部54−1〜54−4及び検出電極部53−1〜53−4を構成する必要がある。しかし、第2電気回路装置によれば、増幅器83,86の利得を調整することにより、前記補正電極部54−1〜54−4及び検出電極部53−1〜53−4の各容量変化の大きさが異なっていても、前記振動子20のY軸方向の不要な振動成分を除去できる。
また、この第2電気回路装置に角速度検出素子を適用する場合には、前記補正電極部54−1〜54−4の容量変化と検出電極部53−1〜53−4の容量変化とを反対にする必要もない。したがって、この場合、櫛歯状電極54a1〜54a4の隣合う各電極指の幅方向中心位置に対して櫛歯状電極32c1〜32c4の各電極指をずらす方向と、櫛歯状電極53a1〜53a4の隣合う各電極指の幅方向中心位置に対して櫛歯状電極21a1〜21a4,22a1〜22a4の各電極指をずらす方向とを一致させるようにしても、反対にするようにしてもよい。
c.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態に係る角速度検出装置について説明すると、図7は上記図1及び図4と同様な手法で示した第3実施形態に係る角速度検出素子の平面図である。
この角速度検出素子は、上記第2実施形態の角速度検出素子と比べて、メインフレーム30−1,30−2及びサブフレーム30−3,30−4の基板10に対する支持構造が異なる点、振動子20の共振周波数を調整するための調整電極部55−1〜55−4を設けた点、及び振動子20のY軸方向の振動を打ち消すためのサーボ電極部56−1〜56−4を設けた点で異なる。また、上記第2実施形態の角速度検出素子の補正電極部54−1〜54−4のためのパット部54b1〜54b4を省略して、検出電極部53−1〜53−4のパット部53b1〜53b4には補正電極部54−1〜54−4もそれぞれ共通に接続されている。このことは、上記第2実施形態の第1電気回路装置(図5)の場合のように、検出電極部53−1〜53−4のパット部53b1〜53b4と、補正電極部54−1〜54−4のためのパット部54b1〜54b4とを基板10外で接続した場合と動作上は等価であることを意味する。他の部分に関しては、上記第2実施形態と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。
まず、メインフレーム30−1,30−2及びサブフレーム30−3,30−4の基板10に対する支持構造について説明する。上記第2実施形態と同様なアンカ41−1及び梁42−1,43−1からなる1組の支持部材と、アンカ41−2及び梁42−2,43−2からなる1組の支持部材との間に、アンカ44−1及び梁45−1,46−1からなる1組の支持部材と、アンカ44−2及び梁45−2,46−2からなる1組の支持部材とがそれぞれ設けられている。
梁45−1,45−2はY軸方向に延設されており、それらの各内側端はアンカ44−1,44−2にそれぞれ接続され、それらの各外側端はサブフレーム30−3の内側端にそれぞれ接続されている。梁46−1,46−2もY軸方向に延設されており、それらの各内側端はメインフレーム30−1の長尺部31−1の外側端にそれぞれ接続され、それらの各外側端はサブフレーム30−3の内側端にそれぞれ接続されている。また、梁45−1,45−2,46−1,46−2も、梁42−1,42−2,43−1,43−2と同様に、狭い幅に構成されて基板10から所定距離だけ上方に浮いて設けられている。
この場合、梁42−1及び梁42−2は、サブフレーム30−3の両端部に同フレーム30−3及びメインフレーム30−1のX軸方向中心位置に対して対称にそれぞれ設けられており、梁43−1,45−1,46−1及び梁43−2,45−2,46−2もサブフレーム30−3及びメインフレーム30−1のX軸方向中心位置に対して対称にそれぞれ設けられている。これらの全ての梁42−1,42−2,43−1,43−2,45−1,45−2,46−1,46−2は、長さ、幅など構造的に同一であり、同一のばね定数を有するように構成されている。なお、前記全ての梁42−1,42−2,43−1,43−2,45−1,45−2,46−1,46−2を、X軸方向にほぼ等間隔に配置すると好ましい。
さらに、全ての梁42−1,42−2,43−1,43−2,45−1,45−2,46−1,46−2が、同一のばね定数でメインフレーム30−1及びサブフレーム30−3をX軸方向に正確に振動させるために、接続部の構造も工夫されている。この構造について、梁45−1,46−1を例にして図8を用いて説明する。梁45−1とアンカ44−1との接続部と、梁46−1とメインフレーム30−1の長尺部31−1との接続部の構造を合わせるために、アンカ44−1は、基盤10に固着された固着部44a1と、基板10の上面から浮かせて設けた固着部44a1のX軸方向幅に等しい接続部44b1とにより構成されている。長尺部31−1側には、アンカ44−1のX軸方向幅に等しい接続部31a1が基板10の上面から浮かせて形成されている。これらの両接続部44b1,31a1には、共に同一形状の貫通孔44b11,31a11が設けられているとともに、両貫通孔44b11,31a11のX軸方向の各数も等しく設定されている。他のアンカ41−1,41−2,44−2及び梁42−1,42−2,43−1,43−2,45−2,46−2についても、前記アンカ44−1及び梁45−1,46−1と同様に構成されている。
また、メインフレーム30−2及びサブフレーム30−4側にも、この角速度検出素子のY軸方向中心位置に対して対称に、前記アンカ41−1,41−2,44−1,44−2及び梁42−1,42−2,43−1,43−2,45−1,45−2,46−1,46−2からなる支持部材と同様なアンカ41−3,41−4,44−3,44−4及び梁42−3,42−4,43−3,43−4,45−3,45−4,46−3,46−4からなる支持部材が設けられている。
このように、この第3実施形態においては、振動子20及びメインフレーム30−1,30−2をX軸方向に振動させるために多くの駆動用の梁42−1〜42−4,43−1〜43−4,45−1〜45−4,46−1〜46−4を設けたので、前記振動子20及びメインフレーム30−1,30−2の振動の際にも一つの梁に作用する応力を小さく保つことができる。したがって、梁42−1〜42−4,43−1〜43−4,45−1〜45−4,46−1〜46−4のばね定数の線形性を良好に保つことができるとともに、それらの最大変形量を大きく保つことができるので、振動子20を安定かつ大振幅でX軸方向に精度よく振動させることが可能となり、角速度の検出精度を向上させることができる。なお、この第3実施形態では、メインフレーム30−1及びメインフレーム30−2を支持する梁及びアンカからなる各支持部材の組数をそれぞれ4組としたが、この各支持部材の組数を3組又は5組以上にしてもよい。
また、この第3実施形態においては、各梁42−1〜42−4,43−1〜43−4,45−1〜45−4,46−1〜46−4の接続構造もほぼ同じにしたので、前記振動子20及びメインフレーム30−1,30−2の振動の際にも各梁に作用する応力を均等にすることができる。これにより、梁42−1〜42−4,43−1〜43−4,45−1〜45−4,46−1〜46−4のばね定数の線形性を良好に保つとともに、それらの最大変形量を大きく保つことができるようになり、また振動子20及びメインフレーム30−1,30−2のX軸方向の正確かつ安定した振動を確保することにもなるので、角速度の検出精度が向上する。さらに、サブフレーム30−3,30−4は、メインフレーム30−1,30−2のX軸方向以外の変位に対する梁42−1〜42−4,43−1〜43−4,45−1〜45−4,46−1〜46−4の補強部材として作用するので、振動子20及びメインフレーム30−1,30−2のX軸方向の正確かつ安定した振動が確保され、角速度の検出精度が向上する。
次に、調整電極部55−1〜55−4及びサーボ電極部56−1〜56−4について説明する。調整電極部55−1〜55−4は、振動子20のマス部21のX軸方向各外側であって基板10のY軸方向中央部にそれぞれ設けられて、X軸方向に延設した各一対の電極指55a1〜55a4をそれぞれ備えている。電極指55a1,55a3は、同電極指55a1,55a3に共通に接続されたパッド部56b1と共にそれぞれ一体的に形成されて基板10の上面に固着されている。電極指55a2,55a4は、同電極指55a2,55a4に共通に接続されたパッド部55b2と共にそれぞれ一体的に形成されて基板10の上面に固着されている。パッド部55b1,55b2上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド55c1,55c2がそれぞれ設けられている。
各一対の電極指55a1〜55a4には、振動子20と一体的振動するとともにX軸方向に延設された各一対の電極指23a1〜23a4がY軸方向に対向して設けられている。電極指23a1〜23a4は、振動子20のマス部21のX軸方向両側から同X軸方向に突出したT字部23−1〜23−4の各Y軸方向内側端に一体的にそれぞれ形成されている。T字部23−1〜23−4及び電極指23a1〜23a4は、振動子20と一体的に形成されて基板10の上面から所定距離だけ浮かして設けられている。
サーボ電極部56−1〜56−4は、各検出電極部53−1〜53−4のY軸方向内側にそれぞれ設けられて、X軸方向に延設した各一対の電極指56a1〜56a4をそれぞれ備えている。各一対の電極指56a1〜56a4は、同電極指56a1〜56a4に接続されたパッド部56b1〜56b4と共にそれぞれ一体的に形成されて基板10の上面に固着されており、パッド部56b1〜56b4の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド56c1〜56c4がそれぞれ設けられている。
これらの各一対の電極指56a1〜56a4には、T字部23−1〜23−4の各Y軸方向外側端に一体的にそれぞれ形成された各一対の電極指23b1〜23b4がY軸方向に対向して設けられている。電極指23b1〜23b4も、振動子20と一体的に形成されて基板10の上面から所定距離だけ浮かして設けられている。
次に、この第3実施形態に係る角速度検出素子に接続される第1電気回路装置について説明すると、図9は同電気回路装置をブロック図により示している。この電気回路装置において、検出電極部53−1及び補正電極部54−1のための共通の電極パット53c1と、検出電極部53−2及び補正電極部54−2のための共通の電極パット53c2とには、上記高周波発振器61が接続されている。検出電極部53−3及び補正電極部54−3のための共通の電極パット53c3と、検出電極部53−4及び補正電極部54−4のための共通の電極パット53c4とには、上記位相反転回路61aが接続されている。
調整電極部55−1,55−3のための共通の電極パット55c1には直流可変電圧源65aが接続されているとともに、調整電極部55−2,55−4のための共通の電極パット55c2には直流可変電圧源65bが接続されている。なお、これらの直流可変電圧源65a,65bは、複数の電圧源で構成してもよいが、単一の電圧源を共通に用いてもよい。
サーボ電極部56−1〜56−4の電極パット56c1〜56c4には、サーボ制御回路90が接続されている。サーボ制御回路90は、振動子20のY軸方向の振動を抑制するためのもので、復調回路91、サーボアンプ92及び位相反転回路93からなる。復調回路91は、上記第2の実施形態の復調回路92と同じであり、振動子20のY軸方向の振動を表す信号を取り出して、同信号を交流サーボ制御信号として出力する。サーボアンプ92は、前記交流サーボ制御信号を所定のゲインで増幅して、振動子20のY軸方向の振動(Z軸回りの角速度による振動子20のY軸方向の振動)を打ち消すために、同ゲイン制御された交流サーボ制御信号をサーボ電極部56−3,56−4の電極パット56c3,56c4に供給する。位相反転回路93は、前記ゲインの制御された交流サーボ制御信号の位相を反転して、同位相反転した逆相の制御信号をサーボ電極部56−1,56−2の電極パット56c1,56c2に供給する。
出力回路80は、検波回路82a及び上記直流用の増幅器83が接続されている。検波回路82aは、サーボアンプ92から交流サーボ制御信号を入力するとともに、移相回路72から駆動による振動子20のX軸方向の振動を表す信号を入力し、交流サーボ制御信号を前記X軸方向の振動を表す信号で同期検波して振動子20のY軸方向の振動の振幅すなわちZ軸回りの角速度による振動子20のY軸方向の振動の大きさを表す直流信号を出力する。ここで、移相回路72の出力信号を利用するのは、同信号が振動子20のZ軸回りの角速度によりもたらされるコリオリ力の位相と同期したものであり、交流サーボ制御信号すなわち振動子20のZ軸回りの角速度に同期したものであるからである。他の回路に関しては、上記第2実施形態の第1電気回路装置と同じであるので、同回路と同一符号を付して説明を省略する。
このように構成した第3実施形態に係る角速度検出装置においては、直流可変電圧源65a,65bの電圧を変化させると、調整電極部55−1〜55−4による静電引力の大きさが変化し、Y軸方向の力に対する振動子20の変位量すなわち検出用の梁33−1〜33−4のばね定数が変更される。その結果、振動子20のY軸方向の共振周波数が適宜調整される。
また、サーボ制御回路90はサーボ電極部56−1〜56−4に交流サーボ制御信号を供給するので、サーボ電極部56−1〜56−4は振動子20のY軸方向の振動すなわちZ軸回りの角速度による振動子20のY軸方向の振動を抑制する。理想的には、振動子20のY軸方向の振動の振幅を「0」に制御する。このとき、サーボアンプ92は振動子20のY軸方向の振動を打ち消すための信号すなわちZ軸回りの角速度による振動子20のY軸方向の振動の大きさを振幅で表す信号を出力しているので、検波回路82aは前記角速度の大きさを表す直流信号を形成して増幅器83を介して出力する。したがって、実際には、振動子20はY軸方向に振動していないにもかかわらず、Z軸回りの角速度の大きさを表す信号が取り出されることになる。
その結果、この第3実施形態によれば、Z軸回りの角速度による振動子20のY軸方向の振動が基板10を介して振動子20に再入力することがなくなり、この再入力に伴うノイズの発生が抑えられ、角速度の検出精度を向上させることができる。
このようなサーボ制御について、図10のサーボ制御の原理を表すブロック図を用いて簡単に説明しておく。図中、FcはZ軸回りの角速度によって振動子20にもたらされるY軸方向のコリオリ力を表し、Fsはサーボ力を表し、Rateは角速度を表し、Nは電気回路入力部の電気的なノイズ量を表す。また、Qは振動子20の共振のQを表し、Aはサーボアンプ92のゲインを表し、bはフィードバック量を表す。このブロック図からも分かるように、角速度Rateは下記数3により表される。
Rate=(N/Q+Fc)/(1/Q・A+b) …数3
前記数3において、ゲインAを大きな値(例えば、実質的に無限大と考えれる程度に大きな値)に設定できれば、前記数3は下記数4のように変形される。
Rate=Fc/b+N/Q・b …数4
この数4において、第1項Fc/bは角速度の検出感度を表し、第2項N/Qbはノイズ成分を表す。ここで、前記のようなサーボ制御を行わない角速度検出装置(図10のフィードバックループのないもの)を想定すると、角速度Rateは下記数5のように表される。
Rate=Fc・Q・A+N・A …数5
この数5においても、第1項Fc・Q・Aは角速度の検出感度を表し、第2項N・Aはノイズ成分を表している。これらの数4,5を対比することにより、サーボ制御を行わない場合には角速度の検出感度は振動子20の共振のQに依存し、ゲインAをある程度大きくしてサーボ制御を行った場合には角速度の検出感度は振動子20の共振のQに依存しないことが理解できる。したがって、振動子20のY軸方向の振動をサーボ制御する前記第3実施形態によれば、角速度の検出感度が振動子20の共振のQに依存しなくなって、同検出感度を安定させることができる。
次に、前記第3実施形態に係る角速度検出素子に接続される第2電気回路装置について説明する。この第2電気回路装置について説明する前に、前記第1電気回路装置を用いた角速度検出装置の課題を説明しておく。この種のサーボ制御においては、振動子20の共振周波数(数〜数10KHz程度)近傍でサーボ制御を行う必要がある。一方、この種の角速度検出素子においては、図11(B)に示すように、機械的な位相遅れのために周波数軸において大きな位相ずれが生じる。この位相ずれのために、サーボループのゲインを大きく設定すると、位相ずれの大きな周波数域においてサーボ制御による発振が生じてしまう。したがって、図11(A)に示すように、サーボループのゲインをある程度小さく抑えて安定したサーボ制御を実現する必要がある。このことは、前記数3におけるゲインAをある程度小さな値に抑えざるを得ないことを意味し、その結果、前記数4で説明したような角速度の検出感度が振動子20の共振のQに依存することになり、同検出感度を充分に安定させることはできない。
このような課題のために考えられたのが第2電気回路装置であり、同電気回路装置について図12のブロック図を用いて説明する。この第2電気回路装置は、前記第1電気回路装置に対して、出力回路80及びサーボ制御回路90のみが相違するので、両回路80,90についてのみ説明する。
サーボ制御回路90は、振幅制御回路94a、検波回路95a、サーボアンプ96a及び乗算回路97aからなって角速度に応じた振動子20のY軸方向の振動を抑制するための第1サーボ制御回路と、振幅制御回路94b、検波回路95b、サーボアンプ96b及び乗算回路97bからなって振動子20の駆動によるY軸方向の漏れ振動を抑制するための第2サーボ制御回路とからなる。
振幅制御回路94aは、移相回路72の出力であって振動子20に作用するコリオリ力に同期した信号の振幅を予め決められた基準値に制御することにより、振動子20の角速度によるY軸方向の振動に同期した一定振幅の第1基準信号を形成する。検波回路95aは、復調回路91の出力であって振動子20のY軸方向の振動を表す信号を、移相回路72の出力であって振動子20に作用するコリオリ力に同期した信号(振動子20の角速度によるY軸方向の振動に同期した信号)で同期検波して、振動子20の角速度によるY軸方向の振動の大きさに比例する第1直流サーボ制御信号を形成する。サーボアンプ96aは、第1直流サーボ制御信号を所定のゲインで直流増幅して出力する。乗算回路97aは、前記第1基準信号とゲイン調整された第1直流サーボ制御信号とを乗算することにより第1基準信号の振幅を同ゲイン調整された第1直流サーボ制御信号に応じて制御し、同振幅の制御された第1基準信号を振動子20の角速度によるY軸方向の振動を抑制する制御信号として出力する。
振幅制御回路94bは、復調回路71の出力であって振動子20の駆動によるY軸方向の漏れ振動に同期した信号(前記振動子20の角速度によるY軸方向の振動に対して90度位相の遅れた信号)の振幅を予め決められた基準値に制御することにより、振動子20の駆動によるY軸方向の漏れ振動に同期した一定振幅の第2基準信号を形成する。検波回路95bは、復調回路91の出力であって振動子20のY軸方向の振動を表す信号を、復調回路71の出力であって前記振動子20の駆動によるY軸方向の漏れ振動に同期した信号で同期検波して、振動子20の駆動による漏れ振動の大きさに比例する第2直流サーボ制御信号を形成する。サーボアンプ96bは、第2直流サーボ制御信号を所定のゲインで直流増幅して出力する。乗算回路97bは、前記第2基準信号とゲイン調整された第2直流サーボ制御信号とを乗算することにより第2基準信号の振幅を同ゲイン調整された第2直流サーボ制御信号に応じて制御し、同振幅の制御された第2基準信号を振動子20の駆動によるY軸方向の漏れ振動を抑制する制御信号として出力する。
乗算回路97a,97bの出力は加算回路98に接続されており、加算回路98は両乗算回路97a,97bの各出力を加算合成してサーボ電極部56−3,56−4の電極パット56c3,56c4に供給する。位相反転回路93は、上記第1電気回路装置と同様に、前記加算回路98による合成信号の位相を反転して、同位相反転した逆相の合成信号をサーボ電極部56−1,56−2の電極パット56c1,56c2に供給する。
また、出力回路80は、上記第1電気回路装置と同様な増幅器83を備えていて、同増幅器83はサーボアンプ96aの出力を直流増幅して出力する。
このように構成した第2電気回路装置においては、第1サーボ制御回路は、角速度に応じた振動子20のY軸方向の振動を抑制するので、同角速度による振動子20のY軸方向の振動が基板10を介して振動子20に逆入力されることに伴うノイズの発生が防止される。また、第2サーボ制御回路は、振動子20の駆動によるY軸方向の漏れ振動を抑制するので、同駆動によるY軸方向の漏れ振動の発生も防止される。一方、サーボアンプ96aは、角速度による振動子20のY軸方向の振動の大きさに比例した直流信号を出力するので、増幅器83からは角速度を表す直流信号が得られる。
この第2電気回路装置によれば、サーボアンプ96a,96bの前に検波回路95a,95bをそれぞれ設けてサーボ制御信号の直流化を図っているので、センサの共振周波数帯域にてサーボ制御を行う必要がなくなるため、前述した位相ずれの問題がなくなり、上述したサーボループのゲインを大きく設定できる。このことは、上記数3におけるゲインAを実質的に無限大に設定できることを意味し、その結果、上記数4で説明した角速度の検出感度が振動子20の共振のQには依存しなくなり、同検出感度を安定させることができる。また、増幅器63及び復調回路91により検出信号に位相ずれが生じても、サーボ制御のゲインが変化するのみで、角速度の検出感度、オフセットなどには全く影響することがない。
d.上記第3実施形態の異常判定について
上記第3実施形態においては、振動子20のY軸方向の振動をサーボ制御することにより同振動を抑制するようにしているので、サーボ制御回路90内を通過する振動子20のY軸方向の振動を表す信号は極めて小さなものである。したがって、サーボ制御回路90内に断線などの異常が生じたために振動子20のY軸方向の振動を表す信号が「0」になっているのか、前記振動子20のY軸方向の振動抑制のために同Y軸方向の振動を表す信号がほぼ「0」であるのかを判定することが難しい場合があり、前記異常の判定に遅れが生じることがある。なお、前記断線異常は、検波回路82aの出力部、増幅器83、サーボアンプ96a,96bの出力部などに設けたローパスフィルタ、及び増幅器63、復調回路91などに設けたハイパスフィルタなどを構成する回路部品(例えば、コンデンサ、抵抗)などの端子が開放した場合に生じることが多い。
この異常判定装置について説明すると、図13は第1の異常判定装置例をブロック図により示している。この第1の異常判定装置例においては、振動子20のY軸方向の振動を表す検出信号の経路に、オペアンプOP1、抵抗R1,R2、コンデンサC1及び直流電源DC1からなるローパスフィルタ101を介装している。この信号経路の上流すなわちローパスフィルタ101の入力側には、抵抗R3を介してダミー信号発生回路102が接続されている。ダミー信号発生回路102は、ローパスフィルタ101のカットオフ周波数より高くかつ前記検出信号に使用されないとともに同検出信号に含まれない周波数の信号をダミー信号として出力し、同ダミー信号を検出信号に抵抗R3を介して重畳する。
検出信号経路の下流すなわちローパスフィルタ101の出力には、比較器COMP1,COMP2、抵抗R4,R5,R6及びオア回路OR1からなり異常判定回路を構成するウインドコンパレータ103が接続されている。この場合、検出信号は抵抗R4,R5,R6によって定まる第1及び第2基準電圧Vref1,Vref2の間に収まるように設定されており、ダミー信号は前記第1及び第2基準電圧Vref1,Vref2の範囲を超える大振幅に設定されている。
この第1の異常判定装置例の動作を説明すると、コンデンサC1などの回路部品に断線異常が発生していなくてローパスフィルタ101が正常に動作していれば、ダミー信号発生回路102から発生されたダミー信号はローパスフィルタ101を通過しないので、ウインドコンパレータ103は検出信号に応答しないでオア回路OR1から正常を表すローレベル信号を出力する。一方、コンデンサC1などの回路部品に断線異常が発生してローパスフィルタ101が正常に動作しなくなると、ダミー信号はローパスフィルタ101を通過する。この場合、ウインドコンパレータ103はダミー信号に応答してオア回路OR1から異常を表すハイレベル信号を出力する。これにより、ウインドコンパレータ103は、ダミー信号の通過の有無によりローパスフィルタ101を含む信号経路の異常を遅滞なく検出でき、同ウインドコンパレータ103に接続されたフェイル処理回路(図示しない)は前記信号経路の異常に遅滞なく対処できる。
また、図14は第2の異常判定装置例をブロック図により示しており、この装置例においては、振動子20のY軸方向の振動を表す検出信号の経路に、オペアンプOP2,OP3、抵抗R7,R8、R9、コンデンサC2及び直流電源DC2からなるハイパスフィルタ104を介装している。この信号経路の上流すなわちハイパスフィルタ104の入力側には、上記第1の異常判定装置例と同様に抵抗R3を介してダミー信号発生回路102が接続されている。この場合、ダミー信号発生回路102は、ハイパスフィルタ104のカットオフ周波数より高くかつ前記検出信号に使用されないとともに同検出信号に含まれない周波数の信号をダミー信号として出力し、同ダミー信号を検出信号に抵抗R3を介して重畳する。
検出信号経路の下流すなわちハイパスフィルタ104の出力には、検波回路105と、上記第1の異常判定装置例と同様なウインドコンパレータ103とが接続されている。これらの検波回路105及びウインドコンパレータ103は異常判定回路を構成する。検波回路105にはダミー信号も供給されており、同回路105はハイパスフィルタ104の出力をダミー信号で同期検波して、同ダミー信号をその振幅を表す直流信号に変換してウインドコンパレータ103に出力する。この場合には、ダミー信号の振幅は、抵抗R4,R5,R6に設定される第1及び第2基準電圧Vref1,Vref2の間に収まるように設定されている。
この第2の異常判定装置例の動作を説明すると、コンデンサC2などの回路部品に断線異常が発生していなくてハイパスフィルタ104が正常に動作していれば、ダミー信号発生回路102から出力されたダミー信号はハイパスフィルタ104を通過する。そして、検波回路105が前記ダミー信号を同期検波して直流電圧信号を出力するので、ウインドコンパレータ103は前記直流電圧信号に応答しないで正常を表すローレベル信号を出力する。一方、コンデンサC2などの回路部品に断線異常が発生すると、ダミー信号はハイパスフィルタ104を通過しないので、ウインドコンパレータ103は、検波回路105から出力される「0」レベルの信号に応答してオア回路OR1から異常を表すハイレベル信号を出力する。これにより、ウインドコンパレータ103は、ダミー信号の通過の有無によりハイパスフィルタ104を含む信号経路の異常を遅滞なく検出でき、同ウインドコンパレータ103に接続されたフェイル処理回路(図示しない)は前記信号経路の異常に遅滞なく対処できる。
また、図15は第3の異常判定装置例をブロック図により示している。この第3の異常判定装置例においては、前記第2の異常判定装置例の検波回路105およびウインドコンパレータ103に代えて、周波数検出回路106を用いている。周波数検出回路106は、ダミー信号の周波数を検出することにより、同ダミー信号の到来時にハイレベル信号を出力し、それ以外のときローレベル信号を出力する。この場合も、ダミー信号は、ハイパスフィルタ104のカットオフ周波数より高くかつ前記検出信号に使用されないとともに同検出信号に含まれない周波数の信号である。
このように構成した第3の異常判定装置例においても、コンデンサC2などの回路部品に断線異常が発生していなくてハイパスフィルタ104が正常に動作していれば、ダミー信号発生回路102から出力されたダミー信号はハイパスフィルタ104を通過する。そして、周波数検出回路106がこのダミー信号の到来に応答して正常を表すハイレベル信号を出力する。一方、コンデンサC2などの回路部品に断線異常が発生すると、ダミー信号はハイパスフィルタ104を通過しないので、周波数検出回路106は異常を表すローレベル信号を出力する。これによっても、周波数検出回路106は、ダミー信号の通過の有無によりハイパスフィルタ104を含む信号経路の異常を遅滞なく検出でき、同周波数検出回路106に接続されたフェイル処理回路(図示しない)は前記信号経路の異常に遅滞なく対処できる。
したがって、上記第1〜第3の異常判定装置を用いれば、振動子20のY軸方向の振動がサーボ制御により抑制されて、振動子20のY軸方向の振動を表す信号の振幅が「0」又は極めて小さくても、前記ダミー信号の有無により、前記経路の断線による異常を遅滞なく検出することができる。
e.その他の変形例
なお、上記第1〜第3実施形態においては、メインフレーム30−1,30−2を介して振動子20をX軸方向に振動させるために、X軸方向の同一直線上に配置した1対の駆動電極部51−1,51−2と、X軸方向の同一直線上に配置した1対の駆動電極部51−3,51−4とをY軸方向の異なる位置に設けるようにしたが、さらに、X軸方向の同一直線上に配置した他の1対又は複数対の駆動電極部を前記駆動電極部51−1〜51−4とはY軸方向の異なる位置に配置するようにしてもよい。この場合も、全ての対の駆動電極部に逆相の駆動信号をそれぞれ供給するようにするとともに、少なくとも一対の駆動電極部に対する駆動信号による駆動力を変更可能にする。
また、上記第1〜第3実施形態においては、加算器75−1,75−2に可変電圧源回路76aを接続するとともに、加算器75−3,75−4には定電圧源回路76aを接続するようにした。しかし、これらの可変電圧源回路76a及び定電圧源回路76bは、駆動電極部51−1,51−2に印加される電圧と駆動電極部51−3,51−4に印加される電圧とを相対的に調整することができるようにするものであればよいので、加算器75−1,75−2に定電圧源回路を接続するとともに、加算器75−3,75−4に可変電圧源回路を接続するようにしたり、両電圧源回路76a,76bを共に可変にするようにしてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態においては、加算器75−1〜75−4により直流信号に利得制御回路73及び位相反転回路73aからの交流信号を重畳させて駆動電極部51−1〜51−4に対する駆動信号としたが、利得制御回路73及び位相反転回路73aからの交流信号を駆動電極部51−1〜51−4に対する駆動信号とするようにしてもよい。この場合、駆動電極部51−1,51−2による駆動力と駆動電極部51−3,51−4による駆動力とを相対的に変更可能とするために、駆動電極部51−1,51−2に対する前記交流信号からなる駆動信号及び駆動電極部51−3,51−4に対する前記交流信号からなる駆動信号の少なくとも一方の振幅値を変更可能とするとよい。
10…基板、20…振動子、30−1,30−2…メインフレーム、30−3,30−4…サブフレーム、33−1〜33−4…梁(検出用梁)、41−1〜41−4,44−1〜44−4…アンカ、42−1〜42−4,43−1〜43−4,45−1〜45−4,46−1〜46−4…梁(駆動用梁)、51−1〜51−4…駆動電極部(駆動部)、52−1〜52−4…駆動モニタ電極部(駆動モニタ部)、53−1〜53−4…検出電極部(検出部)、54−1〜54−4…補正電極部(補正部)、55−1〜55−4…調整電極部(調整部)、56−1〜56−4…サーボ電極部(サーボ部)、61,62,64…高周波発振器、70…駆動回路、71,81,84,91…復調回路、74,82,82a,85,95a,95b…検波回路、75−1〜75−4…加算器、76a…可変電圧源回路、76b…定電圧源回路、80…出力回路、90…サーボ制御回路、92,96a,96b…サーボアンプ、94a,94b…振幅制御回路、97a,97b…乗算回路、101…ローパスフィルタ、102…ダミー信号発生回路、103…ウインドコンパレータ、104…ハイパスフィルタ、105…検波回路、106…周波数検出回路。